説明

音響装置および音響システム

【課題】視聴者の位置が基準位置と異なる場合でも、自動的に良好なオーディオ再生を可能とする。
【解決手段】複数チャンネルのオーディオ信号の再生部と、再生部と聴取者の位置を示す検出信号の入力部と、検出信号によって位置に応じて再生部によって再生されるオーディオ信号を変化させる制御部とを備える。制御部は、位置に応じてオーディオ信号のレベルおよび/または遅延量の目標値を求め、目標値と現在値との差を調整量としてオーディオ信号のレベルおよび/または遅延量を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えばサラウンド再生に適用される音響装置および音響システムに関する。
【背景技術】
【0002】
臨場感の豊かなオーディオ再生を行うサラウンドシステムが知られている。サラウンドシステムでは、5.1ch(チャンネル)、7.1ch(チャンネル)等が知られている。5.1chでは、前方に3チャンネルのスピーカを配置し、後方に2チャンネルのスピーカを配置するスピーカ配置が使用される。
【0003】
前方の複数個のスピーカのみによって、サラウンド再生を行うフロントサラウンドも知られている。3個のスピーカを使用するフロントサラウンドが3.1chと呼ばれ、2個のスピーカを使用するフロントサラウンドが2.1chと呼ばれる。テレビジョン受像機を置くためのラック機能と、フロントサラウンド再生機能とを兼ね備える音響システムが実用化されている。この種類の音響システムは、AVアンプと複数のスピーカとが内蔵されており、接続、設置が簡単な利点を有する。
【0004】
サラウンドシステムにおいて、良好な臨場感を得るためには、スピーカの位置と、聴取者の位置とが予め設定された関係にあることが必要である。例えばスピーカの正面で、且つ所定の距離の基準聴取位置(基準位置と称する)に聴取者が居る時は、良好なサラウンド再生が可能である。しかしながら、聴取者の位置が基準位置でない場合には、レベルおよび位相の設定が最適とならず、所期の臨場感が得られない。
【0005】
下記の特許文献1には、テレビジョン受像機と視聴者の位置関係に応じてテレビジョン受像機に付属のスピーカからの音声信号の出力を制御することが記載されている。具体的には、テレビジョン受像機と視聴者の間の距離に応じて音量レベルを可変するものである。さらに、左右の位置に応じて音量レベルを調整することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4225307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のものは、音量を調整するものであって、聴取者の位置(距離および角度)にかかわらず、サラウンド再生を良好とするものではなかった。さらに、特許文献1に記載のものは、視聴者の位置の検出機能が付加されたテレビジョン受像機に内蔵のスピーカに供給されるオーディオ信号のレベルを制御するものであって、テレビジョン受像機と別に設置されている音響システムの制御には、適用できないものであった。テレビジョン受像機に内蔵されたスピーカは、そのサイズを大きくすることができず、低音再生ができない等の問題があった。したがって、高音質の再生を行なうため、テレビジョン受像機と別に設けられたスピーカによる再生が好ましい。
【0008】
したがって、本開示の目的は、聴取者の位置の検出を他の装置で行い、視聴者の位置にかかわらず、良好なサラウンド再生が可能な音響装置および音響システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本開示は、複数チャンネルのオーディオ信号の再生部と、
再生部と聴取者の位置を示す検出信号の入力部と、
検出信号によって位置に応じて再生部によって再生されるオーディオ信号を変化させる制御部とを備える音響装置である。
好ましくは、制御部は、位置に応じてオーディオ信号のレベルおよび/または遅延量の目標値を求め、目標値と現在値との差を調整量としてオーディオ信号のレベルおよび/または遅延量を変化させる。
【0010】
本開示は、聴取者の位置を検出するセンサーと、
センサーの出力を処理して、位置を示す検出信号を出力する位置検出部と、
複数チャンネルのオーディオ信号の再生部と、
位置検出部からの検出信号の入力部と、
検出信号によって位置に応じて再生部によって再生されるオーディオ信号を変化させる制御部とを備える音響システムである。
好ましくは、位置検出部は、再生部とほぼ同一位置に配置される映像表示装置に設けられた撮像部によって構成される。
【発明の効果】
【0011】
実施の形態によれば、聴取者の位置の検出は、別の装置によって行うので、検出装置を備えない比較的簡単な構成とできる。さらに、音量レベルの制御のみではなく、良好なサラウンド再生を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本開示の一実施の形態の音響システムの外観図である。
【図2】シアタースタンドに設けられた操作エリアの詳細を示す略線図である。
【図3】音響システムの接続構成の概略を示すブロック図である。
【図4】テレビジョン受像機の一例のブロック図である。
【図5】AVアンプの一例のブロック図である。
【図6】視聴位置自動調整を設定するためのグラフィカルユーザインターフェースの画面の一例の略線図である。
【図7】英語表記のグラフィカルユーザインターフェースの画面の一例の略線図である。
【図8】視聴位置情報を生成するための構成の一例のブロック図である。
【図9】視聴位置情報の検出の説明に用いる略線図である。
【図10】視聴位置情報の検出の説明に用いる略線図である。
【図11】視聴位置情報をHDMI−CECで伝送する場合のデータ構成の説明に用いる略線図である。
【図12】視聴位置情報の一例の説明に用いる略線図である。
【図13】左右バランスの調整の説明に用いる略線図である。
【図14】左右バランスの調整の説明に用いる略線図である。
【図15】左右バランスの調整の説明に用いる略線図である。
【図16】バランス表示の説明に用いる略線図である。
【図17】各操作に対する動作をまとめて示す略線図である。
【図18】コマンド受信時の処理を説明するためのフローチャートである。
【図19】1秒毎の定期処理を説明するためのフローチャートである。
【図20】HDMI機器制御設定を切り換えたときの処理を説明するためのフローチャートである。
【図21】テレビジョン受像機の電源をオンとしたときの処理を説明するためのフローチャートである。
【図22】AVアンプの電源をオンとしたときの処理を説明するためのフローチャートである。
【図23】人が検出されないときの処理を説明するためのフローチャートである。
【図24】位置情報が通知されないときの処理を説明するためのフローチャートである。
【図25】AVアンプのHDMI機器制御設定をオフしたときの処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本開示の範囲は、以下の説明において、特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
【0014】
<システムの概略>
図1に示すように、一実施の形態では、画像表示装置としてのテレビジョン受像機100が載置可能なラックの構成とされ、さらに、AVアンプと複数のスピーカとが一体の構成とされたフロントサラウンド方式の音響装置(以下、シアタースタンドと称する)200が使用される。シアタースタンド200は、例えば3.1chフロントサラウンド方式である。テレビジョン受像機100とシアタースタンド200とがHDMI(High-definition multimedia interface)を介して接続される。
【0015】
HDMIは、画像(動画)の信号と、その画像に付随する音声の信号とを含むベースバンド信号を高速に伝送するデジタルインタフェースである。HDMIの規格は、PC(Personal Computer )とディスプレイの接続標準規格であるDVI(Digital Visual Interface)に音声伝送機能や著作権保護機能を加えて、AV(Audio Visual)機器向けにアレンジした規格である。
【0016】
HDMIを介して接続される装置には、HDMIソース(HDMI Source) 、HDMIシンク(HDMI Sink) およびHDMIリピータ(HDMI Repeater) の3種類がある。HDMIソースは、HDMIを介して、画像や音声の信号を出力する出力端子を備え、HDMIシンクは、HDMIを介して、画像や音声の信号が入力される入力端子を備える。HDMIリピータは、1以上の入力端子と、1以上の出力端子とを備え、HDMIソースおよびHDMIシンクの両方であるかのように振る舞い、HDMIソースとHDMIシンクとを中継する。
【0017】
HDMIは、HDMIソースから、必要なHDMIリピータを介して、HDMIシンクに、ベースバンドの画像や音声の信号を一方向に送信する信号チャンネルを有する。HDMIは、HDMIソース、必要なHDMIリピータおよびHDMIシンクの制御に利用される制御信号(メッセージ)を双方向に送信する制御チャンネルとしてのCEC(Consumer Electronics Control) ラインを有する。CECラインによって、制御系が互いに制御
される。
【0018】
例えば図1における音響システムでは、テレビジョン受像機100がHDMIシンクとしての機能を有し、シアタースタンド(AVアンプ)200がHDMIリピータとしての機能を有する。さらに、HDMIソースとしてのBD(Blu-ray Disc(商標))レコーダ等が接続される。このようなAVシステムを構成する各装置は、それぞれCECに対応しており、BDレコーダにおける再生操作や、テレビジョン受像機における電源オフ操作や選択操作に応じて、連携した動作を行う。
【0019】
HDMIを介してマルチチャンネルPCM信号を伝送できる。シアタースタンド200のAVアンプは、BDレコーダから、例えば、LPCM7.1ch等の高音質音声信号を受けて音声出力を行うとともに、テレビジョン受像機100に対してはHDMI信号のうちの映像信号を送信するようになされる。さらに、シアタースタンド200のAVアンプは、電源待機状態(スタンバイ状態)等の場合、自身からは音声出力をせずに、入力された信号をテレビジョン受像機100に送信するようにもできる。このとき、HDMI信号がBDレコーダからAVアンプを通ってテレビジョン受像機100に供給される。
【0020】
テレビジョン受像機100の前面の表示画面の周辺のフレームにおいて、下部中央位置にセンサー101が設けられている。さらに、図示しないが、リモコン受光部、電源ランプ等がセンサー101と同様に前面に設けられている。センサー101は、ビデオカメラであって、テレビジョン受像機100の前面の所定範囲の視聴者を撮影する。さらに、撮像画像を処理することによって、視聴者の顔認識がなされる。テレビジョン受像機100は、デジタルテレビジョン放送を受信する機能、他のBDレコーダ等の機器からの再生信号を表示する機能等を有する。
【0021】
シアタースタンド200は、BDレコーダ等の機器を置くための棚板を備え、上部スペース201に複数のスピーカが設置されている。例えば2.1chフロントサラウンド方式の場合では、左(L)chのスピーカと、R(右)chのスピーカと、サブウーファとが設置されている。3.1chフロントサラウンド方式の場合では、さらに、C(中央)chのスピーカが追加される。これらのスピーカの出力が上部スペース201から放射される。
【0022】
上部スペース201の下側に操作エリア202が配置されている。図2に示すように、操作エリア202には、リモコン受光部203、電源ランプ204、電源ボタン205、入力切り換えボタン206および音量調整ボタン207が設けられている。テレビジョン受像機100およびシアタースタンド200の背面において、HDMIケーブルによって両者が接続される。
【0023】
<システムの接続構成>
図3にAVシステムの一例を示す。このAVシステムは、テレビジョン受像機100と、シアタースタンド200と、BDレコーダ400とDVDレコーダ500と衛星放送チューナ600とから構成される。シアタースタンド200は、AVアンプ300とスピーカ部SPとから構成されている。BDレコーダ400とDVDレコーダ500と衛星放送チューナ600とは、シアタースタンド200の棚板上に設置されている。
【0024】
テレビジョン受像機100、AVアンプ300、BDレコーダ400、DVDレコーダ500および衛星放送チューナ600は、それぞれHDMI−CEC対応機器(以下、単にCEC対応機器という)である。図3のAVシステムにおいては、テレビジョン受像機100とAVアンプ300とがHDMIケーブルで接続され、AVアンプ300と、BDレコーダ400、DVDレコーダ500、衛星放送チューナ600のそれぞれとがHDMIケーブルで接続されている。
【0025】
さらに、テレビジョン受像機100とAVアンプ300とは、光ケーブルでも接続されている。テレビジョン受像機100は、光ケーブルを介して、光デジタル音声信号をAVアンプ300に供給する。さらに、CEC対応機器には固有の物理アドレスが割り当てられている。AVアンプ300には、スピーカ部SPが接続されている。このスピーカ部SPは、例えば、3.1chフロントサラウンドを実現するように、視聴者の右前方、左前方および中央に位置するスピーカ、および低音出力用サブウーファスピーカで構成されている。
【0026】
図3のAVシステムにおいて、AVアンプ300は、AVアンプ300が音声を出力するモード(システムオーディオモード)がオンに設定されている場合、BDレコーダ400等からのHDMI信号を受信し、テレビジョン受像機100に対して、HDMI信号のうちの映像信号のみを伝送する。AVアンプ300は、システムオーディオモードがオフである場合、BDレコーダ400等からのHDMI信号を受信し、テレビジョン受像機100に対して、BDレコーダ400等からのHDMI信号をテレビジョン受像機にそのまま送信する。
【0027】
図3のAVアンプAVシステムにおいて、テレビジョン受像機100、AVアンプ300、BDレコーダ500、DVDレコーダ500および衛星放送チューナ600は、それぞれ、各HDMI装置における操作に応じて、CECラインを介して送受信される制御信号であるCECメッセージに基づいた動作を行う。
【0028】
<テレビジョン受像機の構成例>
図4を参照して、テレビジョン受像機100の構成例について説明する。図4のテレビジョン受像機100は、被制御部111および制御部112から構成される。被制御部111は、制御部112の制御の下、テレビジョン受像機100の種々の機能を実現する。制御部112は、例えばリモートコントローラ125からのリモートコントロール信号を受信する受信部126からの制御信号を受け取り、操作に応じた制御を行う。
【0029】
被制御部111は、HDMIスイッチャ113、HDMI受信部114、、CEC通信部115、デジタルチューナ116、デマルチプレクサ117、MPEG(Moving Picture Expert Group) デコーダ118、映像処理部119、表示パネル120、音声処理部121、スピーカ部SP、センサー101からの撮像信号を処理する撮像信号処理部122を備えている。制御部112は、CPU(Central Processing Unit )、フラッシュROM、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等が内部バスを介して接続される構成とされている。
【0030】
HDMIスイッチャ113は、図示せぬ2つのHDMI端子をHDMI受信部114に選択的に接続する。HDMI受信部114は、HDMIスイッチャ113を介して、図示せぬ2つのHDMI端子の何れか一方に接続されている。HDMI受信部114は、HDMIに準拠した通信により、2つのHDMI端子に接続されている外部機器(HDMIソース、またはHDMIリピータ)から送信されてくるベースバンドの映像と音声の信号(HDMI信号)を受信する。HDMI受信部114は、受信したHDMI信号のうちの映像信号を映像処理部119に供給し、受信したHDMI信号のうちの音声信号を音声処理部121に供給する。
【0031】
CEC通信部115は、制御部112の制御に基づいて、HDMIリピータまたはHDMIソースとの間で、CECラインを介したCECメッセージの送受信を行う。例えばセンサー101の撮像信号を処理して得られた視聴者位置情報がCECメッセージとしてHDMIケーブルを介してシアタースタンド200のAVアンプ300に対して供給される。視聴者位置情報は、再生部としてのスピーカと、聴取者との間の距離とスピーカの正面軸に対する角度を示す検出信号である。
【0032】
デジタルチューナ116は、図示せぬアンテナ端子から入力されたテレビジョン放送信号を処理して、ユーザが選択したチャンネルに対応した所定のTS(Transport Stream)を、デマルチプレクサ117に供給する。デマルチプレクサ117は、デジタルチューナ116から供給されたTSから、ユーザの選択したチャンネルに対応した、パーシャルTS(映像信号のTSパケット、音声信号のTSパケット)を抽出し、MPEGデコーダ118に供給する。
【0033】
デマルチプレクサ117は、デジタルチューナ116から供給されたTSから、PSI1/SI(Program Specific Information/Service Information)を取り出し、制御部112に供給する。デジタルチューナ116から供給されたTSには、複数のチャンネルが多重化されている。デマルチプレクサ117がTSから任意のチャンネルのパーシャルTSを抽出する処理は、PSI1/SI(PAT/PMT)から任意のチャンネルのパケットID(PID)の情報を得ることで可能となる。
【0034】
MPEGデコーダ118は、デコード処理を行い、その結果得られる映像信号を、映像処理部119に供給し、音声信号を、音声処理部120に供給する。映像処理部119は、パネル駆動回路を有し、表示パネル120を駆動し、映像を表示させる。表示パネル120は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display) 等で構成されている。音声処理部121は、D/Aコンバータ、音声増幅器を有し、増幅したアナログ音声信号をスピーカ部SPに供給する。
【0035】
受信部126は、リモートコントローラ125から送信された、リモートコントロール信号を受信し、制御部112に供給する。ユーザは、リモートコントローラ125を操作することで、テレビジョン受像機100の操作、並びにテレビジョン受像機100にHDMIケーブルで接続されている、その他のCEC対応機器の操作を行うことができる。
【0036】
<AVアンプの構成例>
図5を参照して、AVアンプ300の具体的な構成例について説明する。図5のAVアンプ300は、被制御部301および制御部302から構成される。被制御部301は、制御部302の制御の下、AVアンプ300の種々の機能を実現する。制御部302は、例えばリモートコントローラ303からのリモートコントロール信号を受信する受信部304からの制御信号を受け取り、操作に応じた制御を行う。さらに、制御部302と関連して操作部305および表示部306が設けられている。
【0037】
操作部305は、電源ボタン、入力切り換えボタン、音量調整ボタン等を有する。表示部306は、ラックの上面部に設けられた例えばLCDであり、設定されている音量、選択されている入力、モード等を表示する。
【0038】
被制御部301は、HDMIスイッチャ307、HDMI受信部308、HDMI送信部309、CEC通信部310、変換部311、セレクタ312、DSP(Digital Signal Processor)、音声増幅部314、コントロール信号生成部315を備えている。制御
部302は、CPU(Central Processing Unit )、フラッシュROM、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等が内部バスを介して接続される構成とされている。
【0039】
なお、HDMIスイッチャ307、HDMI受信部308、およびHDMI送信部309は、システムオーディオモードがオフである場合、BDレコーダ400からのHDMI信号を受信し、テレビジョン受像機100に対して、BDレコーダ400からのHDMI信号をテレビジョン受像機にそのまま送信する。
【0040】
HDMIスイッチャ307は、図示せぬ複数のHDMI端子を、HDMI受信部308に選択的に接続する。HDMI受信部308は、HDMIスイッチャ307を介して、図示せぬ複数のHDMI端子の何れか一つに接続されている。HDMI受信部308は、HDMIに準拠した通信により、図示せぬ複数のHDMI端子に接続されている外部機器(HDMIソース)から一方向に送信されてくるベースバンドの映像と音声の信号(HDMI信号)を受信する。HDMI受信部308は、受信したHDMI信号のうちの音声信号をセレクタ312に供給したり、受信したHDMI信号をそのままHDMI送信部309に供給する。HDMI送信部309は、HDMIに準拠した通信により、HDMI受信部308から供給されたベースバンドの映像と音声の信号(HDMI信号)を図示せぬHDMI端子から送出する。
【0041】
CEC通信部310は、制御部302の制御に基づいて、HDMIシンクまたはHDMIソースとの間で、CECラインを介したCECメッセージの送受信を行う。例えばテレビジョン受像機100からCECメッセージとして送信された視聴者位置情報がHDMIケーブルを介してCEC通信部310供給される。コントロール信号生成部315は、受信した視聴者位置情報を使用してコントロール信号を生成する。コントロール信号がDSP313に対して供給される。コントロール信号は、スピーカと視聴者との間の距離に応じてスピーカによって再生されるオーディオ信号を変化させるための信号である。DSP313によってオーディオ信号を変化させる態様としては、左右のスピーカに供給されるオーディオ信号のレベルの調整、および/または左右のスピーカに供給されるオーディオ信号の位相の調整がある。
【0042】
変換部311は、図示せぬ光入力端子から入力されたデジタル光信号から所定のフォーマットのデジタル音声信号およびクロック信号を生成し、これらのデジタル音声信号およびクロックをセレクタ312に供給する。セレクタ312は、HDMI受信部308から供給される音声信号および変換部311から供給される音声信号を選択してDSP313に供給する。
【0043】
DSP313は、セレクタ312から供給された音声信号を処理する。DSP313は、例えば、3.1chのフロントサラウンド方式を実現するための各チャンネルの音声信号を生成する処理、デジタル信号をアナログ信号に変換する処理等を行う。DSP313からのアナログ音声信号が増幅部314に供給される。増幅部314は、フロントレフト音声信号、フロントライト音声信号およびサブウーファ音声信号を増幅して、図示せぬ音声出力端子に出力する。なお、図示せぬ音声出力端子には、スピーカ部SPを構成するフロントレフトスピーカ、フロントライトスピーカ、およびサブウーファスピーカが接続されている。
【0044】
DSP313がフロントサラウンド方式を実現するための各チャンネルの音声信号を生成する処理を行う場合、コントロール信号生成部315からのコントロール信号によって制御される。すなわち、コントロール信号は、視聴者位置情報によって示されるスピーカと視聴者との間の距離に応じてスピーカによって再生されるオーディオ信号のレベルおよび/または遅延量を変化させる。
【0045】
なお、BDレコーダ400、DVDレコーダ500および衛星放送チューナ600の構成は、既存のものと同様であるので、これらの構成についての説明を省略する。
【0046】
<テレビジョン受像機における設定>
上述したテレビジョン受像機100には、検出した視聴位置情報信号をCEC通信部115を介してAVアンプ300に対して出力し、視聴位置自動調整を行う機能をオン/オフする設定メニューが用意されている。図6は、設定メニューのグラフィカルユーザインターフェースの画面表示を示す。テレビジョン受像機100の画面にこのメニュー画面が表示される。なお、図6のメニュー画面は、表示映像に対して重畳表示されても良い。
【0047】
テレビジョン受像機100のリモートコントローラ125のホームボタンを押して、視聴位置自動調整メニューの設定画面131を表示する。画面131は、視聴位置自動調整の機能のオン/オフの選択表示部132、外部機器連携の機能のオン/オフの選択表示部133、決定ボタン134、戻るボタン135が表示される。これらのボタンの選択は、リモートコントローラ125の方向キーの操作によってなされ、さらに、決定ボタンが押されると、選択が確定される。
【0048】
さらに、センサー101が撮像している撮像画像の表示ウインドウ136および視聴位置の表示ウインドウ137が表示される。撮像画像の表示ウインドウ136には、検出された視聴者の顔位置が四角形のマークで示されている。視聴位置の表示ウインドウ137には、検出させれた視聴位置が例えば白い丸のマークで表示される。
【0049】
図6は、日本語表示の例である。他の言語例えば英語表示の設定画面131’の一例を図7に示す。図6と対応する表示項目に対して同一の参照符号を付して示す。
【0050】
<視聴位置の検出>
テレビジョン受像機100は、センサー101からの撮像信号を撮像信号処理部122において処理することによって、視聴位置情報信号を取得し、視聴位置情報信号がCEC通信部115を介してシアタースタンド200のAVアンプ300のCEC通信部310に対してHDMIケーブルを通じて伝送される。撮像信号処理部122の一例について図8を参照して説明する
【0051】
センサー101の撮像信号(動画信号)が画像処理部141に供給される。画像処理部141は、撮像された動画像に対する画像処理を行う。すなわち、画像処理部141は、撮像画像に含まれている顔および顔の表情の検出処理を行う。画像処理部141の画像処理の結果がユーザ方向/距離算出部142に供給される。ユーザ方向/距離算出部142の出力がユーザ位置情報算出部144に供給される。ユーザは、テレビジョン受像機101の視聴者を意味している。
【0052】
画像処理部141における顔検出処理は、公知の方法を使用できる。簡単に顔検出処理につくいて説明する。画像から顔を検出するには、まず供給された画像における顔の位置、顔の大きさ、顔の方向をそれぞれ検出する。顔の位置と大きさが検出されることによって、顔画像の部分を画像から切り出すことができる。そして、切り出した顔画像と、顔の方向の情報とから、顔の特徴的な部分(顔特徴位置)が検出される。顔の特徴的な部分は、眉毛、目、鼻、口等である。顔特徴位置の検出には、例えばAAM(Active Appearance Models)と呼ばれる方法が使用される。
【0053】
顔特徴位置を検出すると、検出した顔特徴位置のそれぞれに対して局所特徴量が算出される。局所特徴量を算出し、算出した局所特徴量を顔画像と合わせて記憶しておくことで、センサー101で撮像された画像から顔の識別が可能となる。顔の識別方法は、例えば特開2007−65766号公報、特開2005−44330号公報等に記載の技術を用いることできる。
【0054】
ユーザ方向/距離算出部142は、画像処理部141の画像処理の結果、センサー101のカメラの画角、解像度の情報等の光学情報143を受け取り、センサー101の光軸に対すユーザの相対位置(方向〔φ1,θ1〕、距離d1)を算出する。
【0055】
図9Aは、センサー101の撮像範囲内に設定されている位置検出エリアに二人のユーザが存在する例を示している。図9Bは、センサー101で撮像された画像中に含まれるユーザの顔検出位置と顔サイズとを示す。一方のユーザ(ユーザ1と称する)の顔検出位置〔a1,b1〕および顔サイズ〔w1,h1〕と、他方のユーザ(ユーザ2と称する)の顔検出位置〔a2,b2〕および顔サイズ〔w2,h2〕とが画像処理部141からユーザ方向/距離算出部142に供給される。なお、顔サイズのwは、顔検出矩形エリアの幅であり、顔サイズのhは、顔検出矩形エリアの高さである。
【0056】
図10A、図10Bおよび図10Cは、顔サイズと距離の関係を示している。図10Aは、基準距離d0と距離d1にユーザが存在する場合を示す。図10Bは、距離d1のユーザの顔サイズ〔w1,h1〕を説明するための図である。図10Cは、基準距離d0のユーザの基準顔サイズ〔w0,h0〕を説明するための図である。
【0057】
方向〔φ1,θ1〕は、撮像画像サイズ〔xmax,ymax〕で正規化された顔検出位置〔a1,b1〕とセンサー101のカメラの画角〔φ0,θ0〕から下式のように算出される。
水平方向:φ1=φ0×a1
垂直方向:θ1=θ0×b1
【0058】
距離d1は、基準距離d0における基準顔サイズ〔w0,h0〕から下式のように算出される。
距離:d1=d0×(w0/w1)
【0059】
ユーザ位置情報算出部144は、ユーザ方向/距離算出部142からのセンサー101のカメラの光軸に対するユーザの相対位置の算出結果を受け取る。さらに、センサー101の取付情報(位置/角度)を使用してテレビジョン受像機100の装置の中心および正面方向軸に対するユーザの3次元位置を算出する。以上の処理によって、視聴位置情報としてCEC通信部115からは、視聴者の位置情報(検出人数、水平方向角、距離、垂直方向角)が出力される。若し、複数の視聴者が検出された場合には、各視聴者の位置情報が送信される。
【0060】
<視聴位置情報およびCEC通信>
視聴位置情報は、テレビジョン受像機100の電源がオン情報でセンサー101の動作が可能なタイミングで常に行われる。最大認識(検出)人数が5人とされる。検出範囲は、水平方向の角度がセンサー101の正面軸を基準として(−30°〜+30°)とされる。テレビジョンの画面を見て右側が−と規定される。縦方向の角度(−25°〜+25°)とされる。距離が(0cm〜620cm)とされる。CEC通信によって、20秒毎に視聴位置情報がブロードキャストで送信される。20秒は、一例である。好ましくは、テレビジョン受像機100がCEC機器の所在確認を定期的に行う間隔例えば15秒となるべく一致しないように設定される。
【0061】
CEC通信で使用されるCECコマンドには、メーカー間で統一された共通コマンドと、メーカー個々が自由に開発できるメーカー固有コマンドとがある。メーカー固有コマンドは、図11に示すような1パケットが16バイトの構成とされている。先頭に1バイトの送信元/送信先のデータが位置し、次の1バイトとしてID付きベンダーコマンドが位置し、その後の3バイトにベンダーIDが位置する。ベンダーIDによってメーカーが特定される。その後に、ベンダースペシフィックデータが位置する。この第6番目のバイトから台16番目のバイトに視聴位置情報のデータが挿入される。
【0062】
視聴位置情報のより具体的な例を図12に示す。水平角度情報は、単位が°で(−90°〜+90°)の範囲の値であり、視聴者毎の情報である。垂直角度情報は、単位が°で(−90°〜+90°)の範囲の値であり、視聴者毎の情報である。視聴者数の最大値は、5である。有効/無効のデータは、センサー101が検出できているかどうかの状態を知らせるデータである。距離は、センサー101の正面軸上の距離で、単位がcmである。なお、送信データ量を抑えるために、複数の視聴者の情報の平均値を送信するようにしても良い。例えば垂直方向の角度について、複数の視聴者の垂直方向の角度情報の平均値が伝送される。
【0063】
<AVアンプにおける視聴位置に応じた制御>
CEC通信によってテレビジョン受像機100から上述した視聴位置情報がAVアンプ300に送信される。AVアンプ300では、コントロール信号生成部315によってコントロール信号生成され、DSP313によって、再生される音声信号のレベルおよび/または遅延量(位相)が調整される。
【0064】
一例として、左右のチャンネルの音声信号のレベルのバランスを最適化する例について、図13を参照して説明する。左右のスピーカFLおよびFRから出力される音量は、基準位置において、等しいものとされている。基準点は、左右のスピーカの中心位置(センサー101の位置)の正面の所定距離の位置である。
【0065】
スピーカFLおよびFRから放射される音声のレベルは、距離の二乗に反比例して減衰するので、基準点からの差分を以下のように計算し、左右のスピーカの音量の(gaindif)
を計算して左右のバランスを最適化することができる。なお、以下の表記において、対数は、常用対数を意味する。
【0066】
gainLch
= 20log(dLch / dorgLRch)
gainRch
= 20log(dRch / dorgLRch)
gaindif
= gainRch - gainLch
= 20log(dRch) - 20log(dLch)
= 20log(dLch / dRch)
【0067】
但し、上式において、各値は、下記のものである。
gainLch : Lチャンネルのゲイン差分
gainRch : Rチャンネルのゲイン差分
dorgLRch : 左右のスピーカFLおよびFRから基準点までの距離
dLch : スピーカFLから視聴者までの距離
dRch : スピーカFRから視聴者までの距離
gaindif : L/R の電圧ゲイン差分
【0068】
さらに、バランスの最適化の処理のために、カレントバランスおよびターゲットバランスが定義される。カレントバランスは、現在のバランス値であり、初期値が0.0dBとされる。ターゲットバランスは、自動調整の目指すべきバランス値であり、初期値が0.0dBとされる。複数の視聴者の場合には、複数の視聴者の顔の重心位置に関してターゲットバランスが求められる。2.1chフロントサラウンド方式および3.1chフロントサラウンド方式では、カレントバランスおよびターゲットバランスは、左右のチャンネルについて求められる。
【0069】
複数の視聴者の顔の位置情報からXY方向のそれぞれの平均値(重心位置)を算出する。視聴者の重心位置と、スピーカFL,FRとの距離に基づいてターゲットバランス値が求められる。
バランス値=20log(LスピーカFLの距離/RスピーカFRの距離)
【0070】
上述したように、視聴者の視聴位置情報(正面軸上の距離およびスピーカの中心位置(センサー101)の位置に対する視聴位置の水平方向の角度)がテレビジョン受像機100からHDMI−CECメーカー固有コマンドとしてAVアンプ300に送信される。したがって、受け取った視聴位置情報を使用して基準点からの左右のチャンネルの音声信号のゲインの差分を最適化することができる。
【0071】
図14および図15に示すように、センサー101の正面軸321を中心として扇形
の検出可能範囲322および基準点323が設定されている。一例として、θ=±30°、センサー101からの距離Yが約6.0m、広がりの範囲Xが約7.0mと設定される。バランスは、(Lチャンネルのレベル−Rチャンネルのレベル)を0.5dB単位で表したものをパラメータとして使用する。過大な調整は、不自然となるので、検出可能範囲内の最大のバランス調整量は、2dBとされている。すなわち、バランス+2dBは、右チャンネルのレベルを−2.0dB減衰させる処理を意味し、バランス−2dBは、左チャンネルのレベルを−2.0dB減衰させる処理を意味する。
【0072】
左右のバランスの自動調整の具体例を図15に示す。テレビジョン受像機100から6.0mの距離で、+30°の位置324におけるターゲットバランスの算出について説明する。スピーカFLおよびFRのそれぞれのセンサー101からの距離を0.5mとする。
【0073】
スピーカFLまでの距離:√(3√3)2 +(3+0.5)2 =6.26m
スピーカFRまでの距離:√(3√3)2 +(3−0.5)2 =5.77m
LRレベル差(バランス値)=20log(6.26/5.77)=0.71dB
【0074】
スピーカFLおよびFRのそれぞれのセンサー101からの距離が1.5mの場合には、下記のようになる。
スピーカFLまでの距離:√(3√3)2 +(3+1.5)2 =6.87m
スピーカFRまでの距離:√(3√3)2 +(3−1.5)2 =5.41m
LRレベル差(バランス値)=20log(6.26/5.77)=2.08dB(2.0
dBで制限する)
【0075】
上述の方式では、三角関数を使用するので、制御部のCPUに対する処理の負荷が重くなる。さらに、検出範囲322を所定の大きさのエリア(ブロック)に分割し、各ブロックのバランス値を予め計算して不揮発性メモリにテーブルとして格納するようにしても良い。例えば0.5mの間隔で検出範囲322が分割される。視聴者の位置がどのエリアに属するかを判定すれば、直ぐにそのエリアのバランス値をテーブルから読み出すことができる。この簡素化した方法によれば、負荷を軽くすることができる。
【0076】
視聴位置自動調整モードにおいて、ユーザに対して図16に示すように、シアタースタンド200のに設けられたライン表示部331にカレントバランスを表示するようにしても良い。ユーザは、例えば所定のモード例えばテストモードを設定することによって、カレントバランス値の表示を確認することができる。図16において、上側の表示は、左寄りに検出された場合の表示を示す。カレントバランスが+2.0dBの場合のリアクションが表示される。中央の表示は、中心に検出された場合の表示を示す。カレントバランスが+0.0dBの場合である。下側の表示は、右寄りに検出された場合の表示を示す。カレントバランスが−2.0dBの場合のリアクションが表示される。
【0077】
<視聴位置自動調整モードの動作>
視聴位置自動調整モード(単に機能と称する)は、製品の仕様上、動作させない状態を設けることもできる。その実例としては、下記のものが考えられる。
【0078】
・入力信号をそのまま出力する音場設定のとき
・ヘッドホンを挿入しているとき
・テストトーン出力中、自動音場設定中などの環境設定動作中
・オートキャリブレーションを行っているとき
・その他の本機能動作の制約に該当するとき
【0079】
本機能が動作禁止中のときにテレビジョン受像機100から視聴位置情報を受け取った場合、ターゲットバランスは更新されるが、カレントバランスは、一時的に0.0dBとして、変化させない。この間に視聴位置情報を受け取った場合、ターゲットバランスを動作禁止中でも設定し、また、実際に0.0dBとなったカレントバランスとは別のカレントバランスを設定する。そして、動作禁止中でなくなったときに、そのカレントバランスに基づいて動作を再開する。
【0080】
・スピーカ毎のレベル調整機能やバランス調整機能など、本機能以外の要因により各スピーカのゲインが調整幅を超えるときは、本機能によるレベル調整を可能な範囲で制限する。
・スピーカなどの各種プロテクト状態のときは、本機能は動作しない。
・各種スピーカレベルを別途ユーザインターフェースで設定できる場合、本機能による制御がその設定を変えてしまうことはない。
・CECのシステムオーディオコントロールによって、「テレビスピーカ」から音声出力をしているときも、この機能による制御は継続する。
【0081】
各操作に対する動作をまとめると図17に示す。AVアンプのHDMI制御をオフすると、直ぐにカレントバランスが0.0dBとされ、本機能の動作を停止する。
HDMIケーブルを抜いた場合には、CECでの視聴位置情報の通知から45秒を経過した段階で、ターゲットバランスを0.0dBとし、カレントバランスもそれに追従する。
検出された人がいない状態になると、規定回数(例えば2回)連続してこの状態通知を受けたらターゲットバランスを0.0dBとし、カレントバランスもそれに追従する。
定常状態から動作禁止状態となると、本処理の動作を裏で行う(ターゲットバランスおよびカレントバランスをともに更新する)が、カレントバランスが0.0dBとして動作する。
【0082】
<AVアンプのコマンド受信時の処理>
コマンド受信時のAVアンプ300の処理について、図18のフローチャートを参照して説明する。
ステップS1において、テレビジョン受像機100から視聴位置情報を受けたか否かが判定される。視聴位置情報を受けると、ステップS2において、コマンド受信監視タイマーが45秒にセットされる。視聴位置情報は、例えば20秒毎にテレビジョン受像機100が送信する。
【0083】
視聴位置情報から視聴者が検出されたか否かがステップS3において判定される。視聴者が検出されると、ステップS4において、視聴者未検出カウンタがクリアされる。ステップS5において、人の位置情報の重心が算出される。重心が現在の視聴位置として扱われる。ステップS6において、音声出力のバランス設定のターゲットバランス値がセットされる。
【0084】
若し、ステップS3において、視聴者が検出されないと判定されると、ステップS7において、視聴者未検出カウンタがインクリメントされる。ステップS8において、視聴者未検出カウンタのカウント値が規定値(例えば2)になったか否かが判定される。規定値になっていない場合は、処理終了する。若し、規定値になったと判定されると、ステップS9において、音声出力のバランス設定のターゲットバランス値がクリアされる。
【0085】
このように、視聴者未検出カウンタのカウント値が規定値(例えば2)になったときに、顔検出ができなかったと判定される。その理由は、例えば視聴者がうつむいていたために、テレビジョン受像機100側で顔検出ができない場合もあることを考慮したからである。このように、20秒後とになされる通信タイミングでたまたま顔検出できなかった際、AVアンプのターゲットゲインが0.0dBとなり、次の20秒後のデータ送信タイミングまで、その値が保持されてしまう。それを避けるため、人の検出がないという情報を受信したときは、その状態を2回連続で検出したときのみ、ターゲットゲインを0.0dBに設定するようにしている。
【0086】
<1秒ごとの定期処理>
1秒ごとの定期処理について、図19のフローチャートを参照して説明する。
ステップS11において、コマンド受信監視タイマーが0か否かが判定される。0でないと判定されると、ステップS12において、コマンド受信監視タイマーがデクリメントされる。すなわち、1秒毎にカウント値が−1される。ステップS13において、コマンド監視タイマーが0になったか否かが判定される。0になったと判定されると、ステップS14において、コマンド受信監視タイマーがクリアされ、ターゲットバランスがクリアされる。
【0087】
ステップS13において、コマンド監視タイマーが0になっていないと判定されるか、またはステップS14の後に、ステップS15において、カレントゲインとターゲットゲインに差があるか否かが判定さる。差がないと判定されると処理が終了する。差があると判定されると、ステップS16において、カレントゲインがターゲットゲインに0.1dB近づけられる。
【0088】
上述したように、視聴位置情報を受けると、コマンド受信監視タイマーが45秒にセットされるので、45秒間、コマンドを受信しないと、ステップS14の処理がなされ、ターゲットバランスがクリアされる。すなわち、AVアンプは定期的に位置情報が通知されなくなったと判断した際に、ターゲットとなるゲインを定常状態に戻す。さらに、バランスをターゲットバランスに近づける場合に、0.1dB/1秒間のように、段階的に近づける。1秒毎の定期処理は、HDMIケーブルの抜去り、テレビジョン受像機の電源オフ、テレビジョン受像機においてHDMI機器制御設定をオフしたときなどを検出するのに必要とされる。
【0089】
<AVアンプにおいてHDMI機器制御設定を切り換えたときの処理>
AVアンプにおいてHDMI機器制御設定を入りから切りに切り換えたときの処理について、図20のフローチャートを参照して説明する。この場合は、テレビジョン受像機100からコマンドの通知が45秒以上ないので、ステップS19において、コマンド受信監視タイマーがクリアされ、カレントバランスおよびターゲットバランスがクリアされ、視聴者未検出カウンタがクリアされて処理が終了する。
【0090】
<テレビジョン受像機の電源をオンとしたときの処理>
さらに、テレビジョン受像機100の電源をオンとしたときの処理について、図21を参照して説明する。
図21および他の図22〜図25においては、テレビジョン受像機100、AVアンプ300(CEC通信部310およびアンプ制御部302a)間のデータの受け渡しが示されている。CEC通信部310およびアンプ制御部302a間の通信は、内部通信である。
【0091】
テレビジョン受像機100の電源がオン(ステップS21)されると、ステップS22において、人物検出がなされる。その結果の視聴位置情報、すなわち、ID付きベンダーコマンド(位置情報)がAVアンプ300のCEC通信部310に送信される。内部通信によって、視聴位置情報がアンプ制御部302aに供給される。
【0092】
アンプ制御部302aは、位置情報を基にターゲットバランスを設定する(ステップS31)。1秒間に0.1dBの割合で調整を行う(ステップS32,S33)。調整量がターゲットバランスに達するまで調整を段階的に行う(ステップS34)。
【0093】
20秒後に、テレビジョン受像機100からID付きベンダーコマンド(位置情報)がAVアンプ300のCEC通信部310に送信される。内部通信によって、視聴位置情報がアンプ制御部302aに供給される。上述したのと同様に、ステップS35において、位置情報を基にターゲットバランスが設定され、S36,S37によって、調整量がターゲットバランスに達するまで調整が段階的になされる。
【0094】
<AVアンプの電源をオンとしたときの処理>
さらに、AVアンプ300の電源をオンとしたときの処理について、図22を参照して説明する。
テレビジョン受像機100では、ステップS23において、人物検出がなされる。その結果の視聴位置情報、すなわち、ID付きベンダーコマンド(位置情報)がAVアンプ300のCEC通信部310に送信される。内部通信によって、視聴位置情報がアンプ制御部302aに供給される。
【0095】
AVアンプ300は、ステップS38において電源がオフとされる。CEC通信部310およびアンプ制御部302aが動作可能とされる。ID付きベンダーコマンド(位置情報)がAVアンプ300のCEC通信部310に送信される。内部通信によって、視聴位置情報がアンプ制御部302aに供給される。
【0096】
アンプ制御部302aは、位置情報を基にターゲットバランスを設定する(ステップS39)。1秒間に0.1dBの割合で調整を行う(ステップS40,S41)。調整量がターゲットバランスに達するまで調整を段階的に行う(ステップS42)。
【0097】
そして、AVアンプの電源がステップS43においてオンとされる。前回の位置情報の通知の20秒後に、テレビジョン受像機100からID付きベンダーコマンド(位置情報)がAVアンプ300のCEC通信部310に送信される。内部通信によって、視聴位置情報がアンプ制御部302aに供給される。上述したのと同様に、ステップS44,S45,S46によって、調整量がターゲットバランスに達するまで調整が段階的になされる。
【0098】
<人が検出されないときの処理>
さらに、人が検出されないときの処理について、図23を参照して説明する。
テレビジョン受像機100が人物検出を行い、その結果、人物検出がないとステップS24において判定されると、その結果のID付きベンダーコマンド(検出なし)がAVアンプ300のCEC通信部310に送信される。このコマンドが内部通信によって、アンプ制御部302aに供給される。
【0099】
アンプ制御部302aは、ステップS47において、検出なしが1回目であるので、ターゲットバランス値が変化されない。テレビジョン受像機100では、ステップS25において、人物検出がなされる。その結果の視聴位置情報、すなわち、ID付きベンダーコマンド(位置情報)がAVアンプ300のCEC通信部310に送信される。内部通信によって、視聴位置情報がアンプ制御部302aに供給される。
【0100】
アンプ制御部302aは、位置情報を基にターゲットバランスを設定する(ステップS48)。1秒間に0.1dBの割合で調整を行う(ステップS49)。調整量がターゲットバランスに達するまで調整を段階的に行う(ステップS50)。
【0101】
テレビジョン受像機100において、人物検出なし(ステップS26)と判定され、その内容のコマンドが2回連続してAVアンプ300に通知されると、ステップS51では、ターゲットバランスが変化されないが、ステップS52では、検出なしが連続して2回通知されたと判定し、ターゲットバランスがクリアされる。そして、ステップS53およびS54によって、0.1dBのステップで、調整量がターゲットバランスに近づくまで通信で調整がなされる。
【0102】
<位置情報が通知されないときの処理>
さらに、位置情報が通知されないときの処理について、図24を参照して説明する。
テレビジョン受像機100からID付きベンダーコマンド(位置情報)がAVアンプ300のCEC通信部310に送信される。内部通信によって、視聴位置情報がアンプ制御部302aに供給される。
【0103】
アンプ制御部302aは、位置情報を基にターゲットバランスを設定する(ステップS55)。1秒間に0.1dBの割合で調整を行う(ステップS56)。調整量がターゲットバランスに達するまで調整を段階的に行う(ステップS57)。
【0104】
ここで、ステップS27において、テレビジョン受像機100のHDMI機器制御設定がオフされる。その結果、位置情報がAVアンプ300に対して送信されなくなる。したがって、AVアンプ300が45秒間、位置情報を取得できない。その結果、ステップS58において、位置情報が来ないので、ターゲットバランスがクリアされる。そして、調整量がターゲットバランスに達するまで調整を段階的に行う(ステップS59,S60)。
【0105】
<AVアンプのHDMI機器制御設定をオフしたときの処理>
さらに、AVアンプのHDMI機器制御設定をオフしたときの処理について、図25を参照して説明する。
テレビジョン受像機100からID付きベンダーコマンド(位置情報)がAVアンプ300のCEC通信部310に送信される。内部通信によって、視聴位置情報がアンプ制御部302aに供給される。
【0106】
アンプ制御部302aは、位置情報を基にターゲットバランスを設定する(ステップS61)。1秒間に0.1dBの割合で調整を行う(ステップS62)。調整量がターゲットバランスに達するまで調整を段階的に行う(ステップS63)。
【0107】
ここで、ステップS64において、AVアンプ300のHDMI機器制御設定がオフされる。その結果、設定情報(オフ)がアンプ制御部302aに対して通知する。この通知を受け取ったアンプ制御部302aは、ステップS65において、即座にターゲットバランスおよび調整量をクリアする。一方、20秒後に、テレビジョン受像機100が位置情報をAVアンプ300に対して出力する。CEC通信部310は、位置情報を受け取っても、アンプ制御部302aに対して、位置情報を通知しない(ステップS66)。
【0108】
<本開示の態様>
本開示の好ましい態様は、以下の通りである。
本開示の請求項1に対応する装置は、複数チャンネルのオーディオ信号の再生部と、
再生部と聴取者の位置を示す検出信号の入力部と、
検出信号によって位置に応じて再生部によって再生されるオーディオ信号を変化させる制御部とを備える音響装置である。
請求項1に対応する装置において、制御部は、位置に応じてオーディオ信号のレベルおよび/または遅延量の目標値を求め、目標値と現在値との差を調整量としてオーディオ信号のレベルおよび/または遅延量を変化させる。
請求項1または2に対応する装置において、制御部は、調整量をより細かいステップに分割し、ステップ単位でオーディオ信号を変化させる。
請求項1、2または3に対応する装置において、制御部は、複数の聴取者の位置の重心を基準とする位置に応じて再生されるオーディオ信号を変化させる。
請求項1、2、3または4に対応する装置において、制御部は、聴取者を検出できないことを示す情報が連続した規定回数、通知されない場合に、調整量をクリアする。
さらに、本開示の請求項6に対応するシステムは、聴取者の位置を検出するセンサーと、
センサーの出力を処理して、位置を示す検出信号を出力する位置検出部と、
複数チャンネルのオーディオ信号の再生部と、
位置検出部からの検出信号の入力部と、
検出信号によって位置に応じて再生部によって再生されるオーディオ信号を変化させる制御部とを備える。
請求項6に対応するシステムにおいて、位置検出部は、再生部とほぼ同一位置に配置される映像表示装置に設けられた撮像部によって構成される。
【0109】
<変形例>
以上、本開示の実施形態について具体的に説明したが、上述の各実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えばフロントスピーカーのレベル調整を行う例を示したが、5.1ch、7.1ch等のサラウンド方式においても、各スピーカーの位置関係の情報をもとに、他のスピーカーのレベルや、各スピーカーの遅延量(距離設定)なども自動調整させて、視聴者の位置に応じた音場を提供するようにしても良い。さらに、スピーカーからの視聴者の位置をマイクを使って測定し、より忠実な遅延量を実現するAVアンプがある。その設定された位置とこの位置情報を組み合わせると、より視聴者の位置に応じた音場に設定することもできる。さらに、視聴者の垂直方向の位置をリアルタイムに検出することができるので、高さ方向の調整を行うようにしても良い。本開示は、HDMI−CECのインターフェースを使用するのに限らず、他の有線インターフェース、無線インターフェースを使用するようにしても良い。
【符号の説明】
【0110】
100・・・テレビジョン受像機
101・・・センサー
131・・・設定画面
200・・・シアタースタンド
300・・・AVアンプ
322・・・検出可能範囲
SP・・・スピーカ部
FL・・・左チャンネルスピーカ
FR・・・右チャンネルスピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数チャンネルのオーディオ信号の再生部と、
前記再生部と聴取者の位置を示す検出信号の入力部と、
前記検出信号によって前記位置に応じて前記再生部によって再生されるオーディオ信号を変化させる制御部とを備える音響装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記位置に応じてオーディオ信号のレベルおよび/または遅延量の目標値を求め、前記目標値と現在値との差を調整量として前記オーディオ信号のレベルおよび/または遅延量を変化させる請求項1に記載の音響装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記調整量をより細かいステップに分割し、前記ステップ単位で前記オーディオ信号を変化させる請求項1に記載の音響装置。
【請求項4】
前記制御部は、複数の聴取者の位置の重心を基準とする前記位置に応じて再生されるオーディオ信号を変化させる請求項1に記載の音響装置。
【請求項5】
前記制御部は、聴取者を検出できないことを示す情報が連続した規定回数、通知されない場合に、前記調整量をクリアする請求項1に記載の音響装置。
【請求項6】
聴取者の位置を検出するセンサーと、
前記センサーの出力を処理して、前記位置を示す検出信号を出力する位置検出部と、
複数チャンネルのオーディオ信号の再生部と、
前記位置検出部からの前記検出信号の入力部と、
前記検出信号によって前記位置に応じて前記再生部によって再生されるオーディオ信号を変化させる制御部とを備える音響システム。
【請求項7】
前記位置検出部は、前記再生部とほぼ同一位置に配置される映像表示装置に設けられた撮像部によって構成される請求項6記載の音響システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−191524(P2012−191524A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54712(P2011−54712)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】