説明

音波ネジ

【課題】物体内の据付場所内での前記ネジの増強が確実で均一な増強を保証し得るネジ及び方法を提供する。
【解決手段】破損部の固定のためのネジは、中空シャフトと、第一外側ネジ山及びその遠位端部にある径方向開口と、第二外側ネジ山及びその近位端部にある内側係合部分とを含む。第二外側ネジ山は、組織保護スリーブと係合するよう構成される。内側係合部分は、駆動工具の駆動端部に適合するよう構成される。これによって、軸方向の力及び径方向の力をスリーブによってネジに加え得るし、回転方向の力を駆動工具によって加え得る。従って、ネジを物体内の意図する場所に正確に据え付け得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、音波融着技術に関する。本発明は、より具体的には、骨折を固定するためのネジ及び方法に関する。本発明は、破損物体内の増強のためのネジ、ネジを破損物体内に組み入れる工具を含むセット、並びに、記述のセットの使用に関する。破損物体は、骨、又は、家具のような木製若しくはプラスチック製の物体であり得る。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から既知であるのは、固定セメントがネジを通じて骨粗鬆症を患う骨の部分に導入されるシステムである。この装置を用いて大腿頚部骨折並びに遠位大腿骨骨折を固定し得る。
【特許文献1】米国特許第4,653,489号明細書
【0003】
従来技術に従うシステムは、流れ空洞、即ち、軸方向貫通ボアを有するネジを含み、ネジの先端で軸方向貫通ボアを通じて骨セメントを前記部分に導入し得る。骨セメントは、ネジの後続端部に解放可能に取り付けられる装置によって前進される。この装置は商業的に入手可能な注射器と類似し、実質的に円筒形バレルとプランジャとを含む。バレルは空洞を形成し、プランジャは空洞内で前後に移動可能である。
【0004】
この従来技術装置の使用において、固定セメントはバレル内に充填され、然る後、プランジャはセメントに対して付勢される。手動で圧縮力を加えることによって、固定セメントはネジの軸方向貫通ボア内に噴射される。圧力の故に、固定セメントは十分に流動化されるので、固定セメントはネジの近位端部を通過して骨内に至り得る。その結果、ネジは骨内で増強される。
【0005】
このシステムは、固定セメントに加えられる手動圧力が、基本的に適用毎のみならず、適用自体の間さえも異なるので、ネジの先端での骨の前記部分内の固定セメントの分配が確実でも均一でもないという欠点を有する。
【0006】
骨折を固定するための装置が特許文献2に示されており、その開示がここに参照として引用される。超音波エネルギをネジに加えるための装置が特許文献3に開示さており、その開示がここに参照として引用される。特許文献4の図27に示されるように、超音波エネルギ及びポリマピンの使用が骨折固定において既知である。特許文献4の開示はここに参照として引用される。
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0018590号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0018471号明細書
【特許文献4】米国特許第7,335,205号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、物体内の据付場所内での前記ネジの確実で均一な増強を保証し得るネジ及び方法を提供することであり得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これは各独立請求項の主題によって達成される。さらなる実施態様が従属請求項中に記載される。
【0009】
一般的に、破損部(例えば、骨折)の固定のためのネジは、(使用者から最も遠い)遠位端部と、(使用者に最も近い)近位端部と、中心軸とを有するシャフトと、シャフトの中心軸に沿って延びる貫通ボアと、第一外側ネジ山及び遠位端部に配置される径方向開口と、第二外側ネジ山並びにシャフトの近位端部に配置される内側工具係合部分とを含む。
【0010】
ネジは、実質的に中空で細長い素子であるシャフトを有し得る。そこでは、軸方向貫通ボアは、シャフトの壁の厚さが円周方向に一定であるよう、中心軸に沿って形成される。好ましくは、シャフトは丸い断面を有する。
【0011】
遠位端部(ネジの旋盤部分又は前縁)で、第一外側ネジ山は骨(又は木材)内に切り込み得る。従って、第一外側ネジ山は、近位端部への方向にネジの先端で開始して、シャフトの長さの最初の数センチメートルに沿って延びる。例示的な実施態様によれば、骨又は木製物体(例えば、家具)のような関心物体内へのより良好な導入を可能にするよう、第一外側ネジ山はネジの先端でテーパ付きであり得る。
【0012】
第一外側ネジ山の部分においてシャフトの壁を通じる中心貫通ボアから、径方向に少なくとも1つの開口が形成される。ネジの先端部分が幾つかの開口を備えることは、関心物体内でネジを増強するために使用される適切な材料のより良好な分配を可能にし得る。
【0013】
他端部、ネジの近位端部に、第二外側ネジ山が形成され、第二外側ネジ山は、好ましくは、シャフトの軸に沿って数ミリメートルだけ延在する。第二外側ネジ山は、第一外側ネジ山と比較すると、別の種類のネジである。何故ならば、第二外側ネジ山は、組織保護スリーブと係合するよう構成されるからである。第二外側ネジ山と骨を取り囲む組織との間の刺激又は損傷のような否定的な相互依存性を回避するために、巻き(windings)の外側輪郭は、滑らかな接触地域を有するように平坦化され或いは丸められる。
【0014】
さらなる実施態様によれば、増強工具に接続されるように第二外側ネジ山を構成し得る。そこでは、例えば、増強工具のハウジングは、第二外側ネジ山を用いて、ネジの近位端部で支持され、超音波振動を伝達し得るソノトロード(超音波発振器)が、ネジ内部に配置されるポリマピント接触する。
【0015】
さらに、ネジの近位端部は内側工具係合部分を含む。これはネジを対応する駆動端部を有するネジ回し(ドライバ)と結合し得ることを意味する。この駆動端部は六角又はTORX(トルクス)であり得る。その場合には、ネジ回しはレンチでもあり得る。電気、空圧、又は、他の適切な機構を含む電源によってもネジ回しを駆動し得る。
【0016】
本発明によれば、第二外側ネジ山の外径は、シャフトの外径よりも大きい。従って、近位端部にある外側ネジ山とシャフトとの間に段部が形成される。その実施態様によれば、ネジは、さらに、外側ネジ山とシャフトとの間の滑らかな接合部又は肩部をもたらすよう、第二外側ネジ山とシャフトとの間に鍔を含む。例えば、ネジの遠位端部に面する球面を備える半球頭部として鍔を形成し得る。
【0017】
骨内へのネジの移植の場合のために、本発明に従った前記ネジの据付けのためのセットは、上記されたようなネジの他に、ネジの内側工具係合部分と係合するよう構成される駆動工具と、ネジの第二外側ネジ山と係合するよう構成される中空の組織保護スリーブとを含む。
【0018】
組織保護スリーブは、骨内へのネジの導入を容易化するのに適し得る一種の延長片であり、骨を取り囲む筋肉又は他の組織は、ネジの近位端部での直接的な増強工具の取付けを複雑化する。
【0019】
2つの別個の素子、即ち、各々ネジの近位端部で直接的に係合するスリーブ及びネジ回しを用いることで、異なる方向を伴う力をネジの上に精密に加えることが可能であるので、ネジを適切な場所に正確に位置付け得る。ネジ回しを用いることで、円周方向の力をネジ内(或いは外植のために外)でネジに加え得る。スリーブを用いることで、軸方向又は径方向の力をネジに加え得る。他の利点として、組織保護スリーブが緩められてネジの近位端部から取り外される間、ネジをネジ回しによって所定位置に保持し得る。
【0020】
ネジの近位端部での接続の組み合わせ、即ち、スリーブとの接続のための外側ネジ山、及び、駆動工具との接続のための内側係合部分は、釘、打込みネジ、又は、他の移植片(インプラント)を操作するのに適し得る。従って、ネジに関して記載された全ての特徴は、釘、打込みネジ、又は、他の種類の移植片にも当て嵌まる。
【0021】
さらなる実施態様によれば、セットは、さらに、ネジの貫通ボア内へ挿入されるよう構成される、流動化可能材料によって作成されるポリマピンと、ポリマピンのポリマ材料を流動化するためのソノトロードを含む増強工具を含み、増強工具は、ネジの近位端部及び組織保護スリーブの近位端部と結合されるよう構成され、スリーブをネジと増強工具との間に配置し得る。
【0022】
ポリマピンの材料は、生体適合性を有し得ることが付記され、その場合には、生体適合性材料は、人間又は動物の組織と否定的に干渉しない材料であり得る。
【0023】
生体適合性を有し且つ流動可能でもある材料の実施例は、チタンのような特殊適合される金属合金、又は、特殊プラスチック、例えば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、UHMWPE(超高分子量ポリエチレン)、PLA(ポリ乳酸)、PLLA(ポリLラクチド)、PLDLA(ポリ(D,Lラクチド))、PDLLA(ポリDLラクチド)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)であり得る。
【0024】
さらに、ポリマピンの材料が生体吸収可能であれば有利であり得る。1つの可能な生体吸収可能材料は、50%〜90%のポリLラクチドと10%〜50%の間のポリD,Lラクチドとを含むコポリマを含む。具体的には、生体吸収可能材料は、70重量%のポリLラクチドと30重量%のポリD,Lラクチドとを含むコポリマであり得る。好ましくは、生体吸収可能材料をアモルファス材料として形成し得る。
【0025】
組織保護スリーブを含みセットにおいて、増強工具のソノトロードの長さ並びにネジ駆動工具の長さは延長に適合される。
【0026】
使用中、組織保護スリーブは、ネジの近位端部と結合され、ネジの駆動端部は、ネジの近位端部で内側工具係合部分と接続されるのに対し、ネジ回しのシャフトは、少なくとも部分的に、組織保護スリーブの内側に配置される。今や、ネジを関心物体内に導入し或いは配置し得る、即ち、ネジを骨内に螺入し得る。
【0027】
ネジの位置決め後、ネジ回しはネジから分離され、ポリマピンが組織保護スリーブを通じてネジの貫通ボア内に挿入され、増強工具を組織保護スリーブの近位端部と結合し得る。その場合には、増強工具のソノトロードは、組織保護スリーブの内側並びにネジシャフトの内側に配置され、ネジ内部のポリマピンと接触する。引き続き、超音波エネルギ及び/又は力をポリマピンのポリマ材料に加えることによって、ポリマ材料は、材料がネジの遠位端部にある開口から流出して骨(又は木材)の空洞内に至るよう、流動化され或いは熔解される。
【0028】
超音波ソノトロードは、10kHzと50kHzとの間、好ましくは、20kHzと30kHzとの間の周波数を伴って先端で超音波振動を生成するよう構成され、適切な振動振幅は、1μmと100μmとの間、好ましくは、5μmと30μmとの間の範囲であり得る。好ましくは、振動シャフトに沿う方向及び/又は振動シャフトに対して垂直な方向に振動を生成し得る。
【0029】
加えて、一定圧力がソノトロードによってポリマピンに加えられなければならない。第一に、圧力は振動がソノトロードからポリマピンに確実に伝達されることを保証する。第二に、圧力はピンの溶解材料をネジから押し出す。
【0030】
本発明に従ったネジの据付けのためのセットを使用する間に遂行されるステップのより詳細な記載が例示的な実施態様の詳細な記載と共に以下に続く。
【0031】
本発明の実施態様は異なる主題を参照して記載されることが付記されなければならない。具体的には、一部の実施態様は方法の種類の請求項を参照して記載されるのに対し、他の実施態様は装置の種類の請求項を参照して記載される。しかしながら、当業者は、特段の断りのない限り、主題の1つの種類に属する機能のあらゆる組み合わせに加えて、異なる主題に関する機能のあらゆる組み合わせも本出願を用いて開示されていると考えられることを、上記及び以下の記載から知るであろう。
【0032】
本発明の上記に定められる特徴、並びに、さらなる特徴、機能、及び、利点は、以下に記載されるべき実施態様の実施例から導かれ得るし、実施態様の実施例を参照して説明されるが、本発明はそれらに限定されない。
【0033】
付属図面を参照して例示的な実施態様を用いて本発明を今や詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に従ったネジの据付けのためのセットの使用を順次的に示す概略図である。
【図2】本発明に従ったネジの据付けのためのセットの使用を順次的に示す概略図である。
【図3】本発明に従ったネジの据付けのためのセットの使用を順次的に示す概略図である。
【図4】本発明に従ったネジの据付けのためのセットの使用を順次的に示す概略図である。
【図5】本発明に従ったネジの据付けのためのセットの使用を順次的に示す概略図である。
【図6】本発明に従ったネジの据付けのためのセットの使用を順次的に示す概略図である。
【図7】互いに対する骨折片の可能な調節を示す概略図である。
【図8】本発明に従ったネジを示す側面図及び断面図である。
【図9】本発明に従ったネジの据付けのための組み立てられたセットを示す側面図及び拡大断面図である。
【図10】本発明に従ったネジの増強のための組み立てられたセットを示す側面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図面中の例証は概略的であるに過ぎず、原寸ではないことが付記される。異なる図面において、類似の素子は同一の参照番号で提供されている。
【0036】
図1乃至6は、本発明に従ったネジの据付けのためのセットの使用における異なるステップを示す概略的な例証である。
【0037】
図1は、第一外側ネジ山12と第二外側ネジ山14とを含むネジ10を示している。組織保護スリーブ30が、ネジ10の第二外側ネジ山14の後に小さい距離を伴って示されている。さらに、組織保護スリーブ30を第二外側ネジ山14の上に螺合し得ることが、矢印Aによって示されている。矢印Aは右巻きネジ山を示しているが、左巻きネジ山も適切である。
【0038】
結果的に、組織保護スリーブ30の遠位端部32は、ネジ10の外側ネジ山14に対応する内側ネジ山を備える。矢印Bは、組織保護スリーブからネジへの力伝達が軸方向に可能であることを示している。
【0039】
ネジと接続される組織保護スリーブ30を用いることで、ネジ回し40の係合部分42をネジ10の内側係合部分と係合させるために、ネジ回し40のシャフト41を組織保護スリーブ30内に挿入することが可能であり得る。図2にさらに例証されているのは、組織保護スリーブ30との接続地点でのネジ10の構造である。ネジ10は、シャフトの近位端部に、第二外側ネジ山に隣接して鍔13を含む。組織保護スリーブ30は、スリーブ30の遠位端部32で僅かに円錐形である。従って、ネジ10と組織保護スリーブ30との間の接合部は滑らかであることができ、それはより少ない組織刺激をもたらす。
【0040】
図3は、ネジ10と、組織保護スリーブ30と、ネジ回し40とで構成される組立体を用いることで、骨折場所で骨内にネジ10を挿入又は移植することが可能であることを示している。この実施例では、大腿頚部の骨折を固定するために、ネジは大腿骨内に移植されている。矢印B及びCによって示されているのは、骨内にネジ10を容易に駆動するよう、軸方向の押圧及びネジ軸の周りの回転を同時に行う可能性である。
【0041】
図4には、ネジ10が骨内に既に挿入され、ネジ回しがネジから並びに組織保護スリーブ30から取り外されている状態が示されている。今や、図4に描写されているように、組織保護スリーブ30を通じてポリマピン20をネジ10内に挿入し得る。さらに、先端53を備えるソノトロード(超音波発振器)52を含む増強工具50が示されている。ソノトロード52の長さは、ポリマピンがネジ10内に挿入されるときに、ソノトロード52の先端53がネジ10内部でポリマピン20の近位端部24と接触すると同時に、増強工具50のハウジングが組織保護スリーブ30の近位端部34と結合されるような大きさにされる。
【0042】
ネジ10、組織保護スリーブ30、及び、増強工具50の組立体は、図5にも描写されている。さらに、図5では、ポリマピン20並びにソノトロード52がネジ10内部で可視的であるよう、ネジ10は断面図として例証されている。追加的な詳細図には、ポリマピン20の先端にあるインサート22と共に、ポリマピン20が示されており、ソノトロード52を用いて、超音波振動並びに軸方向力がポリマピン20に加えられるときに、インサート22はネジ10内部で支持をもたらす。超音波振動及び軸方向力は、図5中に矢印Dによって示されている。
【0043】
ポリマピン20の遠位端部でインサート22のための適切な支持をもたらすために、貫通ボアの遠位端部付近でネジの貫通ボアの内壁内に段部が形成される。
【0044】
ソノトロードからポリマピンに軸方向に加えられる力の反力は、組織保護スリーブに対して、よって、ネジの第二外側ネジ山及びスリーブと増強工具のハウジングとの間の接続部に対して作用する引力である。
【0045】
エネルギ及び/又は力をポリマピンに加えることによって、ポリマピンの材料は、溶解ポリマ材料が径方向開口を通じてネジ10の先端部分から骨内に出るよう溶解又は流動化される。従って、図6は、ネジ10が骨内に挿入された状況を示しており、ネジの先端10は、ポリマ材料によって増強され、増強工具並びに組織保護スリーブは既にネジの近位端部から取り外されている。
【0046】
図7は、ネジの移植中の他の可能性、即ち、大腿頚部の骨折の固定を例証している。骨内へのネジの螺入後、特に骨粗鬆症の骨においては、(例えば、位置Aから位置Bに)大腿骨の頚部及び骨幹に対して大腿骨の接合頭部を正しく位置付けるために、皮質内で骨内への入口でネジを旋回することが可能であり得る。図7中のPoRは、回転の地点を示している。そのような矯正又は移動は、組織保護スリーブがネジの近位端部に接続されている限り可能である。何故ならば、前記スリーブを把持し得るし、(矢印Gによって示される)旋回動作並びに(矢印Fによって示される)引張り動作のための力を遂行し得るからである。
【0047】
図8は、本発明の1つの実施態様に従ったネジの例証である。例証は、側面図、断面図、詳細側面図及び詳細断面図としてのネジの近位端部である。
【0048】
図8に示されるように、本発明に従ったネジ10は、その遠位端部に、外側ネジ山12と、径方向開口17と、軸方向ボア内の段部16とを含む。軸部(シャンク)の端部においてだけ外側ネジ山12を機械加工し得るし、ネジ山は全長に亘ってネジの軸部も覆い得る。ネジの長手中心線に沿って設けられているのは、2つのボア部分で構成される貫通ボアである。近位ボア部分は、第一直径を含み、遠位ボア部分は、第二直径を含み、第一直径は、第二直径よりも大きい。近位ボア部分は、貫通ボアの主要部分を形成し得る。ネジ山12が機械加工されるネジの軸部の小さい端部だけが、遠位ボア部分によって形成されている。近位ボア部分から遠位ボア部分への移行は、直径における段部16によって形成されている。直径における段部16は、ネジ内の貫通ボアの壁に実質的に直角縁部を有する環状縁部を形成している。直径における段部16の各縁部を平坦に、丸く、或いは、円錐形に機械加工し得る。しかしながら、段部はネジの閉塞遠位端部も提供し得る。
【0049】
加えて、ネジ10は、ネジの壁を通じて径方向に構成される開口又は孔17を特徴として有する。開口17を異なる方向に、例えば、ネジの長手中心線に対して垂直に構成し得るし、ネジ山12を備える端部内に配置し得る。好ましくは、開口17は、近位ボア部分も特徴として有する端部の領域内に配置される。1つの実施態様によれば、2つの開口17を近位ボア部分内に軸方向に並列して並びにネジ山12を通じて構成し得る。さらに、4つのそのような対の開口をネジの円周について均一に、換言すれば、90°だけ離間して分配し得る。しかしながら、3つ、4つ、5つ、又は、それよりも多くの開口を円周方向に設けることも可能であり、円周的に分配される孔が全て同じレベルにあることは必要でない。即ち、開口をネジ山の巻きに沿って円周方向にも分配し得る。これとは別に、横方向又は長手方向に長円の孔、スロット、又は、類似物を設け得る。
【0050】
さらに、壁内の開口17と共に、直径における段部16の位置を長手中心線に沿って選択的に位置付け得る。よって、具体的な用途及び所望の効果に従って増強の場所を決定し得る。
【0051】
図8に同様に示されるように、ネジは、その近位端部に、シャフトの外径から第二外側ネジ山14の外径への肩部又は移行部を形成する鍔13を含む。上述されたように、外側ネジ山14はネジ山線の外側縁部が丸められ或いは少なくとも鋭利でないように機械加工される。ネジの近位端部、即ち、鍔13及び外側ネジ山14は、ネジが移植される骨の外側に留まるので、これらの素子は、ネジの前記端部を取り囲む組織の刺激又は保証を回避し得るように形成されなければならない。外側ネジ山の長さは、ネジと組織保護スリーブとの間の確実な接続を保証するのに十分なだけの数ミリメートルのみであり得る。前記接続の後、軸方向及び/又は径方向の力を伝達し得る。さらに、骨から突出する端部は可能な限り短くなければならない。
【0052】
さらに、ネジは、その近位端部に、内側工具係合部分18を含む。内側係合部分18は回転力の伝達のために設けられる。さらに、内側係合部分に係合されるネジ回しを用いてネジを保持することによって、組織保護スリーブをネジの外側ネジ山から容易に取り外し得る。内側係合部分の形状は、ネジ回しの対応する駆動端部に対応するトルクス又は六角取付け金具であり得る。しかしながら、前記形状は、スロット、十字形、特注形状等を含む、如何なる適切な駆動接続でもあり得る。唯一の制約は、ネジ内の軸方向貫通ボアが内側係合部分の中心部分内の材料の欠落を提供するという事実である。
【0053】
図9には、ネジ10、組織保護スリーブ30、及び、ネジ回し40の組立体が示されている。さらに、詳細図Zは、3つの上述された素子の接続部分を断面で示している。描写されているように、ネジ回し40のシャフト41は、ネジの内側係合部分において駆動端部42と係合し、組織保護スリーブ30は、ネジの近位端部にある外側ネジ山14におけるその遠位端部でそのネジ山と係合する。拡大図Zでは、滑らかな移行部を有するようにネジ10の鍔13の外側輪郭及びスリーブ30の端部を設計し得ることが分かる。
【0054】
図10には、ネジ10、組織保護スリーブ30、インサート22を備えるポリマピン20、及び、超音波ハンドピースのような増強工具のソノトロード52の組立体が示されている。ネジ回しをスリーブから取り外した後、中空の組織保護スリーブ30も通じて、ポリマピン20をネジ10の中空シャフト内に挿入し得る。ポリマピン20の近位に背後には、スリーブ30を通じてネジの貫通ボアに至るソノトロードがある。
【0055】
ポリマピン20を、例えば、ネジを増強するのに適した熱可塑性材料のような他の材料から作成し得ることも付記されなければならず、吸収性材料及び非吸収性材料の双方が有用である。さらに、骨内へのネジの移植に関して記載された技術が表示されたものにだけ限定されないことも付記されるべきである。換言すれば、カニューレ挿入されるネジによって供給され得る全てのネジ用途を本発明に従ったセット及びネジによって潜在的に供給し得る。有利に、ネジが挿入される材料は、多孔性材料である。さらに、所謂ポリマピンの材料は、特に非医療分野における適用の場合には、接着性を有し得る。
【0056】
本発明は図面中に詳細に例証され且つ前記記載中に詳細に記載されたが、そのような例証及び記載は例証的又は例示的であると考えられるべきであり、制限的である考えられるべきではない。即ち、本発明は開示される実施態様に限定されない。
【0057】
開示される実施態様に対する他の変更は、図面、記載、及び、付属の請求項を検討することから、請求される発明を実施する当業者によって理解され且つ実施され得る。請求項中、「含む」という用語は、他の素子又はステップを排除せず、不定冠詞は、複数を排除しない。単一ユニットが請求項に列記される幾つかの品目の機能を充足し得る。特定の手段が相互に異なる従属請求項において列記されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用し得ないことを示さない。請求項中の如何なる参照符号も、その範囲を制限するものとして解釈されてはならない。
【符号の説明】
【0058】
10 ネジ(screw)
12 第一外側ネジ山(first outer thread)
13 鍔(collar)
14 第二外側ネジ山(second outer thread)
16 段部(step)
17 開口(opening)
18 内側工具係合部分(inner tool engagement portion)
20 ポリマピン(polymer pin)
22 インサート(insert)
24 近位端部(proximal end)
30 組織保護スリーブ(tissue protection sleeve)
32 遠位端部(distal end)
34 近位端部(proximal end)
40 ネジ回し(screw driver)
41 シャフト(shaft)
42 係合部分(engagement portion):駆動端部(driving end)
50 増強工具(augmentation tool)
52 ソノトロード(sonotrode)
53 先端(tip)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破損部を固定するためのネジであって、
遠位端部と、近位端部と、中心軸とを有するシャフトと、
前記シャフトの前記中心軸に沿って延びる貫通ボアと、
前記遠位端部に配置される第一外側ネジ山と、
前記シャフトの前記近位端部に隣接して前記シャフトに取り付けられる径方向外向きに延びる鍔と、
該鍔に形成される第二外側ネジ山と、
前記近位端部にある内側工具係合部分とを含む、
ネジ。
【請求項2】
前記第二外側ネジ山の外径は、前記シャフトの外径よりも大きく、前記鍔は、前記シャフトと前記第二外側ネジ山との間の滑らかな移行部を形成する、請求項1に記載のネジ。
【請求項3】
前記内側工具係合部分は、六角又はトルクスネジ回しと適合するよう形成される、請求項1又は2に記載のネジ。
【請求項4】
前記貫通ボアの内径における段部が前記シャフトの前記遠位端部に隣接して形成され、前記シャフトの前記貫通ボア内に挿入されるポリマピンが前記段部によって支持され得る、請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載のネジ。
【請求項5】
当該ネジの前記遠位端部に径方向開口をさらに含む、請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載のネジ。
【請求項6】
前記遠位端部に面する前記鍔の表面は、半球の形状である、請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載のネジ。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載のネジと、
該ネジの内側工具係合部分と係合するよう構成される駆動工具と、
前記ネジの前記第二外側ネジ山と係合するよう構成され、且つ、前記駆動工具を部分的に収容するよう構成される、中空の組織保護スリーブとを含む、
ネジの据付けのためのシステム。
【請求項8】
前記ネジの前記軸方向貫通ボア内に挿入されるよう構成される流動化可能な材料から作成されるポリマピンと、
該ポリマピンの前記ポリマ材料を流動化するためのソノトロードを含む増強工具とを含み、
該増強工具は、前記組織保護スリーブの前記近位端部と結合されるよう構成される、
請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のネジを据え付ける方法であって、
破損部の固定のために組織保護スリーブを前記ネジの近位端部で外側ネジ山と結合するステップと、
駆動工具の駆動端部を前記ネジの近位端部で内側係合部分に係合するステップと、
物体内に前記ネジを据え付けるステップとを含む、
方法。
【請求項10】
前記駆動工具を取り外すステップと、
ポリマピンを前記ネジの前記軸方向貫通ボア内に挿入するステップと、
増強工具のソノトロードを前記ポリマピンの前記近位端部に位置付けるステップと、
前記ポリマピンの材料を流動化するステップと、
前記物体内の前記ネジを増強するために前記流動化される材料を前記ネジから押し出すステップと、
前記増強工具並びに前記組織保護スリーブを取り外すステップとを含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項11】
前記ネジが据え付けられた後、前記中心軸を横断する軸について前記ネジ及び前記組織保護スリーブを回転するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−240396(P2010−240396A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68025(P2010−68025)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(507015952)ストライカー トラウマ ゲーエムベーハー (13)
【Fターム(参考)】