説明

音響用部材の製造方法

【課題】ローリングモードによる共振を抑制でき、良好な音質特性が維持された高品質な音響用部材を射出成形により効率良く製造すること。
【解決手段】振動発生部Cで発生した振動に起因して振動する振動板2と、該振動板を径方向の外側から囲繞して支持するエッジ3と、を備える音響用部材1の製造方法であって、振動発生部が軸線O方向に沿って振動板を挟む一方側に配設され、振動板が、エッジの径方向内端部に接合される接合筒部10と、該接合筒部の開口部を塞ぐ振動体11と、を備え、振動体には、軸線方向に沿って振動発生部から離間する他方側に膨出する複数の凸部13が形成され、接合筒部と振動体との間には、射出成形用金型の一部を入り込ませる進入空間Sが画成され、振動板を一次成形品とし且つエッジを二次成形品とする二色成形、又は振動板をインサート品としてエッジをインサート成形することで形成される音響用部材の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響用部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
音響用部材として、例えば下記特許文献1に記載されているような、ボイスコイルが巻回されたボビンに接合される振動板と、該振動板を径方向の外側から囲繞し且つ音響用フレームに装着される環状のガスケットと、これら振動板及びガスケットに接合されて両者を連結し、且つ振動板及びガスケットを形成する材質よりも軟材質で形成された環状のエッジと、を備える構成が知られている。
【0003】
上記エッジ部は、音響用部材の軸線方向にドーム状に湾曲し且つ全周に亘って延びるロール部と、該ロール部から外方に向けて全周に亘って突設された外フランジ部と、ロール部から内方に向けて全周に亘って突設された内フランジ部と、を有している。そして、外フランジ部上に上記ガスケットが接合されている。
上記振動板は、上記ボイスコイルの振動に起因して音響用部材の軸線方向に振動することで音波を放射する部材であり、外周縁部が上記エッジ部の内フランジ部に全周に亘って接合されることで支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−325221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1記載の音響用部材において、振動板は音響用部材の軸線方向に突出した形状とされているため、該振動板の重心位置が振動板の外周縁部を支持している内フランジ部によって囲まれた仮想的な支持面(音響用部材の軸線に対して直交する面)から軸線方向の一方側に離間してしまう。特に、振動板にはボビン及びボイスコイル(振動発生部)が取り付けられるので、これら振動板、ボビン及びボイスコイルのそれぞれの重心位置を合成した振動系の重心位置が上記支持面から軸線方向の一方側に離間してしまうものであった。
【0006】
そのため、振動板が軸線方向に沿って振動している最中に、その軸線方向に直交する直交軸回りに回転しようとする力が該振動板に作用し易く、これにより振動中に振動板にローリング(現象)による共振が生じ易かった。その結果、このローリングモードの共振によってボビン或いはボイスコイルがヨークに当たることで異音を発生させ、音質が低下する懸念があった。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、ローリングモードによる共振を抑制でき、良好な音質特性が維持された高品質な音響用部材を射出成形により効率良く製造することができる音響用部材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
(1)本発明に係る音響用部材の製造方法は、振動発生部が取り付け可能とされ、該振動発生部で発生した振動に起因して振動する振動板と、該振動板を径方向の外側から囲繞して支持する環状のエッジと、を備える音響用部材の製造方法であって、前記振動発生部が、前記音響用部材の軸線方向に沿って前記振動板を挟む一方側に配設され、前記振動板が、前記エッジの径方向内端部に接合される接合筒部と、該接合筒部に外周縁部が全周に亘って連設され、接合筒部の開口部を塞ぐ振動体と、を備え、前記振動体には、前記軸線方向に沿って前記振動発生部から離間する他方側に膨出する複数の凸部が形成され、前記接合筒部と前記振動体との間には、射出成形用金型の一部を入り込ませる進入空間が画成され、前記振動板を一次成形品とし、且つ前記エッジを二次成形品とする二色成形、又は前記振動板をインサート品として前記エッジをインサート成形することで形成されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、振動体の外周縁部に全周に亘って連設された接合筒部がエッジの径方向内端部に接合されることで、振動板が支持されており、エッジの径方向内端部の内側で軸線方向に直交するように形成される仮想面が振動板の支持面として機能する。
ここで、接合筒部に連設された振動体には、軸線方向の他方側、即ち振動発生部が配設される一方側とは反対側の方向(振動発生部から離間する方向)に膨出する複数の凸部が形成されているので、振動板単体の重心位置を上記支持面側にシフトさせることができる。そのため、振動板及び振動発生部の合成重心位置についても、前記仮想的な支持面側にシフトさせて接近させることができる。
従って、振動中に振動板にローリングモードによる共振が発生してしまうことを抑制でき、共振周波数の固有値の低下に起因する音質低下を防止し易い。これにより、良好な音質特性を維持し易く、高品質な音響用部材とすることができる。
【0010】
ところで、音響用部材を製造するにあたって、一次成形品とされた振動板に対して、或いはインサート品とされた振動板に対して、溶融樹脂を射出することでエッジを成形するが、振動板を構成する接合筒部と振動体との間には射出成形用金型の一部を入り込ませる進入空間が形成されている。
そのため、例えば二色成形時における一次成形の型開き時に振動板を一方の射出成形用金型に対して強固に保持させることができ、他方の射出成形用金型からの離型を容易なものとすることができる。また、例えばインサート成形時であってもインサート品である振動板を射出成形用金型に対して強固に組み合わせることができる。従って、音響用部材を射出成形によって効率良く製造することができる。
【0011】
(2)上記本発明の音響用部材の製造方法において、前記凸部が、前記振動体の中央部から該振動体の前記外周縁部に亘って延在する扇形状に膨出すると共に、前記音響用部材の前記軸線を中心として放射状に複数配置されていても良い。
【0012】
この場合には、凸部が振動体の中央部から外周縁部に亘って広範囲に扇形状に膨出しているので、振動板及び振動発生部の合成重心位置を上記支持面側にシフトさせ易く、音質低下をより効果的に防ぎ易い。しかも、複数の凸部は、音響用部材の軸線を中心として放射状に配置されているので、凸部と該凸部が形成されていない部分とが振動体の周方向にバランス良く配置される。そのため、音質にムラが出難く音質特性の向上化を図ることができる。
【0013】
(3)上記本発明の音響用部材の製造方法において、前記振動板を射出成形で形成し、前記振動体の前記中央部が、前記射出成形時に溶融樹脂が射出されるゲート部分とされていても良い。
【0014】
この場合には、振動板を射出成形する時の樹脂流れが鋭角に曲げられる部分がないため、キャビティ内の全体に亘って溶融樹脂を均一に流すことができ、射出成形によって振動板を高い成形精度で形成することができる。
【0015】
(4)上記本発明の音響用部材の製造方法において、前記凸部の稜線が、前記振動体の前記中央部から該振動体の前記外周縁部に亘って直線状に延在していても良い。
【0016】
この場合には、振動板の射出成形時に射出された上記溶融樹脂を中央部側から外周縁部側に向かって抵抗少なくスムーズに流動させることができ、ショートモールドを抑制しながらより高精度に振動板を形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る音響用部材の製造方法によれば、ローリングモードによる共振を抑制でき、良好な音質特性が維持された高品質な音響用部材を射出成形により効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る音響用部材の実施形態を示す上面図である。
【図2】図1に示す音響用部材のA−A線に沿った縦断面図である。
【図3】図1に示す音響用部材の製造方法を示す第1工程図であって、振動板及びガスケットを射出成形によって成形する流れを示す図である。
【図4】図1に示す音響用部材の製造方法を示す第2工程図であって、図3に示す状態の後、エッジを射出成形によって成形する流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る音響用部材の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
(音響用部材)
本実施形態の音響用部材1は、図1及び図2に示すように、ボイスコイル(振動発生部)Cが取り付け可能とされた振動板2と、この振動板2を径方向の外側から囲繞して支持すると共に、音響装置フレームFに装着される環状のガスケット3の内側に連結される環状のエッジ4と、で構成されており、電気信号を受けて上記ボイスコイルCが振動し、この振動に起因して振動板2が振動することで音響装置の外側に音波を放射する構成とされている。
【0021】
なお、本実施形態では、ガスケット3及びエッジ4はそれぞれ共通軸と同軸に配設されている。以下、この共通軸を軸線Oといい、この軸線O方向に沿って音響装置の外側を上側、音響装置の内側を下側という。また、軸線Oに直交する方向を径方向といい、軸線Oを中心に周回する方向を周方向という。
【0022】
振動板2は、エッジ4の径方向内端部に設けられた後述する内筒部21の内周面に接合される接合筒部10と、この接合筒部10に外周縁部が全周に亘って連設され、接合筒部10の開口部を塞ぐと共に上方に向けて膨出するドーム状の振動体11と、備え、例えばポリプロピレン等の合成樹脂材料により一体的に形成されている。
【0023】
そして、本実施形態の振動板2は、振動体11の外周縁部に全周に亘って連設された接合筒部10がエッジ4の内筒部21に接合されることで支持されており、内筒部21の内側で軸線O方向に直交するように形成される仮想面が振動板2の支持面Pとして機能する。なお、この支持面Pは内筒部21の上下方向略中間部に位置する。
【0024】
ガスケット3は、振動板2を形成する材質と同じ材質によって、エッジ4を径方向の外側から囲繞する円環状に形成されている。
【0025】
エッジ4は、振動板2及びガスケット3にそれぞれ接合されて両者を連結する円環状部材であり、上方に向けて円弧状に湾曲し且つ全周に亘って延びるロール部20と、このロール部20よりも径方向の内側に軸線Oと同軸に配設された内筒部21と、ロール部20よりも径方向の外側に軸線Oと同軸に配設された外筒部22と、この外筒部22の下端に径方向の外側に向けて全周に亘って突設された下フランジ部23と、を備え、例えばスチレン系の熱可塑性エラストマ等、射出成形可能で且つ振動板2及びガスケット3を形成する材質よりも軟質な樹脂材料で一体的に形成されている。
【0026】
なお、ロール部20の内周側部分の下端部は、全周に亘って連続して延びるフランジ状の第1段部24を介して内筒部21の上端に接続されている。また、ロール部20の外周側部分の下端部は、全周に亘って連続して延びるフランジ状の第2段部25を介して外筒部22の上端に接続されている。
そして、エッジ4の内筒部21の内周面と、振動板2の接合筒部10の外周面と、が全周に亘って接合されている。また、エッジ4の外筒部22の外周面と、ガスケット3の内周面の下端部分と、が全周に亘って接合されている。また、エッジ4の下フランジ部23と、ガスケット3の下端面の径方向内側部分とが、全周に亘って接合されている。
【0027】
また、本実施形態では、エッジ4における下フランジ部23の一部が、該エッジ4の射出成形時に溶融樹脂が射出されるゲート部分26とされている。なお、このゲート部分26は、例えばエッジ4の射出成形時に形成される、後述する二次キャビティ金型42のゲート45の痕である。図示の例では、下フランジ部23の外周縁にゲート部分26が位置している。
【0028】
上記振動板2について詳細に説明する。
振動体11は、平面視円形状に形成されていると共に軸線Oと同軸に配設されており、ボイスコイルCの振動によって軸線O方向に振動可能とされている。
接合筒部10は、円筒状に形成されていると共に軸線Oと同軸に配設されている。この接合筒部10の内周面の下端には、該接合筒部10よりも下方に延びる装着筒部12が全周に亘って連設されている。そして、この装着筒部12の外側にボイスコイルCが巻回されたボビン等の筒体部5が装着可能とされている。この際、筒体部5は、上端が接合筒部10の下端に接した状態で装着筒部12に例えば外嵌固定される。
つまり、本実施形態では、上記ボイスコイルCが軸線O方向に沿って振動板2を挟む下方側(一方側)に配設されている。
【0029】
ところで、本実施形態の振動体11には、上記ボイスコイルCから接合筒部10に向かう方向である、軸線O方向の上方側(他方側)に向けて膨出する複数の凸部13が形成されている。
これら凸部13は、振動体11の頂点部(中央部)から接合筒部10に連設される外周縁部に亘って延在する平面視略扇形状に膨出していると共に、軸線Oを中心として放射状に3箇所に配置されている。つまり、振動体11の周方向に等間隔を開けて凸部13が3つ形成され、該凸部13と凸部13が形成されていない部分とが周方向に交互に並ぶように配置されている。
【0030】
なお、凸部13は上記したように平面視略扇形に形成されているので、その稜線(凸部13が形成されていない部分との境界線)Lは、頂点部から外周縁部に亘って直線状に延在している。また、凸部13の外周縁部は接合筒部10の上端部に連設されている。これに対して、凸部13が形成されていない部分の外周縁部は、接合筒部10の下端部に連設されている。これにより、接合筒部10の内周面と振動体11の外周面との間に、後述するコア金型31の中子(射出成型用金型)31aの一部を入り込ませる進入空間Sが画成されている。
【0031】
また、振動体11の頂点部は、振動板2の射出成形時に溶融樹脂が射出されるゲート部分14とされている。なお、このゲート部分14は、例えば振動板2の射出成形時に形成される、後述する一次キャビティ金型41のゲート43の痕である。
【0032】
(製造方法)
次に、上述したように構成された音響用部材1の製造方法について説明する。
なお、本実施形態では、振動板2及びガスケット3を一次成形品とし、且つ、エッジ4を二次成形品とする二色成形で製造する場合を例に挙げて説明する。
【0033】
はじめに、図3に基づいて、可動側型板30に固定されたコア金型31と、固定側型板40に固定された一次キャビティ金型41と、を用いて、一次成形品である振動板2及びガスケット3を成形する一次成形工程について説明する。
【0034】
まず、図3(a)に示すように、可動側型板30を固定側型板40に向けて前進させて型締めを行い、コア金型31と一次キャビティ金型41との間に、振動板2及びガスケット3が成形される一次キャビティを形成する。
次いで、図3(b)に示すように、一次キャビティ金型41のキャビティ面に開口する2つのゲート43、44から、上記一次キャビティ内に溶融樹脂を射出して充満させることにより、一次成形品である振動板2及びガスケット3が成形される。
【0035】
なお、一方のゲート43から射出された溶融樹脂によって主に振動板2が成形され、他方のゲート44から射出された溶融樹脂によって主にガスケット3が成形される。特に、一方のゲート43は、振動体11の頂点部に対応する位置に設けられているので、該ゲート43から射出された溶融樹脂は一次キャビティ内の全体に亘って均一に流れて充満され易い。
【0036】
なお、音響用部材1において、エッジ4の内筒部21がロール部20の内周側部分の下端から下方に突出しているので、一次キャビティ金型41に、コア金型31に向けて薄肉の中子41aを突設せずに、肉厚で剛性の高い中子31aだけを突設すれば足りる。
【0037】
次いで、図3(c)に示すように、可動側型板30を固定側型板40から後退させて型開きを行う。このとき、一次成形品である振動板2及びガスケット3は、コア金型31に保持されて、一次キャビティ金型41内から離脱される。なお、振動板2が一次キャビティ金型41内から離脱される際、ゲート43内で硬化した溶融樹脂が切り離される。このときの切断痕が、ゲートの痕、即ちゲート部分14となる。
また、成形された振動板2の接合筒部10と振動体11との間に画成された進入空間Sにコア金型31の中子31aの一部が入り込んで嵌合されているので、上記型開き時に振動板2がコア金型31から脱落することが抑制されると共に、一次キャビティ金型41からスムーズに離型される。
【0038】
次に、図4に基づいて、コア金型31と、固定側型板40に固定された二次キャビティ金型42と、を用いて、二次成形品であるエッジ4を成形する二次成形工程について説明する。
【0039】
まず、図4(a)に示すように、コア金型31を二次キャビティ金型42に対向させた後、可動側型板30を固定側型板40に向けて前進させて型締めを行う。これにより、コア金型31と二次キャビティ金型42との間に、エッジ4が成形される二次キャビティが形成されると共に、振動板2及びガスケット3が配置される。
【0040】
次に、図4(b)に示すように、二次キャビティ金型42のキャビティ面に開口するゲート45から二次キャビティ内に溶融樹脂を射出して充満させることにより、二次成形品であるエッジ4が形成されると共に、振動板2及びガスケット3に接合される。これにより、音響用部材1が形成される。
【0041】
次いで、図4(c)に示すように、可動側型板30を固定側型板40から後退させて型開きを行う。このとき、音響用部材1は、コア金型31に保持されて二次キャビティ金型42内から離脱され、その後、可動側型板30に設けられた図示しないエジェクタピンにより突き出されることで、コア金型31から離型される。
【0042】
その結果、図1及び図2に示す音響用部材1を得ることができる。これにより、音響用部材1の製造方法が終了する。
なお、音響用部材1が二次キャビティ金型42内から離脱される際、ゲート45内で硬化した溶融樹脂が切り離される。このときの切断痕が、ゲートの痕、即ちゲート部分26となる。
【0043】
上記製造方法によって製造された音響用部材1によれば、図1及び図2に示すように、振動体11に上方に向かって、即ち、ボイスコイルCが配設されている下方側とは反対側の方向に向かって膨出する3つの凸部13が形成されているので、振動板2単体の重心位置を支持面P側にシフトさせることができる。そのため、振動板2及びボイスコイルCの合成重心位置Gについても、支持面P側にシフトさせて接近させることができる。
従って、振動中に振動板2にローリングモードによる共振が発生してしまうことを抑制でき、共振周波数の固有値の低下に起因する音質低下を防止し易い。これにより、良好な音質特性を維持し易く、高品質な音響用部材1とすることができる。
【0044】
しかも、本実施形態の凸部13は、振動体11の頂点部から外周縁部に亘って広範囲に扇形状に膨出しているので、振動板2及びボイスコイルCの合成重心位置Gを支持面Pに対してよりシフトさせ易く、音質低下をより効果的に防ぎ易い。
また、これら3つの凸部13は軸線Oを中心として放射状に配置されているので、該凸部13と凸部13が形成されていない部分とが振動体11の周方向にバランス良く配置される。そのため、音質にムラが出難く音質特性の向上化を図ることができる。
【0045】
また、振動体11の頂点部が射出成形時におけるゲート部分14とされているので、上記一次成形工程において、ゲート43から射出した溶融樹脂を、振動板2を成形するための一次キャビティ内の全体に亘って均一に流すことができ、射出成形によって振動板2を高い成形精度で形成することができる。そのうえ、本実施形態の凸部13は、稜線Lが振動体11の頂点部から外周縁部に亘って直線状に延在しているので、ゲート43から射出された溶融樹脂を、頂点部側から外周縁部側に向かって抵抗少なくスムーズに流動させることができ、ショートモールドを抑制しながらより高精度に振動板2を形成することができる。
【0046】
また、上記したように、一次成形工程における型開きの際に、成形された振動板2の接合筒部10と振動体11との間に画成された進入空間Sにコア金型31の中子31aの一部が入り込んで嵌合されているので、振動板2がコア金型31から脱落することが抑制されると共に、一次キャビティ金型41からの離型が容易に行われる。従って、音響用部材1を射出成形によって効率良く製造することができる。
【0047】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0048】
例えば、上記実施形態では、音響用部材1を二色成形により形成したが、これに代えて、振動板2及びガスケット3をインサート品とし、これに対してエッジ4をインサート成形することで音響用部材1を製造しても構わない。なお、振動板2をインサート品とした場合であっても、接合筒部10と振動体11との間に画成された進入空間Sを利用して、振動板2を射出成形用金型に対して強固に組み合わせることができるので、やはり音響用部材1を射出成形によって効率良く製造することができる。
【0049】
また、上記実施形態では、エッジ4に第1段部24及び第2段部25を設けたが、これら両段部24、25を設けずにロール部20と内筒部21及び外筒部22と直接接続させても構わない。また、エッジ4にロール部20を設けたが、このロール部20は必須なものではなく設けなくても構わない。なお、ロール部20を設ける場合には、下方に向けて膨出させても構わない。
【0050】
また、エッジ4におけるゲート部分26を下フランジ部23に位置させたが、このゲート部分26の位置は適宜変更しても良い。また、エッジ4の内筒部21は、ロール部20の内周側部分の下端から上方に突出しても良い。
【0051】
また、上記実施形態では、振動板2の振動体11を上方に向けて膨出し、且つ平面視円形状になるように形成したが、この場合に限定されず、例えば平面視楕円形状や多角形状、その他の形状であっても良く、或いは平板状であっても良く、さらには下方に向けて膨出する形状であっても良い。
また、振動体11に3つの凸部13を形成したが、その数は自由に設定して構わない。但し、凸部と該凸部が形成されていない部分とが、振動体11の周方向に交互に配置されるように、軸線Oを中心として凸部を放射状に配置することが好ましい。こうすることで、振動体11のバランスが整って音質にムラが出難くなるので、音質特性の向上化を図り易い。
【符号の説明】
【0052】
C…ボイスコイル(振動発生部)
L…稜線
O…軸線
S…進入空間
1…音響用部材
2…振動板
4…エッジ
10…振動板の接合筒部
11…振動板の振動体
13…凸部
14…ゲート部分
31a…コア金型の中子(射出成形用金型)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生部が取り付け可能とされ、該振動発生部で発生した振動に起因して振動する振動板と、
該振動板を径方向の外側から囲繞して支持する環状のエッジと、を備える音響用部材の製造方法であって、
前記振動発生部は、前記音響用部材の軸線方向に沿って前記振動板を挟む一方側に配設され、
前記振動板は、
前記エッジの径方向内端部に接合される接合筒部と、
該接合筒部に外周縁部が全周に亘って連設され、接合筒部の開口部を塞ぐ振動体と、を備え、
前記振動体には、前記軸線方向に沿って前記振動発生部から離間する他方側に膨出する複数の凸部が形成され、
前記接合筒部と前記振動体との間には、射出成形用金型の一部を入り込ませる進入空間が画成され、
前記振動板を一次成形品とし、且つ前記エッジを二次成形品とする二色成形、又は前記振動板をインサート品として前記エッジをインサート成形することで形成されることを特徴とする音響用部材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の音響用部材の製造方法において、
前記凸部は、前記振動体の中央部から該振動体の前記外周縁部に亘って延在する扇形状に膨出すると共に、前記音響用部材の前記軸線を中心として放射状に複数配置されていることを特徴とする音響用部材の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の音響用部材の製造方法において、
前記振動板を射出成形で形成し、
前記振動体の前記中央部が、前記射出成形時に溶融樹脂が射出されるゲート部分とされていることを特徴とする音響用部材の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の音響用部材の製造方法において、
前記凸部の稜線は、前記振動体の前記中央部から該振動体の前記外周縁部に亘って直線状に延在していることを特徴とする音響用部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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