説明

音声コンテンツをビデオコンテンツに加える方法及び当該方法を実施する装置

本発明は音声コンテンツをオーディオビジュアルドキュメントに加える方法に関する。ビデオドキュメントはまず、サウンド信号を再生して記憶する装置によって受信される。受信されたビデオコンテンツは劣化エリアと共に、少なくとも1つの非劣化エリアを含む。非劣化エリアは、ドキュメントを再生すると、ユーザには完璧に見えるエリアである。前記ユーザは装置に記憶されたテキストを読む。このテキストは、非劣化エリアに現れる可視要素を用いることによって、受信されたビデオコンテンツの再生の間に所定回数読まれる。完全なビデオドキュメントは、オーディオビジュアルドキュメントと少なくとも1つの最近作成されたサウンドコンテンツとを組み合わせることにより作成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセキュリティ制約が課されているビデオドキュメントに新しいサウンドコンテンツを追加する方法及び当該方法を実施する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、多くの形態のオーディオビジュアルドキュメントの海賊版が存在している。映画館に設置されたカメラにより、上映されたドキュメントの不正なコピーの作成が可能になる。そして違法コピーはネットワーク上で入手することができ、または、CDやDVD等の媒体として売り出される。このようなコピーは映画産業に損害を与え、オーディオビジュアルドキュメントのプロデューサの収入を奪う。このような行為を防止または検出するための高度な技術が考案されている。例えば、プロデューサは上映されるドキュメントの画像中にマーキングを組み込む。このマーキングは、人間の目では検出できないが、装置には認識可能である。このマーキングはドキュメントの再生の間、見えるようになるので、ドキュメントの質を大きく低下させ、その価値を著しく制限する。
【0003】
不正コピーを回避するために、市場に出す前におけるドキュメントの送信に関して安全性を確保することが重要である。一般に、ドキュメントのリリースは、3分程度の短いビデオで当該ドキュメントを上映する予告編によってなされる。もし正式なリリースの前に違法コピーが出回って多数のユーザによって再生可能になっているなら、リリースした際に当該ドキュメントを見る人の数は限定的になり売上はかなり下がるであろう。従って、ドキュメントがリリースされる前に、当該ドキュメントの全部もしくは一部がリークしないようにすることが重要である。一般に、ビデオ及びオーディオトラックは安全なバン(van)によって配布される。
【0004】
過去においては、吹替えの際に、ある種のリークが生じていた。ビデオコンテンツ及びオーディオコンテンツが完成すると、ビデオトラックは少なくとも、吹替え言語で読まれるテキストのスクリプトとともに吹替え作業者に渡される。このコピーは、間もなく公開されるドキュメントのコピーである。従って、たとえサウンドトラックがついていなくても、当該コピーの価値は高い。よって、プロデューサと吹替えスタジオとの間でビデオトラックが安全に送信されるようにすること、または、当該ビデオトラックの価値を限定的なものにすることが重要である。1つの対応策として、安全な移送手段を使用することが考えられるが、その吹替えが、吹替え言語を使う国にいる吹替え作業者によって行われるとすると、この対応策には高い費用がかかる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、吹替えスタジオに送信・移送されるドキュメントの価値を制限することができる。
【0006】
本発明は、新しい音声コンテンツをオーディオビジュアルドキュメントに加える方法に関する。この方法は、画像からなるビデオドキュメントを再生装置において受け取る(受信する)ステップを含む。この方法は下記の事項によって特徴付けられる。即ち、前記受信されたビデオドキュメントの所定の画像は少なくとも1つの劣化(degraded)エリアと少なくとも1つの非劣化(non−degraded)エリアとを有する。また、前記方法は以下のステップを含む。
−ビデオドキュメントの再生の間、タイムマーカ(time marker:刻時点)によって決められた時に、少なくとも1つの音声コンテンツを取得するステップ。前記タイムマーカは少なくとも1つの非劣化エリア内に現れるビジュアル要素を含む画像のビデオドキュメントのゾーンを規定する。
−マネージャに、少なくとも1つの新たに取得された音声コンテンツとこれに関連するタイムマーカとからなるオーディオビジュアルドキュメントを送信するステップ。
−前記オーディオビジュアルドキュメントと少なくとも1つの新たに取得されたサウンドコンテンツとを組み合わせて、当該音声コンテンツがこれに関連する前記タイムマーカにより規定された時に再生されるようにするステップ。
【0007】
このように、新しいサウンドコンテンツを追加するために送信されたドキュメントは、映画として大きな価値を有さない。
【0008】
第1の改良によれば、新しい音声コンテンツのスピーチを表すテキストと、当該テキストに関連する複数のタイムマーカとが、ビデオドキュメント再生装置に送信される。前記テキストの少なくとも1つの部分は、前記タイムマーカを利用して、前記ビデオドキュメントの再生指定時に再生される。このように、吹替え作業者は、自分が発音すべきテキストをスクリーン上で読むことができる。第1の改良の改良によれば、テキストに付けられた属性も送信され、前記タイムマーカを利用して、前記ビデオドキュメントの再生指定時に表示される。当該属性は吹替え作業者に、当該テキストの読み方に関する指示を与える。
【0009】
第1の改良における別の改良によれば、前記テキストは吹替え作業者の前のスクリーンの少なくとも1つのグラフィカルウインドウ(graphical window)に表示され、当該グラフィカルウインドウはビデオドキュメントの画像の劣化エリア内にある。このように、ドキュメントの非劣化部の全体は吹替えのために完全に読むこと及び使用することができる。この改良の別の改良によれば、ビデオドキュメントの画像の劣化エリアはドキュメント再生レベルで検出される。このように、劣化エリアの座標(場所)を送信する必要は無い。変形例によれば、ビデオドキュメントの劣化部の位置は送信されて、当該劣化エリア内にテキストを表示するグラフィックウインドウの位置決めを行う際に再生装置によって使用される。このように、スクリーン上に表示されるべき画像を分析するために上記エリアを判別したり計算電力を消費する必要は無い。
【0010】
他の改良によれば、オーディオビジュアルドキュメントのオリジナルサウンドトラックを構成するオーディオコンテンツが再生装置に送信され、当該オーディオコンテンツはビデオコンテンツが再生される間に再生される。
【0011】
本発明は、ビューイング装置(viewing device)にも関する。当該装置は、オーディオビジュアルドキュメントから得られるビデオドキュメントを受信する手段と、音声コンテンツを取得して記憶する手段とを含む。当該装置は次の事項によって特徴付けられる。即ち、受信されたビデオコンテンツの所定の画像は少なくとも1つの劣化エリアと少なくとも1つの非劣化エリアとを有する。また、取得デバイスはタイムマーカによって決められた時に少なくとも1つの音声コンテンツの取得を行う。当該タイムマーカはビデオドキュメントの再生の間、表示手段によって表示されるビジュアル要素を含む画像のビデオコンテンツのゾーンを規定する。当該ビジュアル要素は少なくとも1つの非劣化エリアに現れる。さらに、前記装置は少なくとも1つの新たに取得した音声コンテンツとこれに関連するタイムマーカとを送信する手段を含む。
【0012】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照して説明される本発明の非限定的な例示的実施形態の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】オーディオコンテンツ及び/またはビジュアルコンテンツの製作装置の例示的ブロック図である。
【図2】本発明の例示的実施形態による吹替えスタジオのブロック図である。
【図3】本発明の例示的実施に係る安全エリアの主な系統の例示的レイアウトを示す図である。
【図4】新しいサウンドトラックを生成している間に吹替えスタジオレベルで表示される例示的スクリーンショットである。
【図5.a】人間の顔を含む、劣化されていないオリジナルビデオトラックの例示的画像を示す図である。
【図5.b】劣化されたビデオトラックの例示的画像である。
【図6】二人の顔を含む、劣化されたオリジナルビデオトラックの例示的画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の好適な例示的実施形態によるオーディオビジュアルドキュメントの製作装置の基本レイアウトを示している。この製作装置1は、中央装置1.1と、オペレーティングプログラムを含むプログラムメモリ1.2と、オーディオコンテンツ及び/またはビジュアルコンテンツを含むデータベース1.3と、双方向通信インターフェース1.4とを有する。前記双方向通信インターフェースによって、ネットワーク1.5を介してオーディオコンテンツ及び/またはビジュアルコンテンツをダウンロードして送信することができる。ネットワーク1.5は、インターネットタイプのものとすることができる。
【0015】
プログラムメモリ1.2は、種々のショット(即ち、「カット」)に基づいてオーディオビジュアルドキュメントを作成するモジュールと、データベース1.3に記憶されているドキュメントを分析するモジュールと、所定の場所で画像を劣化させるための少なくとも1つのブラーリング(blurring)モジュールとを有する。前記分析モジュールは、画像の所定の特徴(典型的には、俳優の頭、顔または唇)の存在の判定を容易にすると共に当該特徴の画像の位置の判定を容易にする属性を利用する。一般に、前記分析モジュールは吹替えに有用な画像のエリアの全てを判別する。例えば、手の動き、ライト、物体の突然の出現などについて判別をする。
【0016】
図2は吹替えスタジオ2.1の基本レイアウトを示している。この吹替えスタジオは、プログラムメモリ2.3に接続された中央装置2.2(UC)と、ビデオトラックの再生及び吹替えの際に必要なコマンドの全てをユーザが入力できるようにしているキーボード2.4と、マイクロフォンから来る信号の捕捉及び当該信号のデジタル化を可能にするオーディオ入力インターフェース2.5と、少なくとも2つのラウドスピーカ2.7へ増幅されたサウンド信号を送る少なくとも1つのアンプを備えるオーディオ信号用出力インターフェース2.6とを有する。キーボード2.4は、検証キーと、インデックスをスクリーン上で移動させる回転要素とを有する。この要素は、例えば、当該キーボードに接続されたマウスである。キーボードは複数のキーを有し、これらキーによって、スクリーンアイコンを選択することによってアクセス可能なコマンドと同じコマンドを入力することができる。ラウドスピーカ2.7はリーダ(読む人)に装着されるものであり、ユーザが装着するヘッドセットに取り付けられたイヤフォンとすることができる。データメモリ2.8は中央装置に接続されている。典型的な場合、このメモリはハードディスクであり、オーディオコンテンツ及び/またはビジュアルコンテンツを記憶することができる。オプションで、吹替えスタジオ2.1は随意的に取り外し可能なオーディオデータ及び/またはビジュアルデータのデータストレージユニット2.9を有してもよい。当該データストレージユニットは記憶媒体(例えば、オーディオCD、DVD、磁気カートリッジ、電子カード、USBキーなど)からの読み出し及び当該記憶媒体への書き込みをすることができる。
【0017】
吹替えスタジオ2.1はまた、リモートスクリーン2.11上にデータを表示するための回路2.10を含む。この回路2.10はしばしばOSD回路と称される。OSDはOn Screen Displayの頭文字である。回路2.10はテキスト及び図形(グラフィックス)の生成部であり、メニュー、ピクトグラム(絵文字、図像)その他の図形及び吹替え補助メニューをスクリーン上に表示することができる。OSD回路は中央装置2.2及びメモリ2.3に含まれているプログラムによって制御される。実行可能プログラムは、好ましくは、リードオンリーメモリ2.3に記憶されたプログラムモジュールとして実装される。また、実行可能プログラムは、例えば、ASICタイプの専用(特別に設計された)回路として実現されてもよい。
【0018】
デジタルバス1.5はネットワークインターフェース回路2.12に接続され、オーディオコンテンツをデジタル形式またはアナログ形式で吹替えスタジオ2.1に送信する。レシーバ(受信者)は前記オーディオコンテンツをメモリ2.8に記憶する。オーディオコンテンツ及び/またはビデオコンテンツのダウンロードは周知の技術であり、本出願において説明する必要はないものである。
【0019】
オーディオビジュアルドキュメントの作成とは、複数のショット(即ち、「カット」)を繋ぎ合わせることにより当該ショットを組み合わせることである。図3は複数のショットからなる1つのオーディオビジュアルドキュメントを示している。最終的なドキュメントには複数のタイムマーカによって参照され、ドキュメントはタイムマーカ値0から始まる。各ショットはドキュメントの始まりで参照され、第1のショットはタイムマーカ値T0から始まり、第2のショットはタイムマーカ値T1から始まり、第3のショットはタイムマーカ値T2から始まる(以下、同様)。このように、ショットからショットへ移る(ナビゲートする)際に、ナビゲーションプログラムはタイムマーカのテーブルを使用して新しいショットへ向かう。各ショットにおいては、1つ若しくは複数のタイムゾーンが、別の言語へ翻訳されるべき音声(スピーチ)を含んでいる。これらゾーンは図3において水平方向矢印によって示されており、さらにタイムマーカによってインデックス付けされる。このように、ドキュメントの再生の間、ショットからショットへナビゲートすることができ、タイムチャートに音声(スピーチ)ゾーンの位置を表示することができる。
【0020】
従って、ドキュメントの各イベントは、時間という観点から参照することができる。特筆すべき点は、音声(スピーチ)が俳優によって話されるとき、各センテンスの始まりと終りは当該ドキュメント内において参照されることである。よって、ドキュメントのビデオトラックの所望の部分(別の言語に吹替えられるべき部分)の位置を完璧に見つけることができる。各部分には開始時刻リファレンス及び終了時刻リファレンスが付けられている。
【0021】
上記において種々の要素を説明したので、以下においては、下記の要素がどのように協働するかを説明する。
【0022】
図4はオーディオビジュアルドキュメントのプロデューサと種々の吹替えスタジオとコンテンツマネージャとの間の種々のステップの進行を示している。コンテンツマネージャはドキュメントのプロデューサである場合もあり、コンテンツマネージャは最終的なドキュメントを吹替えと共に提供する責任を負う。
【0023】
最初に、製作装置は多様なシーケンスのアッセンブリからなるオリジナルドキュメントを有し、ドキュメントのビデオコンポーネントを抽出する。ステップ4.1においてドキュメントのビデオトラックはプログラムモジュールによって分析され、色々なエリア(吹替えに利用できる要素(例えば、唇の動き)があるエリア)を判別する。次に、第2のモジュールが各画像において、上記のような特徴を含まない部分を劣化させる。当該劣化はビジュアルコンテンツを変えるが、動作の映像及び色彩の見え方は維持する。例えば、ビデオが風になびく旗を映し出すと、視聴者はそれが旗であることは認識できるが、どの旗であるかは判別できない。多数のビデオ劣化技術が知られている(例えば、ぼかし、ピクセル化(pixellation)またはハッチングの重畳)。不可逆の技術を用いることが望ましい。例えば、ドキュメントの処理の間ランダムに変化するデータを必要とする技術を使用することが望ましい。
【0024】
次に、製作装置は、同じ時間長を有して同じタイムマーカを付してあるが劣化画像を含むビデオドキュメントを有する。当該劣化画像は映画という観点からすると殆んど価値が無いものである。製作装置は劣化ビデオトラックを、種々の言語で行われる吹替えに対応する種々のスクリプトと共に送信する(ステップ4.2)。任意ではあるが、オリジナルサウンドトラックも送信される場合がある。第1の改良によれば、このサウンドトラックは非音声のバックグランドノイズのようなものである。よって、吹替え作業者は自分の声をあるノイズに同期させることができる。第1の改良に組み合わせてもよい第2の改良によれば、オリジナルサウンドトラックと当該音声も送信される。こうすると、吹替え作業者は音声を聞いて、ビデオトラックに存在している俳優の音声イントネーションと同じ音声イントネーションで話すことができる。
【0025】
スクリプトは、各ワードまたは複数のワードのグループがタイムマーカを利用してビデオドキュメントのある瞬間に関連付けられているテキストである。スクリプトはASSフォーマットで送信され、各文字はASCIIで符号化されている。ASSフォーマットの構文を使うと、タイムマーカを特定することができる。1つの改良によれば、スクリプトは暗号化されて送信され、復号化を可能にするコードが別の移送手段によって吹替え作業者に与えられる。
【0026】
各吹替えスタジオは劣化ビデオドキュメントとその言語に対応するスクリプトを受信する。ステップ4.3において、吹替え作業者は自分に向けられているスクリーンのメニューの上に、劣化ビデオトラックの再生を開始し、スクリプトは読む瞬間にマーカによって示されるように表示される。スクリプトが暗号化されて受信された場合、吹替え作業者はドキュメントの再生を開始する前に復号化コードを入力しなければならない。吹替え作業者が吹替えを行っている俳優のスクリーンに現れる顔の画像を見ながら且つ別の所に表示されたスクリプトを読むことによって、吹替え作業者は自分のテキストを吹替えスタジオのマイクロフォンに発音する。吹替え作業者は俳優の唇の動きを使用して自分のテキストとのより良い一致を達成する(ステップ4.4)。吹替え作業者が自分の声を聞けるようにするコマンドが利用可能であり、レコーディングを再開すること及び自分が今したばかりのレコーディングを検証することができる。新しい音声コンテンツがこのようにして作成され、この音声コンテンツは劣化ビデオドキュメントと同じタイムマーカで同期される。
【0027】
ステップ4.5において、種々の吹替えスタジオは新しい音声コンテンツを、関連するタイムマーカと共に、コンテンツマネージャに送信する。好適な実施形態によれば、音声コンテンツとこれに関連するタイムマーカは、暗号化されてコンテンツマネージャに送信される。同時に、製作装置は(製作装置がコンテンツマネージャとは異なる場合)オリジナルの(劣化されていない)ビデオトラックをコンテンツマネージャに送信する(ステップ4.6)。ステップ4.7において、コンテンツマネージャは最終的なドキュメントを作成する。従って、マネージャは、吹替え作業者の音声コンテンツをバックグランドノイズにミキシングすることによって、存在する言語と同じだけの数のオーディオトラックを作成する。吹替え作業者によって発音された色々なサウンドシーケンスの組み合わせは、タイムマーカによって指定された時に行われる。最終的に、オーディオビジュアルドキュメントはビデオトラックと、存在する言語と同じ数のサウンドトラックとを含む。
【0028】
図5.a及び5.bは、処理の異なる瞬間におけるドキュメントの画像を表示するスクリーンショットを図示している。
【0029】
図5.aは顔を含んだ劣化されていないオリジナルビデオトラックの例示的画像を示しており、例えば、これは製作装置1のレベルで表示されるものである。吹替えスタジオ2.1に送信される前に、この画像は、顔を表示するエリアを除いて劣化される。
【0030】
図5.bは吹替えスタジオ2.1によって表示される例示的なメニューを図示している。表示された画像は、劣化の後の図5.aの画像である。一人の顔を除いて画像の全体がぼかされているように見える。
【0031】
吹替え作業者によって読まれるスクリプトは、画像の下部のスクロールバナーに現れている。図形カーソルがテキスト上を移動して、表示された画像に対応する瞬間に吹替え作業者が読まなければいけない1つの単語若しくは複数の単語の部分をおおよそ示す。図形カーソルは、スクリプトのタイムマーカを使用することによって移動される。1つのカーソルが約2秒のスピーチに相当する。図形カーソルは、テキストの色の変化として、下線として、文字を太い文字にすること等として表現される。吹替え作業者は表示された画像における俳優の唇の動きを観察しなければならず、当該観察により、唇の動きと読まれるセンテンスとが最も良く一致するようにする。とりわけ、吹替え作業者は、俳優の唇が動く瞬間に話すように工夫しなければならない。俳優の顔が劣化されず良い鮮明度でスクリーン上に現れることが重要であるのは、上記のような事情があるからである。例えば、映画「Quai des brumes(霧の波止場)」が吹替えられ、俳優のジャンギャバン(Jean Gibin)がフランス語で「t’as d’beaux yeux, tu sais」と発音したとする。このセンテンスが別の言語で書かれると、単語の位置が反転することもある(例えば、「Tu sais que tu as de beaux yeux」のようになる)。従って、吹替え作業者は唇の動きによって区切られる時間内に自分のセンテンスを発音しなければならないし、オリジナルの言語の単語が吹替え言語の単語と完全に同じ瞬間に一致しないようにしなければならない。
【0032】
好ましくは、コマンドメニューがスクリーンに表示され、吹替え作業者が利用可能なコマンドを思い出すことができるようにする。当該コマンドは、
‐再生(→)
‐オリジナルサウンドで再生(
【0033】

【0034】
もし利用可能ならば)
‐バックグランドノイズと共に再生(
【0035】

【0036】
もし利用可能ならば)
‐ショットの最初に戻る(
【0037】

【0038】
‐次のショットにスキップする(
【0039】

‐前のショットにスキップする(
【0040】

‐発音されたシーケンスを録音する(
【0041】

【0042】
これらコマンドはカーソルを使用してスクリーン上のアイコンを選択しボタンを押すことによって利用可能である。これらコマンドはキーボード2.4のキーを使用しても利用可能である。
【0043】
改良によれば、劣化されたビデオコンテンツは、吹替え作業者のためのリーディング属性と共に、吹替えスタジオに送信される。典型的な場合、当該属性は吹替え作業者にテキストをどのように読んだらよいかに関する指示を与える。例えば、早く読む、遅く読む、モノトーンで読む、叫んで読む、すすり泣きながら読む、かん高い声で読む、太い声で読む、どもりながら読む等の指示を与える。リーディング属性にはタイムマーカが付けられており、当該属性が関連しているテキストが表示される瞬間に現れるようになっている。これら属性はメニューの特定のウインドウ内に現れる。
【0044】
改良によれば、色々なウインドウ(スクリプト、コマンドメニュー、リーディング属性、タイムバー等)が画像の劣化部の内に表示され、顔の読み取り易さを損なわないようにしている。マウスと共に移動するカーソルは、その位置が顔のエリアに入ると消える。画像の劣化エリアの検出は、劣化のタイプの知識を用いて、画像を分析することによって吹替えスタジオのレベルで行われる。劣化の性質(ぼかし、スクラッチング、ハッチング、コントラスト不足等)は、サービス情報として、劣化ビデオと共に送信される。
【0045】
1つの変形例によれば、プロデューサ装置は、劣化ビデオと共に、俳優の顔若しくは唇を含むエリアの空間座標または俳優の顔若しくは唇を含むエリアを送信する。吹替えスタジオは、画像の劣化エリアのいずれにも重ならないように、メニューウインドウを配置する。よって、再生装置は、種々のウインドウを位置決めするために劣化エリア及び非劣化エリアを判定する必要がない。
【0046】
図6は吹替えスタジオ2.1によって表示されたメニューの他の例を図示している。表示された画像は二人の俳優を含み、当該二人の俳優の発言は二人の吹替え作業者によって吹替えられる。各吹替え作業者は二人の人間の2つの顔を除いてぼかされた画像を見る。二人の吹替え作業者が一緒に作業をするなら、吹替えは同じスクリーンに2つのスクリプトを表示することにより行われる。この場合、2つのスクリプトのバナーが表示される。読む瞬間を示す図形カーソルは2つのバナーの一方または他方の上に置いても良いし、2つのバナーの上に置いても良い(吹替え作業者が同時に話さなければならない場合)。
【0047】
本実施形態は例示的なものであると理解されるべきであり、特許請求の範囲により定義される範囲内で変更することができる。特に、本発明は上記した復号化装置に限定されず、セキュリティ条件を有する回路を取り付けた装置であれば、任意の装置に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新しい音声コンテンツをオーディオビジュアルドキュメントに加える方法であって、画像からなるビデオドキュメントを再生装置(2.1)において受信するステップ(4.2)を有し、前記受信したビデオドキュメントの特定の画像は少なくとも1つの劣化エリアと少なくとも1つの非劣化エリアとを有し、前記方法は、
前記ビデオドキュメントの再生の間(4.3)、タイムマーカによって定められた時に少なくとも1つの音声コンテンツを取得するステップ(4.4)であって、前記タイムマーカは少なくとも1つの非劣化エリアに現れるビジュアル要素を含む画像のビデオドキュメントのゾーンを規定する、ステップと、
前記少なくとも1つの新たに取得した音声コンテンツと、該音声コンテンツに関連する前記タイムマーカとからなるオーディオビジュアルドキュメントをマネージャに送信するステップ(4.5)と、
前記オーディオビジュアルドキュメントと少なくとも1つの新たに取得されたサウンドコンテンツを組み合わせ、前記音声コンテンツが前記関連するタイムマーカによって示された時に再生されるようにするステップ(4.7)と、
をさらに含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記新しい音声コンテンツの音声を表すテキストと該テキストに関連する複数のタイムマーカとを送信するステップと、前記ビデオドキュメントの再生の間(4.3)、前記タイムマーカによって示された時に前記再生装置(2.1)によって前記テキストの少なくとも一部を表示するステップと、を含むことを特徴とする請求項1記載の新しい音声コンテンツを加える方法。
【請求項3】
前記送信されたテキストに付けられた属性と該属性に関連する複数のタイムマーカとを含むリストを送信するステップと、前記ビデオコンテンツの再生の間(4.3)、前記タイムマーカによって示された時に前記再生装置(2.1)によって前記属性を表示するステップと、を含むことを特徴とする請求項2記載の新しい音声コンテンツを加える方法。
【請求項4】
前記テキストは、前記ビデオドキュメントの画像の劣化エリア内において、前記再生装置(2.1)によって設定された少なくとも1つのグラフィカルウインドウ内に表示されることを特徴とする請求項2記載の新しい音声コンテンツを加える方法。
【請求項5】
前記再生装置(2.1)は、前記ビデオドキュメントの画像の劣化エリアを検出して、前記テキストを表示する前記グラフィカルウインドウを前記劣化エリアの中に位置させる手段を含むことを特徴とする請求項4記載の新しい音声コンテンツを加える方法。
【請求項6】
前記ビデオドキュメントの前記劣化エリアの前記位置を前記再生装置(2.1)によって受信し、前記テキストを表示する前記グラフィカルウインドウを前記劣化エリアの中に位置させるステップを含むことを特徴とする請求項4記載の新しい音声コンテンツを加える方法。
【請求項7】
前記オーディオビジュアルドキュメントのオリジナルサウンドトラックを構成するオーディオコンテンツを送信するステップと、前記ビデオドキュメントの再生(4.3)中に前記オーディオコンテンツを再生するステップと、を含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の新しい音声コンテンツを加える方法。
【請求項8】
オーディオビジュアルドキュメントから得られるビデオドキュメントを受信する手段(2.12)と、音声コンテンツを取得して記憶する手段(2.5、2.8)とを含むビューイング装置(2.1)であって、
前記受信したビデオドキュメントの特定の画像は少なくとも1つの劣化エリア及び少なくとも1つの非劣化エリアを有し、前記取得する手段(2.5)は、タイムマーカによって決められた時に少なくとも1つの音声コンテンツを取得し、前記タイムマーカは前記ビデオドキュメントの再生中(4.3)に表示手段(2.11)によって表示されるビジュアル要素を含む画像のビデオドキュメントのゾーンを規定し、前記ビジュアル要素は少なくとも1つの非劣化エリアに現れ、前記ビューイング装置はさらに、前記少なくとも1つの新たに取得した音声コンテンツと、当該音声コンテンツに関連する前記タイムマーカとを送信する手段(2.12、2.9)を含むことを特徴とする、前記ビューイング装置(2.1)。
【請求項9】
前記受信手段(2.12)は前記新しい音声コンテンツの音声を含むテキストと該テキストに関連する複数のタイムマーカとを受信し、前記表示手段(2.11)は、前記ビデオドキュメントの再生中に、前記受信したタイムマーカによって示された時に前記テキストの少なくとも一部を表示することを特徴とする請求項8記載のビューイング装置(2.1)。
【請求項10】
前記受信手段(2.12)は前記受信したテキストに付けられた属性と該テキストに関連する複数のタイムマーカのリストとを受信し、前記表示手段(2.11)は前記ビデオドキュメントの再生中に、前記受信したタイムマーカによって示された時に、受信した少なくとも1つの属性を表示することを特徴とする請求項9記載のビューイング装置(2.1)。
【請求項11】
前記表示手段(2.11)は前記ビデオドキュメントの画像の劣化エリア内に位置された少なくとも1つのグラフィカルウインドウ内に前記テキストを表示することを特徴とする請求項9記載のビューイング装置(2.1)。
【請求項12】
前記ビデオドキュメントの画像の劣化エリアを検出して、前記テキストを表示する前記グラフィカルウインドウを前記劣化エリアの中に位置させる手段をさらに含むことを特徴とする請求項11記載のビューイング装置(2.1)。
【請求項13】
前記受信手段(2.12)は前記ビデオドキュメントの前記劣化エリアの前記位置を受信し、前記テキストを表示する前記グラフィカルウインドウを前記劣化エリアの中に位置させることを特徴とする請求項11記載のビューイング装置(2.1)。
【請求項14】
前記受信手段(2.12)は前記オーディオビジュアルドキュメントの前記オリジナルサウンドトラックを構成するオーディオコンテンツを受信し、前記ビューイングデバイス(2.1)は前記ビデオドキュメントの再生(4.3)中に前記オーディオコンテンツを再生する手段を含むことを特徴とする請求項8ないし13のいずれかに記載のビューイング装置(2.1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−a】
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【図5−b】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−507865(P2013−507865A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533543(P2012−533543)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062766
【国際公開番号】WO2011/045116
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】1−5, rue Jeanne d’Arc, 92130 ISSY LES MOULINEAUX, France
【Fターム(参考)】