説明

鞍乗型車両

【課題】デザイン以外の他の用途への活用を図りつつ、ユーザーが繰り返し使用可能な装飾部材を備えた鞍乗型車両を提供すること。
【解決手段】外装カバー40と、外装カバー40の締結部35を覆う装飾部材10とを備え、装飾部材10は、所定のマークが形成された外面が装飾された蓋部20と、蓋部20を支持して、外装カバー40に取り付けられる基部30とから構成されており、蓋部20は、基部30を介して外装カバー40に取り付けられ、且つ、蓋部20は、基部30が外装カバー40に組み付けられることによって、外装カバー40からの蓋部20の取り外しが規制される構造を有する、鞍乗型車両100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両、特に、外装カバーに装飾部材を装着した鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両においては、メーカー名や車名などをデザインしてマークにした装飾部材(所謂「エンブレム」など)を外装カバーに装着した車両がある。車両に装着された装飾部材は、一目でメーカーやブランド等を示すシンボルとなるものであり、一般には、外装カバーの目立つ位置に接着剤や両面テープ等の固着手段によって取り付けられる。この種の装飾部材を備えた鞍乗型車両として、例えば特許文献1が開示されている。
【特許文献1】特開2002−274253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の装飾部材は、あくまで車両デザインの特徴を出すための一部品にすぎず、デザイン以外の他の用途への積極的な活用を図るまでには到っていない。また、ユーザーが自らの嗜好に応じて好みの装飾部材を取り付けたいという要望に応え、装飾部材を繰り返し使用し得るように着脱式の取付構造であることが求められている。
【0004】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、デザイン以外の他の用途への活用を図りつつ、ユーザーが繰り返し使用可能な装飾部材を備えた鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の鞍乗型車両は、外装カバーと、前記外装カバーの締結部を覆う装飾部材とを備え、前記装飾部材は、外面が装飾された蓋部と、前記蓋部を支持して、前記外装カバーに取り付けられる基部とから構成されており、前記蓋部は、前記基部を介して前記外装カバーに取り付けられ、且つ、前記蓋部は、前記基部が前記外装カバーに組み付けられることによって、前記外装カバーからの取り外しが規制される構造を有することを特徴とする。
【0006】
ある好適な実施形態において、前記蓋部の裏面には、前記外装カバーに挿入されるガイドピンが形成されており、前記基部には、前記ガイドピンの取り外しを規制する規制部材が形成されていることを特徴とする。
【0007】
ある好適な実施形態では、前記外装カバーは、前記ガイドピンがスライド可能に挿入されるガイド溝を有しており、前記ガイド溝は、前記ガイドピンの取り外しを規制する溝幅を持った幅狭な溝と、前記ガイドピンの取り外しを許容する溝幅を持った幅広な溝とを備え、前記基部には、前記ガイド溝の幅広な溝を塞ぐ当て部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
ある好適な実施形態では、前記基部は、前記ガイドピンがスライド可能に挿入される基部溝を有しており、前記基部溝は、前記ガイドピンの取り外しを規制する溝幅を持った幅狭な溝と、前記ガイドピンの取り外しを許容する溝幅を持った幅広な溝とを備え、前記基部溝を構成する幅広な溝と前記ガイド溝を構成する幅広な溝とは、前記ガイドピンのスライド方向において互いに離れた位置に形成されていることを特徴とする。
【0009】
ある好適な実施形態において、前記基部は、前記ガイドピンのスライド時において前記蓋部と前記外装カバーとが接触しない程度の高さを有することを特徴とする。
【0010】
ある好適な実施形態において、前記外装カバーの締結部は、該外装カバー及び車体フレームに締結部材を挿通可能なように構成されており、前記締結部材は、前記蓋部によって覆われることを特徴とする。
【0011】
ある好適な実施形態では、前記基部は、工具を用いて取り付けられる締結部材によって、前記外装カバーに固定されていることを特徴とする。
【0012】
ある好適な実施形態では、前記ガイドピンは、車両の上下方向に沿ってスライド可能に挿入されていることを特徴とする。
【0013】
ある好適な実施形態において、前記基部は、防振材で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る鞍乗型車両によれば、外装カバーと、外装カバーの締結部を覆う装飾部材とを備えるので、外装カバーの締結部を装飾部材で覆い隠すことができる。従って、外装カバーの締結部をサビ等から保護したり、車両のデザインを良好にしたりすることができる。
【0015】
また、本発明の装飾部材は、外面が装飾された蓋部と、蓋部を支持する基部とから構成されている。蓋部は、基部を介して外装カバーに取り付けられ、しかも、蓋部は、基部が外装カバーに組み付けられることによって、外装カバーからの取り外しが規制される構造を有する。これにより、蓋部が容易に外れて締結部が露出する事態を回避することができ、締結部の保護の実行を図ることができる。加えて、蓋部の取り外し規制を解除するには、基部を外装カバーから取り外さなければならず、取り外し作業が非常に複雑化する。このため、装飾部材の盗難を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明による実施の形態を説明する。以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0017】
図1を参照しながら、本発明の実施形態に係る鞍乗型車両100について説明する。図1は鞍乗型車両100の側面を模式的に示した外観側面図である。
【0018】
本実施形態に係る鞍乗型車両100(以下、「車両」ともいう)は、所謂アンダーボーン型の自動二輪車である。鞍乗型車両100は、ライダーが着座するシート74と、シートの前方に配置されたハンドル70と、ハンドル70に連動して旋回可能なフロントタイヤ72とから構成されている。また、シート74の下方にはエンジンが搭載され、エンジンの駆動力は、エンジンの後方に配置された駆動力伝達装置76を介してリヤタイヤ77へと伝達され、これにより車両100を走行させる。
【0019】
ハンドル70とフロントタイヤ72との間には、外装カバー40が装着されている。本実施形態の外装カバー40は、車両100の前側を覆うカウリング40(または「フロントカバー」とも称する)である。カウリング40は、締結部材(不図示)を用いて車体フレーム(不図示)に取り付けられる。そして、カウリング40の締結部を覆うように装飾部材10が装着される。装飾部材10は、メーカー名や車名などをデザインしてマークした部材(典型的にはエンブレム)である。
【0020】
次に、図2及び図3(a)を参照しながら、カウリング40の締結部を覆う装飾部材10の構成について説明する。図2は、本実施形態に係る装飾部材10及びカウリング40の構成を示す分解斜視図であり、図3(a)は、図2の各構成要素を拡大して示した拡大斜視図である。
【0021】
本実施形態のカウリング40は、図2に示すように、樹脂材料からなる紡錘形部材である。カウリング40は、走行時の風圧を車両外側方向に受け流すために、前側中央が車両前方に突出した形状を有する。カウリング40の上側中央には、カウリング40を車体フレーム(不図示)に取り付けるための締結部41が形成されている。本実施形態の締結部41は、ネジ穴41及びネジ穴41に挿通されるネジ(不図示)である。このネジ穴41と車体フレームのネジ穴(不図示)を介して、カウリング40は車体フレームにネジ止めされる。
【0022】
このネジ穴41(及びネジ)を覆うように、装飾部材10は取り付けられる。具体的には、図3(a)に示すように、装飾部材10は、車両前側に配置される蓋部20と車両後側に配置される基部30とから構成されており、カウリング40を車体フレームに取り付けるネジ35は、基部30を介してネジ穴41に挿通される。そして、基部30の表面に露出したネジ35を蓋部20で囲むことによって、カウリング40の締結部(即ちネジ35及びネジ穴41)を覆い隠すことができる。
【0023】
本実施形態の鞍乗型車両100によれば、外装カバー40と、外装カバー40の締結部(35、41)を覆う装飾部材10とを備えるので、外装カバー40の締結部(35、41)を装飾部材10で覆い隠すことができる。従って、外装カバー40の締結部(35、41)をサビ等から保護したり、車両のデザインを良好にしたりすることができる。
【0024】
なお、本実施形態では、ネジ止めによってカウリング40を車体フレームに固定する一例を示したが、カウリング40と車体フレームとの締結手段はネジ止めだけに限らない。例えば、カウリング40を車体フレームに樹脂製または金属製のリベット(例えばポップリベット)で固定してもよい。このような場合であっても、カウリング40の締結部を装飾部材で覆うことにより、車両の外観性を向上させ得る。
【0025】
また、装飾部材10で覆い隠す締結部は、カウリング40を車体フレームに取り付ける締結部だけに限らず、カウリング40と他の車両部品(例えば、サイドパネル75(図1)など)との締結部であってもよい。このように、カウリングと他の部品との締結部を装飾部材で覆い隠すことによって、車両デザインを向上させるだけでなく、他の部品(例えば、サイドパネル75(図1)など)の盗難を防止する効果も期待できる。
【0026】
さらに、装飾部材10を装着する外装カバーは、上述したカウリング(フロントカバー)だけに限らず、車両の外装を構成するカバー部材であればよい。例えば、シートの左右に配置されたサイドカバー等の締結部を覆うように装飾部材10を取り付けることもできる。この場合であっても、外装カバーの締結部を装飾部材で覆うことにより、車両の外観性を向上させ得る。
【0027】
以下、本実施形態に係る装飾部材10の構成、特に、装飾部材10の取付構造について詳細に説明する。本願発明者は、装飾部材をデザイン以外の他の用途(例えば締結部のサビ防止等)にも利用し得るように、外装カバーの締結部を装飾部材(例えばエンブレム等)で覆う構成を見出した。しかしながら、装飾部材が容易に外れる構造(例えば両面テープ等による固着)では、結局は締結部が露出してしまい、ひいては締結部がさびてしまったり、外観性を損なう虞がある。そこで、本願発明者は、装飾部材が容易に外れないように装飾部材の取付構造を工夫することによって、外装カバーの締結部の保護の実効を図る構成を見い出した。
【0028】
上述したように、本実施形態の装飾部材10は、蓋部20と基部30とから構成されている。蓋部20は、図3(a)に示すように、外面22が(例えばメーカー名等のロゴマークで)装飾された部材であり、謂わば装飾部材10の本体部分を構成している。本実施形態の蓋部20は、樹脂材料からなる円形状の部材である。
【0029】
蓋部20を上側から見ると、図3(b)に示す通りである。蓋部20の裏面23には、一対のガイドピン24が形成されている。本実施形態のガイドピン24は、装飾部材10の取付方向61(ここでは車両の後方)に向けて突出した一対の棒状の部材である。
【0030】
一方、基部30は、蓋部20を支持する支持部材であり、カウリング40の取付部42に取り付けられる。本実施形態の基部30は、略円形状の部材である。なお、基部30の下側には、カウリング40を車体フレームに取り付けるためのネジ穴31が開口している。また、本実施形態では、ネジ穴31の左右の側方には突起32が設けられている。突起32の周囲にはU字状の切欠き33が形成されており、この切欠き33によって突起32が弾性的に撓むことができるように構成されている。
【0031】
蓋部20のガイドピン24は、装飾部材10の取付方向61(ここでは車両の後方)へ向けて基部30を介して外装カバー40に挿入される。この例では、ガイドピン24は、まず、基部30に開口した基部溝34に挿通され、次いで、外装カバー40に開口したガイド溝44に挿通される。そして、基部30には、ガイドピン24の取り外しを規制する規制部材39が形成されている。本実施形態では、規制部材39は、基部溝34の溝幅を狭くする部位39である。この溝幅を狭くする部位39にガイドピン24の先端が引っ掛かることによって、ガイドピン24(延いては蓋部20)の取り外しが規制される。
【0032】
このように基部30を介して蓋部20の取り外しを規制することによって、蓋部20が容易に外れる事態を回避することができる。その結果、カウリングの締結部の露出を防止し得、該締結部の保護の実行を図ることができる。加えて、蓋部20を取り外す場合には、まず、基部30をカウリング40から取り外さなければならず、取り外し作業が非常に複雑化する。このため、装飾部材10の盗難防止のメリットも得られる。
【0033】
図4及び図5も加えて、本実施形態に係る蓋部20の取り外し規制構造について、さらに詳細に説明する。図4は、カウリング取付部42の正面構成を示す正面模式図である。ここでは、分かり易くするために蓋部20を省略し、基部30を二点鎖線で示してある。また、図5は、図4におけるC−C切断面を示す断面構成図である。
【0034】
まず、蓋部20のガイドピン24は、図3(b)に示すように、先端が径方向の外側へ向けて折れ曲がった爪部25を備えている。
【0035】
一方、カウリング(外装カバー)40は、図3(a)及び図4に示すように、ガイドピン24がスライド可能に挿入されるガイド溝44を有している。本実施形態のガイド溝44は、取付部42の上側から下側にかけて上下方向に延びた開口孔である。ガイド溝44の溝幅は一定ではなく、溝幅の広い幅広な溝46と溝幅の狭い幅狭な溝48とからなる。
【0036】
幅広な溝46は、ガイドピン24の爪部25が引っ掛からない程度の溝幅を持ち、幅狭な溝48は、ガイドピン24の爪部25が引っ掛かる程度(ガイドピン24が挿通し得ない程度)の溝幅を持つ。言い換えれば、ガイド溝44は、ガイドピン24の取り外しを許容する溝幅を持った幅広な溝46と、ガイドピン24の取り外しを規制する溝幅を持った幅狭な溝48とから構成されている。この構成では、ガイドピン24の爪部25を幅広な溝46に選択的に挿通し得、その後、幅狭な溝48に沿って(即ち上下方向に沿って)爪部25を引っ掛けながらスライドさせることができる。
【0037】
ガイドピン24の爪部25を幅広な溝46に挿通した後、該幅広な溝46は、基部30の規制部材39によって塞がれる。続いて、基部30の構成、特に規制部材39について説明する。
【0038】
基部30の上側には、蓋部20のガイドピン24を挿入可能な基部溝34が設けられている。本実施形態の基部溝34は、車両の上下方向に沿って延びた開口孔である。基部溝34は、それぞれ溝幅の異なる2つの溝(幅広な溝36及び幅狭な溝38)を備え、幅広な溝36には、ガイドピン24の爪部25が選択的に挿通される。つまり、基部溝34も、ガイド溝44と同様に、ガイドピン24の取り外しを許容する溝幅を持った幅広な溝36と、ガイドピン24の取り外しを規制する溝幅を持った幅狭な溝38とから構成されている。
【0039】
ただし、図4及び図5に示すように、基部溝34の幅広な溝36とガイド溝44の幅広な溝46とは、車両の上下方向62(ガイドピンのスライド方向)において、互いに離れた位置に形成されている。具体的には、基部溝34の幅広な溝36は、基部30の中央付近に開口しているのに対し、ガイド溝44の幅広な溝46は、取付部42の上端付近に開口している。
【0040】
このように、各溝(34及び44)の幅広な溝(36及び46)の形成位置をスライド方向62に沿ってズラすことにより、ガイドピン24の抜き差し口となるガイド溝44の幅広な溝46を基部の一部39で塞ぐことができる。この構成では、ガイドピン24の爪部25が基部の一部39に引っ掛かるため、ガイドピン24を引き抜くことができない。言い換えれば、基部30が有する規制部材39は、ガイド溝44の幅広な溝46を塞ぐ当て部39であり、この当て部39によって、カウリング40からの蓋部20の取り外しを規制する構造(すなわち取り外し規制構造)が具体的に実現される。
【0041】
上記構成では、接着剤や両面テープ等といった固着手段を用いずに、装飾部材(蓋部20)をカウリング40に取り付けることができる。従って、装飾部材(蓋部20)の繰り返しの着脱が可能となり、ユーザー満足度を向上させることができる。しかも、接着剤や両面テープ等を使用しないためコストも割安となる。
【0042】
また、装飾部材10の取り外し時には、ガイド溝44によって大きく開いた空間を種々の作業用スペースとして有効に活用することができ、メンテナンス性が向上する。例えば、ガイド溝44の空間を利用して、ヘッドライト締め付け時の工具スペースを確保することができる。あるいは、カウリングの取り付け時や他の部材の取り付け時に要する取り付けボルト等の工具貫通孔として、このスペースを有効に活用することができる。
【0043】
なお、基部溝34の幅広な溝36とガイド溝44の幅広な溝46とは、ガイドピンの抜き差しが規制され得る程度に離れていればよく、完全に離間していなくてもよい。図4に示したように、基部溝34及びガイド溝44の幅広な溝(36及び46)が、スライド方向62において一部重複する位置に形成されていてもよい。
【0044】
また、基部30を構成する材料は、支持部材として機能し得る材料であればよく、特に制限はされないが、好適な材料としては、防振材(緩衝材)として機能する材料(例えばポリプロピレン(典型的なプラスチック)、硬質ゴム、ウレタン等)が挙げられる。基部30を防振材とすることにより、蓋部20とカウリング40との擦れを防止することができ、擦れによる異音発生や部材間の粉吹き等を抑制することができる。
【0045】
さらに、基部30は、蓋部20を支持し得る形状であればよく、特に限定はされないが、ガイドピン24のスライド時において、蓋部20とカウリング(外装カバー)40とが接触しない程度の高さを有することが好ましい。これにより、外装カバーと蓋部との接触による損傷を回避し得、また、蓋部20の取付作業が容易となるので組み付け性が向上する。
【0046】
なお、本実施形態の基部30は、図5及び図3(a)に示すように、その下側に切欠き33によって撓むことが可能な突起32を備え、蓋部20の裏面22には、上記突起32に対向する位置に凹部26が形成されている。そして、突起32が凹部26に嵌入することによって、基部30と蓋部20との位置決めがなされる。この構成により車体振動によるガタツキを防止できるというメリットがある。また、当該構成では、蓋部20の下側は突起32の撓みによって弾性的に押し上げられるため、該蓋部20は支点63を中心として蓋部20の下側が開き方向、蓋部20の上側が閉まり方向となり、装飾部材10の見栄えが向上する。なお、上記構成では、基部30と蓋部20とを支点63を中心として同心円状に配置することができるので、装飾部材10の外観を良好にすることができる。上述した例では基部および蓋部が円形状の場合を示したが、これに限定されない。基部および蓋部が同一形状を有するのであれば、同様の作用効果を得ることができる。
【0047】
続いて、図6〜図9を参照しながら、本実施形態の装飾部材10の組み付け方法について説明する。この装飾部材10の組み付け方法では、まず、蓋部20と基部30とを予め組み付けて装飾部材組付体を形成し(図6)、その後、装飾部材組付体をカウリング取付部に取り付けている(図7〜図9)。なお、図7〜図9の各図(b)は、図4のB−B線の位置で切断した各図(a)の切断面を示し、図7〜図9の各図(c)及び図6(b)は、図4のC−C線の位置で切断した各図(a)の切断面を示している。
【0048】
図6(a)及び(b)に示すように、蓋部20と基部30との組み付けでは、まず、蓋部20のガイドピン24を、基部溝34の幅広な溝36に差し込む(矢印「64a」)。次いで、ガイドピン24の爪部25を引っ掛けながら、ガイドピン24を幅狭な溝38に沿って上方向にスライドさせる(矢印「64b」)。
【0049】
これによって、ガイドピン24の爪部25は、図6(b)に示すように基部30の裏側へ隠れた状態となり、基部30の下側に形成されたカウリング取付用のネジ穴31を露出させることができる。このようにして、蓋部20と基部30とを組み付けた装飾部材組付体15を形成することができる。
【0050】
次に、図7(a)に示すように、ネジ穴31を露出させた装飾部材組付体15を取付部42に差し込む(矢印「66」)。具体的には、図7(b)に示すように、基部30の上端に設けられた爪37をカウリング取付部42の上端に差し込み、この爪37を基点として、矢印「66」のように装飾部材組付体15を廻し込んで取付部42に差し込む。この作業によって、図7(c)に示すように、ガイドピン24はガイド溝44の幅広な溝46に対向するように配置されるので、ガイドピン24をガイド溝44の幅広な溝46に押し込む。
【0051】
続いて、図8(a)及び(b)に示すように、基部30の下側に露出したネジ穴31にネジ35を挿通して締結する(矢印「68」)。これにより、カウリング40を車体フレームに取り付けるのと同時に、基部30をカウリング40に取り付けることもできる。基部30とカウリング40とを締結すると、図8(c)に示すように、ガイドピン24の抜き差し口(即ちガイド溝44の幅広な溝46)は、基部30の一部39で塞がれて、ガイドピン24を引き抜けない状態となる。つまり、蓋部20の取り外しが規制される。このように、基部30とカウリング40との組み付けと同時に、蓋部20の抜け防止構造(ガイドピン24を引き抜けない構造)を構築することができる。
【0052】
その後、図9(a)に示すように、ガイドピン24の爪部25を引っ掛けながら、ガイドピン24(延いては蓋部20)を幅狭な溝48に沿って下方向にスライドさせる(矢印「69」)。その結果、図9(b)に示すように、基部30の下側に露出したカウリングの締結部(ネジ35)を蓋部20で覆い隠すことができる。このようにして、カウリング40への装飾部材10の取り付け作業は完了する。なお、図9(c)に示すように、基部30の突起32を蓋部20の凹部26に嵌め込むことによって、両者の位置決めがなされる。
【0053】
上述した装飾部材10の取り付け方法では、蓋部20は、基部30を介してカウリング40に取り付けられ、しかも、基部30がカウリング40に組み付けられることによって、カウリング40からの蓋部20の取り外しが規制される構造(すなわち取り外し規制構造)が実現される。換言すると、蓋部20の取り外し規制を解除するには、まず、基部30をカウリング40から取り外さなければならない。これによって、装飾部材10の取り外し作業が非常に複雑化する。従って、蓋部20が盗難され得る状況下(例えば、著名ブランド等をデザインしてマークにしたエンブレムの場合や、高価な装飾に彩られた蓋部の場合等)であっても、蓋部20の取り外しに手間取り、結果として蓋部20の盗難を防止することができる。
【0054】
さらに、上記構成では、蓋部20をスライドさせなければ基部30とカウリング40との締結部(ここではネジ35)は露出しないため、蓋部20の盗難防止効果を一層向上させることができる。
【0055】
なお、図8に示したネジ35による締結は、工具(例えばドライバー等)を用いて実行するのが好ましい。工具を用いてネジ35(締結部材)を締結することにより、基部30とカウリング40と車体フレームとをしっかりと締結することができる。加えて、基部30の取り外し時には工具が必要となるので、取り外し作業に手間が懸かる。従って、蓋部20の盗難防止の効果がさらに高くなる。
【0056】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、上述した実施形態に限定されるものではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0057】
例えば、上述した実施形態では、カウリング40のガイド溝44が真っ直ぐ上下方向に延びたものを示したが、そのような構成のものに限定されず、カウリング40のガイド溝44は、ガイドピン24をスライド可能に挿入し得る形状であればよく、真っ直ぐに延びた形状に限らない。
【0058】
図10(a)〜(c)は、カウリング240のガイド溝244が湾曲して延びた形状を持つ装飾部材210の取付構造を示している。このとき、蓋部220は、ガイド溝244の湾曲した形状に対応して、緩やかな曲線を描きながらスライドする(矢印「90a」と矢印「90b」)。このようにガイド溝244が湾曲して延びた形状であっても、スライド方向において、ガイド溝244及び基部溝234の幅広な溝(246及び236)の形成位置がズレているのであれば、蓋部220の抜け防止構造(ガイドピン224を引き抜けない構造)を構築することができ、それゆえに、蓋部220の盗難を防止することができる。
【0059】
また、蓋部20のスライド方向も上下方向だけに限らず、例えば、蓋部20を左右方向にスライド可能なように構成してもよい。あるいは、蓋部20を周方向にスライド可能なように構成することもできる。
【0060】
例えば、図11(a)〜(c)は、蓋部20が回転可能に構成された装飾部材310の取付構造を示している。蓋部320の裏面には、基部330の孔394及びカウリング取付部342の孔395を貫通する突起350が形成されており、該突起350を回転軸として、蓋部320を回転させることができる(矢印「92」参照)。このような構成であっても、スライド方向(すなわち回転方向)において、ガイド溝344及び基部溝334の幅広な溝(346及び336)の形成位置がズレているのであれば、蓋部320の抜け防止構造を構築し得、蓋部320の盗難を防止することができる。
【0061】
なお、本明細書でいう「鞍乗型車両」とは、ライダーがシートに跨って着座するタイプの車両だけに限らず、ライダーが両脚を閉じて着座する車両タイプ(典型的にはスクータ型の車両)も含まれる。また、図1に示した鞍乗型車両100は、アンダーボーン型の自動二輪車であるが、これに限らず、装飾部材を備えた鞍乗型車両であれば適用することができる。例えば、アンダーボーン型の自動二輪車以外に、四輪バギー(ATV:All Terrain Vehicle(全地形型車両))や、スノーモービルに適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、デザイン以外の他の用途への活用を図りつつ、ユーザーが繰り返し使用可能な装飾部材を備えた鞍乗型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】鞍乗型車両100の側面を模式的に示した外観側面図。
【図2】本実施形態に係る装飾部材10及びカウリング40の構成を示す分解斜視図。
【図3】(a)は図2の各構成要素を拡大して示した拡大斜視図。(b)は蓋部20の外観上面図。
【図4】カウリングの取付部周辺の正面模式図。
【図5】図4におけるC−C切断面を示す断面構成図。
【図6】(a)及び(b)は、蓋部20と基部30との組み付け方法を説明するための図。
【図7】(a)〜(c)は、装飾部材10をカウリング40に取り付ける方法を説明するための図。
【図8】(a)〜(c)は、装飾部材10をカウリング40に取り付ける方法を説明するための図。
【図9】(a)〜(c)は、装飾部材10をカウリング40に取り付ける方法を説明するための図。
【図10】(a)〜(c)は、カウリング240のガイド溝244が湾曲して延びた形状を持つ装飾部材210の取付構造を示す図。
【図11】(a)〜(c)は、蓋部320が回転可能に構成された装飾部材310の取付構造を示す図。
【符号の説明】
【0064】
10 装飾部材
15 装飾部材組付体
20 蓋部
22 表面
23 裏面
24 ガイドピン
25 爪部
30 基部
31 ネジ穴
34 基部溝
35 ネジ
36 幅広な溝
37 爪
38 幅狭な溝
39 規制部材(当て部)
40 カウリング(外装カバー)
41 ネジ穴
42 取付部
44 ガイド溝
46 幅広な溝
48 幅狭な溝
62 上下方向
70 ハンドル
72 フロントタイヤ
74 シート
76 駆動力伝達装置
77 リヤタイヤ
94 回転軸
100 鞍乗型車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装カバーと、
前記外装カバーの締結部を覆う装飾部材と
を備え、
前記装飾部材は、
外面が装飾された蓋部と、
前記蓋部を支持して、前記外装カバーに取り付けられる基部と
から構成されており、
前記蓋部は、前記基部を介して前記外装カバーに取り付けられ、且つ、
前記蓋部は、前記基部が前記外装カバーに組み付けられることによって、前記外装カバーからの取り外しが規制される構造を有することを特徴とする、鞍乗型車両。
【請求項2】
前記蓋部の裏面には、前記外装カバーに挿入されるガイドピンが形成されており、
前記基部には、前記ガイドピンの取り外しを規制する規制部材が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記外装カバーは、前記ガイドピンがスライド可能に挿入されるガイド溝を有しており、
前記ガイド溝は、前記ガイドピンの取り外しを規制する溝幅を持った幅狭な溝と、前記ガイドピンの取り外しを許容する溝幅を持った幅広な溝とを備え、
前記基部が有する規制部材は、前記ガイド溝の幅広な溝を塞ぐ当て部であることを特徴とする、請求項2に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記基部は、前記ガイドピンがスライド可能に挿入される基部溝を有しており、
前記基部溝は、前記ガイドピンの取り外しを規制する溝幅を持った幅狭な溝と、前記ガイドピンの取り外しを許容する溝幅を持った幅広な溝とを備え、
前記基部溝を構成する幅広な溝と前記ガイド溝を構成する幅広な溝とは、前記ガイドピンのスライド方向において互いに離れた位置に形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記基部は、前記ガイドピンのスライド時において、前記蓋部が前記外装カバーと接触しない程度の高さを有することを特徴とする、請求項3に記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
前記外装カバーの締結部は、該外装カバー及び車体フレームに締結部材を挿通可能なように構成されており、
前記締結部材は、前記蓋部によって覆われることを特徴とする、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項7】
前記基部は、工具を用いて取り付けられる締結部材によって前記外装カバーに固定されることを特徴とする、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項8】
前記ガイドピンは、車両の上下方向に沿ってスライド可能に挿入されていることを特徴とする、請求項3に記載の鞍乗型車両。
【請求項9】
前記基部は、防振材で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の鞍乗型車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−23511(P2009−23511A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188740(P2007−188740)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】