説明

音声発生器

【課題】作業現場における安全確認用の音声メッセージと、高温障害予防のための音声メッセージとを周囲の温度に応じて的確に出力することのできる音声発生器を提供する。
【解決手段】温度センサ4の検出温度が所定の温度よりも低いときは、作業現場における安全確認のための第1の音声メッセージが出力され、温度センサ4の検出温度が所定の温度以上のときは、熱中症や日射病等の高温障害を予防するための第2の音声メッセージが出力されることから、これらの音声メッセージを現場管理者が人為的に切り替える必要がなく、周囲の温度に応じて常に的確な音声メッセージを出力することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば工事現場の任意の場所に設置され、音声メッセージによって作業者に注意を与えるための音声発生器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、工事現場等の高所で作業を行う場合、作業者には転落防止のための安全帯の着用が義務づけられている。しかしながら、作業者によっては安全帯を着用しなかったり、着用していてもフック掛けを怠るなど、安全帯の使用が徹底されていない場合がある。また、工事現場には、地面の開口部、落下物、建設車両の通行など、危険箇所が多く存在するため、これらの危険箇所に接近する作業者に注意を与えて事故を未然に防止する必要もある。
【0003】
そこで、従来では、音声メッセージによって作業者に注意を与える音声発生器が用いられている。このような音声発生器としては、安全帯の使用を促すメッセージや、危険箇所の存在を知らせるメッセージ等を音声記憶部に記憶しておき、音声記憶部の音声メッセージを所定時間おきに出力するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−305964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、建設工事の作業現場等においては、夏場等の温度の高いときは作業者が熱中症や日射病等の高温傷害を起こしやすくなるため、頻繁に水分を補給したり、或いは保冷剤を用いて体を冷やすなどの暑さ対策をとる必要がある。しかしながら、このような暑さ対策は現場の作業者にとって怠りやすく、高温傷害の予防を徹底することは困難であった。そこで、音声発生器によって高温障害予防のための音声メッセージを発するようにすれば、現場作業者への注意を喚起することができる。
【0006】
しかしながら、熱中症や日射病の予防をするほど気温が高くない日や、作業時間帯に気温が低下した場合など、高温障害予防のための音声メッセージが無用になる場合がある。このような場合は、安全帯の着用を促すメッセージや、危険箇所の存在を知らせるメッセージ等、安全確認のための音声メッセージを出力する方が好ましい。そのためには、安全確認用の音声メッセージと、高温障害予防のための音声メッセージとをそれぞれ音声発生器に記憶しておき、これらを気温に応じて人為的に切り替える必要があるが、気温の変動が大きい時期には頻繁に切替作業を行わなければならず、現場管理者側の負担が大きくなるという問題点があった。
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業現場における安全確認用の音声メッセージと、高温障害予防のための音声メッセージとを周囲の温度に応じて的確に出力することのできる音声発生器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の音声発生器は、前記目的を達成するために、作業現場における安全確認のための第1の音声メッセージと、高温下の作業現場における高温障害予防のための第2の音声メッセージとが記憶された音声記憶部と、音声記憶部の第1の音声メッセージまたは第2の音声メッセージを出力するスピーカと、周囲の温度を検出する温度センサと、温度センサの検出温度が所定の温度よりも低いときは音声記憶部の第1の音声メッセージを出力し、温度センサの検出温度が所定の温度以上のときは音声記憶部の第2の音声メッセージを出力する制御手段とを備えている。
【0009】
これにより、温度センサの検出温度が所定の温度よりも低いときは、作業現場における安全確認のための第1の音声メッセージが出力され、温度センサの検出温度が所定の温度以上のときは、熱中症や日射病等の高温障害を予防するための第2の音声メッセージが出力されることから、これらの音声メッセージを現場管理者が人為的に切り替える必要がない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業現場における安全確認のための第1の音声メッセージと、高温下の作業現場における高温障害予防のための第2の音声メッセージとを現場管理者が人為的に切り替える必要がないので、周囲の温度に応じて常に的確な音声メッセージを出力することができ、作業現場における安全確認と高温障害予防対策とを徹底することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態を示す音声発生器の正面側斜視図
【図2】音声発生器の背面側斜視図
【図3】音声発生器のブロック図
【図4】制御部の動作を示すフローチャート
【図5】音声発生器の使用状態を示す側面図
【図6】取付具を用いた音声発生器の取付工程を示す背面側斜視図
【図7】音声発生器の他の使用状態を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至図7は本発明の一実施形態を示すもので、工事現場の任意の作業現場に設置して使用される音声発生器に関するものである。
【0013】
同図に示す音声発生器1は、音声発生器本体としての箱形の本体ケース2と、人(作業者A)の接近を検知する人体検知センサ3と、周囲の温度を検知する温度センサ4と、音声メッセージが記憶された音声記憶部5と、音声記憶部5の音声メッセージを出力するスピーカ6と、電源をオン/オフする電源スイッチ7と、音声メッセージを切り替える音声切替スイッチ8と、音声メッセージ出力の待ち時間を切り替える待ち時間切替スイッチ9と、音声メッセージの出力を制御する制御部10とを備えている。
【0014】
本体ケース2は前後方向に薄型に形成され、その前面上部には音声出力用の複数の貫通孔2aと電源ランプ2bが設けられている。また、本体ケース2の背面には音声発生器1を任意の取付対象物に取り付けるためのマグネット2cが設けられ、マグネット2cは幅方向両端側が後方に屈曲した金属製の基板2dに固着されている。
【0015】
人体検知センサ3は焦電型赤外線センサ等の周知の機器からなり、本体ケース2の前面上部に配置されている。人体検知センサ3は、検知信号を増幅器3aで増幅するとともに、コンパレータ3bによって所定の閾値以上の信号を制御部10に出力するようになっている。
【0016】
温度センサ4はサーミスタ等の周知の機器からなり、本体ケース2の下面に配置されている。
【0017】
音声記憶部5は音声合成ICからなり、予め記憶されている音声メッセージの音声信号を増幅器5aで増幅してスピーカ6に出力するようになっている。音声記憶部5には、作業現場における安全確認のための第1の音声メッセージと、高温下の作業現場における高温障害(熱中症や日射病)を予防するための第2の音声メッセージがそれぞれ記憶されている。第1の音声メッセージとしては、例えば「安全帯を使用して下さい」、「開口部に注意して下さい」、「関係者以外は立ち入り禁止です」等の複数種類の音声メッセージが記憶されている。また、第2の音声メッセージとしては、例えば「熱中症対策は十分か確認して下さい」等の音声メッセージが記憶されている。
【0018】
スピーカ6は本体ケース2内の前面側に設けられ、本体ケース2の各貫通孔2aを介して外部に音声を出力するようになっている。
【0019】
電源スイッチ7は押ボタンスイッチからなり、本体ケース2の前面下部に配置されている。電源スイッチ7を押圧操作すると、制御部10に電源が供給され、電源ランプ2bが点灯するようになっている。
【0020】
音声切替スイッチ8は押ボタンスイッチからなり、本体ケース2の前面下部に配置されている。音声切替スイッチ8は、音声記憶部5の第1の音声メッセージを任意のメッセージに切り替えるようになっており、一回の押圧操作ごとに各第1の音声メッセージを順次切り替えるようになっている。
【0021】
待ち時間切替スイッチ9は押ボタンスイッチからなり、本体ケース2の前面下部に配置されている。待ち時間切替スイッチ9は、音声メッセージが出力されてから次の音声メッセージを出力するまでの待ち時間を切り替えるようになっており、一回の押圧操作ごとに待ち時間を長さの異なる他の待ち時間(例えば5秒、10秒、15秒)に順次切り替えるようになっている。
【0022】
制御部10はマイクロコンピュータによって構成され、電源ランプ2b、人体検知センサ3のコンパレータ3b、温度センサ4、音声記憶部5、電源スイッチ7、音声切替スイッチ8及び待ち時間切替スイッチ9に接続されている。また、制御部10はタイマ10aを有し、乾電池または蓄電池からなる電源11に接続されている。尚、各増幅器3a,5a、コンパレータ3b、音声記憶部5及び制御部10は、本体ケース2内に配置された回路基板(図示せず)に設けられている。
【0023】
以上のように構成された音声発生器1は、図5に示すように任意の場所の金属製の壁面からなる取付対象物Bに取付けて使用する。即ち、本体ケース2のマグネット2cを取付対象物Bに吸着することにより、本体ケース2が取付対象物Bに固定される。この場合、本体ケース2の背面がマグネット2cによって取付対象物Bに固定されると、本体ケース2の前面に設けた人体検知センサ3及びスピーカ6が前方に臨むことから、音声発生器1を地面に置かずに設置することができる。
【0024】
ここで、制御部10の動作について、図4のフローチャートを参照して説明する。まず、電源スイッチ7がオンにされると(S1)、電源ランプ2bを点灯し(S2)、タイマ10aをリセットする(S3)。次に、人体検知センサ3によって人体Aが検知され(S4)、且つタイマ10aの計時時間が待ち時間t1 を経過している場合(S5)、温度センサ4の検出温度Tが所定温度T1 (例えば27℃)よりも低いときは(S6)、音声記憶部5の第1の音声メッセージをスピーカ6から出力する(S7)。また、ステップS6において温度センサ4の検出温度Tが所定温度T1 以上の場合は、音声記憶部5の第2の音声メッセージをスピーカ6から出力する(S8)。ここで、電源スイッチ7がオフでなければ(S9)、ステップS4に戻り、ステップS4〜S8の動作を繰り返す。また、ステップS4において人体検知センサ3によって人体Aが検知された場合でも、ステップS5においてタイマ10aの計時時間が待ち時間t1 を経過していない場合は、音声メッセージを出力することなくステップS4に戻る。そして、ステップS9において電源スイッチ7がオフになった場合は、電源ランプ1bを消灯し(S10)、プログラムを終了する。
【0025】
このように、本実施形態によれば、温度センサ4の検出温度Tが所定温度T1 よりも低いときは、作業現場における安全確認のための第1の音声メッセージをから出力し、温度センサ4の検出温度Tが所定温度T1 以上の場合は、高温下の作業現場における高温障害予防のための第2の音声メッセージを出力するようにしたので、周囲の温度が低いときは第1の音声メッセージによって作業者Aに安全確認のための注意を与えることができ、周囲の温度が高いときは第2の音声メッセージによって熱中症や日射病を予防するための注意を与えることができる。これにより、第1の音声メッセージと第2の音声メッセージとを周囲の温度に応じて自動で切り替えることができるので、現場管理者が人為的に切り替えることなく常に的確な音声メッセージを作業者Aに対して出力することができ、作業現場における安全確認と高温障害予防対策とを徹底することができる。
【0026】
また、人体検知センサ3によって作業者Aの接近が検知されると音声メッセージを出力するようにしたので、音声発生器1の近傍を通過する作業者に対して音声メッセージを確実に出力することができ、作業者Aへの注意喚起を効果的に行うことができる。
【0027】
この場合、人体検知センサ3によって作業者Aの接近が検知され、且つ前回の検知から所定の待ち時間t1 が経過している場合のみ音声メッセージを出力するようにしたので、例えば大勢の作業者が続けて通過した場合でも、音声メッセージが無用に連発して出力されることがなく、常に適正な間隔で音声メッセージを出力することができる。
【0028】
また、待ち時間t1 を他の異なる待ち時間t1 に切替可能な待ち時間切替スイッチ9を備えているので、作業者の通行頻度や使用状況等に応じて待ち時間t1 を任意に変更することができ、音声メッセージの出力をより適正に行うことができる。
【0029】
更に、第1の音声メッセージを、音声記憶部5に記憶された複数種類の第1の音声メッセージのうち任意の第1の音声メッセージに切替可能な音声切替スイッチ8を備えているので、例えば注意内容の異なる複数種類の音声メッセージを記憶しておくことにより、設置場所に適した音声メッセージを出力することができる。
【0030】
また、本体ケース2の背面に金属製の取付対象物Bに吸着可能なマグネット1cを設けたので、音声発生器1を地面に置かずに設置することができ、狭い場所や傾斜面など、任意の場所に容易に設置することができる。この場合、音声発生器1が通行の妨げになることがないので、人員や車両等の接触により音声発生器1の位置ずれや破損を生ずることがないという利点もある。
【0031】
更に、図6に示すように、円柱状の取付対象物Cに取付可能な取付具12を備えることにより、足場等の支柱に音声発生器1を取り付けることもできる。即ち、この取付具12は、弾性変形可能な略C字状の係合部材12aと、係合部材12aが一方の面に固定された平板状の金属板12bとからなり、金属板12bの他方の面に音声発生器1のマグネット1cを吸着し、係合部材12aを弾性変形させながら取付対象物Cの外周面に係合することにより、音声発生器1を取付対象物Cに取り付けるようになっている。
【0032】
尚、前記実施形態では、複数種類の第1の音声メッセージを切り替えるようにしたものを示したが、第2の音声メッセージとして、例えば「熱中症対策は十分か確認して下さい」、「熱中症多発時間帯です。水分を十分に補給しましょう」等の複数種類の音声メッセージを音声記憶部5に記憶しておき、これらの第2の音声メッセージを切り替えるようにしてもよい。
【0033】
また、前記実施形態では、音声切替スイッチ8によって音声メッセージを切り替えるようにしたものを示したが、音声メッセージを出力するごとに他の音声メッセージに自動で切り替えるようにしてもよい。
【0034】
更に、前記実施形態では、人体検知センサ3によって人体Aが検知された場合に音声メッセージを出力するようにしたものを示したが、例えば所定時間おきに出力するようにしてもよい。この場合、図7に示すように作業者Aが音声発生器1を衣服のポケットに入れて携帯するようにすれば、音声発生器1を携帯する作業者Aに所定時間おきに確実に注意を与えることができる。
【0035】
また、前記実施形態では、一種類の音声メッセージを記憶するようにしたものを示したが、内容の異なる複数種類の音声メッセージを記憶しておき、任意の音声メッセージを選択するようにしたり、或いは各音声メッセージを順次出力するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…音声発生器、2…本体ケース、2c…マグネット、3…人体検知センサ、4…温度センサ、5…音声記憶部、6…スピーカ、A…作業者、B,C…取付対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業現場における安全確認のための第1の音声メッセージと、高温下の作業現場における高温障害予防のための第2の音声メッセージとが記憶された音声記憶部と、
音声記憶部の第1の音声メッセージまたは第2の音声メッセージを出力するスピーカと、
周囲の温度を検出する温度センサと、
温度センサの検出温度が所定の温度よりも低いときは音声記憶部の第1の音声メッセージを出力し、温度センサの検出温度が所定の温度以上のときは音声記憶部の第2の音声メッセージを出力する制御手段とを備えた
ことを特徴とする音声発生器。
【請求項2】
人の接近を検知する人体検知センサを備え、
前記制御手段を、人体検知センサによって人の接近が検知されると音声記憶部の第1の音声メッセージまたは第2の音声メッセージを出力するように構成した
ことを特徴とする請求項1記載の音声発生器。
【請求項3】
前記制御手段を、人体検知センサによって人の接近が検知され、且つ前回の検知から所定の待ち時間が経過している場合のみ第1の音声メッセージまたは第2の音声メッセージを出力するように構成した
ことを特徴とする請求項2記載の音声発生器。
【請求項4】
前記待ち時間を他の異なる待ち時間に切替可能な待ち時間切替スイッチを備えた
ことを特徴とする請求項3記載の音声発生器。
【請求項5】
前記第1の音声メッセージ及び第2の音声メッセージの少なくとも一方を、音声記憶部に記憶された複数種類の音声メッセージのうちの任意の音声メッセージに切替可能な音声切替スイッチを備えた
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の音声発生器。
【請求項6】
音声発生器本体に、金属製の任意の取付対象物に吸着可能なマグネットを設けた
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の音声発生器。
【請求項7】
前記音声発生器本体のマグネットに吸着され、円柱状の任意の取付対象物に係合可能な取付具を備えた
ことを特徴とする請求項6記載の音声発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−251339(P2012−251339A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123498(P2011−123498)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(591199741)株式会社プロップ (26)