説明

音制御装置

【課題】パーソナル音響環境を実現しながら、ANC装置としても機能する音制御装置を提供することを目的するする。
【解決手段】第1音信号を出力する第1音源(31)と、第2音信号を出力する第2音源(32)と、音検出部(21)と、音検出部によって検出された検出信号に基づいて音検出部周辺のノイズをキャンセルさせるためのノイズキャンセル信号を出力するように制御する第1制御部(41)と、検出信号に基づいて第2音信号に基づいた音をキャンセルさせるための音キャンセル信号を出力するように制御する第2制御部(44)と、第1音信号、前記ノイズキャンセル信号及び音キャンセル信号を出力する出力部(11)を有することを特徴とする音制御装置(10)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、能動的に騒音を低減させるための音制御装置、特にパーソナル音響対応の音制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
音検出手段12が鉄道車両のデッキ内部の騒音とスピーカ11からの制御音を収集し、演算制御手段21が音検出手段12から得られた音から元騒音を得て、適応フィルタ24を制御することによってフィードバックされた制御音をスピーカから発生し、能動的に騒音を低減させるANC(アクティブ・ノイズ・コントロール)装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、車内の複数個所に配置されたエラーマイクにおいて不要音とキャンセル音との合成信号を検出し、合成信号と音楽再生装置から再生される音楽信号を用いて不要音をキャンセルするように適応フィルタを制御する音楽再生装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
近年、各座席に対応して配置されたスピーカを利用して、各座席において、それぞれ好みの音楽を聴きたいという新たな車室内の視聴環境を実現するシステム(パーソナル音響システム)を望む声がある。しかしながら、従来のシステムでは、エンジン音等の騒音を制御することはできても、他の座席に対応して配置されたスピーカからの音(漏れ音)を低減することは困難であった。
【0005】
【特許文献1】特開2005−96498号公報(図3)
【特許文献2】実開平2005−96498号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点を解決することを可能とする音制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、パーソナル音響環境を実現しながら、ANC装置としても機能する音制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る音制御装置は、第1音信号を出力する第1音源と、第2音信号を出力する第2音源と、音検出部と、音検出部によって検出された検出信号に基づいて音検出部周辺のノイズをキャンセルさせるためのノイズキャンセル信号を出力するように制御する第1制御部と、検出信号に基づいて第2音信号に基づいた音をキャンセルさせるための音キャンセル信号を出力するように制御する第2制御部と、第1音信号、ノイズキャンセル信号及び音キャンセル信号を出力する出力部を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る音制御装置は、第1座席用の第1音信号を出力する第1音源と、第2座席用の第2音信号を出力する第2音源と、第1座席の近傍に配置された第1音検出部と、第2座席の近傍に配置された第2音検出部と、第1音検出部によって検出された第1検出信号に基づいて第1音検出部周辺のノイズをキャンセルさせるための第1ノイズキャンセル信号を出力するように制御する第1制御部と、第1検出信号に基づいて第2音信号に基づいた音をキャンセルさせるための第2音キャンセル信号を出力するように制御する第2制御部と、第2音検出部によって検出された第2検出信号に基づいて第2音検出部周辺のノイズをキャンセルさせるための第2ノイズキャンセル信号を出力するように制御する第3制御部と、第2検出信号に基づいて第1音信号に基づいた音をキャンセルさせるための第1音キャンセル信号を出力するように制御する第4制御部と、第1音声信号、第1ノイズキャンセル信号及び第2音キャンセル信号を出力する第1出力部と、第2音声信号、第2ノイズキャンセル信号及び第1音キャンセル信号を出力する第2出力部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るに音制御装置によれば、ノイズ及び他の音源からの漏れ音をキャンセルすることができる、良好な環境を実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図面を参照して、本発明に係る音制御装置について説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0012】
図1は、車両1におけるスピーカ等の配置例を示す図である。
【0013】
車両1には、図1に示す様に、運転席2、助手席3、後部座席4、枠体5、運転席2の近傍に配置された第1スピーカ11、後部座席4の近傍に配置された第2スピーカ12、運転席2と助手席3との間に配置された第1エラーマイク21、後部座席4の中間部近傍に配置された第2エラーマイク22が配置されている。第1スピーカ11、第2スピーカ12、第1エラーマイク21、第2エラーマイク22、及び枠体5によって、本発明に係る音制御装置10が構成され、枠体5には後述する各種構成要素が配置されている。
【0014】
なお、図1に示した、スピーカ及び座席の配置は一例であって、例えば、前席側及び後部座席側にそれぞれ複数のスピーカを配置するようにしても良い。
【0015】
また、車両1内は、前席(運転席2及び助手席3)に搭乗する乗員グループ1と、後部座席4に搭乗する乗員グループ2との間で、それぞれ好みの別の音楽を視聴することができる個別の空間が形成されている。前席側には第1スピーカ11から出力される音が提供され、後部座席側には第2スピーカ12から出力される音が提供さている。
【0016】
図2は、車内1において各乗員への音の伝達特性を模式化した図である。
【0017】
図2に示す様に、第1スピーカ11からは乗員(グループ)1へ向けて音が出力され、第2スピーカ12からは乗員(グループ)2へ向けて音が出力されるが、第1スピーカ11からの音は乗員2側へ漏れてしまい(H2)、第2スピーカ12からの音は乗員1側へ漏れてしまう(H1)。さらに、車両に搭載されているエンジン等のノイズ源30からのノイズは乗員1側伝わる(W1)と共に、乗員2側へも伝わる(W2)こととなる。
【0018】
このように、第2スピーカ12から漏れる音(H1)及びノイズ源30から伝わる音(W1)は共に、第1スピーカ11と第1エラーマイク21との間の空間を介して乗員1へ伝達されることとなる。同様に、第1スピーカ11から漏れる音(H2)及びノイズ源30から伝わる音(W2)は共に、第2スピーカ12と第2エラーマイク22との間の空間を介して乗員2へ伝達されることとなる。
【0019】
なお、前席側の第1スピーカ11から第1エラーマイク21までの間の空間における空間伝達特性C1、及び後部座席側の第2スピーカ12から第2エラーマイク22までの間の空間における空間伝達特性をC2は、事前に測定機器によって特定することが可能である。
【0020】
図3は、本発明に係る音制御装置10の概略構成図である。
【0021】
音制御装置10は、ノイズ源30からのノイズ信号x(n)を検出するノイズセンサ20、乗員(グループ)1の近傍に配置された第1エラーマイク21、乗員(グループ)2の近傍に配置された第2エラーマイク22、第1音信号a1(n)を出力する第1音源31、第2音信号a2(n)を出力する第2音源32を有している。
【0022】
第1音源31及び第2音源32は、CD、DVD及びMD等の再生装置、ラジオ、TV及びナビゲーションシステム等であり得る。また、ノイズセンサ20は、車両のエンジン近傍に配置され、ノイズとして検知されるエンジン動作音等をノイズ信号x(n)として検出する。
【0023】
また、音制御装置10は、第1スピーカ11から出力される信号を生成するための、合算部40、第1適応フィルタ演算部(LMS1)41、C1回路42、第1適応フィルタ43、第2適応フィルタ演算部(LMS2)44、C1回路45、第2適応フィルタ46等を有している。なお、回路42及び45は、それぞれ空間伝達特性C1を加算する回路である。
【0024】
さらに、音制御装置10は、第2スピーカ12から出力される信号を生成するための、合算部50、第3適応フィルタ演算部(LMS3)51、C2回路52、第3適応フィルタ53、第4適応フィルタ演算部(LMS4)54、C2回路55、第4適応フィルタ56等を有している。なお、回路52及び55は、それぞれ空間伝達特性C2を加算する回路である。
【0025】
次に、第1エラーマイク21近傍における、ノイズ源30からのノイズx(n)をキャンセルするためのノイズキャンセル信号y1(n)の生成について説明する。
【0026】
第1エラーマイク21で検出される第1検出信号をe1(n)、C1回路42の出力をr1(n)、第1適応フィルタ43の係数をw1(n)とすると以下の式が成立する。
【0027】
【数1】

ここで、第1スピーカ11から第1エラーマイク21までの間の空間における空間伝達特性をC1、第1適応フィルタ43のステップサイズパラメータをμとする。
【0028】
即ち、式(3)に示すフィルタ更新式を満たすように、第1適応フィルタ演算部41が第1適応フィルタ43を制御することによって、第1エラーマイク21の近傍におけるノイズ源30からのノイズをキャンセルするためのノイズキャンセル信号y1(n)を出力することが可能となる。なお、第2エラーマイク22の近傍におけるノイズ源30からのノイズをキャンセルするためのノイズキャンセル信号y2(n)を生成するための、第2エラーマイク22、第3適応フィルタ演算部51、C2回路52、第3適応フィルタ53の動作も同様であるので、説明を省略する。
【0029】
次に、第1エラーマイク21近傍における、第2音源32からの漏れ音をキャンセルするための音キャンセル信号z1(n)の生成について説明する。
【0030】
第2音源32の音信号をa2(n)、第1エラーマイク21で検出される第1検出信号をe1(n)、C1回路45の出力をs1(n)、第2適応フィルタ46の係数をh1(n)とすると以下の式が成立する。
【0031】
【数2】

ここで、第1スピーカ11から第1エラーマイク21までの間の空間における空間伝達特性をC1、第1適応フィルタ43のステップサイズパラメータをμとする。
【0032】
即ち、式(6)に示すフィルタ更新式を満たすように、第2適応フィルタ演算部44が第2適応フィルタ46を制御することによって、第1エラーマイク21の近傍における第2音源32からの漏れ音をキャンセルするための音キャンセル信号z1(n)を出力することが可能となる。なお、第2エラーマイク22の近傍における第1音源31からの漏れ音をキャンセルするための音キャンセル信号z2(n)を生成するための、第2エラーマイク22、第4適応フィルタ演算部54、C2回路55、第4適応フィルタ56の動作も同様であるので、説明を省略する。
【0033】
合算部40は、第1音源31からの第1音信号a1(n)、第1適応フィルタ43から出力されるノイズキャンセル信号y1(n)、及び第2適応フィルタ46から出力される音キャンセル信号z1(n)を加算して第1スピーカ11に出力する。したがって、乗員(グループ)1は、ノイズキャンセル信号y1(n)によってノイズ源30からのノイズがキャンセルされ、音キャンセル信号z1(n)によって第2スピーカ12から漏れてくる音がキャンセルされるので、第1音源31からの第1音信号に基づく音のみを視聴することが可能となる。
【0034】
同様に、合算部50は、第2音源32からの第2音信号a2(n)、第3適応フィルタ53から出力されるノイズキャンセル信号y2(n)、及び第4適応フィルタ56から出力される音キャンセル信号z2(n)を加算して第2スピーカ12に出力する。したがって、乗員(グループ)2は、ノイズキャンセル信号y2(n)によってノイズ源30からのノイズがキャンセルされ、音キャンセル信号z2(n)によって第1スピーカ11から漏れてくる音がキャンセルされるので、第2音源32からの第2音信号に基づく音のみを視聴することが可能となる。
【0035】
このようにして、図2及び図3に示した音制御装置10では、ノイズ及び他の音源からの漏れ音をキャンセルすることができるので、良好なパーソナル音響環境を実現することが可能となった。
【0036】
図4は、車両1におけるスピーカ等の他の配置例を示す図である。
【0037】
車両1には、図4に示す様に、運転席2、助手席3、後部座席4、枠体5、運転席2の近傍に配置された第1スピーカ101、助手席3の近傍に配置された第2スピーカ102、後部座席4の左右に配置された第3スピーカ113及び第4スピーカ114、運転席2のヘッドレスト近傍に配置された第1エラーマイク111、助手席3のヘッドレスト近傍に配置された第2エラーマイク112、後部座席4の一方のヘッドレスト近傍に配置された第3エラーマイク113、後部座席4の他方のヘッドレスト近傍に配置された第4エラーマイク114が配置されている。第1スピーカ101〜第4スピーカ104、第1エラーマイク111〜第4エラーマイク114、及び枠体105によって、本発明に係る他の音制御装置100が構成され、枠体105には後述する各種構成要素が配置されている。
【0038】
本発明に係る他の音制御装置100では、車両1内において、運転席2に搭乗する乗員1、助手席3に搭乗する乗員2、後部座席4の一方に搭乗する乗員3、及び後部座席4の他方搭乗する乗員4のそれぞれで、好みの別の音楽を視聴することができる4つの個別の空間(空間伝達特性C11〜C14)が形成されている。なお、空間伝達特性C11〜C14は、事前に測定機器によって特定することが可能である。
【0039】
図5は、本発明に係る他の音制御装置100の一部の概略構成図である。
【0040】
音制御装置100は、ノイズ源30からのノイズ信号を検出するノイズセンサ20、乗員1の近傍に配置された第1エラーマイク21、乗員1への第1音信号を出力する第1音源31、乗員2への第2音信号を出力する第2音源32、乗員3への第3音信号を出力する第3音源33、乗員4への第4音信号を出力する第4音源34、及び合算部120等を有している。
【0041】
第1音源31〜第4音源34は、CD、DVD及びMD等の再生装置、ラジオ、TV及びナビゲーションシステム等であり得る。また、ノイズセンサ20は、車両のエンジン近傍に配置され、ノイズとして検知されるエンジン動作音等をノイズ信号として検出する。
【0042】
音制御装置100は、また、第1エラーマイク111近傍においてノイズ源30からのノイズをキャンセルするためのノイズキャンセル信号を生成するための第1適応フィルタ演算部(LMS1−N)121、C11回路122及び第1適応フィルタ123、第1エラーマイク111近傍において第2音源32に基づく漏れ音をキャンセルするための第2音キャンセル信号を生成するための第2適応フィルタ演算部(LMS1−2)131、C11回路132及び第2適応フィルタ133、第1エラーマイク111近傍において第3音源33に基づく漏れ音をキャンセルするための第3音キャンセル信号を生成するための第3適応フィルタ演算部(LMS1−3)141、及びC11回路142及び第3適応フィルタ143、第1エラーマイク111近傍において第4音源34に基づく漏れ音をキャンセルするための第4音キャンセル信号を生成するための第4適応フィルタ演算部(LMS1−4)151、C11回路152及び第4適応フィルタ153を有している。なお、回路122、132、142及び152は、それぞれ空間伝達特性C11を加算するための回路である。
【0043】
合算部120は、第1音源31からの音信号、ノイズキャンセル信号、第2音キャンセル信号、第3音キャンセル信号、及び第4音キャンセル信号を加算して第1スピーカ101へ出力するので、乗員1は、第1音源31からの音信号に基づく音のみを視聴することが可能となる。
【0044】
なお、図5では、運転席2に搭乗する乗員1に対応した第1スピーカ101へ出力する信号を生成するための構成のみを示しているが、本発明に係る他の音制御装置100は、図5に示すものと同様に、第2スピーカ102〜第4スピーカ104のそれぞれへ出力する信号を生成するための構成を有している。したがって、図5に示す、音制御装置100では、乗員1〜乗員4が、ノイズを含まない、それぞれの好みに合わせた音を視聴することが可能となる。
【0045】
図6は、本発明に係る更に他の音制御装置200の概略構成図である。
【0046】
音制御装置200と図3に示した音制御装置10との差異は、音制御装置200では、ノイズ源からノイズ信号を検出するためのセンサを有していない点と、他の音源からの漏れ音をキャンセルするための構成が異なる点である。また、音制御装置200は、図1に示すスピーカ等の配置に合わせて構成されているが、図4に示すスピーカ等の配置に合わせて構成するようにしても良い。
【0047】
音制御装置200は、乗員(グループ)1の近傍に配置された第1エラーマイク21、乗員(グループ)2の近傍に配置された第2エラーマイク22、第1音信号を出力する第1音源31、第2音信号を出力する第2音源32を有している。第1音源31及び第2音源32は、CD、DVD及びMD等の再生装置、ラジオ、TV及びナビゲーションシステム等であり得る。
【0048】
また、音制御装置200は、第1スピーカ11から出力される信号を生成するための第1合算部210、第1エラーマイク21近傍でのノイズをキャンセルするためのノイズキャンセル信号y1(n)を生成するための第1LMS(最小二乗平均)処理部221、C1回路222、第1適応フィルタ223、C1回路224、及び第2合算部225、第1エラーマイク21近傍での第2音源32に基づく漏れ音をキャンセルするための第2音キャンセル信号z1(n)を生成するための第1固定制御部230等を有している。なお、回路222及び224は、空間伝達特性C1を加算するための回路である。
【0049】
さらに、音制御装置200は、第2スピーカ12から出力される信号を生成するための第3合算部250、第2エラーマイク22近傍でのノイズをキャンセルするためのノイズキャンセル信号y2(n)を生成するための第2LMS処理部251、C1回路252、第1適応フィルタ253、C1回路254、及び第4合算部255、第2エラーマイク22近傍での第1音源31に基づく漏れ音をキャンセルするための第1音キャンセル信号z2(n)を生成するための第2固定制御部260等を有している。なお、回路252及び254は、空間伝達特性C2を加算するための回路である。
【0050】
次に、音制御装置200において第1エラーマイク21近傍におけるノイズをキャンセルするためのノイズキャンセル信号y1(n)の生成について説明する。
【0051】
第1エラーマイク21で検出される第1検出信号をe1(n)、C1回路222の出力をr1(n)、C1回路224の出力をhr1(n)、第1適応フィルタ223の時刻nにおけるi番目の係数をwn(i)とすると以下の式(7)〜(11)が成立する。
【0052】
【数3】

【0053】
ここで、第1スピーカ11から第1エラーマイク21までの間の空間における空間伝達特性をC1、第1スピーカ11からエラーマイク21までの等価フィルタのタップ長をNc、第1適応フィルタ223のタップ長をNw、リーケージをleak、第1適応フィルタ223のステップサイズパラメータをμとする。なお、x(n)において、e(n)からhr1(n)を差し引いている部分はハウリングキャンセラに相当する。
【0054】
即ち、式(11)に示すフィルタ更新式を満たすように、第1LMS処理部221が第1適応フィルタ223を制御することによって、第1エラーマイク21の近傍におけるノイズをキャンセルするためのノイズキャンセル信号y1(n)を出力することが可能となる。なお、第2エラーマイク22の近傍におけるノイズをキャンセルするためのノイズキャンセル信号y2(n)を生成するための、第2LMS処理部251、C1回路252、第1適応フィルタ253、C1回路254、及び第4合算部255の動作も同様であるので、説明を省略する。
次に、第1エラーマイク21近傍での第2音源32に基づく漏れ音をキャンセルするための第2音キャンセル信号z1(n)の生成について説明する。
【0055】
第2音キャンセル信号z1(n)は第1固定制御部230にて生成される。第1固定制御部230は、固定フィルタ231と位相反転処理部232等から構成される。
【0056】
固定フィルタ231は、予め測定された第2スピーカ12と第1エラーマイク21との間の空間伝達特性に基づいて設計されており、第2音源32の第2音信号a2(n)が入力されると、第1エラーマイク21近傍における第2音源32に基づく漏れ音に相当する信号を出力することができるように構成されている。
【0057】
位相反転処理部232は、打ち消し音とするために、固定フィルタ231から出力される第1エラーマイク21近傍における第2音源32に基づく漏れ音に相当する信号と逆位相の信号を、第2音キャンセル信号z1(n)として出力する。なお、第2固定制御部260も、固定フィルタ261及び位相反転処理部262を有し、第1固定制御部230と同様に、第1音キャンセル信号z2(n)を出力する。本例では、第2音キャンセル信号z1(n)及び第1音キャンセル信号z2(n)を生成するために適応フィルタではなく固定フィルタを用いているため、システムを小規模且つ低コストで構築することができる。
【0058】
第1合算部210は、第1音源31からの第1音信号a1(n)、第1適応フィルタ223から出力されるノイズキャンセル信号y1(n)、及び第1固定制御部230から出力される第2音キャンセル信号z1(n)を加算して第1スピーカ11に出力する。したがって、乗員(グループ)1は、第1音源31からの第1音信号に基づく音のみを視聴することが可能となる。
【0059】
同様に、第3合算部250は、第2音源32からの第2音信号a2(n)、第2適応フィルタ253から出力されるノイズキャンセル信号y2(n)、及び第2固定制御部260から出力される第1音キャンセル信号z2(n)を加算して第2スピーカ12に出力する。したがって、乗員(グループ)2は、第2音源32からの第2音信号に基づく音のみを視聴することが可能となる。
【0060】
このようにして、図6に示した音制御装置200では、ノイズ及び他の音源からの漏れ音をキャンセルすることができるので、良好なパーソナル音響環境を実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】車両1におけるスピーカ等の配置例を示す図である。
【図2】車内における各乗員への音の伝達特性を模式化した図である。
【図3】本発明に係る音制御装置10の概略構成図である。
【図4】車両1におけるスピーカ等の他の配置例を示す図である。
【図5】本発明に係る他の音制御装置100の一部の概略構成図である。
【図6】本発明に係る更に他の音制御装置200の概略構成図である。
【符号の説明】
【0062】
11 第1スピーカ
12 第2スピーカ
20 ノイズセンサ
21 第1エラーマイク
22 第2エラーマイク
30 ノイズ源
31 第1音源
32 第2音源
41 第1適応フィルタ演算部
43 第1適応フィルタ
44 第2適応フィルタ演算部
46 第2適応フィルタ
51 第3適応フィルタ演算部
53 第3適応フィルタ
54 第4適応フィルタ演算部
56 第4適応フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1音信号を出力する第1音源と、
第2音信号を出力する第2音源と、
音検出部と、
前記音検出部によって検出された検出信号に基づいて前記第1音信号以外の前記音検出部周辺のノイズをキャンセルさせるためのノイズキャンセル信号を出力するように制御する第1制御部と、
前記検出信号に基づいて前記第2音信号に基づいた音をキャンセルさせるための音キャンセル信号を出力するように制御する第2制御部と、
前記第1音信号、前記ノイズキャンセル信号及び前記音キャンセル信号を出力する出力部と、
を有することを特徴とする音制御装置。
【請求項2】
第1適応フィルタを更に有し、
前記第1制御部は、前記音検出部と前記出力部との間の空間伝達特性及び前記音検出部によって検出された検出信号に基づいて、前記第1適応フィルタを制御して前記ノイズキャンセル信号を出力する、請求項1に記載の音制御装置。
【請求項3】
ノイズ検出信号を出力するノイズ検出部を更に有し、
前記第1適応フィルタは、前記ノイズ検出信号を変調させることによって前記ノイズキャンセル信号を出力する、請求項2に記載の音制御装置。
【請求項4】
第2適応フィルタを更に有し、
前記第2制御部は、前記音検出部と前記出力部との間の空間伝達特性及び前記音検出部によって検出された検出信号に基づいて、前記第2適応フィルタを制御して前記音キャンセル信号を出力する、請求項1〜3の何れか一項に記載の音制御装置。
【請求項5】
前記第2適応フィルタは、前記第2音信号を変調させることによって前記音キャンセル信号を出力する、請求項4に記載の音制御装置。
【請求項6】
第1適応フィルタを更に有し、
前記第1制御部は、前記音検出部と前記出力部との間の空間伝達特性及び前記音検出部によって検出された検出信号に基づいて、前記第1適応フィルタを制御して前記ノイズキャンセル信号を出力する最小二乗平均処理部を有する、請求項1に記載の音制御装置。
【請求項7】
前記第1適応フィルタは、前記音検出部によって検出された検出信号を変調させることによって前記ノイズキャンセル信号を出力する、請求項6に記載の音制御装置。
【請求項8】
前記第2制御部は、固定フィルタ及び位相反転処理部によって前記第2音信号を処理して前記音キャンセル信号を出力する、請求項1、6、7の何れか一項に記載の音制御装置。
【請求項9】
前記固定フィルタは、第2音信号を出力する第2出力部から前記音検出部との間の第2空間伝達特性に基づいて構成され、
前記位相反転処理部は、前記固定フィルタを通過した前記第2音信号の位相を反転する、請求項8に記載の音制御装置。
【請求項10】
第1座席用の第1音信号を出力する第1音源と、
第2座席用の第2音信号を出力する第2音源と、
前記第1座席の近傍に配置された第1音検出部と、
前記第2座席の近傍に配置された第2音検出部と、
前記第1音検出部によって検出された第1検出信号に基づいて前記第1音検出部周辺のノイズをキャンセルさせるための第1ノイズキャンセル信号を出力するように制御する第1制御部と、
前記第1検出信号に基づいて、前記第2音信号に基づいた音をキャンセルさせるための第2音キャンセル信号を出力するように制御する第2制御部と、
前記第2音検出部によって検出された第2検出信号に基づいて前記第2音検出部周辺のノイズをキャンセルさせるための第2ノイズキャンセル信号を出力するように制御する第3制御部と、
前記第2検出信号に基づいて、前記第1音信号に基づいた音をキャンセルさせるための第1音キャンセル信号を出力するように制御する第4制御部と、
前記第1音声信号、前記第1ノイズキャンセル信号及び前記第2音キャンセル信号を出力する第1出力部と、
前記第2音声信号、前記第2ノイズキャンセル信号及び前記第1音キャンセル信号を出力する第2出力部と、
を有することを特徴とする音制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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