音声符号化方法及び音声復号方法
【課題】 マルチチャネルの音声信号を可変の圧縮率で符号化する場合に再生側
の処理時間を管理可能にする。
【解決手段】 予測回路13D1,13D2,15D1〜15D4とバッファ・
選択器14D1,14D2,16D1〜16D4は、6チャネル音声信号を予測
符号化する。DTS生成器17はチャネル毎の予測符号化データ量に応じて、復
号側の入力バッファ22a内の圧縮データを読み出すタイミングを示すデコーデ
ィング・タイム・スタンプ情報を生成し、フォーマット化回路19はデコーディ
ング・タイム・スタンプ情報を含むパケットヘッダと、圧縮データを含むユーザ
データを有するパケットにフォーマット化する。
の処理時間を管理可能にする。
【解決手段】 予測回路13D1,13D2,15D1〜15D4とバッファ・
選択器14D1,14D2,16D1〜16D4は、6チャネル音声信号を予測
符号化する。DTS生成器17はチャネル毎の予測符号化データ量に応じて、復
号側の入力バッファ22a内の圧縮データを読み出すタイミングを示すデコーデ
ィング・タイム・スタンプ情報を生成し、フォーマット化回路19はデコーディ
ング・タイム・スタンプ情報を含むパケットヘッダと、圧縮データを含むユーザ
データを有するパケットにフォーマット化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチチャネルの音声信号を可変長で圧縮するための音声符号化方法及び音
声復号方法に関する。
【背景技術】
【0002】
音声信号を可変長で圧縮する方法として、本発明者は先の出願(特願平9−28915
9号)において1チャネルの原デジタル音声信号に対して、特性が異なる複数の予測器に
より時間領域における過去の信号から現在の信号の複数の線形予測値を算出し、原デジタ
ル音声信号と、この複数の線形予測値から予測器毎の予測残差を算出、予測残差の最小値
を選択する予測符号化方法を提案している。
【0003】
なお、上記方法では原デジタル音声信号がサンプリング周波数=96kHz、量子化ビ
ット数=20ビット程度の場合にある程度の圧縮効果を得ることができるが、近年のDV
Dオーディオディスクではこの2倍のサンプリング周波数(=192kHz)が使用され
、また、量子化ビット数も24ビットが使用される傾向があるので、圧縮率を改善する必
要がある。また、マルチチャネルにおけるサンプリング周波数と量子化ビット数はチャネ
ル毎に異なることもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、予測符号化方式のような圧縮方式は圧縮率が可変(VBR:バリアブル・ビ
ット・レート)であるので、マルチチャネルの音声信号を予測符号化するとチャネル毎の
データ量が時間的に大きく変化する。また、このようなデータを伝送する場合には、チャ
ネル毎にパラレルではなくデータストリームとして伝送される。
【0005】
したがって、再生側(デコード側)においてこのような可変長のデータストリームをチ
ャネル毎に同期して再生(プレゼンテーション)可能にするためには、入力バッファに蓄
積されたデータストリームを読み出してデコーダに出力するためのタイミングを示すデコ
ード時間と、出力バッファに蓄積されたデコード後のデータを読み出してスピーカなどに
出力(プレゼンテーション)するためのタイミングを示す再生時間を管理しなければなら
ない。また、再生側でこのような可変長のデータストリームをサーチ再生するための時間
を管理しなければならない。
【0006】
そこで本発明は、マルチチャネルの音声信号を可変の圧縮率で符号化する場合に再生側
の処理時間を管理することができる音声符号化方法及び音声復号方法を提供することを目
的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、以下の1)及び2)に記載の手段よりなる。
【0008】
すなわち、
1)複数のチャネルの音声信号をそのままのチャネル又は互いに相関をとったチャネル毎に入力される音声信号に応答して、先頭サンプル値を所定時間のフレーム単位で得ると共に、特性が異なる複数の線形予測方法により時間領域の過去から現在の信号の線形予測値がそれぞれ予測され、その予測される線形予測値と前記音声信号とから得られる予測残差が最小となるような線形予測方法を前記フレームを、更に分割したサブフレーム単位に選択して予測符号化するステップと、
前記ステップにより選択されたチャネル毎の予測符号化データが第1のグループのチャネルと第2のグループのチャネルに分けられて、前記第1のグループのチャネルの予測符号化データが格納される第1のビットストリーム(サブストリーム)と、前記第2のグループのチャネルの予測符号化データが格納される第2のビットストリーム(サブストリーム)とを含むサブパケットと、前記サブパケット内のデータが可変ビットレート圧縮された予測符号化データであることを示し、再生側で前記可変ビットレート圧縮に対応した伸長処理が施されるために用いられる識別子を含む同期情報部と、を有するデータ構造にフォーマット化するステップと、
からなる音声符号化方法。
2)請求項1記載の音声符号化方法により符号化されたデータから元の前記複数のチャネルの音声信号を復号する音声復号方法であって、
前記データ構造をサブパケットと同期情報部に分離するステップと、
前記同期情報部内の識別子に基づいて前記サブパケット内のサブフレーム単位の予測符号化データを第1のグループのチャネルと第2のグループのチャネル別にチャネル毎に伸長するステップと、
前記チャネル毎に伸長された音声データから元の前記複数のチャネルの音声信号を復元するステップと、
からなる音声復号方法。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、圧縮データを含むサブパケットと、そのテータのチャネル割り当て情報を含む同期情報部を有するデータ構造にフォーマット化するようにしたので、例えば、再生側において、チャンネル数に応じた的確なデータ処理を行える音声符号化方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明が適用される声符
号化装置とそれに対応する音声復号装置の第1の実施形態を示すブロック図、図2は図1
の符号化部を詳しく示すブロック図、図3は図1、図2の符号化部により符号化されたビ
ットストリームを示す説明図、図4はDVDのパックのフォーマットを示す説明図、図5
はDVDのオーディオパックのフォーマットを示す説明図、図6は図1の復号化部を詳し
く示すブロック図、図7は図6の入力バッファの書き込み/読み出しタイミングを示すタ
イミングチャート、図8はアクセスユニット毎の圧縮データ量を示す説明図、図9はアク
セスユニットとプレゼンテーションユニットを示す説明図である。
【0011】
ここで、マルチチャネル方式としては、例えば次の4つの方式が知られている。
(1)4チャネル方式 ドルビーサラウンド方式のように、前方L、C、Rの3チャ
ネル+後方Sの1チャネルの合計4チャネル
(2)5チャネル方式 ドルビーAC−3方式のSWチャネルなしのように、前方L
、C、Rの3チャネル+後方SL、SRの2チャネルの合計5チャネル
(3)6チャネル方式 DTS(Digital Theater System)方式や、ドルビーAC−
3方式のように6チャネル(L、C、R、SW(Lfe)、SL、SR)
(4)8チャネル方式 SDDS(Sony Dynamic Digital Sound)方式のように、前
方L、LC、C、RC、R、SWの6チャネル+後方SL、SRの2チャネルの合計8チ
ャネル
図1に示す符号化側の6チャネル(ch)ミクス&マトリクス回路1’は、マルチチャネ
ル信号の一例としてフロントレフト(Lf)、センタ(C)、フロントライト(Rf)、
サラウンドレフト(Ls)、サラウンドライト(Rs)及びLfe(Low Frequency Effe
ct)の6chのPCMデータを次式(1)により前方グループに関する2ch「1」、「2」
と他のグループに関する4ch「3」〜「6」に分類して変換し、2ch「1」、「2」を第
1符号化部2’−1に、また、4ch「3」〜「6」を第2符号化部2’−2に出力する。
【0012】
「1」=Lf+Rf
「2」=Lf−Rf
「3」=C−(Ls+Rs)/2
「4」=Ls+Rs
「5」=Ls−Rs
「6」=Lfe−a×C
ただし、0≦a≦1 …(1)
符号化部2’を構成する第1及び第2符号化部2’−1、2’−2はそれぞれ、図2に
詳しく示すように2ch「1」、「2」と4ch「3」〜「6」のPCMデータを予測符号化
し、予測符号化データを図3に示すようなビットストリームで記録媒体5や通信媒体6を
介して復号側に伝送する。復号側では復号化部3’を構成する第1及び第2復号化部3’
−1、3’−2により、図6に詳しく示すようにそれぞれ前方グループに関する2ch「1
」、「2」と他のグループに関する4ch「3」〜「6」の予測符号化データをPCMデー
タに復号する。
【0013】
次いでミクス&マトリクス回路4’により式(1)に基づいて元の6ch(Lf、C、R
f、Ls、Rs、Lfe)を復元するとともに、この元の6chと係数mij(i=1,2
,j=1,2〜6)により次式(2)のようにステレオ2chデータ(L、R)を生成する
。
【0014】
L=m11・Lf+m12・Rf+m13・C
+m14・Ls+m15・Rs+m16・Lfe
R=m21・Lf+m22・Rf+m23・C
+m24・Ls+m25・Rs+m26・Lfe …(2)
図2を参照して符号化部2’−1、2’−2について詳しく説明する。各ch「1」〜「
6」のPCMデータは1フレーム毎に1フレームバッファ10に格納される。そして、1
フレームの各ch「1」〜「6」のサンプルデータがそれぞれ予測回路13D1、13D2
、15D1〜15D4に印加されるとともに、各ch「1」〜「6」の各フレームの先頭サ
ンプルデータがフォーマット化回路19に印加される。予測回路13D1、13D2、1
5D1〜15D4はそれぞれ、各ch「1」〜「6」のPCMデータに対して、特性が異な
る複数の予測器(不図示)により時間領域における過去の信号から現在の信号の複数の線
形予測値を算出し、次いで原PCMデータと、この複数の線形予測値から予測器毎の予測
残差を算出する。続くバッファ・選択器14D1、14D2、16D1〜16D4はそれ
ぞれ、予測回路13D1、13D2、15D1〜15D4により算出された各予測残差を
一時記憶して、選択信号/DTS(デコーディング・タイム・スタンプ)生成器17によ
り指定されたサブフレーム毎に予測残差の最小値を選択する。
【0015】
選択信号/DTS生成器17は予測残差のビット数フラグをパッキング回路18とフォ
ーマット化回路19に対して印加し、また、予測残差が最小の予測器を示す予測器選択フ
ラグと、式(1)における相関係数aと、復号化側が入力バッファ22a(図6)からス
トリームデータを取り出す時間を示すDTSをフォーマット化回路19に対して印加する
。パッキング回路18はバッファ・選択器14D1、14D2、16D1〜16D4によ
り選択された6ch分の予測残差を、選択信号/DTS生成器17により指定されたビット
数フラグに基づいて指定ビット数でパッキングする。またPTS生成器17cは、復号化
側が出力バッファ110(図6)からPCMデータを取り出す時間を示すPTS(プレゼ
ンテーション・タイム・スタンプ)を生成してフォーマット化回路19に出力する。
【0016】
続くフォーマット化回路19は図3〜図5に示すようなユーザデータにフォーマット化
する。図3に示すユーザデータ(サブパケット)は、前方グループに関する2ch「1」、
「2」の予測符号化データを含む可変レートビットストリーム(サブストリーム)BS0
と、他のグループに関する4ch「3」〜「6」の予測符号化データを含む可変レートビッ
トストリーム(サブストリーム)BS1と、サブストリームBS0、BS1の前に設けら
れたビットストリームヘッダ(リスタートヘッダ)により構成されている。
また、サブストリームBS0、BS1の1フレーム分は
・フレームヘッダと、
・各ch「1」〜「6」の1フレームの先頭サンプルデータと、
・各ch「1」〜「6」のサブフレーム毎の予測器選択フラグと、
・各ch「1」〜「6」のサブフレーム毎のビット数フラグと、
・各ch「1」〜「6」の予測残差データ列(可変ビット数)と、
・ch「6」の係数a
が多重化されている。このような予測符号化によれば、原信号が例えばサンプリング周波
数=96kHz、量子化ビット数=24ビット、6チャネルの場合、71%の圧縮率を実
現することができる。
【0017】
図2に示す符号化部2’−1、2’−2により予測符号化された可変レートビットスト
リームデータを、記録媒体の一例としてDVDオーディオディスクに記録する場合には、
図4に示すオーディオ(A)パックにパッキングされる。このパックは2034バイトの
ユーザデータ(Aパケット、Vパケット)に対して4バイトのパックスタート情報と、6
バイトのSCR(System Clock Reference:システム時刻基準参照値)情報と、3バイト
のMux レート(rate)情報と1バイトのスタッフィングの合計14バイトのパックヘッダ
が付加されて構成されている(1パック=合計2048バイト)。この場合、タイムスタ
ンプであるSCR情報を、先頭パックでは「1」として同一タイトル内で連続とすること
により同一タイトル内のAパックの時間を管理することができる。
【0018】
圧縮PCMのAパケットは図5に詳しく示すように、19又は14バイトのパケットヘ
ッダと、圧縮PCMのプライベートヘッダと、図3に示すフォーマットの1ないし201
1バイトのオーディオデータ(圧縮PCM)により構成されている。そして、DTSとP
TSは図5のパケットヘッダ内に(具体的にはパケットヘッダの10〜14バイト目にP
TSが、15〜19バイト目にDTSが)セットされる。圧縮PCMのプライベートヘッ
ダは、
・1バイトのサブストリームIDと、
・2バイトのUPC/EAN−ISRC(Universal Product Code/European Article Nu
mber-International Standard Recording Code)番号、及びUPC/EAN−I
SRCデータと、
・1バイトのプライベートヘッダ長と、
・2バイトの第1アクセスユニットポインタと、
・8バイトのオーディオデータ情報(ADI)と、
・0〜7バイトのスタッフィングバイトとに、
より構成されている。そして、ADI内に1秒後のアクセスユニットをサーチするため
の前方アクセスユニット・サーチポインタと、1秒前のアクセスユニットをサーチするた
めの後方アクセスユニット・サーチポインタがともに1バイトで(具体的にはADIの7
バイト目に前方アクセスユニット・サーチポインタが、8バイト目に後方アクセスユニッ
ト・サーチポインタが)セットされる。
【0019】
次に図6を参照して復号化部3’−1、3’−2について説明する。上記フォーマット
の可変レートビットストリームデータBS0、BS1は、デフォーマット化回路21によ
り分離される。そして、各ch「1」〜「6」の1フレームの先頭サンプルデータと予測
器選択フラグはそれぞれ予測回路24D1、24D2、23D1〜23D4に印加され、
各ch「1」〜「6」のビット数フラグはアンパッキング回路22に印加される。また、
SCRと、DTSと予測残差データ列は入力バッファ22aに印加され、PTSは出力バ
ッファ110に印加される。ここで、予測回路24D1、24D2、23D1〜23D4
内の複数の予測器(不図示)はそれぞれ、符号化側の予測回路13D1、13D2、15
D1〜15D4内の複数の予測器と同一の特性であり、予測器選択フラグにより同一特性
のものが選択される。
【0020】
デフォーマット化回路21により分離されたストリームデータ(予測残差データ列)は
、図7に示すようにSCRによりアクセスユニット毎に入力バッファ22aに取り込まれ
て蓄積される。ここで、1つのアクセスユニットのデータ量は、例えばfs=96kHz
の場合には(1/96kHz)秒分であるが、図8、図9(a)に詳しく示すように可変
長である。そして、入力バッファ22aに蓄積されたストリームデータはDTSに基づい
てFIFOで読み出されてアンパッキング回路22に印加される。
【0021】
アンパッキング回路22は各ch「1」〜「6」の予測残差データ列をビット数フラグ
毎に基づいて分離してそれぞれ予測回路24D1、24D2、23D1〜23D4に出力
する。予測回路24D1、24D2、23D1〜23D4ではそれぞれ、アンパッキング
回路22からの各ch「1」〜「6」の今回の予測残差データと、内部の複数の予測器の
内、予測器選択フラグにより選択された各1つにより予測された前回の予測値が加算され
て今回の予測値が算出され、次いで1フレームの先頭サンプルデータを基準として各サン
プルのPCMデータが算出されて出力バッファ110に蓄積される。出力バッファ110
に蓄積されたPCMデータはPTSに基づいて読み出されて出力される。したがって、図
9(a)に示す可変長のアクセスユニットが伸長されて、図9(b)に示す一定長のプレ
ゼンテーションユニットが出力される。
【0022】
ここで、操作部101を介してサーチ再生が指示された場合には、制御部100により
図5に示すADI内に置かれる1秒先を示す前方アクセスユニット・サーチポインタと1
秒後を示す後方アクセスユニット・サーチポインタに基づいてアクセスユニットを再生す
る。このサーチポインタとしては、1秒先、1秒前の代わりに2秒先、2秒前のものでよ
い。
【0023】
図2に示す符号化部2’−1、2’−2により予測符号化された可変レートビットスト
リームデータをネットワークを介して伝送する場合には、符号化側では図10に示すよう
に伝送用にパケット化し(ステップS41)、次いでパケットヘッダを付与し(ステップ
S42)、次いでこのパケットをネットワーク上に送り出す(ステップS43)。
【0024】
復号側では図11(A)に示すようにヘッダを除去し(ステップS51)、次いでデー
タを復元し(ステップS52)、次いでこのデータをメモリに格納して復号を待つ(ステ
ップS53)。そして、復号を行う場合には図11(B)に示すように、デフォーマット
化を行い(ステップS61)、次いで入力バッファ22aの入出力制御を行い(ステップ
S62)、次いでアンパッキングを行う(ステップS63)。なお、このとき、サーチ再
生指示がある場合にはサーチポインタをデコードする。次いで予測器をフラグに基づいて
選択してデコードを行い(ステップS64)、次いで出力バッファ110の入出力制御を
行い(ステップS65)、次いで元のマルチチャネルを復元し(ステップS66)、次い
でこれを出力し(ステップS67)、以下、これを繰り返す。
【0025】
なお、上記実施形態では、前方グループに関する2ch「1」、「2」を
「1」=Lf+Rf
「2」=Lf−Rf
により変換して予測符号化したが、代わりに式(2)によりマルチチャネルをダウンミク
スしてステレオ2chデータ(L、R)を生成し、
次いで次式(1)’
「1」=L+R
「2」=L−R
「3」〜「5」は同じ
「6」=Lfe−C …(1)’
により変換して予測符号化するようにしてもよい(第2の実施形態)。この場合には、復
号化側のミクス&マトリクス回路4’はチャネル「1」、「2」を加算することによりチ
ャネルLを、減算することによりチャネルRを生成することができる。
【0026】
また、第3の実施形態として図12に示すように、2ch「1」、「2」の代わりに式(
2)によりマルチチャネルをダウンミクスしてステレオ2chデータ(L、R)を生成して
、このステレオ2ch(L、R)と4ch「3」〜「6」を予測符号化するようにしてもよい
。なお、第2、第3の実施形態では、フロントレフト(Lf)とフロントライト(Rf)
が復号化側に伝送されないので、復号化側ではこれを式(1)、(2)により生成する。
【0027】
次に図13、図14を参照して第4の実施形態について説明する。上記の実施形態では
、1グループの相関性の信号「1」〜「6」を予測符号化するように構成されているが、
この第4の実施形態では複数グループの相関性のある信号を生成して予測符号化し、圧縮
率が最も高いグループの予測符号化データを選択するように構成されている。このため図
13に示す符号化部では、第1〜第nの相関回路1−1〜1−nが設けられ、このn個の
相関回路1−1〜1−nは例えば6ch(Lf、C、Rf、Ls、Rs、Lfe)のPCM
データを、相関性が異なるn種類の6ch信号「1」〜「6」に変換する。
【0028】
例えば第1の相関回路1−1は以下のように変換し、
「1」=Lf
「2」=C−(Ls+Rs)/2
「3」=Rf−Lf
「4」=Ls−a×Lfe
「5」=Rs−b×Rf
「6」=Lfe
また、第nの相関回路1−nは以下のように変換する。
【0029】
「1」=Lf+Rf
「2」=C−Lf
「3」=Rf−Lf
「4」=Ls−Lf
「5」=Rs−Lf
「6」=Lfe−C
また、相関回路1−1〜1−n毎に予測回路15とバッファ・選択器16が設けられ、
グループ毎の予測残差の最小値のデータ量に基づいて圧縮率が最も高いグループが相関選
択信号生成器17bにより選択される。このとき、フォーマット化回路19はその選択フ
ラグ(相関回路選択フラグ、その相関回路の相関係数a、b)を追加して多重化する。
【0030】
また、図14に示す復号化側では、符号化側の相関回路1−1〜1−nに対してn個の
相関回路4−1〜4−n(又は係数a、bが変更可能な図示省略の1つの相関回路)が設
けられる。なお、図13に示すnグループの予測回路が同一の構成である場合、復号装置
では図14に示すようにnグループ分の予測回路を設ける必要はなく、1つのグループ分
の予測回路でよい。そして、符号化装置から伝送された選択フラグに基づいて相関回路4
−1〜4−nの1つを選択、又は係数a、bを設定して元の6ch(Lf、C、Rf、Ls
、Rs、Lfe)を復元し、また、式(2)によりマルチチャネルをダウンミクスしてス
テレオ2chデータ(L、R)を生成する。
【0031】
また、上記の第1の実施形態では、1種類の相関性の信号「1」〜「6」を予測符号化
するように構成されているが、この信号「1」〜「6」のグループと原信号(Lf、C、
Rf、Ls、Rs、Lfe)のグループを予測符号化し、圧縮率が高い方のグループを選
択するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明が適用される音声符号化装置とそれに対応した音声復号装置の第1の実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1の符号化部を詳しく示すブロック図である。
【図3】図1、図2の符号化部により符号化されたビットストリームを示す説明図である。
【図4】DVDのパックのフォーマットを示す説明図である。
【図5】DVDのオーディオパックのフォーマットを示す説明図である。
【図6】図1の復号化部を詳しく示すブロック図である。
【図7】図6の入力バッファの書き込み/読み出しタイミングを示すタイミングチャートである。
【図8】アクセスユニット毎の圧縮データ量を示す説明図である。
【図9】アクセスユニットとプレゼンテーションユニットを示す説明図である。
【図10】音声伝送方法を示すフローチャートである。
【図11】音声伝送方法を示すフローチャートである。
【図12】本発明が適用される音声符号化装置とそれに対応した音声復号装置の第3の実施形態を示すブロック図である。
【図13】第4の実施形態の音声符号化装置を示すブロック図である。
【図14】第4の実施形態の音声復号装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0033】
1’ 6chミクス&マトリクス回路
13D1,13D2,15D1〜15D4 予測回路(バッファ・選択器14
D1,14D2,16D1〜16D4と共に圧縮手段を構成する。)
14D1,14D2,16D1〜16D4 バッファ・選択器
17 選択信号/DTS生成器(タイミング生成手段)
17c PTS生成器(タイミング生成手段)
19 フォーマット化回路(フォーマット化手段)
21 デフォーマット化回路(分離手段)
22 アンパッキング回路
22a 入力バッファ
24D1,24D2,23D1〜23D4 予測回路(伸長手段)
100 制御部(読み出し手段)
110 出力バッファ
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチチャネルの音声信号を可変長で圧縮するための音声符号化方法及び音
声復号方法に関する。
【背景技術】
【0002】
音声信号を可変長で圧縮する方法として、本発明者は先の出願(特願平9−28915
9号)において1チャネルの原デジタル音声信号に対して、特性が異なる複数の予測器に
より時間領域における過去の信号から現在の信号の複数の線形予測値を算出し、原デジタ
ル音声信号と、この複数の線形予測値から予測器毎の予測残差を算出、予測残差の最小値
を選択する予測符号化方法を提案している。
【0003】
なお、上記方法では原デジタル音声信号がサンプリング周波数=96kHz、量子化ビ
ット数=20ビット程度の場合にある程度の圧縮効果を得ることができるが、近年のDV
Dオーディオディスクではこの2倍のサンプリング周波数(=192kHz)が使用され
、また、量子化ビット数も24ビットが使用される傾向があるので、圧縮率を改善する必
要がある。また、マルチチャネルにおけるサンプリング周波数と量子化ビット数はチャネ
ル毎に異なることもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、予測符号化方式のような圧縮方式は圧縮率が可変(VBR:バリアブル・ビ
ット・レート)であるので、マルチチャネルの音声信号を予測符号化するとチャネル毎の
データ量が時間的に大きく変化する。また、このようなデータを伝送する場合には、チャ
ネル毎にパラレルではなくデータストリームとして伝送される。
【0005】
したがって、再生側(デコード側)においてこのような可変長のデータストリームをチ
ャネル毎に同期して再生(プレゼンテーション)可能にするためには、入力バッファに蓄
積されたデータストリームを読み出してデコーダに出力するためのタイミングを示すデコ
ード時間と、出力バッファに蓄積されたデコード後のデータを読み出してスピーカなどに
出力(プレゼンテーション)するためのタイミングを示す再生時間を管理しなければなら
ない。また、再生側でこのような可変長のデータストリームをサーチ再生するための時間
を管理しなければならない。
【0006】
そこで本発明は、マルチチャネルの音声信号を可変の圧縮率で符号化する場合に再生側
の処理時間を管理することができる音声符号化方法及び音声復号方法を提供することを目
的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、以下の1)及び2)に記載の手段よりなる。
【0008】
すなわち、
1)複数のチャネルの音声信号をそのままのチャネル又は互いに相関をとったチャネル毎に入力される音声信号に応答して、先頭サンプル値を所定時間のフレーム単位で得ると共に、特性が異なる複数の線形予測方法により時間領域の過去から現在の信号の線形予測値がそれぞれ予測され、その予測される線形予測値と前記音声信号とから得られる予測残差が最小となるような線形予測方法を前記フレームを、更に分割したサブフレーム単位に選択して予測符号化するステップと、
前記ステップにより選択されたチャネル毎の予測符号化データが第1のグループのチャネルと第2のグループのチャネルに分けられて、前記第1のグループのチャネルの予測符号化データが格納される第1のビットストリーム(サブストリーム)と、前記第2のグループのチャネルの予測符号化データが格納される第2のビットストリーム(サブストリーム)とを含むサブパケットと、前記サブパケット内のデータが可変ビットレート圧縮された予測符号化データであることを示し、再生側で前記可変ビットレート圧縮に対応した伸長処理が施されるために用いられる識別子を含む同期情報部と、を有するデータ構造にフォーマット化するステップと、
からなる音声符号化方法。
2)請求項1記載の音声符号化方法により符号化されたデータから元の前記複数のチャネルの音声信号を復号する音声復号方法であって、
前記データ構造をサブパケットと同期情報部に分離するステップと、
前記同期情報部内の識別子に基づいて前記サブパケット内のサブフレーム単位の予測符号化データを第1のグループのチャネルと第2のグループのチャネル別にチャネル毎に伸長するステップと、
前記チャネル毎に伸長された音声データから元の前記複数のチャネルの音声信号を復元するステップと、
からなる音声復号方法。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、圧縮データを含むサブパケットと、そのテータのチャネル割り当て情報を含む同期情報部を有するデータ構造にフォーマット化するようにしたので、例えば、再生側において、チャンネル数に応じた的確なデータ処理を行える音声符号化方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明が適用される声符
号化装置とそれに対応する音声復号装置の第1の実施形態を示すブロック図、図2は図1
の符号化部を詳しく示すブロック図、図3は図1、図2の符号化部により符号化されたビ
ットストリームを示す説明図、図4はDVDのパックのフォーマットを示す説明図、図5
はDVDのオーディオパックのフォーマットを示す説明図、図6は図1の復号化部を詳し
く示すブロック図、図7は図6の入力バッファの書き込み/読み出しタイミングを示すタ
イミングチャート、図8はアクセスユニット毎の圧縮データ量を示す説明図、図9はアク
セスユニットとプレゼンテーションユニットを示す説明図である。
【0011】
ここで、マルチチャネル方式としては、例えば次の4つの方式が知られている。
(1)4チャネル方式 ドルビーサラウンド方式のように、前方L、C、Rの3チャ
ネル+後方Sの1チャネルの合計4チャネル
(2)5チャネル方式 ドルビーAC−3方式のSWチャネルなしのように、前方L
、C、Rの3チャネル+後方SL、SRの2チャネルの合計5チャネル
(3)6チャネル方式 DTS(Digital Theater System)方式や、ドルビーAC−
3方式のように6チャネル(L、C、R、SW(Lfe)、SL、SR)
(4)8チャネル方式 SDDS(Sony Dynamic Digital Sound)方式のように、前
方L、LC、C、RC、R、SWの6チャネル+後方SL、SRの2チャネルの合計8チ
ャネル
図1に示す符号化側の6チャネル(ch)ミクス&マトリクス回路1’は、マルチチャネ
ル信号の一例としてフロントレフト(Lf)、センタ(C)、フロントライト(Rf)、
サラウンドレフト(Ls)、サラウンドライト(Rs)及びLfe(Low Frequency Effe
ct)の6chのPCMデータを次式(1)により前方グループに関する2ch「1」、「2」
と他のグループに関する4ch「3」〜「6」に分類して変換し、2ch「1」、「2」を第
1符号化部2’−1に、また、4ch「3」〜「6」を第2符号化部2’−2に出力する。
【0012】
「1」=Lf+Rf
「2」=Lf−Rf
「3」=C−(Ls+Rs)/2
「4」=Ls+Rs
「5」=Ls−Rs
「6」=Lfe−a×C
ただし、0≦a≦1 …(1)
符号化部2’を構成する第1及び第2符号化部2’−1、2’−2はそれぞれ、図2に
詳しく示すように2ch「1」、「2」と4ch「3」〜「6」のPCMデータを予測符号化
し、予測符号化データを図3に示すようなビットストリームで記録媒体5や通信媒体6を
介して復号側に伝送する。復号側では復号化部3’を構成する第1及び第2復号化部3’
−1、3’−2により、図6に詳しく示すようにそれぞれ前方グループに関する2ch「1
」、「2」と他のグループに関する4ch「3」〜「6」の予測符号化データをPCMデー
タに復号する。
【0013】
次いでミクス&マトリクス回路4’により式(1)に基づいて元の6ch(Lf、C、R
f、Ls、Rs、Lfe)を復元するとともに、この元の6chと係数mij(i=1,2
,j=1,2〜6)により次式(2)のようにステレオ2chデータ(L、R)を生成する
。
【0014】
L=m11・Lf+m12・Rf+m13・C
+m14・Ls+m15・Rs+m16・Lfe
R=m21・Lf+m22・Rf+m23・C
+m24・Ls+m25・Rs+m26・Lfe …(2)
図2を参照して符号化部2’−1、2’−2について詳しく説明する。各ch「1」〜「
6」のPCMデータは1フレーム毎に1フレームバッファ10に格納される。そして、1
フレームの各ch「1」〜「6」のサンプルデータがそれぞれ予測回路13D1、13D2
、15D1〜15D4に印加されるとともに、各ch「1」〜「6」の各フレームの先頭サ
ンプルデータがフォーマット化回路19に印加される。予測回路13D1、13D2、1
5D1〜15D4はそれぞれ、各ch「1」〜「6」のPCMデータに対して、特性が異な
る複数の予測器(不図示)により時間領域における過去の信号から現在の信号の複数の線
形予測値を算出し、次いで原PCMデータと、この複数の線形予測値から予測器毎の予測
残差を算出する。続くバッファ・選択器14D1、14D2、16D1〜16D4はそれ
ぞれ、予測回路13D1、13D2、15D1〜15D4により算出された各予測残差を
一時記憶して、選択信号/DTS(デコーディング・タイム・スタンプ)生成器17によ
り指定されたサブフレーム毎に予測残差の最小値を選択する。
【0015】
選択信号/DTS生成器17は予測残差のビット数フラグをパッキング回路18とフォ
ーマット化回路19に対して印加し、また、予測残差が最小の予測器を示す予測器選択フ
ラグと、式(1)における相関係数aと、復号化側が入力バッファ22a(図6)からス
トリームデータを取り出す時間を示すDTSをフォーマット化回路19に対して印加する
。パッキング回路18はバッファ・選択器14D1、14D2、16D1〜16D4によ
り選択された6ch分の予測残差を、選択信号/DTS生成器17により指定されたビット
数フラグに基づいて指定ビット数でパッキングする。またPTS生成器17cは、復号化
側が出力バッファ110(図6)からPCMデータを取り出す時間を示すPTS(プレゼ
ンテーション・タイム・スタンプ)を生成してフォーマット化回路19に出力する。
【0016】
続くフォーマット化回路19は図3〜図5に示すようなユーザデータにフォーマット化
する。図3に示すユーザデータ(サブパケット)は、前方グループに関する2ch「1」、
「2」の予測符号化データを含む可変レートビットストリーム(サブストリーム)BS0
と、他のグループに関する4ch「3」〜「6」の予測符号化データを含む可変レートビッ
トストリーム(サブストリーム)BS1と、サブストリームBS0、BS1の前に設けら
れたビットストリームヘッダ(リスタートヘッダ)により構成されている。
また、サブストリームBS0、BS1の1フレーム分は
・フレームヘッダと、
・各ch「1」〜「6」の1フレームの先頭サンプルデータと、
・各ch「1」〜「6」のサブフレーム毎の予測器選択フラグと、
・各ch「1」〜「6」のサブフレーム毎のビット数フラグと、
・各ch「1」〜「6」の予測残差データ列(可変ビット数)と、
・ch「6」の係数a
が多重化されている。このような予測符号化によれば、原信号が例えばサンプリング周波
数=96kHz、量子化ビット数=24ビット、6チャネルの場合、71%の圧縮率を実
現することができる。
【0017】
図2に示す符号化部2’−1、2’−2により予測符号化された可変レートビットスト
リームデータを、記録媒体の一例としてDVDオーディオディスクに記録する場合には、
図4に示すオーディオ(A)パックにパッキングされる。このパックは2034バイトの
ユーザデータ(Aパケット、Vパケット)に対して4バイトのパックスタート情報と、6
バイトのSCR(System Clock Reference:システム時刻基準参照値)情報と、3バイト
のMux レート(rate)情報と1バイトのスタッフィングの合計14バイトのパックヘッダ
が付加されて構成されている(1パック=合計2048バイト)。この場合、タイムスタ
ンプであるSCR情報を、先頭パックでは「1」として同一タイトル内で連続とすること
により同一タイトル内のAパックの時間を管理することができる。
【0018】
圧縮PCMのAパケットは図5に詳しく示すように、19又は14バイトのパケットヘ
ッダと、圧縮PCMのプライベートヘッダと、図3に示すフォーマットの1ないし201
1バイトのオーディオデータ(圧縮PCM)により構成されている。そして、DTSとP
TSは図5のパケットヘッダ内に(具体的にはパケットヘッダの10〜14バイト目にP
TSが、15〜19バイト目にDTSが)セットされる。圧縮PCMのプライベートヘッ
ダは、
・1バイトのサブストリームIDと、
・2バイトのUPC/EAN−ISRC(Universal Product Code/European Article Nu
mber-International Standard Recording Code)番号、及びUPC/EAN−I
SRCデータと、
・1バイトのプライベートヘッダ長と、
・2バイトの第1アクセスユニットポインタと、
・8バイトのオーディオデータ情報(ADI)と、
・0〜7バイトのスタッフィングバイトとに、
より構成されている。そして、ADI内に1秒後のアクセスユニットをサーチするため
の前方アクセスユニット・サーチポインタと、1秒前のアクセスユニットをサーチするた
めの後方アクセスユニット・サーチポインタがともに1バイトで(具体的にはADIの7
バイト目に前方アクセスユニット・サーチポインタが、8バイト目に後方アクセスユニッ
ト・サーチポインタが)セットされる。
【0019】
次に図6を参照して復号化部3’−1、3’−2について説明する。上記フォーマット
の可変レートビットストリームデータBS0、BS1は、デフォーマット化回路21によ
り分離される。そして、各ch「1」〜「6」の1フレームの先頭サンプルデータと予測
器選択フラグはそれぞれ予測回路24D1、24D2、23D1〜23D4に印加され、
各ch「1」〜「6」のビット数フラグはアンパッキング回路22に印加される。また、
SCRと、DTSと予測残差データ列は入力バッファ22aに印加され、PTSは出力バ
ッファ110に印加される。ここで、予測回路24D1、24D2、23D1〜23D4
内の複数の予測器(不図示)はそれぞれ、符号化側の予測回路13D1、13D2、15
D1〜15D4内の複数の予測器と同一の特性であり、予測器選択フラグにより同一特性
のものが選択される。
【0020】
デフォーマット化回路21により分離されたストリームデータ(予測残差データ列)は
、図7に示すようにSCRによりアクセスユニット毎に入力バッファ22aに取り込まれ
て蓄積される。ここで、1つのアクセスユニットのデータ量は、例えばfs=96kHz
の場合には(1/96kHz)秒分であるが、図8、図9(a)に詳しく示すように可変
長である。そして、入力バッファ22aに蓄積されたストリームデータはDTSに基づい
てFIFOで読み出されてアンパッキング回路22に印加される。
【0021】
アンパッキング回路22は各ch「1」〜「6」の予測残差データ列をビット数フラグ
毎に基づいて分離してそれぞれ予測回路24D1、24D2、23D1〜23D4に出力
する。予測回路24D1、24D2、23D1〜23D4ではそれぞれ、アンパッキング
回路22からの各ch「1」〜「6」の今回の予測残差データと、内部の複数の予測器の
内、予測器選択フラグにより選択された各1つにより予測された前回の予測値が加算され
て今回の予測値が算出され、次いで1フレームの先頭サンプルデータを基準として各サン
プルのPCMデータが算出されて出力バッファ110に蓄積される。出力バッファ110
に蓄積されたPCMデータはPTSに基づいて読み出されて出力される。したがって、図
9(a)に示す可変長のアクセスユニットが伸長されて、図9(b)に示す一定長のプレ
ゼンテーションユニットが出力される。
【0022】
ここで、操作部101を介してサーチ再生が指示された場合には、制御部100により
図5に示すADI内に置かれる1秒先を示す前方アクセスユニット・サーチポインタと1
秒後を示す後方アクセスユニット・サーチポインタに基づいてアクセスユニットを再生す
る。このサーチポインタとしては、1秒先、1秒前の代わりに2秒先、2秒前のものでよ
い。
【0023】
図2に示す符号化部2’−1、2’−2により予測符号化された可変レートビットスト
リームデータをネットワークを介して伝送する場合には、符号化側では図10に示すよう
に伝送用にパケット化し(ステップS41)、次いでパケットヘッダを付与し(ステップ
S42)、次いでこのパケットをネットワーク上に送り出す(ステップS43)。
【0024】
復号側では図11(A)に示すようにヘッダを除去し(ステップS51)、次いでデー
タを復元し(ステップS52)、次いでこのデータをメモリに格納して復号を待つ(ステ
ップS53)。そして、復号を行う場合には図11(B)に示すように、デフォーマット
化を行い(ステップS61)、次いで入力バッファ22aの入出力制御を行い(ステップ
S62)、次いでアンパッキングを行う(ステップS63)。なお、このとき、サーチ再
生指示がある場合にはサーチポインタをデコードする。次いで予測器をフラグに基づいて
選択してデコードを行い(ステップS64)、次いで出力バッファ110の入出力制御を
行い(ステップS65)、次いで元のマルチチャネルを復元し(ステップS66)、次い
でこれを出力し(ステップS67)、以下、これを繰り返す。
【0025】
なお、上記実施形態では、前方グループに関する2ch「1」、「2」を
「1」=Lf+Rf
「2」=Lf−Rf
により変換して予測符号化したが、代わりに式(2)によりマルチチャネルをダウンミク
スしてステレオ2chデータ(L、R)を生成し、
次いで次式(1)’
「1」=L+R
「2」=L−R
「3」〜「5」は同じ
「6」=Lfe−C …(1)’
により変換して予測符号化するようにしてもよい(第2の実施形態)。この場合には、復
号化側のミクス&マトリクス回路4’はチャネル「1」、「2」を加算することによりチ
ャネルLを、減算することによりチャネルRを生成することができる。
【0026】
また、第3の実施形態として図12に示すように、2ch「1」、「2」の代わりに式(
2)によりマルチチャネルをダウンミクスしてステレオ2chデータ(L、R)を生成して
、このステレオ2ch(L、R)と4ch「3」〜「6」を予測符号化するようにしてもよい
。なお、第2、第3の実施形態では、フロントレフト(Lf)とフロントライト(Rf)
が復号化側に伝送されないので、復号化側ではこれを式(1)、(2)により生成する。
【0027】
次に図13、図14を参照して第4の実施形態について説明する。上記の実施形態では
、1グループの相関性の信号「1」〜「6」を予測符号化するように構成されているが、
この第4の実施形態では複数グループの相関性のある信号を生成して予測符号化し、圧縮
率が最も高いグループの予測符号化データを選択するように構成されている。このため図
13に示す符号化部では、第1〜第nの相関回路1−1〜1−nが設けられ、このn個の
相関回路1−1〜1−nは例えば6ch(Lf、C、Rf、Ls、Rs、Lfe)のPCM
データを、相関性が異なるn種類の6ch信号「1」〜「6」に変換する。
【0028】
例えば第1の相関回路1−1は以下のように変換し、
「1」=Lf
「2」=C−(Ls+Rs)/2
「3」=Rf−Lf
「4」=Ls−a×Lfe
「5」=Rs−b×Rf
「6」=Lfe
また、第nの相関回路1−nは以下のように変換する。
【0029】
「1」=Lf+Rf
「2」=C−Lf
「3」=Rf−Lf
「4」=Ls−Lf
「5」=Rs−Lf
「6」=Lfe−C
また、相関回路1−1〜1−n毎に予測回路15とバッファ・選択器16が設けられ、
グループ毎の予測残差の最小値のデータ量に基づいて圧縮率が最も高いグループが相関選
択信号生成器17bにより選択される。このとき、フォーマット化回路19はその選択フ
ラグ(相関回路選択フラグ、その相関回路の相関係数a、b)を追加して多重化する。
【0030】
また、図14に示す復号化側では、符号化側の相関回路1−1〜1−nに対してn個の
相関回路4−1〜4−n(又は係数a、bが変更可能な図示省略の1つの相関回路)が設
けられる。なお、図13に示すnグループの予測回路が同一の構成である場合、復号装置
では図14に示すようにnグループ分の予測回路を設ける必要はなく、1つのグループ分
の予測回路でよい。そして、符号化装置から伝送された選択フラグに基づいて相関回路4
−1〜4−nの1つを選択、又は係数a、bを設定して元の6ch(Lf、C、Rf、Ls
、Rs、Lfe)を復元し、また、式(2)によりマルチチャネルをダウンミクスしてス
テレオ2chデータ(L、R)を生成する。
【0031】
また、上記の第1の実施形態では、1種類の相関性の信号「1」〜「6」を予測符号化
するように構成されているが、この信号「1」〜「6」のグループと原信号(Lf、C、
Rf、Ls、Rs、Lfe)のグループを予測符号化し、圧縮率が高い方のグループを選
択するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明が適用される音声符号化装置とそれに対応した音声復号装置の第1の実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1の符号化部を詳しく示すブロック図である。
【図3】図1、図2の符号化部により符号化されたビットストリームを示す説明図である。
【図4】DVDのパックのフォーマットを示す説明図である。
【図5】DVDのオーディオパックのフォーマットを示す説明図である。
【図6】図1の復号化部を詳しく示すブロック図である。
【図7】図6の入力バッファの書き込み/読み出しタイミングを示すタイミングチャートである。
【図8】アクセスユニット毎の圧縮データ量を示す説明図である。
【図9】アクセスユニットとプレゼンテーションユニットを示す説明図である。
【図10】音声伝送方法を示すフローチャートである。
【図11】音声伝送方法を示すフローチャートである。
【図12】本発明が適用される音声符号化装置とそれに対応した音声復号装置の第3の実施形態を示すブロック図である。
【図13】第4の実施形態の音声符号化装置を示すブロック図である。
【図14】第4の実施形態の音声復号装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0033】
1’ 6chミクス&マトリクス回路
13D1,13D2,15D1〜15D4 予測回路(バッファ・選択器14
D1,14D2,16D1〜16D4と共に圧縮手段を構成する。)
14D1,14D2,16D1〜16D4 バッファ・選択器
17 選択信号/DTS生成器(タイミング生成手段)
17c PTS生成器(タイミング生成手段)
19 フォーマット化回路(フォーマット化手段)
21 デフォーマット化回路(分離手段)
22 アンパッキング回路
22a 入力バッファ
24D1,24D2,23D1〜23D4 予測回路(伸長手段)
100 制御部(読み出し手段)
110 出力バッファ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチャネルの音声信号をそのままのチャネル又は互いに相関をとったチャネル毎に入力される音声信号に応答して、先頭サンプル値を所定時間のフレーム単位で得ると共に、特性が異なる複数の線形予測方法により時間領域の過去から現在の信号の線形予測値がそれぞれ予測され、その予測される線形予測値と前記音声信号とから得られる予測残差が最小となるような線形予測方法を前記フレームを、更に分割したサブフレーム単位に選択して予測符号化するステップと、
前記ステップにより選択されたチャネル毎の予測符号化データが第1のグループのチャネルと第2のグループのチャネルに分けられて、前記第1のグループのチャネルの予測符号化データが格納される第1のビットストリーム(サブストリーム)と、前記第2のグループのチャネルの予測符号化データが格納される第2のビットストリーム(サブストリーム)とを含むサブパケットと、前記サブパケット内のデータが可変ビットレート圧縮された予測符号化データであることを示し、再生側で前記可変ビットレート圧縮に対応した伸長処理が施されるために用いられる識別子を含む同期情報部と、を有するデータ構造にフォーマット化するステップと、
からなる音声符号化方法。
【請求項2】
請求項1記載の音声符号化方法により符号化されたデータから元の前記複数のチャネルの音声信号を復号する音声復号方法であって、
前記データ構造をサブパケットと同期情報部に分離するステップと、
前記同期情報部内の識別子に基づいて前記サブパケット内のサブフレーム単位の予測符号化データを第1のグループのチャネルと第2のグループのチャネル別にチャネル毎に伸長するステップと、
前記チャネル毎に伸長された音声データから元の前記複数のチャネルの音声信号を復元するステップと、
からなる音声復号方法。
【請求項1】
複数のチャネルの音声信号をそのままのチャネル又は互いに相関をとったチャネル毎に入力される音声信号に応答して、先頭サンプル値を所定時間のフレーム単位で得ると共に、特性が異なる複数の線形予測方法により時間領域の過去から現在の信号の線形予測値がそれぞれ予測され、その予測される線形予測値と前記音声信号とから得られる予測残差が最小となるような線形予測方法を前記フレームを、更に分割したサブフレーム単位に選択して予測符号化するステップと、
前記ステップにより選択されたチャネル毎の予測符号化データが第1のグループのチャネルと第2のグループのチャネルに分けられて、前記第1のグループのチャネルの予測符号化データが格納される第1のビットストリーム(サブストリーム)と、前記第2のグループのチャネルの予測符号化データが格納される第2のビットストリーム(サブストリーム)とを含むサブパケットと、前記サブパケット内のデータが可変ビットレート圧縮された予測符号化データであることを示し、再生側で前記可変ビットレート圧縮に対応した伸長処理が施されるために用いられる識別子を含む同期情報部と、を有するデータ構造にフォーマット化するステップと、
からなる音声符号化方法。
【請求項2】
請求項1記載の音声符号化方法により符号化されたデータから元の前記複数のチャネルの音声信号を復号する音声復号方法であって、
前記データ構造をサブパケットと同期情報部に分離するステップと、
前記同期情報部内の識別子に基づいて前記サブパケット内のサブフレーム単位の予測符号化データを第1のグループのチャネルと第2のグループのチャネル別にチャネル毎に伸長するステップと、
前記チャネル毎に伸長された音声データから元の前記複数のチャネルの音声信号を復元するステップと、
からなる音声復号方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−176339(P2008−176339A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86532(P2008−86532)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【分割の表示】特願2005−52784(P2005−52784)の分割
【原出願日】平成10年11月16日(1998.11.16)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【分割の表示】特願2005−52784(P2005−52784)の分割
【原出願日】平成10年11月16日(1998.11.16)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】
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