説明

音声処理装置および音声処理方法並びにプログラム、音声取得装置

【課題】音声信号から、該音声信号を取得した音声信号取得装置における駆動装置の動作に起因する雑音を適切に除去する。
【解決手段】音声付き動画撮像装置において、雑音期間設定部122は、撮像により取得された音声信号Aにおける、レンズを駆動する駆動部に対する駆動命令S1のタイミングからの所定の期間である第1の期間の終点(t1またはt2)から、該駆動部が上記駆動命令に応じた駆動を停止した時点t3までの期間である第2の期間を設定する。雑音レベル推定部124は、雑音期間設定部122が設定した第2の期間の信号を用いて雑音レベルの推定を行う。雑音除去部126は、雑音推定部124により推定した雑音レベルを用いて、第2の期間の信号に対して雑音の除去を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声信号から雑音、特に駆動装置の動作に起因する雑音を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
雑音が混入した音声信号における雑音レベルの推定を、無音期間だけではなく、有音期間においても行う手法が知られている。有音期間における雑音レベルを推定する方法として、該期間における平滑された信号パワースペクトルの時系列の最小値や平均値を該期間の雑音レベルの推定値として算出する手法が知られている(特許文献1)。
【0003】
有音期間における雑音の推定は、例えば、音声付き動画撮像機能を有する撮像装置などが取得した音声信号に対して行われる。これらの装置は、フォーカス機構、ズーム機構、絞り機構、シャッター機構など、部品を駆動する駆動装置を備え、撮像中にこれらの機構を動作させた場合に、駆動装置の駆動動作に起因した雑音は、音声信号に混入してしまうからである。
【0004】
特許文献2、特許文献3、特許文献4には、上述したような撮像装置が取得した音声信号から駆動装置の駆動動作に起因する雑音を除去する手法が開示されている。これらの手法は、駆動装置の動作期間において、雑音レベルの推定と雑音の除去を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−75536号公報
【特許文献2】特開2006−279185号公報
【特許文献3】特開2005−228400号公報
【特許文献4】特開2008−058343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、駆動装置の動作期間について考える。例えば、駆動装置は、ユーザのズーム調整操作や、シャッター押下操作などにより駆動を開始する。この場合、ユーザの操作が駆動命令であると言える。または、撮像装置によっては、例えば制御部がユーザの操作に応じて駆動命令を発行し、駆動装置が、制御部からの駆動命令に従って駆動を開始する場合もある。
【0007】
いずれの場合も、駆動命令によって、駆動装置が駆動を開始する。この駆動命令のタイミングから、駆動装置が駆動を開始するまでには遅延時間が存在する。この遅延時間に該当する期間内においては、駆動がまだ開始されていないため、駆動に起因する雑音は発生しない。
【0008】
したがって、駆動装置の動作期間において雑音レベルの推定と雑音の除去を行う際に、上記遅延時間に該当する期間も駆動装置の動作時間に含めてしまうと、雑音レベルの推定と除去を適切に行うことができないという問題がある。具体的には、雑音が実際に発生していない期間を含む期間の信号から雑音レベルを推定するため、推定された雑音レベルが過小になり、その結果、雑音が発生した期間に対する雑音が十分に除去されないこととなる。さらに、雑音が発生していない期間においても雑音除去を行ってしまうため、却って音質を劣化させてしまう。
【0009】
さらに、駆動装置が駆動を開始した直後では、雑音がまだ小さい。時間の経過と共に、この雑音は徐々に大きくなり、所定期間を経てほぼ一定値に達する。そのため、駆動装置が駆動を開始した直後の期間も、雑音レベルの推定と雑音の除去の対象期間に含めてしまうと、推定された雑音レベルは、駆動装置が駆動を開始した直後の期間に対しては過大なものとなり、後の期間に対しては過小なものとなるため、雑音の除去を適切に行うことができない。
【0010】
また、駆動装置によって、駆動を開始した直後では雑音が最も大きく、その後雑音が徐々に小さくなり、所定期間を経てほぼ一定値に達する場合もある。この場合、駆動装置が駆動を開始した直後の期間を、雑音レベルの推定と雑音の除去の対象期間に含めてしまうと、推定された雑音レベルは、駆動装置が駆動を開始した直後の期間に対しては過小なものとなり、後の期間に対しては過大なものとなるため、雑音の除去を適切に行うことができない。
【0011】
このように、雑音レベルの推定と雑音除去の期間の始点が適切ではないと、雑音除去を適切に行うことができないという問題がある。
【0012】
駆動の停止のメカニズムは、撮像装置や機構の種類によって異なるが、概して2つのパターンに分けられる。1つは、駆動装置が駆動停止命令に応じて駆動を停止するパターンである。もう1つは、駆動停止命令の発行がなされず、駆動装置は、自主的に駆動を停止するパターンである。なお、駆動停止命令も、駆動命令と同様に、ユーザが行った操作そのものである場合と、制御部が発行したものである場合がある。
【0013】
いずれのパターンにおいても、駆動装置が駆動を停止しても、駆動のためのモータなどの回転が即座に完全に止まるわけではないため、駆動装置が駆動を停止した直後では、雑音がまだ存在する。この雑音は、上述したほぼ一定値から、時間の経過と共に徐々に小さくなる。
【0014】
そのため、駆動装置が駆動を停止した時点から、雑音が完全に無くなった時点までの期間も、雑音レベルの推定と雑音除去の期間に含めてしまうと、同様に、上述した問題が生じる。
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、音声信号から、駆動装置の動作に起因する雑音を適切に除去するための技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の1つの態様は、音声取得装置が取得した音声信号から雑音を除去する音声処理装置である。この音声取得装置は、所定の部品と、該部品を駆動する駆動部とを有し、音声信号を取得する際に、駆動部による上記部品の駆動が生じうるものであり、本発明の該態様の音声処理装置は、上記駆動に起因する雑音を除去するためのものである。該音声処理装置は、雑音期間設定部と、雑音推定部と、雑音除去部を備える。
【0017】
雑音期間設定部は、音声信号における第2の期間を設定する。雑音推定部は、雑音期間設定部が設定した第2の期間の信号を用いて雑音レベルの推定を行う。雑音除去部は、雑音推定部により推定した雑音レベルを用いて、第2の期間の信号に対して雑音の除去を行う。
【0018】
「第2の期間」は、駆動部に対する駆動命令のタイミングから所定の第1の期間が経過した時点と、駆動部が駆動命令に応じた駆動を停止した時点との間隔である
【0019】
本発明の第2の態様は、音声取得装置である。この音声取得装置は、所定の部品と、該部品を駆動する駆動部と、音声信号を取得する音声信号取得部、記録部とを備え、音声信号取得部により音声信号を取得する際に、駆動部による部品の駆動が生じうる。
【0020】
記録部は、音声取得部による音声信号の取得中に駆動部に対して発行された駆動命令のタイミングを示す情報と、駆動部が、該駆動命令に応じた駆動を停止した時点を示しうる情報とを、音声信号取得部により取得された音声信号に付加して記録する。
【0021】
なお、上記態様の音声処理装置、音声取得装置を方法やシステムなどに置き換えて表現したものや、上記方法をコンピュータに実行せしめるプログラムや、該音声処理装置または音声取得装置を備えた装置なども、本発明の態様としては有効である。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる技術によれば、音声取得装置に備えられた駆動部の駆動動作に起因する雑音を適切に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明にかかる技術の原理を説明するための図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態にかかる撮像装置を示す図である。
【図3】図1に示す撮像装置における音声処理部を示す図である。
【図4】図3に示す音声処理部により処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施の形態にかかる撮像装置を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態にかかる音声処理装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェアは、CPU、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェアは、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0025】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non−transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0026】
本発明の具体的な実施の形態を説明する前に、まず、図1を参照して、本発明にかかる技術の原理を説明する。なお、以下の説明において、「駆動命令のタイミング」は、駆動命令が発行されたタイミングと、駆動命令を受けたタイミングのいずれかを意味する。
【0027】
図1は、横軸が時間を示し、縦軸が音声信号Aのサンプル値を示す。音声信号Aは、駆動装置を備えた録音装置や録画装置などの音声取得装置により取得したものであり、その取得中に駆動装置による駆動がなされ、該駆動に起因する雑音が混入している。
【0028】
図1におけるタイミングt0は、駆動命令のタイミングである。駆動装置が駆動命令を受けると当該部品の駆動を開始する。駆動命令のタイミングから、駆動装置が駆動を開始するタイミングまで、遅延時間がある。図中タイミングt1は、駆動装置が駆動を開始したタイミングである。
【0029】
図示のように、タイミングt0からタイミングt1の間は、雑音が発生せず、タイミングt1において雑音が発生し始める。この雑音は、徐々に大きくなり、タイミングt2で所定のレベルになる。タイミングt0からタイミングt1の期間と、タイミングt1からタイミングt2までの期間を、それぞれ期間T0と第1の期間T1とする。また、期間T0と第1の期間T1を合わせた期間を、期間T2とする。
【0030】
タイミングt3において、駆動装置が駆動を停止する。図示のように、タイミングt2からタイミングt3までの期間(期間T3)において、雑音レベルがほぼ一定である。
【0031】
駆動装置が駆動を停止した時点(タイミングt3)から、雑音は、徐々に小さくなり、タイミングt4で無くなる。タイミングt3からタイミングt4までの期間を、期間T5とする。
【0032】
このように、音声取得装置による音声信号の取得中に、駆動装置による駆動が生じた場合に、取得した音声信号において、駆動命令のタイミング(タイミングt0)から、該駆動命令に応じた駆動が停止された時点(タイミングt3)までの期間(期間T4)内において、無雑音の期間(期間T0)、雑音レベルが小さい期間(期間T1)、雑音レベルがほぼ一定である期間(期間T3)が存在する。さらに、駆動装置が駆動を停止した時点(タイミングt3)の直後でも、雑音レベルが小さい期間(期間T5)が存在する。
【0033】
このような音声信号Aに対して、本発明にかかる技術は、期間T4における、タイミングt0から所定の第1の期間が経過した時点から、駆動装置が駆動を停止したタイミングt3までの期間(第2の期間)の信号を用いて雑音レベルを推定し、推定した雑音レベルを用いて、該第2の期間の信号に対して雑音の除去を行う。ここで、第1の期間と第2の期間を説明する。
【0034】
<第1の場合:第1の期間=期間T0>
この場合、第2の期間は、期間T1と期間T3からなる。すなわち、この場合、本発明にかかる技術は、期間T4における無雑音の期間T0を除いた期間を第2の期間として、該第2の期間の信号のみを用いて雑音レベルを推定し、推定した雑音レベルで該第2の期間の信号に対して雑音の除去を行う。
【0035】
これにより、雑音レベルの推定と雑音の除去の期間が、無雑音の期間T0を含まないため、期間T0に対して行うべきではない雑音除去を回避すると共に、期間T3および期間T4における雑音除去の不足を改善することができる。
【0036】
<第2の場合:第1の期間=「期間T0+期間T1」>
この場合、第2の期間は、期間T3のみとなる。すなわち、この場合、期間T0に加え、雑音がまだ小さい期間T1も除いた期間を第2の期間として、該第2の期間の信号のみを用いて雑音レベルを推定し、推定した雑音レベルで該第2の期間の信号に対して雑音の除去を行う。
【0037】
これにより、雑音レベルの推定と雑音の除去の期間が、無雑音の期間T0と、雑音レベルがまだ小さい期間T1とのいずれも含まないため、期間T3における雑音除去の不足をより改善することができる。
【0038】
なお、この場合、期間T1は、長さが短いと共に、雑音レベルが小さいため、期間T1に対して雑音レベルの推定と雑音の除去を行わなくてもよいが、音質をより向上させるためには、期間T1に対しても、雑音レベルの推定と雑音の除去を行うことが好ましい。但し、この場合、期間T1と期間T3とに対して、別々に雑音レベルの推定と雑音の除去を行う。具体的には、期間T1の信号のみを用いて雑音レベルを推定し、期間T3の信号のみを用いて雑音レベルを推定する。そして、期間T1の信号から推定された雑音レベルで期間T1の信号に対して雑音除去を行い、期間T3から推定された雑音レベルで期間T3の信号に対して雑音除去を行う。
【0039】
上記第1の場合と第2の場合のいずれにおいても、さらに、駆動装置が駆動を停止した時点(タイミングt3)から、雑音が無くなる時点(タイミングt4)までの期間T5に対しても、雑音レベルの推定と雑音の除去を行うことが好ましい。このときも、期間T5の信号のみを用いて雑音レベルを推定し、推定された雑音レベルで期間T5の信号に対して雑音の除去を行う。
【0040】
これにより、期間T5における雑音が除去されるため、音質の一層の向上を図ることができる。また、タイミングt3の前の期間(期間T3のみ、または「期間T1+期間T3」)と、期間T5において、別々に雑音レベルの推定と雑音の除去が行われ、互いに影響されないため、雑音除去が適切にできる。
【0041】
ここで、各期間の特定手法を説明する。なお、上述した各場合において、特定する必要のある期間が異なる。なお、期間の特定は、該期間の始点と終点の特定と同様の意味である。
【0042】
上述した第1の場合、すなわち、「期間T2+期間T3」を第2の期間として、該第2の期間の信号を用いて雑音レベルを推定し、推定した雑音レベルで該第2の期間の信号に対して雑音除去を行う場合において、タイミングt0、タイミングt1、タイミングt3を特定する必要がある。
【0043】
また、第2の場合、すなわち、期間T3を第2の期間とする場合には、タイミングt0、タイミングt2、タイミングt3を特定する必要がある。第2の場合において、さらに期間T2に対しても雑音レベルの推定と雑音の除去を行うときには、第2の場合においてもタイミングt1を特定する必要がある。
【0044】
また、期間T5に対しても雑音レベルの推定と雑音の除去を行うときには、タイミングt4を特定する必要がある。
【0045】
以下、各タイミングの特定手法を説明する。期間の特定に際しては、必要なタイミングについて、該タイミングの特定手法を用いればよい。また、タイミングの特定は、リアルタイムで処理を行う場合と、既に取得した音声信号に対して処理を行う場合とで異なる。「リアルタイムで処理を行う」とは、音声取得装置による音声信号の取得中に雑音レベルの推定と雑音の除去を行うことを意味する。ここで、まず、リアルタイムで処理を行う場合について説明する。
【0046】
<<タイミングt0の特定>>
タイミングt0は、駆動命令のタイミングであり、駆動命令に該当するユーザ操作がなされたタイミング、または制御部から駆動命令が発行されたタイミング、または駆動装置が駆動命令を受けたタイミングをタイミングt0とすればよい。
【0047】
<<タイミングt1の特定>>
タイミングt1は、駆動装置が駆動を開始するタイミングである。
【0048】
音声取得装置の設計者は、駆動命令のタイミングから、駆動装置が駆動を開始する時点までの時間の長さ(遅延時間)を設定することや、またはシミュレーションなどによって把握することが可能であるため、予め遅延時間を設定することができる。さらに、通常のこの種の遅延時間を設定するようにしてもよい。
【0049】
そのため、駆動命令のタイミングt0から、予め設定された長さ(遅延時間)が経過した時点をタイミングt1とすればよい。
【0050】
また、予め設定された遅延時間に基づいてタイミングt1を特定するのではなく、タイミングt0から、雑音レベルの推定を行い、推定された雑音レベルが所定の閾値に達した時点をタイミングt1としてもよい。この閾値は、雑音が出始める時点の雑音レベルを判定するためのものであるため、例えば無雑音の期間での信号レベルより若干大きい値に設定すればよい。
【0051】
<<タイミングt2の特定>>
タイミングt2は、駆動装置が駆動を開始した後に、雑音がほぼ一定のレベルに達した時点である。
【0052】
タイミングt0からタイミングt2の長さは、上記遅延時間より長く、さらに、上記遅延時間と同様に、予め設定することが可能である。したがって、駆動命令のタイミングt0から、予め設定された長さの時間が経過した時点をタイミングt2と設定すればよい。
【0053】
なお、タイミングt1とタイミングt2の両方とも特定する必要のある場合には、タイミングt1とタイミングt2に対して夫々設定された長さ(第1の長さと第2の長さ)を用いて、タイミングt0から第1の長さが経過した時点と、タイミングt0から第2の長さが経過した時点と、をそれぞれタイミングt1とタイミングt2とすればよい。
【0054】
もちろん、タイミングt1についてはタイミングt0からの長さ(第1の長さ)が設定され、タイミングt2についてはタイミングt1からの長さ(第2の長さ)が設定されるようにし、タイミングt0から第1の長さが経過した時点と、タイミングt1から第2の長さが経過した時点と、をそれぞれタイミングt1とタイミングt2とすればよい。
【0055】
さらに、タイミングt2の特定も、予め設定された長さに基づいてなされるのではなく、タイミングt0から、またはタイミングt1から雑音レベルの推定を行い、推定された雑音レベルが所定の閾値に達した時点をタイミングt2に特定するようにしてもよい。当然ながら、この閾値は、タイミングt1を特定するための閾値より高く設定される。
<<タイミングt3の特定>
タイミングt3は、駆動装置が駆動を停止したタイミングである。駆動装置が自主的に駆動を停止する場合には、駆動装置が駆動を停止した時点をタイミングt3とすればよい。
【0056】
ユーザ操作によりなされた駆動停止命令や、制御部などが発行した駆動停止命令に応じて駆動を停止する場合にも、駆動装置が駆動を停止した時点をタイミングt3とすることができる。さらに、駆動停止命令がなされた時点から、予め設定された所定の長さの時間が経過した時点をタイミングt3としてもよい。
<<タイミングt4の特定>>
【0057】
タイミングt4は、駆動装置が駆動を停止した後、雑音が無くなったタイミングである。このタイミングについても、タイミングt3から予め設定された所定の長さの時間が経過した時点とすることができる。
【0058】
または、タイミングt3から雑音レベルの推定を行う、推定された雑音レベルが所定の閾値まで下がった時点を、タイミングt4に特定するようにしてもよい。この閾値は、タイミングt1を特定するときの閾値と同様に、例えば無雑音の期間での信号レベルより若干大きい値に設定すればよい。
【0059】
なお、上記では、タイミングt3とタイミングt4について、タイミングt3を先に特定してからタイミングt4を特定する手法を説明したが、タイミングt4を先に特定してからタイミングt3としてもよい。
<<タイミングt4を先に特定してからタイミングt3を特定する手法>>
【0060】
この場合、既に特定したタイミングt2から雑音レベルの推定を行う。そして、推定された雑音レベルが所定の閾値に下がった時点をタイミングt4とする。この所定の閾値は、上述した、タイミングt3から雑音レベルを推定することによってタイミングt4を特定する際の閾値より大きい値に設定される。
【0061】
タイミングt4を特定した後、タイミングt4から所定時間遡った時点をタイミングt3とすればよい。
【0062】
なお、この場合、タイミングt4において推定された雑音レベルが、期間T3及び期間T5の信号から推定されたものであるので、期間T3と期間T5の雑音除去に使用すると、期間T3については雑音の除去が不足し、期間T5については雑音の除去が過度になされることになる。そのため、タイミングt3とタイミングt4を特定すると、タイミングt2から推定した雑音レベルを破棄し、タイミングt2からタイミングt3までの期間(期間T3)の信号と、タイミングt3からタイミングt4までの期間(期間T5)の信号とに対して別々に雑音レベルを推定し、推定された雑音レベルで夫々の期間の信号に対して雑音除去を行う必要がある。
【0063】
あるいは、タイミングt4を特定するためのタイミングt2から雑音レベルを推定する際に、所定の時間長(例えば数十ミリ秒)が経過する度にその時点までの推定結果(雑音レベル)を記憶する。そして、タイミングt4、そしてタイミングt3が特定されると、一時記憶した複数の推定結果から、タイミングt3までの推定結果を期間T3の雑音レベルとして用い、期間T3の信号に対して雑音除去を行う。期間T5については、タイミングt3から雑音レベルの推定をやり直して、推定した雑音レベルで該期間の信号に対して雑音除去を行う。
【0064】
以上にて、リアルタイムで処理を行う場合の各期間の特定手法を説明した。既に取得した音声信号に対して処理を行う場合について説明する前に、本発明にかかる音声取得技術を説明する。
【0065】
本発明にかかる音声取得技術は、音声信号を記録する際に、音声信号の取得中に駆動部に対して発行された駆動命令のタイミングを示す情報と、駆動部が、駆動命令に応じた駆動を停止したタイミングを示しうる情報とを、音声信号に付加して記録する。
【0066】
「駆動部が、駆動命令に応じた駆動を停止したタイミングを示しうる情報」とは、駆動部が駆動を停止したタイミングそのものを示す情報であってもよいし、該タイミングを算出可能な情報、例えば駆動停止命令のタイミングを示す情報であってもよい。駆動停止命令のタイミングを示す情報である場合には、該タイミングから所定長の時間が経過した時点を、駆動命令に応じた駆動を停止したタイミングを算出すればよい。
【0067】
すなわち、本発明にかかる音声取得技術による取得された音声信号には、駆動命令のタイミングを示す情報と、駆動部が、駆動命令に応じた駆動を停止したタイミングを示しうる情報とが含まれている。そのため、既に取得された音声信号から、上述した各期間を特定することができる。そのため、本発明にかかる音声取得技術によれば、リアルタイムではなく、既に取得した音声信号に対して雑音レベルの推定と雑音の除去を行う場合にも、本発明にかかる音声処理技術を適用することができ、ひいては、適切な雑音除去を実現することができる。
【0068】
以上の説明を踏まえて、本発明の具体的な実施の形態を説明する。
<第1の実施の形態>
図2は、本発明の第1の実施の形態にかかる撮像装置100を示す。撮像装置100は、音声付き動画を撮像可能なものであり、レンズ102、操作部104、録画部106、録音部108、駆動部110、音声処理部120、合成部130、記録部140を備える。
【0069】
操作部104は、録画指示、フォーカス操作、ズーム操作など、ユーザによる各種操作を行うためのものである。
【0070】
録画部106は、操作部104と接続されており、ユーザが操作部104を介して行った録画指示S0に応じてレンズ102から画像を取込み、画像信号Vを合成部130に出力する。
【0071】
録音部108は、操作部104と接続されており、図示しないマイクロフォンなどを備える。録音部108は、ユーザが操作部104を介して行った録画指示S0に応じて音声を取り込み、音声信号Aを音声処理部120に出力する。
【0072】
駆動部110は、レンズ102及び操作部104と接続されており、ユーザが行う各種操作のうち、レンズ102を駆動する必要のある操作(以下駆動命令S1という)に応じてレンズ102の駆動を開始し、その後、自主的に、例えば所定時間が経過すると駆動を停止する。なお、駆動命令S1の種類に応じて上記所定時間の長さが異なり得る。
【0073】
音声処理部120は、録音部108と接続されており、録音部108からの音声信号Aに対して、録画中における駆動部110の駆動動作に起因する雑音の除去処理をリアルタイムで行い、音声信号A2を得て合成部130に出力する。
【0074】
合成部130は、録画部106及び音声処理部120と接続されており、録画部106からの画像信号Vと、音声処理部120からの音声信号A1とを合成し、音声付き動画信号(以下単に動画信号ともいう)AVを得て、記録部140に出力する。
【0075】
記録部140は、合成部130と接続されており、図示しないメモリカードなどの記録媒体を備え、合成部130からの動画信号AVを記録媒体に記録する。
【0076】
本実施の形態において、音声処理部120は、さらに操作部104および駆動部110と接続されている。操作部104が駆動部110に出力する駆動命令S1は、音声処理部120にも出力される。また、駆動部110は、レンズ102の駆動を停止した際に、停止したことを示す停止信号Qを音声処理部120に出力する。
【0077】
図3は、撮像装置100における音声処理部120を示す。音声処理部120は、雑音期間設定部122、雑音レベル推定部124、雑音除去部126、出力部128を備え、録音部108からの音声信号Aは、これらの機能ブロックに入力される。各機能ブロックの説明に際して、録音部108からの音声信号Aが図1に示す音声信号Aであるとする。
【0078】
雑音期間設定部122は、操作部104からの駆動命令S1と、停止信号Qが入力され、雑音レベル推定部124、雑音除去部126、出力部128に対してタイミングt1、タイミングt2、タイミングt3、タイミングt4の設定を行う。
【0079】
雑音期間設定部122は、駆動命令S1が入力されたタイミングを図1におけるタイミングt0として、駆動命令S1が入力されると、計時を開始する。そして、予め設定された所定の第1の長さの時間が経過すると、期間T1の始点、すなわち、駆動部110が駆動を開始したタイミングt1を示す情報を雑音レベル推定部124、雑音除去部126、出力部128に出力する。
【0080】
雑音期間設定部122は、計時を続け、予め設定された、上記第1の長さより長い第2の長さの時間が経過すると、期間T1の終点(=期間T3の始点)、すなわち、駆動による雑音がほぼ一定レベルに達したタイミングt2を示す情報を雑音レベル推定部124、雑音除去部126、出力部128に出力すると共に、計時した時間をクリアする。
【0081】
雑音期間設定部122は、停止信号Qが入力されると、このタイミングを示す情報を、期間T3の終点(=期間T5の始点)、すなわち、駆動部110が駆動を停止し、雑音が小さくなり始めるタイミングt3として雑音レベル推定部124、雑音除去部126、出力部128に出力すると共に、計時を再開する。
【0082】
雑音期間設定部122は、計時の再開から、所定の第3の長さの時間が経過すると、期間T5の終点、すなわち雑音が無くなったタイミングt4を示す情報を雑音レベル推定部124、雑音除去部126、出力部128に出力する。
【0083】
雑音レベル推定部124は、雑音期間設定部122からタイミングt1を示す情報が入力されると、該タイミングt1から雑音レベルの推定を開始する。そして、雑音期間設定部122からタイミングt2を示す情報が入力されると、今までの雑音レベルの推定結果となる雑音レベルL1を雑音除去部126に出力すると共に、タイミングt2からの信号に対して、雑音レベルの推定を開始する。
【0084】
すなわち、タイミングt2において、雑音レベル推定部124は、音声信号Aにおける期間T1の信号から推定した雑音レベルL1を得て雑音除去部126に出力すると共に、期間T3の信号に対する雑音レベルの推定を始める。
【0085】
そして、雑音期間設定部122から、駆動部110が駆動を停止したタイミングt3を示す情報が入力されると、雑音レベル推定部124は、今までの雑音レベルの推定結果となる雑音レベルL3を雑音除去部126に出力すると共に、タイミングt3からの信号に対して、雑音レベルの推定を開始する。
【0086】
すなわち、タイミングt3において、雑音レベル推定部124は、音声信号Aにおける期間T3の信号から推定した雑音レベルL3を得て雑音除去部126に出力すると共に、期間T5の信号に対する雑音レベルの推定を始める。
【0087】
そして、雑音期間設定部122から、雑音が無くなったタイミングt4を示す情報が入力されると、雑音レベル推定部124は、今までの雑音レベルの推定結果となる雑音レベルL5を雑音除去部126に出力すると共に、雑音レベルの推定を停止する。
【0088】
すなわち、タイミングt4において、雑音レベル推定部124は、音声信号Aにおける期間T5の信号から推定した雑音レベルL5を得て雑音除去部126に出力すると共に、雑音レベルの推定を停止する。
【0089】
雑音除去部126は、図示しない内部バッファを有し、雑音期間設定部122からタイミングt1を示す情報が入力されると、該タイミングt1からの信号を内部バッファに保持する。
【0090】
そして、雑音期間設定部122からタイミングt2を示す情報が入力、さらに、雑音レベル推定部124からタイミングt1からタイミングt2までの期間(T1)に対して推定された雑音レベルL1が入力されると、雑音除去部126は、該雑音レベルL1を用いて期間T1の信号に対して雑音除去処理を行い、処理後の信号を出力部128に出力する。
【0091】
出力部128は、図示しない内部バッファを有し、音声信号Aを一時的に保持すると共に、雑音期間設定部122から出力された各タイミングの情報に応じて、当該期間の信号を雑音除去部126からの信号に置き換えて出力する。
【0092】
具体的には、出力部128は、タイミングt1を示す情報が入力されるまで、音声信号Aをそのまま出力する。すなわち、音声信号Aにおけるタイミングt1までの信号は、そのまま合成部130に出力される。
【0093】
出力部128は、雑音期間設定部122からタイミングt1を示す情報が入力されると、該タイミングから音声信号Aを一時保存する。
【0094】
その後、雑音期間設定部122からタイミングt2を示す情報が入力され、さらに雑音除去部126から、期間T1において雑音除去がなされた信号が入力されると、出力部128は、雑音除去部126からの信号を合成部130に出力すると共に、内部バッファに一時保存した、音声信号Aにおけるタイミングt1からタイミングt2まで(期間T1)の信号を破棄する。
【0095】
これにより、期間T1の信号は、音声信号Aにおける該期間の信号から推定された雑音レベルL1を用いて雑音除去がなされた信号に置き換えられて、合成部130に出力される。
【0096】
その後、雑音期間設定部122からタイミングt3を示す情報が入力され、さらに雑音除去部126から、期間T3において雑音除去がなされた信号が入力されると、出力部128は、雑音除去部126からの信号を合成部130に出力すると共に、内部バッファに一時保存した、音声信号Aにおけるタイミングt2からタイミングt3まで(期間T3)の信号を破棄する。
【0097】
これにより、期間T3の信号は、音声信号Aにおける該期間の信号から推定された雑音レベルL3を用いて雑音除去がなされた信号に置き換えられて、合成部130に出力される。
【0098】
その後、雑音期間設定部122からタイミングt4を示す情報が入力され、さらに雑音除去部126から、T5において雑音除去がなされた信号が入力されると、出力部128は、雑音除去部126からの信号を合成部130に出力すると共に、内部バッファに一時保存した、音声信号Aにおけるタイミングt3からタイミングt4まで(期間T5)の信号を破棄する。
【0099】
これにより、期間T5の信号は、音声信号Aにおける該期間の信号から推定された雑音レベルL5を用いて雑音除去がなされた信号に置き換えられ、合成部130に出力される。
【0100】
その後、駆動部110に対して次の駆動命令がなされたために操作部104から駆動命令S1が入力されるまで、出力部128は、タイミングt4からの信号をそのまま合成部130に出力する。
【0101】
図4は、図3に示す音声処理部120における雑音期間設定部122、雑音レベル推定部124、雑音除去部126による処理の流れを示すフローチャートである。図示のように、雑音期間設定部122は、駆動命令S1が入力されると、該タイミングをタイミングt0に特定し、計時を開始する(S100)。
【0102】
所定の第1の長さの時間が経過すると、雑音期間設定部122は、タイミングt1を示す情報を出力すると共に、計時した時間をクリアして、再び計時を開始する(S102)。
【0103】
雑音レベル推定部124は、雑音期間設定部122からタイミングt1を示す情報が入力されると、タイミングt1から音声信号Aに対して雑音レベルの推定を開始する(S120)。
【0104】
また、雑音除去部126は、雑音期間設定部122からタイミングt1を示す情報が入力されると、音声信号Aにおけるタイミングt1からの信号の保持を開始する(S140)。
【0105】
雑音期間設定部122は、タイミングt1から所定の第2の長さが経過すると、タイミングt2を示す情報を出力すると共に、計時した時間をクリアする(S104)。
【0106】
雑音レベル推定部124は、雑音期間設定部122からタイミングt2を示す情報が入力されると、今までの雑音レベルの推定結果、すなわち期間T1(タイミングt1からタイミングt2まで)の信号から推定された雑音レベルL1を雑音除去部126に出力すると共に、タイミングt2から音声信号Aに対して雑音レベルの推定を開始する(S122)。
【0107】
雑音除去部126は、雑音期間設定部122からタイミングt2を示す情報が入力され、雑音レベル推定部124から雑音レベルL1が入力されると、雑音レベルL1を用いて、保持した、音声信号Aにおける期間T1の信号に対して雑音除去を行って、出力部128に出力する(S142)。
【0108】
雑音期間設定部122は、駆動部110から停止信号Qが入力されると、このタイミングをタイミングt3に特定し、タイミングt3を示す情報を出力すると共に、再び計時を開始する(S106)。
【0109】
雑音レベル推定部124は、雑音期間設定部122からタイミングt3を示す情報が入力されると、今までの雑音レベルの推定結果、すなわち期間T3(タイミングt2からタイミングt3まで)の信号から推定された雑音レベルL3を雑音除去部126に出力すると共に、タイミングt3から音声信号Aに対して雑音レベルの推定を開始する(S124)。
【0110】
雑音除去部126は、雑音期間設定部122からタイミングt3を示す情報が入力され、雑音レベル推定部124から雑音レベルL3が入力されると、雑音レベルL3を用いて、保持した、音声信号Aにおける期間T3の信号に対して雑音除去を行って、出力部128に出力する(S144)。
【0111】
雑音期間設定部122は、タイミングt3から所定の長さの時間が経過すると、タイミングt4を示す情報を出力すると共に、計時した時間をクリアする(S108)。その後、再び駆動命令S1が入力されるまで待機する。
【0112】
雑音レベル推定部124は、雑音期間設定部122からタイミングt4を示す情報が入力されると、今までの雑音レベルの推定結果、すなわち期間T5(タイミングt3からタイミングt4まで)の信号から推定された雑音レベルL5を雑音除去部126に出力する(S126)。その後、雑音期間設定部122から再びタイミングt1を示す情報が入力されるまで待機する。
【0113】
雑音除去部126は、雑音期間設定部122からタイミングt4を示す情報が入力され、雑音レベル推定部124から雑音レベルL5が入力されると、雑音レベルL5を用いて、保持した、音声信号Aにおける期間T5の信号に対して雑音除去を行って、出力部128に出力する(S146)。その後、雑音期間設定部122から再びタイミングt1を示す情報が入力されるまで待機する。
【0114】
本実施の形態の撮像装置100によれば、図1に示すような、駆動に起因する雑音が含まれた音声信号Aにおける期間T0の信号、すなわち、駆動命令の直後の、駆動部110が駆動を開始したタイミングt1までの期間の信号は雑音除去がなされない。また、期間T1の信号、すなわち、駆動部110が駆動を開始したタイミングt1から雑音がほぼ一定になる時点(タイミングt2)までの期間の信号は、該期間の信号から推定された雑音レベルを用いた雑音除去がなされる。また、期間T3の信号、すなわち、駆動部110による駆動に起因する雑音がほぼ一定になってから、駆動部110が駆動を停止したタイミングt3までの期間の信号は、該期間の信号から推定された雑音レベルを用いた雑音除去がなされる。また、期間T5の信号、すなわち、駆動部110が駆動を停止したタイミングt3から、雑音が消える時点(タイミングt4)までの信号は、該期間の信号から推定された雑音レベルを用いた雑音除去がなされる。
【0115】
従って、雑音の除去を行うべきではない期間に対して雑音除去を行ってしまうことを回避し、雑音除去が過度または不足になることなどを改善することができ、ひいては、より良い音質を得ることができる。
<第2の実施の形態>
【0116】
図5は、本発明の第2の実施の形態にかかる撮像装置200を示す。撮像装置200は、音声付き動画を撮像可能なものであり、レンズ102、操作部104、録画部106、録音部108、駆動部110、合成部130、記録部240を備える。撮像装置200は、撮像装置100における音声処理部120が設けられておらず、撮像装置100の記録部140の代わりに記録部240を備える。
【0117】
本実施の形態の撮像装置200において、操作部104からの駆動命令S1は、駆動部110に送信されると共に、記録部240にも送信される。また、駆動部110からの停止信号Qは、記録部240に送信される。
【0118】
合成部130は、録画部106が得た画像信号Vと、録音部108が得た音声信号Aとが入力される。合成部130は、画像信号Vと音声信号Aとを合成して動画信号を得て、記録部240に出力する。なお、合成部130により得られた動画信号に含まれる音声信号は、駆動に起因する雑音の除去がなされていないものであり、撮像装置100における合成部130により得られた動画信号AVと区別するために、AVXと表記する。
【0119】
記録部240は、操作部104からの駆動命令S1のタイミング(図1におけるタイミングt0)を示す情報と、駆動部110からの停止信号Qのタイミング(図1におけるタイミングt3)を示す情報とを、合成部130からの動画信号AVXに付し、図示しない記録媒体に記録する。記録媒体に記録された動画のデータを、AVYと表記している。
【0120】
すなわち、本第2の実施の形態の撮像装置200により取得した動画のデータAVYには、駆動部110に対してなされた駆動命令のタイミングと、駆動部110が、該駆動命令に応じた駆動を停止したタイミングが付されている。そのため、後に、該データに対して、雑音レベルの推定と雑音除去を行う際に、図1に示す各期間の特定が可能であり、ひいては、適切な雑音除去が可能になる。
【0121】
撮像装置200により取得した動画像のデータAVYに対して雑音除去を行う処理については、第3の実施の形態を用いて説明する。
<第3の実施の形態>
【0122】
図6は、本発明にかかる第3の実施の形態の音声処理装置300を示す。音声処理装置300は、図5に示す撮像装置200により得られた動画像のデータAVYに対して、撮像装置200における駆動装置の駆動に起因する雑音を除去するためのものであり、分離部310、バッファ320、雑音期間設定部330、雑音レベル推定部340、雑音除去部350、再合成部360を備える。
【0123】
分離部310は、動画像のデータAVYに対して画像と音声の分離を行って画像データVと音声データA2を得る。分離部310は、画像データVを再合成部360に出力し、音声データA2をバッファ320に出力する。
【0124】
上述したように、動画像のデータAVYには、駆動命令のタイミングと、駆動が停止したタイミングとを示す情報が付されている。これらの情報は、音声データA2に含まれている。すなわち、音声データA2は、図1に示す音声信号Aのデータと、タイミングt0及びタイミングt3を示す情報とを含む。
【0125】
雑音期間設定部330は、バッファ320に一時的に格納された音声データA2から、タイミングt0及びタイミングt3を示す情報を読み出して、図1に示すタイミングt1、タイミングt2、タイミングt4を算出する。そして、雑音期間設定部330は、タイミングt1、タイミングt2、タイミングt3、タイミングt4を示す情報を雑音レベル推定部340に出力する。
【0126】
各タイミングの特定手法は、撮像装置100における音声処理部120の雑音期間設定部122による手法と同様であり、ここで詳細な説明を省略する。
【0127】
雑音レベル推定部340は、雑音期間設定部330からタイミングt1、タイミングt2、タイミングt3、タイミングt4を示す情報が入力されると、バッファ320に格納された音声データA2に含まれる音声データAに対して、期間T1、期間T3、期間T5に対して夫々の雑音レベルを推定する。雑音レベル推定部340は、期間T1のデータに対して推定した雑音レベルL1と、期間T3のデータに対して推定した雑音レベルL3と、期間T5のデータに対して推定した雑音レベルL5とを雑音除去部350に出力する。
【0128】
雑音除去部350は、バッファ320に格納された音声データA2に含まれる音声データAを読み出し、必要に応じて雑音除去を行ってから再合成部360に出力する。
【0129】
具体的には、音声データAにおけるタイミングt1までのデータをそのまま再合成部360に出力する。タイミングt1からタイミングt2まで(期間T1)のデータに対しては、雑音レベル推定部340から入力される雑音レベルL1を用いて雑音除去をしてから再合成部360に出力する。また、タイミングt2からタイミングt3まで(期間T3)のデータに対しては、雑音レベル推定部340から入力される雑音レベルL3を用いて雑音除去をしてから再合成部360に出力する。タイミングt3からタイミングt4まで(期間T5)のデータに対しては、雑音レベル推定部340から入力される雑音レベルL5を用いて雑音除去をしてから再合成部360に出力する。タイミングt4以降のデータについては、そのまま再合成部360に出力する。
【0130】
再合成部360は、分離部310からの画像データVと、雑音除去部350からの音声データA1とを再び合成して動画像データAVを得る。
【0131】
本実施の形態にかかる音声処理装置300は、リアルタイムではなく、既に取得した音声データに対して雑音レベルの推定と雑音の除去を行う点において、図2に示す第1の実施の形態の撮像装置100における音声処理部120と異なる以外、各機能ブロックが実現する処理の手法などは、音声処理部120と同様であり、音声処理部120と同様の効果を得ることができる。
【0132】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。実施の形態は例示であり、本発明の主旨から逸脱しない限り、上述した各実施の形態に対してさまざまな変更、増減を行ってもよい。これらの変更、増減が行われた変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0133】
例えば、上述した第1と第3の実施の形態において、各タイミング(期間)は、予め設定された各種の長さ(時間)に基づいて特定されるようになっている。これらのタイミングや期間の特定に、本発明にかかる技術の原理を説明した際に述べた他の手法を用いてもよい。
【0134】
また、上述した第1と第3の実施の形態において、期間T1、期間T3、期間T5の夫々について雑音レベルの推定と雑音の除去を行うようにしているが、期間T1、または期間T5、または期間T1と期間T5の両方について雑音レベルの推定と雑音の除去を行わないようにしてもよい。さらに、期間T1と期間T3を分けずに、期間T1と期間T3に対して雑音レベルの推定と除去を行うようにしてもよい。
【0135】
また、第2の実施の形態において、駆動が停止されたタイミングt3を示しうる情報としてタイミングt3そのものを音声信号に付属させるようにしているが、タイミングt3の代わりに、タイミングt3を算出可能な他の情報、例えば駆動停止命令のタイミングを示す情報を音声信号に付加してもよい。
【0136】
また、例えば第1の実施の形態において、雑音レベル推定部124は、雑音レベルの推定の対象となる期間(図1における期間T1、T3、T5)毎に雑音レベルの推定を行い、該期間の終点まで雑音レベルの推定が完了してから該期間の雑音レベルを雑音除去部126に出力している。また、雑音除去部126は、雑音レベル推定部124により推定された雑音レベルを用いて、当該期間の雑音除去をまとめて行うようになっている。より迅速な処理速度を図るために、例えば、雑音レベル推定部124は、雑音レベルの推定を行いながら、所定の時間長(例えば数十ミリ秒)が経過する度にその時点までに推定した雑音レベルを雑音除去部126に出力し、雑音除去部126は、雑音レベル推定部124から雑音レベルを受信する度に、該当する上記所定の時間長の信号に対して雑音除去を行うようにしてもよい。
【0137】
また、本発明にかかる技術の原理を説明する際に、及び各実施の形態において、処理される音声信号の例として図1に示す音声信号Aを用いたが、本発明にかかる技術は、駆動を開始した直後に雑音が最も大きく、その後雑音が徐々に小さくなり、所定期間を経てほぼ一定値に達する駆動装置を有する音声取得装置により取得された音声信号の雑音除去にも適用できる。
【符号の説明】
【0138】
100 撮像装置 102 レンズ
104 操作部 106 録画部
108 録音部 110 駆動部
120 音声処理部 122 雑音期間設定部
124 雑音レベル推定部 126 雑音除去部
128 出力部 130 合成部
140 記録部 200 撮像装置
240 記録部 300 音声処理装置
310 分離部 320 バッファ
330 雑音期間設定部 340 雑音レベル推定部
350 雑音除去部 360 再合成部
S0 録画指示 S1 駆動命令
Q 停止信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の部品と、該部品を駆動する駆動部とを含む音声取得装置であって、音声信号を取得する際に、前記駆動部による前記部品の駆動が生じうる前記音声取得装置が取得した音声信号から、前記駆動に起因する雑音を除去する音声処理装置であって、
前記音声信号に対して、前記駆動部に対する駆動命令のタイミングから所定の第1の期間が経過した時点と、前記駆動部が前記駆動命令に応じた駆動を停止した時点との間隔である第2の期間を設定する雑音期間設定部と、
該雑音期間設定部が設定した前記第2の期間の信号を用いて雑音レベルの推定を行う雑音推定部と、
該雑音推定部により推定した前記雑音レベルを用いて、前記第2の期間の信号に対して雑音の除去を行う雑音除去部とを備えることを特徴とする音声処理装置。
【請求項2】
前記雑音期間設定部は、さらに、
前記第1の期間における、前記駆動部に対する駆動命令のタイミングから所定の第3の期間が経過した時点と、前記第1の期間の終点との間隔である第4の期間を設定し、
前記雑音推定部は、さらに、
前記雑音期間設定部が設定した前記第4の期間の信号を用いて雑音レベルの推定を行い、
前記雑音除去部は、さらに、
前記雑音推定部により推定した前記第4の期間の雑音レベルを用いて、前記第4の期間の信号に対して雑音の除去を行うことを特徴とする請求項1に記載の音声処理装置。
【請求項3】
前記雑音期間設定部は、さらに、
前記第2の期間の終点からの所定の期間である第5の期間を設定し、
前記雑音推定部は、さらに、
前記雑音期間設定部が設定した前記第5の期間の信号を用いて雑音レベルの推定を行い、
前記雑音除去部は、さらに、
前記雑音推定部により推定した前記第5の期間の雑音レベルを用いて、前記第5の期間の信号に対して雑音の除去を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の音声処理装置。
【請求項4】
前記駆動部が、駆動停止命令に応じて駆動を停止するものであるとき、
前記雑音期間設定部は、前記駆動停止命令のタイミングから所定の時間が経過した時点を前記第2の期間の終点に設定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の音声処理装置。
【請求項5】
所定の部品と、該部品を駆動する駆動部とを含む音声取得装置であって、音声信号を取得する際に、前記駆動部による前記部品の駆動が生じうる前記音声取得装置が取得した音声信号から、前記駆動に起因する雑音を除去する音声処理方法において、
前記音声信号に対して、前記駆動部に対する駆動命令のタイミングから所定の第1の期間が経過した時点と、前記駆動部が前記駆動命令に応じた駆動を停止した時点との間隔である第2の期間を設定し、
設定された前記第2の期間の信号を用いて雑音レベルの推定を行い、
推定された前記雑音レベルを用いて、前記第2の期間の信号に対して雑音の除去を行うことを特徴とする音声処理方法。
【請求項6】
前記第1の期間における、前記駆動部に対する駆動命令のタイミングから所定の第3の期間が経過した時点と、前記第1の期間の終点との間隔である第4の期間を設定し、
設定された前記第4の期間の信号を用いて雑音レベルの推定を行い、
推定された前記第4の期間の雑音レベルを用いて、前記第4の期間の信号に対して雑音の除去を行う処理をさらに行うことを特徴とする請求項5に記載の音声処理方法。
【請求項7】
前記第2の期間の終点からの所定の期間である第5の期間を設定し、
設定された前記第5の期間の信号を用いて雑音レベルの推定を行い、
推定された前記第5の期間の雑音レベルを用いて、前記第5の期間の信号に対して雑音の除去を行う処理をさらに行うことを特徴とする請求項5または6に記載の音声処理方法。
【請求項8】
前記駆動部が、駆動停止命令に応じて駆動を停止するものであり、
前記第2の期間の設定に際して、前記駆動停止命令のタイミングから所定の時間が経過した時点を前記第2の期間の終点に設定することを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の音声処理方法。
【請求項9】
所定の部品と、該部品を駆動する駆動部とを含む音声取得装置であって、音声信号を取得する際に、前記駆動部による前記部品の駆動が生じうる前記音声取得装置が取得した音声信号から、前記駆動に起因する雑音を除去する音声処理方法をコンピュータに実行せしめるプログラムであって、
前記音声処理は、
前記音声信号に対して、前記駆動部に対する駆動命令のタイミングから所定の第1の期間が経過した時点と、前記駆動部が前記駆動命令に応じた駆動を停止した時点との間隔である第2の期間を設定し、
設定された前記第2の期間の信号を用いて雑音レベルの推定を行い、
推定された前記雑音レベルを用いて、前記第2の期間の信号に対して雑音の除去を行う処理であることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
所定の部品と、
該部品を駆動する駆動部と、
音声信号を取得する音声信号取得部とを備え、
前記音声信号取得部により音声信号を取得する際に、前記駆動部による前記部品の駆動が生じうる音声取得装置であって、
前記音声取得部による音声信号の取得中に前記駆動部に対して発行された駆動命令のタイミングを示す情報と、前記駆動部が、前記駆動命令に応じた駆動を停止したタイミングを示しうる情報とを、前記音声信号取得部により取得された音声信号に付加して記録する記録部をさらに備えることを特徴とする音声取得装置。
【請求項11】
音声付き動画を撮像する撮像装置であることを特徴とする請求項10に記載の音声取得装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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