説明

顔料分散体、イエロートナー

【課題】 分散媒中での着色剤の分散性が向上することにより着色力が向上した顔料分散体及び該顔料分散体を用いて製造したイエロートナーを提供すること。
【解決手段】 分散媒体中、特定のアミン化合物と、特定のイエロー顔料とを分散処理する事で得られる顔料分散体及び該顔料分散体を用いて製造したイエロートナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、インキ、トナー、樹脂成型品等の製造工程において用いられる顔料分散体に関する。又、電子写真法、静電記録法、磁気記録法、トナージェット法、液体現像法などの記録方法に用いられるイエロートナーに関する。
【背景技術】
【0002】
着色剤としてのアゾ顔料の用途は多岐にわたっており、塗料、インクジェットインク、電子写真トナー、カラーフィルター等の分野で広く用いられている。このような分野で顔料を用いられる場合、着色力、透明性などの分光特性を向上させるために、各種媒体中に顔料を微分散させなければならない。しかし、一般的にアゾ顔料は微細化すると分散工程やその後の製造工程において凝集し、着色力や透明性の低下などの問題を引き起こしてしまう。
【0003】
このような問題を改善するために様々な顔料分散剤が提案されている。例えば、特許文献1には、Solsperse(登録商標)(Lubrizol社製)に代表される顔料分散剤が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の顔料分散剤は、スチレンモノマー等の非極性溶媒への分散においては十分な効果を得る事が出来なかった。
【0004】
又、特許文献2等に開示されている様に、アセトアセトアニリド系モノアゾ化合物は古くから黄色〜赤色着色剤(顔料)として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO9942532号公報
【特許文献2】BE612657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の顔料分散剤を使用してトナーを製造した場合、結着樹脂中での十分な顔料分散性を得ることが困難であり、望まれる着色力を得ることが難しかった。
【0007】
本発明は、イエロー顔料を用いた場合において、上記に記した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、分散媒体中に、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表されるイエロー顔料を含有する顔料分散体及び該顔料分散体を使用したイエロートナーに関する。
【0009】
【化1】

【0010】
[一般式(1)において、R〜R、及びR’〜R’は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。]
【0011】
【化2】

【0012】
[一般式(2)において、R4〜R13は、各々独立して、水素原子、アルキル基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基又はハロゲン原子を表し、R14〜R17は各々独立して水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表す。]
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、分散媒中での着色剤の分散粘度の増加が抑制されるため、ハンドリング性に優れた顔料分散体を得ることができる。又、分散媒中での着色剤の分散性を向上させることができる。更に、該顔料分散体を用いて作製されたトナーは、着色剤の分散性が良好に保たれ、高着色力を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】化合物(7)のDMSO−d中、室温、400MHzにおける1H NMRスペクトルを表す図である。
【図2】化合物(1)を用いた顔料分散体(13)のSEM写真を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<顔料分散体について>
本発明者らは、前記した従来技術の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、分散媒体中に、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表されるイエロー顔料を含有した顔料分散体であれば、優れた顔料分散性が得られることを見出した。又、得られた顔料分散体を使用したイエロートナーを製造することにより、高着色力を有するイエロートナーを提供する事を見出し本発明に至った。なお、本発明において、分散媒体とは、水、有機溶剤又はそれらの混合物のことを表す。
【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
一般式(1)において、R〜R、及びR’〜R’は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
【0019】
一般式(1)中のR〜R、及びR’〜R’におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、ノナデシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、又は、エチルヘキシル基等の直鎖、分岐、又は、環状の炭素数1〜20個のアルキル基が挙げられる。
【0020】
一般式(1)中のR〜R、及びR’〜R’におけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、又は、ナフチル基等の6〜14員環の単環式又は多環式アリール基が挙げられる。
【0021】
一般式(1)中のR〜R、及びR’〜R’におけるアラルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンジル基、又は、フェネチル基等が挙げられる。
【0022】
一般式(1)中のR〜R、及びR’〜R’は上記したような置換基を表すが、化合物の安定性を著しく阻害するものでなければ、これらの置換基は更に置換基を有しても良い。この場合、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;フェニル基などのアリール基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;メチルアミノ基、プロピルアミノ基等のモノ置換アミノ基;ジメチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、N−エチル−N−フェニル基等のジ置換アミノ基等が挙げられる。
【0023】
一般式(1)において、R〜Rが同一の置換基であり、R’〜R’が同一の置換基であることが好ましい。これによって、一般式(1)で示される化合物の製造が容易となり、コスト削減が見込まれるためである。
【0024】
一般式(1)におけるR〜Rがアルキル基である場合が好ましい。これは、一般式(1)で表される化合物の溶剤等への溶解性が向上し、顔料の分散性を向上させることができるためである。特に、一般式(1)におけるR〜Rが、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、エチルヘキシル基等の分岐した置換基を有する場合や、ブトキシプロピル基等のような配位性のヘテロ原子を含んだ構造を有する場合が好ましい。又、一般式(1)において、R’〜R’が水素原子であることが好ましい。
【0025】
以下に、本発明で用いられる一般式(1)で表される化合物の具体例を示す。なお、一般式(1)で表される化合物は、下記の例に限定されるものではない。
【0026】
【化5】

【0027】
一般式(1)中のR〜Rとして、化合物(1)や化合物(2)のように環構造を有するアルキル基を有する場合、化合物(5)のような分岐構造を有するアルキル基を有する場合、化合物(7)のような配位性のヘテロ原子(酸素原子など)を有するアルキル基を有する場合、特に高い効果が得られる。
【0028】
次に、一般式(1)で表される化合物の製造方法について、一態様を以下に示す。すなわち、化合物Aとアミン、あるいはアミン誘導体とを縮合させることで、化合物Bを得る事が出来る。化合物Bに、更に前記と同一の、あるいは異なるアミン、あるいはアミン誘導体とを縮合させることで、化合物Cを得ることができる。又、必要に応じて、各化合物の官能基に対して、公知の保護・脱保護反応、加水分解等の反応を追加することができる。なお、一般式(1)で表される化合物の製造方法はこれに限定されない。
【0029】
【化6】

【0030】
一般式(2)において、R〜R13は、各々独立して、水素原子、アルキル基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基又はハロゲン原子を表し、R14〜R17は各々独立して水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表す。
【0031】
一般式(2)中のR〜R13及びR14〜R17におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0032】
一般式(2)中のR〜R13におけるカルボン酸エステル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、カルボン酸メチルエステル基、カルボン酸エチルエステル基、カルボン酸プロピルエステル基、カルボン酸ブチルエステル基等が挙げられる。
【0033】
一般式(2)中のR〜R13におけるカルボン酸アミド基としては、特に限定されるものではないが、例えば、カルバモイル基、カルボン酸メチルアミド基、カルボン酸ブチルアミド基、カルボン酸ヘキシルアミド基、カルボン酸フェニルアミド基等のモノ置換アミド基;カルボン酸ジメチルアミド基、カルボン酸ジフェニルアミド基、カルボン酸メチルプロピルアミド基等のジ置換アミド基等が挙げられる。
【0034】
一般式(2)中のR〜R13は上記したような置換基を表すが、化合物の安定性を著しく阻害するものでなければ、これらの置換基は更に置換基を有しても良い。この場合、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;フェニル基などのアリール基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;メチルアミノ基、プロピルアミノ基等のモノ置換アミノ基;ジメチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、N−エチル−N−フェニル基等のジ置換アミノ基;ハロゲン原子等が挙げられる。
【0035】
一般式(2)中のR〜R13及びR14〜R17におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0036】
一般式(2)で表されるイエロー顔料としては、C.I.Pigment Yellow 93、C.I.Pigment Yellow 94、C.I.Pigment Yellow 95、C.I.Pigment Yellow 128、C.I.Pigment Yellow 155、C.I.Pigment Yellow 214及びこれらの誘導体として分類されるイエロー顔料が挙げられる。この中でも、特に、着色力が高いことからC.I.Pigment Yellow 155(C.I.ピグメントイエロー155)を用いることが好ましい。
【0037】
一般式(2)で表されるこれらのイエロー顔料は、単独で、あるいは2種以上の組み合わせで、あるいは一般式(2)で表されるイエロー顔料と公知の着色剤を2種以上組み合わせて用いることができる。
【0038】
本発明の顔料分散体は、分散媒体中に、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表されるイエロー顔料を分散処理することで得られる。具体的には、例えば以下の方法が挙げられる。分散媒体中に一般式(1)表される化合物と、必要に応じて樹脂を溶かし込み、撹拌しながら、一般式(2)で表される顔料粉末を分散媒体中に除々に加え、十分に分散媒体になじませる。さらに、ボールミル、ペイントシェーカー、ディゾルバー、アトライター、サンドミル、ハイスピードミル等の分散機により機械的せん断力を加えることで、顔料を安定に均一な微粒子状に微分散することができる。
【0039】
顔料分散体中のイエロー顔料の量は、分散媒体100質量部に対して1.0〜30.0質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは2.0〜20.0質量部、特に好ましくは3.0〜15.0質量部の範囲内である。イエロー顔料の含有量が上記の範囲内であれば、粘度の上昇や顔料分散性の悪化を防止することができ、良好な着色力を発揮することができる。
【0040】
一般式(1)で表される化合物の含有量は、一般式(2)で表されるイエロー顔料100質量部に対して、0.05〜10質量部の範囲内であることが好ましく、0.1〜5.0質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0041】
顔料分散体は乳化剤を用いて水に分散させる事が出来る。乳化剤としては、例えば、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム等の脂肪酸石鹸、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノニルフェニルポリオキシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
【0042】
分散媒体として用いられ得る有機溶剤としては、以下のものが挙げられる。メチルアルコール、エチルアルコール、変性エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、3−ペンタノール、オクチルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類;ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラブロモエタン等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、トリオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;ニトロベンゼン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の硫黄・窒素含有有機化合物類。
【0043】
又、有機溶剤として、重合性単量体を用いることもできる。重合性単量体は、付加重合性あるいは縮重合性単量体であり、好ましくは、付加重合性単量体である。具体的には、以下のものが挙げられる。スチレン、o−(m−、p−)メチルスチレン、o−(m−、p−)エチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリロニトリル、アクリル酸アミド等のアクリレート系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリロニトリル、メタクリル酸アミド等のメタクリレート系単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン、シクロヘキセン等のオレフィン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、ヨウ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン化合物を挙げることができる。これらは使用用途に応じて、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の顔料分散体を用いて、重合トナーを作製する場合には、上記重合性単量体の中でも、スチレン又はスチレン系単量体を、単独もしくは他の重合性単量体と混合して使用することが好ましい。特に扱い易さから、スチレンが好ましい。
【0044】
顔料分散体には、さらに樹脂を加えてもよい。具体的には、以下のものが挙げられる。ポリスチレン樹脂、スチレン共重合体、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸系共重合体、メタクリル酸系共重合体、ポリエステル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルメチルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリペプチド樹脂。これらの樹脂は単独、あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0045】
本発明の顔料分散体の粘度は、測定温度25℃において、100〜2000mPa・sの範囲内であることが好ましく、200〜1500mPa・sの範囲内であることがより好ましく、300〜1300mPa・sの範囲内であることが特に好ましい。顔料分散体の粘度が上記の範囲内であれば、イエロー顔料が十分に微分散されている。又、重合トナーの作製に用いる場合には、分散効率が良好であり、分散処理後の移送もスムーズに行われる。
【0046】
<トナーについて>
本発明の顔料分散体は、結着樹脂、イエロー顔料、ワックス成分等を含有するトナー粒子を作製する際に、着色剤として用いることができる。本発明の顔料分散体を着色剤として用いることにより、分散媒中で分散粘度の増加を抑制できるため、トナー粒子製造工程上のハンドリングが容易になるとともに、着色剤の分散性が良好に保たれる。その結果、高着色力を有するイエロートナーを得ることができる。
【0047】
トナーに用いられる結着樹脂としては、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合が挙げられる。重合法により直接トナー粒子を得る方法においては、それらを形成するための重合性単量体が用いられる。重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリロニトリル、メタクリル酸アミド等のメタクリル酸エステル系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリロニトリル、アクリル酸アミド等のアクリル酸エステル系単量体;ブタジエン、イソプレン、シクロヘキセン等のオレフィン系単量体。これらは、単独で用いることもできるし、又はポリマーハンドブック第2版III−139〜192ページ(John Wiley & Sons社製)に記載の理論ガラス転移温度(Tg)が、40〜75℃を示すように適宜混合して用いることもできる。
【0048】
トナーは、ポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂等の極性樹脂を含有しても良い。例えば、懸濁重合法等によりトナーを製造する場合おいて、分散工程から重合工程において極性樹脂を添加すると、重合性単量体組成物と水系分散媒体の呈する極性のバランスに応じて、添加した極性樹脂がトナー粒子の表面に薄層を形成したり、トナー粒子表面から中心に向け傾斜性をもって存在したりする。この時、本発明の顔料分散体と極性樹脂を用いることによって、トナー粒子中への着色剤の存在状態を望ましい形態にすることが可能である。
【0049】
トナー粒子の機械的強度を高めると共に、トナー粒子の分子量を制御するために、結着樹脂の合成時に架橋剤を用いることもできる。二官能の架橋剤としては、以下のものが挙げられる。ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート、及び上記のジアクリレートをジメタクリレートに代えたもの。多官能の架橋剤としては、以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート及びトリアリルトリメリテート。これらの架橋剤は、前記重合性単量体100質量部に対して、0.05〜10質量部の範囲内で用いることが好ましく、0.1〜5質量部の範囲内で用いることがより好ましい。
【0050】
本発明のトナーには、本発明の顔料分散体が用いられるが、本発明の顔料分散体の分散性を阻害しない限りは、該顔料分散体と他の着色剤を併用することもできる。併用できる着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物等が挙げられる。
【0051】
トナーに用いられるワックス成分としては、以下のものが挙げられる。パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャー・トロプシュ法によって得られる炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス及びそれらの誘導体等。上記誘導体には、酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物が含まれる。又、高級脂肪族アルコール等のアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸あるいはその誘導体、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物ワックス、動物ワックスが挙げられる。これらは単独、もしくは併せて用いることができる。
【0052】
ワックス成分の添加量としては、結着樹脂100質量部に対する含有量が総量で2.5〜15.0質量部の範囲内であることが好ましく、さらには3.0〜10.0質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0053】
トナーにおいては、必要に応じて荷電制御剤をトナー粒子と混合して用いることも可能である。これにより、現像システムに応じた摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
【0054】
荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナーを直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。
【0055】
荷電制御剤は、例えば、トナーを負荷電性に制御するものとして、スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体、サリチル酸誘導体及びその金属錯体、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸や、その金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類、尿素誘導体、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系帯電制御剤等が挙げられる。又、トナーを正荷電性に制御するものとしては、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等によるニグロシン変性物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等)、高級脂肪酸の金属塩、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド、ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類、樹脂系帯電制御剤等が挙げられる。これらを単独であるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0056】
トナーは、流動化剤として無機微粉体が外部添加されていてもよい。無機微粉体としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ又はそれらの複合酸化物や、これらを表面処理したものが使用できる。
【0057】
トナーを構成するトナー粒子を得るための製造方法としては、従来使用されている、粉砕法、懸濁重合法、懸濁造粒法、乳化重合法などが挙げられる。製造時の環境負荷及び粒径の制御性の観点から、これらの製造方法のうち、特に懸濁重合法や懸濁造粒法等、水系媒体中でトナー粒子を造粒する製造方法によって得ることが好ましい。
【0058】
以下に、懸濁重合法によりトナー粒子を製造する方法について説明する。まず、顔料分散体、重合性単量体、ワックス成分及び重合開始剤等を混合して重合性単量体組成物を調製する。次に、該重合性単量体組成物を水系媒体中に分散して重合性単量体組成物の粒子を造粒する。そして、水系媒体中にて重合性単量体組成物の粒子中の重合性単量体を重合させてトナー粒子を得る。
【0059】
前記工程における重合性単量体組成物は、前記着色剤を第1の重合性単量体に分散させた分散液を、第2の重合性単量体と混合して調製されたものであることが好ましい。即ち、本発明の顔料組成物を含む着色剤を第1の重合性単量体により十分に分散させた後で、他のトナー材料と共に第2の重合性単量体と混合することにより、顔料をより良好な分散状態でトナー粒子中に存在させることができる。
【0060】
懸濁重合法に用いられる重合開始剤としては、以下のものを挙げることができる。2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(イソブチレート)等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、ジtert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−へキシルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエートなどの有機過酸化物系重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物系重合開始剤;過酸化水素−第1鉄系、BPO−ジメチルアニリン系、セリウム(IV)塩−アルコール系等のレドックス開始剤。光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ケタール系等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独又は2つ以上組み合わせて使用することができる。
【0061】
重合開始剤の濃度は、重合性単量体100質量部に対して0.1〜20質量部の範囲内である場合が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部の範囲内である。重合開始剤の種類は、10時間半減温度を参考に、単独又は混合して使用される。
【0062】
懸濁重合法で用いられる水系媒体には、分散安定化剤を含有させることが好ましい。分散安定化剤としては、公知の無機系及び有機系の分散安定化剤を用いることができる。無機系の分散安定化剤としては、以下のものが挙げられる。リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ。有機系の分散安定化剤としては、以下のものが挙げられる。ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン。又、ノニオン性、アニオン性、カチオン性の界面活性剤の利用も可能であり、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等が挙げられる。
【0063】
分散安定化剤のうち、酸に対して可溶性のある難水溶性無機分散安定化剤を用いることが好ましい。又、難水溶性無機分散安定化剤を用い、水系分散媒体を調製する場合に、これらの分散安定化剤が重合性単量体100質量部に対して0.2〜2.0質量部の範囲内となるような割合で使用することが、重合性単量体組成物の水系媒体中での液滴安定性の点で好ましい。又、重合性単量体組成物100質量部に対して300〜3000質量部の範囲内の水を用いて水系媒体を調製することが好ましい。
【0064】
難水溶性無機分散安定化剤が分散された水系媒体を調製する場合には、市販の分散安定化剤をそのまま用いて分散させてもよいが、細かい均一な粒度を有する分散安定化剤粒子を得るために、水中にて高速撹拌下に、難水溶性無機分散安定化剤を生成させることが好ましい。例えば、リン酸カルシウムを分散安定化剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散安定化剤を得ることができる。
【0065】
本発明の顔料分散体は、懸濁造粒法によりトナー粒子を製造する場合においても、好適に用いることができる。懸濁造粒法の製造工程では加熱工程を有さないため、低融点ワックスを用いた場合に起こる樹脂とワックス成分の相溶化を抑制し、相溶化に起因するトナーのガラス転移温度の低下を防止することができる。又、懸濁造粒法は、結着樹脂となるトナー材料の選択肢が広く、一般的に定着性に有利とされるポリエステル樹脂を主成分にすることが容易である。そのため、懸濁重合法を適用できない樹脂組成のトナーを製造する場合に有利な製造方法である。
【0066】
懸濁造粒法により製造されるトナー粒子は、例えば下記のようにして製造される。まず、顔料分散体、結着樹脂、ワックス成分等を、溶剤中で混合して溶剤組成物を調製する。次に、該溶剤組成物を水系媒体中に分散して溶剤組成物の粒子を造粒してトナー粒子懸濁液を得る。そして、得られた懸濁液を加熱、又は減圧によって溶剤を除去することでトナー粒子を得ることができる。
【0067】
前記工程における溶剤組成物は、着色剤を第1の溶剤に分散させた分散液を、第2の溶剤と混合して調製されたものであることが好ましい。即ち、顔料組成物を含む着色剤を第1の溶剤により十分に分散させた後で、他のトナー材料と共に第2の溶剤と混合することにより、顔料をより良好な分散状態でトナー粒子中に存在させることができる。
【0068】
懸濁造粒法に用いることができる溶剤としては、以下のものが挙げられる。トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等の含ハロゲン炭化水素類;メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ベンジルアルコールエチルエーテル、ベンジルアルコールイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類。これらの溶剤を単独又は2種類以上混合して用いることができる。上記溶剤のうち、トナー粒子懸濁液中の溶剤を容易に除去するため、沸点が低く、且つ結着樹脂を十分に溶解できる溶剤を用いることが好ましい。
【0069】
溶剤の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、50〜5000質量部の範囲内である場合が好ましく、120〜1000質量部の範囲内である場合がより好ましい。
【0070】
懸濁造粒法で用いられる水系媒体は、分散安定化剤を含有させることが好ましい。該分散安定化剤としては、懸濁重合法で挙げた分散安定化剤と同様のものを用いることができる。
【0071】
トナーは、重量平均粒径D4が4.0〜8.0μmの範囲内であり、重量平均粒径D4と個数平均粒径D1の比(以下、D4/D1ともいう)が1.35以下であることが好ましい。さらには、重量平均粒径D4が4.9〜7.5μmの範囲内であり、D4/D1が1.30以下であることがより好ましい。なお、トナーの重量平均粒径D4と個数平均粒径D1は、トナー粒子の製造方法によってその調整方法は異なる。例えば、懸濁重合法の場合は、水系分散媒体調製時に使用する分散剤濃度や反応撹拌速度、又は反応撹拌時間等をコントロールすることによって調整することができる。
【0072】
フロー式粒子像分析装置で測定されるトナーの平均円形度は、0.950〜0.995の範囲内であることが好ましく、0.960〜0.990の範囲内であることがトナーの転写性が大幅に改善される点からより好ましい。
【0073】
本発明のイエロートナーは、磁性材料を含有した磁性トナーとしても用いることができる。このような磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトのような酸化鉄、又は他の金属酸化物を含む酸化鉄、Fe、Co、Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、Vのような金属との合金及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0074】
<液体現像剤>
以下、本発明の顔料分散体は、液体現像法に用いられる現像剤(以下液体現像剤と呼ぶ)に用いる事が出来る。以下、液体現像剤の製造方法について説明する。
【0075】
液体現像剤を得るには、一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表されるイエロー顔料、分散剤として用いられる分散剤樹脂、さらに必要に応じて、荷電制御剤、ワックス等の助剤を、電気絶縁性担体液に分散又は溶解させて製造する。又、先に、濃縮トナーを作り、さらに電気絶縁性担体液で希釈して現像剤を調製する、二段法で調製してもよい。
【0076】
分散機としては、特に限定されるものではないが、例えば、回転せん断型ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等が好ましく用いられる。
【0077】
着色剤は単独、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0078】
樹脂及びワックスは、前記と同様のものが用いられる。
【0079】
荷電制御剤としては、静電荷現像用液体現像剤に用いられているものであれば、特に制限される事はないが、例えば、ナフテン酸コバルト,ナフテン酸銅,オレイン酸銅,オレイン酸コバルト,オクチル酸ジルコニウム,オクチル酸コバルト,ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム,ドデシルべンゼンスルホン酸カルシウム,大豆レシチン,アルミニウムオクトエート等が挙げられる。
【0080】
電気絶縁性担体液としては、ヘキサン、ペンタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンのような脂肪族炭化水素溶剤、アイソパーH,G,K,L,M(エクソンモービルケミカル製)、リニアレンダイマーA−20、A−20H(出光興産(株)製)等、沸点が68〜250℃の温度範囲のものが好ましい。これらは、系の粘度が高くならない範囲で単独、又は、2種以上を併用して用いてもよい。
【実施例】
【0081】
実施例において、「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。得られた反応生成物の同定は、下記に挙げる装置を用いた複数の分析方法によって行った。分析装置としては、H及び13C核磁気共鳴分光分析(ECA−400、日本電子(株)製)、LC/TOF MS(LC/MSD TOF、Agilent Technologies社製)を用いた。
【0082】
[一般式(1)で表される化合物の製造]
一般式(1)で表される化合物として、化合物(1)、(4)、(5)、(7)、(11)、(12)、(13)を、下記の様にして得た。なお、本実施例における化合物(1)、(4)、(5)、(7)、(11)、(12)、(13)は、前述した一般式(1)で表される化合物の具体例における化合物(1)、(4)、(5)、(7)、(11)、(12)、(13)と対応している。
【0083】
化合物(1)としては、商品名「リカクリア PC1」(新日本理化株式会社製)を入手し、これを用いた。
【0084】
<製造例1>
[化合物(4)の製造]
クレゾール13.0g(120mmol)、1,2,3−プロパントリカルボン酸7.0g(40mmol)、三酸化二ホウ素1.0g(14.4mmol)のキシレン150mL溶液にn−ドデシルアミン44.5g(240mmol)を添加し、6時間加熱還流させ脱水させた。反応終了後、減圧下濃縮した後、アセトニトリル150mLで、50℃で1時間攪拌させ懸濁洗浄を行った。固体をろ過し、化合物(4)10.0g(収率37%)を得た。
【0085】
[化合物(4)の分析結果]
[1]H NMR(400MHz、DMSO−d、室温):δ[ppm]=0.85(t、9H、J=6.64Hz)、1.17(m、60H)、2.50(t、11H、J=1.83Hz)、7.64(s、1H)、8.03(s、1H)、10.8(s、1H)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=676.6414(M−H)
【0086】
<製造例2>
[化合物(5)の製造]
化合物(4)の製造例におけるn−ドデシルアミンを、2−エチルヘキシルアミンに変更したこと以外は、製造例1と同様に製造し、化合物(5)7.3g(収率36%)を得た。
【0087】
[化合物(5)の分析結果]
[1]H NMR(400MHz、DMSO−d、室温):δ[ppm]=0.80(td、9H、J=7.44、3.51Hz)、0.86(t、9H、J=6.87Hz)、1.2(t、24H、8.47Hz)、1.32(dd、3H、J=11.7、5.72Hz)、2.10(dd、2H、J=14.7、6.87Hz)、2.32(dd、2H、J=14.9、8.01Hz)、2.50(t、1H、J=1.83Hz)、2.96(dtd、6H、J=39.1、13.1、6.41Hz)、7.60(t、1H、6.00Hz)、7.68(t、2H、6.00Hz)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=508.4524(M−H)
【0088】
<製造例3>
[化合物(7)の製造]
化合物(4)の製造例におけるn−ドデシルアミンを、3−ブトキシプロピルアミンに変更したこと以外は、製造例1と同様に製造し、化合物(7)4.8g(収率23%)を得た。
【0089】
[化合物(7)の分析結果]
[1]H NMR(400MHz、DMSO−d、室温):δ[ppm]=0.92−0.82(m、9H)、1.3(td、6H、J=14.9、7.48Hz)、1.46(dt、6H、J=15.7、5.95Hz)、1.57(td、6H、J=13.3、6.4Hz)、2.07(dd、2H、J=14.7、6.41Hz)、2.28(dd、2H、J=14.7、7.79Hz)、2.5(t、1H、J=1.60Hz)、2.99(tt、7H、J=22.4、7.56Hz)、3.36−3.30(m、12H)、7.72(dt、3H、J=29.5、5.61Hz)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=514.3906(M−H)
なお、化合物(7)の1H NMRスペクトルを図1に示す。
【0090】
<製造例4>
[化合物(11)の製造]
1,2,3−プロパントリカルボン酸3.5g(20mmol)のジメチルホルムアミド0.2mL溶液に塩化チオニル7.3mL(100mmol)を滴下した後、90℃で2時間撹拌した。減圧下濃縮した後、ジクロロメタン40mLで希釈した。この溶液をトリエチルアミン10mL及びジブチルアミン12.2mL(72mmol)のジクロロメタン100mL溶液に滴下し、5日間撹拌した。反応終了後、ジクロロメタン400mLで希釈した後、水、1mol/L塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機層を減圧下濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物(11)7.37g(収率72%)を得た。
【0091】
[化合物(11)の分析結果]
[1]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温):δ[ppm]=0.99−0.84(m、18H)、1.69−1.23(m、24H)、2.53−2.45(m、2H)、2.63−2.55(m、2H)、3.31−3.12(m、10H)、3.46(t、2H、J=8.01Hz)、3.75−3.68(m、1H)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=510.4699(M+H)
【0092】
<製造例5>
[化合物(12)の製造例]
β−アラニン塩酸塩19.4g(126.3mmol)をジクロロメタン150mLに懸濁させ、1,2,3−プロパントリカルボン酸5.56g(31.6mmol)、N−メチルモルホリン13.9mL(126.3mmol)及び1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)24.2g(126.3mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応溶液をジクロロメタン450mLで希釈した後、水、1mol/L塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機層を減圧下濃縮した後、残渣をエタノール及びジエチルエーテルで洗浄することで、化合物(12)11.2g(収率75%)を得た。
【0093】
[化合物(12)の分析結果]
[1]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温):δ[ppm]=2.07(dd、2H、J=14.88、6.64Hz)、2.31(ddd、8H、J=32.06、15.57、8.70Hz)、2.96−2.88(m、1H)、3.20(tt、6H、J=19.23、6.56Hz)、7.75(t、1H、J=5.72Hz)、7.85(t、2H、J=5.50Hz)、12.19(s、3H)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=388.1697(M+H)
【0094】
<製造例6>
[化合物(13)の製造例]
1,2,3−プロパントリカルボン酸3.5g(20mmol)のメタノール80mL溶液に、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン12.6mL(80mmol)及び4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)22.1g(80mmol)を加え、室温で3日間撹拌した。反応溶液を減圧下濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物(13)2.1g(収率20%)を得た。
【0095】
[化合物(13)の分析結果]
[1]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温):δ[ppm]=1.02(tt、18H、J=15.57、6.49Hz)、1.62(dt、6H、J=17.71、5.38Hz)、2.17(s、2H)、2.35(dd、2H、J=14.65、5.04Hz)、2.54−2.44(m、18H)、3.14−3.10(m、1H)、3.28(dq、6H、J=25.87、6.56Hz)、7.56(3H、t、J=5.27Hz)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=513.4603(M+H)
【0096】
[顔料分散体の製造]
<実施例1>
C.I.Pigment Yellow 155(クラリアント社製、商品名「Toner Yellow 3GP」)12部と化合物(1)0.12部の混合物にポリエステル樹脂48部と酢酸エチル120部を混合し、アトライター(日本コークス工業社製)により3時間分散させて、顔料分散体(1)を得た。
【0097】
<実施例2、3>
実施例1において、酢酸エチルをそれぞれトルエン、エチルメチルケトンに変更したこと以外は、顔料分散体の実施例1と同様に製造し、顔料分散体(2)、(3)を得た。
【0098】
<実施例4、5>
実施例1において、化合物(1)をそれぞれ化合物(11)、(12)に変更したこと以外は、顔料分散体の実施例1と同様に製造し、顔料分散体(4)、(5)を得た。
【0099】
<実施例6、7>
実施例1において、ポリエステル樹脂を添加せず、又、酢酸エチルをそれぞれシクロヘキサノン、酢酸エチル/トルエン(60部/60部)混合物に変更した。それ以外は実施例1と同様にして、顔料分散体(6)、(7)を得た。
【0100】
<実施例8〜10>
実施例1において、ポリエステル樹脂を添加せず、又、化合物(1)を用いる代わりにそれぞれ化合物(7)、(4)、(5)を用い、酢酸エチルをスチレン/キシレン(70部/50部)混合物に変更した。それ以外は実施例1と同様にして、顔料分散体(8)、(9)、(10)を得た。
【0101】
<実施例11>
C.I.Pigment Yellow 155 6部、化合物(1)0.06部、ドデシル硫酸ナトリウム1.2部の混合物に水60部を混合し、アトライター(日本コークス工業社製)により3時間分散させて、顔料分散体(11)を得た。
【0102】
<実施例12>
実施例11において、化合物(1)を化合物(13)に変更したこと以外は、実施例11と同様にして、顔料分散体(12)を得た。
【0103】
<比較例1〜7>
実施例1、2、3、6、7、8、11において、化合物(1)又は化合物(7)を入れない事以外は実施例1、2、3、6、7、8、11と同様な操作で、それぞれ比較用顔料分散体(1)〜(7)を得た。
【0104】
[分散性評価]
粒度測定器(グラインドメーター)(テスター産業株式会社)を用い、顔料分散体における顔料の粒の大きさを測定する事によって、顔料分散体の分散性を評価した。顔料の粒の大きさが、2.5μm未満であれば、良好な分散性であると判断した。
A:顔料の粒の大きさが、2.5μm未満である。
B:顔料の粒の大きさが、2.5μm以上4.5μm未満である。
C:顔料の粒の大きさが、4.5μm以上である。
【0105】
又、前記顔料分散体をアルミ基板上に展開し、溶媒を自然乾燥によって除去したサンプルを走査電子顕微鏡 S−4800(日立製作所社製)によって100,000倍に拡大観察して分散性を確認した。
【0106】
実施例1〜12及び比較例1〜7で用いた材料や評価結果を、表1に示す。(表1において、顔料のPY155とは、C.I.Pigment Yellow 155を表す。又、粒度とは、顔料分散体における顔料の粒の大きさを表す。)
【0107】
【表1】

【0108】
表1より明らかなように、実施例1〜12の顔料分散体は、一般式(1)で示される化合物を用いなかった比較用顔料分散体と比較して、分散媒中での着色剤の分散性に優れている。
【0109】
<実施例13>
C.I.Pigment Yellow 155 12部と化合物(1)0.12部の混合物にスチレン120部を混合し、アトライター(日本コークス工業社製)により3時間分散させて、顔料分散体(13)を得た。
【0110】
<実施例14>
実施例13において、化合物(1)の使用量を0.12部から1.2部に変更したこと以外は、実施例13と同様にして、顔料分散体(14)を得た。
【0111】
<実施例15〜18>
実施例13において、化合物(1)をそれぞれ化合物(4)、(5)、(7)、(11)に変更したこと以外は、実施例13と同様にして、顔料分散体(15)〜(18)を得た。
【0112】
<実施例19>
実施例13において、C.I.Pigment Yellow 155を、C.I.Pigment Yellow 155/C.I.Pigment Yellow 180(96部/24部)の混合物に変更したこと以外は、実施例13と同様にして、顔料分散体(19)を得た。
【0113】
<実施例20>
実施例19において、化合物(1)を化合物(12)に変更したこと以外は、実施例19と同様にして、顔料分散体(20)を得た。
【0114】
<実施例21>
実施例13において、C.I.Pigment Yellow 155を、C.I.Pigment Yellow 155/C.I.Pigment Yellow 185(90部/30部)の混合物に変更したこと以外は、実施例13と同様にして、顔料分散体(21)を得た。
【0115】
<実施例22>
実施例21において、化合物(1)を化合物(13)に変更したこと以外は、実施例21と同様にして、顔料分散体(22)を得た。
【0116】
<比較例8>
実施例13において、化合物(1)を入れない事以外は、実施例13と同様にして、比較用顔料分散体(8)を得た。
【0117】
<比較例9>
実施例19において、化合物(1)を入れない事以外は、実施例19と同様にして、比較用顔料分散体(9)を得た。
【0118】
<比較例10>
実施例21において、化合物(1)を入れない事以外は、実施例21と同様にして、比較用顔料分散体(10)を得た。
【0119】
[粘度評価]
レオメータPHYSICA MCR 300(Anton Paar社)により、顔料分散体の粘度を測定した。そして、顔料分散体(13)〜(18)は比較用顔料分散体(8)に対して、顔料分散体(19)、(20)は比較用顔料分散体(9)に対して、顔料分散体(21)、(22)は比較用顔料分散体(10)に対しての粘度低下率を、それぞれ求めた。
【0120】
コーンプレート型測定治具:75mm径、1°
せん断速度:10s−1
A:比較用顔料分散体に対する粘度低下率が、20%以上である。
B:比較用顔料分散体に対する粘度低下率が、10%以上20%未満である。
C:比較用顔料分散体に対する粘度低下率が、10%未満である。
【0121】
[分散性評価]
粒度測定器(グラインドメーター)(テスター産業株式会社)を用い、顔料分散体における顔料の粒の大きさを測定する事によって、顔料分散体の分散性を評価した。評価基準については、上記分散性の評価法と同様である。
【0122】
又、前記顔料分散体をアルミ基板上に展開し、溶媒を自然乾燥によって除去したサンプルを走査電子顕微鏡 S−4800(日立製作所社製)によって100,000倍に拡大観察して分散性を確認した。顔料分散体(13)について、上記の方法で観察した際のSEM写真を図2に示す。
【0123】
実施例13〜22及び比較例8〜10で用いた材料や評価結果を、表2に示す。(表2において、PY155、PY180、PY185は、それぞれC.I.Pigment Yellow 155、180、185を表す。又、粒度とは、顔料分散体における顔料の粒の大きさを表す。)
【0124】
【表2】

【0125】
表2より明らかなように、実施例13〜22の顔料分散体は、対応する比較用顔料分散体と比較して、顔料分散体の粘度の増加が抑制されている。つまり、顔料分散体のハンドリング性が改善されている。又、分散媒中での顔料の分散性にも優れている。
【0126】
[イエロートナーの製造]
<実施例23>
高速撹拌装置T.K.ホモミキサー(プライミクス株式会社製)を備えた2L用四つ口フラスコ中に、イオン交換水710部と0.1mol/l−リン酸三ナトリウム水溶液450部を添加し、回転数を12000rpmに調製し、60℃に加温した。ここに1.0mol/l−塩化カルシウム水溶液68部を徐々に添加し、微小な難水溶性分散安定剤リン酸カルシウムを含む水系分散媒体を調製した。
・顔料分散体(13):133.2部
・スチレン単量体:46.0部
・n−ブチルアクリレート単量体:34.0部
・サリチル酸アルミニウム化合物:2.0部
(オリエント化学工業株式会社製 ボントロンE−88)
・極性樹脂:10.0部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとイソフタル酸との重縮合物、Tg:65℃、Mw:10000、Mn:6000)
・エステルワックス:25.0部
(DSC測定における最大吸熱ピークのピーク温度:70℃、Mn:704)
・ジビニルベンゼン単量体:0.10部
【0127】
上記材料を60℃に加温し、T.K.ホモミキサーを用いて5000rpmにて均一に溶解・分散した。これに重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、回転数12000rpmを維持しつつ15分間造粒した。その後、高速撹拌器からプロペラ撹拌羽根に撹拌器を変え、液温60℃で重合を5時間継続させた後、液温を80℃に昇温させ、さらに8時間重合を継続させた。重合反応終了後、80℃、減圧下で残存単量体を留去した後、液温を30℃まで冷却し、重合体微粒子分散体を得た。
【0128】
次に、重合体微粒子分散体を洗浄容器に移し、撹拌しながら、希塩酸を添加してpH1.5に調整し、2時間撹拌した。濾過器で固液分離を行い、重合体微粒子を得た。重合体微粒子の水への再分散と固液分離とを、リン酸カルシウムを含むリン酸とカルシウムの化合物を十分に除去されるまで、繰り返し行った。その後に、最終的に固液分離した重合体微粒子を、乾燥機で十分に乾燥してイエロートナー母粒子(1)を得た。
【0129】
得られたイエロートナー母粒子(1)100部に対し、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカ微粉体(数平均一次粒子径7nm)1.00部、ルチル型酸化チタン微粉体(数平均一次粒子径45nm)0.15部、ルチル型酸化チタン微粉体(数平均一次粒子径200nm)0.50部をヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)で5分間乾式混合して、イエロートナー(1)を得た。
【0130】
<実施例24>
実施例23において、サリチル酸アルミニウム化合物を添加しないこと以外は、実施例23と同様にして、イエロートナー(2)を得た。
【0131】
<実施例25〜28>
実施例23において、顔料分散体(13)を顔料分散体(15)、(16)、(17)、(18)に変更したこと以外は、実施例23と同様にして、それぞれイエロートナー(3)〜(6)を得た。
【0132】
<実施例29>
実施例23において、顔料分散体(13)を顔料分散体(20)に変更したこと以外は、実施例23と同様にして、イエロートナー(7)を得た。
【0133】
<実施例30、31>
実施例23において、顔料分散体(13)を顔料分散体(21)、(22)に変更したこと以外は、実施例23と同様にして、それぞれイエロートナー(8)、(9)を得た。
【0134】
<比較例11>
実施例24において、顔料分散体(13)を比較用顔料分散体(8)に変更したこと以外は、実施例24と同様にして比較用イエロートナー(1)を得た。
【0135】
<比較例12>
実施例23において、顔料分散体(13)を比較用顔料分散体(9)に変更したこと以外は、実施例23と同様にして比較用イエロートナー(2)を得た。
【0136】
<比較例13>
実施例23において、顔料分散体(13)を比較用顔料分散体(10)に変更したこと以外は、実施例23と同様にして比較用イエロートナー(3)を得た。
【0137】
[トナー評価]
(1)トナーの重量平均粒径D4、及び個数平均粒径D1の測定
上記トナーの個数平均粒径(D1)及び重量平均粒径(D4)を、コールター法による粒度分布解析にて測定した。測定装置として、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、該装置の操作マニュアルに従い測定を行った。電解液としては、ISOTON−II(ベックマン・コールター社製)を用いた。具体的な測定方法としては、前記電解水溶液100ml中に、分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を、0.1ml程度加え、更に測定試料(トナー)を2mg程度加えた。試料を懸濁した電解液に対して、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行った。得られた分散処理液を、アパーチャーとして100μmアパーチャーを装着した前記測定装置により、2.00μm以上のトナーの体積、個数を測定してトナーの体積分布と個数分布とを算出した。トナーの個数分布から求めた個数平均粒径(D1)と、トナーの体積分布から求めたトナーの重量平均粒径(D4)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)及びD4/D1を求めた。
【0138】
上記チャンネルとしては、2.00〜2.52μm、2.52〜3.17μm、3.17〜4.00μm、4.00〜5.04μm、5.04〜6.35μm、6.35〜8.00μm、8.00〜10.08μm、10.08〜12.70μm、12.70〜16.00μm、16.00〜20.20μm、20.20〜25.40μm、25.40〜32.00μm、32.00〜40.30μmの13チャンネルを用いた。
【0139】
(2)トナーの平均円形度の測定
フロー式粒子像測定装置「FPIA−2100型」(シスメックス株式会社製)を用いて測定を行った。円形度は、下式を用いて算出した。
円相当径=(粒子投影面積/2/π)1/2
円形度=(粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
ここで、「粒子投影面積」とは二値化されたトナー粒子像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」とは該トナー粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さと定義する。円形度は粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、粒子が完全な球形の場合には1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
【0140】
(3)トナーの着色性評価
常温常湿環境(温度25℃/湿度60%RH)下において、最大トナー乗り量を0.45mg/cmに調整した16階調画像サンプルを、カラー複写機CLC−1100改造機(キヤノン(株)製、定着オイル塗布機構を省いた)を用いて準備した。このとき、画像サンプルの基紙としては、CLCカラーコピー用紙(キヤノン(株)製)を用いた。得られた画像サンプルをSpectroLino(GretagMacbeth社製)にて分析した。分析結果はイエロー色の濃度OD(Y)で評価した。OD(Y)が、1.6以上であれば、良好な着色性であると判断した。
A:OD(Y)が1.6以上である。
B:OD(Y)が1.5以上〜1.6未満である。
C:OD(Y)が1.5未満である。
【0141】
実施例23〜31及び比較例11〜13で用いた材料や評価結果を、表3に示す。(表3において、PY155、PY180、PY185は、それぞれC.I.Pigment Yellow 155、180、185を表す。)
【0142】
【表3】

【0143】
表3より明らかなように、実施例23〜31の顔料分散体を用いて製造したトナーは、良好な着色力を示した。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明によれば、分散媒体中での着色剤の分散性に優れた顔料分散体を得ることができる。該顔料分散体を、塗料、インキ、トナー、樹脂成型品にも使用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散媒体中に、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表されるイエロー顔料を含有する顔料分散体。
【化1】


[一般式(1)において、R、R、R、R’、R’及びR’は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。]
【化2】


[一般式(2)において、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12及びR13は、各々独立して、水素原子、アルキル基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基又はハロゲン原子を表し、R14、R15、R16及びR17は、各々独立して、水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表す。]
【請求項2】
前記一般式(1)において、R、R及びRが同一の置換基であり、R’、R’及びR’が同一の置換基である請求項1に記載の顔料分散体。
【請求項3】
前記一般式(1)において、R、R及びRがアルキル基であり、R’、R’及びR’が水素原子である請求項1又は2に記載の顔料分散体。
【請求項4】
前記一般式(2)で表されるイエロー顔料が、C.I.ピグメントイエロー155である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の顔料分散体。
【請求項5】
結着樹脂、イエロー顔料及びワックス成分を含有するトナー粒子を有するイエロートナーであって、該トナー粒子の製造工程において、請求項1〜4のいずれか1項に記載の顔料分散体を用いることを特徴とするイエロートナー。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−214724(P2012−214724A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−65664(P2012−65664)
【出願日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】