説明

顆粒状処理剤

【課題】本発明は、糞尿等を処理する処理剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、消石灰または石灰石と、バインダと、を含む結着体顆粒物と、吸水性ポリマーと、を含む、顆粒状処理剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理剤に関する。より詳しくは、糞尿などの処理に用いられる処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、トイレは、糞尿を水とともに下水道に流す水洗式のものと、タンクに溜めておく汲み取り式のものに大別することができる。水洗式トイレの場合、糞尿は水とともに下水道に流され、下水処理場で処理される。一方、汲み取り式トイレの場合、バキュームカー等によりタンクから糞尿を汲み取り、下水処理場に運ばれて処理される。
【0003】
下水処理場においては、糞尿を含む汚水は浄化槽に貯溜され、ここで糞尿中の有機物は活性汚泥等の微生物の作用により分解除去され、ついで、水分は何段階かの処理工程を経て浄化され、河川に放流される。
【0004】
しかしながら、地震等の災害による長期の停電および断水時等においては、トイレが使用できなくなり、各家庭では糞尿が大量に溜まってしまう。大量に溜まった糞尿からは悪臭が発散し続け、そのままにしておくと、その臭気により生活環境が著しく悪化してしまう。そこで、一般には糞尿をプラスチック製の袋に入れ、密封状態でとりあえず保管しておく方法等が採られているが、前記プラスチック製の袋は破損し易いため、保管中に破損して糞尿が漏れ出し、周囲に悪臭を発散させてしまう等の問題がある。また、前記プラスチック製の袋に入れられた糞尿は、時間とともに腐敗して臭気ガスが溜まり、その圧力で、前記プラスチック製の袋から臭気ガスが漏れ出てしまう等の問題もある。
【0005】
また、工事現場、イベント会場、キャンプ場等においては、簡易トイレが使用されているが、従来の簡易トイレにおいては、設置しているうちに大量の糞尿が溜まり、周囲に悪臭を発散する等の問題がある。
【0006】
このような状況下、特許文献1には、中和率が50モル%以上であるアクリル酸単量体水溶液を重合反応させ、親水性の多価エポキシ化合物と重合開始剤を加えたのち光を照射して再重合反応をさせてゲル状固形体とせしめ、さらにこのゲル状固形体を熱風で乾燥、粉砕、選別し、表面架橋剤を添加し表面処理した、し尿処理用の高吸水性ポリマーが開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の高吸水性ポリマーを用いて糞尿を処理した場合であっても、処理後数日で被処理物が腐敗し、悪臭やガスが発生するという問題を有している。
【0007】
そこで、被処理物の悪臭やガスの発生を抑えるための施策として、特許文献2には、消石灰または石灰石を含む糞尿処理剤が開示されている。当該処理剤を用いて糞尿を処理した場合は、該処理剤が悪臭やガスの発生を抑制し、処理後、数日経過しても、臭いが発生しにくいことがわかっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−095016号公報
【特許文献2】国際公開第2010/070945号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、消石灰または石灰石が微細な粒子であるため、特許文献2に記載の処理剤では、消石灰または石灰石が周囲に飛散するという粉塵問題を有している。
【0010】
また、従来においては認識されていない、使用上などの課題が存在していることについて、本発明者は、認識した。
【0011】
よって、本発明においては、消石灰または石灰石の粉塵問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、以下の発明を提供することによって解決される。
【0013】
(1)消石灰または石灰石と、バインダと、を含む結着体顆粒物と、吸水性ポリマーと、を含む、顆粒状処理剤。
【0014】
(2)前記バインダの含有量が、総質量の5質量%未満である、(1)に記載の顆粒状処理剤。
【0015】
(3)酸性固形物質をさらに含む、(1)または(2)に記載の顆粒状処理剤の製造方法。
【0016】
(4)前記結着体顆粒物の平均直径が3mm未満である、(1)〜(3)のいずれか1つに記載の顆粒状処理剤。
【0017】
(5)ゼオライト、活性炭、重曹および潤滑剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の顆粒状処理剤。
【0018】
(6)消石灰または石灰石と、バインダと、を混合・粉砕して結着体顆粒物を得る工程と、前記結着体顆粒物と、吸水性ポリマーとを混合して顆粒状処理剤を得る工程と、を含む、(1)〜(5)のいずれか1つに記載の顆粒状処理剤の製造方法。
【0019】
(7)糞尿の処理に用いられる、(1)〜(5)のいずれか1つに記載の顆粒状処理剤または(6)に記載の方法で得られた顆粒状処理剤。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記の発明によって、以下の効果を有する。
【0021】
(1)本発明の第1は、消石灰または石灰石と、バインダと、を含む結着体顆粒物と、吸水性ポリマーと、を含む、顆粒状処理剤(以下、単に「処理剤」とも称する場合がある。)である。かかる構成によって、使用時に撹拌したとしても、消石灰または石灰石が固化されているため飛散することがなく、安全である。さらに、本発明の顆粒状処理剤は、糞尿をするための容器に該顆粒状処理剤を予め配置していてもよいが、糞尿の入った容器に後で添加してもよい。上述のように、本発明の顆粒状処理剤は飛散しないため、後添加しても、取り扱い性がよい。また、特に、災害時での使用において、人体に影響が懸念される消石灰または石灰石の微細な粉塵が発生せず、取り扱い性の観点で非常に優れ、健康被害を有意に抑制する。具体的には、飛散しやすい処理剤は、皮膚等に付着し易い。その場合、避難所等で長引く生活で免疫力等が低下している中では、皮膚等に付着した処理剤のなんらかの成分により皮膚炎等を引き起こす可能性が高くなる。しかし、本発明の処理剤は、人体に影響が懸念される消石灰または石灰石が固形化されているので、消石灰または石灰石の粉塵が舞うことを有意に抑制することができるので、そのようなことを抑制し易くなる。また、密閉した車内での使用(例えば、渋滞時)を考えても、消石灰または石灰石の粉塵の飛散を抑制する固形化された処理剤は、非常に好適なものであるといえる。さらに、本発明の顆粒状処理剤は、簡便にかつ効率的に大量の糞尿を処理することが可能である。また、処理後も被処理物の腐敗がほとんど起こらず、悪臭やガスの発生を抑制することができる。つまり、消毒剤、消臭剤、殺菌剤または滅菌剤の用途にも用いることができ、感染症の予防にも繋がる。
【0022】
(2)また、本発明の第1の顆粒状処理剤において、顆粒状処理剤中のバインダの含有量は5重量%未満である。本発明の顆粒状処理剤によれば、飛散しやすい消石灰または石灰石を、バインダが結着して固化するため、消石灰または石灰石を結着しうるバインダ量を必要とする。たとえば、消石灰または石灰石以外の含有物を含む場合と比べて、少ない量のバインダで、消石灰または石灰石とバインダとは十分結着する。したがって、従来の固定化された処理剤と比べて、バインダ量を減らすことができるため、相対的に高吸水性ポリマーや消石灰または石灰石の含有量を増加することができ、処理剤としての吸水量や悪臭発生の抑制効果が向上する。
【0023】
(3)また、本発明の第1の顆粒状処理剤は、酸性固形物質をさらに含むことによって、被処理物(たとえば、大便、小便)から発生しうるアンモニアを中和させることができる。よって、悪臭をさらに抑制することができる。
【0024】
(4)また、本発明の第1の顆粒状処理剤において、結着体顆粒物の平均直径が3mm未満であることによって、取り扱い性が向上しながら、被処理物との接触面積が増大し、被処理物との反応効率を向上させることができる。
【0025】
(5)また、本発明の第1の顆粒状処理剤が、ゼオライト、活性炭、重曹および潤滑剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含むことによって、さらに上記の効果が向上する。
【0026】
(6)本発明の第2は、消石灰または石灰石と、バインダと、を混合・粉砕して結着体顆粒物を得る工程と、前記結着体顆粒物と、吸水性ポリマーとを混合して顆粒状処理剤を得る工程と、を含む、顆粒状処理剤の製造方法である。かかる製造方法により、消石灰または石灰石などの微細な粒子が周囲に飛散することなく、簡便にかつ効率的に、処理剤を製造することが可能である。すなわち、本発明の製造方法によれば、微細な粉塵が発生せず、取り扱い性の観点で非常に優れ、健康被害を有意に抑制することができる。たとえば、原料が微細な粒子の場合は、微細な粒子が飛散しやすいため皮膚等に付着しやすく、皮膚炎等を引き起こす可能性がある。しかしながら、本発明の製造方法によれば、消石灰または石灰石と、バインダと、を混合して結着体を得た後、該結着体を粉砕して、結着体顆粒物を得ているため、消石灰または石灰石の粉塵が舞うことを有意に抑制することができる。そのため、そのような健康被害を抑制し易くなる。また、得られた顆粒状処理剤も、消石灰または石灰石を固化しているため、消石灰または石灰石の粉塵が飛散しにくい。
【0027】
(7)本発明の第1の顆粒状処理剤および本発明の第2の製造方法によって得られた顆粒状処理剤は、消石灰または石灰石と、バインダと、を含む結着体顆粒物と、吸水性ポリマーと、を含むので、糞尿の処理に特に適している。すなわち、本発明の顆粒状処理剤を用いて、大量の糞尿を処理することができ、処理後も被処理物の腐敗がほとんど起こらず、悪臭やガスの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0029】
(1)本発明の第1
<顆粒状処理剤>
本発明の第1は、消石灰または石灰石と、バインダと、を含む結着体顆粒物と、吸水性ポリマーと、を含む、顆粒状処理剤である。上記のように、本発明の処理剤は、消石灰または石灰石がバインダにより結着されて固形化されてなるため、取り扱い性に優れる。なお、本発明の第1の顆粒状処理剤を構成する成分のそれぞれの形態としては、消石灰または石灰石はバインダによって相互に結着した状態で存在するが、吸水性ポリマーは、消石灰または石灰石と、バインダと、単に混合された状態で、実質的にどちらとも結着していない状態で存在する。なお、本明細書において、「結着」とは、消石灰または石灰石と、バインダと、が一体化され、それぞれの成分に分離できない状態を意味する。一方、「混合」とは、単に2成分(例えば、結着体顆粒物及び吸収性ポリマー)が相互に分離可能な状態で共存している状態を意味する。
【0030】
本発明の顆粒状処理剤の形状としては、消石灰または石灰石と、バインダと、を含む結着体顆粒物と、吸水性ポリマーと、を含み、消石灰または石灰石とバインダとが固形化されていれば、特に制限されない。たとえば、球状、円柱状、中高状の円柱状、直方体状など、どのような形状であってもよい。ただし、処理剤の保存性の観点から、球状、円柱状、中高状の円柱状などが好ましく、作製上の観点から、円柱状、中高状の円柱状が好ましい。
【0031】
顆粒状処理剤に含まれる結着体顆粒物と、吸水性ポリマーの平均粒径は、後述するが、どちらも、平均直径は、3mm未満であることが好ましい。このような範囲であることによって、上記した粉塵に起因する問題を有意に解決することができ、取り扱い性を向上させながら、被処理物との接触面積を増大させ、被処理物との反応効率を向上させ、上記して効果を奏することが容易となる。また、本発明の顆粒状処理剤に含まれうるその他の添加されるものも、3mm未満であるのが好ましい。
【0032】
本発明の顆粒状処理剤において、バインダの量は、処理剤の総質量の5質量%未満であるのが好ましい。本発明の顆粒状処理剤は、消石灰または石灰石と、バインダと、吸水性ポリマーと、を含むが、バインダが消石灰または石灰石のみを結着させるため、吸水性ポリマーなどをバインダに結着させる場合と比べて、バインダの量を有意に減らすことができる。したがって、バインダの量を減らした分、消石灰または石灰石、吸水性ポリマー、酸性固形物質などのその他の成分を増やすことができ、添加した成分により、所望の効果を付すことができる。
【0033】
また、本発明の顆粒状処理剤における消石灰または石灰石の含量としては、顆粒状処理剤の総質量に対して、好ましくは1〜98質量%であり、より好ましくは5〜95質量%であり、さらに好ましくは10〜90質量%であり、特に好ましくは15〜80質量%程度となるように添加されるのが好ましい。かかる範囲であると、微生物の発酵、分解活動を止める効果が特に顕著である。また、本発明の顆粒状処理剤におけるバインダの含量としては、顆粒状処理剤の総質量に対して、好ましくは5質量%未満であり、より好ましくは0.01〜4.9質量%であり、さらに好ましくは0.1〜4.5質量%程度となるように添加されるのが好ましい。かかる範囲であると、粉状消石灰、吸水性ポリマーを顆粒状にし、使用時の粉塵飛散を防ぐ効果が特に顕著である。
【0034】
また、本発明の顆粒状処理剤において、吸水性ポリマーは、処理剤の総質量の1〜98質量%であるのが好ましく、5〜95質量%であるのがより好ましく、10〜90質量%であるのがさらに好ましく、15〜80質量%であるのが特に好ましい。かかる範囲であると、糞尿の水分を効率よく吸収することができ、さらには簡易式便器に使用した場合、ゼリー状に固化することができ、ビニール袋からの漏出を防ぎ、汚物の拡散を防止する効果が特に顕著である。
【0035】
また、本発明の顆粒状処理剤は消石灰または石灰石とバインダとを含むが、顆粒状処理剤における結着体顆粒物の量としては、特に制限されないが、たとえば、結着体顆粒物の量は、処理剤の総質量の1〜90質量%であるのが好ましく、3〜80質量%であるのがより好ましく、5〜70質量%であるのがさらに好ましく、7〜60質量%であるのが特に好ましく、10〜50質量%であるのがもっとも好ましい。
【0036】
以下、構成要件について、詳説する。
【0037】
[結着体顆粒物]
本発明の顆粒状処理剤に含まれる結着体顆粒物は、消石灰または石灰石と、バインダと、を含む。結着体顆粒物は、消石灰または石灰石と、バインダと、が結着して固化された形態である。また、結着体顆粒物は、その他の添加剤を含んでいてもよい。
【0038】
結着体顆粒物の平均直径は、3mm未満であることが好ましい。このような範囲であることによって、上記した粉塵に起因する問題を有意に解決することができ、取り扱い性を向上させながら、被処理物との接触面積を増大させ、被処理物との反応効率を向上させ、上記して効果を奏することが容易となる。ここで、本明細書中、平均直径とは、50粒の粒子を任意に選択して、1粒ごと一番長い粒径を測定し、それらを相加平均した平均値を意味する。以下、本明細書中に記載の「平均粒径」は、同様の定義である。なお、所望の平均粒径とするためには、適宜、ふるいなどにかければよい。結着体顆粒物の平均直径は、より好ましくは50μm〜3mm未満であり、さらに好ましくは50μm〜2mm、特に好ましくは60μm〜1mm、もっとも好ましくは70μm〜500μmである。また、結着体顆粒物の平均厚さは、3mm未満であることが好ましく、より好ましくは50μm〜3mm未満であり、さらに好ましくは50μm〜2mm、特に好ましくは60μm〜1mm、もっとも好ましくは70μm〜500μmである。かかる範囲であることによって、上記した効果を奏することが容易となる。結着体顆粒物の平均直径が3mm未満、平均厚さが3mm未満であると、被処理物と接触した際に、十分に反応が早いため好ましく、また、かような処理剤を製造する観点でも容易であり、特に好ましい。なお、結着体顆粒物が、円柱状、中高状の円柱状、直方体状の形態であれば、長軸が平均直径となる。他方、短軸が、平均厚さとなる。また、結着体顆粒物の重量にも特に制限はないが、運搬性や取り扱い性を鑑みると、1粒当たりの重量は、好ましくは0.05〜30g程度であり、より好ましくは、0.2〜10g程度、さらに好ましくは0.3〜2g程度である。無論、この範囲外であってもよい。
【0039】
結着体顆粒物に含まれる消石灰または石灰石とバインダとは、質量比が、80:20〜99.9:0.1であるのが好ましく、85:15〜99.8:0.2であるのがより好ましく、90:10〜99:1であるのがさらに好ましく、92:8〜98.5:1.5であるのが特に好ましい。このような量であれば、バインダが消石灰または石灰石を十分に結着することができ、処理剤の製造時および使用時の消石灰または石灰石由来の粉塵の飛散を抑制することができる。
【0040】
以下、結着体顆粒物の成分について述べる。
【0041】
(消石灰)
本発明の顆粒状処理剤に含まれうる消石灰(Ca(OH))は、強アルカリであるため、糞尿処理の際(特に大便)の殺菌効果が大きい。また、口蹄疫や鳥インフルエンザなどに感染した動物や家畜あるいはその死骸、その動物や家畜が食べていた餌(植物など)、その動物や家畜が存在していた、または、存在している家畜舎、あるいは、その家畜舎付近の土壌や道路などを、殺菌、滅菌、消毒、消臭することなどに効果がある。これにより、有機物の発酵・分解が止まる。すると、殺菌、滅菌、消毒される。そして、臭気を低減させる効果を得ることができる。また、消石灰は、主に硫化物を吸着するため、この点からも消石灰を使用することによる臭気の低減効果が大きいと言える。
【0042】
消石灰の形状は、特に制限されず、たとえば、粉粒状、ペレット状等が例示できるが、大便に対して消石灰を効果的に分散させるという観点から、粉粒状であることが好ましい。また、その平均粒径の下限にも特に制限されないが、たとえば、10μm以上、より好ましくは50μm以上である、上限にも特に制限されないが、たとえば、1000μm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。つまり、10〜1000μmが好ましく、50〜300μmがより好ましく、100〜150μmがさらに好ましい。
【0043】
かかる範囲であると、製造が容易となり生産コストが低くなり、得られる処理剤と被処理物との接触面積が増加し、反応効率が向上し、処理時に顆粒状物が生じず、未反応物が残存しなくなる。必要に応じて、前記消石灰は、平均粒径が異なる2種以上の消石灰が組み合わせて使用されてもよい。
【0044】
本発明で用いられる消石灰は、疎水性の被覆剤で表面処理したものであってもよい。また、本発明で用いられる消石灰は、合成してもよいし市販品を用いてもよい。
【0045】
(石灰石)
本発明の顆粒状処理剤に含まれうる、石灰石(炭酸カルシウム)は、組成式CaCOで表されるカルシウムの炭酸塩である。石灰石は、アルカリ性であるため、消石灰と同様の効果がある。
【0046】
石灰石の形状は、特に制限されず、たとえば、粉粒状、ペレット状等が例示できるが、大便に対して効果的に分散させるという観点から、粉粒状であることが好ましい。また、その平均粒径の下限にも特に制限されないが、たとえば、10μm以上、より好ましくは50μm以上である、上限にも特に制限されないが、たとえば、1000μm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。つまり、10〜1000μmが好ましく、50〜300μmがより好ましく、100〜150μmがさらに好ましい。かかる範囲であると、製造が容易となり生産コストを低くすることができ、得られる処理剤と被処理物との接触面積が増加し、反応効率が向上する場合がある他、処理時に顆粒状物が生じず、未反応物が残存しない。必要に応じて、前記石灰石は、平均粒径が異なる2種以上の石灰石が組み合わせて使用されてもよい。
【0047】
石灰石を準備する方法としては、市販品を購入する方法が好ましく、たとえば、宇部マテリアルズ社のタンカル、吉澤石灰工業株式会社の工業用タンカルなどが好ましい。
【0048】
(結合剤(バインダ))
本発明の顆粒状処理剤において、結着体顆粒物に含まれるバインダは、下記で説明する有機系バインダであっても、重曹などの無機系バインダであってもよい。しかし、結着性を鑑みると、好ましくは、結着体顆粒物に含まれるバインダは、セルロース系バインダ、高分子系バインダおよびでんぷん系バインダからなる群から選択される少なくとも1種の有機系バインダであることが好ましく、特には、前記バインダが、セルロース系バインダであると好ましい。
【0049】
本発明の結着体顆粒物において、消石灰または石灰石がバインダにより固形化されている点に特徴を有する。そして、結合剤(バインダ)が含まれるという形態によって、結着体顆粒物は、十分な強度を有し、そのため、結着体顆粒物およびこれを用いてなる顆粒状処理剤は、運搬性や取り扱い性が優れる。
【0050】
本発明の顆粒状処理剤に含まれるバインダは、従来公知の方法で合成しても、市販品を購入することによって準備してもよい。市販品としては、旭化成ケミカルズ社製のセロッサK2、PH−102、TG−101、ST−02、TG−101や、樋口商会社製PVPK−15、PVPK−30、PVPK−90(ポリビニルピロリドン)、日本製紙ケミカル社製のKCフロック(W−50S、W−50、W−100/100G、W−200/200G、W−250、W−300G、W−400G)などが好適に使用されるが、中でも、旭化成ケミカルズ社製のセロッサK2、セルロース系の日本製紙ケミカル社製のKCフロックは、形状が繊維状であるため、結合力・崩壊性の観点で、好ましい。また、日本製紙ケミカル社製のKCフロックと旭化成ケミカルズ社製のセロッサK2が、結着性の観点で非常に優れていることを、本発明者は見出している。特に、旭化成ケミカルズ社製のセロッサK2は、形状が粒状であり粒子が細かいので、結合力も高く、打錠機のホッパーからのフィードがスムーズである観点で非常に優れていることを、本発明者は見出している。
【0051】
結着体顆粒物に含まれるバインダの平均粒径にも特に制限はないが、好ましくは1μm〜100μmであり、より好ましくは5μm〜70μmであり、さらに好ましくは20μm〜60μmである。
【0052】
(添加剤)
結着体顆粒物は、消石灰または石灰石とバインダ以外に、他の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、後述する酸性固形物質、ゼオライト、活性炭、重曹、潤滑剤などが挙げられる。
【0053】
[吸水性ポリマー(吸水剤、高分子吸水剤とも称する場合がある。)]
本発明の顆粒状処理剤に含まれる吸水性ポリマー(吸水剤)は、消石灰または石灰石を補助する役割をする。つまり、たとえば、処理剤として、消石灰または石灰石だけを用いた場合、被処理物(たとえば糞尿中)の水分を吸収しきれず泥状となる場合がある。消石灰が湿ると、消石灰自身が独特の悪臭を放つ場合がある。また、糞尿が泥状のままであれば、糞尿が空気に触れ、糞尿の発酵・分解が進む虞がある。
【0054】
本発明の顆粒状処理剤には、吸水性ポリマー(高分子吸水剤)が含まれるため、被処理物中の水分を吸収し固化することができる。被処理物に対して、消石灰または石灰石および吸水性ポリマーを加えると、被処理物が固化し、固化した被処理物の周囲を消石灰または石灰石が覆う形となり、微生物の発酵、分解活動を止めることができ、ひいては、上述した効果を有することができる。また、消石灰または石灰石の添加量を低減させることができ、消石灰または石灰石自身が発する悪臭をより低減させることができる。さらには、吸水性ポリマーが、水分に接触した際に膨潤するため、固化されている処理剤の崩壊の基点となる役目をする。
【0055】
本発明で用いられる吸水性ポリマーは、本発明の効果を奏するために悪影響を及ぼさない限り、特に制限はなく、公知の物質を使用することができる。その具体的な例としては、たとえば、たとえばデンプン−アクリロニトリルグラフト重合体加水分解物、デンプン−アクリル酸グラフト重合体などのデンプン系吸水性ポリマー、セルロース−アクリロニトリルグラフト重合体、セルロース−スチレンスルホン酸グラフト共重合体などのセルロース系吸水性ポリマー、多糖類系吸水性ポリマー、コラーゲン等のたんぱく質系吸水性ポリマー、ポリビニルアルコール架橋重合体などのポリビニルアルコール系吸水性ポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物、アクリル酸ナトリウム−ビニルアルコール共重合体などのアクリル系吸水性ポリマー、無水マレイン酸系吸水性ポリマー、ビニルピロリドン系吸水性ポリマー、ポリエチレングリコール・ジアクリレート架橋重合体などのポリエーテル系吸水性ポリマー等などが挙げられる。これら吸水性ポリマーは、単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これら吸水性ポリマーは、合成してもよいし市販品を用いてもよい。市販品の例としては、たとえば、アクアキープ(登録商標)SA(住友精化株式会社製)、アクアリック(登録商標)CA(株式会社日本触媒製)、サンフレッシュ、アクアパール(サンダイヤポリマー株式会社製)、ハイモサブHS−960(ハイモ株式会社製)などが挙げられる。これら吸水性ポリマーの中でも、ハイモサブHS−960(ハイモ株式会社製)がより好ましい(実施例:ハイモサブHS−960)。
【0056】
本発明の顆粒状処理剤に含まれる吸水性ポリマーの平均粒径にも特に制限はないが、好ましくは50〜1000μmであり、より好ましくは80〜850μmであり、さらに好ましくは100〜600μmである。なお、これら吸水性ポリマーは、人体に甚大な影響を与えるものではないため、微細な粒子であっても構わない。
【0057】
アクアキープ(登録商標)SA(住友精化株式会社製)の中でも、好ましくは、SA−50IIまたはSA60−Sであり、吸水力の観点では、SA60−Sが好ましい。また、コストの観点では、SA−50IIが好ましい。前記吸水性ポリマーの形状も特に制限されず、たとえば、粒状、粉末状、顆粒状、ペレット状等が例示できる。
【0058】
吸水性ポリマーの含有量は、吸水性ポリマーの種類や形状、および被処理物に含まれる水分量などにより適宜調整可能であるが、顆粒状処理剤の総質量に対して、1〜90質量%程度、5〜50質量%程度、あるいは、10〜48質量%程度であることが好ましい。かかる範囲であれば、吸水性ポリマーの効果を有意に得られ、未反応の吸水性ポリマーが残留せず、コスト的に有利である。
【0059】
[酸性固形物質]
本発明の顆粒状処理剤の特に好ましい形態は、酸性固形物質を含む。本発明の顆粒状処理剤が、酸性固形物質を含むことによって、被処理物(たとえば、大便、小便)から発生しうるアンモニアを中和させることができる。よって、悪臭をさらに抑制することができる。本発明の顆粒状処理剤に酸性固形物質を入れる場合は、結着体顆粒物として、消石灰または石灰石と、バインダと、相互に結着した状態で存在してもよいし、単独で存在していてもよい。
【0060】
本発明で用いることができる酸性固形物質としては、特に制限されないが、温度−10〜60℃、好ましくは0〜50℃であり、圧力0.5〜1.2atm、好ましくは1atmの状態で、固体の形態で存在できる酸性物質であることが好ましい。酸性固形物質としては、無機酸またはその塩、有機酸またはその塩など、従来公知の如何なるものも使用することができる。酸性物質として液状の酸を採用する場合は、これをタルク、セルロース等に含浸させて用いることもできるが、固形酸(固形物質)を用いることが好ましい。
【0061】
かかる酸性固形物質のpHにも、酸性を示すものであれば特に制限はないが、人が肌にふれたときの腐食性を防止する観点から、1.5〜7未満が好ましく、2〜6がより好ましく、3.5〜5.5がさらに好ましい。
【0062】
なお、本明細書中に記載のpHは、(株)佐藤商事社製のpHレコーダーSDカード記録系型番pH−SDを用いて測定する値を意味するとする。かような範囲内のpHを有していれば、被処理物(たとえば、糞尿)に含まれる塩基性成分(たとえば、アンモニア)などと中和し、悪臭を効率的に抑制することができる。
【0063】
本発明で用いることができる酸性固形物質は、より具体的には、酢酸、クエン酸(食品添加物 pH:2.36)、イソクエン酸、リンゴ酸(食品添加物 pH:2.45)、酒石酸(食品添加物 pH:2.28)、乳酸、グルコン酸、コハク酸、グリコール酸、シュウ酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ニトリロ三酢酸、炭酸、サリチル酸、フマル酸、アジピン酸、フタル酸、テレフタル酸、イノシン酸、グアニル酸、グルタミン酸、エリソルビン酸、ソルビン酸、ポリグルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、フィチン酸、リン酸、ホスホン酸およびホウ酸からなる群から選択される、未中和の酸性成分(第1成分)(塩の形態ではない酸性成分)などであってもよい。
【0064】
また、クエン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、フマル酸一ナトリウム、5’−イノシン酸ナトリウム、5’−グアニル酸ナトリウム、5’−グアニル酸二ナトリウム、グルタミン酸ソーダ、エリソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム(食品添加物(pH:4.3〜4.9)、工業用(pH:4.1〜4.9)(1%溶液)、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム(食品添加物(pH:4.4〜4.9)、工業用(pH:4.4〜4.9)(1%溶液)、ピロリン酸二水素二ナトリウム(食品添加物(pH:3.8〜4.5)、工業用(pH:3.8〜4.5)(1%溶液))、酸性トリポリリン酸アルミニウム工業用(pH:2.4〜2.8)(1%溶液))、酸性ヘキサメタリン酸ナトリウム(酸性ピロリン酸ナトリウム(食品添加物(pH:3.8〜4.5)(1%溶液))、ウルトラリン酸ナトリウム(食品添加物(pH:1.7〜1.9)、工業用(pH:1.7〜1.9)(1%溶液)、フマル酸一ナトリウム(食品添加物(pH:3.0〜4.0)(1%溶液))、硫酸バンド工業用(pH:3.0以上)(1%溶液))、スルファミン酸、ミョウバン工業用(pH:約3.5)(12水塩)および腐植酸(フミン酸)を含む草炭(泥炭)(pH:3.0〜6.8)からなる群から選択される、中和の酸性成分(水に溶かすと酸性を示す塩)(第2成分)などであってもよい。
【0065】
中でも、リン酸二水素ナトリウム(pH:4.3〜4.9)、リン酸二水素カリウム(pH:4.4〜4.9)、ピロリン酸二水素二ナトリウム(pH:3.8〜4.5)、酸性トリポリリン酸アルミニウム(pH:2.4〜2.8)、フマル酸一ナトリウム(pH:3.0〜4.0)、ウルトラリン酸ナトリウム(pH:1.7〜1.9)、酸性ヘキサメタリン酸ナトリウム(pH:3.8〜4.5)または腐植酸(フミン酸)を含む草炭(泥炭)(pH:3.0〜6.8)などが、吸水ポリマーの吸水力を減少させないとの観点から特に好ましい。
【0066】
特にリン酸二水素ナトリウムのような酸性固形成分を含ませると以下のような効果がある。すなわち、処理剤中で、消石灰の割合が増えると、アルカリ濃度が高くなり、アンモニアが発生しやすい環境となる場合もある。そのような場合、アンモニア由来の悪臭が発生する場合がある。よってアンモニアを中和し、かつ、消石灰の殺菌能力を保つための、リン酸二水素ナトリウムのような酸性固形成分を含ませることが特に好ましい。また、リン酸二水素ナトリウムのような第2成分は、吸水ポリマーの吸水力をあまり劣化させないという観点からしても好ましい。
【0067】
なお、酸性固形物質が第1成分のみからなる場合、たとえば、吸水性ポリマーとしてポリアクリル酸塩を使用した場合、ポリアクリル酸塩の「塩部分」を消費してしまい、吸水特性の観点から好ましくない場合がある。しかしながら、被処理物(たとえば、尿)のアンモニアを中和する効果は高いという点では好ましい。一方で、酸性固形物質が第2成分のみからなる場合、吸水特性の観点から好ましい。無論、被処理物(たとえば、尿)のアンモニアを中和する効果も有意に高い。
【0068】
上記で列挙した具体的な酸性固形物質は、従来公知の方法を適宜参照し、あるいは、組み合わせて、合成してもよいし、市販品を購入して準備してもよい。市販品としては、大明化学工業(株)の硫酸バンド、ミョウバン、磐田化学工業(株)のクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、イタコン酸、スピクリスポール酸、築野食品工業(株)のフィチン酸、(株)日本触媒のコハク酸、フマル酸、無水マレイン酸、日本合成化学工業(株)の無水酢酸、扶桑化学工業(株)のグルコン酸、スルファミン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、フマル酸、フィチン酸、イタコン酸、フマル酸一ナトリウム、(株)伏見製薬所の安息香酸、安息香酸ナトリウム、高杉製薬株式会社のシュウ酸、硝酸、丸石製薬のサリチル酸、キリン協和フーズ(株)のイノシン酸、グルタミン酸、グルタミン酸、ダイセル化学工業(株)のソルビン酸、日本化学工業(株)のホスホン酸、旭化成ケミカルズ(株)のアジピン酸、三菱化学(株)のテレフタル酸、ナガセケムテックス(株)のニトリロ三酢酸、上野製薬株式会社のヒドロキシ安息香酸、ミテジマ化学工業のリン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、酸性トリポリリン酸アルミニウム、酸性ヘキサメタリン酸ナトリウム、ウルトラリン酸ナトリウム、明京商事株式会社のフミンエース、株式会社アートレイ社製のモフミン(登録商標)、那須緑地株式会社製 天然腐植酸フミン酸、電気化学工業株式会社(デンカアヅミン株式会社)製のカオラン(登録商標)(pH=3.0)、アヅミン(登録商標)(pH=6.8)、アヅミン1号などがある。無論、これら以外の市販品を購入してもよい。
【0069】
酸性固形物質の大きさにも特に制限はないが、平均粒径が、100nm〜3mm程度、より好ましくは0.01〜1mm程度のものであることが、粉体の形態であると顆粒状にし易く、吸水性ポリマーの補助的役割をする観点で好ましい。無論、種類によって、あるいは、製造の便宜を考慮して、これらの範囲を逸脱するものであっても構わない。なお、これらの酸性固形物質は、人体に甚大な影響を与えるものではないため、微細な粒子であっても構わないが、必要であれば、バインダと酸性固形物質とを結着させて固化したものを用いてもよい。その場合のバインダと酸性固形物質との結着物の粒径は、特に制限されないが、上述した結着体顆粒物と同様であるのが好ましい。また、酸性固形物質は、消石灰または石灰石と、バインダと、共に結着させてもよい。その場合の消石灰または石灰石と、バインダと、酸性固形物質との結着物の粒径も、特に制限されないが、上述した結着体顆粒物と同様であるのが好ましい。
【0070】
また、酸性固形物質は、上述のように、結着体顆粒物中に含まれていても、または吸水性ポリマーと同時に混合されてもよいが、吸水性ポリマーの吸水力の低減を抑制できるため後者が好ましい。
【0071】
また、本発明の顆粒状処理剤において、酸性固形物質を含む場合、酸性固形物質の量(複数種であれば、複数種の合計質量)は、処理剤の総質量の10〜95質量%、より好ましくは13〜50質量%、さらに好ましくは14〜30質量%である。かような範囲であれば、被処理物から発生しうるアンモニアなどの成分に作用する効率が上がり、処理剤としての脱臭機能が有意に向上する。
【0072】
なお、本発明の顆粒状処理剤は、結着体顆粒物と(消石灰または石灰石と、バインダと)、吸水性ポリマーと、を必須成分として含む。これら成分の好ましい含有量は、上記にて説明した通りであるが、酸性固形物質をさらに含む場合、その分、これら成分の含有量が減るので、これら成分の好ましい含有量は、以下の通りであると好ましい。ただし、以下に記載の好ましい範囲は、酸性固形物質を含まない場合であっても、これらの「消石灰または石灰石と、バインダと、吸水性ポリマーと」の好ましい範囲となりうるということが理解されなければならない。
【0073】
消石灰または石灰石は、顆粒状処理剤の総質量に対して、好ましくは5〜50質量%であり、より好ましくは10〜40質量%であり、さらに好ましくは15〜30質量%程度である。かかる範囲であると、微生物の発酵、分解活動を止める効果が特に顕著である。バインダは、顆粒状処理剤の総質量に対して、好ましくは5質量%未満であり、より好ましくは0.2〜3.5質量%であり、さらに好ましくは0.5〜3質量%、特に好ましくは0.8〜3質量%、もっとも好ましくは1〜2.5質量%程度である。かかる範囲であると、粉状消石灰を十分に固化して顆粒状にし、使用時の粉塵飛散を防ぐ効果が特に顕著である。また、吸水性ポリマーは、顆粒状処理剤の総質量に対して、好ましくは5〜75質量%であり、より好ましくは10〜70質量%であり、さらに好ましくは20〜65質量%、25〜60質量%であるのが特に好ましく、30〜50質量%であるのがもっとも好ましい程度である。かかる範囲であると、糞尿の水分を効率よく吸収することができ、さらには簡易式便器に使用した場合、ゼリー状に固化することができ、ビニール袋からの漏出を防ぎ、汚物の拡散を防止する効果が特に顕著である。
【0074】
なお、消臭効果を顕著に発揮させるとの観点から、本発明の顆粒状処理剤によって処理された被処理物のpHを好ましくは5〜8、より好ましくは6〜7程度に制御させることが好ましい。このように制御することによって、特に塩基性成分(特に、アンモニア)に由来する悪臭を制御し易くなる。制御の方法としては、本発明の顆粒状処理剤に、酸性を示す酸性固形物質を添加する方法が挙げられる。
【0075】
[添加剤]
本発明の顆粒状処理剤の他の好ましい形態は、添加剤を含む。本発明の顆粒状処理剤の添加剤としては、ゼオライト、活性炭、重曹および潤滑剤からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0076】
以下、添加剤の構成要件を詳説する。
【0077】
[ゼオライト]
本発明の顆粒状処理剤は、ゼオライトである添加剤をさらに含むとよい。「ゼオライト」とは沸石類と呼ばれる鉱物の総称で、天然のゼオライトは約40種類発見されている。ゼオライトが含まれると、被処理物(たとえば、糞尿)に含まれるアンモニア成分を吸着し、消臭、脱臭に効果がある。ゼオライトを含むことによって、ゼオライトの細孔が、悪臭を取り込んで、悪臭を抑制することができる。また、ゼオライトは、結着体顆粒物中に含まれていても、または吸水性ポリマーと同時に混合されてもよい。
【0078】
本発明のゼオライトは、天然のものであっても、人工的なものであってもよいが、入手性の観点からは、人工的なものであることが好ましい。また、本発明のゼオライトは、水や窒素分子よりも少し大きい5.5〜8Å程度の極微小な空洞がトンネル状に構成されているモルデナイトと呼ばれるゼオライトであることが好ましい。
【0079】
市販品を購入する場合、新東北化学工業(株)社製の、ゼオライト2460、ゼオライト60、ゼオライトCPなどが好ましい。中でも、打錠機へのフィードの容易性の観点からすると、ゼオライト60が好ましい。
【0080】
本発明のゼオライトの平均粒径にも特に制限はないが、0.05〜1.5mm程度が好ましく、より好ましくは、0.1〜1.2mm程度である。
【0081】
本発明で使用したゼオライトには、SiO(酸化ケイ素)、Al(酸化アルミニウム)、CaO(酸化カルシウム)、NaO(酸化ナトリウム)、KO(酸化カリウム)、Fe(酸化鉄)、MgO(酸化マグネシウム)、付着水(HO)、結合水(HO)、その他が、それぞれ、70.5質量%、11.3質量%、2.6質量%、1.6質量%、1.3質量%、0.7質量%、0.1質量%、8.0質量%、3.9質量%程度含まれるものであるが、無論、かかる組成に限定されることはなく、それぞれの成分が0.1〜2割程度前後して、合計が100%になるように調製されたものを用いてもよい。なお、本発明において、たとえば、K[AlSi]などのゼオライトを用いてもよい。
【0082】
ゼオライトを使用する場合の使用量は、ゼオライトの種類や形状、および被処理物(たとえば、糞尿)中に含まれる成分などにより適宜調整可能であるが、処理剤の総質量に対して、0.1〜50質量%程度、1〜30質量%、あるいは、2〜20質量%程度の範囲であることがさらに好ましい。かかる範囲であると、悪臭を抑制する効果がより高くなり、コスト的にも経済的である。
【0083】
[活性炭]
活性炭は、上記の消石灰が放つことがある悪臭を抑制する観点から添加されると好ましい。また、活性炭は、糞尿処理中に発生する悪臭を抑制する働きをも有する。
【0084】
本発明で用いられる活性炭は、特に制限されない。活性炭の具体的な例としては、たとえば、木炭、コークス、ヤシガラ、天然繊維、ポリアクリロニトリル、レーヨン、フェノール樹脂などの合成樹脂、ピッチなどを原料として用い、公知の方法で得られた活性炭が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、前記活性炭は、合成してもよいし市販品を用いてもよい。市販品の例としては、たとえば、活性炭GYアルカリ用、活性炭GX酸性用(以上、東洋紡株式会社製)、またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0085】
さらに、消石灰と活性炭とが予め混合されている市販品、たとえば、ゾルバリット(宇部マテリアルズ株式会社製)を用いて、本発明の処理剤の消石灰成分および活性炭成分としてもよい。これら活性炭の中でも、悪臭物質の吸着の観点で、ゾルバリットがより好ましい。
【0086】
前記活性炭の形状も特に制限されず、たとえば、粒状、粉末状、顆粒状、ペレット状、マカロニ状、繊維状、ハニカム状等が例示できる。
【0087】
活性炭を使用する場合の使用量は、活性炭の種類や形状、および被処理物(たとえば、糞尿)中に含まれる成分などにより適宜調整可能であるが、処理剤の総質量に対して、0.1〜20質量%程度、0.4〜15質量%程度、あるいは、0.3〜10質量%程度である。かかる範囲であると、悪臭を抑制する効果がより高くなり、コスト的にも経済的である。
【0088】
[重曹(炭酸水素ナトリウム)]
重曹(炭酸水素ナトリウム)は、消石灰や石灰石のアルカリ成分の補助を行う成分である。重曹は、結着体顆粒物中に含まれていても、または吸水性ポリマーと同時に混合されてもよい。
【0089】
重曹(炭酸水素ナトリウム)の平均粒径も特に制限はない。
【0090】
重曹を使用する場合の使用量は、悪臭を抑制する効果を奏するように、重曹の種類や形状、および被処理物(たとえば、糞尿)中に含まれる成分などにより適宜調整可能である。
【0091】
重曹を使用する場合の使用量は、被処理物(たとえば、糞尿)中に含まれる成分などにより適宜調整可能であるが、処理剤の総質量に対して、0.01〜30質量%程度、0.05〜20質量%程度、あるいは、0.1〜18質量%程度である。
【0092】
[潤滑剤]
本発明の顆粒状処理剤に含まれうる潤滑剤は、本発明の顆粒状処理剤を作製する際に、特に、打錠機の臼へのフィードをスムーズになるために用いられるものである。潤滑剤は、結着体顆粒物中に含まれていてもよいし、吸水性ポリマーと同時に混合されていてもよいが、前者が好ましい。したがって、潤滑剤は、結着体顆粒物を作製するときに用いるのが好ましい。潤滑剤が結着体顆粒物に含まれる場合、その重滑剤の含有量は、結着体顆粒物の総量に対して、0.01〜10質量%であるのが好ましく、0.05〜5質量%であるのがより好ましく、0.1〜3質量%であるのがさらに好ましい。かかる範囲であると、原料のフィード、崩壊性を高める。また、処理剤に含まれる潤滑剤の含量としては、特に制限されないが、潤滑剤の含有量は、本発明の顆粒状処理剤の総量に対して、0.01〜10質量%であるのが好ましく、0.05〜5質量%であるのがより好ましく、0.1〜3質量%であるのがさらに好ましい。
【0093】
潤滑剤の種類としては、従来公知のものを適宜選択して、あるいは、組み合わせて使用することができる。たとえば、ショ糖脂肪酸エステルなどのエステル系、二酸化ケイ素などのケイ素系、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウムなどが使われ、エステル系、ケイ素系、ステアリン酸カルシウムが好ましい。
【0094】
[その他の添加剤]
本発明の処理剤は、本発明において悪影響を及ぼさない限り、その他の添加剤をさらに含有していてもよい。かかる添加剤の例としては、臭気対策の観点から、香料、消臭剤、または脱臭剤;アルコール等の親水性有機化合物、または界面活性剤;糞尿中の水分含有量を制御するという観点から、シリカゲル、無水硫酸ナトリウム等の乾燥剤;殺菌・脱臭の観点から、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素含有化合物;糞尿処理時のアルカリ性条件を補完する観点から、水酸化ナトリウム等の第1族元素の水酸化物等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0095】
前記香料の例としては、たとえば、レモンオイル、レモングラス、シナモン油、ラベンダー油、ベチパー等が挙げられる。
【0096】
前記界面活性剤としては、各種の界面活性剤を使用することができ、その具体的な例としては、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンジ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステルなどのノニオン系界面活性剤;アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホサクシネート、アルキルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート、アリールスルホネートなどのアニオン系界面活性剤;長鎖第1級アミン塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルピリジニウム塩、ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリドなどのカチオン系界面活性剤;または塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、塩酸アルキルポリアミノエチルグリシンなどの両性系界面活性剤等が挙げられる。また、処理剤を糞尿に添加する際に用いられうる、後述の水溶性樹脂からなる包袋、水溶紙からなる包袋、または水解性不織布からなる包袋も、本発明の処理剤の添加剤として含有されうる。
【0097】
かようなその他の添加剤は、含まれたとしても、本発明の顆粒状処理剤の総質量に対して、0.1〜10質量%程度、あるいは1〜3質量%程度である。
【0098】
(2)本発明の第2
<顆粒状処理剤の製造方法>
本発明の第2は、消石灰または石灰石と、バインダと、を混合・粉砕して結着体顆粒物を得る工程と、前記結着体顆粒物と、吸水性ポリマーとを混合して顆粒状処理剤を得る工程と、を含む、顆粒状処理剤の製造方法である。本発明者は、このような製造方法とすることにより、粉塵の飛散のない、大量の糞尿を処理することができる顆粒状処理剤が得られることを見出した。
【0099】
以下、本発明の方法を、順を追って説明する。
【0100】
[結着体顆粒物の作製]
本発明の顆粒状処理剤の製造方法では、まず、消石灰または石灰石と、バインダと、を混合・粉砕して結着体顆粒物を得る。当該工程によって得られた結着体顆粒物は、バインダを含むことによって固形化されてなるため、取り扱い性に優れる。なお、結着体顆粒物を構成する消石灰または石灰石は、バインダによって、消石灰または石灰石とバインダとが相互に結着した状態で存在する。
【0101】
以下、結着体顆粒物の作製方法を好ましいいくつかの実施形態に分けて説明する。無論、下記の方法には制限されない。
【0102】
結着体顆粒物は、消石灰または石灰石と、バインダと、を、混合し、所望の大きさあるいは重量になるように、圧縮して得られた固化物を粉砕することによって、作製することができる。
【0103】
[混合]
消石灰または石灰石とバインダとを混合する方法は、特に制限されないが、たとえば、消石灰または石灰石に、バインダを添加し、またはバインダに、消石灰または石灰石を添加し、これを、攪拌機などで混合すればよい。なお、必要であれば、消石灰または石灰石とバインダとに加えて、酸性固形物質や潤滑剤などの添加剤を所定量混合してもよい。混合する際の温度、撹拌条件は、特に制限されないが、15〜40℃で均一になるよう撹拌するのが好ましい。また、下記に述べる固化で行う打錠機にフィードしながら混合してもよい。
【0104】
[固化]
次に、上記で得られた消石灰または石灰石とバインダとの混合物(以下、「混合物」とも称する場合がある。)を、固化するために圧縮し、圧縮して得られた固化物を粉砕する。
【0105】
(卓上式手動の打錠機で固化)
圧縮は、たとえば、卓上式手動の打錠機(杵と臼はそれぞれ一つ)を用いて行うことができる。まず、杵には、固化をしたい各成分(混合物)を手またはスプーンにて入れる。この際、フィードの難しさは考える必要はない。その後、手動(油圧)にてレバーを下して圧力をかけて、各成分(混合物)を固化させることによって、消石灰または石灰石とバインダとを含む固化物を作製する。なお、卓上式手動の打錠機の利点は、かなりの時間、滞留させて圧力をかけるので固まりにくい組み合わせであっても固化できるというところである。たとえば、口径の小さい杵(直径7mm:上下円版型)を用いた場合、口径が小さい方が面積当たりにより高い圧力がかかるので固化しにくいものでも固まる傾向がある。一方で、たとえば、口径の大きい杵(直径15mm:上下平版型)を用いる場合、口径が大きい方が面積当たりに小さい圧力になるので固化しにくいものには不利になるが、口径の大きい分、杵へのフィードは有利になり、生産性は向上する。
【0106】
(連続式の打錠機で固化)
圧縮は、また、連続式の打錠機を用いて行うことができる。
【0107】
連続式の打錠機は、直打式であってもなくてもよい。本発明の主成分として用いられうる消石灰は、その粒子径が小さいため、そのような微粉のものをフィードしやすくするために潤沢剤を添加してもよい。一方で、前処理を行う場合は、たとえば、ローラーコンパクターを用いて大きな圧力をかけて圧延して微粉を造粒したものにバインダ(結合剤)を混合したものを打錠することによって、消石灰または石灰石とバインダとを含む固化物を作製してもよい。大量生産を鑑みると、たとえば、株式会社畑鐵工所製の打錠機(型式AP18−SSなど)を使用することが好ましい。この際の杵臼の直径は、13mm程度であり、杵立数は、18本程度である。かかる打錠機を使用すれば、原料を所望の割合となるように調製し、混合し、打錠機のホッパーに混合した原料を入れ、打錠機で回転式に打錠をしていくだけで生産が可能であり、好ましい。
【0108】
また、連続式の回転型打錠機で、消石灰または石灰石とバインダとを含む固化物を作製してもよい。具体的には、各成分(たとえば、消石灰、バインダ、潤沢剤)を混合し混合物を作製し、連続打錠機のホッパーに混合物を入れて打錠を行う。杵の形状は、たとえば、上下円版型であってもよい。
【0109】
このように、結着体顆粒物を作製するための固形化のため方法には、特に制限はない。上記のように、打錠、ローラーコンパクター、湿式の圧縮(圧縮対象の原体を水で湿らせ、圧縮)を適宜組み合わせて、適用すればよい。
【0110】
[粉砕]
次に、上記で得られた固化物を粉砕することによって、結着体顆粒物を得る。本発明の製造方法によれば、結着剤(バインダ)により消石灰または石灰石を結着させているため、いったん、固化物にしてしまえば、それを粉砕して顆粒物にしても、微細な粉塵が飛散しない。本発明の製造方法は、いったん固化させた固化物を粉砕することによってなる。従来の処理剤における粉末状態では、消石灰または石灰石とバインダとを、そのような「いったん固化させる」という工程を経て作製されるものは知られていない。また、消石灰または石灰石とバインダとからなる結着体顆粒物は、構成的な面からしても、従来の粉末状態の処理剤とは異なる。
【0111】
また、結着剤(バインダ)が、たとえば、吸水性ポリマーなどと結着する必要がないため、結着剤(バインダ)の量を減らすことができ、経済的である。
【0112】
結着体顆粒物を粉砕する方法は特に制限されないが、たとえば、従来公知の細粒化装置を用いることなどで、行うことができる。使用できる細粒化装置としては、剪断粗砕機、衝撃破砕機、高速回転式粉砕機に分類されて、切断、剪断、衝撃、摩擦といった粉砕機構のうちの1つ以上の機構を有するものが好ましく使用できる。たとえば、畑鉄工所の整粒機や、岡田精工の卓上用ミルなどを用いることができる。無論、これら以外の装置を使用してもよい。あるいは、金づち等で破砕してもよい。
【0113】
粉砕された結着体顆粒物は、ふるいなどを用いて、所望の粒径の顆粒物を選別することが好ましい。たとえば、本発明の結着体顆粒物としては、3mm未満であるのが好ましいため、固化物を粉砕した後、粉砕物を目開き25〜2,500μm程度の篩を用いて、粒径の小さいものを取り除き、結着体顆粒物を得る。
【0114】
[顆粒状処理剤の作製]
上記で得られた結着体顆粒物に、吸水性ポリマー、必要により、酸性固形物質、その他添加剤を添加し、混合して顆粒状処理剤を得る。この際、上記の成分を混合する順序は、特に制限されず、各成分を一度に混合してもよいし、各成分を順次混合してもよい。
【0115】
[本発明の顆粒状処理剤の用途]
本発明の顆粒状処理剤の用途は特に制限されない。たとえば、糞尿、有機性汚泥、動植物、家畜、家畜舎または土壌の処理に用いられうる。本発明の顆粒状処理剤が、糞尿処理剤、有機性汚泥処理剤、動植物処理剤、家畜処理剤、家畜舎処理剤または土壌処理剤として使用されることによって、様々な効果を奏する。具体的には、本発明の顆粒状処理剤が、糞尿処理剤に含まれることによって、本発明の処理剤は、消石灰または石灰石が固形化されているため、処理剤を使用する際に、人体に悪影響を及ぼすおそれのある粉塵が舞わないため、取り扱い性が向上する。具体的には、糞尿の処理は、災害用トイレ、渋滞用トイレ(渋滞時に車内で使用するトイレ)、工事現場等の仮設トイレ、ペット用トイレ(猫砂や犬のトイレ)、海外での水洗インフラのない地域での応用などがある。なお、本発明の顆粒状処理剤が、糞尿処理に用いられる場合、かかる糞尿は、人糞尿のみならず、たとえば、牛糞尿、豚糞尿、鶏糞尿等の畜糞尿等も包含する。また、前記糞尿は、大便単独でもよいし、小便単独でもよいし、大便と小便との混合物であってもよい。大便単独の場合、水分を多く含むことが好ましい。また、有機性汚泥の処理は、汚染された河川の処理、外食店舗から排出される食品残さ、感染症患者の嘔吐物の処理、血液の処理等の用途に好適に用いられうる。
【0116】
動植物、家畜、家畜舎または土壌の処理は、具体的には、口蹄疫や鳥インフルエンザなどの感染症に感染した動物、家畜、それらの餌、それらの家畜、家畜舎または土壌の処理に適用可能である。口蹄疫や鳥インフルエンザの消毒には、通常は、粉状の消石灰が用いられるが、本発明の処理剤は、消石灰または石灰石が固形化されているため、動植物処理剤、家畜処理剤、家畜舎処理剤または土壌処理剤に含まれることによって、粉塵の被害を有意に低減し、さらに、取り扱い性(ハンドリング)を良くし、反応性を悪くすることがなく、消毒剤、殺菌剤、滅菌剤、消臭剤の用途としても使用が可能である。そして、通常、消毒用に用いられる消石灰、石灰石などは、粒状も存在するが、反応性が悪いので粉状で使用する場合が一般的である。本発明によれば、消石灰または石灰石は、固化されていても反応性は良好である。さらに、処理剤には吸水性ポリマー(高分子吸水剤)が混合されているが、かかる吸水性ポリマーは、固化されていないため、水分に接触した際にすぐに膨潤することができ、吸水性ポリマーの性能を良好に発揮できる。よって、本発明の顆粒状処理剤は、反応性が落ちることなく、ハンドリングが大変よくなり、口蹄疫や鳥インフルエンザの消毒の際に非常に好適である。また、回収も容易となる。
【0117】
本発明の顆粒状処理剤は、糞尿の入った容器に後で添加し、糞尿の処理に用いることができる。また、本発明の顆粒状処理剤は、予め、便器に配置することができる。本発明の処理剤は、顆粒状であるため、特に、前者の用途で用いられるのが好ましい。この便器は、本発明の顆粒状処理剤を含んでいるので、本発明の顆粒状処理剤の効果を有する。
【0118】
本発明の顆粒状処理剤が糞尿処理に用いられる場合、顆粒状処理剤の使用量は、被処理物(たとえば、糞尿)100質量部に対し、10〜200質量部の範囲であることが好ましく、20〜100質量部の範囲であることがより好ましく、30〜60質量部であることがさらに好ましい。処理剤の使用量が、10質量部未満である場合には、糞尿と消石灰との接触面積が減少するため、糞尿が空気に触れ、糞尿の発酵・分解が進む虞がある。一方、100質量部を超える場合には、処理後の残渣が多くなり、処理後の廃棄物が多くなる場合がある。また、コストが高くなる場合がある。
【0119】
また、本発明の顆粒状処理剤を、便器に予め配置する場合は、上記の範囲の量で配置することが好ましい。当該便器には、取り扱いの容易性等の観点から、たとえば、糞尿を受ける部分に、表面が撥水処理されたシートや内面が撥水処理された袋などに本発明の顆粒状処理剤を配置しておくことが好ましく、そこに、糞尿を添加することによって、廃棄する際にも非常に容易となる。なお、糞尿臭には、大きく分けて、大便臭とアンモニア臭がある。大便臭は、有機的な臭気であり、アンモニア臭は無機的な臭気である。アンモニア臭は、無機臭であり、排泄後、表面が撥水処理されたシートを縛れば拡散しにくい臭気である。しかし、大便臭は、ガスが検体自体から発生するので表面が撥水処理されたシート(たとえば、ビニール袋)内の内圧を高め、ビニール袋を縛っても漏れて拡散する傾向にある。従来知られている糞尿処理剤であると、脱臭効果が低いため、糞尿臭(特に、大便臭)を抑制することが困難であった。本発明によれば、本発明の顆粒状処理剤、本発明の顆粒状処理剤を含む便器が提供され、攪拌等の操作を必要とせず、簡便にかつ効率的に尿等を処理することが可能であり、殺菌等を行うことができるため、悪臭やガスの発生を抑制することができ、たとえば、被災地のトイレ事情を著しく改善することができ、衛生面においての非常に好適である。
【0120】
上記のように、本発明の顆粒状処理剤は、ポータブルトイレ等に前もって敷いておき、その上から排尿または排便をすることができる。そうすると、消石灰または石灰石が固形化されているため、排尿または排便の勢いで消石灰または石灰石の粉塵が舞い上がらない。消石灰または石灰石は腐食性を有する強アルカリであるため、消石灰または石灰石が舞い上がらないため、人体の繊細部分に飛び散ることなく、健康面からみても好ましい。
【0121】
また、本発明の顆粒状処理剤に用いられる便器の好ましい形態によれば、水の非存在下に、本発明の顆粒状処理剤が予め配置されてなる。つまり、水を不要とする乾式の形態であるので、便器としての保存性も向上する。また、粉塵等の問題が生じず、ポータブルトイレ等に前もって敷いておき、その上から排尿・排便をすることができる。
【0122】
また、当該便器は、予め処理剤が配置されてなるので、排泄後、使用者は、自己(あるいは要介護者など)の糞尿を確認する必要はなく、使用者も快適に使用することができる。それに対して、従来の処理剤は、排泄をした後、自分で(あるいは介護者などが)糞尿に、処理剤を振り掛ける必要があり、使用者(あるいは介護者など)は不快になることがあった。しかし、当該便器によれば、予め処理剤が配置されているので、排泄後は特に確認を要することなく、必要に応じて、そのまま便器を廃棄すれば足りるという効果も有する。
【0123】
また、本発明は、本発明の顆粒状処理剤含んで成形されてなる、吸収性物品も提供する。当該吸収性物品は、上記した本発明の顆粒状処理剤、液透過性を有する表面シート、液不透過性を有する背面シートを備えると好ましい。
【0124】
本発明にかかる吸収性物品の製造方法は、特に限定されないが、たとえば、本発明の顆粒状処理剤を、液透過性を有する基材(表面シート)と液不透過性を有する基材(背面シート)でサンドイッチして、必要に応じて、弾性部材、拡散層、粘着テープ等を装備することで、吸収性物品、たとえば、大人用紙オムツや生理用ナプキンとすればよい。
【0125】
本発明の顆粒状処理剤は、吸収性物品に消臭機能を付与でき、長時間にわたり、優れた消臭性能と吸収特性を示すものである。
【0126】
このような吸収性物品としては、具体的には、近年成長の著しい大人用紙オムツをはじめ、子供用オムツや生理用ナプキン、いわゆる失禁パッド等の衛生材料等が挙げられ、それらに特に限定されるものではない。吸収性物品の中に存在する本発明の顆粒状処理剤が非常に優れた消臭性を有し、ドライ感が著しいことにより、装着している本人、介護の人々の負担を大きく低減することができる。
【0127】
吸収性物品に含まれる、本発明の顆粒状処理剤の量は、用途に応じて適宜調整すればよいが、衛生材料等の場合、その中に、5〜50g、あるいは、10〜30g程度含ませることが好ましい。
【実施例】
【0128】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例により何ら制限されるものではない。
【0129】
(実施例1)
下記表に示される成分、消石灰(10.0g)と、結合剤W−300G(0.5g)と、カルシウムステアレート(0.1g)との混合物を、(株)畑鉄工所製 HT−AP18SS−II 連続式打錠機で、φ13mmの杵と臼を用いて、本圧19kN、20rpm打錠することによって、塊状処理物8粒を作製した(1粒約1g、平均直径:13mm、平均厚さ:7mm)。ホッパーからのフィードもスムーズに行うことができた。また、取り扱い性は、非常に優れていた。なお、塊状処理剤の硬度は、硬度7kgfであった。この際の硬度の測定は、錠剤破壊強度測定器(硬度計)TH−203MPにて行った。
【0130】
【表1】

【0131】
この塊状処理物を、手で金づちを用いて粉砕し、目開き75μmの篩で選別し、75μm以下の粒子を取り除き、75μm超の顆粒状消石灰を作製した。篩前の塊状処理物のうち、篩により23.5質量%が75μm以下の粒子として取り除かれ、75μm超の結着体顆粒物(73.4質量%)を得た。なお、約3質量%の残りの結着体顆粒物は、打錠、粉砕、分級等の工程で飛散したものと思われる。
【0132】
得られた粒状消石灰(消石灰を含む結着体顆粒物)を下記の混合比率にて撹拌機(三井三池化工機社製 ヘンシェルミキサー)にて均一混合を約10分行い、顆粒の処理剤を作製した。なお、用いたアクアキープSA−50IIの粒度分布は、以下の通りである。
【0133】
【表2】

【0134】
【表3】

【0135】
続いて、糞尿を受ける内面が撥水性を有する容器(ビニール袋)状のトイレパックに、小便50gを添加し、その後、大便200gを添加し、その上から、粉砕された処理剤35gを大便200gに振りかけた。
【0136】
処理後、30分経過した際の臭気は殆どなかった(臭気レベル:0)。また、処理後24時間経った処理済物のビニール袋を縛り1時間放置後ビニール袋に小さな穴をあけ、検知管を挿入し、ガスを計測アンモニア用ガス検知管で測定した。結果、0ppmであった(つまり、検出限界以下)。処理後24時間経った処理済物のpHは、6.61であった。なお、本発明のpHは、(株)佐藤商事社製のPHレコーダーSDカード記録系型番PH−SDを用いて測定した。その後、ビニール袋を開け、2週間放置させた。2週間放置、臭気を確認したが、臭気は殆どなかった(臭気レベル:0)。
【0137】
(実施例2)
下記表に示される成分、消石灰(10.0g)と、結合剤W−300G(0.5g)と、カルシウムステアレート(0.1g)との混合物を、(株)畑鉄工所製 HT−AP18SS−II 連続式打錠機で、φ13mmの杵と臼を用いて、本圧19kN、20rpm打錠することによって、塊状処理物8粒を作製した(1粒約1g、平均直径:13mm、平均厚さ:7mm)。ホッパーからのフィードもスムーズに行うことができた。また、取り扱い性は、非常に優れていた。なお、塊状処理剤の硬度は、硬度7kgfであった。この際の硬度の測定は、錠剤破壊強度測定器(硬度計)TH−203MPにて行った。
【0138】
【表4】

【0139】
この塊状処理物を、手で金づちを用いて粉砕し、目開き150μmの篩で選別し、150μm以下の粒子を取り除き、150μm超の顆粒状消石灰を作製した。篩前の塊状処理物のうち、篩により36.5質量%が150μm以下の粒子として取り除かれ、150μm超の結着体顆粒物(60.4質量%)を得た。なお、約3質量%の残りの結着体顆粒物は、打錠、粉砕、分級等の工程で飛散したものと思われる。
【0140】
得られた粒状消石灰(消石灰を含む結着体顆粒物)を下記の混合比率にて撹拌機(三井三池化工機社製 ヘンシェルミキサー)にて均一混合を約10分行い、顆粒の処理剤を作製した。
【0141】
【表5】

【0142】
続いて糞尿を受ける内面が撥水性を有する容器(ビニール袋)状のトイレパックに、小便50gを添加し、その後、大便200gを添加し、その上から、粉砕された処理剤35gを大便200gに振りかけた。
【0143】
処理後、30分経過した際の臭気は殆どなかった(臭気レベル:0)。また、処理後24時間経った処理済物のビニール袋を縛り1時間放置後ビニール袋に小さな穴をあけ、検知管を挿入し、ガスを計測アンモニア用ガス検知管で測定した。結果、0ppmであった(つまり、検出限界以下)。処理後24時間経った処理済物のpHは、6.51であった。なお、本発明のpHは、(株)佐藤商事社製のPHレコーダーSDカード記録系型番PH−SDを用いて測定した。その後、ビニール袋を開け、2週間放置させた。2週間放置、臭気を確認したが、臭気は殆どなかった(臭気レベル:0)。
【0144】
(実施例3)
下記表に示される成分のうち、消石灰(10.0g)と、結合剤W−300G(0.5g)と、カルシウムステアレート(0.1g)の混合物を、(株)畑鉄工所製 HT−AP18SS−II 連続式打錠機で、φ13mmの杵と臼を用いて、本圧19kN、20rpm打錠することによって、塊状処理物8粒を作製した(1粒約1g、平均直径:13mm、平均厚さ:7mm)。ホッパーからのフィードもスムーズに行うことができた。また、取り扱い性は、非常に優れていた。なお、塊状処理剤の硬度は、硬度7kgfであった。この際の硬度の測定は、錠剤破壊強度測定器(硬度計)TH−203MPにて行った。
【0145】
【表6】

【0146】
この塊状処理物を、手で金づちを用いて粉砕し、目開き300μmの篩で選別し、300μm以下の粒子を取り除き、300μm超の顆粒状消石灰を作製した。篩前の塊状処理物のうち、篩により42.1質量%が300μm以下の粒子として取り除かれ、300μm超の結着体顆粒物(45.0質量%)を得た。なお、約3質量%の残りの結着体顆粒物は、打錠、粉砕、分級等の工程で飛散したものと思われる。
【0147】
得られた粒状消石灰(消石灰を含む結着体顆粒物)を下記の混合比率にて撹拌機(三井三池化工機社製 ヘンシェルミキサー)にて均一混合を約10分行い、顆粒の処理剤を作製した。
【0148】
【表7】

【0149】
続いて糞尿を受ける内面が撥水性を有する容器(ビニール袋)状のトイレパックに、小便50gを添加し、その後、大便200gを添加し、その上から、粉砕された処理剤35gを大便200gに振りかけた。
【0150】
処理後、30分経過した際の臭気は殆どなかった(臭気レベル:0)。また、処理後24時間経った処理済物のビニール袋を縛り1時間放置後ビニール袋に小さな穴をあけ、検知管を挿入し、ガスを計測アンモニア用ガス検知管で測定した。結果、0ppmであった(つまり、検出限界以下)。処理後24時間経った処理済物のpHは、6.60であった。なお、本発明のpHは、(株)佐藤商事社製のPHレコーダーSDカード記録系型番PH−SDを用いて測定した。その後、ビニール袋を開け、2週間放置させた。2週間放置、臭気を確認したが、臭気は殆どなかった(臭気レベル:0)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消石灰または石灰石と、バインダと、を含む結着体顆粒物と、
吸水性ポリマーと、
を含む、顆粒状処理剤。
【請求項2】
前記バインダの含有量が、総質量の5質量%未満である、請求項1に記載の顆粒状処理剤。
【請求項3】
酸性固形物質をさらに含む、請求項1または2に記載の顆粒状処理剤。
【請求項4】
前記結着体顆粒物の平均直径が3mm未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の顆粒状処理剤。
【請求項5】
ゼオライト、活性炭、重曹および潤滑剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の顆粒状処理剤。
【請求項6】
消石灰または石灰石と、バインダと、を混合・粉砕して結着体顆粒物を得る工程と、
前記結着体顆粒物と、吸水性ポリマーとを混合して顆粒状処理剤を得る工程と、
を含む、請求項1〜5に記載の顆粒状処理剤の製造方法。
【請求項7】
糞尿の処理に用いられる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の顆粒状処理剤または請求項6に記載の方法で得られた顆粒状処理剤。

【公開番号】特開2013−6137(P2013−6137A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139272(P2011−139272)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(506190360)
【Fターム(参考)】