説明

顕微鏡標本を被覆する手段

本発明は、標本を被覆するための被覆媒体で被覆されたカバースリップおよびその製造のための機械的処理に関する。本発明のカバースリップは、第一に、粘着性の被覆媒体を取り扱う必要がなく、第二に、標本がほんの数分後に永久的に被覆され、液浸対物レンズを用いてさえも顕微鏡下で調査可能であるので、標本の被覆を非常に簡便化する。本発明の被覆媒体の層厚および層厚の許容誤差によって、安定で耐久性のある被覆がなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆媒体で被覆されたカバースリップ、その製造方法、および顕微鏡標本を手動および自動で被覆することにおけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
透過光での標本の顕微鏡的調査は、極めて薄い対象物における光の屈折に基づいている。このため最初に、標本を標本スライドにマウントし、染色試薬または脱水剤などの試薬で処理し、続いてガラス様樹脂で包み固める。これは、サンプルの包埋またはサンプルへの樹脂の浸潤によって行なわれる。これらの樹脂は、被覆媒体としても知られ、調査下の材料の薄片に浸透し、相屈折なしに理想的に材料の真下の標本スライドと材料の上のカバースリップに接着する。このようにガラス相に埋め込まれた標本が得られ、これは透過光の顕微鏡下での調査に非常に好適であり、同時に保存される。
【0003】
標本スライドおよびカバースリップに用いられる好ましい材料は、一般的にガラスである。しかしながら、標本を被覆するガラス製のカバースリップの代わりに、例えば、プラスチックフィルムまたはプラスチック製のカバースリップを用いることができる。しかしながら、ガラスに比べて、これらの材料は、溶媒に対して完全に不浸透性ではないという欠点を有する。被覆した標本は、より早く古くなり、被覆フィルムは剥離するようになり得る。
【0004】
標本の被覆は、疎水性または親水性の被覆媒体において行なうことができる。
疎水性の媒体中において被覆するために、標本を、標本スライドにマウントし、染色した後、最初に脱水しなければならない。このため、それは、キシレンまたはキシレン代替物に至るリンス用アルコール系列によって導入される。続いて、標本スライドに疎水性の被覆媒体が提供され、標本に気泡が形成されないようにカバースリップを一番上に置く。被覆媒体を保存処理(cure)した後、標本はガラス様環境に気密的に包み込まれ、透過光顕微鏡下で調査し得る。
【0005】
親水性の被覆媒体において被覆するためには、試料は脱水する必要がないが、代わりに、すぐに被覆媒体を提供することができる。カバースリップで被覆し、被覆媒体の保存処理の後、疎水性の被覆媒体の使用の場合と同じように、標本はガラス様環境に気密的に包み込まれ、透過光顕微鏡下で調査し得る。
【0006】
標本の被覆は、とても複雑で時間が掛かる工程である。被覆媒体が手動で標本スライドに適用される場合、一定量が常に適用されることを保証しなければならないが、これはそうしないと、媒体が側方に漏れ、膠着するか、または代替的に被覆が不完全になるからである。自動被覆装置の使用においても、漏れた被覆媒体が装置を詰まらせるので、不具合が頻繁に起きる。被覆した標本を、被覆後にあまりに早く積み重ねたり、互いに近くに保存すると、互いにまたは周囲に貼りついてしまうこともある。
【0007】
さらに、被覆媒体は保存処理に、少なくとも30分の乾燥時間が必要であり、親水性の媒体の場合は45分以上も必要である。このように、包埋した標本を顕微鏡で調査することができる前に、長い待ち時間を受け入れなければならない。このことはとくに、液浸対物レンズ(immersion objectives)を用いた調査に適用される。長い時間が要求されることは、とくに、例えば、手術の間に取り出し、すぐに調査すべき迅速切片において、さらなる大きな欠点である。
【0008】
US 3,498,860およびEP 1242800には、すでに被覆媒体または接着剤で予め被覆されたカバースリップが記載されている。この方法の利点は、カバースリップを被覆媒体で予め被覆し、乾燥し、使用まで保存し得ることである。被覆の間、液体の被覆媒体で処理する必要がない。乾燥時間も非常に短縮される。それでもなお、US 3,498,860およびEP 1242800に記載の方法は、被覆されたカバースリップが穏やかな接着性を示すのみで、しばしば短時間で再び剥がれるようになるので、実際上の用途を見出すことができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明の目的は、従来技術の欠点を有しない、被覆媒体で被覆されたカバースリップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
被覆媒体の層が0.05〜0.8mmで、層厚の許容誤差(layer-thickness tolerance)が±0.1mm以下、好ましくは、±0.05mm以下の場合、極めて良好な接着性を有し、長寿命の被覆媒体で被覆されたカバースリップを提供することができることが見出された。これらの性質を有する被覆は、手動の方法で確実には製造することができない。しかしながら、機械的処理によって、所望の被覆を備えたカバースリップの製造が可能であることが見出された。
【0011】
したがって本発明は、実質的にカバースリップおよびそれに適用した被覆媒体の層からなる標本被覆手段であって、被覆媒体の層厚が0.05〜0.8mmであり、層厚の許容誤差が±0.1mm以下であることを特徴とする、前記標本被覆手段に関する。
【0012】
好ましい態様において、層厚の許容誤差は±0.05mm以下である。
好ましい態様において、被覆媒体の層厚は約0.2mmである。
好ましい態様において、カバースリップはガラス製である。
好ましい態様において、24×50mmの領域における乾燥状態での被覆媒体の固形分は150〜300mgである。
【0013】
本発明はさらに、被覆媒体で被覆されたカバースリップの製造方法であって、被覆媒体がカバースリップに、機械で、1つまたは2つ以上の分注針により、プリント処理、液体カーテンによる被覆、スロットノズルを介した適用、ドクターブレードによる分配またはスピンコーティングにより、層厚が0.05〜0.8mmかつ層厚の許容誤差が±0.1mm以下で適用されることを特徴とする、前記製造方法に関する。
【0014】
好ましい態様において、被覆媒体は、1つまたは2つ以上の分注針により適用される。
好ましい態様において、被覆媒体は、スクリーンプリントにより適用される。
本発明はまた、本発明の被覆媒体で被覆したカバースリップの、手動または自動で標本を被覆するための使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明によれば、標本の被覆とは、マウントされ、任意に染色された、中間媒体(intermedium)で湿った標本が位置づけられた標本スライドおよび本発明に従い被覆されたカバースリップの提供、続いて標本スライドをカバースリップで被覆することを意味する。中間媒体との用語は、疎水性の被覆媒体での被覆の場合、脱水系列または染色の最終溶媒、すなわち典型的にはキシレンまたはキシレン代替物にあてられ、親水性の被覆媒体での被覆の場合、典型的には水にあてられる。標本は、被覆までの長時間、これらの溶媒に保存され得る。
【0016】
本発明のカバースリップは、標本の被覆を極めて簡易にする。従来技術による被覆は、3つの構成材、すなわち、標本をマウントした標本スライド、液体の被覆媒体およびカバースリップを一緒にする必要がある一方、この方法は、本発明により、2つの簡単に操作できる構成材、すなわち、中間媒体で湿った標本がマウントされた標本スライドおよび被覆されたカバースリップに減らされる。
【0017】
本発明によれば、カバースリップとの用語は、例えば、ガラス製またはプラスチック製のカバースリップあるいはフィルムなどのような、公知で本目的に好適な全てのカバースリップを包含する。好適なものとして、本発明によれば、ガラス製のカバースリップが挙げられる。それらのサイズに依存して、これらは好ましくは、一方側に所定量の液体の被覆媒体が提供される。
【0018】
本発明の好ましい態様において、カバースリップの一方側のその全体に、被覆媒体の層が提供される。しかしながら、層は、カバースリップの全体を被覆せず、代わりに端の部分をフリーにしておくこともできる。とくに、カバースリップは、顕微鏡下で調査される標本が位置する点において、本発明の被覆媒体層で被覆されることが重要である。被覆媒体の層は、ここで、全ての側で標本を越えて突出する十分な量で標本の領域よりも大きくなくてはならず、これにより標本が位置付けられる標本スライドと強い結合が生じる。
【0019】
カバースリップの被覆に用いる被覆媒体は、従来技術による被覆のために典型的に用いられる全ての被覆媒体であることができる。被覆は、疎水性および親水性の被覆媒体で行なうことができる。これらは、例えば、カナダバルサム、ポリメタクリレートなどのアクリレート樹脂、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールまたはグリセリンゼラチンなどの有機ポリマーベースの被覆媒体である。このタイプの被覆媒体は典型的に、水、キシレンまたはトルエンなどのキシレン代替物または他の芳香族もしくは脂肪族炭化水素などの溶媒、ならびに当業者に知られた添加剤を含む。被覆媒体のさらなる例は、"Romeis - Mikroskopische Technik" [Romeis – Microscopic Techniques], Urban & Schwarzenberg, 17th edition, 1989, 296-297頁に見出される。
【0020】
カバースリップの被覆のための被覆媒体の固形分は約40%以上であるべきであることが見出された。しかしながら、この値は、ガイド値としてみなされるだけで、絶対的な値としてみなされるべきではない。被覆媒体の個々の固形分、表面張力および粘度に依存して、この値は変わり得る。被覆分野の当業者は、ガイド値によって、いくつかのコーティングおよび被覆試験の後に、カバースリップ1mmあたりの被覆媒体のどの程度の固形分およびどの程度の容量が、具体的な被覆媒体に適しているかを評価することができる。
【0021】
商業的に入手可能な被覆媒体の粘度は、その使用前に、固形分が増大するように、いくらかの溶媒のエバポレーションによって増大することができる。2000〜4000mPasの粘度を有する被覆媒体が特に好適であると分かった。約3000mPasの粘度を有する被覆媒体の使用がとくに有利である。高い粘度の媒体の処理は、達成すべき層厚および層厚の許容誤差ではあまり可能ではない。
【0022】
乾燥状態での被覆媒体の固形分は、24×50mmの領域において150〜300mgであるべきである。約200mgが、24×50mmの領域に好適に適用される。固形分が高い場合、層厚が大きくて溶媒が層に浸透しないか、被覆の間に十分に素早く浸透せずに、その結果標本スライドとカバースリップとの結合が生じないという虞がある。適用が少なすぎる場合、ポリマー量が不十分で機能性が保証されない。
【0023】
安定で耐久的な被覆について臨界的な、被覆したカバースリップのパラメーターは、とくに、被覆媒体の層厚(layer thickness)および層厚の許容誤差である。層厚が±0.1mmの許容誤差を超えて変化する場合、カバースリップは、しばしばほんの短い時間でいくつかの場所で標本から離れるようになる。その結果、標本は時期を早めて古くなり、そしてもはや顕微鏡的に調査できなくなる。最適な保存の安定性および耐久性は、被覆が、0.05〜0.8mm、好ましくは0.1〜0.4mmの厚さ、および±0.1mm以下、好ましくは±0.05mm以下、特に好ましくは±0.02mm以下の層厚の許容誤差を有する場合である。このタイプの被覆は、手動では困難で信頼性がない適用となり得るだけである。しかしながら、種々の機械的処理が、カバースリップへの被覆媒体の均一な適用に極めて好適であることが見出された。
【0024】
分注針(単数または複数)による適用
1つまたは2つ以上の分注針による適用が、とくに好ましい。この方法は、被覆すべき材料の全領域の被覆およびまた部分領域の被覆が可能である。被覆媒体は容器に入れられ、例えば、分注ポンプ、圧縮空気、液体圧の助けを借りて、または、ピストンによって、1つまたは2つ以上の分注針を介してカバースリップに適用される。被覆は、分注針および/またはカバースリップまたはカバースリップを有する容器をxおよびy方向に移動させることによって行なわれる。対応する均質な表面および層厚は、針またはカバースリップのx/y方向の移動速度を介して、および/または、針からの押出量を介して、制御することができる。
【0025】
この方法の利点は、被覆媒体を正確に予め粘度に関して調整することができ、かつ、被覆媒体が放出まで閉鎖系に保たれる(被覆過程の間、粘度に変化なし)ということである。分注針の直径は、典型的には0.25〜7.5mmであり、好ましくは、約0.8mmである。針とカバースリップとの間の距離間隔は、層厚の許容誤差に対応する極めて狭い許容誤差で起こることが保証されなければならない。分注針のカバースリップからの距離間隔は、被覆媒体の所望の層厚に対応すべきである。被覆は、各被覆媒体に対して、分注針の速さ、個々の被覆ラインの距離間隔、被覆媒体の体積流量および被覆媒体の粘度を介して最適化可能である。必要であれば、針および/または被覆媒体は暖めることができる。
【0026】
プリント処理
カバースリップ、フィルムおよびプレートの被覆のため、プリント処理もまた好適である。
この目的に最も重要なのは:
パッドプリント、
オフセットプリント、
グラビアプリント、
スクリーンプリント、
インクジェット
である。
【0027】
これらのうち、とくに好適であると示された方法は、スクリーンプリント法である。ここで高粘度の被覆媒体で作業すること、したがって定義された層厚を適用することが可能である。加えて、スクリーンは、所望の領域だけを被覆するように設計することができる。長いプリントの実行および大型装置(large-format machines)の良好な活用を保証するために、カバースリップはキャリアに置かなければならない。これは大量のプレートレットを収容できる。プリントのための平面が提供されるよう、カバースリップが正確にフィットする空洞が提供されるようにこれを設計しなければならない。プリントの間、強い力が生じるので、カバースリップは好ましくは真空の支持によって固定されている。次いで、被覆組成物をスクリーンに置き、続いてプリント操作を始める。
【0028】
充填ドクターブレードにより、典型的に、スクリーン全体に媒体を分配する。続いて、プリンティングドクターブレードがスクリーン全体を移動する。これは、カバースリップから数ミリメートルの距離間隔を有する充填されたスクリーンを、カバースリップ上に押しやる。これにより、カバースリップに被覆組成物をプリントする。
【0029】
層厚は、もっぱら用いたスクリーンに依存する。スクリーンの開いたメッシュの幅およびフィラメント径は、ここでそれぞれの被覆媒体、とくにその粘度に適合しなければならない。一般に、好適なスクリーンは、300〜1500μm、好ましくは500〜1000μmのメッシュ幅および100〜500μmのフィラメントの直径を有しているものである。例えば、2900mPasの粘度を有する被覆媒体の場合、200μmの湿潤層厚は、688μmのメッシュ幅および140μmのフィラメント径を有するスクリーンを用いて達成された。次いで、乾燥により、層厚は幾分低減される。しばしば、とくに相対的に低粘度の被覆媒体の場合、1つのスクリーンプリント被覆だけでなく、代わりの2つまたは3つ以上のスクリーンプリント被覆を、例えば、カルーセル(carousel)スクリーンプリント法を用いて行なう利点がある。プリントの後、カバースリップを含むキャリアを除去し、新しい操作が準備できる。
【0030】
液体カーテンによる被覆
カバースリップを液体カーテン下で押す。層厚は、スリップの速さおよび被覆媒体の体積流量によって決定される。この方法のため、被覆媒体は、均一な流れを保証するため、極めて高度に希釈しなければならない。結果的に、複数の被覆パス(coating passes)を実行するのが有利であり得る。この方法の利点は、このようにして達成され得る、とくに均一な表面にある。
【0031】
スロットノズルを介した適用
この方法において、被覆媒体は、正確にカバースリップの幅を有するスロットノズルを介して圧力によって送られる。ノズルを動かすことによって、表面全体が走査され、したがって媒体がスリップに適用される。ノズルは、媒体がノズルから直接的にスリップに適用されるように、または、媒体が、ガラス表面に当たった後に、その上にデバイスによって広げられるように、設計され得る。
【0032】
被覆媒体のスポット適用およびスライドを用いる分配(ドクターブレードによる適用)
被覆媒体は、手動の方法と同じように、一点でカバースリップに適用される。それは、続いて、スライド、いわゆるドクターブレードを用いて分配される。これは、ガラス表面上で直接動かされるスパイラルドクターブレード、または所望の層厚に応じた距離間隔で動かされるプレートであってもよい。この方法において、正確な層厚が十分に達成され得る。しかしながら、少しの被覆媒体は常に側方へ追いやられる。したがって、カバースリップが置かれるキャリアは、被覆に必要である。これはまた、各被覆パスの後、洗浄しなければならない。さらに、媒体の保存処理の後はもはや取り外すことができないので、プレートレットは、常に、乾燥のためにキャリアから分離されなければならない。
【0033】
スピンコーティング
この方法において、被覆されるべきカバースリップは回転する。被覆媒体を液滴の形状で適用し、遠心力によって分配する。いくらかの媒体はいつもガラスの表面を離れるので、ここでスピンコーティング装置の絶え間ない洗浄が必要であり、そうしなければ、ガラスの汚染(soiling)と付着(sticking)が排除できない。
【0034】
一般に、前述の各方法において、被覆媒体の適用の後に乾燥工程が続く。被覆したカバースリップが、すぐに用いられるべき場合には、1〜5分の乾燥時間で十分であり、これは好ましくは、乾燥キャビネットでわずかに上昇した温度で行われる。過剰な温度、すなわち、60〜80℃を超える温度は、ポリマーが攻撃され、亀裂が被覆に生じ得るので、多くの被覆媒体には好ましくはない。
カバースリップを貯蔵しなくてはならず、この目的で互いに上に直ちに積み重ね得る場合、24時間以上のより長い乾燥時間が有利である。乾燥キャビネットで60℃2時間が、例えば、極めて好適であることが示されている。
【0035】
被覆のため、被覆されたカバースリップを、知られた手法を用いて、被覆された側が中間媒体でまだ湿った標本スライドの上になるように置く。被覆媒体での被覆により、カバースリップおよび標本スライドは数秒以内に結合し、保存処理される。標本は、典型的には、たった3分後に、通常、1分未満後においてさえ完全に保存処理され、次いで、例えば、液浸対物レンズを用いて、顕微鏡下で調査することができる。
【0036】
簡単な取扱いによって、本発明の被覆されたカバースリップが手動および自動の両方の標本の被覆に好適になる。被覆に液体の被覆媒体を用いる必要がないので、付着の危険がない。標本スライドに固定された標本は、好ましくは、最終溶液(中間媒体)、すなわち、例えば、水またはキシレンまたはキシレン代替物から、染色の直後および任意に脱水後に取り出され、まだ湿った状態で被覆される。標本が既に実質的に乾燥している場合、少量の中間媒体で再度湿らされる。
【0037】
注目すべきさらなるパラメーターは、標本のタイプと厚さである。本発明のカバースリップは、典型的には従来技術に従っても被覆されるような、例えば、組織学および細胞学からの標本の被覆に好適である。したがって、本発明のカバースリップは、とくに、15μm以下の厚さを有する標本の被覆に好適である。カバースリップの被覆の厚さおよび被覆媒体の性質に依存して、より厚い標本もまた被覆され得る。
【0038】
手動の被覆に加えて、本発明の被覆されたカバースリップおよび方法はまた、自動被覆装置を用いた自動の被覆にも用いることができる。従来技術に従う所定量の被覆媒体で標本スライドを湿らせ、続いてカバースリップを適所に置く自動被覆装置は、商業的に入手可能である。本発明の被覆方法は、機能をわずかに改変した従来技術による自動被覆装置および本発明の方法のために設計された自動被覆装置の両方を用いて行なうことができる。従来の自動被覆装置は、標本スライドに液体の被覆媒体を適用するために、分注ポンプ(dispensing pump)を有している。これは本発明の方法においては必要ではない。したがって、この工程は、本発明の方法のための自動被覆装置の使用において省くことができる。さらなる可能性は、被覆媒体の代わりに、この分注デバイスを介して標本スライドに少量の中間媒体(水、キシレンなど)を適用することにある。標本スライドは、本発明の方法において標本がまだ湿ったままであるべきなので、染色または脱水後の既にわずかに再び乾燥した標本を、少量の中間媒体で再度湿らせることができる。標本は続いて、本発明のカバースリップで被覆される。
【0039】
本発明の方法にとくに好適な自動被覆装置の他の態様において、標本を備えた標本スライドは、溶媒(中間媒体)で満たされた容器に貯蔵される。標本スライドは、被覆のために溶媒容器の外に移されるだけであり、被覆されたカバースリップにより直接的に被覆される。被覆媒体の適用またはさらなる量の溶媒は、ここでは必要ではない。
【0040】
本発明のカバースリップの使用により、自動被覆装置は、粘着性の被覆媒体が装置に入ることができないので、従来の方法よりも有意により穏やかに扱われる。ちょうど手動の被覆の場合のように、標本はほんの短時間の後に顕微鏡下で調査できる。
【0041】
本発明のカバースリップおよびこれらカバースリップの製造のための本発明の方法は、したがって、標本を素早く簡単に被覆することの可能性を提供する。粘着性の被覆組成物の手動の取扱いは余計である。耐久性の被覆が、本発明の被覆媒体の層厚および層厚の許容誤差によって製造される。被覆した標本は、カバースリップが離れるようになることなしに、長期間貯蔵され得る。
【0042】
さらにコメントすることなしに、当業者は、最も広い範囲で前述のことを利用することができるであろう。したがって、好ましい態様および例は、絶対的にいかなる方法でも限定されない記述的開示とだけみなされるべきである。
【0043】
本明細書に記載の全ての出願、特許および刊行物、とくに対応する出願日2004年3月4日の出願EP 04005103.9の完全な開示内容は、参照として本願に組み入れられる。
【0044】
[実施例]

1.スクリーンプリントによる被覆
開放メッシュ幅688μmおよびフィラメント直径140μmを有するスクリーンを700×500mmのフレームに広げ、自動フラットベットスクリーンプリント装置にマウントした。支持体の上に、6×7列の25×50mmカバースリップを真空によってキャリアに位置づけた。粘度2900mPasを有する被覆媒体をスクリーンに適用し、スクリーンをカバースリップの上に降ろし、次いで、被覆媒体をスクリーンを介し、ドクターブレードの助けによって、カバースリップ上に押し付けた。その後すぐに、スクリーンを再び起こした。続いてカバースリップを乾燥のために取り出した。
【0045】
2.分注針による被覆
デバイスの助けで、カバースリップ(25×50mm)を真空試料台(vacuum stage)に位置づけた。分注針の直径は、0.8mm以上であった。用いた被覆媒体は、粘度2900mPasを有するEntellan(登録商標)であった。分注針を備えたシリンジを充填し、ピストンで密封した。分注針とカバースリップとの間の距離間隔は、適用すべき層厚(ここでは:0.2mm)に対応すべきである。分注ロボットによって、分注針をカバースリップの上に位置づけた。次いで、シリンジプランジャに約2barの負荷をかけ、針を60〜100mm/分の速度で移動した。個々の「被覆媒体の折り目(folds)」をZ型に適用した。この手順により、カバースリップを個別に被覆した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にカバースリップおよびそれに適用した被覆媒体の層からなる標本被覆手段であって、被覆媒体の層厚が0.05〜0.8mmであり、層厚の許容誤差が±0.1mm以下であることを特徴とする、前記標本被覆手段。
【請求項2】
層厚の許容誤差が、±0.05mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の手段。
【請求項3】
被覆媒体の層厚が、約0.2mmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の手段。
【請求項4】
カバースリップがガラス製であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の手段。
【請求項5】
24×50mmの領域における乾燥状態での被覆媒体の固形分が150〜300mgであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の手段。
【請求項6】
被覆媒体で被覆されたカバースリップの製造方法であって、被覆媒体がカバースリップに、機械で、1つまたは2つ以上の分注針による装置により、プリント処理、液体カーテンによる被覆、スロットノズルを介した適用、ドクターブレードによる分配またはスピンコーティングにより、層厚が0.05〜0.8mmかつ層厚の許容誤差が±0.1mm以下で適用されることを特徴とする、前記製造方法。
【請求項7】
被覆媒体が、1つまたは2つ以上の分注針により適用されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
被覆媒体が、スクリーンプリントにより適用されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の標本被覆手段の、手動または自動で標本を被覆するための使用。

【公表番号】特表2007−526463(P2007−526463A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501138(P2007−501138)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000982
【国際公開番号】WO2005/085799
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】