説明

音信号変換装置、マイクロホンおよび歌唱評価システム

【課題】カラオケの歌唱を評価する処理の負荷を低減する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】採点マイク10において、マイクロホン12において生成された歌唱音信号は、評価部112においてガイドメロディとの比較に基づき歌唱の巧拙が評価され、該評価結果を表すデータに基づき変調波が生成される。一方、カラオケ伴奏および歌唱音を表す音信号も生成され、上記変調波とカラオケ伴奏と歌唱音とはミキシング部18においてミキシングされる。該生成された信号から変調波を抽出することにより、該信号のカラオケ音を放音すると共にその評価を表示することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音信号変換装置、マイクロホン、歌唱評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
歌唱の評価を行う装置が種々開発されている。例えば、特許文献1に記載の歌唱力採点装置においては、カラオケ歌唱者の歌声からピッチを検出し、検出したピッチをMIDIデータに変換した後、リファレンスであるガイドメロディのMIDIデータと比較して一致の度合いに基づいて歌唱の採点を行う。
【特許文献1】特開平09−106294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さて、上記特許文献1に記載の歌唱力採点装置においては、装置本体において歌唱音のピッチ抽出処理など種々の処理を同時に行う必要があり、装置本体における処理負荷が大きいとの問題点があった。また、上記分析処理をマイクロホンの側で行わせたい場合に、分析結果と歌唱音の両者を伝送するための伝送媒体をそれぞれ設けなくてはならない、との問題点もあった。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、カラオケの歌唱を評価する処理における本体側の負荷を低減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る音信号変換装置の第1の構成は、音を表すアナログの音信号を受取る受取手段と、前記受取手段が受取った音信号が表す音を所定のアルゴリズムに従って評価する歌唱評価手段と、前記歌唱評価手段による評価結果を表すデジタルデータに基づいてアナログの評価信号を生成する評価信号生成手段と、前記評価信号生成手段により生成された評価信号を前記受取手段が受取った音信号に含ませ、合成音信号を生成する合成手段と、前記合成手段が生成した合成音信号を出力する出力手段とを有することを特徴とする。
【0006】
本発明に係る音信号変換装置の第2の構成は、上記第1の構成において、前記評価信号生成手段は、前記歌唱評価手段による評価結果に基づいて所定の搬送波を変調して前記評価信号を生成することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る音信号変換装置の第3の構成は、上記の第1の構成または第2の構成において、楽曲の伴奏音を表す伴奏データを記憶する記憶手段を有し、前記合成手段は、前記評価信号生成手段により生成された評価信号に加え、前記記憶手段から読み出された伴奏データに基づく信号を前記音信号に含めることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るマイクロホンは、上記いずれかの音信号変換装置と、収音した音に基づいて音信号を生成し、前記受取手段に供給する音信号生成手段とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る歌唱評価システムは、上記いずれかに記載の音信号変換装置と本体装置とからなる歌唱評価システムであり、前記本体装置は、前記出力手段が出力した合成音信号から、前記評価信号を分離する分離手段と、前記分離手段により分離された評価信号を復調することで得たデータに基づいて前記音の評価を出力する評価出力手段とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、音を表すアナログの音信号を受取る受取手段と、前記受取手段が受取った音信号が表す音を所定のアルゴリズムに従って評価する歌唱評価手段と、前記歌唱評価手段による評価結果を表すデジタルデータに基づいてアナログの評価信号を生成する評価信号生成手段と、前記評価信号生成手段により生成された評価信号を前記受取手段が受取った音信号に含ませ、合成音信号を生成する合成手段と、前記合成手段が生成した合成音信号を出力する出力手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る音信号変換装置、マイクロホンおよび歌唱評価システムによれば、カラオケの歌唱を評価する処理における本体側の負荷を低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下では、本発明の一実施形態に係る歌唱採点システムについて説明する。
【0013】
(A:構成)
まず、歌唱採点システム1の構成について説明する。
(A−1:全体構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る歌唱採点システム1の全体構成を表すブロック図である。同図に示されるように、歌唱採点システム1は、採点マイク10と、該採点マイク10からの信号の入力を受ける本体20と、採点マイク10および本体20を接続するケーブル30とから構成される。
ケーブル30は、一般的なマイクロホンのケーブルであり電気信号(音信号)を伝送する。
【0014】
(A−2:採点マイク10の構成)
図2は、採点マイク10の構成を示したブロック図である。
同図に示す制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を含む。CPUは、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出してRAMをワーキングエリアとして実行することにより、採点マイク10の各部を制御する。
操作部19は、楽曲を選択するためのテンキー、上下キー、演奏開始キーなど、採点マイク10を操作するために必要とされる各種のキーを備えている。操作部19は、歌唱者により押下されたキーに対応した操作信号を、制御部11へ出力する。
【0015】
記憶部13は、例えばHDD(Hard Disk Drive)などの記憶手段である。記憶部13には、複数の楽曲データが格納されている。楽曲データは、一般のカラオケ装置において用いられる楽曲データと同様に、以下に示すデータが含まれる。すなわち、楽曲を特定する曲番号データ、楽曲の曲名を示す曲名データ、ジャンルを示すジャンルデータ、楽曲の演奏時間を示す演奏時間データなどが含まれるヘッダと、楽曲の伴奏を行う各種楽器の演奏音が楽曲の進行に伴って記される伴奏データと、歌詞データと歌唱者が歌唱すべき旋律を示したガイドメロディの音名が書込まれているガイドメロディデータなどが含まれる。伴奏データとガイドメロディデータは、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)規格で記されている。また、記憶部13には、後述する歌唱者による歌唱音から抽出された各種のパラメータが書込まれる。
【0016】
音源16は、各種の波形データを格納しており、入力されたMIDIデータに応じて該波形データを読み出して出力する。
マイクロホン12は、歌唱者の歌唱音を収音して該収音した歌唱音を表す歌唱音信号(アナログ信号)を生成する。
A/Dコンバータ15は、入力されたアナログ信号をデジタルデータに変換(A/D変換)する。
D/Aコンバータ17は、入力されたデジタルデータをアナログ信号に変換(D/A変換)する。
【0017】
ミキシング部18は、入力された複数のアナログ信号を重畳(ミキシング)し、新たなアナログ信号を生成する。
出力端子14は、ケーブル30と接続されており、該ケーブル30を介して音信号を本体20に出力する。
【0018】
(A−3:本体20の構成)
図3は、本体20の構成を示したブロック図である。
同図に示す制御部21は、CPU、ROM、RAMを含む。CPUは、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出してRAMをワーキングエリアとして実行することにより、本体20の各部を制御する。
【0019】
記憶部22は、例えばHDDなどの記憶手段である。記憶部22には、歌唱評価の結果が書込まれる。
入力端子24は、ケーブル30と接続されており、該ケーブル30を介して採点マイク10から音信号を受信する。
A/Dコンバータ23は、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。
表示部25は、例えば液晶ディスプレイであり、制御部21の制御の下で、歌唱評価の結果など、各種の画面を表示する。
出力部26は、D/Aコンバータとアンプとスピーカとを含み、受取った音信号に基づいて放音する。
【0020】
(B:動作)
次に、歌唱採点システム1の動作について図4を参照して説明する。図4は、採点マイク10の機能的な構成を示した図である。同図において、破線に囲まれた各部(分析部111と評価部112と変調部113と振幅調整部114)は、制御部11が制御プログラムを実行することにより制御部11に実現される機能である。
【0021】
(B−1;情報付加信号の生成)
まず、カラオケ伴奏について説明する。歌唱者により、操作部19に楽曲を指定する操作がなされると、選択された楽曲を特定する操作信号が操作部19から制御部11に出力される。
【0022】
制御部11は、記憶部13から操作信号に応じた楽曲データを読み出して、伴奏データ(MIDIデータ)を音源16に出力する。音源16は、受取った伴奏データに基づいて波形データを読み出し、伴奏を表す伴奏音データを生成する。
後に詳細に説明するが、このようにして生成された伴奏音データは、種々の処理を経た後本体20へ出力され、本体20においては、該伴奏音データに基づく伴奏音が放音される。以下では、該処理にかかる時間は無視できるほど小さく、歌唱者は楽曲データの読み出しと同時に伴奏音を聞くことができるものとして説明する。
【0023】
歌唱者は、本体20から放音される伴奏音にあわせて歌唱する。歌唱者による歌唱音は、マイクロホン12に入力される。マイクロホン12は、該歌唱音を表す歌唱音信号を生成し、A/Dコンバータ15へ出力する。A/Dコンバータ15は、受取った歌唱音信号をA/D変換して歌唱音データを生成し、制御部11へ出力する。
【0024】
制御部11の分析部111は、A/Dコンバータ15から受取った歌唱音データのピッチを分析する。該ピッチの特定方法は、従来知られている方法のいずれを用いても良く、ここではその詳細な説明を省略する。なお、分析部111においては、所定時間(例えば500ms)置きに歌唱音のピッチが特定され、そのたびに該分析結果は評価部112に出力される。
さて、制御部11は、上述したように記憶部13から楽曲データを読み出したが、該楽曲データに含まれるガイドメロディデータは評価部112に入力される。そして、評価部112において、該ガイドメロディデータ(MIDIデータ)からピッチが特定される。
【0025】
評価部112は、上記分析部111から受取った歌唱音のピッチと上記ガイドメロディデータから特定されたピッチとを比較し、その一致度に応じて歌唱の巧拙を評価する。例えば、両者ピッチのずれの大きさに比例した減点得点を算出する。該算出された評価結果は、変調部113に出力される。
【0026】
変調部113は、評価部112から受取った評価結果を表すデジタルデータを信号に乗せる変調処理を行う。変調部113は、特定の周波数および振幅を有する正弦波信号(以下、搬送波)を出力する手段を有する。上記デジタルデータに基づく搬送波の変調方式として、ASK(Amplitude shift keying)方式を用いる。この変調方式では、入力波形(ベースバンド波形)である上記評価結果に応じて搬送波を断続するように変化させ、変調波を生成する。例えば、図5(a)のように、評価結果を表すデータの一部である0、1、1、0、1…といったバイナリーデータに基づいて、同図(b)に示す搬送波が同図(c)に示すような波形へ変形される。該生成された変調波の波形データは、D/Aコンバータ17に出力される。
【0027】
なお、上記搬送波の周波数として、人間の歌唱音(およそ500Hz〜5kHz)とは重ならない周波数帯域(例えば、500kHz)が設定される。また、上記搬送波の振幅は、上記歌唱音を表す歌唱音信号の振幅と比較して十分に小さい値が適宜設定されている。
D/Aコンバータ17において、変調波の波形データはアナログ信号(以下、変調波形信号)へD/A変換され、ミキシング部18へ出力される。
【0028】
さて、上述したように、音源16において生成された伴奏音データは、制御部11に出力される。制御部11において、振幅調整部114は該伴奏音データを受取り、その振幅を調整する。該振幅の調整は、操作部19の操作に応じて行われる。すなわち、操作部19において、伴奏音のボリュームとして高い値が設定されているほど、伴奏音データの振幅が高く変更される。振幅調整部114から出力された伴奏音データは、D/Aコンバータ17に入力される。
D/Aコンバータ17において、伴奏音データはアナログ信号(以下、伴奏音信号)へD/A変換され、ミキシング部18へ出力される。
【0029】
ミキシング部18には、D/Aコンバータ17からの伴奏音信号および変調波形信号に加え、マイクロホン12において生成された歌唱音信号が入力される。ミキシング部18は、伴奏音信号と変調波形信号と歌唱音信号とをミキシングし、新たなアナログ信号(以下、情報付加信号)が生成される。
【0030】
図6は、ミキシング部18において生成される情報付加信号の一例を示した図である。同図(a)は、歌唱音信号の波形の一部であり、同図(b)は、伴奏音信号の波形の一部であり、同図(c)は、変調部113において生成された変調波(図5にも示した部分)である。これらの信号が重畳された場合、同図(d)に示される情報付加信号が生成される。なお、変調波(c)は、歌唱音信号(a)および伴奏音信号(b)と波長や波形が明瞭に異なる。一方、伴奏音信号と歌唱音信号は、互いに波長や波形が類似している。
以上のようにして生成された情報付加信号は、出力端子14を介して本体20へ出力される。
【0031】
以下では、本体20における処理について説明する。図7は、本体20の機能的な構成を示した図である。図7において破線に囲まれた各部(分離部211と復調部212と書込手段213と評価出力部214)は、制御部21が制御プログラムを実行することにより制御部21に実現される機能である。
【0032】
本体20は、採点マイク10から情報付加信号を受取る。入力端子24に入力された情報付加信号は、A/Dコンバータ23においてA/D変換され、デジタルデータ(以下、情報付加データ)が生成される。
【0033】
(B−2:分離処理)
まず、制御部11の分離部211において分離処理が行われる。分離処理とは、情報付加データから、「変調波」と「伴奏音と歌唱音」とを分離する処理である。
【0034】
分離部211は、まず、情報付加データが表す波形を、上記搬送波に用いられた周波数を中心とする所定幅の帯域の成分を透過するバンドパスフィルタで処理する。該処理により、変調波の波形データ(以下、変調波形データ)が抽出される。すなわち、搬送波はASK方式で変調されていることから、分離された変調波は、図5(c)に示すように断続的な正弦波状のデータとなる。
また、分離部211は、情報付加データが表す波形データを、上記搬送波の周波数帯域以外の成分を透過させるバンドパスフィルタで処理し、新たな波形データを得る。該波形データには、伴奏音および歌唱音に基づく波形が含まれる。以下では、該波形データを、「カラオケ音データ」と呼ぶ。
【0035】
このように、搬送波(変調波)には、歌唱音および伴奏音の周波数帯域とオーバーラップしない周波数帯域が割り当てられて多重化されているため、それぞれの信号の周波数帯域を透過するバンドパスフィルタで処理することにより、多重化される前の信号を分離することが可能である。
【0036】
さて、上記分離処理により生成された変調波形データおよびカラオケ音データは、それぞれ以下のように処理される。
カラオケ音データは、出力部26に出力される。出力部26は、該カラオケ音データをD/A変換しアナログ信号に変換した後アンプで増幅し、スピーカから放音する。このようにして放音された音は、採点マイク10を用いる歌唱者により聴取される。
【0037】
(B−3:歌唱評価表示処理)
次に、上記分離処理において分離された変調波形データの処理について説明する。復調部212は、変調波形データを受取り復調する。すなわち、復調部212は、例えば図5(c)に示すような変調波を、同図(a)に示すようなデジタルデータに変換する。このようにして生成されたデジタルデータは、評価部112において生成された評価結果のデータと同一である。
【0038】
復調部212において生成されたデジタルデータは、書込手段213により記憶部22に書込まれる。歌唱評価に関するデータは、上述したように所定の時間置きに送信されてくるため、書込手段213は、歌唱評価に関するデータが検出されるごとに該データが表す評価結果(減点)を記憶部22に書込むことにより、減点得点を累算する。
【0039】
上記のような評価結果の累算が、カラオケの始めから終わりまで行われ、各タイミングにおける歌唱音のピッチの正確さに基づく減点得点が累算される。評価出力部214は、カラオケ伴奏が1曲分終了すると、満点(例えば、100点)から該累算値を減算し、最終的な歌唱得点として算出する。評価出力部214は、算出された歌唱得点を表示部25に出力し、得点を表示させる。
【0040】
(B−4:動作のまとめ)
上記実施形態において、採点マイク10において歌唱音に基づく歌唱音信号が生成されるが、該歌唱音信号には、伴奏音データおよび各時刻における歌唱内容の評価結果を表すデータが含められる。このとき、該評価結果(デジタルデータ)は、一旦アナログ信号に変調され、歌唱音信号の波形(アナログ信号)に対して重畳される。従って、採点マイク10から出力される信号は、音信号(電気信号)を入力可能な一般的なマイクロホン用端子に対して入力することができる。このように、評価結果を送信するために音信号と別の伝送媒体を設ける必要はない。
【0041】
本体20に入力された情報付加信号は、情報付加データに変換された後、歌唱音および伴奏音を表す音データ(カラオケ音データ)と評価結果を表す変調波形データとに分離される。そのため、歌唱音信号には一旦評価結果が含められるが、通常のカラオケ装置と同様に歌唱音自体を放音することが可能である。
また、本体20の制御部21は、カラオケの歌唱音の評価結果を、入力された信号(情報付加信号)からバンドパスフィルタで容易に分離抽出することができることから、本体20における歌唱評価処理の負荷を大幅に軽減することができる。
【0042】
(C:変形例)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。以下にその一例を示す。なお、以下に説明した各実施形態は、適宜組み合わせて実施しても良い。
【0043】
(1)上述した実施形態においては、採点マイク10から出力される情報付加信号には、収音した歌唱音に基づく歌唱音信号が含まれるため、採点マイク10を通常のマイクロホンとして使用することも可能である。ただし、該情報付加信号には評価結果を表す変調波が含まれていることから、直接情報付加信号に基づいて放音した場合に、その音は元の歌唱音とは音色が異なったりノイズが付加されていたりする。
そこで、マイクロホン12から出力された歌唱音信号に対して変調波形信号を重畳するか否かを制御可能とする手段を設けても良い。例えば、図8に示すように、変調部113が変調波の波形データをミキシング部18に出力するためのライン上にスイッチWを設け、該スイッチWを歌唱者がON/OFFすることで変調波の重畳のON/OFFが制御できるようにしても良い。
また、上述した実施形態においては、搬送波の周波数として、人間の歌唱音の周波数帯域とは重ならない周波数帯域が設定される場合について説明した。しかし、搬送波の周波数帯域としては、上記の条件と併せて、人間の可聴周波数帯域以外の搬送波を用いるようにしても良い。
以上のようにすれば、採点マイク10を通常のマイクロホンとして使用した場合に、生成される情報付加信号に基づく音が放音されたとしても聴感上違和感を生じない。
【0044】
(2)上述した実施形態においては、歌唱音を収音して該歌唱音の評価を出力する採点マイク10について記載した。しかし、本発明においては、採点マイク10においてマイクロホン12を除く他の構成からなる装置を、「音信号変換装置」として提供しても良い。
このような音信号変換装置を、一般のマイクロホンと本体20との間に噛ませることにより、マイクロホンから出力された音信号に評価結果を含ませることができ、本体20においては該音信号から評価結果を抽出することで容易に歌唱評価を行うことができる。
【0045】
(3)上述した実施形態においては、情報付加信号から抽出された評価結果は、カラオケ伴奏の最中は記憶部22に記憶され、該記憶部22において累算された減点を満点から減算することにより最終的な歌唱得点が表示される場合について説明した。しかし、評価結果をカラオケ伴奏の最中に表示するようにしても良い。例えば、所定の時間の区間ごとに該区間の評価内容を表示しても良いし、カラオケ伴奏開始時からの減点の累算を満点から減算した結果を表示し、カラオケ伴奏の進行に伴い表示される得点が下がっていくようにしても良い。
【0046】
(4)上述した実施形態では、歌唱音の評価結果に基づき、ASK方式により搬送波を変調する場合について説明した。しかし、変調方式はASK方式に限定されるものではなく、FSK(Frequency shift keying)方式、PSK(Phase shift keying)方式、QAM(Quadrature amplitude modulation)方式など、他のいずれの変調方式を用いても良い。その場合、各変調方式における変調波が、伴奏音データおよび歌唱音データと分離しやすい特徴を有するのが望ましい。これら他の変調方式を用いて変調した変調波を音信号に重畳した場合には、情報付加信号の分離処理において、用いられた変調方法に応じた分離方法により分離すれば良い。
【0047】
(5)上述した実施形態においては、歌唱音信号は人間の歌唱の音を表す場合について説明した。しかし、歌唱音信号は歌唱音を表す音信号に限られない。例えばバイオリンやフルートなどの楽器の演奏音を表す音信号であってもよい。そのようにすれば、例えば楽器の演奏の巧拙や楽器の音色を評価することができる。
【0048】
(6)上述した実施形態においては、カラオケ伴奏中に、歌唱音(および伴奏音)に対して変調波を重畳する場合について説明した。しかし、変調波を重畳するタイミングを以下のように制御しても良い。例えば、歌唱音信号の振幅をモニタしておき、振幅が所定のレベルを下回った区間に変調波を重畳しても良い。その場合、歌唱音信号の振幅が大きい間は変調波を重畳せず記憶手段に蓄積しておくなどしても良い。そのようにすれば、歌唱者が歌唱している区間においては変調波の重畳が行われないため、変調波の重畳および分離に伴い生じる可能性のある歌唱音信号波形の劣化が抑制される。また、歌唱音信号の振幅をモニタしておき、振幅が所定のレベルを上回った区間に変調波を重畳しても良い。そのようにすれば、歌唱音が含まれる区間の歌唱音信号に変調波が重畳されるため、変調波の重畳および分離に伴い歌唱音信号波形に劣化が生じてしまったとしても、そのような劣化(ノイズ)のSN比は比較的高いことから分離された歌唱音信号の音質の劣化が聴衆に知覚されにくい。
【0049】
(7)上述した実施形態における制御部11および制御部21によって実行されるプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスク(HDD、FD)など)、光記録媒体(光ディスク(CD、DVD)など)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記録した状態で提供し得る。また、インターネットのようなネットワーク経由でダウンロードさせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】歌唱採点システム1の構成を示すブロック図である。
【図2】採点マイク10の構成を示すブロック図である。
【図3】本体20の構成を示すブロック図である。
【図4】採点マイク10の機能構成を示す図である。
【図5】ASK方式の変調方法を説明するための図である。
【図6】情報付加信号の生成態様を示した図である。
【図7】本体20の機能構成を示す図である。
【図8】変形例(1)に係る採点マイク10の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0051】
1…歌唱採点システム、10…採点マイク、11…制御部、12…マイクロホン、13…記憶部、14…出力端子、15…A/Dコンバータ、16…音源、17…D/Aコンバータ、18…ミキシング部、19…操作部、20…本体、21…制御部、22…記憶部、23…A/Dコンバータ、24…入力端子、25…表示部、26…出力部、30…ケーブル、111…分析部、112…評価部、113…変調部、114…振幅調整部、211…分離部、212…復調部、213…書込手段、214…評価出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音を表すアナログの音信号を受取る受取手段と、
前記受取手段が受取った音信号が表す音を所定のアルゴリズムに従って評価する歌唱評価手段と、
前記歌唱評価手段による評価結果を表すデジタルデータに基づいてアナログの評価信号を生成する評価信号生成手段と、
前記評価信号生成手段により生成された評価信号を前記受取手段が受取った音信号に含ませ、合成音信号を生成する合成手段と、
前記合成手段が生成した合成音信号を出力する出力手段と
を有することを特徴とする音信号変換装置。
【請求項2】
前記評価信号生成手段は、前記歌唱評価手段による評価結果に基づいて所定の搬送波を変調して前記評価信号を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の音信号変換装置。
【請求項3】
楽曲の伴奏音を表す伴奏データを記憶する記憶手段を有し、
前記合成手段は、前記評価信号生成手段により生成された評価信号に加え、前記記憶手段から読み出された伴奏データに基づく信号を前記音信号に含めることを特徴とする請求項1または2に記載の音信号変換装置。
【請求項4】
収音した音に基づいて音信号を生成し、前記受取手段に供給する音信号生成手段と、
請求項1ないし3のいずれかに記載の音信号変換装置と
を有することを特徴とするマイクロホン。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載の音信号変換装置と本体装置とからなる歌唱評価システムであり、
前記本体装置は、
前記出力手段が出力した合成音信号から、前記評価信号を分離する分離手段と、
前記分離手段により分離された評価信号を復調することで得たデータに基づいて前記音の評価を出力する評価出力手段と
を有することを特徴とする歌唱評価システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−169017(P2009−169017A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5942(P2008−5942)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】