説明

音源球および球技用の球

【課題】近年になり球技を楽しむ視覚障害者が増え、それにともない色々な球技が開発されたが、これら聴覚障害者のおこなう多くの球技は、飛翔する球技の球でプレーすることを前提としていない。この原因のひとつに、球技用の球自体の問題がある。従来の球技用の球は、飛翔中に音を発する構造になっておらず、聴覚で球技用の球を捕捉できなかったためである。そこで本発明は、プレー中の球技用の球がたとえ飛翔状態にあっても、その球技用の球から音を発し、聴覚での捕捉が可能な極めて競技性に秀れた球技用の球を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、中空の球の内部の面の全体に突起もしくは溝を施した構造を特徴とする音源球を用いて、これら各種球技用の球に内包し課題を解消する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打撃時の衝撃や飛翔時に音を発する音源球に関するもので、この音源球は単独で各種用の球技用の球や玩具などとして使用し、あるいは、この音源球を他の球に入れて球技用の球として使用することもできる。さらに詳しくは、視覚ではなく、主に聴覚をもってプレーする球技に関する球で、視覚障害者でも、プレーする球から発する音を頼りに競技をすることができる。
【背景技術】
【0002】
視覚障害者にあっても球技を積極的に楽しむようになって来た。これら視覚障害者の球技は、使用する球に音を発する工夫をして、視覚で把握できない分、その球技用の球から発する音を頼りにプレーされている。具体的には、ドッジボールで使用されるゴムボールの中に鈴を入れて、サッカーのようなゴールにボールを入れ合う「ゴールボール」や、ピンポン玉に小さなビーズなどの粒子を封入し、転がる時に音を発する球でおこなう「サウンドテーブルテニス」などがある。
【0003】
また、視覚障害者のテニスである「ブラインドテニス」は、球体のウレタンスポンジの中心に「サウンドテーブルテニス」に使用されたピンポン玉に小さなビーズなどの粒子を封入した球を埋め込み、球技用の球として使用されプレーされている。
【0004】
これらの視覚障害者の球技用の球は、その音源が上記のように比較的簡単な構造であることもさることながら、ラケットで打った時やバウンドした時の力などの状態がそのまま音源から発せられ、反映されるため、球技を行う視覚障害者にとって、次のプレーをするための情報として球技の球の捕捉に役立ち、プレーを楽しむことができ、競技として成立している。
【0003】
また一方、これら聴覚障害者の球技用の球とは別に、ボールに小さなビーズなどの粒子を入れて音が出る球も工夫され考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−225584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように視覚障害者が球技を楽しむ球技用の球が工夫され実際にプレーされているが、これら聴覚障害者の多くの球技は、球技の球を競技の台やグラウンド、床などの上で転がすことを前提にプレーされている。つまり健常者のおこなう球技のように飛翔した球を打ち合うなど、球技に使用される球が宙を飛ぶことを前提にした球技は少ないということである。
【0006】
これは、聴覚に頼りプレーする視覚障害者は、飛翔した球技の球の速度に対応できないためとの見解もあるが、それとは別に背景技術にも述べた鈴やピンポン玉に小さなビーズなどの粒子を封入したものを音源として使用する球技用の球の構造上の欠陥としての問題がある。
【0007】
具体的には、これら従来の球技の球は、競技台や床、グラウンドに転がしている時か、球技用の球をラケットなどで打った時や球技用の球が競技台上などをバウンドした時に大きな音を発するが、特に飛翔中は球からでる音が小さくなり、聴覚障害者が球技の球を捕捉することが難しいためである。
また、他に考案されている音を発する球も、同様で、球技用の球として飛翔中の球を視覚障害者が聴覚で捕捉することは難しい。
【0008】
本発明の目的は、上述のような現状に鑑みなされたもので、従来の技術で中空の球体に音源として小さなビーズなどの粒子を内封した構造を持つ球技用の球の長所であるところの、ラケットで打った時やバウンドした時の力などの状態がそのまま音源から発せられ反映されるという特性を考慮しつつ、視覚障害者など、主に聴覚をもってプレーする球技に使用する球で、ラケットなどでその球技用の球を打った時やグラウンド、床、競技台に当たった時だけでなく、プレー中の球技用の球がたとえ飛翔状態にあっても、その球技用の球から音を発し、聴覚での捕捉が可能な極めて競技性に秀れた球技用の球を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載された音を発する球は、従来の技術にもあげられたように球技用の球の状態が音に反映することに優れた中空の球体の内部に音源となるビーズ玉などの粒子を内包する構造において、上記の目的を達成するために、この中空の球の内部の面の全体に突起もしくは溝を施した構造を持つことを特徴とするものである(以下、「音源球」と称す)。したがって、音源となる粒子は、それぞれの粒子が互いに衝突して音を発する材料から構成する。また、音源となる粒子が中空の球体の内面と衝突しても音を発するように、粒子の材料、中空の球体の材料、中空の球体の内面の構造や内面のコーティングなどを選定することが望ましい。
【0010】
この音源球の中空の球体の材質は、従来の視覚障害者がプレーする球と同様にその球技の特性に合わせて、プラスチックやセルロイド、硬質ゴムなどを用いる。また、音源となるビーズ玉などの粒子は、その材質同様にその球技の特性にあわせて数量と重さを勘案して用いる。特にビーズ玉の重量は重要で、その球技の競技性を鑑み、内包された粒子の重さによって、球技の球の重心が変化し、これがもとでイレギュラーなど不規則な動きにならないように出来る限り軽量であることが望ましい。
【0011】
本発明の請求項2に記載された球技用の球は、請求項1の音源球をコアとして使用したもので、音源球と外層にあたる球技用の球との間に、空間を設けることを特徴とした構造の球技用の球である。請求項1の音源球は、その音を競技者に聞こえるようにするために、出来る限り吸音性の高い材質で密着して固定することを避けることが望ましいが、視覚障害者の球技用の球としての安全性などを鑑みた場合、球技用の球には、このような吸音性のあるウレタンスポンジやゴムなどを使用することは避けられない。
【0012】
このように請求項2は、中が詰まった球技用の球の中に請求項1の音源球を外層にあたる球技用の球から完全に密着し覆うことなく、この音源球を球技用の球の内部に固定した場合の構造を持つ球技用の球である。
まず球技用の球に、請求項1の音源球の直径もしくは、直径より若干小さめの貫通した穴を設ける。この穴に音源球を入れる。この時、音源球は施された穴の側面に接触する。
さらに、この穴の音源球を球技用の球の穴の両端より、球技用の球と同じ材質構造を持ち、穴の直径と同じ円柱状のもの(以下、円柱体と称す)を挿入し挟むことによりこの音源球を固定する。この際にこの円柱体の音源球に接する面は、平らな面とすることを特徴とする。これにより円柱体に挟まれた音源球は、その頂点の面が円柱体により接触されているだけなので、球技用の球と内包された音源球との間に空間を作ることができる。
またこの円柱体の音源球に接しないもう一方の面は、この球技用の球の球面と同じ曲面に施されているため、球技用の球として球体になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は次の様な効果を奏する。請求項1に記載されている本発明の音源球は、本発明の特徴である中空の内部の面に突起もしくは溝が施してあるが、これは音源球に内封された音源となる粒子が、音源球の内部と衝突する機会を増やす効果がある。
【0014】
なぜならば、この音源球の音を発する原理として、球技用の球に外部からの衝撃など運動のエネルギーが加わると、音源球に内封された音源となる粒子は、音源球の内部の面や音源となる粒子同士で衝突が起こり、その衝突音がこの音源球から音を発生させているためで、この球技の球が運動しているにも関わらず音が出ない時とは、この音源球内部の面に密着して衝突していない状態であるからである。
【0015】
つまり従来の技術であるピンポン玉に小さなビーズなどの粒子を封入した音源球を持つ球技用の球で起こった現象で、飛翔時に外部からの新たな衝撃がなく、この球技の球が回転している際に球技の球から音が消えたように聞こえるのは、従来の音源球に内包された粒子が遠心力によって、音源球の内部の面に沿って、同一の方向に運動することにより、音源球の内部の面と粒子の衝突が極端に少なくなったためで、請求項1の音源球のように音源球の内部の面に突起や溝を施すことにより、音源となる粒子が、常にどれかの突起や溝に衝突し、さらに跳ね返り別の突起や溝に衝突するといった運動が繰り返される機会が増えることになる。よって請求項1の音源球から飛翔中でも音を発することになった。
【0016】
請求項2の発明の効果を以下に奏する。
上述の課題を解決するための手段で説明したように、請求項2の構造で、請求項1の音源球を球技用の球の内部に内包すると、この音源球とウレタンスポンジなどの吸音性のある外層との間に空間を作ることが出来る。この空間によって音源球内部での音源となる粒子との衝突時の音は、球技の球の外部に聞こえるようになる。
もし空間が無い状態、すなわちこの音源球を外層で密着して覆った場合は、音源球内部で音源となる粒子が音源球の内部の表面に衝突した際に、外層の吸音性のあるウレタンスポンジなどが音源球の振動を弱めてしまい、衝撃音が小さくなり、球技の球の外では、音が聞こえなくなる現象が起きてしまう。
【0017】
このため、音源球には、外層を構成するウレタンスポンジなどとの間に空間は必要であるが、従来の技術の場合、外層を構成するウレタンスポンジに内包する音源球の直径より若干大きめの空間を設けて、その中に内包する音源球を固定せずに入れるだけにして空間を確保してきた。
【0018】
しかし、これは音源球が固定されていないために、球技の球の重心がつねに移動することになる。一般的に球技用の球の重心は、その球の中心と一致している。なぜならば、球技用の球の重心と球の中心がずれていると、球技用の球の回転や飛翔が不規則になり、競技性が失われるからである。
請求項2の場合、球技用の球の中心を通る請求項1の音源球の入る貫通した穴に、請求項1の音源球を挿入し、この穴の両端より同じ長さの円柱体をもって、この音源球を挟んで固定することにより、この球技用の球の中心と音源球の中心を一致させることは容易である。このようなことからも、本発明の目的である極めて競技性に秀れた球技用の球の提供を達成することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る音源球の一部を破切した正面図である。
【図2】本発明に係る音源球の内部の施された突起部分の変形例を示す断面の一部の図である。
【図3】本発明に係る球技用の音源球を中空のボールに内包した際の一部を破切した正面図である。
【図4】本発明に係る球技用の音源球を球体のボールに内封した際の一部を破切した正面図である。
【図5】本発明に係る球技用の音源球を効果的に内封した際の一部を破切した正面図である。
【図6】従来の音源球の一部を破切した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の請求項1の音源球の実施する形態を、以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の請求項1の音源球を表したもので、図1の左側が音源球の表面(符号1(イ))を、図1の右側が音源球の断面と内部(符号1(ア))を表した正面図である。
さらに符号3に該当する円及び楕円で示されている図形は、請求項1で記した突起を表し、符号2はその断面を表している。この音源球の内部に施された突起が、符号4に表わしたこの音源球の音源となる粒子と衝突した際に音を発するのである。
尚、本発明の明細書に表現された突起もしくは溝の溝は、これら施された突起を凸ではなく、凹部分から表現したものである。
【0021】
請求項1の球技用の形態の一つとして、「サウンドテーブルテニス」の球技用の球があるが、この場合、図1で示した音源球をそのまま球技用の球として使用する。
この音源球は、セルロイド製で、直径は、従来使用されている卓球の球と同じ39〜40mmである。内封された音源となる粒子は、プラスチック製の中空の球体を使用し、その直径は約3〜4mmのものを4個入れ、音源球内部の突起は、高さ1.5〜2mm、直径3mmの半円状を施す。
【0022】
また、請求項1の球技用の形態の一つとして、視覚障害者の「ゴールボール」のように中空の大きな球を使用する場合は、請求項1の音源球(符号12)を、この球技の球に固定せずにそのまま内封することにより実施する(図3)。この球技は、球技球を強く投げるなど大きな力が球技の球に掛かるためこの音源球は、上述の「サウンドテーブルテニス」に使われた音源球と同じ形状寸法ではあるが、音源球の材質をより強度のあるプラスチックやポリマーを使用する。また、音源となる粒子には、プラスチックの他、比重の大きい、金属球などを使用することにより音が出やすくする。図3は、その正面図で一部を破断して内部の状態を示し、中空の球に音源球を固定せずに内包した状態を示している。
【0023】
さらに請求項1の球技用の形態の一つとして、視覚障害者の「ブラインドテニス」のように、中空ではなく、中まで詰まった球を使用する場合(図4)は、直径約85〜90mmのウレタンスポンジの球体に音源球の直径より2mm程度大きな球状の空間を設け、内封する。
この音源球(符号1(ア))の大きさは、直径40mm、音源球内部の突起は、高さ1.5〜2mm、直径3mmの半円状のものを音源球の内部の面に設ける。音源となる粒子は、比重の軽いプラスチック製の中空の球体を使用し、その直径は約3〜4mmのものを4個入れる。
尚、音源球の直径より2mm程度大きな球状の空間に音源球を置いたのは、この音源球と外層を構成するウレタンスポンジとの間に若干の空間(符号19)を形成するためである。
これによりウレタンスポンジによる吸音を減少させることができる。
【0024】
請求項1の音源球の突起の形状に関して、図1で示した以外の形態を図2で示す。図2(a)は、大小と大きさの違う突起を音源球の内部の表面に設けたことを表す断面の一部で、符号5が大きな突起、符号6が小さな突起である。また符号8はこの音源球の内部に設けた溝を表すものである。また、図2の(b)は、突起の断面が三角形になったものを示したもので、このように本発明の請求項1の突起の形状は、内封する音源となる粒子の大きさや材質、さらには、球技の種類によって勘案されるものである。
【0025】
さらに、図2の(c)に示したように請求項1の音源球は、その球技の種類、球技用の球の形態によって、この音源球の外側の表面(符号22)がその内部の面の突起を反映してもよい。この音源球の外部の表面の溝(符号23)は、この音源球に外層が包み込むような構造の球技用の球であった場合に、音源となる粒子との衝撃の振動をこの溝の空間(符号23)でその振動を残す効果がある。
【0026】
図5は、請求項2の実施する形態を、球技用の球の断面図より示したものである。
この球技用の球は、直径約85〜90mmのウレタンスポンジ製の球体である。この球体に内包するプラスチック製もしくはポリマー製の請求項1の音源球(符号1)を、この音源球の直径40mmと同じか若干小さな貫通穴を設ける。この貫通穴に音源球(符号1)を入れ、この貫通穴の両端より円柱体(符号15)を挿入する。この円柱体は、この球技用の球と同じウレタンスポンジ製である。さらにこの円柱体は、一方の面が平らな面(符号D)を持ち、もう一方の面が球技用の球の球面と同じ曲面を持つ面(符号E)である。この円柱体は、球技用の球の貫通穴との接触面で接着剤により固定される。
【0027】
音源球は、この球技用の球と符号Cで接し、さらに円柱体の符号Bで接することにより、この球技用の球の中心に配置される。この時、この球技用の球との間に空間として符号Aが出来る。
【0028】
音源球内部の突起は、高さ1.5〜2mm、直径3mmの半円状のものを音源球の内部の面に設けたもので、音源となる粒子(符号4)は、比重の軽いプラスチック製の中空の球体を使用し、その直径は約3〜4mmのものを4個入れるものである。
【符号の説明】
【0029】
1 (ア)本発明に係る球技用の音源球の断面
1 (イ)本発明に係る球技用の音源球の表面
2 本発明に係る球技用の音源球の突起の断面
3 本発明に係る球技用の音源球の突起
4 音源となる粒子
5 本発明に係る球技用の音源球の突起の変形体(大)
6 本発明に係る球技用の音源球の突起の変形体(小)
7 本発明に係る球技用の音源球の突起の変形体
8 本発明に係る球技用の音源球の溝
9 本発明に係る球技用の音源球の突起の変形体
10 本発明に係る球技用の音源球の溝
11 (ア)中空の競技球の断面
11 (イ)中空の競技球の表面
12 本発明に係る球技用の音源球
13 (ア)球体の競技球の断面
13 (イ)球体の競技球の表面
14 本発明に係る球技用の球の断面
15 本発明に係る球技用の球に配置された円柱体の断面
16 (ア)従来の音源球の断面
16 (イ)従来の音源球の表面
17 音源球の破断面
18 球技用の球の破断面
19 音源球と外層(球技用の球)との空間
20 音源球の突起の断面
21 本発明の音源球の内部の表面
22 本発明の音源球の外部の表面
23 本発明の音源球の外部の溝
A 空間
B 円柱15との接触面
C 外層との接触面
D 円柱体の平らな面
E 円柱体の球技用の球の球面と同じ曲面を持つ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の球体の内部に複数個の音源となる粒子を内封した球において、その球体の内部側の面に突起もしくは、溝が施されていることを特徴とする音源球。
【請求項2】
中の詰まった球技用の球の内部に請求項1の音源球を配置する構造において、まず、この球技用の球に音源球を配置したい場所を通る貫通穴を設け、一方別に、この球技用の球と同じ材質構造で、一端がこの球技用の球の外側の面と同じ曲面を有し、もう一端が平らな面を有し、上述の貫通穴と同じ直径を持つ円柱体を2つ用意する。
これら一対の円柱体の平らな面で音源球を挟んで、この球技用の球の貫通穴に挿入した構造を特徴とする球技用の球。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−232079(P2012−232079A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114128(P2011−114128)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(509242886)株式会社正栄産業 (1)