説明

顕微鏡照明系および方法

【課題】顕微鏡照明系およびその方法を提供する。
【解決手段】第1の共焦点および第2の非共焦点顕微鏡照明モード間を切り替える顕微鏡照明系であって、第1の顕微鏡照明モードは、照明光源装置10と、光学軸9に垂直な平面において照明ビーム16を偏向させるための走査ミラー装置2と、顕微鏡対物レンズ7の後焦点面6に走査ミラー装置2を結像するための、かつ照明ビーム16を拡張するための走査アイピース3および下流の走査チューブレンズ5であって、顕微鏡対物レンズ7が、検査対象の試料8上に照明ビームを集束する走査アイピース3および下流の走査チューブレンズ5と、を含む顕微鏡照明ユニット100を有する。特に位置決め顕微鏡法用に第2の顕微鏡照明モードを提供するため、顕微鏡照明ユニット100は、照明ビームが顕微鏡対物レンズ7の後焦点面6に集束されるような方法で、照明ビーム16の経路に挿入できる集束レンズ4を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡照明系に関し、かつ位置決め顕微鏡法用に顕微鏡照明を提供するための対応した方法に関し、特に、本発明は、走査顕微鏡、特に共焦点顕微鏡用の異なる照明モードへの切り替えを可能にする。
【背景技術】
【0002】
本発明は、超解像度位置決め顕微鏡法における方法の技術的実行に関する。かかる方法は、画像の取得中に、ほんの少数の対象物点が、所定の時間に同時に光を放射することを特徴とする。これらの点が、光学解像度より著しく大きい間隔を有する場合に、これらの点の位置は、用いられる対物レンズの光学解像度より高い精度で、数学的な重心決定法によって決定することができる。異なる対象物点におけるこれらの個別画像の多くが合計されると、対象物全体の超解像度画像を作成することが、最終的に可能である。かかる方法の周知の変形は、ほんの少数の対象物点が光を同時に放射することをこれらの変形が保証する方法において異なる。かかる方法の名称例は、PALM、STORM、およびGSDIMである。最後の方法を以下で簡単に説明する。
【0003】
GSDIMは、「個別分子リターンが後に続く基底状態抑制」を表す。この方法は、三重項状態(同様に「暗状態」)を有する蛍光団を用いる。最初に、色素分子が、適切なレーザ出力の照射によって、基底状態から励起状態に移される。励起状態から三重項状態に遷移が発生するが、三重項状態は、励起された一重項状態(単に約3ナノ秒)よりはるかに長い寿命(約100ミリ秒)を有し、その結果、十分な光強度が与えられると、分子は、三重項状態で蓄積する。分子は、三重項状態から基底状態に戻り、自然放射をもたらす。これらの自然放射の個別画像が記録され、自然放射の位置は、光学解像度より高い精度で、前述の数学的方法によって決定することができる。達成可能な解像度は、20〜25nmであり、一般に60nm未満である。しかしながら、達成可能な解像度はまた、レーザ出力および使用されるカメラの解像度に依存する。
【0004】
GSDIMを実行するための主な技術的要件は、高出力光を用いた試料の蛍光励起である。これは、適切なレーザ照明を介して達成することができ、今度は、この適切なレーザ照明は、全反射蛍光顕微鏡(TIRF)照明機器によって提供可能であり、この照明機器は、対物レンズの瞳(対物レンズの後焦点面)にレーザビームを集束する。これは、試料の均一な照明および同時に照明の高焦点深度を提供するという利点を有する。レーザ出力を最適に用いるために、レーザビームの断面は、照明される試料フィールドが、TIRF照明と比較して、わずか4分の1になる程度に低減される(例えば、照明される試料フィールドの直径は、100×倍率の対物レンズを用いる場合に約60μmであり、一方でTIRF照明では、この直径は、約250μmである)。
【0005】
TIRF照明とGSDIM用の照明との間の切り替え方法を、図1aおよび1bに関連して以下で示す。
【0006】
以下は、TIRF顕微鏡法に関するいくつかの初期観察である。典型的には、高開口数を備えた油浸対物レンズを有する逆光学顕微鏡が、全反射用に必要である平坦な入射角を達成するために用いられる。全反射は、カバーガラスと試料との間の境界面で生じる。いわゆるエバネッセント場が、カバーガラスの背後の領域に形成される。この場の強度は、試料の中へと指数関数的に減少する。可視光に関して、侵入深さは、典型的には100〜200nmである。照射された光波長を吸収できる蛍光分子が、この領域に存在する場合に、これらの分子は、励起されて蛍光を放射することができる。試料における観察可能な層の厚さが、わずか100〜200nmなので、通常の蛍光顕微鏡法(典型的には500nmの層領域)を用いるよりも著しく高い解像度を光学軸に沿って達成することが可能である。TIRF顕微鏡法において、励起光は、対物レンズのエッジにおいて結合され、その結果、励起光は、必要な平坦な角度でカバーガラスに当たる。
【0007】
図1aは、照明ビーム16を用いる典型的なTIRF照明を概略的に示す。光源18(典型的にはレーザ)から生じた光(破線によって表されている)は、コリメート光学系17によってコリメートされる。コリメート光は、走査アイピース13によって集束される。搬送光学系14は、対物レンズ7の後焦点面6上に焦点を結像するが、光は、前もって分割ミラー19によって反射される。分割ミラーは、例えば、物理的分離、幾何学的分離、色分離、または偏光分離を提供してもよい。搬送光学系14は、顕微鏡スタンドの機械的特性ゆえに必要とされる。なぜなら、走査アイピース13は、対物レンズ7の後焦点面6上に直接集束できるように対物レンズ7に十分に接近して実装することができないからである。走査アイピース13は、異なる位置に後焦点面を有する対物レンズを使用できるように集束可能である(矢印によって示す)。対物レンズ7の後焦点面6に集束されたレーザビームは、対物レンズによって平行光として試料8の空間(対象物空間)の中に投射される。この平行ビームは、試料8において直径D(典型的には約250μm)を有する円を照明する。
【0008】
TIRF顕微鏡法に関して、走査ミラー12(概略的に示す)が、傾斜可能であることが非常に重要である。走査ミラー12を傾斜させることによって(2つの矢印によって示す)、焦点は、対物レンズの光学軸に垂直に後焦点面6において移動される。その結果、レーザビームは、走査ミラー12の傾斜に依存する角度で試料8を通過する。この角度が、カバーガラスと試料媒体との間の全反射角度より大きい場合に、上記のようにTIRF顕微鏡法の話になる。
【0009】
次に、このように照明された試料は、蛍光(実線によって表されている)を放射する。この光は、ビームスプリッタ19を通過し、かつチューブレンズ21を通って画像22を形成する。
【0010】
図1bは、GSDIM方法用の典型的な照明を示す。ここで非常に重要なことは、照明される試料面積当たりの高レーザ出力である。したがって、レーザ出力が、大幅に低減された試料直径D(典型的には約60μm)に作用することが要求される。これは、TIRFおよびGSDIM照明間の切り替えを可能にする方法で、図1に関連して説明したTIRF照明を修正することによって達成することができる。これは、上記のTIRF照明機器において、望遠鏡11を光路に挿入してビーム直径を低減することによって達成される(破線によって表されている)。このように、試料において照明される円は、直径D(ここでは約60μm)に低減され、その結果、出力密度は、約18倍増加される。典型的には、レーザビームは、垂直入射で試料8に当たる。まれに、観察は、走査ミラー12を用いて傾斜された位置で実行される。さらなる詳細については、図11aに関連して提供された説明を参照されたい。
【0011】
TIRF照明からGSDIM照明への切り替えにおける上記した周知のアプローチは、望遠鏡を挿入することによって、達成が比較的容易であるという利点を有するが、しかしそれはまた、次の欠点を有する。すなわち、GSDIM顕微鏡法が、TIRF条件下、すなわち走査ミラー12が傾斜された位置にある状態で、めったに実行されないという欠点を有する。さらに一層重要なことは、TIRF自体がめったに用いられない用途であることであり、その結果、それをGSDIM顕微鏡法と組み合わせてもほとんど意味がないように思われる。したがって、位置決め顕微鏡法に関心があるユーザのほとんどは、彼らがめったに用いない複雑なTIRF照明機器を含む購入をせざるを得ない。
【0012】
別の用途は、共焦点顕微鏡法である。この点において、広範囲な先行技術が参照される。共焦点顕微鏡法は、従来の光学顕微鏡法(同様に「広視野顕微鏡法」)と異なり、どの時点でも、試料全体ではなく、試料の一部または点だけを照明する。試料は、適切に集束されたレーザまたは点光源を用い、顕微鏡対物レンズを通して点ごとに照明および走査される。したがって、試料の全ての走査位置における反射光の強度を連続的に測定することが可能である。続いて、試料の画像が、測定された光強度から構成される。それらの高い軸方向解像度ゆえに、共焦点顕微鏡によって、異なる焦点面における多数のかかる画像の取得およびしたがって鮮明な三次元画像の生成が可能になる。この目的のために、レーザまたは点光源の励起光は、試料における異なる焦点面に集束される。試料から反射された光は、それが試料上に集束される際に通るのと同じ対物レンズを一般に通ってピンホール上に結像され、かつピンホールを通って検出器に伝わる。励起焦点および検出焦点は、互いに共焦点である。すなわち一致する。このことから、「共焦点顕微鏡法」と呼ばれる。焦点面の外側の平面からの光は、ピンホールを通って検出器まで伝わることができない。x−y方向、すなわち対物レンズの光学軸(z方向)に垂直な平面において試料を走査することによって、選択された焦点面(z=z)における試料の画像を取得することが可能である。
【0013】
特許文献1は、TIRF顕微鏡法から共焦点顕微鏡法への切り替えを可能にする顕微鏡システムを説明している。その文献の図6は、共焦点顕微鏡法用のレーザ走査顕微鏡の典型的な構成を示す。その文献の図7は、TIRF顕微鏡の典型的な構成を示す。その文献の図8に示されているように、共焦点顕微鏡およびTIRF顕微鏡の組み合わせに基づいて、特許文献1は、かかる組み合わせ用の代替の解決法を扱っており、それには、対物レンズの後焦点面にレーザ光を集束するために、共焦点顕微鏡の光路に挿入できる光学系を使用することが含まれ、主光線は、後焦点面の位置で光学軸と平行である。後者の要件は、TIRF照明用に必要である。前述の組み合わせの代替実施形態として、(特許文献1)は、TIRFと共焦点顕微鏡法との間の切り替えを可能にするために、完全な屈折光路の使用を説明している。
【0014】
特許文献2は、試料を光学的に操作するためにTIRF照明を備えた顕微鏡を説明している。その文献は、TIRF照明と操作レーザ照明との間で自身の照明を切り替えることができる顕微鏡システムを提案する。操作レーザは、漂白用に、マーキング目的に、および/または顕微解剖用に用いられる。TIRF照明と操作レーザ照明との間の切り替えは、TIRFレーザの光路に挿入できるミラーを用いることによってか、または活性化レンズを用いることによって達成される。
【0015】
特許文献3は、共焦点レーザ顕微鏡の照明ビーム経路に配置された、かつ励起光の損失を低減しながら最適な照明を提供するように適合された光学的配列を開示している。この目的のために、レンズおよび下流の可変焦点光学系が、レーザの下流に配置される。この配列は、平行レーザビームの狭い断面を拡張するために用いられる。このように拡張されたビームは、走査ミラー上に導かれ、かつその走査ミラーによって対物レンズの方へ反射される。対物レンズの入射瞳を通過するビームは、対物レンズによって対象物上に集束される。前述の可変焦点レンズを用いれば、光の損失を防ぐために、大なり小なりの精度で照明ビームの直径を、使用される対物レンズの入射瞳に対して調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】US 7,187,494 B2
【特許文献2】US 7,551,351 B2
【特許文献3】DE 199 012 19 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、位置決め顕微鏡法用に、特にGSDIM方法用に特に適した、かつTIRF照明と無関係に使用できる(第2の)非共焦点照明を提供することである。特に、かかる照明は、共焦点顕微鏡法に適した(第1の)照明に切り替え可能であるように意図されている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的は、顕微鏡照明系、その使用、および独立請求項による顕微鏡照明方法によって達成される。有利な実施形態が、対応する従属請求項および以下の説明から明らかになろう。
【0019】
本発明の利点
本発明によれば、位置決め顕微鏡法用の顕微鏡照明系が提供されるが、この顕微鏡照明系は、下記ではより一般的に「第2の顕微鏡照明モード」とも呼ばれ、それによって、第1の顕微鏡照明モード、特に共焦点顕微鏡用の照明と、この第2の顕微鏡照明モードとの間の切り替えが可能になる。本発明の顕微鏡照明系は、顕微鏡照明ユニットを有するが、この顕微鏡照明ユニットには、第1の顕微鏡照明を提供するために、下記のコンポーネント、すなわち、光学軸と平行に伝播する照明ビームを生成するための照明光源装置と、光学軸に垂直な平面において照明ビームを偏向させるための走査ミラー装置と、同様に顕微鏡対物レンズの後焦点面に走査ミラー装置を結像するための、かつ照明ビームを拡張するための走査アイピースおよび下流の走査チューブレンズであって、顕微鏡対物レンズが、検査対象の試料上に照明ビームを集束する走査アイピースおよび下流の走査チューブレンズと、が含まれる。第2の顕微鏡照明を提供するために、すなわち特に、位置決め顕微鏡法に適した照明を提供するために、この顕微鏡照明ユニットは、照明ビームが顕微鏡対物レンズの後焦点面に集束されるような方法で照明ビームの経路に挿入できる集束レンズを有する。
【0020】
前述の走査ミラー装置ゆえに、第1の顕微鏡照明モードは、特にレーザ走査顕微鏡法照明用に、すなわち特に共焦点顕微鏡法用に適し、一方で第2の顕微鏡照明モードは、特に位置決め顕微鏡法用に、より具体的には最初に説明したGSDIM方法用に適している。
【0021】
これまで周知の先行技術は、適切な手段によって共焦点顕微鏡法用の照明機器または位置決め顕微鏡法用の照明機器にそれぞれ変換できるTIRF照明機器を有する顕微鏡照明系だけを提供してきたが、本発明は、特に共焦点顕微鏡法および位置決め顕微鏡法用に適した顕微鏡照明モードの組み合わせを提案する。この組み合わせの利点は、共焦点顕微鏡が、高解像度蛍光顕微鏡法用の認識された最新技術の一部を形成し、かつ最高の光学解像度における定量的調査用に使用されるということである。上記の位置決め顕微鏡法は、同じ方向を目指し、その結果、共焦点顕微鏡を集光顕微鏡と組み合わせる可能性は、極めて大きい利点をユーザに提供する。特に、それぞれの顕微鏡照明モード用に同じレーザを使用することが可能である。
【0022】
本発明は、2つの説明した顕微鏡照明モードにおける異なる光学結像条件を考慮し、かつ顕微鏡照明モード間の切り替えを可能にする対応した適応を行う。
【0023】
一般性を失うことのないさらなる説明のために、第1の顕微鏡照明モードが、共焦点顕微鏡法照明であると仮定される。同様に、第2の顕微鏡照明モードは、GSDIM用の顕微鏡照明であると仮定される。共焦点顕微鏡法照明からGSDIM照明への切り替えは、以下で説明する。もちろん、この説明はまた、GSDIM照明が共焦点顕微鏡法照明に切り替えられる反対の場合にも適用可能である。両方の切り替え方向は、同等である。
【0024】
光学軸と平行に伝播する照明ビームを生成するために、最初に照明光源装置が用いられる。共焦点顕微鏡法用に、典型的にはコリメートレーザビームが用いられる。第1の顕微鏡照明モード、すなわち共焦点顕微鏡照明モードを提供するために、望遠鏡光学系が、照明ビームの直径を拡張するために照明ビームの経路に配置される。
【0025】
この照明ビーム(拡張レーザビーム)は、光学軸と平行に伝播し、かつ光学軸に垂直な平面において周知の方法で照明ビームを偏向させることができる走査ミラー装置に当たる。光学軸が、z方向と同一とみなされる場合に、前述の平面は、x−y面である。走査ミラー装置は、焦点面において検査対象の試料を走査するために、上記の方法で用いられる。
【0026】
顕微鏡照明ユニットには、追加コンポーネントとして、走査アイピースおよび下流の走査チューブレンズが含まれる。これらの2つのコンポーネントは、単レンズまたは複合レンズ系であってもよい。走査アイピースおよび走査チューブレンズは、2つの機能を一緒に実行する。最初に、ビーム直径は、特に顕微鏡対物レンズの後焦点面が完全に照明される程度に拡張される。第2に、特に、交互に配置された1つまたは複数の走査ミラーを含む走査ミラー装置が、顕微鏡対物レンズの後焦点面に結像される。最後に、対物レンズは、レーザビームを試料上に集束する。この構成において、走査ミラー装置によって与えられたレーザビームの傾斜は、後焦点面の位置においてレーザビームの傾斜を結果としてもたらし、したがって光学軸に対して垂直に焦点を変位させる。
【0027】
例えば、GSDIM方法の実行用に、この第1の共焦点顕微鏡照明モードから第2の非共焦点照明モードに切り替わるために、本発明に従って、照明ビームの経路に集束レンズを挿入することが不可欠である。この集束レンズゆえに、レーザビームは、もはや試料へではなく、代わりに顕微鏡対物レンズの後焦点面に集束される。集束レンズは、同じく単レンズまたは複合レンズ系であってもよい。
【0028】
前に言及したように、照明光源装置には、第1の共焦点照明モード用に照明ビームを拡張するための望遠鏡光学系が含まれる。かかる拡張は、必要な場合が多い。なぜなら、レーザビームは、望遠鏡光学系を通過する前に、音響光学ビームスプリッタ(AOBSと略記される)を横断するが、今度はAOBSが、走査アイピースで必要とされるビーム直径より一般に小さい、ある最大ビーム直径だけを許容するからである。したがって、望遠鏡光学系は、AOBSと走査アイピースとの間でレーザビームを拡張するために用いられる。
【0029】
第2の非共焦点顕微鏡照明モードを提供するために、望遠鏡光学系は、照明ビームの経路から取り除かれる。このように、照明される試料フィールドの直径は低減され、試料上の光強度は、約25倍増加される。したがって、この配列によって、高照明強度で位置決め顕微鏡法を実行することが可能になる。
【0030】
走査アイピースと走査チューブレンズとの間で照明ビーム路に集束レンズを挿入することは有利である。これは、特に、本出願人によって現在販売されている共焦点顕微鏡に関連する利点である。他の構成において、集束レンズはまた、この集束レンズの挿入によって、顕微鏡対物レンズの後焦点面に照明ビームが集束される限り、走査チューブレンズと顕微鏡対物レンズの後焦点面との間に原則として挿入することができる。
【0031】
集束レンズ、または多素子設計の場合には集束レンズの一部が、異なる位置に自身の後焦点面を有する対物レンズに対して焦点の調整を可能にするために、光学軸に沿って移動可能な場合には有利である。
【0032】
前述の2つの顕微鏡照明モード間における切り替えのために、望遠鏡光学系が、集束レンズの挿入と同時に、またはその直後に取り除かれるのが得策であり、その逆も同様である。
【0033】
上文で繰り返し指摘したように、本発明の顕微鏡照明系は、特に共焦点顕微鏡用のレーザ走査顕微鏡照明と、特にGSDIM方法用の位置決め顕微鏡法照明との間の切り替えのために特に適している。
【0034】
上記で詳細に説明したように、本発明はまた、顕微鏡対物レンズおよび本発明による顕微鏡照明系を有する顕微鏡に関する。特に共焦点または位置決め顕微鏡の顕微鏡構成は、一般に先行技術から周知であり、したがって、ここで詳細には説明しない。試料から放射された光(共焦点顕微鏡法の場合に、放射された蛍光光線)は、顕微鏡対物レンズおよび追加的な下流の光学系を通って共焦点ピンホールに集束され、そこから検出器に伝わる。
【0035】
位置決め顕微鏡法において、試料から生じた観察ビームは、走査チューブレンズと対物レンズとの間で分離される。この目的のために、分割ミラーが、それらの間に配置される。
【0036】
本発明はまた、位置決め顕微鏡法に照明を提供するための方法に関し、その意図は、特に、この照明モードへと共焦点顕微鏡法照明から切り替わることによって、この照明モードを可能にすることである。本発明の方法に関し、本発明による顕微鏡照明系に関連する上記の説明、ならびにそこで説明された実施形態および利点が参照される。そこで提示された開示はまた、本発明の方法にも明示的に当てはまる。
【0037】
本発明のさらなる利点および実施形態は、明細書および添付の図面から明らかになろう。
【0038】
前述の特徴および下記で説明する特徴が、特定の組み合わせだけでなく、本発明の範囲から逸脱せずに他の組み合わせにおいて、または単独で使用できることが理解されよう。
【0039】
本発明は、例示的な実施形態を用いて図面に概略的に示されており、図面に関連して以下で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】TIRF照明(図1a)用の、およびGSDIM照明(図1b)用の照明機器を有し、それによって2つの照明モード間での切り替えが可能な顕微鏡の概略図である。
【図2】共焦点顕微鏡(図2a)用の顕微鏡照明ユニットと、GSDIM方法(図2b)用の照明ユニットを有する顕微鏡と、の概略図であり、それによって2つの照明モード間での切り替えが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1aおよび1bに示す照明ユニットの設計および動作原理は、明細書の導入部で詳細に説明した。
【0042】
図2において、本発明による顕微鏡照明系の実施形態が、非常に概略的に示されている。具体的には、図2aは、共焦点顕微鏡用の顕微鏡照明ユニット100を示し、図2bは、この顕微鏡照明ユニット100の、GSDIM方法用の修正を示す。両方の図において、照明ビーム16は、光源32(典型的には、レーザまたは別の点光源)から生じ、最初に下方から上方に伝播する。光は、コリメート光学系31によってコリメートされる。下記は、染色された試料8において蛍光放射を誘発するように適合された波長を有するレーザビームを仮定する。
【0043】
図2aにおいて、光源32およびコリメート光学系31に加えて、一般に10で示された照明光源装置にはまた、照明ビーム16としてここに示されたレーザビームを拡張するための望遠鏡光学系1が含まれる。拡張レーザビームは、走査ミラーとしてここに示された走査ミラー装置2に当たる。走査ミラーは、結果としてのレーザビームが光学軸9に垂直な平面において傾斜されるような方法で、2つの空間方向において傾斜させることができる。走査アイピースは、3で示されている。コリメート光学系31と望遠鏡光学系1との間で、レーザビームは、典型的には、音響光学ビームスプリッタ(AOBS)(図示せず)を通過するが、この音響光学ビームスプリッタ(AOBS)は、観察ビームから照明ビームを分離し、かつ走査アイピース3において要求される直径より小さい、ある最大ビーム直径だけを許容する。この理由で、図2aにおいて、望遠鏡光学系1は、ビームを拡張するために走査アイピース3の前に設けられる。
【0044】
図2aにおいて、走査チューブレンズ5およびミラー29は、走査アイピース3に下流に配置される。走査アイピース3および走査チューブレンズ5は、2つの機能を有する追加的な望遠鏡光学系として一緒に働く。第1に、ビーム直径は、対物レンズ7の後焦点面6が完全に、したがって最適に照明される程度にさらに拡張される。第2に、走査ミラーは、後焦点面6の位置に結像される。したがって、走査ミラー装置2は、焦点面6と共役な位置に置かれる。最後に、対物レンズ7は、レーザビームを試料8上に集束する。試料は、蛍光団で適切に染色され、その結果、入射レーザ光線は、結果として蛍光の励起をもたらす。走査ミラーを傾斜させることによって、すなわち走査ミラー装置2を適切に制御することによって、レーザビームの焦点は、試料8の焦点面において移動され、したがって光学軸9に垂直な平面における走査を可能にする。
【0045】
図2bは、図2aの顕微鏡照明ユニット100を概略的に示すが、顕微鏡照明ユニット100は、顕微鏡200において、ここではGSDIM方法用の第2の顕微鏡照明モードを提供するように適合されている。同様の要素は、同じ参照数字を与えられ、したがって再び説明はしない。図2bに示す実施形態において、第2の顕微鏡照明モードに切り替わるために、最初に、集束レンズ4が、ビーム16の経路に挿入される。集束レンズ4および走査チューブレンズ5は、レーザビームが、顕微鏡対物レンズ7の後焦点面6に集束されることを一緒に保証する。図示の実施形態において、集束レンズ4は、走査アイピース3と走査チューブレンズ5との間で照明ビーム16の経路に挿入される。集束レンズ4の下方の両矢印は、集束レンズ4が、光学軸9に沿って移動可能であることを示す。したがって、集束レンズ4の位置は、異なる対物レンズ7が用いられる場合に、焦点面6の異なる位置に適合させることができる。
【0046】
集束レンズ4の挿入に続いて、またはそれと同時に、望遠鏡光学系1は、ビーム16の経路から取り除かれる。このように、照明ビームが、拡張されず、かつ単位面積当たり高強度で試料8に当たることを保証することができる。GSDIM方法用のここで示す顕微鏡照明モードにおいて、走査ミラー装置2における走査ミラーを傾斜させる必要はない。照明ビーム16の経路から望遠鏡光学系1を取り除くことによって、試料8上の強度は、25倍増加させることができる。かかる出力密度は、照射された試料表面上に十分な励起エネルギを与えるために必要とされる。
【符号の説明】
【0047】
1 望遠鏡光学系
2 走査ミラー装置
3 走査アイピース
4 集束レンズ
5 走査チューブレンズ
6 対物レンズの後焦点面
7 対物レンズ
8 試料
9 光学軸
10 照明光源装置
11 望遠鏡
12 走査ミラー
13 走査アイピース
14 搬送光学系
15 観察ビーム
16 照明ビーム
17 コリメート光学系
18 光源
19 分割ミラー
21 チューブレンズ
22 画像
29 ミラー
31 コリメート光学系
32 光源、レーザ放射源
100 顕微鏡照明ユニット
200 顕微鏡


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の顕微鏡照明モード間で切り替えるための顕微鏡照明系であって、前記顕微鏡照明系が、
光学軸(9)と平行に伝播する照明ビーム(16)を生成するための照明光源装置(10)と、
前記光学軸(9)に垂直な平面にて前記照明ビーム(16)を偏向させるための走査ミラー装置(2)と、
検査対象の試料(8)上に前記照明ビームを集束する顕微鏡対物レンズ(7)の後焦点面(6)に前記走査ミラー装置(2)を結像するための、かつ前記照明ビーム(16)を拡張するための走査アイピース(3)および下流の走査チューブレンズ(5)と、を含む顕微鏡照明ユニット(100)を前記第1の顕微鏡照明モードを提供するために有し、
前記第2の顕微鏡照明モードを提供するために、前記顕微鏡照明ユニット(100)は、前記照明ビームが前記顕微鏡対物レンズ(7)の前記後焦点面(6)に集束されるように、前記照明ビームの経路(16)に挿入可能な集束レンズ(4)を有する顕微鏡照明系。
【請求項2】
前記集束レンズ(4)が、前記走査アイピース(3)と前記走査チューブレンズ(5)との間で前記照明ビーム(16)の経路に挿入可能である、請求項1に記載の顕微鏡照明系。
【請求項3】
前記集束レンズ(4)が、前記走査チューブレンズ(5)と前記顕微鏡対物レンズ(7)の前記後焦点面(6)との間で前記照明ビーム(16)の経路に挿入可能である、請求項1に記載の顕微鏡照明系。
【請求項4】
前記集束レンズ(4)が、前記光学軸(9)に沿って移動可能である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の顕微鏡照明系。
【請求項5】
前記照明光源装置(10)が、前記照明ビーム(16)を拡張するための望遠鏡光学系(1)を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の顕微鏡照明系。
【請求項6】
前記第2の顕微鏡照明モードを提供するために、前記望遠鏡光学系(1)を、前記照明ビーム(16)の経路から取り除くことができる、請求項5に記載の顕微鏡照明系。
【請求項7】
前記第1の顕微鏡照明モードが、特に共焦点顕微鏡法用のレーザ走査顕微鏡法照明を提供し、前記照明光源装置(10)が、特にレーザ光源(32)を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の顕微鏡照明系。
【請求項8】
前記第2の顕微鏡照明モードが、位置決め顕微鏡法、特にGSDIM方法用に照明を提供し、前記照明光源装置(10)が、特にレーザ光源(32)を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の顕微鏡照明系。
【請求項9】
特に共焦点顕微鏡法用のレーザ走査顕微鏡法照明と、特にGSDIM方法用の位置決め顕微鏡法照明との間の切り替えのための、請求項7または8に記載の顕微鏡照明系の使用。
【請求項10】
顕微鏡対物レンズ(7)および請求項1〜8のいずれか一項に記載の顕微鏡照明系を有する顕微鏡。
【請求項11】
前記走査チューブレンズ(5)と前記顕微鏡対物レンズ(7)との間の前記照明ビーム(16)の経路に分割ミラー(19)が配置され、それによって試料(8)から生じる観察ビーム(15)を分離させる、請求項10に記載の顕微鏡。
【請求項12】
顕微鏡照明ユニット(100)を用いて第1および第2の顕微鏡照明モード間で切り替えるための方法であって、
照明光源装置(10)によって、光学軸(9)に平行に伝播する照明ビーム(16)を生成して、走査ミラー装置によって、前記光学軸に垂直な平面にて前記照明ビーム(16)を偏向して、走査アイピース(3)および下流の走査チューブレンズ(5)によって、前記照明ビーム(16)を検査対象の試料(8)上に集束する顕微鏡対物レンズ(7)の後焦点面(6)に前記走査ミラー装置(2)を結像し、かつ前記照明ビーム(16)を拡張することによって、第1の顕微鏡照明モードを、前記顕微鏡ユニット(100)が提供し、
前記照明ビームが前記顕微鏡対物レンズ(7)の前記後焦点面(6)に集束されるように、集束レンズ(4)が前記照明ビーム(16)の経路に挿入されることによって、第2の顕微鏡照明モードを前記顕微鏡照明ユニット(100)が提供する、
切り替え方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−114265(P2013−114265A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−258425(P2012−258425)
【出願日】平成24年11月27日(2012.11.27)
【出願人】(500178876)ライカ マイクロシステムス ツェーエムエス ゲーエムベーハー (80)
【Fターム(参考)】