説明

音響調節機器の筐体構造

【課題】ミキサー装置の良好な外観デザインを維持しつつ、筐体上面の余剰スペースの有効活用を可能とする。
【解決手段】ミキサー装置1の筐体10の上面部20に形成され、その面が底面部40に対して傾斜する傾斜平面状の表示パネル31と、上面部20における表示パネル31の後側に隣接して形成した底面部40と平行な平面状の物品載置面70と、該物品載置面70に被せた状態での取り付け・取り外しが可能な上カバー50とを備え、上カバー50を物品載置面70に取り付けた状態で、該カバー部材50により物品載置面70が覆われ、物品載置面70とは異なる傾斜角度をなす上カバー50の上板55が筐体10の上面部20の一部となる一方、上カバー50を物品載置面70から取り外した状態で、露出する物品載置面70が上面部20の一部となるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミキサー装置などに用いて好適な音響調節機器の筐体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示すように、ミキサー装置など音響調節機器の筐体構造がある。この種の音響調節機器の筐体構造は、ディスプレイや多数の操作子を配した上面部(パネル面)と、設置場所に載置される底面部と、上面部と底面部との間の側面を覆う側面部とで囲まれた函型の筐体を備えている。
【特許文献1】意匠登録1308006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に示すミキサー装置の筐体構造では、操作子やディスプレイを配したパネル面の視認性やデザイン性向上の観点から、該パネル面が筐体の前側から後側に向かって斜めに上昇する傾斜平面状に形成されている。そして、この傾斜平面は、操作子やディスプレイが無いパネル面の後端においてもそのまま維持されており、パネル面の最後端(最上端)は、傾斜平面の上端が上方へ鋭角状に突出する突出形状になっている。
【0004】
このように、従来のミキサー装置などの音響調節機器の筐体構造では、パネル面が傾斜している上に、その傾斜がパネル面の最後端でも維持されていたため、筐体上に、外付スピーカー(モニター用スピーカー)や文字入力用のキーボードあるいはマウスなどの小型付属機器を安定した状態で載置可能なスペースを確保できなかった。この点、パネル面の空きスペースを有効活用して小型付属機器を載置できるようにすれば、ミキサー装置の利便性を向上させることができる。
【0005】
一方、大型のミキサー装置などの音響調節機器では、例えば、中央ユニットと左右ユニットなど複数のユニットを備え、該複数のユニットを隣接して設置するように構成したものがある。この場合、隣接して設置するユニット間に外観デザインの統一感を持たせることが重要となる。そのため、小型スピーカーやキーボードなどの付属機器を載置するスペースを筐体上に確保する場合でも、ユニット間の外観デザインの統一感が損なわれないような配慮が求められる。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、複数ユニット間での統一感など良好な外観デザインを維持しつつ、音響調節機器の使用条件に応じて筐体上面の余剰スペースの有効活用が可能となる筐体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、上面部(20)と、底面部(40)と、上面部(20)と底面部(40)との間の側面を覆う側面部(45)とで囲まれた函型の筐体(10)を備えてなる音響調節機器(1)の筐体構造において、上面部(20)に形成され、操作子(34)あるいはディスプレイ(33)を配してなり、その面が底面部(40)に対して傾斜する傾斜平面状のパネル面(31)と、上面部(20)におけるパネル面(31)に隣接して配置され、その面が底面部(40)と平行な平面状に形成された物品載置面(70)と、該物品載置面(70)への取り付け及び取り外しが可能なカバー部材(50)と、を備え、カバー部材(50)を物品載置面(70)に取り付けた状態で、物品載置面(70)とは異なる傾斜角度をなす該カバー部材(50)の上面(55)が筐体(10)の上面部(20)の一部となる一方、カバー部材(50)を物品載置面(70)から取り外した状態で、露出する物品載置面(70)が筐体(10)の上面部(20)の一部となるように構成したことを特徴とする。
【0008】
本発明にかかる音響調節機器の筐体構造によれば、筐体の底面部と平行な平面状の物品載置面からカバー部材を取り外せば、物品載置面にモニター用スピーカーや文字入力用のキーボードやマウスなどの小型付属機器を載置可能となる。その一方で、カバー部材を物品載置面に取り付ければ、物品載置面とは異なる傾斜角度をなすカバー部材の上面により、筐体の上面に所望の傾斜面を形成することができる。したがって、音響調節機器において、他ユニットとの統一感などの良好な外観デザインを維持しつつ、使用条件に応じて筐体上面の余剰スペースを有効活用することが可能となり、音響調節機器の使い勝手を向上させることができる。
【0009】
また、上記の音響調節機器の筐体構造では、物品載置面(70)は、音響調節機器(1)の操作者側に対して、上面部(20)のパネル面(31)よりも後側に配置するとよい。これによれば、物品載置面にモニター用のスピーカーやキーボードあるいはマウスなどの小型付属機器を載置しても、操作者によるパネル面やディスプレイの視認性に影響を与えずに済む。また、物品載置面に載置した物品がパネル面に配列した操作子の操作の邪魔になることも防げる。
【0010】
また、本発明にかかる音響調節機器(1)は、上記の筐体構造を備えた一のユニット(100)に並設される他のユニット(200)を備え、一のユニット(100)と他のユニット(200)とを同一平面上に隣接して設置した際、一のユニット(100)が備えるカバー部材(50)の上面(55)が他のユニット(200)の上面(222)と連続する一平面上に配置されるようにするとよい。これによれば、本発明の筐体構造を適用した一のユニットに他のユニットを隣接配置してなる音響調節機器において、一のユニットの物品載置面にカバー部材を取り付けた状態で、一のユニットと他のユニットとの外観形状に統一感を持たせることが可能となる。これにより、音響調節機器の外観デザインを良好にできる。その一方で、カバー部材を取り外せば、物品載置面に小型付属機器などを載置することが可能となるので、音響調節機器の利便性も向上させることができる。
【0011】
また、上記の音響調節機器の筐体構造では、物品載置面(70)には、機器の端子を接続するための端子接続部(71)が設けられており、カバー部材(50)には、端子接続部(71)を露出させる開口部(56)が形成されており、カバー部材(50)を物品載置面(70)に取り付けた状態で、開口部(56)から端子接続部(71)が露出するようにしてよい。これによれば、カバー部材を取り付けた状態と取り外した状態のいずれにおいても端子接続部の利用が可能となるので、付属機器などを効果的に活用できるようになり、音響調節機器の利便性が向上する。なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態の対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる音響調節機器の筐体構造によれば、複数ユニット間での統一感など良好な外観デザインを維持しつつ、筐体上面の余剰スペースを有効活用でき、音響調節機器の使い勝手を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる筐体構造を適用したミキサー装置(音響調節機器)1の外観構成を示す図で、(a)は、ミキサー装置1の筐体10に後述する上カバー50を取り付けた状態の斜視図、(b)は、上カバー50を取り外した状態の斜視図である。なお、同図(b)では、筐体10から取り外した上カバー50を分解した状態で示している。なお、以下の説明では、ミキサー装置1の操作者側を手前側あるいは前側、その反対側を後側という。また、ミキサー装置1の手前側からみた両側を左右あるいは横方向という。また、各部品における方向を示す場合は、各部品をミキサー装置1に取り付けた状態での方向で示す。
【0014】
ミキサー装置1の筐体10は、ディスプレイ33及び複数の操作子29,34を配した上面部20と、上面部20の下方に配置された底面部40と、上面部20と底面部40との間の側面を覆う側面部45とで函型に形成されている。側面部45は、筐体10の前側面を形成する前壁46と、左右側面を形成する横壁47と、後側面を形成する後壁48とからなる。底面部40は、平板状の底壁41と該底壁41の下面に取り付けた突起状の複数の脚部42(図3参照)とを備えて構成されている。
【0015】
上面部20は、筐体10の手前側に配置されて多数の操作子29を配列した平面状の操作パネル(パネル面)21と、該操作パネル21の後端辺21aに連接された境界部25と、ディスプレイ33を含み境界部25から後方斜め上側に立設された傾斜平面状の表示パネル(パネル面)31とからなる。操作パネル21は、その面が底壁41と平行に配置されている。境界部25は、操作パネル21の後端辺21aに沿って筐体10の横方向に直線状に延びている。表示パネル31は、境界部25の後側でその面が後方斜め上側に向かって延びている。
【0016】
上面部20は、境界部25を挟んで操作パネル21と表示パネル31とが鈍角のV字型、すなわち逆へ字型をなしている。したがって、筐体10の底面部40を水平面に設置した状態で、操作パネル21が水平になり、表示パネル31が水平面から後方斜め上側に所定角度(図では約45度)に立設された状態となる。
【0017】
操作パネル21には、各種の操作子29が配設されている。操作子29は、操作パネル21に設けた小孔(図示せず)を貫通して操作パネル21の上面側に露出している。ここでいう各種の操作子29には、フェーダ操作子29a、スイッチ類29b、ロータリーボリューム29cなどが含まれる。また、操作パネル21には、液晶表示部29dなどの電子機器類も設置されている。操作パネル21上のフェーダ操作子29aは、ミキサー装置1の前後方向に沿って直線状にスライド移動が可能である。なお、フェーダ操作子29aは手動操作で移動するように構成されているが、電気的に駆動するためのモータ(図示せず)も併設されている。一方、表示パネル31には、ディスプレイ33が嵌め込まれている。また、表示パネル31におけるディスプレイ33の側部には、スイッチ類やロータリーボリュームなどからなる操作子34が配列されている。
【0018】
また、上面部20における境界部25には、モール板23が取り付けられている。モール板23は、可撓性を有する合成樹脂材などで形成された細板状の部材で、操作パネル21の後端辺21aと表示パネル31の前端辺31aとの隙間に嵌め込まれている。
【0019】
そして、図1(b)に示すように、上面部20の表示パネル31より後側、すなわち上面部20の最後部には、底壁41と略平行な平面状の物品載置面70が形成されている。物品載置面70には、横断面が略三角形状に形成された上カバー(カバー部材)50が取り付けられている。上カバー50は、物品載置面70に対して取り付け及び取り外しが可能である。したがって、上カバー50を取り外せば、露出する物品載置面70にモニター用スピーカーや文字入力用のキーボードやマウスなどの小型付属機器を載置することが可能となる。一方、物品載置面70に上カバー50を取り付ければ、上カバー50によって物品載置面70が隠れ、上カバー50が筐体10の上面部20の一部をなすようになる。
【0020】
図2は、上カバー50及び物品載置面70の詳細構成を示す部分拡大横断面図である。物品載置面70は、後壁48の上端から手前側に向かって底壁41と略平行に延びる板状部材49の上面に形成されており、表示パネル31の後端よりも一段低い位置に配置されている。上カバー50は、図1(b)及び図2に示すように、略三角形状の平板部材からなる一対の側板51,51と、側板51,51に固定される上板55及び押え板61とを備えており、上方に突出する三角形状のテント型に形成されている。側板51,51は、金属などで形成された板状部材を折曲形成した部材で、互いに左右対称の形状を有しており、物品載置面70に対して平行な底辺51aと、底辺51aの手前側上方に位置する前上辺51bと、後側上方に位置する後上辺51cとからなる三辺を備えた略三角形状に形成されている。側板51は、その面が筐体10の前後方向に沿って配置されている。
【0021】
側板51の前上辺51bには、上板55を固定するための被固定片52が形成されている。被固定片52は、前上辺51bを一定幅で内側へ略直角に折曲形成した部分である。また、側板51の底辺51aには、物品載置面70に固定される被固定片53が形成されている。被固定片53は、側板51の底辺51aを一定幅で内側へ略直角に折曲形成した部分である。
【0022】
上板55は、筐体10の左右方向を長手方向とする略長方形状の平板部材で、側板51,51に掛け渡されている。上板55は、側板51の前上辺51bに設けた被固定片52に対してボルト54の締結で固定される。すなわち、上板55の左右両端の近傍には、ボルト孔55aが形成されており、側板51の被固定片52にもボルト孔52aが形成されている。ボルト孔55aとボルト孔52aとにボルト54を締結することで、側板51,51に上板55を固定するようになっている。側板51,51に固定された上板55は、表示パネル31の後方で表示パネル31の面とは異なる別の傾斜面を形成する。この面は、表示パネル31の傾斜角度よりも若干緩やかな傾斜角度で後方斜め上側に向かって上昇する傾斜面となっている。
【0023】
また、図2に示すように、側板51の物品載置面70への取り付けは、ボルト57の締結で行われる。すなわち、物品載置面70の左右両端の近傍には、ボルト孔70aが形成されており、側板51の被固定片53にもボルト孔53aが形成されている。物品載置面70のボルト孔70aと被固定片53のボルト孔53aとにボルト57を締結することで、側板51,51を物品載置面70に固定するようになっている。
【0024】
押え板61は、合成樹脂製の成型品で、上板55の後端辺に沿って筐体10の左右方向に延びる長尺状の板材である。押え板61の上端辺は、一定幅で手前側に突出する突出辺61aになっており、該押え板61は、上端の突出辺61aから下端に向かって側板51の後上辺51cに沿うように斜め下方に延びており、その途中には、段部61bが形成されている。段部61bは、上下及び前後方向を向く複数の平面からなり、その上面側には、断面が略コ字型のレール溝62が形成されている。レール溝62は、後述するように、台本載置板80の後脚81に設けた転動体82や照明具90の支持アーム91に設けた転動体をガイドするため溝部として使用可能である。
【0025】
押え板61は、物品載置面70に対してボルト63で固定されるようになっている。ボルト63は、押え板61におけるレール溝62の底部に形成したボルト孔61cと、物品載置面70の後端辺に沿って配列したボルト孔70bとに挿通される。押え板61のボルト孔61cは、レール溝62に沿って所定間隔で複数個が配列されている。物品載置面70のボルト孔70bは、ボルト孔61cに対応して設けられている。また、押え板61は、上板55に対してボルト64で固定されるようになっている。ボルト64は、押え板61の突出辺61aに形成したボルト孔61dと、上板55の後端辺に沿って配列したボルト孔52bとに挿通される。なお、図1(b)では、ボルト54、ボルト57、ボルト64の図示を省略している。
【0026】
物品載置面70には、キーボードやマウスなどの機器を接続するための接続端子部71が設置されている。接続端子部71は、例えば、USB端子からなる。接続端子部71は、その上面(端子接続面)71aが上カバー50の上板55と平行になるように手前側へ傾斜した小突起状に形成されている。一方、上板55における接続端子部71に対応する位置には、接続端子部71の外形に沿う形状の開口部56が形成されている。したがって、上カバー50を物品載置面70に取り付けた状態で、開口部56から接続端子部71が露出するようになっている。
【0027】
次に、上カバー50の組立及び筐体10への取付の手順について説明する。まず、側板51,51を物品載置面70に取り付ける。この取り付けは、側板51の被固定片53に設けたボルト孔53aと物品載置面70に設けたボルト孔70aとにボルト57を締結して行う。その状態で、側板51,51の前上辺51b,51bに上板55を取り付ける。上板55の取り付けは、側板51,51の被固定片52,52に設けたボルト孔52a,52aと上板55に設けたボルト孔55a,55aとにボルト54を締結して行う。さらにその状態で、側板51の後上辺51cに押え板61を被せて取り付ける。この取り付けは、押え板61の突出辺61aを上板55の後端辺に載せ、その状態で押え板61に設けたボルト孔61cと物品載置面70に設けたボルト孔70bとにボルト63を締結し、かつ、押え板61に設けたボルト孔61dと上板55に設けたボルト孔52bとにボルト64を締結して行う。以上により、上カバー50の組み立て及び物品載置面70への取り付けが完了する。なお、上カバー50の分解及び物品載置面70からの取り外しは、上記の手順を逆の順序で行えばよい。
【0028】
本実施形態の筐体構造では、図1(a)に示すように、物品載置面70に上カバー50を取り付けた状態で、上カバー50で物品載置面70が隠れ、物品載置面70とは異なる傾斜平面をなす上カバー50の上板55が筐体10の上面部20の一部となる。また、上カバー50の上板55と押え板61とにより、筐体10の上面部20の後端が上方に突出する山形の突起状となる。これらにより、筐体10の上面部20を所望のデザインとすることができ、筐体10の外観デザインが良好になる。その一方で、図1(b)に示すように、物品載置面70から上カバー50を取り外せば、表示パネル31の後側に平面状の物品載置面70が露出する。したがって、物品載置面70にモニター用のスピーカーやキーボードやマウスなどの小型付属機器を載置することが可能である。これらにより、ミキサー装置1の良好な外観デザインを維持しつつ、筐体10の上面部20の余剰スペースの有効活用が可能となり、ミキサー装置1の使い勝手を向上させることができる。なお、上カバー50を取り付けた状態と取り外した状態のいずれにおいても、接続端子部71が露出するので、接続端子部71にキーボードやマウスなどを接続することが可能である。また、物品載置面70には、スピーカーやキーボードあるいはマウスなどの付属機器以外にも、台本など他の小物を置くことも可能である。
【0029】
また、この筐体構造では、物品載置面70は、ミキサー装置1の手前側に座った操作者から見て、表示パネル31より後側の位置に設けられている。したがって、物品載置面70にモニター用のスピーカーなどの付属機器を載置しても、操作者による表示パネル31やディスプレイ33の視認性に影響を与えずに済む。また、物品載置面70に載置した付属機器が操作子29や操作子34の操作の邪魔になることも防げる。
【0030】
図3は、筐体10に台本載置板80を取り付けた状態を示す概略側面図(一部断面図)である。同図に示すように、表示パネル31の上方には、その面を表示パネル31と平行に配置した台本載置板80が設置可能である。台本載置板80は、略矩形の板状部材で、後端辺80bに連結した棒状の後脚81が、表示パネル31と上カバー50の上方で底壁41と平行に筐体10の後側へ延びており、押え板61の位置で垂直下方に屈曲して、その下端に取り付けた車輪などからなる転動体82が押え板61のレール溝62に係合している。一方、台本載置板80の前端辺80aは、境界部25の真上に位置しており、該前端辺80aから垂直下方に延びる直線棒状の前脚83の下端に設置した転動体84がモール板23に対してその長手方向に沿って転動可能に載置されている。なお、前脚83と後脚81は、台本載置板80の左右端に一本ずつ設けられている。したがって、前脚83の転動体84がモール板23上を転動し、後脚81の転動体82が押え板61のレール溝62を転動することで、台本載置板80は、表示パネル31の上方において筐体10の左右方向(図3の紙面手前側及び奥側方向)にスライド移動自在になっている。なお、台本載置板80は、ミキサー装置1に対して取り付け及び取り外しが可能である。
【0031】
図4は、本発明にかかる筐体構造を適用したミキサー装置1の中央ユニット100と、該中央ユニット100の両側に設置した左右ユニット200,200との外観構成を示す斜視図である。同図に示す中央ユニット100は、本発明にかかる上記の筐体10を備えており、表示パネル31の後側に上カバー50を取り付けた物品載置面70(図4では図示せず)が設けられている。
【0032】
中央ユニット100の両側に設置された左ユニット200と右ユニット200は、互いに同一の形状の筐体210を備えている。筐体210は、上面部220と底面部240と側面部245を有する函型に形成されている。上面部220は、手前側に配置した第1操作パネル221と、第1操作パネル221の後端に設けた境界部225と、境界部225の後側に配置した表示パネル231と、表示パネル231の後端から後方に延びる第2操作パネル222とを備えて構成されている。第1操作パネル221には、操作子229が配列されており、その面が底面部240と平行に配置されている。表示パネル231は、ディスプレイ233を有してなり、中央ユニット100の表示パネル31と等しい傾斜角度で境界部225から後方斜め上側に傾斜している。表示パネル231は、中央ユニット100の表示パネル31より高さが低くなっている。第2操作パネル222には、操作子229が配列されており、表示パネル231の上端から中央ユニット100の上カバー50の上板55と等しい傾斜角度で後方斜め上側に向かって延びている。この第2操作パネル222は、上カバー50の上板55に隣接して配置されており、これら第2操作パネル222と上カバー50の上板55とが同一の平面上に位置し、互いの面が略一致した状態になっている。
【0033】
すなわち、本実施形態の筐体構造を備えたミキサー装置1の中央ユニット100に左右ユニット200,200を隣接して設置した際、中央ユニット100が備える上カバー50の上板55が左右ユニットの200,200の上面と連続する一平面上に配置される。つまり、中央ユニット100の物品載置面70に上カバー50を取り付けた状態で、中央ユニット100と左右ユニット200,200との外観形状に統一感を持たせることが可能となる。これにより、ミキサー装置1の外観デザインを良好にすることができる。その一方で、中央ユニット100の上カバー50を取り外せば、物品載置面70にモニター用スピーカーなどの小型付属機器を載置できるので、ミキサー装置1の利便性を向上させることができる。
【0034】
また、図4に示すように、ミキサー装置1の筐体10には、操作パネル21などの上面部20を照らすための照明具90を取り付けることが可能である。照明具90は、屈曲棒状の支持アーム91と、該支持アーム91の先端に設けたLEDや電球などを内蔵した照明部92とで構成されている。支持アーム91は、図3に示す台本載置板80の後脚81とほぼ同様の構成であり、一端に取り付けた転動体(図示せず)が押え板61のレール溝62に係合しており、そこから上方に延び、手前側へ略直角に屈曲して表示パネル31の上から操作パネル21の上まで延伸して照明部92に繋がっている。したがって、レール溝62に沿う転動体の移動により、照明部92が照らす位置を操作パネル21の左右方向で任意の位置に変えることができる。なお、照明具90は、ミキサー装置1に対して取り付け及び取り外しが可能である。
【0035】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、筐体10の上面部20の操作パネル21と表示パネル31とがV字型(逆へ字型)をなす屈曲面形状である場合を示したが、本発明の筐体構造では、例えば、筐体の上面部を一の傾斜平面で構成するなど、上記実施形態以外の形状とすることも可能である。また、本発明の筐体構造は、上記実施形態に示すミキサー装置1以外にも、他の種類の音響調節機器にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態にかかる筐体構造を適用したミキサー装置の外観構成を示す図で、(a)は、ミキサー装置の筐体に上カバーを取り付けた状態の斜視図、(b)は、上カバーを取り外した状態の斜視図である。
【図2】上カバー及びその周辺の詳細構成を示す部分拡大横断面図である。
【図3】表示パネルの上方に台本載置板を取り付けた状態を示す筐体の概略側面図である。
【図4】本発明にかかる筐体構造を適用したミキサー装置の中央ユニットと、該中央ユニットの両側に設置した左右ユニットとの外観構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ミキサー装置(音響調節機器)
10 筐体
20 上面部
21 操作パネル
25 境界部
29 操作子
31 表示パネル(パネル面)
33 ディスプレイ
40 底面部
45 側面部
50 上カバー(カバー部材)
51 側板
55 上板
56 開口部
61 押え板
70 物品載置面
71 接続端子部
80 台本載置板
90 照明具
100 中央ユニット(一のユニット)
200 左(右)ユニット(他のユニット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面部と、底面部と、前記上面部と前記底面部との間の側面を覆う側面部とで囲まれた函型の筐体を備えてなる音響調節機器の筐体構造において、
前記上面部に形成され、操作子あるいはディスプレイを配してなり、その面が前記底面部に対して傾斜する傾斜平面状のパネル面と、
前記上面部における前記パネル面に隣接して配置され、その面が前記底面部と平行な平面状に形成された物品載置面と、
該物品載置面への取り付け及び取り外しが可能なカバー部材と、を備え、
前記カバー部材を前記物品載置面に取り付けた状態で、前記物品載置面とは異なる傾斜角度をなす該カバー部材の上面が前記筐体の上面部の一部となる一方、
前記カバー部材を前記物品載置面から取り外した状態で、露出する前記物品載置面が前記筐体の上面部の一部となるように構成した
ことを特徴とする音響調節機器の筐体構造。
【請求項2】
前記物品載置面は、前記音響調節機器の操作者側に対して、前記上面部の前記パネル面よりも後側に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の音響調節機器の筐体構造。
【請求項3】
前記音響調節機器は、前記筐体構造を備えた一のユニットに並設される他のユニットを備え、
前記一のユニットと前記他のユニットとを同一平面上に隣接して設置した際、前記一のユニットが備える前記カバー部材の上面が前記他のユニットの上面と連続する一平面上に配置される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の音響調節機器の筐体構造。
【請求項4】
前記物品載置面には、機器の端子を接続するための端子接続部が設けられており、
前記カバー部材には、前記端子接続部を露出させる開口部が形成されており、
前記カバー部材を前記物品載置面に取り付けた状態で、前記開口部から前記端子接続部が露出する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の音響調節機器の筐体構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−171227(P2010−171227A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12655(P2009−12655)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】