説明

音響診断を支援する装置、システム、方法およびプログラム

【課題】異常が発生した場合に所定の周期で異音を生じる音源の異常を容易に把握することができるようにする。
【解決手段】集音器2は、回転機1から発生した音を所定周波数で回転周期よりも長い所定時間サンプリングした測定データを記録する。診断支援装置3は、集音器2から測定データを取得する。診断支援装置3は、1番目の測定データにおける先頭から1周期分の基準データ系列を抽出し、n番目の測定データにおける抽出位置をずらしながら、1周期分の比較データ系列を抽出し、基準データ系列と比較データ系列の相関度を算出していき、相関度の最も大きい抽出位置をシフト量として、2番目の測定データをシフトした上で、1番目の測定データに足し合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響診断を支援する装置、システム、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
設備の診断方法の一つとして音響診断が行われている。例えば、機器が発生する音響データと特許文献1では正常時の波形パタンとを照合して異常を判定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−167385号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、機器の稼働現場で音響を測定しようとしても、機器の稼働に起因しない一過性の雑音などが含まれてしまい、機器の異常か雑音かを判定することは難しい。
【0005】
本発明は、このような背景を鑑みてなされたものであり、異常が発生した場合に所定の周期で異音を生じる音源の異常を容易に把握することのできる、音響診断を支援する装置、システム、方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の主たる発明は、異常が発生した場合に所定の周期で異音を生じる音源の診断を支援する音響診断支援装置であって、前記音源から発生した音を第1時点から所定周波数で前記周期よりも長い所定時間サンプリングした第1の音響データ系列と、前記音源から発生した音を前記第1時点とは異なる第2時点から前記所定周波数で前記所定時間サンプリングした第2の音響データ系列とを入力する音響入力部と、同期をとって前記第1および第2の音響データ系列を合成する合成部と、を備えることとする。
【0007】
また、本発明の音響診断支援装置では、前記合成部は、前記第1の音響データ系列における所定の第1時点から前記周期分の第1のデータを抽出し、前記第2の音響データ系列における第2時点をずらしながら、前記第2時点から前記周期分の第2のデータを抽出し、前記第1および第2のデータの相関度を算出していき、前記相関度の最も大きい前記第2時点と前記第1時点とを合わせることで、前記第1および第2の音響データ系列の同期をとるようにしてもよい。
【0008】
また、本発明の他の態様は、異常が発生した場合に所定の周期で異音を生じる音源の診断を支援する音響診断支援システムであって、音響測定装置と、音響診断支援装置とを含んで構成され、前記音響測定装置は、前記音源から発生した音を所定周波数で前記周期よりも長い所定時間サンプリングした音響データ系列を取得する音響測定部と、前記音響測定部による前記音響データ系列の取得を定期的に行わせるタイマー部と、定期的に測定した複数の前記データ系列を出力する出力部と、を備え、前記音響診断支援装置は、前記音響測定装置から出力された第1および第2の前記データ系列を入力する測定データ入力部と、同期をとって前記第1および第2の音響データ系列を合成する合成部と、を備えることとする。
【0009】
また、本発明の音響診断支援システムでは、前記音響診断支援装置が備える前記合成部は、前記第1の音響データ系列における所定の第1時点から前記周期分の第1のデータを抽出し、前記第2の音響データ系列における第2時点をずらしながら、前記第2時点から前記周期分の第2のデータを抽出し、前記第1および第2のデータの相関度を算出していき、前記相関度の最も大きい前記第2時点と前記第1時点とを合わせることで、前記第1および第2の音響データ系列の同期をとるようにしてもよい。
【0010】
また、本発明の他の態様は、異常が発生した場合に所定の周期で異音を生じる音源の診断を支援する方法であって、音響測定装置が、前記音源から発生した音を所定周波数で前記周期よりも長い所定時間サンプリングした音響データ系列を、定期的に取得し、定期的に測定した複数の前記データ系列を出力し、音響診断支援装置が、前記音響測定装置から出力された第1および第2の前記データ系列の入力を受け付け、同期をとって前記第1および第2の音声データ系列を合成することとする。
【0011】
また、本発明の音響診断支援方法では、前記音響診断支援装置は、前記第1の音声データ系列における所定の第1時点から前記周期分の第1のデータを抽出し、前記第2の音声データ系列における第2時点をずらしながら、前記第2時点から前記周期分の第2のデータを抽出し、前記第1および第2のデータの相関度を算出していき、前記相関度の最も大きい前記第2時点と前記第1時点とを合わせることで、前記第1および第2の音響データ系列の同期をとるようにしてもよい。
【0012】
また、本発明の他の態様は、異常が発生した場合に所定の周期で異音を生じる音源の診断を支援するためのプログラムであって、コンピュータに、前記音源から発生した音を第1時点から所定周波数で前記周期よりも長い所定時間サンプリングした第1の音響データ系列と、前記音源から発生した音を前記第1時点とは異なる第2時点から前記所定周波数で前記所定時間サンプリングした第2の音響データ系列との入力を受け付けるステップと、同期をとって前記第1および第2の音響データ系列を合成するステップと、を実行させることとする。
【0013】
また、本発明のプログラムは、前記コンピュータに、前記合成するステップにおいて、前記第1の音響データ系列における所定の第1時点から前記周期分の第1のデータを抽出するステップと、前記第2の音響データ系列における第2時点をずらしながら、前記第2時点から前記周期分の第2のデータを抽出し、前記第1および第2のデータの相関度を算出していくステップと、前記相関度の最も大きい前記第2時点と前記第1時点とを合わせることで、前記第1および第2の音響データ系列の同期をとるステップと、を実行させるようにしてもよい。
【0014】
その他本願が開示する課題やその解決方法については、発明の実施形態の欄及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、異常が発生した場合に所定の周期で異音を生じる音源の異常を容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態の音響診断支援システムの全体構成を説明する図である。
【図2】回転機1の動作を説明する図である。
【図3】回転機1の通常運転時に発生される音響の波形を示す図である。
【図4】回転機1に異常が生じた場合に発生される音響の波形を示す図である。
【図5】回転機1が異音を発生している場合の音響の波形と、集音器2が測定した測定データとの対応関係を示す図である。
【図6】同期をとらずに測定データ231および232を加算した加算データ233を示す図である。
【図7】同期をとって測定データ231および232を加算した加算データ233を示す図である。
【図8】診断支援装置3のハードウェア構成を示す図である。
【図9】診断支援装置3のソフトウェア構成を示す図である。
【図10】測定データ記憶部331の構成例を示す図である。
【図11】加算処理部312による加算処理の流れを示す図である。
【図12】測定データの加算処理の流れを示す図である。
【図13】シフト量の算出処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
==システム構成==
以下、本発明の一実施形態に係る音響診断支援システムについて説明する。図1は、本実施形態の音響診断支援システムの全体構成を説明する図である。本実施形態の音響診断支援システムは、回転機1から発生した音を集音する集音器2と、診断支援装置3とを含んで構成される。
【0018】
回転機1は、例えば発電機などの回転動作をする装置である。回転機1は周期的な回転動作を行い、異常が発生した場合には周期的な異音を発生する。
集音器2は、定期的に所定の時間、音響を測定し、音響信号をデジタルデータ(以下、「測定データ」という。)に変換し、測定データを記録する。集音器2としては、タイマー機能を有するICレコーダを想定している。なお、集音器2には、例えばマイクロフォンを備えるパーソナルコンピュータを採用してもよい。
診断支援装置3は、集音器2が取得した測定データに基づいて、ユーザによる音響診断の支援を行う。診断支援装置3は、複数の測定データを足し合わせたデータ(以下、「加算データ」という。)を生成する。診断支援装置3は、測定データを同期させた上で足し合わせることにより、周期的に発生する異音成分を強調するとともに、周期的でない雑音等の成分については、いわゆるならし効果により平準化する。
【0019】
==回転機1==
図2は、回転機1の動作を説明する図である。回転機1は、回転機構11を備えており、回転機構11は方向12に回転する。回転機構11は一定の周期(本実施形態では、1秒間に60回転、すなわち、16.66msで1回転するものとする。)で回転する。本実施形態では、説明を簡単にするために、回転機1の通常運転時には、図3に示すような一定の波形を示す音響が発生しているものとする。周期211は、回転機構11が1回転する周期(16.66ms)である。回転機構11に傷13が生じた場合、傷13による異音が発生する。図4の例では、ピーク221が傷13により発生している。
【0020】
==集音器2==
図5は、集音器2の構成を示す図である。集音器2はマイクロフォン21、集音回路22、フラッシュメモリ23、タイマー24、コネクタ25を備える。
【0021】
集音回路22は、A/D変換回路を含み、マイクロフォン21が集音した音響信号を、所定のサンプリング周波数(例えば、44.1kHzや96kHzなど)で標本化および量子化(以下、単に「サンプリング」という。)したPCM(pulse code modulation)データを生成する。集音器2は、1回の測定につき1万回のサンプリングを行い、サンプリングされた1万点のデータ(以下、「単位データ」という。)を含むデータを測定データとしてフラッシュメモリ23に蓄積する。コネクタ25は、外部に測定データを出力するためのインタフェースである。集音器2は、コネクタ25に接続された外部機器との間で、例えばUSB(Universal Serial Bus)やRS232C、イーサネット(登録商標)、無線通信などの規約にしたがって通信を行う。集音器2のコネクタ25に診断支援装置3を例えばケーブルなどを介して接続することにより、測定データを診断支援装置3に伝送することができる。
【0022】
タイマー24は定期的に集音回路22を起動する。本実施形態では、タイマー24の動作と回転機構11の周期との同期は行わないものとする。またタイマー24の起動タイミングには誤差が生じうる。図6は、回転機1が異音を発生している場合の音響の波形と、集音器2が測定した測定データとの対応関係を示す図である。図6に示すように、T1時点において測定された測定データ231およびT2時点において測定された測定データ232はともに、回転機11の周期とは同期していない。したがって、図6の例のように、測定データ231には異音によるピーク221が含まれ、測定データ232にはピーク222および223が含まれているような状況が生じうる。
【0023】
==診断支援装置3==
図7は、診断支援装置3のハードウェア構成を示す図である。診断支援装置3は、CPU301、メモリ302、記憶装置303、コネクタ304、入力装置305、出力装置306を備える。記憶装置303は各種のデータやプログラムを記憶する、例えばハードディスクドライブやフラッシュメモリである。CPU301は記憶装置303に記憶されているプログラムをメモリ302に読み出して実行することにより、各種の機能を実現する。コネクタ304は、集音器2と接続するためのインタフェースである。診断支援装置3は、コネクタ304に接続された集音器2との間で、例えばUSBやRS232C、イーサネット(登録商標)、無線通信などの規約にしたがって通信を行う。入力装置305は、ユーザからデータの入力を受け付ける、例えばキーボードやマウスなどである。出力装置306は、データを出力するディスプレイやスピーカなどである。なお、本実施形態では、診断支援装置3にはディスプレイおよびスピーカの2つの出力装置306を備えているものとする。
【0024】
図8は、診断支援装置3のソフトウェア構成を示す図である。診断支援装置3は、測定データ取得部311、加算処理部312、出力部313、測定データ記憶部331を備える。なお、測定データ取得部311、加算処理部312、出力部313は、診断支援装置3が備えるCPU301が、記憶装置303に記憶されているプログラムをメモリ302に読み出して実行することにより実現され、測定データ記憶部331は、メモリ302や記憶装置303が提供する記憶領域の一部として実現される。
【0025】
測定データ取得部311は、コネクタ304に接続された集音器2から測定データを取得する。測定データ取得部311は、一般的な方法により集音器2にアクセスして、集音器2に記録されている測定データを取得するようにすることができる。測定データ取得部311は、集音器2から取得した測定データを測定データ記憶部331に登録する。
【0026】
測定データ記憶部331の構成例を図9に示す。測定データ記憶部331には、集音器2において定期的に記録された測定データが順次記憶される。図9の例では、測定データ記憶部331には、図6の時点T1およびT2に測定された測定データ231および232が記憶されている。上述したように、各測定データには1万点の単位データが含まれる。本実施形態では、サンプリング間隔は0.025msであるものとする。また、上述したように、回転機構11は1秒間に60回転するので、1回転分の単位データは、1000ms÷60回転÷0.025ms=666点である。
【0027】
加算処理部312は、測定データ記憶部331に記憶されている測定データを足し合わせた加算データを生成する。ここで、測定データ231および測定データ232を単純に足し合わせると、図10に示すように、ピーク241〜243を含む加算データ233が生成されることになる。これに対し、図11に示すように、測定データ231および232を同期させるように、シフト量251だけ測定データ232をずらして足し合わせることで、ピーク221および222が加算されて、加算データ233ではピーク252が顕著になる。このように、加算処理部312は、複数の異なるタイミングで測定された測定データを同期した上で足し合わせる。
【0028】
具体的には、加算処理部312は、測定データ記憶部331に記憶されている先頭の測定データの先頭(所定の第1時点)から、測定データに回転機構11の1回転分の単位データ系列(すなわち666個の単位データである。以下、「基準データ系列」という。)を抽出する。加算処理部312は、2番目の測定データについては、先頭から12分の1回転分(すなわち、666÷12≒55個)ずつ抽出位置(第2時点)をシフトしながら1回転分の単位データ系列(以下、「比較データ系列」という。)を抽出していき、基準データ系列と比較データ系列の相関度を算出する。相関度は、例えば、基準データ系列の1番目から666番目までの単位データと、対応する比較データ系列の1番目から666番目までの単位データとの差の絶対値を合計したものの逆数とすることができる。加算処理部312は、相関度が最も大きかった抽出位置をシフト量として、2番目の測定データをシフトすることにより1番目と2番目の測定データの同期をとる。加算処理部312は、同期をとった1番目と2番目の測定データを加算する。すなわち、加算処理部312は、1番目の測定データと上記シフト量だけシフトした2番目の測定データとの対応する単位データ同士を足し合わせる。なお、1番目の測定データの先頭からシフト量分の単位データには加算されないことになり、2番目の測定データの末尾からシフト量部の単位データは上記加算演算には用いられない。加算処理部312は、3番目の測定データについても、2番目の測定データと同様にしてシフト量を算出し、シフト量だけシフトした上で、1番目の測定データに足し合わせていく。なお、加算処理部312による加算処理の詳細については後述する。
【0029】
出力部313は、加算処理部312が生成した加算データを出力装置206から出力する。出力部313は、加算データの波形をディスプレイ上に表示するようにしてもよいし、加算データをスピーカから出力するようにしてもよい。
【0030】
==加算処理==
図12は、加算処理部312による測定データの加算処理の流れを示す図である。
加算処理部312は、測定データ記憶部331に記憶されている1番目の測定データの先頭から666個の単位データを抽出して基準データ系列D1とし(S401)、1番目の測定データを加算データRとする(S402)。加算処理部312は、変数のnに2を設定し(S403)、シフト量の最大値Smaxに0を設定する(S404)。
【0031】
加算処理部312は、nが測定データの個数以下であれば(S405:YES)、図13に示すシフト量Sの算出処理を行う(S406)。
図13では、加算処理部312は、変数のiに0を設定し(S421)、相関度の最大値Cmaxに0を設定し(S422)、シフト量Sに0を設定する(S423)。加算処理部312は、iが12未満であれば(S424)、iに55を乗じて1を加算した値をjとし(S425)、測定データ記憶部331に記憶されているn番目の測定データの先頭からj番目の単位データから666個を抽出して比較データ系列D2とし(S426)、D1とD2との相関度を算出してCとする(S427)。D1とD2との相関度は、例えば、上述したように、基準データ系列の1番目から666番目までの単位データと、対応する比較データ系列の1番目から666番目までの単位データとの差の絶対値を合計したものの逆数とすることができる。加算処理部312は、相関度CがCmaxよりも大きければ(S428:YES)、シフト量Sにj−1を設定し(S429)、CmaxにCを設定する(S430)。加算処理部312は、iをインクリメントして(S431)、ステップS424からの処理を繰り返す。
【0032】
以上のようにして、シフト量Sが算出されると、図12に戻り、加算処理部312は、測定データ記憶部331に記憶されているn番目の測定データをS個シフトしたデータをR1とする(S407)。すなわち、加算処理部312は、先頭のS個の単位データに0を設定し、S+1番目から666番目の単位データには、測定データ記憶部331に記憶されているn番目の測定データの1番目から(666−S)番目の単位データを設定したデータをR1とする。
【0033】
加算処理部312は、RにR1を加算する(S408)。すなわち、加算処理部312は、Rの1番目から666番目の単位データのそれぞれに、対応するR1の1番目から666番目の単位データを加算する。加算処理部312は、SがSmaxを超えていれば(S409:YES)、SmaxにSを設定する(S410)。
加算処理部312は、nをインクリメントして(S411)、ステップS405からの処理を繰り返す。
【0034】
以上のようにして、本実施形態の診断支援装置3は、測定データ記憶部331に記憶されている先頭の測定データと、2番目以後の測定データのそれぞれとを同期しながら足し合わせることができる。回転機1の劣化による音変化はわずかであることが多いので、異音部分を強調する必要がある。しかし、測定データには、回転機1からの異音以外にも、一過性の雑音などが入り込むことがあり、ある1時点における測定データを単純に増幅しても、回転機1の異音部分のみでなく一過性の雑音も増幅されてしまう。本実施形態の診断支援装置3によれば、回転機構11の周期で異音は発生することになるので、同期をとって測定データを足し合わせることにより、周期性のある異音に対応する単位データ同士を足し合わせて加算データを作成することが可能となる。これにより、加算データにおいては、異音部分の単位データが他の単位データよりも大きい場合にはより大きく、また他の単位データよりも小さい場合にはより小さくすることができる。一方で、周期性のない雑音が測定データに混入していた場合にも、複数の測定データを加算していくことにより、周期性のない雑音は、いわゆるならし効果により平準化することができる。したがって、出力部313により出力された加算データでは、一過性の雑音は平準化され、異音は強調されることになるので、ユーザは異音を容易に判定することができる。
【0035】
また、本実施形態の診断支援装置3によれば、1番目の測定データから1周期分の基準データ系列を抽出し、n番目の測定データから抽出時点をずらしながら1周期分の比較データ系列を抽出し、基準データ系列と比較データ系列との相関度を求めていき、相関度の最も大きな抽出時点までn番目のデータをシフトすることにより、同期をとった上で測定データを足し合わせていくことができる。したがって、集音器2による測定のタイミングと回転機1の回転周期とが同期していなくても、診断支援装置3において同期をとることが可能となる。よって、集音器2のタイマーの精度が高くなくても、複数の測定データの同期をとることが可能となり、集音器2のコストを低減することができる。
【0036】
なお、出力部313は、加算データRの先頭から最大シフト量Smax個の単位データを除外して出力するようにしてもよい。この場合、シフトしたことによって加算処理がされていない単位データを除外することができる。
【0037】
また、本実施形態では、集音器2は回転機1と同期せずに音響の測定を行うものとしたが、回転機1と同期をとって測定するようにしてもよい。例えば、回転機1から回転機構11の周期の開始時点を示すパルスを出力し、集音器2がそのパルスを受信して、周期の先頭から測定を開始するようにすることができる。この場合、加算処理部312は、測定データをシフトすることなく加算することができる。
【0038】
また、本実施形態では、加算処理部312は測定データを加算していくものとしたが、各点の単位データについて平均値を算出するようにしてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、集音器2と診断支援装置3とを別個の装置であるものとしたが、診断支援装置3がマイクロフォンなどを備えて、音響を測定するようにしてもよい。
【0040】
また、本実施形態では、回転機1の回転機構11の回転周期は1秒間に60回転であり、サンプリング間隔は0.025msであるものとしたが、これらの値は任意の値とすることができる。1回転分の単位データの数Xは、1000ms÷(1秒あたりの回転機構11の回転数)÷(サンプリング間隔)により算出することができる。この場合、図12のステップS401では、1番目の測定データの先頭からX個の単位データを読み出し、図13のステップS426では、n番目の測定データのj番目からX個の単位データを読み出すようにする。
【0041】
また、測定データは1万点の単位データであるものとしたが、回転機構11の回転周期より長ければ、任意の長さの測定データとすることができる。
【0042】
また、加算処理部312による同期処理時にずらすシフト量は12分の1回転分のデータであるものとしたが、24分の1回転や36分の1回転分のデータなど任意の値とすることができる。例えば、24分の1回転分シフトする場合には、シフト量ΔS=(1回転分のデータ数)÷24により算出し、図13のステップS425において、jは、i×ΔS+1により算出するようにする。また、シフト量ΔSを例えば1などの任意の値とすることもできる。
【0043】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1 回転機
11 回転機構
12 方向
13 傷
2 集音器
211 周期
221 ピーク
222 ピーク
223 ピーク
231 測定データ
232 測定データ
233 加算データ
241 ピーク
242 ピーク
243 ピーク
251 シフト量
252 ピーク
3 診断支援装置
301 CPU
302 メモリ
303 記憶装置
304 コネクタ
305 入力装置
306 出力装置
311 測定データ取得部
312 加算処理部
313 出力部
331 測定データ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常が発生した場合に所定の周期で異音を生じる音源の診断を支援する音響診断支援装置であって、
前記音源から発生した音を第1時点から所定周波数で前記周期よりも長い所定時間サンプリングした第1の音響データ系列と、前記音源から発生した音を前記第1時点とは異なる第2時点から前記所定周波数で前記所定時間サンプリングした第2の音響データ系列とを入力する音響入力部と、
同期をとって前記第1および第2の音響データ系列を合成する合成部と、
を備えることを特徴とする音響診断支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の音響診断支援装置であって、
前記合成部は、
前記第1の音響データ系列における所定の第1時点から前記周期分の第1のデータを抽出し、
前記第2の音響データ系列における第2時点をずらしながら、前記第2時点から前記周期分の第2のデータを抽出し、前記第1および第2のデータの相関度を算出していき、
前記相関度の最も大きい前記第2時点と前記第1時点とを合わせることで、前記第1および第2の音響データ系列の同期をとること、
を特徴とする音響診断支援装置。
【請求項3】
異常が発生した場合に所定の周期で異音を生じる音源の診断を支援する音響診断支援システムであって、
音響測定装置と、音響診断支援装置とを含んで構成され、
前記音響測定装置は、
前記音源から発生した音を所定周波数で前記周期よりも長い所定時間サンプリングした音響データ系列を取得する音響測定部と、
前記音響測定部による前記音響データ系列の取得を定期的に行わせるタイマー部と、
定期的に測定した複数の前記データ系列を出力する出力部と、
を備え、
前記音響診断支援装置は、
前記音響測定装置から出力された第1および第2の前記データ系列を入力する測定データ入力部と、
同期をとって前記第1および第2の音響データ系列を合成する合成部と、
を備えること、
を特徴とする音響診断支援システム。
【請求項4】
請求項3に記載の音響診断支援システムであって、
前記音響診断支援装置が備える前記合成部は、
前記第1の音響データ系列における所定の第1時点から前記周期分の第1のデータを抽出し、
前記第2の音響データ系列における第2時点をずらしながら、前記第2時点から前記周期分の第2のデータを抽出し、前記第1および第2のデータの相関度を算出していき、
前記相関度の最も大きい前記第2時点と前記第1時点とを合わせることで、前記第1および第2の音響データ系列の同期をとること、
を特徴とする音響診断支援システム。
【請求項5】
異常が発生した場合に所定の周期で異音を生じる音源の診断を支援する方法であって、
音響測定装置が、
前記音源から発生した音を所定周波数で前記周期よりも長い所定時間サンプリングした音響データ系列を、定期的に取得し、
定期的に測定した複数の前記データ系列を出力し、
音響診断支援装置が、
前記音響測定装置から出力された第1および第2の前記データ系列の入力を受け付け、
同期をとって前記第1および第2の音声データ系列を合成すること、
を特徴とする音響診断支援方法。
【請求項6】
請求項5に記載の音響診断支援方法であって、
前記音響診断支援装置は、
前記第1の音声データ系列における所定の第1時点から前記周期分の第1のデータを抽出し、
前記第2の音声データ系列における第2時点をずらしながら、前記第2時点から前記周期分の第2のデータを抽出し、前記第1および第2のデータの相関度を算出していき、
前記相関度の最も大きい前記第2時点と前記第1時点とを合わせることで、前記第1および第2の音響データ系列の同期をとること、
を特徴とする音響診断支援方法。
【請求項7】
異常が発生した場合に所定の周期で異音を生じる音源の診断を支援するためのプログラムであって、
コンピュータに、
前記音源から発生した音を第1時点から所定周波数で前記周期よりも長い所定時間サンプリングした第1の音響データ系列と、前記音源から発生した音を前記第1時点とは異なる第2時点から前記所定周波数で前記所定時間サンプリングした第2の音響データ系列との入力を受け付けるステップと、
同期をとって前記第1および第2の音響データ系列を合成するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムであって、
前記コンピュータに、前記合成するステップにおいて、
前記第1の音響データ系列における所定の第1時点から前記周期分の第1のデータを抽出するステップと、
前記第2の音響データ系列における第2時点をずらしながら、前記第2時点から前記周期分の第2のデータを抽出し、前記第1および第2のデータの相関度を算出していくステップと、
前記相関度の最も大きい前記第2時点と前記第1時点とを合わせることで、前記第1および第2の音響データ系列の同期をとるステップと、
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−93094(P2012−93094A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237846(P2010−237846)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】