説明

頭髪用塗布具

【解決の手段】塗布部材を、頭髪用液体化粧料が貯溜された軸筒の先方に設けた保持用孔に保持した頭髪用塗布具において、前記塗布部材先端に櫛歯状に並設した複数の櫛歯を設け、該複数の櫛歯は、軸筒先端からの露出距離がそれぞれ、同じ及び/又は異なるようにするとともに、前記複数の櫛歯のうち、少なくとも露出距離が最大となる櫛歯の先端を被膜部で形成したことを特徴とする頭髪用塗布具。【効果】塗布部材の先端に、複数の櫛歯を研削、裁断、金型成形によって極めて容易に形成でき、櫛歯の先端を皮膜部でシールしているため補助櫛歯のような部品を別途必要としない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒内に貯溜させた染毛剤、脱色剤、パーマネントウエーブ剤、ヘアトリートメント剤等の頭髪用液体化粧料を、頭髪に好適に塗布可能に構成した頭髪用塗布具である。
【背景技術】
【0002】
従来、頭髪の染毛等を行う際、染めるまでに手間と時間がかかり、頭皮を化粧料で汚す可能性もあった。また、櫛歯の構造が複雑で、製造コストが高くなる課題を有していた。この問題を解決し、手軽に簡単に頭髪を染めることのできるものとして、例えば、特許文献1、2のような頭髪用塗布具が知られている。
【0003】
特許文献1に開示されているのは、一端に複数本の櫛歯部を一体的に形成したフェルト芯体を、櫛歯部が露出するように容器本体に収納した頭髪用塗布具であり、特に櫛歯部より長く補助櫛歯を設けたことを特徴としているため、櫛歯部をフェルト芯体の上端に容易に形成することができるとともに、補助櫛歯によって櫛歯部の先端が直接頭皮に当たらないようにして、塗布液が頭皮に塗布されない効果がある。ところが、前記効果を達成するためには、補助櫛歯を別途必ず必要とするため、部品点数が増えるとともに製造も煩雑となる。
【0004】
特許文献2に開示されているものは、吸上げ芯の先端部を毛細管現象が起こらないように、合成樹脂を含浸、塗布したり、柔軟性不浸透材で被覆しているため、頭皮を汚すことなく毛染めを行うことができる効果がある。ところが、前記構成では、吸上げ芯を保持体に一本一本嵌め込まなければならないため作業が煩雑であり、また吸上げ芯を保持体にインサート成形した場合でも、同様に吸上げ芯を嵌め込む作業があり煩雑である。
また、前記特許文献1、特許文献2はともに、櫛歯に方向性があるため塗布作業の際一々櫛歯の方向を目視確認する必要があり作業効率が悪く、また目の不自由な方等が使用する際は作業に負荷がかかる。
【特許文献1】特開2005−218622号
【特許文献2】特開2005−287926号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとするところは、吸上げ芯を保持体に一本一本嵌め込むような煩雑な作業がなく、また補助櫛歯のような部品を別途必要としない頭髪用塗布具を提供することにある。また、櫛歯の方向性をなくすことによって、塗布作業の効率を上げた頭髪用塗布具を提供することにある。尚、本発明で「先」とは頭髪用塗布具本体の塗布部材側を指し、「後」とは頭髪用塗布具本体の尾端側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために完成された本発明の頭髪用塗布具は、塗布部材を、頭髪用液体化粧料が貯溜された軸筒の先方に設けた保持用孔に保持した頭髪用塗布具において、前記塗布部材先端に櫛歯状に並設した複数の櫛歯を設け、該複数の櫛歯は、軸筒先端からの露出距離がそれぞれ、同じ及び/又は異なるようにするとともに、前記複数の櫛歯のうち、少なくとも露出距離が最大となる櫛歯の先端を被膜部で形成したことを特徴とする。また、前記塗布部材の横断面形状を円形または正多角形形状とするとともに、前記複数の櫛歯の位置がそれぞれ対称となるように設け、少なくとも最外郭に位置する櫛歯を露出距離が最大となるように設けたことを特徴とする請求項1に記載の頭髪用塗布具。
【発明の効果】
【0007】
本発明の頭髪用塗布具に用いる塗布部材は、その先端に設けた複数の櫛歯を、研削、裁断、金型成形によって極めて容易に形成でき、櫛歯の形状や個数、露出距離も目的に応じて種々採用可能である。また、櫛歯の先端を皮膜部で形成しているため、補助櫛歯のような部品を別途必要としない。さらに、複数の櫛歯が凹凸のある櫛歯状に形成してある場合、櫛歯の中で、少なくとも露出距離が最大となる櫛歯の先端は必ず被膜部によりシールされているため、先端から化粧料が流出することがなく、頭皮を汚すことがない。また、櫛歯のうち、先端に被膜部が形成されていない部分については、先端および側面の両方から化粧料を塗布することができるため、潤沢な液量を頭髪表面へ付着させることができる。さらに、櫛歯は塗布部材先端に一体に形成されているため、使用時櫛歯に過度の荷重がかかったとしても、皮膜部を有する櫛歯のみが没入することはなく、皮膜されていない櫛歯の先端が皮膜部より先方へ露出することがなく、よって誤って頭皮を汚すことがない。また、塗布部材を傾斜状に並設して保持した場合は、櫛歯の先端部分が、頭髪の表面に対して傾斜した状態になるため、化粧料の塗布作業を極めて容易に行うことができる。
さらに、塗布部材の横断面形状を円形または正多角形形状とするとともに、前記複数の櫛歯のそれぞれが対称となるように設け、前記露出距離が最大となる櫛歯が最外郭に位置するようにしているため、頭髪を梳く際に梳き感が増すとともに化粧料を効率よく塗布することができ、また塗布作業の際、一々櫛歯の方向を目視確認する必要がなく作業効率が上がり、目の不自由な方が使用する際は作業負荷が低減される。また、不用意に化粧料が頭皮に付着することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、まず第1の実施例を図1〜図4を参照しながら具体的に説明する。塗布部材(1)は頭髪用液体化粧料が毛細管移動可能なものであって、適宜の保液性と耐久性を備えたものであり、例えば、羊毛フェルト、合成樹脂繊維の熱融着フェルト、繊維束の樹脂加工体及び熱融着加工体、焼結体等のポーラスタイプのもの等を挙げることができる。材質としては、公知の天然繊維及び合成樹脂繊維を使用可能で、天然繊維としては、例えば羊毛や綿等を使用可能で、合成樹脂繊維としては、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、ポリアセタール系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニル系繊維、ポリカーボネート系繊維、ポリエーテル系繊維、ポリフェニレン系繊維、ホルムアルデヒド系繊維、エポキシ系繊維、シリコーン系繊維等の単体または複合体を接着剤で接着・固化したものが使用可能である。前記接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の公知のもので、塗布部材(1)の材質および化粧料の性質に適応したものになる。また、焼結体等のポーラスタイプのものとしては、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、アクリロニトリル系などの有機高分子の粉末状または、単繊維状の材料を所定形状の金型へ入れ、所定圧力、温度にて、加圧、加熱、することにより、それぞれの表面のみが溶融し、融着し、焼結されて得られた連続多孔構造のものを用いることができる。ここで、塗布部材(1)の横断面形状は自由であり、例えば多角形、円形、楕円形、その他のこれらに類する形状を採用できるし、寸法も目的に応じて自由に採用できる。
【0009】
前記塗布部材(1)の先端には、櫛歯状に並設した複数の櫛歯(12)を形成する。櫛歯(12)は、塗布部材(1)の片方または両方の端面を研削することにより、作製する。ここで、研削とは、砥石等を用いて表面を滑らかに削ることをいうが、特にこれに限られるものではなく、トムソン刃を用いた油圧裁断機、打ち抜きプレス機等を所望の形状に応じて自由に採用することができる。また、材質として焼結体等のポーラスタイプを用いる場合は、前記金型を所望の形状に形成することによって、複数の櫛歯(12)を形成させればよい。複数の櫛歯(12)は、軸筒(2)先端からの露出距離がそれぞれ、同じ及び/又は異なるように形成する。ここで、露出距離がそれぞれ、同じ及び/又は異なるようにとは、露出距離が同じように及び異なるようにのうち少なくとも一方になるように保持することをいい、露出距離が同じように、露出距離が異なるように、そして露出距離が同じように及び異なるようにの組合せの三者択一を意味する。つまり、露出距離が同じとは例えば図1に示すような状態を指す。また、露出距離が同じように及び異なるようにの組合せとは、例えば図2で示すような状態を指し、図中(a)、(b)で示すように、軸筒(2)先端から櫛歯(12)先端までの距離を(a)≠(b)とすることで、複数の櫛歯(12)が凹凸になるように、塗布部材(1)先端を櫛歯状に形成する。ここで、櫛歯(12)の半数以上が、露出距離同一で且つ露出距離が最大となるようにすると、頭皮への接触感がよく好ましい。また、露出距離が異なるようにとは、図示しないが、櫛歯(12)のそれぞれの露出距離が異なる状態を指す。また、軸筒(2)先端からの露出距離とは、例えば図1中(a)で示すように、保持用孔(21)へ塗布部材(1)を保持した状態での、軸筒(2)先端から櫛歯(12)先端までの距離をいう。そして、この櫛歯状に露出している部分、つまり複数の櫛歯(12)全体が塗布部分となる。
【0010】
ここで、櫛歯(12)の形状や数は目的に応じて自由に採用することができ、例えば適宜面取りを施すこともできるし、複数であれば数に特に制限はない。また、櫛歯(12)の端面を傾斜状になるように形成することもできる。作製方法は、傾斜状に形成することを除いては前記した方法と同じである。傾斜角度は自由で、目的に応じて適宜採用可能である。傾斜状に形成した場合は、複数の櫛歯(12)を先端部分が同一平面になるように保持することが好ましい。また、先端形状を曲面状にすれば頭皮を傷つけることが回避されるし、塗布部材(1)の両先端面に形成される櫛歯(12)の形状を対象に形成した場合は、塗布部材(1)に方向性がなくなるため、後述する軸筒(2)先端の保持用孔(21)への組付け作業が容易になる。
【0011】
櫛歯(12)の先端には被膜部(11)を形成する。被膜部(11)は、櫛歯(12)の先端から頭髪用液体化粧料が流出することを防止するために形成されている。被膜部(11)は、合成樹脂、合成樹脂エマルジョンで形成することができる。合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリビニルエーテル、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフッ化ビニリデン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、その他の合成樹脂であり、樹脂が表面部の繊維間に侵入して一体的に結合する現象、すなわち櫛歯(12)を形成する塗布部材(1)との結着性、使用化粧料に対する耐久性等を考慮して組み合わされる。一般的に化粧料が油性である場合には、耐溶剤性の面から、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン等が望ましい。
【0012】
合成樹脂エマルジョンとしては、熱可塑型アクリルエマルジョン、熱自己架橋型アクリルエマルジョン、変成アクリルエマルジョン、熱反応型アクリルエマルジョン等のアクリル系エマルジョン、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、変成酢酸ビニルエマルジョン等の酢酸ビニル系エマルジョン、ポリエチレンエマルジョン、ポリプロピレンエマルジョン等のポリオレフィン系樹脂エマルジョン、ポリ塩化ビニリデン等の各種合成樹脂エマルジョンおよび酢酸ビニルとエチレンの共重合体エマルジョン、酢酸ビニルとアクリル酸エステルの共重合体エマルジョン、アクリル酸エステルとスチレンの共重合体エマルジョン等各種合成樹脂の共重合体エマルジョンを例示できる。これら合成樹脂エマルジョンは単独あるいは二種以上併せて用いることができる。そして合成樹脂エマルジョンは所定の膜厚を得るために、適宜水を加えて粘度を調整することができる。また、分散安定性または作業性をよくするためにポリビニルアルコール等の水溶性樹脂溶液を加えて用いることもできる。また、作業性および経済性の点からみて最低造膜温度が5℃以下のものが望ましい。造膜温度と作業温度あるいは乾燥温度との差が10℃以下の場合はエマルジョンの乾燥に要する時間が大となって作業性が低下する。また、合成樹脂被膜が化粧料で汚れることがある。さらに、ポリオレフィン系樹脂エマルジョンおよびポリ塩化ビニリデンエマルジョンよりなる合成樹脂被膜は、化粧料の蒸発抑制には有効であるが、強度が弱いので二重あるいは二重以上に積層して用いることが望ましい。
【0013】
軸筒(2)は、先方に保持用孔(21)を設けた筒状体である。保持用孔(21)の形状は、保持する塗布部材(1)の横断面形状に対応させる。前記保持用孔(21)には塗布部材(1)が挿入され、後述する方法で圧入保持される。軸筒(2)内には、頭髪用液体化粧料が貯留された吸蔵体(3)を内包し、吸蔵体(3)の先端に塗布部材(1)の端面を接触させる。これにより、頭髪用液体化粧料の適量を前記塗布部材(1)へ供給が可能となる。軸筒(2)の尾端には尾栓(4)を装着する。
【0014】
ここで、軸筒(2)の形状は円柱形状に限らず角柱形状や、その他のこれらに類する形状を自由に採用できる。保持用孔(21)を設ける位置も先方であればよく、先端はもちろんのこと、後述する先端近傍側面であってもよい。また、塗布部材(1)を保持する方法は、圧入だけでなく、適宜嵌合等を採用することができる。また、保持用孔(21)の形状は、多角形、円形、楕円形、その他のこれらに類する形状を、塗布部材(1)の横断面形状に対応させて自由に採用できる。
【0015】
ここで、保持用孔(21)は、軸筒(2)の先方に直接設けてもよいし、例えば図2で示すように保持筒(5)のような別部品で構成してもよい。この場合、保持筒(5)の先端周部には止片部(51)を周設し、軸筒(2)の先端と止片部(51)が係止し、保持筒(5)は、軸筒(2)内に没入しないように装着される。保持筒(5)が軸筒(2)内に没入しないように装着させる方法も、止片部(51)による係止だけでなく、適宜周知の嵌合方法や螺合方法が採用できる。保持筒(5)を採用する場合は、吸蔵体(3)を先端側から軸筒(2)内へ挿入可能なため、尾栓(4)は不要となる。尚、本構成は、本第1の実施例だけでなく、この後詳述する第2の実施例でも採用できる。
【0016】
尾栓(4)の装着方法は、嵌合や螺合等を適宜採用することができる。尚、軸筒(2)は、頭髪用液体化粧料を貯留し、前記化粧料の適量を前方向へ供給可能な機構を内蔵して塗布部材(1)へ導出可能に構成されたものであればよく、前記吸蔵体(3)に化粧料を含浸させたものはもちろんであるが、弁機構によるものも挙げることができる。
【0017】
次に、被膜部(11)の作製方法について、図4を参照しながら具体的に説明する。被膜部(11)を合成樹脂で形成する場合、合成樹脂を有機溶剤等に溶解した液や合成樹脂エマルジョンに櫛歯(12)の先端を漬す方法と、有機溶剤等を全く使用せずに、単に熱可塑性樹脂を加熱により溶融してこれを櫛歯(12)の先端に付着させる方法とがある。合成樹脂を有機溶剤等に溶解した液を使用する方法は、前記各種合成樹脂を溶解する有機溶剤等を使用し、所望の合成樹脂を有機溶剤等に溶解させる。そして、合成樹脂を有機溶剤等に溶解させた液(6)に櫛歯(12)の先端を漬して引き上げ、常温または加熱して溶剤を揮発させ、合成樹脂を固化させて、櫛歯(12)の先端に合成樹脂の被膜部(11)を形成する。
【0018】
次に、有機溶剤等を全く使用せずに、単に熱可塑性樹脂を加熱により溶融してこれを櫛歯(12)の先端に付着させる方法について説明する。ヒーター上にエチレングリコール等の高沸点溶剤を収容したウォーターバスを載置し、このウォーターバスの中に例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂のペレットを適量投入した容器を設置して、ヒーターを加熱し、前記ウォーターバスの温度を約180℃位に設定して、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を溶融状態(6)とする。次いで、櫛歯(12)の先端を前記溶融状態にあるエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂に漬して直ちに引き上げ、2〜3秒放置して乾燥固化させて、櫛歯(12)の先端に合成樹脂の被膜部(11)を形成する。
【0019】
次に、被膜部(11)を合成樹脂エマルジョンで形成する場合、例えばアクリル系エマルジョン(6)に櫛歯(12)の先端を漬して引き上げ、常温または加熱して該先端になじみよく付着したエマルジョンを乾燥し、櫛歯(12)の先端に合成樹脂の被膜部(11)を形成する。
【0020】
ここで、被膜部(11)の大きさは、前記合成樹脂を有機溶剤等に溶解させた液(6)等へ櫛歯(12)の先端を漬した距離によって決定されるため、被膜部(11)を大きくしたい場合は、より深く漬せばよい。複数の櫛歯(12)の露出距離が同一である場合は、櫛歯(12)の先端は全て被膜部(11)でシールされることになり、先端から頭髪用液体化粧料が流出することはなく、化粧料は櫛歯(12)の側面より頭髪表面へ塗布されることになる。また、複数の櫛歯(12)を凹凸のある櫛歯状に形成してある場合は、前記合成樹脂を有機溶剤等に溶解させた液(6)等へ櫛歯(12)の先端を漬した距離によって、櫛歯(12)の先端に被膜部(11)が形成されるものとされないものができるが、複数の櫛歯(12)の中で、少なくとも露出距離が最大となる櫛歯(12)の先端は必ず被膜部(11)によりシールされているようにする。また、櫛歯(12)のうち、先端に被膜部(11)が形成されない部分については、先端および側面の両方から化粧料を塗布することができる。
【0021】
ここで、被膜部(11)の作製は、前述したように、塗布部材(1)を軸筒(2)に保持した状態で行ってもよいし、軸筒(2)に保持する前に、塗布部材(1)単独で行ってもよい。軸筒(2)に保持した状態においては、化粧料が櫛歯(12)に浸透した状態で行ってもよい。塗布部材(1)を軸筒(2)に保持した状態で行えば、被膜部(11)の膜厚や大きさが均一に作製できる点で好ましい。
【0022】
また、図示しないが、合成樹脂や合成樹脂エマルジョンを使用しない方法としては、櫛歯(12)の先端を直接熱で溶融する方法がある。この場合は、櫛歯(12)を形成する塗布部材(1)の融点近傍まで加熱した金属等に、櫛歯(12)の先端を直接接触させて合成樹脂繊維を溶融し、被膜部(11)を形成する。このとき、塗布部材(1)の融点とは、塗布部材(1)に使用した合成樹脂繊維の融点のことをいう。
【0023】
本発明の第1の実施例は以上のような構成であり、次にその作用について詳細に説明する。塗布部材(1)は、軸筒(2)に内包された吸蔵体(3)より供給される化粧料を毛細管力により櫛歯(12)の先端方向へ導出させる。ここで、櫛歯(12)の先端は被膜部(11)でシールされているため、先端から頭髪用液体化粧料が流出することはなく、化粧料は櫛歯(12)の側面より頭髪表面へ塗布される。この際、前記櫛歯(12)は適宜の保液性を備えており、消費量に相応する潤沢な液量を持続して安定的に導出させる。先端の被膜部(11)は直接頭皮に接触するが、化粧料の流出がないため、頭皮への直接的な化粧料の付着を回避することができる。また、複数の櫛歯(12)を傾斜状に保持した場合は、櫛歯(12)の先端部分が、頭髪の表面に対して傾斜した状態になるため、化粧料の塗布作業を極めて容易に行うことができる。また、複数の櫛歯(12)が凹凸のある櫛歯状に形成してある場合、櫛歯(12)の中で、少なくとも露出距離が最大となる櫛歯(12)の先端は必ず被膜部(11)によりシールされているため、先端から化粧料が流出することがなく、頭皮を汚すことがない。また、櫛歯(12)のうち、先端に被膜部(11)が形成されない部分については、先端および側面の両方から化粧料を塗布することができるため、潤沢な液量を頭髪表面へ付着させることができる。
【0024】
次に、第2の実施例を図5、図6を参照しながら具体的に説明する。前記実施例と重複する箇所は省略する。本実施例は、前記塗布部材(1)先端に複数の櫛歯(12)を並設する際、例えば図6に示すように縦横無尽に設けることを特徴とする。ここで櫛歯(12)を縦横無尽に設けるとは、塗布部材(1)を先端側から見て、文字通り縦、横、四方八方思い通りに設けることを意味し、間隔も目的に応じて自由に採用できる。また、塗布部材(1)の横断面形状を、例えば円形や正多角形等の形状にして、複数の櫛歯(12)のそれぞれを点対称、線対称等の対称な位置に設けると、頭髪を梳く際方向性がなくなり、使用に際して自由度が増す。具体的には、円形や正多角形であれば中心点を対称点としたり、該中心点を通る直線を対称軸としたりして複数の櫛歯(12)を設けることができる。さらに、側面から見て櫛歯同士が重ならない位置に設けると、頭髪を梳く際の梳き感が増し、化粧料を効率よく塗布することができる。また複数の櫛歯(12)の先端が凹凸になるように設けることもできる。複数の櫛歯(12)先端が凹凸になるように設けたときは、最外郭に位置する櫛歯(12)の露出距離が最大となるように設けることが好ましく、その場合、露出距離が最大となる櫛歯(12)の先端は皮膜部(11)でシールされているため、先端から化粧料が流出する櫛歯(12)を中心側へ位置させており、よって頭髪を梳く際に化粧料が頭皮に付着しないようにできる。さらにこのような構成の場合は、梳き始めにも化粧料が頭皮に付着することがない。ここで最外郭に位置する櫛歯(12)とは、複数の櫛歯の集合の中で一番外側に位置する櫛歯(12)を意味する。また、前記塗布部材(1)先端に複数の櫛歯(12)を形成する方法は、第1の実施例で述べた方法を採用できるが、本実施例では形状が複雑になり易いため、特に焼結体等のポーラスタイプを材質に用い、前記金型によって形成することが好ましい。また、被膜部(11)の作製方法は、第1の実施例と同じ方法で作製できる。
【0025】
本発明第2の実施例は以上のような構成であり、次にその作用について詳細に説明する。本実施例は、複数の櫛歯(12)を縦横に位置させているため、頭髪を梳く際に梳き感が増すと共に化粧料を効率よく塗布することができる。また、塗布部材(1)の横断面形状を、例えば円形や正多角形等の形状にして、複数の櫛歯(12)のそれぞれを点対称、線対称等の対称な位置に設けるため、塗布作業の際、一々櫛歯の方向を目視確認する必要がなく作業効率が上がる。また、目の不自由な方が使用する際は、作業負荷が低減される。さらに、側面から見て櫛歯同士が重ならない位置に設けると、複数の櫛歯(12)の間を通過した頭髪は必ず櫛歯(12)に接触することになるため、確実に塗布されむらなく良好に塗布できる。また、最外郭に位置する櫛歯(12)の露出距離が最大となるように設け、その先端を皮膜部(11)でシールすることにより、不用意に化粧料が頭皮に付着することを防止できる。
【0026】
次に、第3の実施例を図7を参照しながら具体的に説明する。前記実施例と重複する箇所は省略する。本実施例は、保持用孔(21)を軸筒(2)の先端近傍側面に設ける点を除いては、前記第1の実施例および第2の実施例と同じである。前記保持用孔(21)には塗布部材(1)が挿入され、圧入保持される。吸蔵体(3)は、軸筒(2)の先端内側まで内包され、吸蔵体(3)の先端近傍側面に塗布部材(1)の端面を接触させる。これにより、頭髪用液体化粧料の適量を前記塗布部材(1)へ供給が可能となる。ここで、第1の実施例および第2の実施例で具体的に示した方法で、塗布部材(1)を保持用孔(21)に保持することによって、目的に応じた櫛歯(12)の形成を適宜採用することが可能である。
【0027】
本発明第3の実施例は以上のような構成であり、次にその作用について詳細に説明する。本実施例は、櫛歯(12)が軸筒(2)の先端近傍側面に形成されているため、軸筒(2)を手に持った自然な状態で化粧料を頭髪の表面に付着させることができ、塗布作業を極めて容易に行うことができる。
【0028】
ここで、図示しないが、第1の実施例の塗布部材(1)を、複数個、保持用孔(21)に櫛歯状に並設して保持することも可能である。保持用孔(21)の数は1個でも複数でもよく、その配置方法および間隔も自由である。保持用孔(21)1個に保持する塗布部材(1)の数は1個でも複数個でもよく、複数個用いる場合は、塗布部材(1)の側面同士を重ね合わせて保持用孔(21)に挿入し保持する。また、複数の櫛歯(12)先端が凹凸になるように、塗布部材(1)を保持することもできる。また、櫛歯(12)の先端が傾斜するように配列して保持してもよい。例えば、櫛歯(12)を一列に配置する場合は、一方の端から他端に向かって櫛歯(12)の露出距離が所定間隔ずつ短くなるように、塗布部材(1)を保持用孔(21)に挿入保持する。また、複数の櫛歯(12)を二列に配置する場合は、二列の傾斜面が同一平面になるように塗布部材(1)を配列し、保持用孔(21)に挿入保持することもできる。以上のような構成をとる場合、塗布部材(1)個々の先端に櫛歯(12)を形成するだけでなく、複数個の塗布部材(1)を櫛歯状に並設して保持しているため、頭髪表面へ化粧料を付着させる際に櫛通り感が増すと同時に、化粧料流出部分の表面積が増加し、潤沢な化粧料を頭髪表面へ付着させることができる。また、櫛歯(12)が傾斜状になるように塗布部材(1)を保持した場合は、櫛歯(12)の先端部分が、頭髪の表面に対して傾斜した状態になるため、化粧料の塗布作業を極めて容易に行うことができる。さらに、櫛歯(12)の数や、軸筒(2)先端からの露出距離の変更は、使用者の希望に合わせて容易に行える。
【0029】
尚、本発明を前記第1の実施例から第2の実施例により説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではないし、また櫛歯(12)の乾燥防止のために、適宜キャップを採用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1の実施例の一部切欠正面図
【図2】第1の実施例の他の形態の一部切欠正面図
【図3】第1の実施例に係る軸筒の平面図
【図4】被膜部の作製方法を示す参考図
【図5】第2の実施例の一部切欠正面図
【図6】第2の実施例の平面図
【図7】第3の実施例の一部切欠正面図
【符号の説明】
【0031】
1 塗布部材
11 被膜部
12 櫛歯
2 軸筒
21 保持用孔
3 吸蔵体
4 尾栓
5 保持筒
51 止片部
6 合成樹脂溶解液
a、b 露出距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布部材(1)を、頭髪用液体化粧料が貯溜された軸筒(2)の先方に設けた保持用孔(21)に保持した頭髪用塗布具において、前記塗布部材(1)先端に櫛歯状に並設した複数の櫛歯(12)を設け、該複数の櫛歯(12)は、軸筒(2)先端からの露出距離がそれぞれ、同じ及び/又は異なるようにするとともに、前記複数の櫛歯(12)のうち、少なくとも露出距離が最大となる櫛歯(12)の先端を被膜部(11)で形成したことを特徴とする頭髪用塗布具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−282931(P2007−282931A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115098(P2006−115098)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(390017891)シヤチハタ株式会社 (162)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【出願人】(000214272)長瀬産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】