説明

顆粒水和剤

【課題】水中での崩壊性及び分散性を低下させることなく、希釈液を長時間放置しても容易に分散させることのできる有害生物防除用顆粒水和剤を提供することを目的とする。
【解決手段】有害生物防除剤および固体担体に、吸水性ポリマーならびにジアルキルスルホコハク酸塩及び/またはポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有することにより、水中での崩壊性及び分散性を低下させることなく、水中分散性及び水中再分散性に優れた有害生物防除用顆粒水和剤を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中での崩壊性、分散性及び再分散性に優れた有害生物防除用顆粒水和剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、殺菌剤、除草剤等の有害生物防除剤組成物の中で水に希釈して使用するものとして乳剤、懸濁剤、水和剤、顆粒水和剤などが知られている。乳剤は、有機溶剤を配合しているため、毒性、刺激性、引火性、臭気などの問題点がある。一方、水和剤は微粉末の製剤であるため、計量が不便であり、希釈液調整時の粉立ちが問題である。懸濁剤は、水和剤の計量の不便さと粉立ちの問題を解消しているが、粘稠な液状製剤であるため容器から取り出しにくく、少量の製剤が容器に残るため容器の廃棄に困る場合がある。
【0003】
そこで、上記各製剤の欠点を解消するために水和剤を粒状化する顆粒水和剤が開発された。顆粒水和剤は、水和剤を粒状化することにより、水和剤の粉立ちと計量の困難さが改良されており、懸濁剤の粘度の高さに起因する取扱い難さの問題もない。顆粒水和剤は、通常、水に希釈して散布するため良好な崩壊性と良好な分散性を必要とされ、これまでに種々提案されている。例えば、でん粉と水溶性無機塩を配合する方法(特許文献1)、サルフェート系アニオン界面活性剤と非イオン界面活性剤とを組み合わせて配合する方法(特許文献2)、糖類、ナフタレンスルホン酸系界面活性剤及びリン酸アルカリ金属塩を配合する方法(特許文献3)、分子量5,000〜20,000のポリカルボン酸系界面活性剤を配合する方法(特許文献4)、不飽和カルボン酸の重合体,スチレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物塩またはリン酸アルカリ金属塩の1種または2種以上を配合する方法(特許文献5、特許文献6)、アニオン型界面活性剤およびベントナイトを配合する方法(特許文献7)などがある。しかし、顆粒水和剤の希釈液を静置すると直ちに担体が沈降し、ハードケーキ状に固まってしまうため、再び分散させることが困難であった。
【0004】
【特許文献1】特公昭53−12577号公報
【特許文献2】特公昭62−53482号公報
【特許文献3】特公昭63−38004号公報
【特許文献4】特公昭62−36302号公報
【特許文献5】特開昭61−236701号公報
【特許文献6】特開昭62−212303号公報
【特許文献7】特開昭62−263101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水中での崩壊性及び分散性を低下させることなく、希釈液を長時間放置しても容易に分散させることができる有害生物防除用顆粒水和剤を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究した結果、顆粒水和剤に吸水性ポリマーならびにジアルキルスルホコハク酸塩及び/またはポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有させることにより、上記問題点を解決できることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は、吸水性ポリマーならびにジアルキルスルホコハク酸塩及び/またはポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有することを特徴とする有害生物防除用顆粒水和剤に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の有害生物防除用顆粒水和剤は、希釈液を長期間放置した後でも容易に分散でき、有害生物の防除に使用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において用いる吸水性ポリマーの種類は特に限定されるものではないが、自重の約100倍以上好ましくは自重の約500倍以上の吸水性能を有するものを使用する。例えば、ポリアクリル酸塩系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、カルボキシメチルセルロース系ポリマーなどがあり、アクリル酸及び/またはアクリル酸塩の重合体が好ましい。吸水性ポリマーの含有量は1重量%以上20重量%以下が好ましく、2重量%以上10重量%以下の割合で配合することが特に好ましい。
【0009】
本発明において用いるジアルキルスルホコハク酸塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテルは、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。ジアルキルスルホコハク酸塩としてはナトリウム塩が好ましい。ジアルキルスルホコハク酸塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量は、それぞれを単独で用いる場合は1重量%以上30重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1重量%以上20重量%以下である。ジアルキルスルホコハク酸塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテルを2種以上併用する場合は、混合割合については特に限定されないが、好ましくは等量ずつ配合し、その総含有量が0.5重量%以上20重量%以下であることが好ましく、1重量%以上15重量%以下であることが特に好ましい。
【0010】
本発明において用いる有害生物防除剤の有効成分は特に限定されるものではない。例えば、殺虫剤としては、フェニトロチオン、フェンチオン、ダイアジノン、クロルピリホス、ジクロルボス、プロペタンホスなどの有機リン系化合物、カルバリル、フェノブカルブ、プロポキスルなどのカーバメイト系化合物、アレスリン、プラレトリン、フタルスリン、フェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、エンペントリン、イミプロトリン、ビフェントリン、シペルメトリン、フェンバレレート、トラロメトリン、エトフェンプロクス、シラフルオフェン及びそれらの光学異性体や幾何異性体などのピレスロイド系化合物、イミダクロプリド、アセタミプリド、ジノテフラン、クロチアニジン、チアメトキサムなどのネオニコチノイド系化合物、フィプロニルなどのフェニルピラゾール系化合物、ピリプロキシフェン、フェノキシカルブ、ジフルベンズロン、クロルフルアズロン、ビストリフルロン、シロマジンなどの昆虫成長調節剤、その他の殺虫剤などが挙げられる。殺ダニ剤としては、ケルセン、テトラジホン、アミトラズ、ヘキシチアゾクス、テブフェンピラド、ピリダベン、アミドフルメト、エトキサゾールなどが挙げられる。
【0011】
殺菌剤としては、オキシン銅、クロロタロニル、プロシミドン、マンネブ、トリクロルホスメチル、カルベンダゾール、チアベンダゾール、ヘキサコナゾール、シプロコナゾール、プロピコナゾール、メタラキシル、フルトラニル、アゾキシストロビン、オキソリニック酸、IPBC(ヨードプロパルギルブチルカーバメイト)、イソチアゾロン系化合物などが挙げられる。
【0012】
除草剤としては、ベンチオカルブ、ベンスルフロンメチル、ピラゾスルフロンエチル、プロパニル、アトラジン、オキサジアジン、グルホサート、グルホシネートなどが挙げられる。その他の有害生物防除剤としては、殺線虫剤、殺藻剤などが挙げられる。これらの有害生物防除剤は単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。また、必要に応じてピペロニルブトキサイドのような共力剤を併用しても良い。
【0013】
本発明において用いられる担体は固体担体であれば特に限定されず、例えば、鉱物質粉末として珪藻土、タルク、クレー、ベントナイト、炭酸カルシウムなど、水溶性粉末として糖類、尿素、無機塩類などが挙げられる。
【0014】
また、必要に応じてその他の補助剤として結合剤、粉砕助剤、分解防止剤、着色剤、消泡剤などを添加してもよい。
【実施例】
【0015】
次に本発明の実施例、比較例および実験例をあげて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下に示した配合比率はすべて重量%である。
【0016】
(実施例1)
乳鉢にラジオライトF(珪藻土、昭和化学工業株式会社製)5gを量り取り、そこにペルメトリン2.1g、サニマールSFT(ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、日本乳化剤株式会社製)0.7g、ニューカルゲンCP−120(ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル、竹本油脂株式会社製)0.4g、ニューカルゲンEX−70(ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、竹本油脂株式会社製)0.4gを加えて乳棒を用いてよく混練した。この混練したものにアクアキープ(アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物、住友精化株式会社製)0.6g、ポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製)0.4g、ケルザンS(キサンタンガム、三晶株式会社製)0.4gを加えて乳棒を用いて再びよく混練した。この混練物にイオン交換水4g加えて乳棒を用いてよく混練した。出来た混練物を約80メッシュの網で造粒した。これを50℃で乾燥して実施例1の顆粒水和剤を得た。
【0017】
(実施例2)
乳鉢にラジオライトF(前述)4.9gを量り取り、そこにジノテフラン2g、ニューカルゲンCP−120(前述)0.7g、ニューカルゲンEX−70(前述)0.7gを加えて乳棒を用いてよく混練した。この混練したものにアクアキープ(前述)0.7g、ポリエチレングリコール0.6g、ケルザンS(前述)0.4gを加えて乳棒を用いて再びよく混練した。この混練物にイオン交換水4gを加えて乳棒を用いてよく混練した。出来た混練物を80メッシュの網で造粒した。これを50℃で乾燥して実施例2の顆粒水和剤を得た。
【0018】
(比較例1)
乳鉢にラジオライトF(前述)5.6gを量り取り、そこにペルメトリン2.1g、サニマールSFT(前述)0.7g、ニューカルゲンCP−120(前述)0.4g、ニューカルゲンEX−70(前述)0.4gを加えて乳棒を用いてよく混練した。この混練したものにポリエチレングリコール0.4g、ケルザンS(前述)0.4gを加えて乳棒を用いて再びよく混練した。この混練物にイオン交換水4gを加えて乳棒を用いてよく混練した。出来た混練物を80メッシュの網で造粒した。これを50℃で乾燥して比較例1の顆粒水和剤を得た。
【0019】
(比較例2)
乳鉢にラジオライトF(前述)5.8gを量り取り、そこにペルメトリン2.1g、サニマールSFT(前述)0.7gを加えて乳棒を用いてよく混練した。この混練したものにアクアキープ(前述)0.6g、ポリエチレングリコール0.4g、ケルザンS(前述)0.4gを加えて乳棒を用いて再びよく混練した。この混練物にイオン交換水4gを加えて乳棒を用いてよく混練した。出来た混練物を80メッシュの網で造粒した。これを50℃で乾燥して比較例2の顆粒水和剤を得た。
【0020】
(比較例3)
乳鉢にラジオライトF(前述)5.6gを量り取り、そこにジノテフラン2g、ニューカルゲンCP−120(前述)0.7g、ニューカルゲンEX−70(前述)0.7gを加えて乳棒を用いてよく混練した。この混練したものにポリエチレングリコール0.6g、ケルザンS(前述)0.4gを加えて乳棒を用いて再びよく混練した。この混練物にイオン交換水4gを加えて乳棒を用いてよく混練した。出来た混練物を80メッシュの網で造粒した。これを50℃で乾燥して比較例3の顆粒水和剤を得た。
【0021】
(実験例1) 水中分散性試験
200ml容メスシリンダーに200mlの水を入れ、そこに実施例1〜2、比較例1〜3で得られた顆粒水和剤を2g添加した。添加直後、メスシリンダーの口に栓をしてメスシリンダーの口を上下に転倒させて、実施例1〜2、比較例1〜3で得られた顆粒水和剤が完全に崩壊し、均一に分散するまでの転倒回数を水中崩壊性とした。
【0022】
(実験例2) 水中再分散性試験
200ml容メスシリンダーに200mlの水を入れ、そこに実施例1〜2、比較例1〜3で得られた顆粒水和剤を2g添加した。メスシリンダーの口に栓をしてメスシリンダーの口を上下に転倒させて、実施例1〜2、比較例1〜3で得られた顆粒水和剤が完全に崩壊し、均一に分散するまで転倒させた。完全に崩壊し、均一に分散したことを確認した後、栓をしたままメスシリンダーを平らな場所で10日間静置した。10日後、静置していたメスシリンダーの口を上下に転倒させて実施例1〜2、比較例1〜3で得られた顆粒水和剤が再び均一に分散するまでの転倒回数を水中再分散性とした。
【0023】
【表1】

表1より、本発明の顆粒水和剤は、水中分散性及び水中再分散性に優れていることが確認された。







【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性ポリマーならびにジアルキルスルホコハク酸塩及び/またはポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有することを特徴とする有害生物防除用顆粒水和剤。
【請求項2】
前記吸水性ポリマーがアクリル酸及び/またはアクリル酸塩の重合体からなることを特徴とする有害生物防除用顆粒水和剤。
【請求項3】
前記吸水性ポリマーを1重量%以上20重量%以下の割合で含有することを特徴とする請求項1または2記載の有害生物防除用顆粒水和剤。































【公開番号】特開2008−179542(P2008−179542A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12234(P2007−12234)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000250018)住化エンビロサイエンス株式会社 (69)
【Fターム(参考)】