説明

頁岩粉末の比表面積の制御方法

【課題】 従来の頁岩から得られた調湿材は、BET法で測定した比表面積が100m/g以上と高い比表面積を持つため、これによる吸湿機能は大きかった。このため、湿度を人間の居住空間のように快適な範囲に緩やかに制御するには、配合設計が困難であるという問題点があった。したがって、本発明では、頁岩粉末の比表面積を制御する技術を提供する。
【解決手段】 頁岩粉末をアルカリ性溶液中に投入して攪拌混合する工程と、前記攪拌混合により得られた頁岩粉末を洗浄ろ過する工程と、前記洗浄ろ過により得られた頁岩粉末を乾燥する工程と、を含むことを特徴とする頁岩粉末の比表面積の制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頁岩粉末の比表面積の制御方法に関するもので、さらに詳しくは、水質浄化材、消臭材、調湿材等に用いられる頁岩粉末の比表面積の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、多孔質材料である頁岩の粉砕物あるいはその成形体を500〜900℃で焼成した焼成体から構成された調湿消臭材料が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
さらには、頁岩を酸処理してハンター白色度を高めた調湿材も提案されている。(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特許3375927号公報
【特許文献2】特開2005−95868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の頁岩から得られた調湿材は、BET法で測定した比表面積(以下、BET比表面積と呼ぶ。)が100m/g以上と高い比表面積を持つため、これによる吸湿機能は大きかった。このため、湿度を人間の居住空間のように快適な範囲に緩やかに制御するには、配合設計が困難であるという問題点があった。しかし、このために必要とされる頁岩粉末の比表面積を制御する技術については、今までに検討された例は無かった。
【0005】
本発明はこの点を鑑み、頁岩粉末の比表面積を制御する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、頁岩の主要成分であるクリストバライトのアルカリに対する反応性に着目して、頁岩粉末をアルカリ性溶液で処理すれば、頁岩の細孔構造が変化して、BET比表面積を制御できるとの着想のもとに、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の目的は、頁岩粉末をアルカリ性溶液中に投入して攪拌混合する工程と、前記攪拌混合により得られた頁岩粉末を洗浄ろ過する工程と、前記洗浄ろ過により得られた頁岩粉末を乾燥する工程と、を含むことを特徴とする頁岩粉末の比表面積の制御方法によって達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新規な頁岩粉末の比表面積の制御方法を提供でき、頁岩粉末のBET比表面積を100m/g未満に制御することができる。したがって、頁岩の調湿、消臭等の吸着機能を穏やかな方向に調整できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に用いる頁岩は、一般にSiOの含有量が70〜90%で、薄片状に剥離しやすい性質を持った堆積岩の一種である。この頁岩の種類としては特に限定されるものではないが、例えば北海道北部で産出する頁岩は、オパールCTなど結晶度の低いクリストバライト、トリディマイトを主構成鉱物としている。また、頁岩を粉砕した粉末(以下、頁岩粉末と呼ぶ。)の比表面積は、120m/g程度と大きく、天然の岩石としては極めて多孔質な物質である。よって、本発明に係る調湿、消臭等の吸着機能を有する多孔質材料として好適に用いることができるものである。
ここで、この頁岩に含まれるクリストバライトはアルカリ性溶液に溶解するため、頁岩粉末の細孔構造が変化して比表面積を制御できる作用がある。
【0010】
本発明では、頁岩粉末をアルカリ性溶液中に投入して攪拌混合する工程と、前記攪拌混合により得られた頁岩粉末を洗浄ろ過する工程と、前記洗浄ろ過により得られた頁岩粉末を乾燥する工程と、を含むことを特徴とする頁岩粉末の比表面積の制御方法を提案している。
【0011】
ここで、頁岩粉末をアルカリ性溶液中に投入して攪拌混合する理由は、前記したように頁岩に含まれるクリストバライトをアルカリ性溶液で溶解して、頁岩粉末の細孔構造を変化させ比表面積を制御するためである。これにより、BET比表面積を100m/g未満に減じる方向に制御することが可能となる。
【0012】
本発明に用いるアルカリ性溶液としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの水溶液を用いることができる。また、アルカリ性溶液の濃度としては、0.1mol/l 以上であることが好ましい。その理由は、0.1mol/l未満ではアルカリ濃度が薄く、頁岩粉末の比表面積を変化させるのには反応性が十分でないからである。
【0013】
次に、攪拌混合により得られた頁岩粉末を洗浄ろ過する工程では、公知の洗浄ろ過方法が適用できる。即ち、一般的なフィルターろ過以外にも、遠心分離やベルトフィルターやフィルタープレス等を用いることができる。
【0014】
次に、洗浄ろ過により得られた頁岩粉末を乾燥する工程では、公知の乾燥方法が適用できる。即ち、一般的な加熱乾燥以外にも、スプレードライや真空乾燥等を用いることができる。ここで、加熱乾燥による場合は、頁岩粉末の固結を防止するために600℃以下で乾燥することが好ましい。
【0015】
以下に、本発明を実施例と比較例により詳細に説明する。
【0016】
(1)出発試料
出発試料としては、北海道北部で産出した頁岩(SiO量:80重量%)を粒径1mm以下に粉砕した頁岩粉末を用いた。
【0017】
(2)比表面積の評価方法
得られた試料のBET比表面積は、島津製作所社製の比表面積測定装置(装置名:Flowsorb2.2300)を用いて評価した。
【0018】
(実施例)
3個の300mlのビーカーそれぞれに、0.5mol/lの水酸化ナトリウム溶液150mlを入れた。次に、各ビーカーに頁岩粉末を10gずつを秤とって、それぞれ投入した。さらに、この頁岩粉末を投入したアルカリ性溶液を毎分100回転に設定した攪拌混合機で、1,6,12時間の時間だけそれぞれ攪拌混合した。
次に、得られた各試料(頁岩粉末)をロートとろ紙を使用して濾過したのち、さらに、純水100mlで各試料を洗浄して固形分(頁岩粉末)を回収した。その後、固形分(頁岩粉末)を105℃の乾燥器で12時間加熱乾燥させた。
【0019】
(比較例)
300mlのビーカーに、純水150mlを入れた。次に、ビーカーに頁岩粉末を10gを秤とって投入した。さらに、この頁岩粉末を投入した水溶液を毎分100回転に設定した攪拌混合機で、6時間の時間だけ攪拌混合した。
次に、得られた試料(頁岩粉末)をロートとろ紙を使用して濾過したのち、さらに、純水100mlで試料を洗浄して固形分(頁岩粉末)を回収した。その後、固形分(頁岩粉末)を105℃の乾燥器で12時間加熱乾燥させた。
【0020】
実施例、比較例で得られた頁岩粉末のBET比表面積を評価した結果を表1にまとめて示した。
【0021】
【表1】

【0022】
表1の結果より、本発明の実施例である試料No.1,2,3のBET比表面積は、本発明の比較例である試料No.4のBET比表面積125m/gより小さくなっていることが分かった。即ち、本発明によれば、頁岩粉末のBET比表面積を100m/g未満に減じる方向に制御することが可能となることが確認できた。
これにより、頁岩粉末の調湿、消臭等の吸着機能を穏やかな方向に調整できる効果がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頁岩粉末をアルカリ性溶液中に投入して攪拌混合する工程と、前記攪拌混合により得られた頁岩粉末を洗浄ろ過する工程と、前記洗浄ろ過により得られた頁岩粉末を乾燥する工程と、を含むことを特徴とする頁岩粉末の比表面積の制御方法。

【公開番号】特開2009−167021(P2009−167021A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3767(P2008−3767)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】