説明

顔料複合化中空粒子の製造方法

【課題】空隙率を低下させることなく、形状保持性に優れ、顔料の含有割合を高めることができ、隠蔽性に優れた着色剤として好適な顔料複合化中空粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】顔料粒子及び不飽和単量体を水系媒体において分散させ、顔料分散液とする分散工程と、顔料分散液に含まれる不飽和単量体を重合し、顔料粒子部及び重合体部を備える第1複合粒子を含む第1エマルションとする第1重合工程と、第1エマルションと、水溶性不飽和単量体と、架橋性不飽和単量体を含む親油性組成物とを混合し、混合液において、親油性組成物を第1複合粒子に吸収させる吸収工程と、上記混合液において、水溶性不飽和単量体及び架橋性不飽和単量体を含む単量体混合物を重合する第2重合工程と、を備えることで、上記顔料粒子が重合体相に分散されてなり、且つ、その内部に少なくとも1つの空間部が形成された顔料複合化中空粒子を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、インク、トナー等に配合され、空隙率が高く且つ隠蔽性の高い着色剤として好適な顔料複合化中空粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗料、インク等は、樹脂、着色剤等を混合することにより製造されている。しかしながら、塗膜等とした場合の隠蔽性が十分ではないことから、着色剤を、重合体からなる殻で包んでなる着色剤含有重合体粒子、重合体及び着色剤を含む殻を備える着色中空重合体粒子等が使用されるようになってきた。
特許文献1には、ラジカル重合性の水溶性単量体と、ラジカル重合性の非水溶性単量体とを含有する単量体群を、水溶性重合開始剤を用いて、着色性化合物の存在下でラジカル重合する、着色中空重合体粒子の製造方法、並びに、ラジカル重合性の水溶性単量体及びラジカル重合性の非水溶性単量体からなる群から選ばれる少なくとも一種と、着色性化合物とを予め反応させて、ラジカル重合性の着色性化合物を得た後、ラジカル重合性の水溶性単量体とラジカル重合性の非水溶性単量体とを、水溶性重合開始剤を用いて、ラジカル重合する、着色中空重合体粒子の製造方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−291359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された方法によると、空隙率を高くしようとした結果、得られる着色中空ポリマー粒子は、着色性化合物の含有割合が低くなり、また、塗膜等とした場合の隠蔽性が十分ではなかった。
本発明は、空隙率を低下させることなく、形状保持性に優れ、顔料の含有割合を高めることができ、隠蔽性に優れた着色剤として好適な顔料複合化中空粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の通りである。
[1]顔料粒子及び不飽和単量体を水系媒体において分散させ、顔料分散液とする分散工程と、上記顔料分散液に含まれる上記不飽和単量体を重合し、顔料粒子部及び重合体部を備える第1複合粒子を含む第1エマルションとする第1重合工程と、上記第1エマルションと、水溶性不飽和単量体と、架橋性不飽和単量体を含む親油性組成物と、を混合し、混合液において、上記親油性組成物を上記第1複合粒子に吸収させる吸収工程と、上記混合液において、上記水溶性不飽和単量体及び上記架橋性不飽和単量体を含む単量体混合物を重合する第2重合工程と、を備え、上記顔料粒子が重合体相に分散されてなり、且つ、その内部に少なくとも1つの空間部が形成された顔料複合化中空粒子を製造することを特徴とする、顔料複合化中空粒子の製造方法。
[2]上記第1複合粒子に含まれる上記顔料粒子の含有量は、上記第1複合粒子に含まれる上記重合体100質量部に対して、10〜100質量部である[1]に記載の顔料複合化中空粒子の製造方法。
[3]上記親油性組成物が、有機溶剤を含む[1]又は[2]に記載の顔料複合化中空粒子の製造方法。
[4]顔料粒子と、架橋性不飽和単量体及び非架橋性不飽和単量体を含む単量体混合物を含有する親油性組成物とを水系媒体において分散させ、分散液とする分散工程と、上記分散液において、上記単量体混合物を重合する重合工程と、を備え、上記顔料粒子が重合体相に分散されてなり、且つ、その内部に少なくとも1つの空間部が形成された顔料複合化中空粒子を製造することを特徴とする、顔料複合化中空粒子の製造方法。
[5]上記親油性組成物が、有機溶剤を含む[4]に記載の顔料複合化中空粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、空隙率を低下させることなく、形状保持性に優れ、顔料の含有割合を高めることができ、隠蔽性に優れた着色剤として好適な顔料複合化中空粒子を効率よく製造することができる。また、上記親油性組成物が、有機溶剤を含む場合、吸収工程により得られた吸収物に、単量体の重合に関与しない部分ができ、第2重合工程により得られる顔料複合化中空粒子の空間部(空隙)がより大きくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルを、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートを、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルを意味する。また、「平均粒子径」は、透過型電子顕微鏡を用いて観察される顔料粒子等の測定対象粒子における長径を粒子径とし、観察視野に存在する100個の粒子について測定された粒子径の平均値をいう。
【0008】
本発明の顔料複合化中空粒子の製造方法は、顔料粒子及び不飽和単量体を水系媒体において分散させ、顔料分散液とする分散工程と、上記顔料分散液に含まれる上記不飽和単量体を重合し、顔料粒子部及び重合体部を備える第1複合粒子を含む第1エマルションとする第1重合工程と、上記第1エマルションと、水溶性不飽和単量体と、架橋性不飽和単量体を含む親油性組成物と、を混合し、混合液において、上記親油性組成物を上記第1複合粒子に吸収させる吸収工程と、上記混合液において、上記水溶性不飽和単量体及び上記架橋性不飽和単量体を含む単量体混合物を重合する第2重合工程と、を備え、上記顔料粒子が重合体相に分散されてなり、且つ、その内部に少なくとも1つの空間部(空隙)が形成された顔料複合化中空粒子を製造することを特徴とする。
【0009】
分散工程は、顔料粒子及び不飽和単量体を水系媒体において分散させ、顔料分散液とする工程である。
【0010】
上記分散工程において用いられる上記顔料粒子は、水及び有機溶剤に溶解しない有色物質からなる粒子である。この有色物質は、有機化合物(有機顔料)及び無機化合物(無機顔料)のいずれでもよい。有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料;染料レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、蛍光顔料等が挙げられる。これらのうち、多環式顔料が好ましい。また、無機顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、べんがら、カドミウムレッド、モリブデンオレンジ、黄色酸化鉄、黄鉛、チタンイエロー、クロムグリーン、酸化クロム、コバルトブルー、マンガンバイオレット等が挙げられる。これらのうち、カーボンブラックが好ましい。
上記顔料粒子は、有機顔料からなる粒子であってよいし、無機顔料からなる粒子であってもよい。また、両者を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
上記顔料粒子の平均粒子径は、好ましくは1μm以下、より好ましくは1nm〜500nm、更に好ましくは5nm〜300nmである。上記平均粒子径が小さすぎると、得られる顔料分散液における分散性が低下する場合がある。一方、上記平均粒子径が大きすぎると、顔料分散液において沈殿する場合がある。
【0012】
上記分散工程において用いられる上記不飽和単量体は、架橋性の化合物よりも非架橋性の化合物の方がよい。尚、「架橋性」とは、架橋構造を与える性質を意味する。
【0013】
非架橋性の不飽和単量体としては、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、シアン化ビニル化合物、不飽和酸、ビニルエステル化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。下記に例示される化合物は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、tert−ブトキシスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ハロゲン化スチレン等が挙げられる。
【0015】
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルペンチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸n−オクタデシル、(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物の他、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、シアノ基等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物を用いることができる。
【0016】
アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−(ジ−n−プロピルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ジ−n−プロピルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸3−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3−ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3−(ジ−n−プロピルアミノ)プロピル等が挙げられる。
【0017】
ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0018】
アルコキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(n−プロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(n−ブトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−(n−プロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(n−ブトキシ)プロピル等が挙げられる。
【0019】
シアノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸1−シアノエチル、(メタ)アクリル酸2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸1−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸2−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸3−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸4−シアノブチル、(メタ)アクリル酸6−シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチル−6−シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸8−シアノオクチル等が挙げられる。
【0020】
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル等が挙げられる。
不飽和酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられる。
【0021】
ビニルエステル化合物としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル等が挙げられる。
【0022】
他の非架橋性単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有不飽和化合物;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン化合物;1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン等の非共役ジエン化合物;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β−エチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3−メチル−3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸3−エチル−3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸4−メチル−4,5−エポキシペンチル、(メタ)アクリル酸2,3−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、2−ビニルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンオキサイド、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有不飽和化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系化合物;スチレンスルホン酸、α−メチルスチレンスルホン酸及びこれらの塩;3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−アクリロキシ−1−ヒドロキシプロパン−2−スルホン酸、3−メタクリロキシ−1−ヒドロキシプロパン−2−スルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−ブテンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルフェニルメタンスルホン酸、イソアミレンスルホン酸、2−メチル−1,3−ブタジエン−1−スルホン酸等が挙げられる。
【0023】
上記不飽和単量体の好ましい例は、下記に示される。
上記非架橋性の不飽和単量体としては、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物等の疎水性化合物が好ましく、芳香族ビニル化合物を含むことが特に好ましい。尚、非架橋性の不飽和単量体に含まれる芳香族ビニル化合物の含有量は、通常、30〜100質量%、好ましくは50〜100質量%である。
【0024】
上記不飽和単量体の使用量は、上記顔料粒子100質量部に対して、好ましくは100〜1,000質量部、より好ましくは125〜1,000質量部である。上記割合とすることにより、不飽和単量体の重合時に、より多くの顔料粒子を重合体相に取り込むことができる。
【0025】
上記分散工程において、上記顔料粒子及び上記不飽和単量体を上記水系媒体に分散させる方法及びその装置は、特に限定されない。
本発明においては、この分散工程によって、顔料粒子及び不飽和単量体が接触状態にあり、これらを含む粒状の分散混合体となって、水系媒体において分散している顔料分散液を調製することが好ましい。
上記分散工程における分散方法としては、下記に例示される。
(1)顔料粒子、不飽和単量体及び水系媒体を一括して混合する方法。
(2)顔料粒子及び水系媒体を混合した後、不飽和単量体を添加して更に混合する方法。
(3)不飽和単量体及び水系媒体を混合した後、顔料粒子を添加して更に混合する方法。
(4)顔料粒子及び水系媒体の混合物、並びに、不飽和単量体及び水系媒体の混合物を、各々、調製した後、両者を更に混合する方法。
尚、上記方法において、使用する水系媒体に、予め、顔料粒子及び/又は不飽和単量体の分散性を改良する分散剤、第1重合工程において安定な第1エマルションを形成させる乳化剤、連鎖移動剤等を併用してもよい。
【0026】
上記分散剤としては、高級脂肪酸塩、ポリカルボン酸、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
上記分散剤を用いる場合、その使用量は、上記顔料粒子及び/又は上記不飽和単量体の合計100質量部に対して、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは2〜25質量部、更に好ましくは3〜20質量部である。
【0027】
上記乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤を用いることができる。これらは、単独であるいは組み合わせて用いてもよい。
アニオン性界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、ポリエチレングリコールアルキルエーテルの硫酸エステル等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリエチレングリコールのアルキルエステル、アルキルエーテル及びアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アニオン部分として、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩又はリン酸エステル塩を、カチオン部分として、アミン塩又は第4級アンモニウム塩を有する化合物、例えば、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン等のベタイン型化合物;ラウリル−β−アラニン、ステアリル−β−アラニン、ラウリルジ(アミノエチル)グリシン、オクチルジ(アミノエチル)グリシン等のアミノ酸型化合物等が挙げられる。
上記乳化剤を用いる場合、その使用量は、上記不飽和単量体100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.1〜7質量部、更に好ましくは0.2〜5質量部である。
【0028】
また、上記分散工程において用いられる装置としては、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーター、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー、高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー、ナノマイザー等)等が挙げられる。これらの装置のうち、強い剪断力を与えて顔料粒子の凝集を抑制するとともに、顔料粒子と、不飽和単量体のうち、上記水系媒体に溶解しない疎水性の単量体とを含む分散混合体の粒径を小さくし、この分散混合体の分散性に優れた顔料分散液を調製できることから、高圧ホモジナイザーが好ましい。この高圧ホモジナイザーを用いる場合、上記効果を得るための剪断力は、好ましくは30MPa以上、より好ましくは50MPa以上である。
【0029】
上記分散工程において得られる顔料分散液は、顔料粒子及び不飽和単量体が水系媒体において分散されてなるものであるが、上記のように、顔料粒子及び不飽和単量体が接触状態にある分散混合体を形成し、この分散混合体が、水系媒体において分散していることが好ましい。
【0030】
第1重合工程は、上記顔料分散液に含まれる上記不飽和単量体を重合し、顔料粒子部及び重合体部を備える第1複合粒子を含む第1エマルションとする工程である。
この第1重合工程において、上記不飽和単量体の重合は、重合開始剤を用いて行われる。この重合開始剤は、油溶性重合開始剤及び水溶性重合開始剤のいずれでもよい。
【0031】
油溶性重合開始剤としては、過酸化クミル、過酸化tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、パーオキシ炭酸ジイソプロピル、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ハイドロパーオキサイド、過トリフェニル酢酸−tert−ブチルハイドロパーオキサイド、過蟻酸tert−ブチル、過酢酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチル、過フェニル酢酸tert−ブチル、過メトキシ酢酸tert−ブチル、過N−(3−トルイル)パルミチン酸tert−ブチル等の過酸化物;2,2’−アゾビスプロパン、2,2’−ジクロロ−2,2’−アゾビスプロパン、2,2’−アゾビスイソブタン、2,2’−アゾビスイソブチルアミン、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオン酸メチル、2,2’−ジクロロ−2,2’−アゾビスブタン、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、1,1’−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)、2−(4−メチルフェニルアゾ)−2−メチルマロノジニトリル、3,5−ジヒドロキシメチルフェニルアゾ−2−メチルマロノジニトリル、2−(4−ブロモフェニルアゾ)−2−アリルマロノジニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸ジメチル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビスシクロへキサンニトリル、2,2’−アゾビス−2−プロピルブチロニトリル、1,1’−アゾビス−1−クロロフェニルエタン、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンニトリル、2,2’−アゾビス−2−プロピルブチロニトリル、1,1’−アゾビス−1−クロロフェニルエタン、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、1,1’−アゾビス−1−シクロヘプタンカルボニトリル、1,1’−アゾビス−1−フェニルエタン、1,1’−アゾビスクメン、4−ニトロフェニルアゾベンジルシアノ酢酸エチル、フェニルアゾジフェニルメタン、フェニルアゾトリフェニルメタン、4−ニトロフェニルアゾトリフェニルメタン、1,1’−アゾビス−1,2−ジフェニルエタン、ポリ(ビスフェノールA−4,4’−アゾビス−4−シアノペンタノエート)、ポリ(テトラエチレングリコール−2,2’−アゾビスイソブチレート)等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0032】
また、水溶性重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)硝酸塩、ビスコハク酸パーオキサイド、ビスグルタル酸パーオキサイド等が挙げられる。また、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素等からなる酸化剤、及び、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸水素塩;硫酸第一鉄、塩化第一鉄等の二価の鉄塩;N,N−ジメチルアニリン、フェニルモルホリン等のアミン化合物;ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸銅等のナフテン酸金属塩等からなる還元剤の組み合わせであるレドックス系重合開始剤を用いることもできる。
【0033】
上記重合開始剤の使用量は、上記不飽和単量体100質量部に対して、通常、0.1〜30質量部、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは1〜10質量部である。
【0034】
また、上記不飽和単量体を重合する際には、連鎖移動剤(分子量調節剤)を併用してもよい。
連鎖移動剤としては、tert−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−ヘキシルメルカプタン等のメルカプタン化合物;臭化エチレン等のハロゲン系化合物等が挙げられる。
上記連鎖移動剤を用いる場合、その使用量は、上記不飽和単量体100質量部に対して、通常、0.1〜30質量部、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは1〜10質量部である。
【0035】
上記第1重合工程においては、通常、上記顔料分散液を撹拌しながら、不飽和単量体が重合される。これにより、水系媒体に、上記不飽和単量体に由来する構造単位からなる重合体の中に顔料粒子が分散されてなる第1複合粒子、即ち、顔料粒子部及び重合体部を備える第1複合粒子を含む第1エマルションを得る。重合温度は、重合開始剤の種類により選択されるが、通常、20℃〜90℃、好ましくは30℃〜85℃である。また、重合時間は、通常、1〜12時間、好ましくは3〜10時間である。
【0036】
上記第1複合粒子は、球体、楕円球体、多面体、あるいは、これらの変形体等の形状を有する粒状体であり、その平均粒子径は、好ましくは10nm〜99μm、より好ましくは30nm〜50μm、更に好ましくは50nm〜10μmである。上記平均粒子径が大きすぎると、最終的に得られる顔料複合化中空粒子における中空(空間部)が安定して形成されない場合がある。
上記第1複合粒子における顔料粒子部及び重合体部をそれぞれ形成する顔料粒子及び重合体の割合は、重合体100質量部に対して、顔料粒子の含有量が、好ましくは10〜100質量部、より好ましくは10〜80質量部である。
また、上記第1複合粒子における重合体部を形成する重合体の重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう。)は、好ましくは500〜1,000,000、より好ましくは1,000〜700,000、更に好ましくは2,000〜500,000である。尚、このMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0037】
吸収工程は、上記第1エマルションと、水溶性不飽和単量体と、架橋性不飽和単量体を含む親油性組成物と、を混合し、混合液において、上記第1エマルションに含まれる第1複合粒子に、上記親油性組成物を吸収させる工程である。この「吸収」は、上記第1複合粒子を構成する重合体及び/又は顔料粒子に物理的に吸着し、第1複合粒子が膨潤していることを意味する。
【0038】
上記水溶性不飽和単量体としては、上記第1エマルションに含まれる水系媒体に溶解するものであれば、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物;(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルアミノエチル等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド化合物;(メタ)アクリル酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和酸;ギ酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル化合物;スチレンスルホン酸の塩(Na塩)等が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸等の不飽和酸が好ましい。また、これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記吸収工程における水溶性不飽和単量体の使用量は、後述される。
【0039】
また、上記親油性組成物は、親油性(疎水性)を有し且つ上記第1エマルションに含まれる水系媒体に不溶な組成物であり、架橋性不飽和単量体を、その全体に対して、通常、5質量%以上、好ましくは10〜90質量%含むものである。
従って、上記親油性組成物は、架橋性不飽和単量体のみからなるものであってよいし、架橋性不飽和単量体と、他の親油性物質とからなる混合物であってもよい。
【0040】
上記架橋性の不飽和単量体としては、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、エチレンジ(メタ)アクリレート、ジエチレンジ(メタ)アクリレート、トリエチレンジ(メタ)アクリレート、プロピレンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレンジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記架橋性不飽和単量体としては、架橋点間分子量を短くすることができ、架橋密度を向上させられることから、好ましい化合物は、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレートである。
上記吸収工程における架橋性不飽和単量体の使用量は、後述される。
【0041】
また、上記他の親油性物質としては、水に不溶な有機溶剤(以下、「疎水性有機溶剤」という)を用いることができる。
上記疎水性有機溶剤は、好ましくは、25℃で液体の有機化合物であり、ヘプタン、オクタン、ノナン、ドデカン等の脂肪族炭化水素及びそのハロゲン置換物、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素及びそのハロゲン置換物、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物、N−メチル−2−ピロリドン、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
また、上記他の親油性物質としては、上記分散工程において用いることができる「芳香族ビニル化合物」、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物」、「アルコキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物」、「シアン化ビニル化合物」等(以下、「疎水性単量体」という)を用いることもできる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において、他の親油性物質としては、疎水性有機溶剤、疎水性単量体、並びに、疎水性有機溶剤及び疎水性単量体の組合せ、とすることができる。これらは、いずれも好ましいが、疎水性有機溶剤、又は、疎水性有機溶剤及び疎水性単量体の組合せ、が特に好ましい。
上記疎水性単量体は、好ましくは、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物及びシアン化ビニル化合物から選ばれた少なくとも1種であり、より好ましくは、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物及びシアン化ビニル化合物から選ばれた少なくとも2種である。
【0043】
本発明において、空隙率を低下させることなく、形状保持性に優れ、顔料の含有割合を高めることができ、隠蔽性に優れた顔料複合化中空粒子とするためには、上記吸収工程において用いられる第1エマルション、水溶性不飽和単量体及び親油性組成物の使用割合は、以下に示される。
上記水溶性不飽和単量体の使用量は、上記第1エマルションに含まれる第1複合粒子100質量部に対して、好ましくは0.01〜400質量部、より好ましくは0.05〜200質量部、更に好ましくは0.1〜100質量部である。
上記親油性組成物の使用量は、上記第1エマルションに含まれる第1複合粒子100質量部に対して、好ましくは10〜2,500質量部、より好ましくは20〜1,500質量部、更に好ましくは30〜1,000質量部である。
また、上記親油性組成物が、架橋性不飽和単量体及び疎水性単量体を含む場合には、上記水溶性不飽和単量体の使用量と、上記架橋性不飽和単量体の使用量と、上記疎水性単量体の使用量との和は、上記第1エマルションに含まれる第1複合粒子100質量部に対して、好ましくは10〜2,000質量部、より好ましくは20〜1,000質量部、更に好ましくは30〜500質量部である。
尚、第1重合工程で重合した不飽和単量体の全量、及び、第2重合工程で重合する単量体混合物の全量の質量比は、両者の合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは2〜90質量%及び10〜98質量%、より好ましくは5〜80質量%及び20〜95質量%、更に好ましくは10〜70質量%及び30〜90質量%である。上記範囲とすることにより、空隙率を低下させることなく、形状保持性に優れ、顔料粒子の含有割合を高めることができ、隠蔽性に優れる顔料複合化中空粒子を効率よく製造することができる。
【0044】
上記吸収工程において用いられる装置としては、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーター、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー、高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー、ナノマイザー等)等が挙げられる。これらの装置のうち、強い剪断力を与えて、上記親油性組成物を、上記第1複合粒子に吸収させることができることから、高圧ホモジナイザーが好ましい。
【0045】
上記吸収工程により得られる混合液においては、上記親油性組成物が上記第1複合粒子に吸収されており、上記水溶性不飽和単量体は、水系媒体に溶解している。上記第1複合粒子は、親油性組成物の吸収により、膨潤する場合がある。
【0046】
次に、第2重合工程は、上記混合液において、上記水溶性不飽和単量体及び上記架橋性不飽和単量体を含む単量体混合物を重合する工程である。
この第2重合工程において、上記単量体混合物の重合は、重合開始剤を用いて行われる。
【0047】
上記重合開始剤は、油溶性重合開始剤及び水溶性重合開始剤のいずれでもよく、また、これらを併用してもよいが、空隙率の高い空間部(中空)を有する顔料複合化中空粒子を製造できることから、水溶性重合開始剤を含むことが好ましい。尚、重合開始剤は、上記第1重合工程において用いることができる「重合開始剤」を適用することができる。
上記重合開始剤の使用量は、上記単量体混合物100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは0.5〜20質量部、更に好ましくは1〜10質量部である。
尚、上記単量体混合物の重合に際して、上記例示した連鎖移動剤(分子量調節剤)を用いてもよい。
【0048】
上記第2重合工程においては、通常、上記混合液を撹拌しながら、上記単量体混合物が重合される。重合が進行するにつれて、上記親油性組成物を吸収している第1複合粒子が収縮し、その内部に空間部(中空)を形成し、同時に、第1複合粒子の表面に上記単量体混合物による共重合体からなる膜が形成され、このような構造の顔料複合化中空粒子を含むエマルションを得ることができる。重合温度は、重合開始剤の種類により選択されるが、通常、20℃〜90℃、好ましくは30℃〜85℃である。また、重合時間は、通常、1〜12時間、好ましくは3〜10時間である。
【0049】
本発明により製造された顔料複合化中空粒子は、上記のように、顔料粒子が重合体相に分散されてなり、且つ、その内部に少なくとも1つの空間部が形成された中空粒子である。そして、重合体相を構成する重合体と、重合体相において均一に分散された顔料粒子とを含む外壁が、球体、楕円球体、多面体、あるいは、これらの変形体等の外形形状を反映する粒状体であり、且つ、それ自身で顔料粒子の色が反映された粒状体である。上記顔料複合化中空粒子の平均粒子径は、好ましくは10nm〜99μm、より好ましくは30nm〜50μm、更に好ましくは50nm〜10μmである。また、上記顔料複合化中空粒子の表面は、平滑な曲面、凹凸面等である。
【0050】
上記空間部の形状は、特に限定されず、球体、楕円球体、多面体、直線体、曲線体、あるいは、これらの組み合わせ又は変形体等とすることができる。従って、上記空間部に面する内壁面も、平滑な平面、曲面、凹凸面等とすることができる。
上記空間部の数は、1つであってもよく、複数であってもよい。更に、複数の空間部が形成されている場合、連続していてもよい。
【0051】
上記顔料複合化中空粒子の形態は、以下に例示される。
(1)1つの空間部のみを有する粒子。
(2)複数の空間部を有し、互いに孤立している粒子。
(3)複数の空間部を有し、互いに線状空間等で連通している粒子。
この態様(3)の顔料複合化中空粒子としては、内部に3次元網目状等の連通孔を有する粒子等が挙げられる。
【0052】
本発明の製造方法によれば、上記顔料複合化中空粒子において、中空粒子全体(中空粒子の外形)の体積に対する、全ての空間部の総体積の割合、即ち、空隙率、の上限を、好ましくは70体積%、より好ましくは60体積%、更に好ましくは50体積%とすることができる。尚、下限は、通常、10体積%である。空隙率が上記のように高くても、機械的強度が低下することなく、即ち、形状保持性に優れ、隠蔽性に優れた着色剤として有用である。
本明細書において、上記空隙率は、透過型電子顕微鏡(「H−7650」、日立ハイテクノジー社製)によって観察される粒子を任意に10個選択し、これらの粒子について、下記式(1)によって算出した値である。
[(全空間部の総体積)/{4π(中空粒子の外径/2)/3}]×100 (1)
尚、上記空間部が1つのみであり、且つ、形状が球状体である場合には、上記空隙率は、下記式(2)により算出することができる。
{(空隙の内径)/(中空粒子の外径)}×100 (2)
【0053】
また、上記顔料複合化中空粒子における重合体相を形成する重合体及び顔料粒子の割合は、上記重合体100質量部に対して、顔料粒子が、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは10〜70質量部、更に好ましくは15〜50質量部である。本発明によれば、重合体に対する顔料粒子の含有割合がこのように高くても、上記のように、空隙率を低下させることなく、形状保持性に優れた顔料複合化中空粒子を製造することができる。
尚、上記重合体は、上記分散工程において使用された不飽和単量体、好ましくは疎水性の非架橋性不飽和単量体に由来する構造単位と、上記吸収工程において使用された水溶性不飽和単量体及び架橋性不飽和単量体に由来する構造単位とを、少なくとも含む。即ち、上記重合体は、好ましくは、架橋性不飽和単量体に由来する構造単位(以下、「構造単位(a)」という。)、水溶性不飽和単量体に由来する構造単位(以下、「構造単位(b)」という。)、及び、上記非架橋性不飽和単量体に由来する構造単位(以下、「構造単位(c)」という。)を含む重合体である。
【0054】
上記の構造単位(a)、構造単位(b)及び構造単位(c)の含有量は、これらの合計を100質量%としたとき、それぞれ、好ましくは10〜90質量%、0.1〜20質量%及び8.9〜89.1質量%、より好ましくは20〜80質量%、0.5〜10質量%及び19.5〜79.5質量%、更に好ましくは25〜70質量%、1〜7質量%及び29〜74質量%である。上記構成であると、割れ又は潰れがなく、機械的強度に優れる。
【0055】
本発明における顔料複合化中空粒子の他の製造方法は、顔料粒子と、架橋性不飽和単量体及び非架橋性不飽和単量体を含む単量体混合物を含有する親油性組成物とを水系媒体において分散させ、分散液とする分散工程と、上記分散液において、上記単量体混合物を重合する重合工程と、を備え、上記顔料粒子が重合体相に分散されてなり、且つ、その内部に少なくとも1つの空間部(空隙)が形成された顔料複合化中空粒子を製造することを特徴とする。
【0056】
分散工程は、顔料粒子と、架橋性不飽和単量体及び非架橋性不飽和単量体を含む単量体混合物を含有する親油性組成物とを水系媒体において分散させ、分散液とする工程である。
【0057】
上記顔料粒子は、上記本発明の顔料複合化中空粒子の製造方法における「顔料粒子」の説明を適用することができる。
また、上記親油性組成物は、親油性(疎水性)を有し且つ上記水系媒体に不溶な組成物であり、架橋性不飽和単量体及び非架橋性不飽和単量体を含む単量体混合物を、その全体に対して、通常、50質量%以上含むものである。
従って、上記親油性組成物は、上記単量体混合物のみからなるものであってよいし、この単量体混合物と、他の親油性物質とからなる混合物等であってもよい。
【0058】
上記単量体混合物に含まれる上記架橋性不飽和単量体及び上記非架橋性不飽和単量体としては、上記本発明の顔料複合化中空粒子の製造方法における、それぞれ、「架橋性の不飽和単量体」及び「非架橋性の不飽和単量体」を適用することができる。但し、いずれも、親油性(疎水性)を有する化合物である。
【0059】
上記架橋性不飽和単量体としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレートが好ましい。
また、上記非架橋性不飽和単量体としては、上記本発明の顔料複合化中空粒子の製造方法における「疎水性単量体」が好ましい。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
上記架橋性不飽和単量体及び上記非架橋性不飽和単量体の含有割合は、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは10〜90質量%及び10〜90質量%、より好ましくは20〜80質量%及び20〜80質量%、更に好ましくは25〜70質量%及び30〜75質量%である。上記範囲の含有割合であれば、顔料粒子の含有率を高め、空隙率を高める重合反応性に優れる。
【0061】
上記単量体混合物は、上記架橋性不飽和単量体と、上記非架橋性不飽和単量体とからなる混合物であってよいし、この分散工程により得られる分散液の性質を損なわない範囲で、上記架橋性不飽和単量体と、上記非架橋性不飽和単量体と、水溶性不飽和単量体とからなる混合物であってもよい。後者の場合、上記単量体混合物中の水溶性不飽和単量体の含有割合は、上記単量体混合物に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下である。
上記水溶性不飽和単量体としては、上記水系媒体に溶解するものであれば、特に限定されず、上記本発明の顔料複合化中空粒子の製造方法における吸水工程で例示された「水溶性不飽和単量体」が好ましい。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
尚、上記単量体混合物が、上記水溶性不飽和単量体を含む場合、上記分散工程において、上記架橋性不飽和単量体と、上記非架橋性不飽和単量体と、上記水溶性不飽和単量体とを混合してなる混合物を用いてよいし、上記架橋性不飽和単量体及び上記非架橋性不飽和単量体を混合してなる混合物と、上記水溶性不飽和単量体とを別々に用いてもよい。後者の場合、まず、上記架橋性不飽和単量体及び上記非架橋性不飽和単量体を含む混合物を用いて親油性組成物を調製し、一方、上記水溶性不飽和単量体を水系媒体に溶解させた溶液を調製する。その後、両者を混合すればよい。
【0062】
上記他の親油性物質としては、上記本発明の顔料複合化中空粒子の製造方法における吸水工程で例示された「疎水性有機溶剤」が好ましい。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
上記分散工程において、上記顔料粒子及び上記親油性組成物を上記水系媒体に分散させる方法及びその装置は、特に限定されない。
上記分散工程における分散方法としては、下記に例示される。
(1)顔料粒子、親油性組成物及び水系媒体を一括して混合する方法。
(2)顔料粒子及び水系媒体を混合した後、親油性組成物を添加して更に混合する方法。
(3)親油性組成物及び水系媒体を混合した後、顔料粒子を添加して更に混合する方法。
(4)顔料粒子及び水系媒体の混合物、並びに、親油性組成物及び水系媒体の混合物を、各々、調製した後、両者を更に混合する方法。
尚、上記方法において、使用する水系媒体に、予め、顔料粒子及び/又は親油性組成物の分散性を改良する分散剤、後の重合工程において、顔料複合化中空粒子を含む安定なエマルションを形成させる乳化剤、連鎖移動剤等を併用してもよい。
【0064】
上記分散剤及び上記乳化剤としては、上記本発明の顔料複合化中空粒子の製造方法における分散工程で例示された「分散剤」及び「乳化剤」を、それぞれ、適用することができる。
上記分散剤を用いる場合、その使用量は、上記顔料粒子及び/又は上記親油性組成物の合計100質量部に対して、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは2〜25質量部、更に好ましくは3〜20質量部である。
また、上記乳化剤を用いる場合、その使用量は、上記親油性組成物の合計100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.1〜7質量部、更に好ましくは0.2〜5質量部である。
【0065】
また、上記分散工程において用いられる装置としては、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーター、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー、高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー、ナノマイザー等)等が挙げられる。これらの装置のうち、強い剪断力を与えて顔料粒子の凝集を抑制するとともに、少なくとも顔料粒子、架橋性不飽和単量体、疎水性単量体、及び、必要に応じて用いられる疎水性有機溶剤を含む分散混合体の粒径を小さくし、この分散混合体の分散性に優れた分散液を調製できることから、高圧ホモジナイザーが好ましい。この高圧ホモジナイザーを用いる場合、上記効果を得るための剪断力は、好ましくは30MPa以上、より好ましくは50MPa以上である。
【0066】
上記分散工程において得られる分散液は、顔料粒子並びに架橋性不飽和単量体、疎水性単量体、及び、必要に応じて用いられる疎水性有機溶剤が水系媒体において分散され、且つ、水溶性不飽和単量体が水系媒体に溶解されてなるものである。そして、この分散液は、好ましくは、顔料粒子、架橋性不飽和単量体、疎水性単量体、及び、必要に応じて用いられる疎水性有機溶剤が接触状態にあり、これらが分散混合体となって、水溶性不飽和単量体が溶解する水系媒体において分散している。
【0067】
次に、重合工程は、上記分散液において、上記単量体混合物を重合する工程である。
この重合工程において、上記単量体混合物の重合は、重合開始剤を用いて行われる。
【0068】
上記重合開始剤は、油溶性重合開始剤及び水溶性重合開始剤のいずれでもよく、また、これらを併用してもよいが、空隙率の高い空間部(中空)を有する顔料複合化中空粒子を製造できることから、水溶性重合開始剤を含むことが好ましい。尚、重合開始剤は、上記本発明の顔料複合化中空粒子の製造方法における第1重合工程で例示された「重合開始剤」を適用することができる。
上記重合開始剤の使用量は、上記単量体混合物100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは0.5〜20質量部、更に好ましくは1〜10質量部である。
尚、上記単量体混合物の重合に際して、上記例示した連鎖移動剤(分子量調節剤)を用いてもよい。
【0069】
上記重合工程においては、通常、上記分散液を撹拌しながら、上記単量体混合物が重合される。重合開始剤が、分散混合体の表面又は外部に存在することから、重合がこの分散混合体の表面側から進行し、同時に、分散混合体が収縮する。そして、その内部に空間部(中空)が形成される。上記分散混合体の表面は、次第に、上記単量体混合物による共重合体からなる膜となり、顔料粒子がこの膜の中で分散されてなる顔料複合化中空粒子を含むエマルションを得ることができる。重合温度は、重合開始剤の種類により選択されるが、通常、20℃〜90℃、好ましくは30℃〜85℃である。また、重合時間は、通常、1〜12時間、好ましくは3〜10時間である。
【0070】
本発明における他の製造方法において、上記分散工程及び上記重合工程を備えることによって、顔料複合化中空粒子を効率よく製造することができる。
【0071】
上記顔料複合化中空粒子の形態(外形形状、空間部の形状等)は、上記と同様である。尚、上記顔料複合化中空粒子の平均粒子径は、好ましくは10nm〜99μm、より好ましくは30nm〜50μm、更に好ましくは50nm〜10μmである。
【0072】
本発明における他の製造方法によれば、上記顔料複合化中空粒子において、全ての空間部の総体積の割合、即ち、空隙率の上限を、中空粒子全体(中空粒子の外形)の体積を100体積%とした場合に、好ましくは10体積%、より好ましくは20体積%、更に好ましくは25体積%とすることができる。尚、下限は、通常、5体積%である。空隙率が上記のように高くても、機械的強度が低下することなく、即ち、形状保持性に優れ、隠蔽性に優れた着色剤として有用である。
【0073】
また、上記顔料複合化中空粒子における重合体相を形成する重合体及び顔料粒子の割合は、上記重合体100質量部に対して、顔料粒子が、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは10〜90質量部、更に好ましくは20〜80質量部である。本発明によれば、重合体に対する顔料粒子の含有割合がこのように高くても、上記のように、空隙率を低下させることなく、形状保持性に優れた顔料複合化中空粒子を製造することができる。
尚、上記重合体は、上記重合工程において使用された単量体混合物に由来する構造単位を含む。上記重合体は、好ましくは、架橋性不飽和単量体に由来する構造単位(以下、「構造単位(a’)」という。)、水溶性不飽和単量体に由来する構造単位(以下、「構造単位(b’)」という。)、及び、非架橋性の不飽和単量体に由来する構造単位(以下、「構造単位(c’)」という。)からなる重合体である。
【0074】
上記の構造単位(a’)、構造単位(b’)及び構造単位(c’)の含有量は、これらの合計を100質量%としたとき、それぞれ、好ましくは10〜90質量%、0.1〜20質量%及び8.9〜89.1質量%、より好ましくは20〜80質量%、0.5〜10質量%及び19.5〜79.5質量%、更に好ましくは25〜70質量%、1〜7質量%及び29〜74質量%である。上記構成であると、割れ又は潰れがなく、機械的強度に優れる。
【0075】
本発明の製造方法によって得られた顔料複合化中空粒子は、塗料、インク、トナー等の構成成分として好適である。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例及び比較例における「部」及び「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0077】
1.顔料複合化中空粒子の製造及び評価(I)
実施例1
黒色顔料としてカーボンブラック(商品名「#2600」、三菱化学社製)からなる粒子(平均粒子径:150nm)43部と、スチレン35部と、アクリル酸n−ブチル15部とを、混合した後、これに、ポリビニアルコール(商品名「ゴーセノールGL03」、日本合成化学社製)10%水溶液70部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10%水溶液7部及び蒸留水300部を添加し、ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて混合した。そして、高圧ホモジナイザー(商品名「マイクロフルイダイザーM110Y」、みづほ工業社製)を用いて、70MPaの圧力で乳化分散し、顔料分散液(A−1)を得た(分散工程)。
その後、上記顔料分散液(A−1)をセパラブルフラスコに移液し、撹拌しながらフラスコ内を窒素ガスにより置換した。そして、油溶性重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル5部を添加し、75℃で4時間重合を行い、重合体相に顔料粒子が含まれてなる第1複合粒子を含む第1エマルションを得た(第1重合工程)。この第1重合工程における重合転化率は98.7%であった。第1複合粒子は、内部に空隙を有さない中実粒子であり、その平均粒子径を、透過型電子顕微鏡(「H−7650」、日立ハイテクノロジーズ社製)にて測定したところ、360nmであった。
次いで、第1複合粒子の固形分濃度を20%とした第1エマルション200部、アクリル酸2部、ジビニルベンゼン30部、メタクリル酸メチル42部、アクリル酸n−ブチル6部及び蒸留水400部を混合し、更に、上記高圧ホモジナイザーを用いて、70MPaの圧力で乳化分散し、第2エマルションを得た(吸収工程)。
その後、上記第2エマルションをセパラブルフラスコに移液し、攪拌しながらフラスコ内を窒素ガスにより置換した。そして、水溶性重合開始剤である過硫酸カリウムを水に溶かしてなる3%水溶液20部を添加し、75℃で4時間重合を行い、顔料複合化中空粒子を含み、且つ、固形分濃度が17%である水系分散体を得た(第2重合工程)。この第2重合工程における重合転化率は98.9%であった。得られた顔料複合化中空粒子は、形状が凹凸のある球体であり、平均粒子径が440nmであり、空隙を1つ有し、その内径は260nmであった。また、空隙率は20.6%であった(表1参照)。
【0078】
得られた顔料複合化中空粒子について、以下に示す方法で着色剤としての発色性、隠蔽性を評価した。その結果を表1に示す。
(1)発色性
着色剤(顔料複合化中空粒子)と、下記バインダー樹脂エマルションとを混合し、樹脂成分に対して着色剤の含有量が5%となるように調整した。この混合エマルションを、アプリケーターを用いて、記録媒体として王子製紙社製塗工紙「OSコート紙W」に、塗布量3.5g/cmとなるように手塗りした。そして、塗布面ベタ部の光学濃度(OD値)を測定することによって発色性を評価した。
(2)隠蔽性
上記(1)における混合エマルションを、アプリケーターを用いて、記録媒体として王子製紙社製「青上質紙」及び「赤上質紙」に、それぞれ、塗布量3.5g/cmとなるように手塗りした。そして、塗布面ベタ部の色相を目視観察した。上質紙の下地の色が見えない場合は「○」、下地の色が僅かに確認できる場合は「△」、下地の色が明確に確認できる場合は「×」と判定した。
【0079】
<バインダー樹脂エマルション>
攪拌装置及び温度調節機を備えた耐圧反応容器に、スチレン74部、ブチルアクリレート23部、アクリル酸3部、tert−ドデシルメルカプタン2部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10%水溶液10部及び蒸留水150部を仕込み、窒素ガスで重合系内を置換した。その後、重合開始剤として過硫酸カリウム3%水溶液20部を加え、75℃で4時間重合を行い、ガラス転移温度(Tg)60℃の重合体を含むエマルションを得た。これを、バインダー樹脂エマルションとして用いた。
【0080】
実施例2
カーボンブラック粒子に代えて、青色顔料であるC.I.ピグメントブルー15:3(商品名「Blue 4GNP」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)からなる粒子(平均粒子径:175nm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、顔料複合化中空粒子を含み、且つ、固形分濃度が17%である水系分散体を得た。この顔料複合化中空粒子は、形状が凹凸のある球体であり、平均粒子径が420nmであり、空隙を1つ有し、その内径は260nmであった。また、空隙率は23.7%であった(表1参照)。
顔料複合化中空粒子の製造途中において、第1複合粒子製造時の重合転化率は99.2%、第1複合粒子の平均粒子径は355nmであった。また、顔料複合化中空粒子製造時の重合転化率は99.1%であった。
得られた顔料複合化中空粒子について、実施例1と同様にして発色性及び隠蔽性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0081】
実施例3
カーボンブラック粒子に代えて、黄色顔料であるC.I.ピグメントイエロー93(商品名「クロモファインイエロ5930」、大日精化社製)からなる粒子(平均粒子径:150nm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、顔料複合化中空粒子を含み、且つ、固形分濃度が17%である水系分散体を得た。この顔料複合化中空粒子は、形状が凹凸のある球体であり、平均粒子径が455nmであり、空隙を1つ有し、その内径は300nmであった。また、空隙率は28.7%であった(表1参照)。
顔料複合化中空粒子の製造途中において、第1複合粒子製造時の重合転化率は98.9%、第1複合粒子の平均粒子径は360nmであった。また、顔料複合化中空粒子製造時の重合転化率は99.5%であった。
得られた顔料複合化中空粒子について、実施例1と同様にして発色性及び隠蔽性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0082】
実施例4
カーボンブラック粒子に代えて、赤色顔料であるC.I.ピグメントレッド178(商品名「Paliogen RedK4180」、BASF社製)からなる粒子(平均粒子径:200nm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、顔料複合化中空粒子を含み、且つ、固形分濃度が17%である水系分散体を得た。この顔料複合化中空粒子は、形状が凹凸のある球体であり、平均粒子径が470nmであり、空隙を1つ有し、その内径は300nmであった。また、空隙率は26.0%であった(表1参照)。
顔料複合化中空粒子の製造途中において、第1複合粒子製造時の重合転化率は99.0%、第1複合粒子の平均粒子径は365nmであった。また、顔料複合化中空粒子製造時の重合転化率は99.2%であった。
得られた顔料複合化中空粒子について、実施例1と同様にして発色性及び隠蔽性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0083】
実施例5
実施例1における吸収工程において、第1複合粒子の固形分濃度を20%とした第1エマルション200部、アクリル酸2部、ジビニルベンゼン30部、メタクリル酸メチル42部、アクリル酸n−ブチル6部、n−ヘプタン20部及び蒸留水400部を用いた以外は、実施例1と同様にして、顔料複合化中空粒子を含み、且つ、固形分濃度が16.5%である水系分散体を得た。この顔料複合化中空粒子は、形状が凹凸のある球体であり、平均粒子径が460nmであり、空隙を1つ有し、その内径は320nmであった。また、空隙率は33.7%であった(表1参照)。
顔料複合化中空粒子の製造途中において、第1複合粒子製造時の重合転化率は98.7%、第1複合粒子の平均粒子径は360nmであった。また、顔料複合化中空粒子製造時の重合転化率は98.8%であった。
得られた顔料複合化中空粒子について、実施例1と同様にして発色性及び隠蔽性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0084】
実施例6
実施例2における吸収工程において、第1複合粒子の固形分濃度を20%とした第1エマルション200部、アクリル酸2部、ジビニルベンゼン30部、メタクリル酸メチル42部、アクリル酸n−ブチル6部、n−ヘプタン20部及び蒸留水400部を用いた以外は、実施例2と同様にして、顔料複合化中空粒子を含み、且つ、固形分濃度が16.5%である水系分散体を得た。この顔料複合化中空粒子は、形状が凹凸のある球体であり、平均粒子径が435nmであり、空隙を1つ有し、その内径は310nmであった。また、空隙率は36.2%であった(表1参照)。
顔料複合化中空粒子の製造途中において、第1複合粒子製造時の重合転化率は99.2%、第1複合粒子の平均粒子径は355nmであった。また、顔料複合化中空粒子製造時の重合転化率は98.6%であった。
得られた顔料複合化中空粒子について、実施例1と同様にして発色性及び隠蔽性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0085】
比較例1
実施例1における吸収工程において、第1複合粒子の固形分濃度を20%とした第1エマルション200部、アクリル酸2部、メタクリル酸メチル62部、アクリル酸n−ブチル16部及び蒸留水400部を用いた以外は、実施例1と同様にして、顔料複合化粒子を含み、且つ、固形分濃度が17%である水系分散体を得た。この顔料複合化粒子は、形状が真球であり、平均粒子径が450nmであり、空隙を有していなかった(表1参照)。
尚、顔料複合化粒子の製造時の重合転化率は99.3%であった。
得られた顔料複合化粒子について、実施例1と同様にして発色性及び隠蔽性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0086】
比較例2
実施例2における吸収工程において、第1複合粒子の固形分濃度を20%とした第1エマルション200部、アクリル酸2部、メタクリル酸メチル62部、アクリル酸n−ブチル16部及び蒸留水400部を用いた以外は、実施例2と同様にして、顔料複合化粒子を含み、且つ、固形分濃度が17%である水系分散体を得た。この顔料複合化粒子は、形状が真球であり、平均粒子径が440nmであり、空隙を有していなかった(表1参照)。
尚、顔料複合化粒子の製造時の重合転化率は98.7%であった。
得られた顔料複合化粒子について、実施例1と同様にして発色性及び隠蔽性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
2.顔料複合化中空粒子の製造及び評価(II)
実施例7
黒色顔料としてカーボンブラック(商品名「#2600」、三菱化学社製)からなる粒子(平均粒子径:150nm)35部と、ジビニルベンゼン30部と、メタクリル酸メチル58部と、アクリル酸n−ブチル10部と、アクリル酸2部とを、混合した後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10%水溶液3部及び蒸留水500部を添加し、ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて混合した。そして、高圧ホモジナイザー(商品名「マイクロフルイダイザーM110Y」、みづほ工業社製)を用いて、70MPaの圧力で乳化分散し、顔料分散液(A−2)を得た(分散工程)。
その後、上記顔料分散液(A−2)をセパラブルフラスコに移液し、撹拌しながらフラスコ内を窒素ガスにより置換した。そして、水溶性重合開始剤である過硫酸カリウムを水に溶かしてなる3%水溶液20部を添加し、75℃で4時間重合を行い、顔料複合化中空粒子を含み、且つ、固形分濃度が20%である水系分散体を得た(重合工程)。この重合工程における重合転化率は98.3%であった。得られた顔料複合化中空粒子は、形状が真球であり、平均粒子径が480nmであり、空隙を1つ有し、その内径は260nmであった。また、空隙率は15.9%であった(表2参照)。
得られた顔料複合化中空粒子について、実施例1と同様にして発色性及び隠蔽性の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0089】
実施例8
カーボンブラック粒子に代えて、青色顔料であるC.I.ピグメントブルー15:3(商品名「Blue 4GNP」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)からなる粒子(平均粒子径:175nm)を用いた以外は、実施例7と同様にして、顔料複合化中空粒子を含み、且つ、固形分濃度が20%である水系分散体を得た。この顔料複合化中空粒子は、形状が楕円球状であり、平均粒子径が470nmであり、空隙を1つ有し、その内径は280nmであった。また、空隙率は21.1%であった(表2参照)。
顔料複合化中空粒子の製造時の重合転化率は99.0%であった。
得られた顔料複合化中空粒子について、実施例1と同様にして発色性及び隠蔽性の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0090】
実施例9
黒色顔料としてカーボンブラック(商品名「#2600」、三菱化学社製)からなる粒子(平均粒子径:150nm)35部と、ジビニルベンゼン30部と、メタクリル酸メチル58部と、アクリル酸n−ブチル10部と、アクリル酸2部と、n−ヘプタン30部とを、混合した後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10%水溶液3部及び蒸留水500部を添加し、ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて混合した。そして、高圧ホモジナイザー(商品名「マイクロフルイダイザーM110Y」、みづほ工業社製)を用いて、70MPaの圧力で乳化分散し、顔料分散液(A−2)を得た(分散工程)。
その後、上記顔料分散液(A−2)をセパラブルフラスコに移液し、撹拌しながらフラスコ内を窒素ガスにより置換した。そして、水溶性重合開始剤である過硫酸カリウムを水に溶かしてなる3%水溶液20部を添加し、75℃で4時間重合を行い、顔料複合化中空粒子を含み、且つ、固形分濃度が19.5%である水系分散体を得た(重合工程)。この重合工程における重合転化率は98.8%であった。得られた顔料複合化中空粒子は、形状が球状であり、平均粒子径が485nmであり、空隙を1つ有し、その内径は330nmであった。また、空隙率は31.5%であった(表2参照)。
得られた顔料複合化中空粒子について、実施例1と同様にして発色性及び隠蔽性の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0091】
比較例3
黒色顔料としてカーボンブラック(商品名「#2600」、三菱化学社製)からなる粒子(平均粒子径:150nm)35部と、メタクリル酸メチル78部と、アクリル酸n−ブチル20部と、アクリル酸2部とを、混合した後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10%水溶液3部及び蒸留水500部を添加し、ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて混合した。そして、高圧ホモジナイザー(商品名「マイクロフルイダイザーM110Y」、みづほ工業社製)を用いて、70MPaの圧力で乳化分散し、顔料分散液(A−2)を得た(分散工程)。
その後、上記顔料分散液(A−2)をセパラブルフラスコに移液し、撹拌しながらフラスコ内を窒素ガスにより置換した。そして、水溶性重合開始剤である過硫酸カリウムを水に溶かしてなる3%水溶液20部を添加し、75℃で4時間重合を行い、顔料複合化粒子を含み、且つ、固形分濃度が20%である水系分散体を得た(重合工程)。この重合工程における重合転化率は98.6%であった。得られた顔料複合化粒子は、形状が球状であり、平均粒子径が465nmであり、空隙を有していなかった(表2参照)。
得られた顔料複合化粒子について、実施例1と同様にして発色性及び隠蔽性の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0092】
比較例4
カーボンブラック粒子に代えて、青色顔料であるC.I.ピグメントブルー15:3(商品名「Blue 4GNP」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)からなる粒子(平均粒子径:175nm)を用いた以外は、比較例3と同様にして、顔料複合化粒子を含み、且つ、固形分濃度が20%である水系分散体を得た。この顔料複合化粒子は、形状が楕円球状であり、平均粒子径が470nmであり、空隙を有していなかった(表2参照)。
得られた顔料複合化粒子について、実施例1と同様にして発色性及び隠蔽性の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0093】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の製造方法によって得られた顔料複合化中空粒子は、塗料、インク、トナー等の構成成分として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料粒子及び不飽和単量体を水系媒体において分散させ、顔料分散液とする分散工程と、
上記顔料分散液に含まれる上記不飽和単量体を重合し、顔料粒子部及び重合体部を備える第1複合粒子を含む第1エマルションとする第1重合工程と、
上記第1エマルションと、水溶性不飽和単量体と、架橋性不飽和単量体を含む親油性組成物と、を混合し、混合液において、上記親油性組成物を上記第1複合粒子に吸収させる吸収工程と、
上記混合液において、上記水溶性不飽和単量体及び上記架橋性不飽和単量体を含む単量体混合物を重合する第2重合工程と、
を備え、
上記顔料粒子が重合体相に分散されてなり、且つ、その内部に少なくとも1つの空間部が形成された顔料複合化中空粒子を製造することを特徴とする、顔料複合化中空粒子の製造方法。
【請求項2】
上記第1複合粒子に含まれる上記顔料粒子の含有量は、上記第1複合粒子に含まれる上記重合体100質量部に対して、10〜100質量部である請求項1に記載の顔料複合化中空粒子の製造方法。
【請求項3】
上記親油性組成物が、有機溶剤を含む請求項1又は2に記載の顔料複合化中空粒子の製造方法。
【請求項4】
顔料粒子と、架橋性不飽和単量体及び非架橋性不飽和単量体を含む単量体混合物を含有する親油性組成物とを水系媒体において分散させ、分散液とする分散工程と、
上記分散液において、上記単量体混合物を重合する重合工程と、
を備え、
上記顔料粒子が重合体相に分散されてなり、且つ、その内部に少なくとも1つの空間部が形成された顔料複合化中空粒子を製造することを特徴とする、顔料複合化中空粒子の製造方法。
【請求項5】
上記親油性組成物が、有機溶剤を含む請求項4に記載の顔料複合化中空粒子の製造方法。

【公開番号】特開2010−31185(P2010−31185A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196910(P2008−196910)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】