説明

顔料製剤の製造方法

顔料製剤の製造方法は、
(a)少なくとも1種の顔料を、
(b)少なくとも150000g/モルの平均分子量Mwを有し、少なくとも1種のエチレン性不飽和C3〜C10カルボン酸の少なくとも1種のC1〜C10アルキルエステル又は少なくとも1種のω−ヒドロキシ−C2〜C4アルキレンエステル又は少なくとも1種の芳香族ビニル化合物を、共重合された形態で含む少なくも1種のエマルジョン共重合体、及び
(c)水、
の存在下、装置中で分散させる工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
(a)少なくとも1種の顔料を、
(b)少なくとも150000g/モルの平均分子量Mwを有し、少なくとも1種のエチレン性不飽和C3〜C10カルボン酸の少なくとも1種のC1〜C10アルキルエステル又は少なくとも1種のω−ヒドロキシ−C2〜C4アルキレンエステル又は少なくとも1種の芳香族ビニル化合物を、共重合された形態で含む少なくも1種のエマルジョン共重合体、及び
(c)水、
の存在下、装置中で分散させる工程を含む顔料製剤の製造方法に関する。
【0002】
更に本発明は、本発明の方法により製造される顔料製剤、及び本発明の顔料製剤を繊維質の支持体の着色に使用する方法に関する。更に本発明は、本発明の顔料製剤を使用することにより着色される繊維質の支持体に関する。
【背景技術】
【0003】
繊維質の支持体、例えばテキスタイル支持体及び/又はセルロース系支持体を着色する従来の方法の形で使用される着色製剤(colorant preparation)は、厳しい要求を満たす必要がある。着色された繊維質の支持体は、高い輝度を示し、そして着色は、長持ちする、すなわち高い堅牢度、例えば摩擦堅牢度及び日光堅牢度を有する必要がある。更に、セルロース系支持体等の木材の場合、着色剤は、木材に対して所定の割合で浸透し、そして表面上に単に残留しないことが必要である。組み込まれると、着色剤は、もはや移動しない。
【0004】
着色製剤は、成分として、少なくとも1種の着色剤、例えば顔料と、少なくとも1種の、屡々、低分子量の界面活性剤から選択される分散剤と、を含むのが一般的である。また、ポリマーを分散剤として使用する試みがなされた。着色製剤は、高分子量のバインダーを、例えば、ポリマーの水性分散液の形で含んでいても良い。かかる分散液は、対応の着色製剤を支持体に施すと、特定の支持体に対する顔料の間接的な付着を保証することによって、染色に持続性を提供する。かかる付着は、通常の分散剤によって達成不可能であるのが一般的である。
【0005】
しかしながら、課題は、相当なコスト及び不都合にて、かかる着色製剤、すなわち、着色剤及び高分子量バインダーが極めて不均一に分散され、そして特に対応の支持体に対する染色の後、一の成分の局所的な強化と同時に、他の成分の局所的な枯渇が不可避であるような着色製剤を製造することにある。
【0006】
US2002/0132890は、100000g/モル以下の分子量Mwを有し、特に少なくとも1種のポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを共重合された形態で有するポリマーが使用される方法を開示している。一の不都合は、US2002/0132890に記載されるポリマーの合成が極めて高価で且つ不都合なことである。
【0007】
【特許文献1】US2002/0132890
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、従来技術から知られている課題を回避する顔料製剤の製造方法を提供することにある。更に本発明の目的は、新規な顔料製剤を提供することにある。更に別の本発明の目的は、顔料製剤の使用法を提供することにある。
【0009】
本発明者等は、上記の目的が冒頭に規定される方法によって達成されることを見出した。
【0010】
少なくとも150000g/モルの平均分子量Mwを有し、少なくとも1種のエチレン性不飽和C3〜C10カルボン酸の少なくとも1種のC1〜C10アルキルエステル又は少なくとも1種のω−ヒドロキシ−C2〜C4アルキレンエステル又は少なくとも1種の芳香族ビニル化合物を、共重合された形態(interpolymerized form)で含むエマルジョン共重合体(b)は、以後、手短にエマルジョン共重合体(b)と称される。
【0011】
本発明の方法は、固体の物を分散可能である装置を使用して行われる。振動装置及びミルが好ましい。振動装置の適例は、Skandex社の装置である。ミルの例示は、2、3、4又は5個のローラーミル、摩砕器、ミニミル(minimill)、振動ミル、歯付きミル、ビーズミル、湿式ミル、サンドミル、コロイドミル、ボールミル、特に撹拌ボールミルである。
【0012】
本発明の方法が振動装置又はミル、例えばボールミル、特に撹拌ボールミルにおいて行われる場合、振動装置又はミルには、粉砕媒体にて、例えばボール又はビーズの形で充填されていても良い。ボール又はビーズは、例えばガラス、二酸化ジルコニウム又はケイ素−アルミニウム−ジルコニウム混合酸化物からなり、そして0.3〜3mmの範囲の平均直径を有していても良い。
【0013】
本発明の方法は、
(a)少なくとも1種の顔料を、
(b)少なくとも150000g/モルの平均分子量Mwを有し、少なくとも1種のエチレン性不飽和C3〜C10カルボン酸の少なくとも1種のC1〜C10アルキルエステル又は少なくとも1種のω−ヒドロキシ−C2〜C4アルキレンエステル又は少なくとも1種の芳香族ビニル化合物を、共重合された形態で含む少なくも1種のエマルジョン共重合体、及び
(c)水、
の存在下で分散させることによって行われる。
【0014】
顔料は、50〜10000nmの範囲、更に好ましくは100〜1000nmの範囲、更にいっそう好ましくは500nm以下の平均二次粒径に分散されるのが好ましい。
【0015】
二次粒子の直径の分散は、所望により広く又は狭く調節されても良い。
【0016】
顔料(a)の分散中、エマルジョン共重合体(b)の平均粒径は、凝集によって外見上は増大しても良い。顔料(a)の分散中、エマルジョン共重合体(b)の平均粒径は、解砕により低減するのが好ましい。しかしながら、エマルジョン共重合体(b)の平均粒径は、本発明の方法の実施による影響を実質的に受けないままでいることも好ましい。
【0017】
本発明の方法の実施において、分散により、顔料(a)とエマルジョン共重合体(b)の共混合を行うのが一般的である。
【0018】
本発明の方法は、顔料(a)、エマルジョン共重合体(b)及び水(c)を相互に混合し、その後、混合物を、装置において、上述の装置を通過する多数の管に通過させるか、又は混合物を上述の装置に再循環させるか、又は混合物を所定の粉砕時間に亘って装置に残すことによって行われても良い。
【0019】
本発明の方法は、少なくとも1種の、好ましくは粒状の顔料(a)から開始する。本発明の場合の顔料(a)は、ドイツ工業規格55944における定義に準拠して、実質的に不溶性で、微粒化された、有機又は無機着色剤である。
【0020】
顔料(a)は、無機顔料から選択可能であり、有機顔料から選択されるのが好ましい。
【0021】
具体的に選択される無機顔料は、白色顔料、黒色顔料及び有彩顔料、例えば、以下のものである:
酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポン、鉛白、硫酸鉛、チョーク、二酸化チタン(C.I.ピグメントホワイト6)、顔料仕様の酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カオリン、
酸化鉄イエロー、カドミウムイエロー、ニッケル・チタンイエロー、クロム・チタンイエロー(C.I.ピグメントブラウン24)、クロムイエロー、クロム酸鉛、バナジウム酸ビスマス、ナポリイエロー又は亜鉛イエロー、
ウルトラマリーンブルー、コバルトブルー、マンガンブルー、鉄ブルー、
ウルトラマリーングリーン、コバルトグリーン(C.I.ピグメントグリーン50)、酸化クロム(酸化クロムグリーン)、酸化クロムグリーンの水化物、クロムグリーン(C.I.ピグメントグリーン48)、ウルトラマリンバイオレット、マンガンバイオレット;
ウルトラマリーンレッド、モリブデンレッド、クロムレッド、カドミウムレッド(C.I.ピグメントレッド108)、酸化鉄レッド(C.I.ピグメントレッド101)、硫化セリウム、
酸化鉄ブラウン(C.I.ピグメントブラウン6及び7)、クロム・鉄ブラウン、亜鉛・鉄ブラウン、マンガン・チタンブラウン、混合ブラウン、
酸化鉄ブラック、鉄−マンガンブラック、スピネルブラック(C.I.ピグメントブラック27)、カーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)、
オレンジスピネル及びコランダム(C.I.ピグメントブラウン29、31、33、34、35、37、39及び40)、カドミウムオレンジ、クロムオレンジ、モリブデン酸鉛;
アルミニウム又はCu−Zn合金。
【0022】
カーボンブラック、炭酸カルシウム、カオリン、酸化鉄の顔料、例えば酸化鉄イエロー、酸化鉄ブラウン及び酸化鉄ブラック、酸化亜鉛並びに二酸化チタンが好ましい。
【0023】
好適なカーボンブラックは、特に、ガスブラック法、ランプブラック法又はファーネスブラック法によって製造されるカーボンブラックである。
【0024】
本発明により使用されるカーボンブラックのBET表面積は、ドイツ工業規格66131/2又はISO4652に従って測定され、例えば20〜2000m2/gの範囲であっても良い。
【0025】
本発明により使用されるカーボンブラックは、例えば酸化によって表面変性されていても良い。本発明により使用されるカーボンブラックは、酸性及び/又は塩基性の基、例えばカルボキシル基、ラクトール基、フェノール基、キノン基、例えばピロン様構造を有する塩基性の酸化物を含むことが可能である。
【0026】
本発明の一実施の形態において、顔料(a)は、光沢顔料、すなわち、1層以上を有して構成され、色彩の作用が、干渉、反射及び吸収現象の相互作用によって特徴付けられる小板状の顔料を含む。適例は、アルミニウム小板並びに特に金属酸化物で1回以上被覆されるアルミニウム、鉄及び雲母の小板である。
【0027】
以下、バット染料も含む、具体的に選択される有機顔料は、以下のものである:
モノアゾ顔料、例えばC.I.ピグメントブラウン25;C.I.ピグメントオレンジ5、13、36及び67;C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、8、9、12、17、22、23、31、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、52:1、52:2、53、53:1、53:3、57:1、63、112、146、170、175、184、185、187、191.1、208、210、245、247及び251;C.I.ピグメントイエロー1、3、62、65、73、74、65、97、120、151、154、168、181、183及び191;
ジスアゾ顔料、例えばC.I.ピグメントオレンジ16、34、44及び72;C.I.ピグメントレッド144、166、214及び242;C.I.ピグメントイエロー12、13、14、16、17、81、83、106、113、126、127、155、174、176、180及び188;
ジスアゾ縮合顔料、例えばC.I.ピグメントイエロー93、95及び128、C.I.ピグメントレッド144、166、214、220、221、242及び262、C.I.ピグメントブラウン23及び41;
アンサンスロン顔料、例えばC.I.ピグメントレッド168及びC.I.バットオレンジ3;
アントラキノン顔料、例えばC.I.ピグメントイエロー147、177及び199;C.I.ピグメントバイオレット31;
アントラピリミジン(anthrapyrimidine)顔料、例えばC.I.ピグメントイエロー108、C.I.バットイエロー20;
キナクリドン顔料、例えばC.I.ピグメントレッド122、202、206及び209;C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントオレンジ48及び49;
キノフタロン顔料、例えばC.I.ピグメントイエロー138;
ジケトピローロピロール(diketopyrrolopyrrole)顔料、例えばC.I.ピグメントオレンジ71、73及び81;C.I.ピグメントレッド254、255、264、270及び272;
ジオキサジン顔料、例えばC.I.ピグメントバイトレット23及び37;C.I.ピグメントブルー80;
フラバンスロン顔料、例えばC.I.ピグメントイエロー24、C.I.バットイエロー1;
インダンスロン顔料、例えばC.I.ピグメントブルー60及び64、C.I.バットブルー4及び6;
イソインドリン顔料、例えばC.I.ピグメントオレンジ61及び69;C.I.ピグメントレッド260;C.I.ピグメントイエロー139及び185;
イソインドリノン顔料、例えばC.I.ピグメントオレンジ61;C.I.ピグメントレッド257及び260;C.I.ピグメントイエロー109、110、173及び185;
イソビオラントロン顔料、例えばC.I.ピグメントバイオレット31及びC.I.バットバイオレット1;
金属錯体顔料、例えばC.I.ピグメントイエロー117、129、150、153及び177、C.I.ピグメントグリーン8、C.I.ピグメントレッド257;
ペリノン顔料、例えばC.I.ピグメントオレンジ43、C.I.バットオレンジ7、C.I.ピグメントレッド194、C.I.バットレッド15;
ペリレン顔料、例えばC.I.ピグメントブラック31及び32;C.I.ピグメントレッド123、149、178、179、190及び224、C.I.バットレッド23、190、29及び224;C.I.ピグメントバイトレット29;
フタロシアニン顔料、例えばC.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6及び16;C.I.ピグメントグリーン7及び36;
ピランスロン顔料、例えばC.I.ピグメントオレンジ51;C.I.ピグメントレッド216及びC.I.バットオレンジ4;
ピラゾロキナゾロン顔料、例えばC.I.ピグメントオレンジ67及びピグメントレッド251;
チオインジゴ顔料、例えばC.I.ピグメントレッド88及び181、C.I.バットレッド1;C.I.ピグメントバイトレット38及びC.I.バットレッド3;
トリアリールカルボニウム顔料、例えばC.I.ピグメントブルー1、61及び62;C.I.ピグメントグリーン1;C.I.ピグメントレッド81、81:1及び169;C.I.ピグメントバイオレット1、2、3及び27;
C.I.ピグメントブラック1(アニリンブラック);
C.I.ピグメントイエロー101(アルダジン(aldazine)イエロー);
C.I.ピグメントブラウン22。
【0028】
特に好ましい有機顔料は、例えば、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントブルー15:3及び15:4、C.I.ピグメントブラック7、C.I.ピグメントオレンジ5、38及び43並びにピグメントグリーン7である。
【0029】
本発明によると、2種以上の相互に異なる顔料(a)の混合物を用いて開始することも可能である。
【0030】
開始顔料(a)は、粒状であり、すなわち、粒子の形である。開始顔料は、例えば、粗な顔料、すなわち合成されたままの未処理顔料である。粒子は、形状に関して規則的又は不規則であっても良いが、これは、例えば、粒子が球形又は実質的に球形であるか、又は針の形(針状)を有しているからである。
【0031】
本発明の一の実施形態は、予備粉砕された顔料(a)を用いて開始する。予備粉砕された顔料は、0.1〜5μmの範囲、好ましくは3μm以下、更に好ましくは1μm以下の平均粒径を有していても良い。
【0032】
本発明の一の実施形態は、例えば予備粉砕中、少なくとも1種の顔料誘導体、例えば顔料スルホン酸、顔料アミドスルホン酸又は顔料のメチレンアミン誘導体で被覆される予備粉砕された顔料(a)を用いて開始する。例えば、顔料(a)は、顔料(a)から誘導される顔料誘導体で被覆されても良い。
【0033】
好適な分散時間は、例えば、10分〜48時間の範囲であるが、より長時間も考えられる。分散時間は、15分〜24時間の範囲であるのが好ましい。
【0034】
分散の圧力及び温度条件は、例えば、大気圧が好適であると見出されたことから、一般に重要ではない。温度に関しては、例えば10〜100℃の範囲の温度が好適であると見出され、好ましくは80℃以下である。
【0035】
本発明によると、顔料(a)は、(b)少なくとも150000g/モル、例えば10000000g/モル以下、好ましくは200000〜2000000g/モルの範囲、更に好ましくは500000〜1000000g/モルの範囲の平均分子量Mwを有し、少なくとも1種のエチレン性不飽和C3〜C10カルボン酸の少なくとも1種のC1〜C10アルキルエステル又は少なくとも1種のω−ヒドロキシ−C2〜C4アルキレンエステル又は少なくとも1種の芳香族ビニル化合物を、共重合された形態で含む少なくとも1種のエマルジョン共重合体の存在下で分散される。
【0036】
少なくとも1種のエチレン性不飽和C3〜C10カルボン酸の特に好適なC1〜C10アルキルエステルは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレートである。
【0037】
少なくとも1種のエチレン性不飽和C3〜C10カルボン酸の特に好適なω−ヒドロキシ−C2〜C4アルキレンエステルは、例えば、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び特に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0038】
特に好適な芳香族ビニル化合物は、例えばα−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン及び特にスチレンである。
【0039】
エマルジョン共重合体(b)は、例えば、少なくとも1種のエチレン性不飽和C3〜C10カルボン酸の少なくとも1種のC1〜C10アルキルエステル及び少なくとも1種の芳香族ビニル化合物を共重合された形態で含んでいても良い。本発明の他の実施形態において、エマルジョン共重合体(b)は、少なくとも1種のエチレン性不飽和C3〜C10カルボン酸の少なくとも1種のC1〜C10アルキルエステル及び少なくとも1種のエチレン性不飽和C3〜C10カルボン酸の少なくとも1種のω−ヒドロキシ−C2〜C4アルキレンエステルを共重合された形態で含んでいても良い。本発明の他の実施形態において、エマルジョン共重合体(b)は、少なくとも1種のエチレン性不飽和C3〜C10カルボン酸の少なくとも1種のω−ヒドロキシ−C2〜C4アルキレンエステル及び少なくとも1種の芳香族ビニル化合物を共重合された形態で含んでいても良い。本発明の他の実施形態において、エマルジョン共重合体(b)は、少なくとも1種のエチレン性不飽和C3〜C10カルボン酸の少なくとも1種のC1〜C10アルキルエステル、及び少なくとも1種のエチレン性不飽和C3〜C10カルボン酸の少なくとも1種のω−ヒドロキシ−C2〜C4アルキレンエステル及び少なくとも1種の芳香族ビニル化合物を共重合された形態で含んでいても良い。
【0040】
本発明の一の実施形態において、本発明により使用されるエマルジョン共重合体(b)は、少なくとも1種の共重合されたエチレン性不飽和C3〜C10カルボン酸を、遊離酸として、又は部分的に若しくは完全に中和された形で含んでいても良い。中和剤の適例は、アルカリ金属の水酸化物及び/又は炭酸塩及び/又は炭酸水素塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリム、炭酸水素カリウム、水酸化リチウム、又は好ましくは1種以上のアミン、例えばアンモニア及び有機アミン、例えばアルキルアミン、N−アルキルエタノールアミン、アルカノールアミン及びポリアミンである。好適なアルキルアミンは、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルアミン、メチルアミン、ピペリジン、モルホリンである。好ましいアミンは、モノアルカノールアミン、N,N−ジアルキルアルカノールアミン、N−アルキルアルカノールアミン、ジアルカノールアミン、N−アルキルアルカノールアミン及びトリアルカノールアミンであり、それぞれ、ヒドロキシアルキル基に2〜18個の炭素原子及びそれぞれ適宜、アルキル基に1〜6個を有し、好ましくは、アルカノール基に2〜6個及び適宜、アルキル基に1又は2個の炭素原子を有する。エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、n−ブチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンが極めて好ましい。
【0041】
本発明の一の実施形態において、少なくとも1種のエマルジョン共重合体(b)は、カチオン性共重合体を含む。本発明の場合、カチオン性共重合体は、少なくとも1個のプロトン化可能な基、例えば自由電子対を有する窒素原子か、又はカチオン性基、例えばポリマー鎖に組み込まれる第四級の窒素原子を含む少なくとも1種の共重合されたエチレン性不飽和化合物を含む共重合体である。
【0042】
カチオン性共重合体は、例えば、アミド−又はアミノ−含有共重合体であっても良い。
【0043】
アミド含有共重合体は、例えば、CO−NH2基、CO−NH(C1〜C4アルキル)基、CO−N(C1〜C4アルキル)2基又は式I:
【0044】
【化1】

【0045】
[但し、tが2〜5の範囲の整数であり、更に好ましくは2又は3である。]
で表される基を有するような共重合体である。
【0046】
アミノ含有共重合体は、例えば、NH2基、NH(C1〜C4アルキル)基又はN(C1〜C4アルキル)2基又はイミダゾール基を有するような共重合体である。
【0047】
本発明の一の実施形態において、カチオン性共重合体は、酸性条件下、例えば6以下のpH値の条件下で少なくとも部分的にプロトン化される。
【0048】
本発明の一の実施形態において、カチオン性共重合体は、少なくとも1種のエチレン性不飽和カルボン酸の1種以上のアミド、例えば(メタ)アクリルアミドの共重合された単位を含むカチオン性共重合体である。
【0049】
本発明の一の実施形態において、カチオン性共重合体は、150000〜10000000g/モルの範囲、好ましくは200000〜2000000g/モルの範囲、更に好ましくは300000〜1000000g/モルの範囲の分子量Mwを有する。
【0050】
本発明の一の実施形態において、カチオン性共重合体は、少なくとも1種の非イオン性コモノマー、例えば、少なくとも1種のエチレン性不飽和C3〜C10カルボン酸の少なくとも1種のω−ヒドロキシ−C2〜C4アルキレンエステル又は少なくとも1種のC1〜C10アルキルエステル、及び1分子あたりに少なくとも1個のプロトン化可能な又は第四級化された窒素原子を有する少なくとも1種のコモノマーから構成される共重合体である。
【0051】
本発明の場合、カチオン性共重合体は、1種以上のアニオン性コモノマー、例えば(メタ)アクリル酸又はクロトン酸を共重合された形態で含んでいても良い。カチオン性共重合体が少なくとも1種のアニオン性モノマーを共重合された形態でも含む場合、カチオン性コモノマーのモル分率は、常に、アニオン性コモノマーのモル分率より高く、例えば、カチオン性共重合体の全体に対して、0.5モル%だけ高く、好ましくは少なくとも1モル%であり、更に好ましくは1.5〜20モル%の範囲である。
【0052】
カチオン性共重合体は、カチオン性の合成エマルジョン共重合体を含むのが好ましい。
【0053】
本発明の方法は、顔料(a)を(c)水の存在下で、例えば、顔料(a)及びエマルジョン共重合体(b)の合計に対して、0.01〜10質量部、好ましくは0.3〜1質量部、更に好ましくは0.5〜0.95質量部の割合で分散させることによって行われる。
【0054】
分散は、1種以上の有機溶剤、好ましくは1種以上の極性溶剤、特に1種以上の1価又は多価アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール又はポリアルキレングリコールの存在下で行われても良いが、その際に、ポリエチレングリコールは、例えば150〜2000g/モルの範囲の分子量Mwを有する。
【0055】
本発明の一の実施形態において、分散は、無極性の有機溶剤の不存在下で行われる。無極性の有機溶剤は、特に、室温条件下で水と完全に混和しないような有機溶剤である。無極性溶剤、例えばシクロヘキサン、トルエン、エチルベンゼン、n−ヘプタン、n−ヘキサン、キシレン、例えばo−キシレン、m−キシレン及びp−キシレンの不存在下での分散が好ましい。“不存在下で”は、無極性溶剤の水準が、使用される水(c)に対して、好ましくは5質量%未満、更に好ましくは1質量%未満であることを意味すると理解されるべきである。
【0056】
本発明の一の実施形態において、使用されるエマルジョン共重合体(b)のいずれも、例えば150〜20000g/モルの範囲の分子量Mwを有するアルキレングリコール、ジアルキレングリコール、トリアルキレングリコール又はポリアルキレングリコールの簡単なエステル化によって得られ、且つアルキレンが、特にエチレン又はプロピレンであり、そして例えば(メタ)アクリル酸でモノエステル化される共重合されたコモノマーを含まない。
【0057】
本発明の一の実施形態において、使用されるエマルジョン共重合体(b)のいずれも、例えば150〜20000g/モルの範囲の分子量Mwを有するモノ−C1〜C20アルキルアルキレングリコール、ジアルキレングリコール、トリアルキレングリコール又はポリアルキレングリコールのエステル化により得られ、且つアルキレンが、特にエチレン又はプロピレンであり、そして例えば(メタ)アクリル酸でエステル化される共重合されたコモノマーを含まない。
【0058】
更に本発明は、本発明の上述した方法によって製造される顔料製剤を提供する。本発明の顔料製剤は、顔料(a)及び共重合体(b)の均一な分散、特に、顔料(a)の粒子の良好な分散及び個体化、更に、着色において、対応の支持体に対する粒子(a)の良好な定着を示し、そして繊維質の支持体に対する着色の場合に極めて有用である。
【0059】
本発明の一の実施形態において、本発明の顔料製剤は、1種以上の添加剤(d)を含んでいても良い。好適な添加剤(d)は、例えば、湿潤剤、分散剤、消泡剤、殺生物剤、沈降防止剤、水分保持剤及びレオロジー変性剤である。
【0060】
湿潤剤の適例は、非イオン性、アニオン性又はカチオン性の界面活性剤、特に、脂肪アルコールのエトキシル化及び/又はプロポキシル化生成物又はプロピレンオキシド−エチレンオキシドブロック共重合体、エトキシル化又はプロポキシル化脂肪又はオキソ合成アルコール、更に、オレイン酸又はアルキルフェノールのエトキシレート、アルキルフェノールエーテルスルフェート、アルキルポリグリコシド、アルキルホスホネート、アルキルフェニルホスホネート、アルキルホスフェート及びアルキルフェニルホスフェートである。
【0061】
分散剤の適例は、アリール−又はアルキル−置換ポリグリコールエーテル、US4218218に記載されるような他の物質及び10〜37の範囲のyを有する同族体(US4218218における式から得られる)、更にはアリールスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合生成物、特にナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合生成物である。
【0062】
消泡剤の適例は、シリコーン消泡剤(siliconic defoamer)、例えば、式HO−(CH23−Si(CH3)[OSi(CH332又はHO−(CH23−Si(CH3)[OSi(CH33][OSi(CH32−OSi(CH33]で表される消泡剤であり、それぞれ、非アルコキシル化であるか、又は20当量以下のアルキレンオキシド、特にエチレンオキシドでアルコキシル化される。シリコーン非含有消泡剤についても好適であり、例えば、多重アルコキシル化アルコール、例えば脂肪アルコールアルコキシレート、好ましくは2〜50回エトキシル化される好ましくは非分岐のC10〜C20アルカノール、非分岐のC10〜C20アルカノール及び2−エチルヘキサン−1−オールである。他の好適な消泡剤は、脂肪酸C8〜C20アルキルエステル、好ましくはC10〜C20アルキルステアレートであり、且つC8〜C20アルキル及び好ましくはC10〜C20アルキルは、分岐であっても、又は非分岐であっても良い。
【0063】
殺生物剤の適例は、Proxelの1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンBIT(Avecia Lim社からProcel(登録商標)銘柄として市販)及びそのアルカリ金属塩であり;他の好適な殺生物剤は、2−メチル−2H−イソチアゾールの3MIT及び5−クロロ−2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オンのCITである。
【0064】
沈降防止剤の適例は、例えば、10〜500nmの範囲の平均粒径(特に、二次粒径)を有するシリケート及びシリカゲルであり、特に、焼成シリカゲルである。好適な焼成シリカゲルは、例えばAerosil(登録商標)銘柄として市販されている。
【0065】
水分保持剤の適例は、尿素及び多価アルコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール及び1,3−プロパンジオールである。
【0066】
レオロジー変性剤の適例は、セルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロースである。
【0067】
1種以上の添加剤(d)を添加するのが望ましい場合、本発明の上述した方法は、1種以上の添加剤(d)の存在下で行われても良い。
【0068】
本発明の一の実施形態において、本発明の顔料製剤は、
5〜70質量%、好ましくは20〜50質量%の顔料(a)と、
1〜70質量%、好ましくは5〜50質量%のエマルジョン共重合体(b)と、
合計して、0〜50質量%、好ましくは3〜20質量%の添加剤(d)と、
[但し、全ての質量%は、本発明の顔料製剤全体を基礎としている。]
を含み、残りが、水(c)であるのが好ましい。
【0069】
更に本発明は、本発明の顔料製剤を支持体、特に繊維質の支持体の着色に使用する方法を提供する。更に本発明は、本発明の少なくとも1種の顔料製剤を使用する、支持体、特に繊維質の支持体の着色方法を提供する。
【0070】
本発明により着色可能な支持体は、所望の材料、例えば自己支持性高分子フィルムから構成されていても良い。更に詳細には、支持体は、繊維質の支持体、例えば皮革又は模造皮革であっても良い。
【0071】
本発明により着色可能な支持体は、更に、セルロース系の支持体を含む。セルロース系の支持体は、以下、更紙及びいわゆる上質紙、厚紙、カード、更には、所望の寸法の木材、例えば、カットウッド製品(cut wood product)、例えば厚板、棒、ブロック、更には木毛、木質の複合材料、カットウッド製品、合板、パーチクル・ボード、中質繊維板(MDF)、配向性ストランドボード(OSB)、木質化一年生植物を基礎とする材料、黄ボール紙並びに繊維材料、例えばアマ、リネン、アサ、ジュート、綿、竹繊維、カジノキの木又は砕木パルプから得られる繊維を意味すると理解されるべきである。本発明の場合、セルロース系の支持体は、例えば板状であるか、又は成形されていても良い。
【0072】
本発明の場合、前駆体は、特に紙前駆体、例えば漂白及び無漂白のパルプ及び砕木パルプ、用紙及びウッドチップである。
【0073】
テキスタイル支持体は、本発明により着色可能である支持体であるのが特に好ましい。本発明の場合、テキスタイル支持体は、テキスタイル繊維、テキスタイル中間物及び最終製品並びにこれらから製造される最終製品であり、これは、衣料産業のテキスタイルと同様に、例えば、カーペット及び他の家庭用織物、更には、工業目的のテキスタイル構造物を含んでいても良い。テキスタイル支持体は、未成形構造物、例えばステープル、直線状の構造物、例えば撚り糸、フィラメント、ヤーン、ヒモ、糸ヒモ、組ヒモ、ロープ類、糸、更には立体構造物、例えばフェルト、織布、ループ式ニット(formed-loop knit)、不織布及び詰め綿も含む。テキスタイルは、天然であっても良く、例えば綿、ウール又はアマであるか、又は合成であっても良く、例えばポリアミド、ポリエステル、変性ポリエステル、ポリエステル混紡布、ポリアミド混紡布、ポリアクリロニトリル、トリアセテート、アセテート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、極細繊維ポリエステル及びガラス繊維織物である。
【0074】
セルロース系の支持体を着色する本発明の方法は、それ自体公知の方法により行われても良い。例えば、紙、板又はカードを着色する場合、本発明の方法は、本発明の顔料製剤を紙、板又はカードと、例えば被覆、噴霧、ディッピング又はソーキングによって接触させることによって行われ得る。
【0075】
本発明の好ましい一の実施形態は、少なくとも1種の、本発明による粒状の顔料製剤を、紙前駆体、例えば用紙に添加する工程を含む。
【0076】
用紙は、例えば2〜10質量%の好ましく漂白されるパルプと、90〜98質量%の水と、を含み、好ましくは更に助剤を含まないのが好ましい。
【0077】
本発明の顔料製剤を用紙に、例えば、用紙全体に対して0.001〜1質量%の量で添加し、その後、用紙を、一般的な手法で紙に加工しても良い。
【0078】
例えば、木材又は木質の支持体を着色する場合、着色は、大気圧下、高圧下、例えば1.1〜20バールの範囲、好ましくは10バール以下、又は減圧下、例えば50〜800ミリバールの範囲、好ましくは100〜650ミリバールの範囲、又は種々の圧力条件の組み合わせにて行われ得る。好適な大気圧法は、例えば、ディッピング及びソーキング法、例えば開放タンク吸引法(open tank suction process)、開放タンク加圧−サッキング法(open tank pressing-sucking process)、開放タンクソーキング(open tank soaking)、温冷ソーキング法(hot and cold soaking process)及び挿入法であり、挿入法により、棒が、バケット残片に最初に挿入され、そして急冷される。高圧下での方法の例示は、閉鎖タンク圧法(closed tank pressure process)である。減圧下での方法の例示は、真空法、二重真空法及びブーシュリー法(Boucherie process)である。
【0079】
種々の圧力条件の組み合わせを用いる方法の例示は、変更圧力法(alternating pressure process)、ルービング法(Reuping process)及び閉鎖タンク加圧−サッキング法(closed tank pressng-sucking process)である。高圧及び減圧の組み合わせを用いるために、振動条件を用いても良いが、これは、本発明の場合、上述の範囲の減圧を上述の範囲の高圧に繰り返し圧力変更することを意味すると理解されるべきである。圧力変更の回数は、例えば、圧力条件を2〜500回まで変更可能であることから、それ自体重大ではない。
【0080】
木材を着色する本発明の方法を行うのに好適な温度は、例えば10〜20℃の範囲であり、室温であるのが好ましい。
【0081】
本発明の一の実施形態において、約0.1〜50kgの処理された顔料、好ましくは30kg以下の処理された顔料を、木材1m3あたりに施す。かかる実施形態は、例えば加圧法を用いる場合に好ましい。
【0082】
本発明の一の実施形態は、1m2の木材の表面に対して0.01〜20gの処理された顔料を施す工程を含む。かかる実施形態は、例えばディッピング法を用いる場合に好ましい。
【0083】
本発明の一の実施形態は、本発明の顔料製剤を1種以上の木材防腐剤と一緒に施す工程を含む。有用な木材防腐剤は、例えばEP−A0316602に開示されている。1m2の木材の表面あたり200〜600gの木材防腐剤を、例えばディッピング法の形で表面的に施すことが可能である。圧力を用いる方法、例えば減圧法では、例えば1m3の木材あたり1500〜7000kgの木材防腐剤を利用することが可能である。
【0084】
接触時間分は、例えば10秒〜48時間の範囲であっても良く、20秒〜24時間の範囲であるのが好ましい。
【0085】
本発明の一の実施形態において、テキスタイル支持体を着色する本発明の方法は、顔料−着色法(pigment-dyeing process)又は例えば、捺染糊を用いるテキスタイル捺染法(textile-printing process)である。
【0086】
顔料−着色法又はテキスタイル捺染法により本発明に従ってテキスタイル着色法を行うために、一の考え得る手順は、以下の通りである。
【0087】
本発明により、顔料染色用の染色液又は顔料捺染用の捺染糊、特にテキスタイル顔料捺染は、本発明の少なくとも1種の顔料製剤を用いて製造される。従って、本発明は、更に、顔料染色用の染色液又は顔料捺染用の捺染糊の製造方法、更には本発明による染色液及び捺染糊を提供し、以下、本発明の製造方法と称される。
【0088】
本発明による顔料捺染用の染色液及び捺染糊、並びに本発明の少なくとも1種の顔料製剤は、熱エネルギーの作用下で、又は触媒の添加後に架橋可能である少なくとも1種の化合物(A)を含んでいても良く、例えば、1種以上の以下の(A1)〜(A5):
(A1)適宜、アルコキシル化、アルコキシアルキル化又はヘミアミナール化(hemiaminalized)されていても良いメラミン誘導体、
(A2)親水性化イソシアヌレート、親水性化ジ−及びポリイソシアネート又は封鎖ジイソシアネート、
(A3)1分子あたりに2〜5個のグリシジル基を有するポリグリシジルエーテル、
(A4)カルボジイミド、
(A5)適宜、アミナール化(aminalized)又はヘミアミナール化されても良い尿素又は尿素誘導体、
を含んでいても良い。
【0089】
メラミン誘導体(A1)の例示は、適宜アルコキシル化又はアルコキシアルキル化される化合物又はヘミアミナール化されるメラミン、特に、一般式II:
【0090】
【化2】

【0091】
[但し、R2、R4及びR6が異なっているか、又は好ましくは同一であり、それぞれCH2−OH、CH2−O−R8又は最も好ましくは水素から選択され、
3、R5及びR7がそれぞれ同一又は異なっていても良く、CH2−OH、CH2−O−R8又は水素から選択され、且つ、
2〜R7の少なくとも1つが水素以外であるのが好ましく、
8がそれぞれ同一又は異なっていても良く、C1〜C4アルキル、例えばエチル、n−プロピル、n−ブチル、イソプロピル及び特にメチル、(CH2CH2O)m{但し、mが1〜25の範囲の整数から選択される。}から選択される。]
で表される化合物である。
【0092】
本発明の特に好ましい実施形態は、一般式IIで表される上記のメラミン誘導体を利用するが、かかるメラミン誘導体は、R2〜R7の3〜5個は水素に等しく、R2〜R7の1〜3個は、CH2−O−R8(但し、mが1〜3の範囲の整数である。)から選択される。
【0093】
一般式IIで表されるメラミン誘導体は、それ自体公知である。式IIで表されるメラミン誘導体は、一の所定の式と同義であるという意味で単に存在しないのが一般的である。分子間転移、すなわち、アセタール交換反応及びアミナール交換反応、更に所定の割合の縮合反応及び脱離反能を観察するのが一般的である。上述の式IIは、R2〜R7基の化学量論割合を規定し、更には、分子間転移生成物及び縮合生成物を包含することを意味する。
【0094】
親水性化イソシアヌレート(A2)の例示は、例えば、一般式III:
【0095】
【化3】

【0096】
[但し、R9が、それぞれ異なっていても又は好ましくは同一であり、例えば、(CH2h−NCO{但し、hが2〜20の範囲の整数であり、好ましくは4〜12である。}を表す。]
で表されるイソシアヌレートであるが、且つ、全てのR9は同一であり、hは6を表すのが極めて好ましく、かかるイソシアヌレートを、1〜3当量のポリアルキレンオキシド、例えばプロピレンオキシド又は好ましくはポリエチレンオキシド、適宜、モノエーテル化されるC1〜C4アルカノールと反応させた。
【0097】
親水性化ジ−及びポリイソシアネート並びに閉鎖イソシアネート(A2)の例示は、例えば、EP−A0358979、EP−A1227116、EP−A1024184、EP−A1110987、EP−A0728786に記載される化合物である。
【0098】
1分子あたりに2〜5個のグリシジル基、好ましくは1分子に2〜4個のグリシジル基を有するポリグリシジルエーテル(A3)の例示は、例えば、ペンタエリスリチルトリグリシジルエーテル及びグリセリル1,3−ジグリシジルエーテル及びこれらの混合物である。
【0099】
カルボジイミド(A4)の例示は、ジシクロヘキシルカルボジイミド、更に、特許出願EP−A1002001、DE−A19954500及びDE−A10000656に記載される組成物である。
【0100】
適宜、アミナール又はヘミアミナールに転化されても良い尿素又は尿素誘導体(A5)の例示は、以下のものである:未変性又は多重、特に単独で、二重に、三重に又は四重にアルコキシル化され、特にメチロール化され、更にはアルコキシアルキル化され、特にメトキシメチロール化される尿素化合物並びにそのダイマー、トリマー及びテトラマー又はオリゴマー又はポリマーで、直鎖、分岐又は環式の予備縮合物。また、アルコキシル化される尿素化合物は、尿素のダイマー、トリマー及びテトラマー又はオリゴマー又はポリマーで、直鎖、分岐又は環式の付加/縮合生成物、及び多重官能性アルキルアルデヒド、特に、グリオキサル及びそのアルコキシル化、特に、メトキシル化される化合物である。
【0101】
本発明による顔料捺染用染色液及び捺染糊は、更に、1種以上の触媒を含んでいても良い。触媒の適例は、塩化アンモニウム、ZnCl2、Zn(NO32であり、それぞれその水和物の形であり、NH4Cl及び最も好ましくはMgCl2であり、例えばその6水和物の形である。例えば、着色組成物、例えばテキスタイル染色用の染色液、インクジェット法用のインク又は顔料捺染用の捺染糊に対して、0.001〜1質量%の触媒を使用することが可能である。
【0102】
本発明の一の実施形態において、本発明の染色液は、弱酸のpH、好ましくは4〜6.5の範囲のpHを有する。
【0103】
本発明の一の実施形態において、本発明の染色液の動的粘度は、20℃にて測定され、100mPa・s以下の範囲である。本発明の染色液の表面張力は、織物を湿潤するように調節される。20℃にて測定される、50mN/m未満の好適な張力が適当である。
【0104】
本発明の染色液は、更に、添加剤又は助剤を含んでいても良い。好ましい添加剤は、0〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%の濃度の有機溶剤である。有用な溶剤としては、例えば、ポリエチレングリコール及びモノエーテル化アルキレングリコール若しくはモノエーテル化ポリエチレングリコール、例えばジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルを含む。
【0105】
本発明の染色液は、更に、1種以上の湿潤助剤、好ましくは低泡立ち性(low-suds)湿潤剤を含んでいても良い。なぜなら、泡立ちにより、染色の品質が、でこぼこの形成により損なわれる場合があるからである。使用される湿潤剤は、例えば、脂肪アルコールのエトキシル化及び/又はプロポキシル化生成物又はプロピレンオキシド−エチレンオキシドブロック共重合体、エトキシル化又はプロポキシル化脂肪又はオキソ合成アルコール、更には、オレイン酸又はアルキルフェノールのエトキシレート、アルキルフェノールエーテルスルフェート、アルキルポリグリコシド、アルキルホスホネート、アルキルフェニルホスホネート、アルキルホスフェート又はアルキルフェニルホスフェートである。
【0106】
連続顔料染色において使用される種類の乾燥テキスタイル織物又はループ式ニットは、多量の空気を含む。乾燥テキスタイル織物を乾燥するために、脱気剤(deaerator)を、本発明の染色方法において使用するのが有効である。脱気剤は、例えば、ポリエーテルシロキサン共重合体又はリン酸エステルを基礎としている。脱気剤は、本発明の染色液において0.01〜2g/Lの量で含まれていても良い。
【0107】
本発明の染色液は、更に、1種以上の手触り向上剤を助剤として含んでいても良い。手触り向上剤は、ポリシロキサン又はポリエチレン又はポリエチレングリコールを基礎とするワックスであるのが一般的である。ポリシロキサンは、耐久性の点で有利であり、一方、所定のワックスは、使用中に漸次洗浄除去される場合がある。しかしながら、本発明の一の実施形態では、手触り向上剤を利用しない。
【0108】
本発明の染色液は、更に、1種以上の抗移動剤(antimigration)を助剤として含んでいても良い。好適な抗移動剤の例示は、アクリル酸とアクリルアミドとの共重合体である。アクリル酸のモル分率は、20〜80%の範囲であっても良く;そして、アクリルアミド分は、補完して100にされる。他の好適な抗移動剤は、例えば、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのランダム共重合体又はブロック共重合体である。エチレンオキシドのモル分率は、20〜80%の範囲であっても良く;プロピレンオキシド分は、補完して100にされる。
【0109】
本発明の他の実施形態は、本発明の染色液の製造方法であり、本発明の製造方法とも称される。本発明の製造方法は、少なくとも1種の、本発明により処理される粒状の顔料を1種以上の上述の添加剤及び/又は助剤、例えば溶剤、消泡剤、手触り向上剤、乳化剤及び/又は殺生物剤と混合する工程と、水にて作製する工程とを含むのが一般的である。本発明の製造方法は、成分を混合容器中で撹拌する工程を含むのが一般的であるが、容器の寸法及び形状は、重要ではない。撹拌後に、清澄ろ過するのが好ましい。
【0110】
本発明の製造方法は、少なくとも1種の、本発明の顔料製剤及び適宜化合物(A)、更に適宜、触媒を、染色又は捺染の作業に必要とされる助剤と混合し、そして着色剤の含有量を水での希釈によって調節することによって実施されても良い。
【0111】
本発明の製造方法を実施するのに使用される水は、完全にイオン非含有である必要はない。不完全な脱イオン水又は極めて軟質な水を使用するのが一般的である。不十分に軟質な水が利用可能である場合、錯化剤(硬水軟化剤)を使用して、水の硬度を制御しても良い。顔料染色作業に有用な硬水軟化剤は、一般に、密封剤のCa2+及びMg2+イオンである。特に有用な硬水軟化剤の例示は、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸又はメチルグリシンジ酢酸である。本発明の染色液を製造するために添加される水の量は、一方で、テキスタイルに形成されるべき色合いの深さに、他方で、好適な装置、例えばパッド−つや出し機を用い、テキスタイルに施される染色液の量に応じて異なる。
【0112】
本発明の他の実施形態は、上述した本発明の染色液を用いることによるテキスタイル支持体の染色方法である。かかる方法は、一般的に用いられる機械において行われ得る。主として2個のニップローラーを含み、ニップローラーを通ってテキスタイルが案内されるパッド−つや出し機(pad-mangle)が好ましい。液体は、ローラーの上方に位置し、そしてテキスタイルを湿潤する。ニップ圧により、テキスタイルをしぼり、一定のアドオンを保証する。
【0113】
他の実施形態において、テキスタイルは、偏向ローラーにて且つ染色液を保持する水槽を通って案内される。そして、液体の上方に設けられる一対のローラーを使用して、過剰の液体をしぼり、一定のアドオンを保証する。
【0114】
実際の染色工程の後は、通常、熱乾燥及び定着であり、好ましくは、70〜120℃の温度で、30秒〜3分に亘って乾燥し、その後、150〜200℃の温度で、30秒〜5分間に亘って定着させる。
【0115】
パディングによる顔料染色する方法が好ましい。着色される支持体、特に、本発明により捺染及び/又は染色される支持体は、色の特定の光沢と、優れた手触りとの組み合わせに関して注目に値する。従って、本発明の他の実施形態は、本発明の染色液を使用する上述の方法により着色される支持体に関する。
【0116】
本発明による捺染糊を製造するために、本発明により、本発明の少なくとも1種の顔料製剤を捺染糊に組み込む。有利には、顔料捺染用の本発明の捺染糊は、通常の捺染加工助剤と混合し、その後、水での希釈により着色剤含有量を調節することによって少なくとも1種の本発明の顔料製剤から製造される。
【0117】
一般的に使用される助剤は、Ullmann, Handbuch der technischen Chemie und Verfahrenstechnik, compare for example Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第5版, headword: textile Auxiliaries, 第A26巻, 286頁以降及び296頁以降., Verlag Chemie, Weinheim, Deerfield/Florida, Basle; 1996から公知である。一般的に使用される助剤は、増粘剤、定着剤、手触り向上剤及び乳化剤である。
【0118】
天然及び合成の増粘剤を使用可能である。合成の増粘剤、例えば、合成ポリマーの全体として液体の溶液を、例えばホワイト油中において、又は水溶液として使用するのが好ましい。合成ポリマーは、完全に又は所定の割合だけ、アンモニアで中和される酸基を含む。アンモニアは、定着作業中に放出され、これによりpHを低下させ、そして実際の定着を開始する。或いは、定着に必要とされるpHの低減は、不揮発性の酸、例えばクエン酸、コハク酸、グルタル酸又はリンゴ酸を添加することによって行われ得る。
【0119】
本発明の捺染糊は、30〜70質量%のホワイト油を含んでいても良い。水性の増粘剤は、25質量%以下のポリマーを含むのが一般的である。増粘剤の水性調剤を使用するために、全体として水性のアンモニアを添加する。同様に、顔料捺染を放出しないように製造可能であるため、増粘剤の顆粒で、固体の調剤を使用することも考えられる。
【0120】
本発明の捺染糊は、更に、手触り向上剤を含んでいても良く、かかる手触り向上剤は、シリコーン、特にポリジメチルシロキサン、及び脂肪酸エステルから選択されるのが一般的である。本発明の捺染糊に包含するのに有用な市販の手触り向上剤は、例えば、Acramin(登録商標)Weichmacher SI(バイエル社)、Luprimol SIG(登録商標)及びLuprimol CW(登録商標)(BASF社)である。
【0121】
本発明の捺染糊は、更に、1種以上の乳化剤を含んでいても良いが、これは、捺染糊がホワイト油を含み、水中油型エマルジョンとして得られる増粘剤を含む場合である。好適な乳化剤の例示は、アリール又はアリール置換ポリグリコールエーテルを含む。好適な市販の乳化剤は、例えば、Emulgator W(登録商標)(バイエル社)、Luprimol PE New(登録商標)及びLuprimol MP(登録商標)(BASF社)である。
【0122】
有用な添加剤は、更にブレンステッド酸を含み、ブレンステッド酸の使用は、特に非水性ベースの糊の場合に好ましい。無機酸のアンモニウム塩、例えばリン酸水素二アンモニウムが好ましい。
【0123】
本発明による少なくとも1種の捺染糊又は本発明による少なくとも1種の顔料製剤を用いる顔料捺染は、それ自体公知の種々の方法によって行われ得る。通常、スクリーンを使用し、これにより、捺染糊に強制的にスキージをかける。かかる処理は、スクリーン捺染法である。その後、熱エネルギーを加えるか、又は少なくとも1種の触媒を添加する。本発明の捺染糊を用いる本発明の顔料捺染法により、捺染に関して特に高い光沢及び色合いの深さと、捺染される支持体に関して良好な手触りとを組み合わせる、捺染される支持体を提供する。従って、本発明は、本発明の捺染糊を使用して本発明の方法により捺染される支持体を提供する。
【0124】
熱エネルギーを加えるのは、例えば、捺染又は着色される支持体を、120〜250℃の温度条件下で5秒〜5分間に亘って熱定着させ、その後、本発明の捺染糊又は本発明の染色液とそれぞれ接触させることによって達成され得る。好適な装置は、例えば、電子レンジ、プレート式圧搾機、温風ブロワーで、電気的に又はガスの炎で加熱される乾燥キャビネット、加熱ローラーシステム又は連続運転される乾燥設備である。
【0125】
本発明の一の特定の実施形態において、着色される支持体は、セルロース系の支持体である。セルロース系の支持体は、以下、木質及びいわゆる上質紙、厚紙、カード、更には、所望の寸法の木材、例えば、カットウッド製品、例えば厚板、棒、ブロック、更には木毛、木質の複合材料、カットウッド製品、合板、パーチクル・ボード、中質繊維板(MDF)、配向性ストランドボード(OSB)、木質化一年生植物を基礎とする材料、黄ボール紙並びに繊維材料、例えばアマ、リネン、アサ、ジュート、綿、竹繊維、カジノキの木又は砕木パルプから得られる繊維を意味すると理解されるべきである。本発明の場合、セルロース系の支持体は、例えば板であるか、又は成形されていても良い。
【0126】
セルロース系の支持体を着色する本発明の方法は、それ自体公知の方法により行われても良い。例えば、紙、板又はカードを着色する場合、本発明の方法は、本発明の顔料製剤を紙、板又はカードと、例えば被覆、噴霧、ディッピング又はソーキングによって接触させることによって行われ得る。
【0127】
本発明の一の好ましい実施形態は、本発明の少なくとも1種の顔料製剤を紙前駆体、例えば用紙に添加する工程を含む。
【0128】
用紙は、例えば2〜10質量%の好ましく漂白されるパルプと、90〜98質量%の水と、を含み、好ましくは更に助剤を含まないのが好ましい。
【0129】
本発明の顔料製剤を用紙に、例えば、用紙全体に対して0.001〜1質量%の量で添加し、その後、用紙を、一般的な手法で紙に加工しても良い。
【0130】
例えば、木材又は木質の支持体を着色する場合、着色は、大気圧下、高圧下、例えば1.1〜20バールの範囲、好ましくは10バール以下、又は減圧下、例えば50〜800ミリバールの範囲、好ましくは100〜650ミリバールの範囲、又は種々の圧力条件の組み合わせにて行われ得る。好適な大気圧法は、ディッピング及びソーキング法、例えば開放タンク吸引法、開放タンク加圧−サッキング法、開放タンクソーキング、温冷ソーキング法及び挿入法であり、挿入法により、棒が、バケット残片に最初に挿入され、そして急冷される。高圧下での方法の例示は、閉鎖タンク圧法である。減圧下での方法の例示は、真空法、二重真空法及びブーシュリー法である。
【0131】
種々の圧力条件の組み合わせを用いる方法の例示は、変更圧力法、ルービング法及び閉鎖タンク加圧−サッキング法である。高圧及び減圧の組み合わせを用いるために、振動条件を用いても良いが、これは、本発明の場合、上述の範囲の減圧を上述の範囲の高圧に繰り返し圧力変更することを意味すると理解されるべきである。圧力変更の回数は、例えば、圧力条件を2〜500回まで変更可能であることから、それ自体重大ではない。
【0132】
木材を着色する本発明の方法を行うのに好適な温度は、例えば10〜20℃の範囲であり、室温であるのが好ましい。
【0133】
本発明の一の実施形態において、約0.1〜50kgの本発明の顔料製剤、好ましくは30kg以下の本発明の顔料製剤を、木材1m3あたりに施す。かかる実施形態は、例えば加圧法を用いる場合に好ましい。
【0134】
本発明の一の実施形態は、1m2の木材の表面に対して0.01〜20gの本発明の顔料製剤を施す工程を含む。かかる実施形態は、例えばディッピング法を用いる場合に好ましい。
【0135】
本発明の一の実施形態は、本発明の顔料製剤を1種以上の木材防腐剤と一緒に施す工程を含む。有用な木材防腐剤は、例えばEP−A0316602に開示されている。1m2の木材の表面あたり200〜600gの木材防腐剤を、例えばディッピング法の形で表面的に施すことが可能である。圧力を用いる方法、例えば減圧法では、例えば1m3の木材あたり1500〜7000kgの木材防腐剤を利用することが可能である。
【0136】
接触時間分は、例えば10秒〜48時間の範囲であっても良く、20秒〜24時間の範囲であるのが好ましい。
【0137】
更に本発明は、本発明の方法により着色される繊維質の支持体、好ましくはセルロース系の支持体を提供する。かかる支持体は、着色の特定の色合い、浸出する傾向の低さ、更には、本発明により着色される木材の場合、良好な日光堅牢度及び耐候性に関して注目に値する。
【0138】
本発明を使用実施例により説明する。
【実施例】
【0139】
I. 本発明の顔料製剤の製造
I.1 共重合体(b.1)の製造
アンカースターラー、窒素供給部及び3種類の計量導入手段を具備する5Lのタンクに、500mlの完全にイオン非含有の水、2.8gの、更に別の4.2gの水に溶解され、下式:
【0140】
【化4】

【0141】
[但し、R1.1が、cis−(CH28−CH=CH−(CH27CH3である。]
で表される化合物II.1を混合することにより得られる溶液を充填した。溶液のpHを、濃ギ酸で4.5に調節した。その後、これにより得られる溶液に窒素を15分間に亘って通過させた。その後、溶液を80℃に加熱した。
【0142】
以下の混合物を調製した:
混合物I.1.1:
480gの完全にイオン非含有の水、
8gの新たに蒸留されるアクリル酸、
28gの2−ヒドロキシエチルアクリレート、
328gのスチレン、
36gのN,N−ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド(“DMAPMAM”、以下を参照されたい)、
12gの、水中における40質量%溶液としての化合物II.1、
pHを4.5に調節するために使用された濃ギ酸。
【0143】
【化5】

【0144】
混合物I.1.2:200mlの完全にイオン非含有の水における8gの2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド
混合物I.1.1と混合物I.1.2の添加を同時に開始した。混合物I.1.1を2時間以内で添加した。混合物I.1.2を2時間15分以内で添加した。温度は、混合中に80℃にて維持された。
【0145】
添加後、80℃で30分間撹拌を継続し、その後、脱臭のため、40mlの蒸留水にて希釈される4.76gのtert−ブチルヒドロペルオキシド(水において70質量%)の溶液と、4.4gのHO−CH2−SO2Naを40mlの蒸留水に溶解した水溶液と、の同時添加を開始し、これを90分間継続した。
【0146】
その後、室温まで冷却した。これにより得られる分散液を、次に、125μmのネットにてろ過した。ろ過時間は、4分であった。これにより、約1gの凝塊を除去した。また、約1gの壁部の析出物を5Lのタンクで形成したことが観察された。
【0147】
これにより、4.6のpHを有し、共重合体(b.1)を含む分散液WD.1を得た。固体含有量は、25.3質量%であり、動的粘度は、20mPa・sであった。共重合体(b.1)の粒径分布は、Malvern社のコールター・カウンター(Coulter Counter)を使用し、ISO13321に準拠して測定され、85nmにて最高値を有することが見出された。ガラス転移温度Tgは、102℃であった。
【0148】
I.2 本発明の顔料製剤の製造
使用される実験室用ミルは、Getzmann社のDispermat CA−40−Cであり、APSの1000mlの粉砕容器、70mmのポリアミドの二重粉砕ディスク及び直径0.6〜0.8mmのガラスビーズを備えていた。
【0149】
以下のものを、粉砕容器に連続して導入した:
160gの分散液WD.1、
40gの銅フタロシアニン顔料(C.I.15:3)、
200gの、粉砕媒体としてのスチールボール(直径0.6〜0.8mm)。
【0150】
400rpmの速度での10分間の予備分散後、バッチを5500rpmで90分間分散させた。これにより生成されたフォームを、ポリジメチルシロキサン消泡剤の随時添加によって抑制した。
【0151】
粉砕は、Beckmann社のコールター器械を用いて二次粒子の粒径分布を測定することによってモニターした。分散操作の最後に、0.4〜2μmの範囲の二次粒子の粒径を得た。平均二次粒径(平均値)は、D90:1.409μm、D50:0.582μm、D10:0.385μmであった。
【0152】
これにより得られた本発明の顔料製剤は、最終的に、圧縮空気で強制的に粉砕容器の出口篩に通過され、これによりガラスビーズを取り除いた。
【0153】
II. 支持体の本発明の着色
II.1 顔料染色法によるテキスタイルの本発明の着色
本発明の染色液は、500mlの水における最初の充填物に対して、撹拌しながら以下のものを連続して添加することによって調製された:
100gの、実施例I.2から得られる本発明の顔料製剤、
30gのPO−EOブロック共重合体(1モルあたり42単位のプロピレン/29単位のエチレン)、
15gの、以下の化合物:
【0154】
【化6】

【0155】
[但し、h=20]
の30質量%の水溶液、
10gの硫酸ナトリウム、
5gのリン酸水素二アンモニウム、
40mlのホスフェート緩衝液、pH6。
【0156】
次に、水を加えて、1L以下とした。これにより製造される本発明の染色液を、MathisのHVF12085パッド−つや出し機を用いて、直ぐに染色できる予備処理された綿に詰めた。ウェット・ピックアップ(wet pickup)は、約70%であった。次に、織物を、MathisのDHE−36582乾燥器−スチーマーにおいて、110℃で50秒間乾燥し、その後、MathisのLTF8958乾燥器−定着剤に対して、180℃で45秒間に亘って定着させて、濃い青色水準の染色を得た。
【0157】
染色の堅牢度水準を評価するために、テキスタイルのサンプル(本発明により染色される10gの綿)は、300mlの水及び2gのMarseilleセッケンから調製される洗浄液中において、95℃で30分間処理された。次に、テキスタイルのサンプルを洗浄液から取り出し、金属プレートに対して縁端部の位置でクリップを用いて固定した。テキスタイルのサンプルに対して、50mlの熱い洗浄液を施した。その後、かかるテキスタイルのサンプルを、ハンドブラシで50回に亘って擦り、その後、乾燥した。乾燥されたテキスタイルのサンプルを、グレー・スケールに対して評価した。評価として、4〜5のスコアを得た。
【0158】
同一の実験を、本発明の染色液を用いて繰り返し行ったが、染色液は、上述の組成を有するものの、25又は50gの本発明の顔料製剤及びこれに対応して高い割合の水を含んでいた。これにより同様に、4〜5の堅牢度水準を有する対応の水準の青い染色を得た。
【0159】
II.2 紙の本発明の着色
着色される紙の製造は、以下の規定に従って行われた:
70質量%の漂白されたマツの硫酸塩パルプ及び30質量%の漂白されたカバの硫酸塩パルプの混合物を、実験室用精砕機において、22°の叩解度のSchopper-Rieglerに打ち砕いて、オーブン乾燥によって測定される、10.3質量%の固体含有量を有する打ち砕かれたパルプ混合物を得た。
【0160】
48.5gの打ち砕かれたパルプ混合物(5gの固体に相当)を、ガラスビーカーにおいて合計して250mlの水道水に懸濁させた。これにより得られるパルプ懸濁液に対して、実施例I.2から得られる0.5gの本発明の顔料製剤を添加した。5分間の撹拌後、懸濁液を、合計して3Lの水道水で希釈した。その後、紙のシートを、Rapid−Koethenの150g/m2シート形成機において製造した。かかるシートを押圧し、そしてスチールシリンダーにおいて85℃にて2枚のろ紙の間で乾燥した。これにより得られた染色を、視覚的に検査し、CIELABにて評価した。ろ液を集め、視覚的に検査した。本発明により着色された紙P1を得た。
【0161】
本発明により着色された紙は、高い色合い、高い浸出堅牢度及び高い日光険路度に関して注目に値した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種の顔料を、
(b)少なくとも150000g/モルの平均分子量Mwを有し、少なくとも1種のエチレン性不飽和C3〜C10カルボン酸の少なくとも1種のC1〜C10アルキルエステル又は少なくとも1種のω−ヒドロキシ−C2〜C4アルキレンエステル又は少なくとも1種の芳香族ビニル化合物を、共重合された形態で含む少なくも1種のエマルジョン共重合体、及び
(c)水、
の存在下において、装置中で分散させる工程を含む顔料製剤の製造方法。
【請求項2】
装置が、ミル類から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記顔料(a)が、有機顔料を含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種のエマルジョン共重合体(b)が、少なくとも1種のエチレン性不飽和C3〜C10カルボン酸を共重合された形態で含むエマルジョン共重合体を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種のエマルジョン共重合体(b)が、カチオン性の共重合体を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記エマルジョン共重合体(b)が、少なくとも1種のアミド−又はアミノ−含有コモノマーを共重合された形態で含むエマルジョン共重合体を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記分散は、無極性の有機溶剤の非存在下で行われる請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記エマルジョン共重合体(b)が、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを基礎とし、共重合された形態のコモノマーを含まない請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記顔料(a)が、顔料スルホン酸、顔料アミドスルホン酸及び顔料のメチレンアミン誘導体から選択される少なくとも1種の顔料誘導体で被覆される請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法により製造される顔料製剤。
【請求項11】
請求項10に記載の顔料製剤を繊維質の支持体の着色に使用する方法。
【請求項12】
請求項10に記載の少なくとも1種の顔料製剤を使用することによる繊維質の支持体の着色方法。
【請求項13】
前記繊維質の支持体は、テキスタイル支持体である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記繊維質の支持体は、セルロース系の支持体である請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法により着色される繊維質の支持体。

【公表番号】特表2009−504824(P2009−504824A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525551(P2008−525551)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064992
【国際公開番号】WO2007/017451
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】