説明

【課題】靴紐の結び部分をベロの裏側にセットすることができ、また、結び部分の揺動等を防止して、結び部分を緩んだり解けたりし難くすることができる靴を提供する。
【解決手段】靴1のベロ20に、靴紐Sの両端部をそれぞれベロ20の表側から裏側へと通すためのベロ孔21を設け、ベロ孔21から裏側に通した靴紐Sの両端部をベロ裏側で結ぶことができるようにする。更に、ベロ20の裏側の自由端部にポケット22を設け、靴紐Sの結んだ部分S’をポケット22に収容するようにする。ポケット22は、ベロ20の裏側から表側へと捲ることができるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベロの裏側で靴紐を結ぶことができるようにした靴、特にエアロビクス競技等に好適なスポーツシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
靴紐で締め付けるタイプの靴は、履き口から前方へと連続する中央ギャップ部を挟む左右の甲被羽根部と、中央ギャップ部を埋めるベロとを有し、各甲被羽根部の縁部に複数の靴紐通し孔(筒状形態の場合もある)が前後方向に設けられる。靴紐は、周知のように、各甲被羽根部の靴紐通し孔につま先側から履き口側へと左右交互にジグザグ状に通され、履き口側で余った靴紐の両端側部分を引っ張った後に蝶結び等で結ばれる。
【0003】
上記のような靴紐を蝶結び等した靴紐結び部分(以下単に「結び部分」ともいう。)は、ベロの自由端部(履き口側端部)の表側にあって外部に露出している。そのため、例えば、運動時に結び部分が揺動したりあるいは何か(例えば、球技時のボールや相手選手等)と接触するなどして、結び部分が緩んだり解け易く、更には、紐端を自ら踏んだりあるいは踏まれるなどして転倒する危険も生じる。このような欠点は、エアロビクス競技等の激しい運動時の場合、一層顕著となる。
【0004】
上記問題点を解消するものとして、ベロを履き口側に伸長し、この伸長部分をカバーとして前方に折り返し、結び部分に上方から被せた後、スナップファスナ、面ファスナ等で固定するスパイクシューズが知られている。しかしながら、このようなカバーでは、シューズの履き口前方部分が外側(表側)に膨らんで見苦しくなるため、例えばエアロビクス用のシューズに適用した場合、エアロビ競技の採点に響くおそれがあり、あるいはまた、シューズの軽量化を妨げたり、コストアップを招くといった欠点もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような問題的に鑑みてなされたもので、その目的は、靴紐の結び部分をベロの裏側にセットすることができる靴を提供することにある。
【0006】
本発明の別の目的は、靴紐の結び部分の揺動や当該靴以外の物との接触を防止して、結び部分を緩んだり解けたりし難くすることができる靴を提供することにある。
【0007】
本発明の更に別の目的は、外観を見苦しくなくすっきりさせることができる靴を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記課題を解決するため、履き口から前方へと連続する中央ギャップ部を挟む左右の甲被羽根部と、中央ギャップ部を埋めるベロとを有し、左右の甲被羽根部の複数の靴紐通し部に通した靴紐の両端部を履き口側で結ぶ型式の靴において、ベロに、靴紐の両端部をそれぞれベロの表側から裏側へと通すためのベロ孔を備え、ベロ孔から裏側に通した靴紐の両端部をベロ裏側で結ぶことができるようにしたことを特徴とする靴が提供される。
【0009】
すなわち、本発明では、左右の甲被羽根部の靴紐通し部(孔や筒部)に通し終えた靴紐の両端部をベロの表側から裏側へとベロ孔に通した後に結ぶことにより、ベロの形状を歪めることなく、結び部分をベロの裏側にセットすることができる。
【0010】
本発明において、前記ベロ孔は、左右の甲被羽根部それぞれにおける靴紐通し部のうちの最も履き口側(最後方)の靴紐通し部と重なる位置にあることが望ましい。これにより、靴紐の端部をベロ裏側へ通す際に、該最後方の靴紐通し部とベロ孔とに該端部を連続的に通すことができる。
【0011】
本発明では、前記ベロの裏側における靴紐の結んだ部分をカバーするカバー手段を備えることができる。このカバー手段によって結び部分を被うことにより、結び部分の揺動や変位、あるいは結び部分の当該カバー手段及びベロ以外の物体との接触を防止して、結び部分を緩んだり解けたりし難くすることができ、また、ベロ表側にボリュームが出て見苦しくなるようなこともない。
【0012】
カバー手段としては、ベロに一体的に設ける形態と、ベロとは別個独立のもを使用時にベロ裏部に取り付ける形態とがあるが、後者の場合、カバーを喪失するおそれがあるため、前者の方が望ましい。ベロと一体的な形態の具体例としては、後述するポケット形態の他、カバー部材の基端部がベロに連結され、かつカバー部材の自由端部側等をスナップファスナ、面ファスナ等でベロに対して着脱自在とするような形態を挙げることができる。
【0013】
本発明では、前記カバー手段を、ベロの裏側の自由端部に設けた、前記靴紐の結んだ部分を収容可能なポケットであって、ベロの裏側から表側へと捲ることができるものとすることができる。すなわち、このポケットは、通常はベロの裏側にあり、この状態からポケットの内側を外部に露出するように反転させて、ベロの表側に位置させることができる。このポケット形態の場合、ベロ孔から靴紐両端部をベロ裏側へと通して結ぶまでは、ポケットをベロ表側に位置させ、結び終えたらポケットをベロ裏側に戻すことにより、結び部分を被わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る靴1を上から見た斜視図である。靴1は、エアロビクス競技に適したスポーツシューズであり、アウトソール、ミッドソール等からなる底部(図に現れず)と、底部に接合された甲被(アッパー)10とから基本的に構成される。甲被10は、履き口2と、履き口2から前方へと連続的に開口する中央ギャップ部3とを形成し、中央ギャップ部3の左右両側の甲被羽根部11、11の縁部に、複数の靴紐通し部12a、12b、12cが前後方向所定間隔に設けられている。また、甲被10の内側には、中央ギャップ部3を埋めるようにベロ20が設けられ、ベロ20は、その基端部が靴1の前方にて靴底部に接合され、自由端部が履き口領域内の前部へと達し、更に両側端部は甲被羽根部11、11の下に重なっている。
【0015】
上記靴紐通し部12a、12b、12cは、この靴1において、最前方から第4番目までの靴紐通し部12aが、甲被羽根部11、11の中央ギャップ部3との境界をなす側部に連結された筒状の通し部とされ、これらの後方の第5番目と第6番目(最後方)の靴紐通し部12b、12cが、上記境界よりも外側に形成された一般的な靴紐通し孔とされている。なお、参照番号13は、ベロ20上に形成された靴紐通し部であり、図1において、靴紐Sは、第1〜第4靴紐通し部12aに通し終えた状態である。
【0016】
次に本発明の特徴部分について詳述する。ベロ20には、両甲被羽根部11、11の最後方の靴紐通し孔12cに対応する位置に、該孔12cに連続して靴紐Sをベロ裏側へと通すための二つのベロ孔21が設けられている。ベロ孔21は、通常、甲被羽根部11、11に隠れて見えないが、図1では、ベロ孔21の存在を確認できるようにベロ孔位置を若干ずらして示している。なお、更に別のベロ孔を設けて、ベロ裏側へ靴紐Sを通すためのベロ孔を使用者が所望により選択できるようにすることができる。
【0017】
図2及び3は、ベロ20の自由端部側の表側(外側)を、図4〜7は、ベロ20の自由端部側の裏側(内側)をそれぞれ概略的に示す破断説明図である。図4を参照して、ベロ20の裏側自由端部には、靴1の使用時に蝶結び等し終えた靴紐Sの結び部分S’(図6参照)を被覆、収容するためのカバー手段としてのポケット22が設けられている。ポケット22は、ベロ裏面上に広がる伸縮性のある生地部材であって、その底部(図4等において上方に来る)22a及び左右両側部22bがベロ自由端部の周縁に接合された生地部材からなり、該生地部材の上部(図4において下方)は、ベロ裏面との間に開放口22cを形成する。ポケット22の上下幅すなわち底部22a−開放口22c間隔は、結び部分S’を確実に被覆、収容できる程度でよく、この上下幅の途中にベロ孔21が来る(図4参照)。ポケット22はまた、上記生地部材の内側面を外側に露出させるようにして反転させることにより、ベロ20の裏側から表側へと捲ることができ、この状態が図3に示される。
【0018】
次に、靴1の靴紐S結び時の動作を説明する。図1の状態から始めるとすると、まず、靴紐Sの両端部を第5番目靴紐通し孔12b、次いで最後方靴紐通し孔12cに通す。この際、最後方靴紐通し孔12cに対し、靴紐Sを甲被羽根部11の表側から裏側へと通すようし、更に、この靴紐Sを孔12cに連続してベロ孔21にも通すようにして、靴紐両端部をベロ内側へと導入する。この際、靴紐Sをベロ孔21に通し始めると同時にポケット22をベロ表側に捲るようにすることが望ましいが、このポケット22のベロ表側への捲り動作は、靴紐Sをベロ孔21からベロ裏側へ通している途中であっても、これを通し終えてからでもよい。このポケット22をベロ表側に捲った状態で、次に、靴紐Sの両端部をベロ20の裏側で結ぶ(図6及び8参照)。次いで、ポケット22をベロ裏側に捲り戻すことにより、靴紐Sの結び部分S’をポケット22内に収容することができ(図7及び9参照)、このベロ自由端部を履き口2に押し込んで、靴1を履く動作が完了する(図10参照)。なお、靴1を脱ぐ際は、ポケット22をベロ表側に捲ってから靴紐Sを解くようにする。
【0019】
以上の靴1では、靴紐Sを、ベロ20の形状を歪めることなく自然にベロ裏側で結ぶことができ、これにより、ベロ表側の外観をすっきりさせることができる。更に、結び部分S’をポケット22が被って抑えるため、結び部分S’がエアロビクス競技等の激しい運動中でも揺動したり変位したりせず、またベロ面及びポケット面以外の物と接することもないため、該部分S’が緩んだり解けたりすることもなく、安心してエアロビクス競技等に集中することができる。更にまた、ポケット22は比較的小寸法の生地部材からなるため、靴1の軽量化の妨げとなったり、コストアップを招くようなこともほとんどない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】靴紐を結び前の状態を示す、本発明に係る靴の上から見た斜視図である。
【図2】ベロの自由端部の表側を概略的に示す破断説明図である。
【図3】ポケットが裏側から表側に捲られた状態の、ベロ自由端部表側の図2と同様の説明図である。
【図4】ベロの自由端部の裏側を概略的に示す破断説明図である。
【図5】ポケットが裏側から表側に捲られた状態の、ベロ自由端部裏側の図4と同様の説明図である。
【図6】ベロの裏側で靴紐を結んだ状態を示す破断説明図である。
【図7】ベロの裏側の結び部分をポケットに収容した状態を示す破断説明図である。
【図8】ベロの裏側で靴紐を結んだ状態の靴を上から見た斜視図である。
【図9】ベロの裏側の結び部分をポケットに収容した状態を上から見た斜視図である。
【図10】靴の使用状態(靴を履く動作の完了状態)を上から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 靴
2 履き口
3 中央ギャップ部
10 甲被
11 甲被羽根部
12a、12b、12c 靴紐通し部
20 ベロ
21 ベロ孔
22 ポケット
22c 開放口
S 靴紐
S’ 結び部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
履き口から前方へと連続する中央ギャップ部を挟む左右の甲被羽根部と、中央ギャップ部を埋めるベロとを有し、左右の甲被羽根部の複数の靴紐通し部に通した靴紐の両端部を履き口側で結ぶ型式の靴において、
ベロに、靴紐の両端部をそれぞれベロの表側から裏側へと通すためのベロ孔を備え、ベロ孔から裏側に通した靴紐の両端部をベロ裏側で結ぶことができるようにしたことを特徴とする靴。
【請求項2】
前記ベロ孔は、左右の甲被羽根部それぞれにおける靴紐通し部のうちの最も履き口側の靴紐通し部と重なる位置にある請求項1に記載の靴。
【請求項3】
前記ベロの裏側における靴紐の結んだ部分をカバーするカバー手段を備える請求項1又は2に記載の靴。
【請求項4】
前記カバー手段は、ベロの裏側の自由端部に設けた、前記靴紐の結んだ部分を収容可能なポケットであって、ベロの裏側から表側へと捲ることができるものである請求項3に記載の靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−330466(P2007−330466A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165120(P2006−165120)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(592132442)株式会社ニューバランスジャパン (3)
【Fターム(参考)】