説明

靴用除湿具

【課題】靴内に挿入して靴を乾燥させる靴用除湿具であって、繰り返し使用することができると共に長期間に亘って優れた除湿作用を発揮することができ、また、靴内に対する出し入れ等の取扱性も良好であると共に廃棄処理も安全に行える靴用除湿具を提供する。
【解決手段】靴の除湿具主体2は密度が0.4 g/cm3 未満のポーラスな木質繊維製板材からなり、この除湿具主体を不織布からなる透湿性を有する収納体1内に収納して靴内に配設可能な大きさ、形状の靴用除湿具Aを形成してなるもので、木質繊維製板材からなる除湿具主体によって靴内全体を均一に除湿できると共に、除湿後においては天日干し等によって乾燥して再使用を可能にし、また、長期間の使用後における廃棄時には、木質繊維製板材は安全に処理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は靴の内部に収納して除湿を行う靴用除湿具の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
靴は通気性に極めて乏しいために湿気が発生してムレ易くなり、履き心地が悪くなると共に悪臭が発生する虞れがあるため、従来から、着用後の靴内に消臭具や除湿具を挿入して消臭や除湿を行っている。このような靴用の除湿具としては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されているように、通気性、透湿性を有する不織布製の袋等の収納体内に消臭、除湿剤としてシリカゲルを封入したものものが知られている。また、シリカゲル以外に塩化カルシウムを入れた透湿性を有する箱状容器も知られている。
【特許文献1】特開2004−194696号公報
【特許文献2】実用新案登録第3119385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、塩化カルシウムは、潮解性を利用して湿気を吸収するものであるため、再利用は困難であると共に廃棄時にはプラスチックの塵として処分する必要があるため環境上の問題が発生することになる。さらに、塩化カルシウムは湿気を吸収すると高濃度の水溶液となるので、収納容器から滲み出したり漏洩したりして乾燥中の靴を汚損する虞れがあり、そのため、漏洩等が生じない容器にする等の工夫が必要となって汎用性に乏しいといった問題点がある。
【0004】
一方、除湿剤としてシリカゲルを使用した場合には、シリカゲルは湿気を吸収しても天日干し等で乾燥させれば再利用が可能であるが、廃棄時には塩化カルシウムと同様にプラスチックの塵として処分する必要があるため環境負荷が大きくなる。その上、塩化カルシウムやシリカゲルは微粒子であり、この乾燥剤によって靴を乾燥させる場所は通常家庭内であるため、幼児やペット等が誤って飲食したり目に入れることのないように注意や配慮が必要となる。また、袋や容器等の収納体内へのこれらの乾燥剤の詰め方によっては、湿気との接触にバラツキが生じて全体に亘り所定の吸湿性能を発揮することが困難となるといった問題点がある。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、優れた吸湿機能を有していると共に吸湿しても天日干し等で乾燥すれば簡単に再利用が可能となって靴の乾燥具として長期間の使用に供することができるのは勿論、全体に亘って均一な吸湿性能を発揮することができ、さらに、取扱性も良好であると共に幼児やペット等への安全性に対する配慮も必要とすることなく使用でき、また、廃棄の際にも環境上の問題を何等生じさせることなく簡単に処理することができる靴用除湿具を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の靴用除湿具は、請求項1に記載したように、靴内に収納可能な大きさに形成され、靴の内部に収納して該靴の除湿を行う靴用除湿具であって、収納体と、この収納体に内装された除湿具主体とからなり、収納体は不織布等の透湿性を有する材料から形成されている一方、除湿具主体は木質繊維製板材から形成されていることを特徴とする。
【0007】
このように構成した靴用調湿具において,請求項2に係る発明は、上記除湿具主体を密度が0.4 g/cm3 未満の木質繊維製板材から形成していることを特徴とし、請求項3に係る発明は、上記収納体を袋状又は箱状に形成して、この収納体に除湿具主体を出し入れ可能に収納していることを特徴とする。
【0008】
さらに、請求項4に係る発明は、上記収納体と除湿具主体との少なくとも一方に、防虫、防カビ、抗菌、除菌、脱臭、消臭、芳香等の複数の機能のうち、少なくとも一つを付与していることを特徴とし、請求項5に係る発明は、収納体内に除湿具主体と共に芳香、防虫、抗菌、防カビ等の機能を有する薬剤のうち、少なくとも一つ薬剤を収納していることを特徴とする。また、請求項6に係る発明は、収納体の表面に湿度インジケータを貼着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の靴用除湿具によれば、除湿具主体はその主成分が木質繊維の板材からなるので安全な材料であるばかりでなく、良好な吸放湿性能を有しているので、靴の除湿具として優れた除湿機能を発揮することができ、その上、多量の湿気を吸収しても乾燥機や天日干しで乾燥させることにより容易に放湿させることができ、吸放湿性能を低下させることなく長期間に亘って再利用が可能となる。また、木質繊維製板材は可燃物であるから廃棄した場合には環境上、何等問題も生じることなく簡単且つ安全に処理することができる。
【0010】
さらに、この除湿具主体の収納体は不織布等の透湿性を有する材料から形成されているので、木質繊維製板材からなる除湿具主体の吸放湿性を損なうことがないのは勿論、その内部に除湿具主体を収納した状態で該除湿具主体を乾燥させることができ、また、使用中に除湿具主体を構成している繊維の屑が出たとしてもこの収納体内から外部に出るのを阻止することができ、従って、この除湿具により乾燥中の靴内を汚す虞れもない。
【0011】
その上、除湿具主体は木質繊維製板材からなるので、定形であって靴に対する出し入れが容易に行える等の取扱性に優れているばかりでなく、この除湿具を収納した靴を傾けても周囲の空間に接する面積が殆ど変わることがなくてバラツキのない安定した調湿空間を形成することができると共に全面に亘って均一な吸湿機能を発揮して靴内を効率よく除湿することができ、さらに、靴内に長時間配設して多量の湿気を吸収しても何ら変形することなくその形態を保持することができる。また、木質繊維製板材からなる除湿具主体は、上述したように取扱性に優れているばかりでなく、幼児やペット等に対する安全性の配慮も確保することができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、上記除湿具主体は密度が0.4 g/cm3 未満のポーラスな木質繊維製板材からなるので、良好な吸放湿性を発揮することができると共に、靴の形状や大きさに合わせて容易に切断することができ、種々のサイズの靴に適応できる除湿具を生産性よく且つ安価に提供することができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、上記収納体は袋状又は箱状に形成されてあり、この収納体に除湿具主体を出し入れ可能に収納しているので、吸湿した除湿具主体の乾燥時における収納体からの出し入れが容易に行えるのは勿論のこと、長期の使用によって劣化した除湿具主体を新たな除湿具主体と交換する場合も何等の手間を要することなく行うことができる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、収納体と除湿具主体との少なくとも一方に、防虫、防カビ、抗菌、除菌、脱臭、消臭、芳香等の複数の機能のうち、少なくとも一つを付与しているので、要求される機能に応じた靴用除湿具を提供することができる。また、請求項5に係る発明によれば、収納体内に、除湿具主体と共に芳香、防虫、抗菌、防カビ等の機能を有する薬剤のうち、少なくとも一つ薬剤を収納しているので、収納体や除湿具主体に防虫や抗菌、芳香等の機能が付与されていなくても、これらの薬剤のうち、所望の機能を有する薬剤を付与したり、二つ以上の薬剤を自由に組み合わせて除湿具主体による除湿機能と共にそれぞれの機能を発揮させることができる。
【0015】
請求項6に係る発明によれば、除湿具主体を収納している収納体の表面に湿度インジケータを貼着しているので、この収納体を靴内に差し込んだ状態にして使用した際に、その吸湿量を正確に且つ簡単に認識することができ、従って、吸湿量が多い場合には直ちに取り出して天日等による乾燥を行うことができ、靴内が多湿になるのを未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を実施の形態を図面について説明すると、図1は収納体1内に除湿具主体2を収納してなる靴用除湿具Aの一部切欠斜視図であって、除湿具主体2は木質繊維製板材からなり、靴内に差し込んで敷設、収納可能な大きさ、形状に形成されてあり、その形状は図においては長方形状に形成しているが、図2に示すように、一定厚みを有する靴底形状や中敷き形状に形成しておいてもよく、また、2つ以上の分割片であってもよい。
【0017】
この除湿具主体2を形成した木質繊維製板材としては、例えば、JISA5905で規定されているA級インシュレーションボードやタタミボードであって、木質繊維を主成分とし、密度が0.4 g/cm3 未満のポーラスな木質繊維板材を使用し、靴内に収納可能大きさ、形状に切断して除湿具主体2を形成している。なお、木質繊維製板材の密度が0.4 g/cm3 以上になるとポーラス性が失われて木質繊維板自体の吸放湿性が低下するので好ましくない。
【0018】
一方、この除湿具主体2を収納した収納体1は、不織布、麻、綿、紙等の透湿性と柔軟性、可撓性を有するシート材料や、透湿性のない合成樹脂製シート材であって多数の小孔を設けることにより透湿性を付与したシート材からなり、袋状又は箱状に形成されている。この場合、図1、図2に示すように収納体1として、除湿具主体2を出し入れ不能に密封した長方形状の袋に形成しておいてもよいが、図3に示すように、長さ方向の一端側に除湿具主体2を出し入れ可能な開口部1aを形成した巾着袋形状とし、この開口部1aを紐状物3で結ぶことにより閉止するように構成しておいてもよい。さらに、図4に示すように、除湿具主体2を出し入れ可能な収納体1の一端開口部1aをファスナー4によって開閉自在に構成しておいてもよく、また、図5に示すように、収納体1を箱状に形成し、この箱状の一端部を開閉蓋としておいてもよい。
【0019】
上記除湿具主体2としては、図1〜図5に示す実施例では一枚ものに形成しているが、図6に示すように、サイコロ形状に形成された木質繊維製小片2aを多数個、収納体1内に収納して靴内に挿入可能な除湿具Aとしておいてもよい。この場合、透湿性を有する収納体1の形状としては上記箱状や偏平な袋状以外に円筒状に形成しておいてもよく、また、木質繊維製小片2aはサイコロ形状以外に球形状その他の形状に形成しておいてもよい。このように、収納体1内に収納した多数の木質繊維製小片2aは、靴内に挿入した際に、該靴の内部の形状に応じて移動して全体の形状を靴の内面に沿って収納体1と共に変形させることができ、吸湿表面積の増大と共に吸湿作用を効率よく行わせることができて短時間で能率よく靴の除湿処理を行うことができる。
【0020】
また、上記木質繊維製板材からなる除湿具主体2、2aに、防虫、防カビ、抗菌、除菌、脱臭、消臭、芳香等の機能のうち、少なくとも一つの機能を付与しておいてもよい。除湿具主体2、2aにこれらの機能を付与するには、木質繊維製板材の製造時に、防虫、防カビ、抗菌、除菌、脱臭、消臭、芳香等の薬剤のうち、所望の薬剤を添加してもよいし、木質繊維製板材の表面に薬剤を塗布してもよい。その薬剤や種類や使用量については、適宜選択が可能である。
【0021】
さらに、上記収納体1に抗菌、除菌、脱臭等の機能を付与しておいてもよい。このような機能を付与するには、例えば、酸化チタン等の光触媒を収納体1を形成している繊維に練り込むことにより行うことができる。
【0022】
また、上記のように、収納体1や除湿具主体2、2aに防虫、抗菌、除菌、消臭等の機能を付与する以外に、収納体1内に除湿具主体2、2aと共に芳香、防虫、抗菌、防カビ等の機能を有する薬剤のうち、少なくとも一つ薬剤を収納しておいてもよい。このような薬剤としては、例えば、樹脂製芳香ビーズ等の芳香剤やピレスロイド系等の防虫剤、金属イオン錯体系等の抗菌剤、フェノール系等の防カビ剤などが挙げられる。
【0023】
収納体1にはその表面における一隅角部に湿度インジケータ5を貼着している。この湿度インジケータ5は、例えば塩化コバルトを含浸させたものであり、透湿性を有する収納体1を通じて収納体1内の除湿具主体2、2aに吸収される吸湿量が増大するに従ってブルー色からピンク色に変化するように構成されている。
【0024】
このように構成した靴用除湿具Aは、図7に示すように靴B内に敷設した状態で収納して使用され、靴B内の湿気が透湿性を有する収納体1を通過して除湿具主体2に吸湿される。この際、除湿具主体2の表面は靴B内の空間に全面的に対向した状態となってその内部に均一に湿気を吸収することができ、靴B内を効率よく除湿することができる。除湿具主体2の吸湿量は、収納体1の表面における一隅角部に貼着した湿度インジケータ5を目視ずくことによって確認することができる。この場合、湿度インジケータ5を靴Bの履口から外部に臨ませた状態となるように除湿具Aを靴B内に配設しておくことにより、靴B内から除湿具Aを取り出すことなくその確認が簡単に行うことできる。除湿具主体2の吸湿量が多量になると、この除湿具Aを靴B内から取り出し、天日等で乾燥したのち再び、調湿具として使用する。次に、本発明の具体的な実施例と比較例とを示す。
【0025】
〔実施例1〕
ポリプロピレン製不織布によって幅が70mm、長さが200mm 、表裏面間の厚みが15mmの偏平な巾着袋状からなる収納体を形成し、この収納体内に、密度が0.34g/cm3 の木質繊維板材からなる幅が50mm、長さが180mm 、厚さが10mmの長方形状の除湿具主体を収納することにより靴用除湿具を得た。一方、男性用運動靴を片方だけ準備し、この運動靴の重量を測定したのち、この運動靴内に上記靴用除湿具を2枚、積み重ね状態で収納し、この状態でビニール袋内に入れて密封し、25℃の温度環境下で24時間静置した。その後、ビニール袋から靴用除湿具を収納した運動靴を取り出し、この運動靴から靴用除湿具を除去して該運動靴の重量変化を測定することによって靴用除湿具による吸湿量を算出したところ、吸湿量は5.8 gであった。
【0026】
〔比較例1〕
上記実施例1と同じ収納体内に除湿材料としてB型シリカゲルを160 g収納することにより靴用除湿具を得た。この靴用除湿具を上記実施例1と同じ運動靴内に収納してこの運動靴をビリール袋内に入れて密封し、この状態で25℃の温度環境下で24時間静置した。その後、ビニール袋から靴用除湿具を収納した運動靴を取り出し、この運動靴から靴用除湿具を除去して該運動靴の重量変化を測定することにより靴用除湿具による吸湿量を算出したところ、吸湿量は5.8 gであった。
【0027】
〔比較例2〕
上記実施例1と同じ収納体内に除湿材料として塩化カルシウムを22g収納することにより靴用除湿具を得た。この靴用除湿具を上記実施例1と同じ運動靴内に収納してこの運動靴をビリール袋内に入れて密封し、この状態で25℃の温度環境下で24時間静置した。その後、ビニール袋から靴用除湿具を収納した運動靴を取り出し、この運動靴から靴用除湿具を除去して該運動靴の重量変化を測定することにより靴用除湿具による吸湿量を算出したところ、吸湿量は5.4 gであった。
【0028】
以上のように、本発明の実施例においては、比較意1、2と同等ないしはそれ以上の吸湿量が得られることが確認された。また、除湿具主体は木質繊維板材からなるので、靴に対する靴用除湿具の出し入れが容易に行えるばかりでなく、長期間の使用後における廃棄処分も環境上、何等問題も生じることなく安全に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】靴用除湿具の一部切欠斜視図。
【図2】靴用除湿具の変形例を示す斜視図。
【図3】巾着袋状の収納体内に除湿具主体を収納してなる靴用除湿具の斜視図。
【図4】収納体の別な実施形態を示す斜視図。
【図5】箱状の収納体内に除湿具主体を収納してなる靴用除湿具の斜視図。
【図6】多数の木質繊維製小片からなる除湿具主体を用いた靴用除湿具の斜視図。
【図7】靴用除湿具を靴内に収納した状態の斜視図。
【符号の説明】
【0030】
A 靴用除湿具
B 靴
1 収納体
2 除湿具主体
5 湿度インジケータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴内に収納可能な大きさに形成され、靴の内部に収納して該靴の除湿を行う靴用除湿具であって、収納体と、この収納体に内装された除湿具主体とからなり、収納体は不織布等の透湿性を有する材料から形成されている一方、除湿具主体は木質繊維製板材から形成されていることを特徴とする靴用除湿具。
【請求項2】
除湿具主体は密度が0.4 g/cm3 未満の木質繊維製板材からなることを特徴とする請求項1に記載の靴用除湿具。
【請求項3】
収納体は袋状又は箱状に形成されてあり、この収納体に除湿具主体を出し入れ可能に収納していることを特徴とする請求項1記載の靴用除湿具。
【請求項4】
収納体と除湿具主体との少なくとも一方に、防虫、防カビ、抗菌、除菌、脱臭、消臭、芳香等の複数の機能のうち、少なくとも一つを付与していることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の靴用除湿具。
【請求項5】
収納体内に、除湿具主体と共に芳香、防虫、抗菌、防カビ等の機能を有する薬剤のうち、少なくとも一つ薬剤を収納していることを特徴とする請求雨1、請求項2又は請求項3に記載の靴用除湿具。
【請求項6】
収納体の表面に湿度インジケータを貼着したことを特徴とする請求項1、請求項3、請求項4又は請求項5に記載の靴用除湿具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−67984(P2008−67984A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250860(P2006−250860)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】