音声案内装置
【課題】複数の設備が配置された部屋において、使用者を安全且つ正確に誘導する音声案内装置を提供する。
【解決手段】複数の設備が設けられた空間に設置され、前記空間に存在する使用者に対して、前記複数の設備の少なくともいずれかまで使用者を誘導するための誘導経路とその途上に設けられた他の設備の存在とを伝える誘導メッセージを流すことを特徴とする音声案内装置、または、前記複数の設備の位置に関する情報を入力可能とし、前記入力された前記位置に関する情報に基づいて、前記複数の設備の少なくともいずれかまで使用者を誘導するための誘導経路とその途上に設けられた他の設備の存在とを伝える誘導メッセージが作成され、前記空間に存在する使用者に対して前記誘導メッセージを流すことを特徴とする音声案内装置が提供される。
【解決手段】複数の設備が設けられた空間に設置され、前記空間に存在する使用者に対して、前記複数の設備の少なくともいずれかまで使用者を誘導するための誘導経路とその途上に設けられた他の設備の存在とを伝える誘導メッセージを流すことを特徴とする音声案内装置、または、前記複数の設備の位置に関する情報を入力可能とし、前記入力された前記位置に関する情報に基づいて、前記複数の設備の少なくともいずれかまで使用者を誘導するための誘導経路とその途上に設けられた他の設備の存在とを伝える誘導メッセージが作成され、前記空間に存在する使用者に対して前記誘導メッセージを流すことを特徴とする音声案内装置が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
視覚障害者が使用する部屋、施設、建物において、音声案内装置はその行動を補助する上で有効である。例えば、便器、オストメイト、手洗い器、ベッド、紙巻器などが配置された多目的トイレにおいて、視覚障害者が容易に目的を達するように音声による案内が行われると安全かつ便利である。
【0003】
多目的トイレのように、使用可能な設備が多い場合、それぞれが設置されている位置やその使用方法を一度に音声案内されても使用者は覚えきれない。従って、視覚障害者などがドアを開けて入室した後、目的の設備まで安全且つ円滑に進むためには、そのレイアウトに応じた最適な経路を伝達することが有用である。
【0004】
人体などを検出した場合、記憶されていた第1音声情報が再生され、操作スイッチによる入力に応じて第2音声情報を再生する音声案内装置に関する技術開示例がある(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−62684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、複数の設備が配置された部屋において、使用者を安全且つ正確に誘導する音声案内装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
複数の設備が設けられた空間に設置され、
前記空間に存在する使用者に対して、前記複数の設備の少なくともいずれかまで使用者を誘導するための誘導経路とその途上に設けられた他の設備の存在とを伝える誘導メッセージを流すことを特徴とする音声案内装置が提供される。
【0007】
また、本発明の他の一態様によれば、
複数の設備が設けられた空間に設置され、
前記複数の設備の位置に関する情報を入力可能とし、
前記入力された前記位置に関する情報に基づいて、前記複数の設備の少なくともいずれかまで使用者を誘導するための誘導経路とその途上に設けられた他の設備の存在とを伝える誘導メッセージが作成され、
前記空間に存在する使用者に対して前記誘導メッセージを流すことを特徴とする音声案内装置が提供される。
【0008】
また、本発明のさらに他の一態様によれば、
複数の設備が設けられた空間に設置され、
誘導メッセージのテンプレートにおける可変パラメータが設定可能とされ、
前記可変パラメータを設定することにより、前記複数の設備の少なくともいずれかのまで使用者を誘導するための誘導経路とその途上に設けられた他の設備の存在とを伝える誘導メッセージが完成され、
前記空間に存在する使用者に対して前記誘導メッセージを流すことを特徴とする音声案内装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、複数の設備が配置された部屋において、使用者を安全且つ正確に誘導する音声案内装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施例にかかる音声案内装置の作用を説明するための図であり、同図(a)は多目的トイレ内のレイアウトを表す模式平面図であり、同図(b)は模式斜視図である。
【0011】
多目的トイレの天井や壁などには、音声案内装置100が設置されている。視覚障害者などの使用者がドア16を開けて入室すると、音声案内装置100に設けられたセンサ10がこれを検知する。すると、図1(a)に例示された矢印の経路(1)に沿って便器26まで進むように音声案内装置100のスピーカ14から音声案内が行われる。この時、経路(1)の途上には手洗い器18や紙巻き器20などの設備があることも案内する。
【0012】
使用者は案内に従って左側の壁沿いに進み、音声案内通りに手洗い器18や紙巻器20が、左側の壁にあるのを知るとともにこれらにぶつかることなく便器26にたどり着くことができる。また、使用者は、便器26の使用に先立って、紙巻き器20にトイレットペーパーがあるか否かを触覚により確認することもできる。またさらに、目標(この場合には、便器26)に至る誘導経路の途上にある手洗い器18などの設備の位置を予め知らせることにより、使用者は目標に到達するまでに、誘導経路の途上にある設備を確認しながら進むことができ、自分が間違えずに目標に向かっていることを確認しながら進むことができる。
またこの場合、手洗い器18や紙巻器20の位置を予め案内することにより、便器26を使用後に必ず使用するこれらの設備の位置を使用者に知らせておくという効果も得られる。
このようにして、音声案内に従い安全に便器26の位置に来ると、便器部センサ12が人体を検知して正確な位置を案内することにより、便器26への衝突を防止するとともに便器26の使用に必要な情報、例えば便器26の流し方などを音声案内する。
【0013】
便器26の使用後は、音声案内に従い経路(2)を通り手洗い器18に寄ることができる。手洗い器18を使用後、音声案内に従い経路(3)によりドア16に戻り退出することができる。以上のように、使用者の移動を検知してタイミングよく音声案内が行われるので、設備や壁などに衝突することなく安全に目的を達することができる。また、誘導経路上に手洗い器18などがあることも音声案内することにより、これらの位置も把握でき、ぶつかることなく進むことができる。さらに、便器26などの設備の位置において必要に応じて使用方法や、便器26などの設備の操作ボタンの位置などが音声案内されるので、使用する設備において必要とされる使用方法などの情報を正確に得ることができる。
【0014】
図2は、本発明の具体例にかかる音声案内装置100を表す模式図である。
本具体例の音声案内装置100は、第1のセンサ10、第2のセンサ12、スピーカ14、制御部64、設備の位置データ設定手段15を少なくとも含む。この音声案内装置100は、多目的トイレの天井や壁などに設置することができる。第1のセンサ10は、例えば多目的トイレの室内をほぼ全体を監視しドア16を開けて多目的トイレに入室した使用者を検知する。第2のセンサ12は、例えば便器26の近傍を監視し便器26に到達した使用者を検知する。
なお、本具体例は一体構造とされているが、例えば、センサ10、12、スピーカ14などを別体とした構造であってもよい。この場合には、これら別体の要素の間を有線または無線方式にて接続すればよい。
【0015】
センサ10、12としては、マイクロ波センサ、熱型赤外線センサ、赤外線投光式センサ、超音波センサ、光電センサなどを用いることができる。また、トイレのドア16に設けた開閉検知スイッチ、トイレ鍵部スイッチ、便器26に設けられた温水洗浄便座装置の人体検知センサや着座センサなどを用いることもできる。なお、制御部64については、後に詳細に説明する。
熱型赤外線センサとしては、例えば赤外線を検知して焦電効果を生じるPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)やLiTaO3(タンタル酸リチウム)などを用いることができる。なお、センサは1個でもよいが、室内全体を検知できる人体センサ10と便器部センサ12とに分ける方がより、タイミング良く正確に音声案内ができる。
【0016】
図3は、本具体例の音声案内装置100のブロック図を表わす。入室センサ10及び便器部センサ12から構成されるセンサ部13は、CPU(Central Processing Unit)58に接続されている。破線で表す制御部64は、CPU58、メモリ領域52、再生用IC50、再生用ICの出力信号を増幅する増幅器62、電源回路60などを含む。増幅器62の出力はスピーカ14へ接続され、伝えるべき情報を音声案内する。
【0017】
電源回路60は、CPU58をはじめとする制御部64、スピーカ14、センサ部13、位置データ設定手段17などと接続される。この電源としては、商用の交流電源のほか、電池などを用いることもできる。
【0018】
本具体例の音声案内装置100においては、第1のセンサ(入室センサ)10が人体を検知すると、センサ出力がCPU58にインプットされる。CPU58は、増幅器62を経由してスピーカ14から誘導メッセージを発声させる。一方、第2のセンサ12が人体を検知すると、センサ出力がCPU58にインプットされる。CPU58は、増幅器62を経由してスピーカ14から案内メッセージを発声させる。この案内メッセージは、例えば第2のセンサ12が監視している便器26などの設備の使用方法などに関するものである。
【0019】
次に、第1のセンサ(入室センサ)10と第2のセンサ(便器部センサ)12による人体検知と音声案内との間の関係を時間遷移に従って説明する。
図4は、本具体例の音声案内装置100における状態遷移を例示する模式図である。
ここでは、入室センサ10は音声案内装置100が設置されている多目的トイレのほぼ全体を監視しており、便器部センサ12は便器26の近傍のみを監視しているものとする。
【0020】
まず、入室センサ10が人体を2秒以上検知すると、非待機状態へと移り、便器26への誘導メッセージが再生される。すると、誘導メッセージにより指定された誘導経路の従って使用者は、便器26へ移動する。ここで、もし入室センサ10と便器部センサ12が10秒以上非検知状態であると再び待機状態に戻る。これは、使用者が多目的トイレから退出したと考えられるからである。一方、便器部センサ12が検知状態を1秒以上継続した場合には、使用者が便器26を使用していると判断し、便器26の流し方などに関する案内メッセージが再生される。
【0021】
続いて、便器部センサ12が1秒以上非検知状態を継続すると、使用者は手洗い器18を経て退出移動中であると判断する。そして、入室センサ10及び便器部センサ12が2秒以上人体の非検知状態であると、使用者は退出したと判断し、待機状態に戻る。
このような制御により、例えば、視覚障害者であっても正確かつ安全に目的を達することができる。また、視覚障害者以外の、例えば、高齢者などにとっても、音声案内による誘導経路や設備の使用方法に関する情報は有用である。
【0022】
ところで、音声案内装置100が設置される多目的トイレのレイアウトは現場毎に異なる場合が殆どであるから、現場のレイアウトに応じて最適な誘導メッセージをそれぞれ設定する必要がある。EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)などからなるメモリ領域52には、多目的トイレに設置されている便器26などの設備の位置に関する情報や、音声案内に関する情報などが適宜格納される。設備の位置に関する情報は、位置データ設定手段17を介して制御部64に入力可能とされている。位置データ設定手段17としては、例えば、設定スイッチ15を用いることができる。例えば、図2に例示したように、ドア16、便器26、手洗い器18、紙巻き器20のそれぞれの位置を入力する設定スイッチ15を音声案内装置100に設けることができる。
【0023】
図5は、多目的トイレにおける設備の配置を例示する模式図である。
同図に例示したように、多目的トイレには、ドア16、手洗い器18、紙巻き器20、洗浄ボタン25、便器26、オストメイト28、ベッド30などの各種の設備が配置されている。
便器26、手洗い器18、紙巻き器20などは、殆どの多目的トイレに装備されている。さらに、オストメイト28やベッド30なども必要により装備されるが、使用頻度はより低い。従って、ドア16から入室後、オストメイト28を通らずに、手洗い器18が配置されている方向に使用者を誘導し、便器26に誘導する順序が効率よい。また、オストメイト28は、手洗い器18と形状が似ているために、使用者が間違えて手を突っ込むこともあり、このような場合に手が汚れてしまうという問題も生じうる。これに対して、オストメイト28を通らない誘導経路を案内することにより、視覚障害者などの使用者が間違えてオストメイト28に手を突っ込むことなどを防止できる。
また、便器26を使用した使用者は、その後、手洗い器18を必ず使用するので、手洗い器18を含む誘導経路を使用者に伝えると、使用者が便器26の使用後に円滑に手洗い器18に進むことができる点で便利である。
【0024】
また同様に、紙巻き器20も殆どの場合に使用者が使用する。また、多くの場合、視覚障害者などの使用者は、便器26を使用する前に、使用者は紙巻き器20を触ってトイレットペーパーがあるか否かを確認する。従って、紙巻き器20を含む誘導経路を使用者に伝えると使用者にとって便利である。
【0025】
このような多目的トイレに設けられたドア16、便器26などの設備の位置を入力するに際して、例えば、破線で表したようにトイレを16分割し、それぞれの設備がこれら分割された16の領域のいずれに配置されているかを入力することができる。例えば、分割された16の領域に1番から16番までの番号を付与する。そして、設定スイッチ15を、それぞれ16の選択肢を指定可能なロータリースイッチとし、ドア16や便器26などが配置された領域の番号をこれらロータリースイッチにより指定することにより、位置情報を入力することができる。
【0026】
あるいは、多目的トイレの4面の壁のそれぞれを右側と左側とに分割することにより、合計で8つの分割領域を設定し、ドア16や便器26などがこれら分割領域のいずれに配置されているかを設定スイッチ15によりそれぞれ入力してもよい。この場合にも、8の選択肢を指定可能なロータリースイッチを用いることができる。あるいは、1〜8までの番号が入力可能なデジットスイッチなどを用いてもよい。
【0027】
このようにして多目的トイレに設けられた設備の位置に関する情報が入力されると、制御部64は、これら位置の情報に基づいて最適な誘導経路を決定する。そして、この誘導経路を伝達するためのメッセージを作成する。
【0028】
誘導メッセージとしては、例えば、「ここは多目的トイレです。便器は正面の壁の左側にあります。左の壁に沿って、手洗い器、紙巻き器の順に進んで下さい。」あるいは「ここは多目的トイレです。便器は左奥にあります。左の壁には、手前に、手洗い器、奥に紙巻き器があります。便器はその先です。」などというメッセージを作成することができる。
【0029】
また、設備の使用方法などに関する案内メッセージも作成できる。案内メッセージとしては、例えば、便器26において、「紙巻き器は、便座に座って右側にあります。便器の水を流すには、紙巻き器の右にあるボタンを押してください。」などというメッセージを作成することができる。
使用者に対して流すメッセージを誘導メッセージと案内メッセージとに分け、これらをそれぞれ好適なタイミングで流すことにより、使用者はメッセージの内容を理解しやすくなる。すなわち、誘導経路と設備の使用方法などを1回のメッセージでまとめて流してしまうと、使用者は聞き漏らしたり、覚えきれなかったりすることもある。これに対して、誘導経路に関する誘導メッセージと、設備の使用方法などに関する案内メッセージと、をそれぞれ用意し、これらを適当なタイミングで別々に流すことにより、使用者に対して必要な情報を無理なく確実に伝えることができる。
図6は、誘導メッセージを設定する第1の具体例を表すフローチャートである。
本実施形態の第1の具体例としては、例えば、位置データ設定手段17により入力された設備の位置に関する情報に基づいて、制御部64がこのような誘導メッセージや案内メッセージを合成可能としてもよい。この場合、合成された誘導メッセージや案内メッセージをメモリ領域52に格納してもよく、あるいは、設備の位置情報をメモリ領域52に格納しておき、再生の必要が生じたたびにこれら誘導メッセージや案内メッセージを合成してもよい。
【0030】
図7は、誘導メッセージや案内メッセージを設定する第2の具体例を表すフローチャートである。
本実施形態の第2の具体例としては、例えば、「ここは多目的トイレです。便器は○○の壁の××側にあります。□□の壁に沿って、△△、☆☆・・の順に進んでください。」などという誘導メッセージのテンプレートが制御部64に予め設定されており、制御部64は、このテンプレートにおける、○○、××、□□、△△、☆☆などの可変パラメータ部分について、入力された設備の位置情報に基づいて決定可能とすることもできる。例えば、制御部64は、入力された設備の位置情報に基づいて、○○について、「左」、「正面」、「右」のいずれかを決定する。このようにして誘導メッセージを完成させてもよい。案内メッセージについても、同様にテンプレートを設定しておき、入力された情報に基づいてメッセージを完成させることができる。
【0031】
この場合も、完成した誘導メッセージや案内メッセージをメモリ領域52に格納しておいてもよく、あるいは、設備の位置情報をメモリ領域52に格納しておき、再生の必要が生じたたびに誘導メッセージや案内メッセージを完成させてもよい。
【0032】
図8は、誘導メッセージや案内メッセージを設定する第3の具体例を表すフローチャートである。
本実施形態の第3の具体例としては、例えば、「ここは多目的トイレです。便器は○○の壁の××側にあります。□□の壁に沿って、△△、☆☆・・の順に進んでください。」などという誘導メッセージのテンプレートが制御部64に予め設定されており、このテンプレートにおける、○○、××、□□、△△、☆☆などの可変パラメータ部分について、入力可能としてもよい。例えばテンプレートの○○については、「左」、「正面」、「右」という3つの選択肢が設定されており、音声案内装置100を設置する多目的トイレのレイアウトに応じて、これら選択肢のいずれかを指定する。また、テンプレートの△△や☆☆についても、「手洗い器」や「紙巻き器」、「オストメイト」などの選択肢が設定されており、現場のレイアウトに応じてこれら選択肢から適当なものを順次指定することにより、誘導メッセージが完成する。案内メッセージについても、同様にテンプレートを設定しておき、入力された情報に基づいてメッセージを完成させることができる。
【0033】
この場合、設定スイッチ15として、テンプレートの可変パラメータのそれぞれを指定可能なものを用いればよい。例えば、「○○」について、「左」、「正面」、「右」という3つの選択肢のいずれかを指定可能なスイッチを設ければよい。
【0034】
第3具体例の場合も、完成した誘導メッセージや案内メッセージをメモリ領域52に格納しておいてもよく、あるいは、指定された選択肢に関する情報をメモリ領域52に格納しておき、再生の必要が生じたたびに誘導メッセージや案内メッセージを完成させてもよい。
【0035】
以上説明した設備の位置情報の入力や、誘導メッセージあるいは案内メッセージのテンプレートの選択肢の指定は、例えば、音声案内装置100を現場に設置する際に、設置作業者が実行することができる。または、予め現場のレイアウトが分かっている場合には、音声案内装置100を出荷する前に工場において実行することも可能である。またあるいは、一旦現場に設置された音声案内装置100を他の現場に移設する場合や、音声案内装置100が設置された多目的トイレのレイアウトが変更された場合などは、施工業者あるいは使用者などが、設備の位置情報の入力や、誘導メッセージあるいは案内メッセージのテンプレートの選択肢の指定をやり直せばよい。
【0036】
一方、本実施形態においては、位置データ設定手段17として、設定スイッチ15の代わりに、外部機器を接続して設備の位置情報の入力や選択肢の指定を実行可能としてもよい。音声案内装置100に専用端末66を接続し、設備の位置情報の入力や選択肢の指定を実行可能とすることができる。
または、無線LANを含むネットワーク接続機器68を音声案内装置100に接続し、設備の位置情報の入力や選択肢の指定を実行可能としてもよい。
【0037】
このようにすれば、より複雑なデータの入力が容易となるので、設備の位置データなど以外にも、例えば、誘導メッセージや案内メッセージの内容の編集や追加などの設定を行うことも可能となる。
【0038】
次に、本実施形態の音声案内装置100により伝達される音声案内の一例を説明する。
【0039】
図9は、多目的トイレに入室した使用者を第1のセンサ(入室センサ)10が検知した状態を表す。
このとき、前述したように、例えば、「ここは多目的トイレです。便器は正面の壁の左側にあります。左の壁に沿って、手洗い器、紙巻き器の順に進んでください。」との誘導メッセージが流される。
【0040】
図10は、使用者が誘導メッセージに従い左側の壁に沿った経路を誘導され、手洗い器18まで進んだ状態を表す。この後、使用者は、紙巻き器20を確認し、便器26に至ることができる。
図11は、使用者が便器26に至った状態を表す。
この時、第2のセンサ12により使用者が検知される。そして、その検知に対応して、例えば、「紙巻き器は、便座に座って右側にあります。便器の水を流すには紙巻き器の右にあるボタンを押して下さい。」との音声案内がなされる。
【0041】
図12は、便器26を使用後、逆の経路を通り手洗い器18まで進んだ状態を表す。
この後、使用者は壁に沿ってドア16にたどり着き、多目的トイレを退室できる。
なお、上述の具体例においては、便器26を目標とした場合について説明した。しかし、本発明はこれには限定されず、例えば、オストメイト28や手洗い器18などを目標とした誘導メッセージ、案内メッセージを用意し、適宜流すようにしてもよい。
【0042】
以上、本実施形態の音声案内装置100を多目的トイレに設置した態様を例に挙げて説明した。しかし、本発明は、これには限定されない。例えば、ファックス、複写機、情報端末機器などが配置されたOA作業用の室内において、使用者の入室を検知して経路誘導や目的とする設備の位置及び使用方法情報の音声案内があれば、視覚障害者及び高齢者にとっても目的達成が容易となる。
【0043】
また、例えばホテルや船舶などの客室においても、本実施形態の音声案内装置100を設置し、ベッドやトイレ、化粧台などのレイアウトに関する音声案内を実行することができる。その他、視覚障害者や高齢者が利用する各種の施設などにおいても、本実施形態の音声案内装置100を設置し、レイアウトに応じて音声ガイドを適宜実行することにより、安全性や利便性を向上させることができる。
【0044】
以上、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらに限定されない。音声案内装置を構成するCPU,再生用IC,メモリ領域などからなる制御部、スピーカ、センサ、位置データ設定手段などの構成要素に関する各種設計変更を行ったものであっても、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明の範囲に包含される。
【0045】
また例えば、誘導メッセージや案内メッセージなどの内容についても各種の変型が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の具体例にかかる音声案内装置の作用を表し、同図(a)は多目的トイレ内の設備配置及び誘導経路を説明する模式図、同図(b)は模式斜視図である。
【図2】本発明の具体例にかかる音声案内装置100を表す模式図である。
【図3】本具体例の音声案内装置100のブロック図を表わす。
【図4】本具体例の音声案内装置100における状態遷移を例示する模式図である。
【図5】多目的トイレにおける設備の配置を例示する模式図である。
【図6】誘導メッセージを設定する第1の具体例を表すフローチャートである。
【図7】誘導メッセージや案内メッセージを設定する第2の具体例を表すフローチャートである。
【図8】誘導メッセージや案内メッセージを設定する第3の具体例を表すフローチャートである。
【図9】多目的トイレに入室した使用者を第1のセンサ(入室センサ)10が検知した状態を表す。
【図10】使用者が誘導メッセージに従い左側の壁に沿った経路を誘導され、手洗い器18まで進んだ状態を表す。
【図11】使用者が便器26に至った状態を表す。
【図12】便器26を使用後、逆の経路を通り手洗い器18まで進んだ状態を表す。
【符号の説明】
【0047】
10 入室センサ、12 便器部センサ、13 センサ部、14 スピーカ、15 設定スイッチ、17 位置データ設定手段、18 手洗い器、20 紙巻き器、26 便器、50 再生用IC、52 メモリ素子、58 CPU、64 制御部、66 専用端末機器、68 ネットワーク接続機器 100 音声案内装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
視覚障害者が使用する部屋、施設、建物において、音声案内装置はその行動を補助する上で有効である。例えば、便器、オストメイト、手洗い器、ベッド、紙巻器などが配置された多目的トイレにおいて、視覚障害者が容易に目的を達するように音声による案内が行われると安全かつ便利である。
【0003】
多目的トイレのように、使用可能な設備が多い場合、それぞれが設置されている位置やその使用方法を一度に音声案内されても使用者は覚えきれない。従って、視覚障害者などがドアを開けて入室した後、目的の設備まで安全且つ円滑に進むためには、そのレイアウトに応じた最適な経路を伝達することが有用である。
【0004】
人体などを検出した場合、記憶されていた第1音声情報が再生され、操作スイッチによる入力に応じて第2音声情報を再生する音声案内装置に関する技術開示例がある(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−62684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、複数の設備が配置された部屋において、使用者を安全且つ正確に誘導する音声案内装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
複数の設備が設けられた空間に設置され、
前記空間に存在する使用者に対して、前記複数の設備の少なくともいずれかまで使用者を誘導するための誘導経路とその途上に設けられた他の設備の存在とを伝える誘導メッセージを流すことを特徴とする音声案内装置が提供される。
【0007】
また、本発明の他の一態様によれば、
複数の設備が設けられた空間に設置され、
前記複数の設備の位置に関する情報を入力可能とし、
前記入力された前記位置に関する情報に基づいて、前記複数の設備の少なくともいずれかまで使用者を誘導するための誘導経路とその途上に設けられた他の設備の存在とを伝える誘導メッセージが作成され、
前記空間に存在する使用者に対して前記誘導メッセージを流すことを特徴とする音声案内装置が提供される。
【0008】
また、本発明のさらに他の一態様によれば、
複数の設備が設けられた空間に設置され、
誘導メッセージのテンプレートにおける可変パラメータが設定可能とされ、
前記可変パラメータを設定することにより、前記複数の設備の少なくともいずれかのまで使用者を誘導するための誘導経路とその途上に設けられた他の設備の存在とを伝える誘導メッセージが完成され、
前記空間に存在する使用者に対して前記誘導メッセージを流すことを特徴とする音声案内装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、複数の設備が配置された部屋において、使用者を安全且つ正確に誘導する音声案内装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施例にかかる音声案内装置の作用を説明するための図であり、同図(a)は多目的トイレ内のレイアウトを表す模式平面図であり、同図(b)は模式斜視図である。
【0011】
多目的トイレの天井や壁などには、音声案内装置100が設置されている。視覚障害者などの使用者がドア16を開けて入室すると、音声案内装置100に設けられたセンサ10がこれを検知する。すると、図1(a)に例示された矢印の経路(1)に沿って便器26まで進むように音声案内装置100のスピーカ14から音声案内が行われる。この時、経路(1)の途上には手洗い器18や紙巻き器20などの設備があることも案内する。
【0012】
使用者は案内に従って左側の壁沿いに進み、音声案内通りに手洗い器18や紙巻器20が、左側の壁にあるのを知るとともにこれらにぶつかることなく便器26にたどり着くことができる。また、使用者は、便器26の使用に先立って、紙巻き器20にトイレットペーパーがあるか否かを触覚により確認することもできる。またさらに、目標(この場合には、便器26)に至る誘導経路の途上にある手洗い器18などの設備の位置を予め知らせることにより、使用者は目標に到達するまでに、誘導経路の途上にある設備を確認しながら進むことができ、自分が間違えずに目標に向かっていることを確認しながら進むことができる。
またこの場合、手洗い器18や紙巻器20の位置を予め案内することにより、便器26を使用後に必ず使用するこれらの設備の位置を使用者に知らせておくという効果も得られる。
このようにして、音声案内に従い安全に便器26の位置に来ると、便器部センサ12が人体を検知して正確な位置を案内することにより、便器26への衝突を防止するとともに便器26の使用に必要な情報、例えば便器26の流し方などを音声案内する。
【0013】
便器26の使用後は、音声案内に従い経路(2)を通り手洗い器18に寄ることができる。手洗い器18を使用後、音声案内に従い経路(3)によりドア16に戻り退出することができる。以上のように、使用者の移動を検知してタイミングよく音声案内が行われるので、設備や壁などに衝突することなく安全に目的を達することができる。また、誘導経路上に手洗い器18などがあることも音声案内することにより、これらの位置も把握でき、ぶつかることなく進むことができる。さらに、便器26などの設備の位置において必要に応じて使用方法や、便器26などの設備の操作ボタンの位置などが音声案内されるので、使用する設備において必要とされる使用方法などの情報を正確に得ることができる。
【0014】
図2は、本発明の具体例にかかる音声案内装置100を表す模式図である。
本具体例の音声案内装置100は、第1のセンサ10、第2のセンサ12、スピーカ14、制御部64、設備の位置データ設定手段15を少なくとも含む。この音声案内装置100は、多目的トイレの天井や壁などに設置することができる。第1のセンサ10は、例えば多目的トイレの室内をほぼ全体を監視しドア16を開けて多目的トイレに入室した使用者を検知する。第2のセンサ12は、例えば便器26の近傍を監視し便器26に到達した使用者を検知する。
なお、本具体例は一体構造とされているが、例えば、センサ10、12、スピーカ14などを別体とした構造であってもよい。この場合には、これら別体の要素の間を有線または無線方式にて接続すればよい。
【0015】
センサ10、12としては、マイクロ波センサ、熱型赤外線センサ、赤外線投光式センサ、超音波センサ、光電センサなどを用いることができる。また、トイレのドア16に設けた開閉検知スイッチ、トイレ鍵部スイッチ、便器26に設けられた温水洗浄便座装置の人体検知センサや着座センサなどを用いることもできる。なお、制御部64については、後に詳細に説明する。
熱型赤外線センサとしては、例えば赤外線を検知して焦電効果を生じるPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)やLiTaO3(タンタル酸リチウム)などを用いることができる。なお、センサは1個でもよいが、室内全体を検知できる人体センサ10と便器部センサ12とに分ける方がより、タイミング良く正確に音声案内ができる。
【0016】
図3は、本具体例の音声案内装置100のブロック図を表わす。入室センサ10及び便器部センサ12から構成されるセンサ部13は、CPU(Central Processing Unit)58に接続されている。破線で表す制御部64は、CPU58、メモリ領域52、再生用IC50、再生用ICの出力信号を増幅する増幅器62、電源回路60などを含む。増幅器62の出力はスピーカ14へ接続され、伝えるべき情報を音声案内する。
【0017】
電源回路60は、CPU58をはじめとする制御部64、スピーカ14、センサ部13、位置データ設定手段17などと接続される。この電源としては、商用の交流電源のほか、電池などを用いることもできる。
【0018】
本具体例の音声案内装置100においては、第1のセンサ(入室センサ)10が人体を検知すると、センサ出力がCPU58にインプットされる。CPU58は、増幅器62を経由してスピーカ14から誘導メッセージを発声させる。一方、第2のセンサ12が人体を検知すると、センサ出力がCPU58にインプットされる。CPU58は、増幅器62を経由してスピーカ14から案内メッセージを発声させる。この案内メッセージは、例えば第2のセンサ12が監視している便器26などの設備の使用方法などに関するものである。
【0019】
次に、第1のセンサ(入室センサ)10と第2のセンサ(便器部センサ)12による人体検知と音声案内との間の関係を時間遷移に従って説明する。
図4は、本具体例の音声案内装置100における状態遷移を例示する模式図である。
ここでは、入室センサ10は音声案内装置100が設置されている多目的トイレのほぼ全体を監視しており、便器部センサ12は便器26の近傍のみを監視しているものとする。
【0020】
まず、入室センサ10が人体を2秒以上検知すると、非待機状態へと移り、便器26への誘導メッセージが再生される。すると、誘導メッセージにより指定された誘導経路の従って使用者は、便器26へ移動する。ここで、もし入室センサ10と便器部センサ12が10秒以上非検知状態であると再び待機状態に戻る。これは、使用者が多目的トイレから退出したと考えられるからである。一方、便器部センサ12が検知状態を1秒以上継続した場合には、使用者が便器26を使用していると判断し、便器26の流し方などに関する案内メッセージが再生される。
【0021】
続いて、便器部センサ12が1秒以上非検知状態を継続すると、使用者は手洗い器18を経て退出移動中であると判断する。そして、入室センサ10及び便器部センサ12が2秒以上人体の非検知状態であると、使用者は退出したと判断し、待機状態に戻る。
このような制御により、例えば、視覚障害者であっても正確かつ安全に目的を達することができる。また、視覚障害者以外の、例えば、高齢者などにとっても、音声案内による誘導経路や設備の使用方法に関する情報は有用である。
【0022】
ところで、音声案内装置100が設置される多目的トイレのレイアウトは現場毎に異なる場合が殆どであるから、現場のレイアウトに応じて最適な誘導メッセージをそれぞれ設定する必要がある。EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)などからなるメモリ領域52には、多目的トイレに設置されている便器26などの設備の位置に関する情報や、音声案内に関する情報などが適宜格納される。設備の位置に関する情報は、位置データ設定手段17を介して制御部64に入力可能とされている。位置データ設定手段17としては、例えば、設定スイッチ15を用いることができる。例えば、図2に例示したように、ドア16、便器26、手洗い器18、紙巻き器20のそれぞれの位置を入力する設定スイッチ15を音声案内装置100に設けることができる。
【0023】
図5は、多目的トイレにおける設備の配置を例示する模式図である。
同図に例示したように、多目的トイレには、ドア16、手洗い器18、紙巻き器20、洗浄ボタン25、便器26、オストメイト28、ベッド30などの各種の設備が配置されている。
便器26、手洗い器18、紙巻き器20などは、殆どの多目的トイレに装備されている。さらに、オストメイト28やベッド30なども必要により装備されるが、使用頻度はより低い。従って、ドア16から入室後、オストメイト28を通らずに、手洗い器18が配置されている方向に使用者を誘導し、便器26に誘導する順序が効率よい。また、オストメイト28は、手洗い器18と形状が似ているために、使用者が間違えて手を突っ込むこともあり、このような場合に手が汚れてしまうという問題も生じうる。これに対して、オストメイト28を通らない誘導経路を案内することにより、視覚障害者などの使用者が間違えてオストメイト28に手を突っ込むことなどを防止できる。
また、便器26を使用した使用者は、その後、手洗い器18を必ず使用するので、手洗い器18を含む誘導経路を使用者に伝えると、使用者が便器26の使用後に円滑に手洗い器18に進むことができる点で便利である。
【0024】
また同様に、紙巻き器20も殆どの場合に使用者が使用する。また、多くの場合、視覚障害者などの使用者は、便器26を使用する前に、使用者は紙巻き器20を触ってトイレットペーパーがあるか否かを確認する。従って、紙巻き器20を含む誘導経路を使用者に伝えると使用者にとって便利である。
【0025】
このような多目的トイレに設けられたドア16、便器26などの設備の位置を入力するに際して、例えば、破線で表したようにトイレを16分割し、それぞれの設備がこれら分割された16の領域のいずれに配置されているかを入力することができる。例えば、分割された16の領域に1番から16番までの番号を付与する。そして、設定スイッチ15を、それぞれ16の選択肢を指定可能なロータリースイッチとし、ドア16や便器26などが配置された領域の番号をこれらロータリースイッチにより指定することにより、位置情報を入力することができる。
【0026】
あるいは、多目的トイレの4面の壁のそれぞれを右側と左側とに分割することにより、合計で8つの分割領域を設定し、ドア16や便器26などがこれら分割領域のいずれに配置されているかを設定スイッチ15によりそれぞれ入力してもよい。この場合にも、8の選択肢を指定可能なロータリースイッチを用いることができる。あるいは、1〜8までの番号が入力可能なデジットスイッチなどを用いてもよい。
【0027】
このようにして多目的トイレに設けられた設備の位置に関する情報が入力されると、制御部64は、これら位置の情報に基づいて最適な誘導経路を決定する。そして、この誘導経路を伝達するためのメッセージを作成する。
【0028】
誘導メッセージとしては、例えば、「ここは多目的トイレです。便器は正面の壁の左側にあります。左の壁に沿って、手洗い器、紙巻き器の順に進んで下さい。」あるいは「ここは多目的トイレです。便器は左奥にあります。左の壁には、手前に、手洗い器、奥に紙巻き器があります。便器はその先です。」などというメッセージを作成することができる。
【0029】
また、設備の使用方法などに関する案内メッセージも作成できる。案内メッセージとしては、例えば、便器26において、「紙巻き器は、便座に座って右側にあります。便器の水を流すには、紙巻き器の右にあるボタンを押してください。」などというメッセージを作成することができる。
使用者に対して流すメッセージを誘導メッセージと案内メッセージとに分け、これらをそれぞれ好適なタイミングで流すことにより、使用者はメッセージの内容を理解しやすくなる。すなわち、誘導経路と設備の使用方法などを1回のメッセージでまとめて流してしまうと、使用者は聞き漏らしたり、覚えきれなかったりすることもある。これに対して、誘導経路に関する誘導メッセージと、設備の使用方法などに関する案内メッセージと、をそれぞれ用意し、これらを適当なタイミングで別々に流すことにより、使用者に対して必要な情報を無理なく確実に伝えることができる。
図6は、誘導メッセージを設定する第1の具体例を表すフローチャートである。
本実施形態の第1の具体例としては、例えば、位置データ設定手段17により入力された設備の位置に関する情報に基づいて、制御部64がこのような誘導メッセージや案内メッセージを合成可能としてもよい。この場合、合成された誘導メッセージや案内メッセージをメモリ領域52に格納してもよく、あるいは、設備の位置情報をメモリ領域52に格納しておき、再生の必要が生じたたびにこれら誘導メッセージや案内メッセージを合成してもよい。
【0030】
図7は、誘導メッセージや案内メッセージを設定する第2の具体例を表すフローチャートである。
本実施形態の第2の具体例としては、例えば、「ここは多目的トイレです。便器は○○の壁の××側にあります。□□の壁に沿って、△△、☆☆・・の順に進んでください。」などという誘導メッセージのテンプレートが制御部64に予め設定されており、制御部64は、このテンプレートにおける、○○、××、□□、△△、☆☆などの可変パラメータ部分について、入力された設備の位置情報に基づいて決定可能とすることもできる。例えば、制御部64は、入力された設備の位置情報に基づいて、○○について、「左」、「正面」、「右」のいずれかを決定する。このようにして誘導メッセージを完成させてもよい。案内メッセージについても、同様にテンプレートを設定しておき、入力された情報に基づいてメッセージを完成させることができる。
【0031】
この場合も、完成した誘導メッセージや案内メッセージをメモリ領域52に格納しておいてもよく、あるいは、設備の位置情報をメモリ領域52に格納しておき、再生の必要が生じたたびに誘導メッセージや案内メッセージを完成させてもよい。
【0032】
図8は、誘導メッセージや案内メッセージを設定する第3の具体例を表すフローチャートである。
本実施形態の第3の具体例としては、例えば、「ここは多目的トイレです。便器は○○の壁の××側にあります。□□の壁に沿って、△△、☆☆・・の順に進んでください。」などという誘導メッセージのテンプレートが制御部64に予め設定されており、このテンプレートにおける、○○、××、□□、△△、☆☆などの可変パラメータ部分について、入力可能としてもよい。例えばテンプレートの○○については、「左」、「正面」、「右」という3つの選択肢が設定されており、音声案内装置100を設置する多目的トイレのレイアウトに応じて、これら選択肢のいずれかを指定する。また、テンプレートの△△や☆☆についても、「手洗い器」や「紙巻き器」、「オストメイト」などの選択肢が設定されており、現場のレイアウトに応じてこれら選択肢から適当なものを順次指定することにより、誘導メッセージが完成する。案内メッセージについても、同様にテンプレートを設定しておき、入力された情報に基づいてメッセージを完成させることができる。
【0033】
この場合、設定スイッチ15として、テンプレートの可変パラメータのそれぞれを指定可能なものを用いればよい。例えば、「○○」について、「左」、「正面」、「右」という3つの選択肢のいずれかを指定可能なスイッチを設ければよい。
【0034】
第3具体例の場合も、完成した誘導メッセージや案内メッセージをメモリ領域52に格納しておいてもよく、あるいは、指定された選択肢に関する情報をメモリ領域52に格納しておき、再生の必要が生じたたびに誘導メッセージや案内メッセージを完成させてもよい。
【0035】
以上説明した設備の位置情報の入力や、誘導メッセージあるいは案内メッセージのテンプレートの選択肢の指定は、例えば、音声案内装置100を現場に設置する際に、設置作業者が実行することができる。または、予め現場のレイアウトが分かっている場合には、音声案内装置100を出荷する前に工場において実行することも可能である。またあるいは、一旦現場に設置された音声案内装置100を他の現場に移設する場合や、音声案内装置100が設置された多目的トイレのレイアウトが変更された場合などは、施工業者あるいは使用者などが、設備の位置情報の入力や、誘導メッセージあるいは案内メッセージのテンプレートの選択肢の指定をやり直せばよい。
【0036】
一方、本実施形態においては、位置データ設定手段17として、設定スイッチ15の代わりに、外部機器を接続して設備の位置情報の入力や選択肢の指定を実行可能としてもよい。音声案内装置100に専用端末66を接続し、設備の位置情報の入力や選択肢の指定を実行可能とすることができる。
または、無線LANを含むネットワーク接続機器68を音声案内装置100に接続し、設備の位置情報の入力や選択肢の指定を実行可能としてもよい。
【0037】
このようにすれば、より複雑なデータの入力が容易となるので、設備の位置データなど以外にも、例えば、誘導メッセージや案内メッセージの内容の編集や追加などの設定を行うことも可能となる。
【0038】
次に、本実施形態の音声案内装置100により伝達される音声案内の一例を説明する。
【0039】
図9は、多目的トイレに入室した使用者を第1のセンサ(入室センサ)10が検知した状態を表す。
このとき、前述したように、例えば、「ここは多目的トイレです。便器は正面の壁の左側にあります。左の壁に沿って、手洗い器、紙巻き器の順に進んでください。」との誘導メッセージが流される。
【0040】
図10は、使用者が誘導メッセージに従い左側の壁に沿った経路を誘導され、手洗い器18まで進んだ状態を表す。この後、使用者は、紙巻き器20を確認し、便器26に至ることができる。
図11は、使用者が便器26に至った状態を表す。
この時、第2のセンサ12により使用者が検知される。そして、その検知に対応して、例えば、「紙巻き器は、便座に座って右側にあります。便器の水を流すには紙巻き器の右にあるボタンを押して下さい。」との音声案内がなされる。
【0041】
図12は、便器26を使用後、逆の経路を通り手洗い器18まで進んだ状態を表す。
この後、使用者は壁に沿ってドア16にたどり着き、多目的トイレを退室できる。
なお、上述の具体例においては、便器26を目標とした場合について説明した。しかし、本発明はこれには限定されず、例えば、オストメイト28や手洗い器18などを目標とした誘導メッセージ、案内メッセージを用意し、適宜流すようにしてもよい。
【0042】
以上、本実施形態の音声案内装置100を多目的トイレに設置した態様を例に挙げて説明した。しかし、本発明は、これには限定されない。例えば、ファックス、複写機、情報端末機器などが配置されたOA作業用の室内において、使用者の入室を検知して経路誘導や目的とする設備の位置及び使用方法情報の音声案内があれば、視覚障害者及び高齢者にとっても目的達成が容易となる。
【0043】
また、例えばホテルや船舶などの客室においても、本実施形態の音声案内装置100を設置し、ベッドやトイレ、化粧台などのレイアウトに関する音声案内を実行することができる。その他、視覚障害者や高齢者が利用する各種の施設などにおいても、本実施形態の音声案内装置100を設置し、レイアウトに応じて音声ガイドを適宜実行することにより、安全性や利便性を向上させることができる。
【0044】
以上、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらに限定されない。音声案内装置を構成するCPU,再生用IC,メモリ領域などからなる制御部、スピーカ、センサ、位置データ設定手段などの構成要素に関する各種設計変更を行ったものであっても、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明の範囲に包含される。
【0045】
また例えば、誘導メッセージや案内メッセージなどの内容についても各種の変型が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の具体例にかかる音声案内装置の作用を表し、同図(a)は多目的トイレ内の設備配置及び誘導経路を説明する模式図、同図(b)は模式斜視図である。
【図2】本発明の具体例にかかる音声案内装置100を表す模式図である。
【図3】本具体例の音声案内装置100のブロック図を表わす。
【図4】本具体例の音声案内装置100における状態遷移を例示する模式図である。
【図5】多目的トイレにおける設備の配置を例示する模式図である。
【図6】誘導メッセージを設定する第1の具体例を表すフローチャートである。
【図7】誘導メッセージや案内メッセージを設定する第2の具体例を表すフローチャートである。
【図8】誘導メッセージや案内メッセージを設定する第3の具体例を表すフローチャートである。
【図9】多目的トイレに入室した使用者を第1のセンサ(入室センサ)10が検知した状態を表す。
【図10】使用者が誘導メッセージに従い左側の壁に沿った経路を誘導され、手洗い器18まで進んだ状態を表す。
【図11】使用者が便器26に至った状態を表す。
【図12】便器26を使用後、逆の経路を通り手洗い器18まで進んだ状態を表す。
【符号の説明】
【0047】
10 入室センサ、12 便器部センサ、13 センサ部、14 スピーカ、15 設定スイッチ、17 位置データ設定手段、18 手洗い器、20 紙巻き器、26 便器、50 再生用IC、52 メモリ素子、58 CPU、64 制御部、66 専用端末機器、68 ネットワーク接続機器 100 音声案内装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の設備が設けられた空間に設置され、
前記空間に存在する使用者に対して、前記複数の設備の少なくともいずれかまで使用者を誘導するための誘導経路とその途上に設けられた他の設備の存在とを伝える誘導メッセージを流すことを特徴とする音声案内装置。
【請求項2】
複数の設備が設けられた空間に設置され、
前記複数の設備の位置に関する情報を入力可能とし、
前記入力された前記位置に関する情報に基づいて、前記複数の設備の少なくともいずれかまで使用者を誘導するための誘導経路とその途上に設けられた他の設備の存在とを伝える誘導メッセージが作成され、
前記空間に存在する使用者に対して前記誘導メッセージを流すことを特徴とする音声案内装置。
【請求項3】
複数の設備が設けられた空間に設置され、
誘導メッセージのテンプレートにおける可変パラメータが設定可能とされ、
前記可変パラメータを設定することにより、前記複数の設備の少なくともいずれかのまで使用者を誘導するための誘導経路とその途上に設けられた他の設備の存在とを伝える誘導メッセージが完成され、
前記空間に存在する使用者に対して前記誘導メッセージを流すことを特徴とする音声案内装置。
【請求項4】
前記誘導経路は、手洗い器または紙巻き器を必ず含むように決定されることを特徴とする請求項2または3に記載の音声案内装置。
【請求項5】
前記空間における使用者の存在を検知する第1のセンサを備え、
前記第1のセンサによる検知に応じて前記誘導メッセージを流すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の音声案内装置。
【請求項6】
前記少なくともいずれかの設備の近傍を監視する第2のセンサをさらに備え、
前記第2のセンサによる検知に応じて、前記少なくともいずれかの設備に関する案内メッセージを流すことを特徴とする請求項5記載の音声案内装置。
【請求項7】
前記少なくともいずれかの設備は、便器であり、
前記他の設備は、手洗い器であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の音声案内装置。
【請求項8】
前記少なくともいずれかの設備は、便器であり、
前記他の設備は、紙巻き器であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の音声案内装置。
【請求項9】
前記誘導経路は、前記空間を区画する壁に沿ったものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の音声案内装置。
【請求項1】
複数の設備が設けられた空間に設置され、
前記空間に存在する使用者に対して、前記複数の設備の少なくともいずれかまで使用者を誘導するための誘導経路とその途上に設けられた他の設備の存在とを伝える誘導メッセージを流すことを特徴とする音声案内装置。
【請求項2】
複数の設備が設けられた空間に設置され、
前記複数の設備の位置に関する情報を入力可能とし、
前記入力された前記位置に関する情報に基づいて、前記複数の設備の少なくともいずれかまで使用者を誘導するための誘導経路とその途上に設けられた他の設備の存在とを伝える誘導メッセージが作成され、
前記空間に存在する使用者に対して前記誘導メッセージを流すことを特徴とする音声案内装置。
【請求項3】
複数の設備が設けられた空間に設置され、
誘導メッセージのテンプレートにおける可変パラメータが設定可能とされ、
前記可変パラメータを設定することにより、前記複数の設備の少なくともいずれかのまで使用者を誘導するための誘導経路とその途上に設けられた他の設備の存在とを伝える誘導メッセージが完成され、
前記空間に存在する使用者に対して前記誘導メッセージを流すことを特徴とする音声案内装置。
【請求項4】
前記誘導経路は、手洗い器または紙巻き器を必ず含むように決定されることを特徴とする請求項2または3に記載の音声案内装置。
【請求項5】
前記空間における使用者の存在を検知する第1のセンサを備え、
前記第1のセンサによる検知に応じて前記誘導メッセージを流すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の音声案内装置。
【請求項6】
前記少なくともいずれかの設備の近傍を監視する第2のセンサをさらに備え、
前記第2のセンサによる検知に応じて、前記少なくともいずれかの設備に関する案内メッセージを流すことを特徴とする請求項5記載の音声案内装置。
【請求項7】
前記少なくともいずれかの設備は、便器であり、
前記他の設備は、手洗い器であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の音声案内装置。
【請求項8】
前記少なくともいずれかの設備は、便器であり、
前記他の設備は、紙巻き器であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の音声案内装置。
【請求項9】
前記誘導経路は、前記空間を区画する壁に沿ったものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の音声案内装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−55071(P2008−55071A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238358(P2006−238358)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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