説明

顕微鏡装置、顕微鏡の制御方法、及びプログラム

【課題】 観察に適した焦準機構の駆動速度制御を実現して顕微鏡の操作性を向上させる。
【解決手段】 顕微鏡1での観察対象である試料Sと対物レンズ13との間の距離を調整する電動焦準機構10を駆動して当該距離を変化させる際の当該駆動の速度を、顕微鏡1の観察光学系の焦点深度に基づいてコントローラ2が制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡の技術に関し、特に、検鏡者による顕微鏡の操作の負担を軽減させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、顕微鏡観察においては、観察光学系を構成するレンズ群により、対象物である標本を拡大させた像を観察する。その際、観察像のピント合わせは、標本と対物レンズとの相対的な距離を変化させる、いわゆる焦準機構により調整している。基本的に標本と対物レンズとの距離がある一定の範囲内であればピントの合った像を得られるが、その範囲は観察光学系の拡大率により大きく異なり、拡大率が大きくなるほど狭くなる。
【0003】
従来、顕微鏡のピント合わせは検鏡者各人の感覚によって実施されており、拡大率を大きく変化させて観察するような用途においては焦準機構の調整に熟練を要し、その制御に相当な時間が費やされていた。
【0004】
そこで、最近では、焦準機構を電動化させてその調整を容易なものとした電動焦準装置が開発されている。
例えば特許文献1や特許文献2には、レボルバ式の対物レンズ変換機構をもつ顕微鏡において、現在観察している対物レンズの倍率に応じて焦準機構を駆動する速度を自動的に変更させるものが提案されている。これらの提案によると、対物レンズ倍率が大きいときには焦準機構の駆動速度を小さくし、対物レンズ倍率が小さいときには焦準機構の駆動速度を大きくするように設定している。これにより、検鏡者は、観察光学系の拡大率を変化させても常に同じ感覚にてピント合わせ操作をすることができる。
【0005】
また、例えば特許文献3には、連続変倍ズーム機構と対物レンズとの組み合わせによって観察倍率が決定される顕微鏡において、上述の焦準機構の速度制御を適用したものが提案されている。
【特許文献1】特開平8−86965号公報
【特許文献2】特開2002−72099号公報
【特許文献3】特開2004−226882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の各提案の顕微鏡においては、焦準機構の速度は観察光学系の倍率に応じて予め設定された値に一意に決定されるため、顕微鏡操作に習熟した人や初めて顕微鏡操作をする人などといった、検鏡者の熟練度の違いによる操作感の違いを吸収することが難しかった。また、AS(開口絞り:Aperture Stop )機構を備えた顕微鏡においては、絞り度合いによって観察光学系における焦点深度が変化するため、この変化分についても焦準機構の速度制御をする上で考慮しなければならない。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、観察に適した焦準機構の駆動速度制御を実現して顕微鏡の操作性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様のひとつである顕微鏡装置は、試料と対物レンズとの間の距離を調整する焦準機構を駆動して当該距離を変化させる駆動手段と、観察光学系の焦点深度に基づいて前記駆動の速度を制御する駆動制御手段と、を有することを特徴とするものであり、この特徴によって前述した課題を解決する。
【0009】
なお、上述した本発明に係る顕微鏡装置において、前記試料の観察倍率を変更せしめる変倍手段を更に有し、前記駆動制御手段は、前記対物レンズの倍率と前記変倍手段の倍率とに基づいて前記速度を制御する、ように構成してもよい。
【0010】
なお、このとき、速度と前記変倍手段の倍率との関係を示す情報が格納されている格納手段を更に有し、前記駆動制御手段は、前記情報において前記変倍手段の倍率に対応付けられている速度に対し、前記対物レンズの倍率に基づいた重み付けを行って得られる速度となるように前記駆動の速度を制御するように構成してもよい。
【0011】
また、このとき、前記駆動制御手段は、前記顕微鏡装置の観察光学系に設けられている開口絞りの開口径に更に基づいて前記速度を制御するように構成してもよい。
なお、このとき、速度と前記変倍手段の倍率及び前記開口絞りの開口径との関係を示す情報が格納されている格納手段を更に有し、前記駆動制御手段は、前記情報において前記変倍手段の倍率及び前記開口絞りの開口径に対応付けられている速度に対し、前記対物レンズの倍率に基づいた重み付けを行って得られる速度となるように前記駆動の速度を制御するように構成してもよい。
【0012】
また、前述した本発明に係る顕微鏡装置において、前記駆動の速度には微動速度と粗動速度とが定義されており、駆動制御手段は、前記微動速度を観察光学系の焦点深度に基づいて設定すると共に、前記粗動速度を前記微動速度の定数倍に設定する、ように構成してもよい。
【0013】
また、前述した本発明に係る顕微鏡装置において、操作されることによって前記焦準機構の駆動の指示を取得する駆動指示取得手段を更に有し、前記駆動制御手段は、前記駆動指示取得手段への操作量に対する前記焦準機構の駆動量を前記焦点深度に基づいて制御する、ように構成してもよい。
【0014】
また、本発明の別の態様のひとつである顕微鏡の制御方法は、顕微鏡での観察対象である試料と当該顕微鏡の対物レンズとの間の距離を調整する焦準機構を駆動して当該距離を変化させる際の当該駆動の速度を、当該顕微鏡の観察光学系の焦点深度に基づいて制御することを特徴とするものであり、この特徴によって前述した課題を解決する。
【0015】
また、本発明の更なる別の態様のひとつであるプログラムは、顕微鏡での観察対象である試料と当該顕微鏡の対物レンズとの間の距離を調整する焦準機構を駆動して当該距離を変化させる際の当該駆動の速度を、当該顕微鏡の観察光学系の焦点深度に基づいて決定する処理と、前記焦準機構を駆動して前記距離を変化させる駆動部を制御して当該駆動の速度を前記処理によって決定された速度にさせる処理と、をコンピュータに行わせるためのプログラムであり、このプログラムをコンピュータで実行することによっても、前述した課題は解決される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以上のようにすることにより、観察に適した焦準機構の駆動速度制御が実現されるので、顕微鏡の操作性が向上し、観察者はズーム倍率を気にすることなく同様の感覚にて焦準操作を行うことができるようになるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0018】
まず、本発明の実施例1について説明する。
図1は本実施例に係る顕微鏡装置の全体構成を示している。
図1において、1は顕微鏡本体を示している。顕微鏡本体1は、制御部であるコントローラ2とケーブル4及び5によって電気的に接続されている。コントローラ2には、各種のスイッチ等が配された操作入力部3がケーブル6を介して電気的に接続されている。なお、コントローラ2には、ケーブル7を介してPC(パーソナルコンピュータ)8を接続することもできる。
【0019】
顕微鏡本体1では、標本Sの載置される架台11に対して支柱12が固定されている。支柱12には電動焦準機構10及び電動ズーム鏡体17が組みつけられており、電動ズーム鏡体17に設けられている対物レンズ保持部材(不図示)には対物レンズ13が交換可能に配置されている。すなわち、電動焦準機構10によって、対物レンズ13は、電動ズーム鏡体17及び電動焦準機構10共々、支柱12に沿って架台11と対向した方向へ移動自在に配されている。
【0020】
電動焦準機構10には、試料Sと対物レンズ13との間の距離を電動で変化させる電動手段としての焦準機構ステッピングモータ14bと、フォトインタラプタからなる遠方リミットセンサ15c及び近接リミットセンサ15dとが固定されている。電動焦準機構10の支柱12に沿った上下動によって移動可能範囲の上端(遠方端)に達すると遠方リミットセンサ15cがON状態となり、下端(近接端)に達すると近接リミットセンサ15dがON状態となるようにこれらのセンサは配置されている。なお、電動焦準機構10に配した焦準機構コネクタ16bは焦準機構ステッピングモータ14b、遠方リミットセンサ15c、及び近接リミットセンサ15dの各々と不図示のケーブルによって電気的に接続されており、コントローラ2との間でのモータ駆動信号やセンサ信号のインタフェースとなっている。
【0021】
電動ズーム鏡体17には、電動手段としてのズーム機構ステッピングモータ14aと、フォトインタラプタからなる望遠リミットセンサ15a及び広角リミットセンサ15bとが固定されている。ズーム機構ステッピングモータ14aにはズームレンズ群(不図示)がカム機構(不図示)などを介して機械的に接続されている。このズーム機構ステッピングモータ14aを回転させることによって試料Sの観察倍率が変更可能であるように電動ズーム鏡体17は構成されている(以下、この構成を「ズーム機構」と称することとする)。
【0022】
電動ズーム鏡体17のズーム機構による観察倍率の制御が望遠端に達すると望遠リミットセンサ15aがON状態となり、広角端に達すると広角リミットセンサ15bがON状態となるようにこれらのセンサは配置されている。なお、電動ズーム鏡体17に配したズーム機構コネクタ16aはズーム機構ステッピングモータ14a、望遠リミットセンサ15a、及び広角リミットセンサ15bの各々と不図示のケーブルによって電気的に接続されており、コントローラ2との間でのモータ駆動信号やセンサ信号のインタフェースとなっている。
【0023】
電動ズーム鏡体17の上方には、接眼レンズ19を配置した鏡筒18が取り外し可能に固定されている。
図2に本実施例におけるコントローラ2の概略構成を示す。
【0024】
コントローラ2はマイクロコンピュータ21を有している。マイクロコンピュータ21は、図1に示した顕微鏡装置全体の制御を司るものであり、制御プログラムを格納するROM22、制御プログラムの変数データを確保するRAM23、ホストインタフェースコネクタ25c、及び操作入力部インタフェースコネクタ25dが各々接続されている。
【0025】
また、マイクロコンピュータ21には焦準部モータドライバ24bが接続されており、焦準部モータドライバ24bには焦準機構制御コネクタ25bが接続されている。この焦準機構制御コネクタ25bは、焦準機構コネクタ16bとケーブル5を介して電気的に接続されている。従って、マイクロコンピュータ21が、焦準部モータドライバ24bを介して焦準機構ステッピングモータ14bを駆動させることが可能であり、また、近接リミットセンサ15d及び遠方リミットセンサ15cの各々からのセンサ信号を読み込むことが可能である。
【0026】
更に、マイクロコンピュータ21にはズーム部モータドライバ24aが接続されており、ズーム部モータドライバ24aにはズーム機構制御コネクタ25aが接続されている。このズーム機構制御コネクタ25aは、ズーム機構コネクタ16aとケーブル4を介して電気的に接続されている。また、マイクロコンピュータ21が、ズーム部モータドライバ24aを介してズーム機構ステッピングモータ14aを駆動させることが可能であり、また、望遠リミットセンサ15a及び広角リミットセンサ15bの各々からのセンサ信号を読み込むことが可能である。
【0027】
なお、マイクロコンピュータ21は、ズーム機構ステッピングモータ14aの回転角度を示すズーム位置アドレスと、焦準機構ステッピングモータ14bの回転角度を示す焦準位置アドレスとをRAM23に格納することで、それぞれのモータの現在位置の監視ができるように構成されている。従って、マイクロコンピュータ21は、現在のズーム位置アドレスから現在の観察倍率(ズーム倍率)を求めることができ、また、現在の焦準位置アドレスから現在の対物レンズ13の位置を求めることができる。
【0028】
また、マイクロコンピュータ21には操作入力部インタフェースコネクタ25dとケーブル6とを介して操作入力部3が接続される。
図3は、本実施例における操作入力部3の概略構成を示している。
【0029】
操作入力部3は焦準機構速度重みダイアル31、焦準遠方方向ボタン(以降、「FARボタン」という)32、焦準近接方向ボタン(以降、NEARボタンという)33、ズーム望遠方向ボタン(以降、「TELEボタン」という)34と、ズーム広角方向ボタン(以降、「WIDEボタン」という)35、及び焦準機構速度切り換えボタン(以降、「粗微動切り換えボタン」という)36を有している。マイクロコンピュータ21は、これらのボタンの操作状態と焦準機構速度重みダイアル31の位置情報とを読み込むことが可能となっている。
【0030】
なお、焦準機構速度重みダイアル31は、例えば可変抵抗器における抵抗値を変化させる回転軸に取り付けられたものである。また、粗微動切り換えボタン36は、例えば1回押下されるごとに状態の変化が生じるトグルスイッチを用いて構成されている。
【0031】
次に図4について説明する。同図は、図2のコントローラ2のマイクロコンピュータ21によって行われる、図1に示した顕微鏡装置の制御処理の処理内容をフローチャートで示したものである。なお、この制御処理は、ROM22に格納されている制御プログラムをマイクロコンピュータ21が実行することによって実現される。
【0032】
まず、S101において顕微鏡装置に対する電源の投入が検出されるとS102に処理が進み、電動ズーム鏡体17のズーム機構の初期化処理が行われる。
この初期化処理では、マイクロコンピュータ21は、ズーム部モータドライバ24aに指示を与えて電動ズーム鏡体17のズーム機構ステッピングモータ14aを広角リミットセンサ15bの極近傍の位置まで広角方向へ回転駆動し、その位置をズーム原点位置として、現ズーム位置アドレス「0」に設定する。
【0033】
なお、その後、ズーム機構ステッピングモータ14aを駆動して、電源投入時のズーム位置まで戻す動作を行うようにしてもよい。但し、この場合には、上述のズーム原点位置をズーム位置アドレス「0」と設定した後、そこから電源投入時のズーム位置まで戻すのに用いたズーム機構ステッピングモータ14a駆動信号より、電源投入時のズーム位置におけるズーム位置アドレスを算出し、算出されたアドレスを現ズーム位置アドレスを設定する。
【0034】
ズーム機構の初期化処理が終了すると、S103において、粗微動切り換えボタン36の処理が行われる。この処理の詳細は図5Aに示されている。
図5Aのフローチャートを説明すると、まず、S121において、粗微動切り換えボタン36がオンとされているか否かが判定される。ここで、粗微動切り換えボタン36がオンとされている(判定結果がYes)ならば、S122において、現在選択されている電動焦準機構10の速度が粗動(高速モード)であることをマイクロコンピュータ21が認識し、その後は図4の処理へ戻る。一方、粗微動切り換えボタン36がオフとされている(判定結果がNo)ならば、S123において、現在選択されている電動焦準機構10の速度が微動(低速モード)であることをマイクロコンピュータ21が認識し、その後は図4の処理へ戻る。
【0035】
図4の説明へ戻ると、S104において、前述した現ズーム位置アドレスの読み込み処理が行われ、続くS105において焦準機構速度重みダイアル31の設定値の読み込み処理が行われる。そして、続くS106において、電動焦準機構10を駆動する速度パラメータをこれらの値に基づいて決定する処理が行われる。以下、この速度パラメータの決定手法について説明する。
【0036】
本実施例において、電動焦準機構10の駆動速度は観察光学系の焦点深度に基づいて決定される。なお、焦点深度は、観察光学系の倍率をMaとすると、Maと観察光学系の開口数NA(Numerical Aperture)によって決定される。また、観察光学系の倍率Maは、対物レンズ13の倍率Moと電動ズーム鏡体17のズーム倍率Mzとの積、すなわち、
Ma=Mo×Mz………(1)
で表わされる。
【0037】
なお、観察光学系のNAは、対物レンズ13のNAに対し、電動ズーム鏡体17のズーム倍率値によって決定される係数を乗じた値で表される。
本実施例における電動焦準機構10の駆動速度の代表値の例を図6に表で示す。なお、ここでは、ズーム機構のズーム全可動範囲をそのズーム倍率に応じた7つの範囲に分割してそれぞれの範囲ごとに電動焦準機構10の駆動速度パラメータを決定する方法について示すこととする。
【0038】
図6に示した表における駆動速度の単位は、焦準機構ステッピングモータ14bに対して与える駆動信号レベルpps(Pulse Per Second)で示しており、この数値が大きいほど速度は速くなる。なお、この表を表わしているデータはROM22に予め格納しておくようにする。また、この表の値は微動(低速モード)における焦準速度を示しており、粗動(高速モード)焦準速度については、本実施例においては、微動焦準速度を一律に定数倍した値とする。
【0039】
焦点深度は、電動ズーム鏡体17で決定されるズーム倍率を固定した状態の下で対物レンズ13を交換すると、対物レンズ13の倍率Moの2乗に反比例する。そこで、焦準速度重み係数Kf1を以下のように定める。
【0040】
Kf1=n/(Mo)2 ………(2)
なお、上式においてnは定数である。
そして、基準となる対物レンズ13の倍率Moとその際におけるズーム倍率毎の焦準駆動速度(ここでは図6中、「焦準速度2」の列を基準とする)とを予め設定しておき、これに対し上述の(2)式で求められるKf1の値を乗じることによって、対物レンズ13の倍率が基準倍率から変更された場合における焦準駆動速度を算出する。
【0041】
なお、本実施例においては、上述の(2)式に対し、Moの値として、焦準機構速度重みダイアル31の読み出し値を代入することによって、焦準速度に任意の重みを設定して速度制御を可能にしている。具体的には、焦準機構速度重みダイアル31の設定値に応じ、図6の表に示されている、「焦準速度1」、「焦準速度2」、「焦準速度3」の3つのズーム倍率毎の焦準駆動速度のうちのいずれかが選択され、選択された列に示されている値を用いて対物レンズ13の倍率に応じた焦準駆動速度の算出が行われる。
【0042】
なお、焦準機構速度重みダイアル31は、0.5x、1.0x、1.5xというような離散的な値ではなく、連続的に可変できるように構成されている。ここで、焦準機構速度重みダイアル31がその間の値に設定されている場合には、図6の表に示されている焦準駆動速度の間の値を例えば直線補間する等して求めるようにする。
【0043】
なお、以上のようにして算出された微動焦準速度及びその定数倍の粗動焦準速度には、上値限及び下限値を設定することができるようになっており、算出結果がそれらの限度値を超えた場合には、その限度値を焦準速度とする。
【0044】
図4の説明へ戻り、S107では、操作入力部3におけるいずれかのボタンが押されたか否かを判定する処理が行われる。ここで、いずれかのボタンが押されたと判定されたとき(判定結果がYesのとき)は、S108〜S115において、押されたボタンに応じた制御処理が行われる。なお、S107において、いずれのボタンも押されていないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)は、S116に処理を進める。
【0045】
S108〜S115の処理を更に説明する。
S108の判定処理において、FARボタン32が押されていたと判定されたとき(判定結果がYesのとき)には、S109においてFARボタン処理が行われ、その後はS104へと処理を戻す。FARボタン処理の詳細は図5Bに示されている。
【0046】
図5Bのフローチャートを説明すると、まず、S131において、遠方リミットセンサ15cがON状態となる位置に電動焦準機構10が位置しているかどうかが判定される。ここで、当該位置に位置していると判定されたとき(判定結果がYesのとき)は、このFARボタン処理を終了して図4の処理へ戻る。一方、当該位置に位置していないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S132において、前述した図4のS106の処理によって決定された焦準駆動速度パラメータと、同図のS103の処理によって認識されている電動焦準機構10の速度の選択の状態(粗動若しくは微動)とに基づき、電動焦準機構10の駆動速度を求めて設定する処理が行われる。
【0047】
続いて、S133では、焦準部モータドライバ24bに指示を与えて焦準機構ステッピングモータ14bを駆動させ、電動焦準機構10の遠方方向への移動を開始させる。
その後、S134において、FARボタン32が離された(押下状態の継続を止めた)かどうかが判定され、FARボタン32が離されたと判定したとき(判定結果がYesのとき)にはS135において焦準部モータドライバ24bに指示を与えて焦準機構ステッピングモータ14bの駆動を終了させる処理が行われ、その後はこのFARボタン処理を終了して図4の処理へ戻る。
【0048】
一方、S134において、FARボタン32が離されていない(押下状態が継続中)と判定したとき(判定結果がNoのとき)には、S136において、遠方リミットセンサ15cがON状態となる位置に電動焦準機構10が達したかどうかが判定される。ここで、当該位置に達したと判定されたとき(判定結果がYesのとき)には、S137において焦準部モータドライバ24bに指示を与えて焦準機構ステッピングモータ14bの駆動を終了させる処理が行われ、その後はこのFARボタン処理を終了して図4の処理へ戻る。一方、当該位置に達していないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S134へと処理を戻し、FARボタン32が一旦離されるか、若しくは遠方リミットセンサ15cがON状態になるまで、電動焦準機構10の駆動が継続される。
【0049】
以上までの処理がFARボタン処理である。
図4の説明へ戻り、S108の判定処理において、FARボタン32が押されていないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S110に処理を進める。そして、このS110の判定処理において、NEARボタン33が押されていたと判定された(判定結果がYesのとき)には、S111においてNEARボタン処理が行われ、その後はS104へと処理を戻す。NEARボタン処理の詳細は図5Cに示されている。
【0050】
図5Cのフローチャートを説明すると、まず、S141において、近接リミットセンサ15dがON状態となる位置に電動焦準機構10が位置しているかどうかが判定される。ここで、当該位置に位置していると判定されたとき(判定結果がYesのとき)は、このNEARボタン処理を終了して図4の処理へ戻る。一方、当該位置に位置していないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S142において、前述した図4のS106の処理によって決定された焦準駆動速度パラメータと、同図のS103の処理によって認識されている電動焦準機構10の速度の選択の状態(粗動若しくは微動)とに基づき、電動焦準機構10の駆動速度を求めて設定する処理が行われる。
【0051】
続いて、S143では、焦準部モータドライバ24bに指示を与えて焦準機構ステッピングモータ14bを駆動させ、電動焦準機構10の近接方向への移動を開始させる。
その後、S144において、NEARボタン33が離された(押下状態の継続を止めた)かどうかが判定され、NEARボタン33が離されたと判定されたとき(判定結果がYesのとき)にはS145において焦準部モータドライバ24bに指示を与えて焦準機構ステッピングモータ14bの駆動を終了させる処理が行われ、その後はこのNEARボタン処理を終了して図4の処理へ戻る。
【0052】
一方、S144において、NEARボタン33が離されていない(押下状態が継続中)と判定したとき(判定結果がNoのとき)には、S146において、近接リミットセンサ15dがON状態となる位置に電動焦準機構10が達したかどうかが判定される。ここで、当該位置に達したと判定されたとき(判定結果がYesのとき)には、S147において焦準部モータドライバ24bに指示を与えて焦準機構ステッピングモータ14bの駆動を終了させる処理が行われ、その後はこのNEARボタン処理を終了して図4の処理へ戻る。一方、当該位置に位置していないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S144へと処理を戻し、NEARボタン33が一旦離されるか、若しくは近接リミットセンサ15dがON状態になるまで、電動焦準機構10の駆動が継続される。
【0053】
以上までの処理がNEARボタン処理である。
図4の説明へ戻り、S110の判定処理において、NEARボタン33が押されていないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S112に処理を進める。そして、このS112の判定処理において、TELEボタン34が押されていたと判定された(判定結果がYesのとき)には、S113においてTELEボタン処理が行われ、その後はS104へと処理を戻す。本実施例におけるTELEボタン処理の詳細は図5Dに示されている。
【0054】
図5Dのフローチャートを説明すると、まず、S151において、望遠リミットセンサ15aがON状態となる位置に電動ズーム鏡体17のズーム機構が位置しているかどうかが判定される。ここで、当該位置に位置していると判定されたとき(判定結果がYesのとき)は、このTELEボタン処理を終了して図4の処理へ戻る。一方、当該位置に位置していないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S152において、ズーム部モータドライバ24aに指示を与えてズーム機構ステッピングモータ14aを駆動させ、当該ズーム機構の望遠方向への移動を開始させる。
【0055】
その後、S153において、TELEボタン34が離されたかどうか(押下状態の継続を止めたかどうか)が判定され、TELEボタン34が離されたと判定されたとき(判定結果がYesのとき)にはS154においてズーム部モータドライバ24aに指示を与えてズーム機構ステッピングモータ14aの駆動を終了させる処理が行われ、その後はこのTELEボタン処理を終了して図4の処理へ戻る。
【0056】
一方、S153において、TELEボタン34が離されていない(押下状態が継続中)と判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S155において、望遠リミットセンサ15aがON状態となる位置に電動ズーム鏡体17のズーム機構が達したかどうかが判定される。ここで、当該位置に達したと判定されたとき(判定結果がYesのとき)には、S156においてズーム部モータドライバ24aに指示を与えてズーム機構ステッピングモータ14aの駆動を終了させる処理が行われ、その後はこのTELEボタン処理を終了して図4の処理へ戻る。一方、当該位置に位置していないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S153へと処理を戻し、TELEボタン34が一旦離されるか、若しくは望遠リミットセンサ15aがON状態になるまで、電動ズーム鏡体17のズーム機構の駆動が継続される。
【0057】
以上までの処理がTELEボタン処理である。なお、ズーム機構の駆動を終了させるS154及びS156の処理においては、駆動開始前のズーム位置アドレスと、ズーム機構ステッピングモータ14aの駆動分に相当するズーム位置アドレスの変化分とから駆動終了時における現ズーム位置アドレスを算出しておき、その算出結果をRAM23に格納しておくようにする。
【0058】
図4の説明へ戻り、S112の判定処理において、TELEボタン34が押されていないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S114に処理を進める。そして、このS114の判定処理において、WIDEボタン35が押されていたと判定された(判定結果がYesのとき)には、S115においてWIDEボタン処理が行われ、その後はS104へと処理を戻す。本実施例におけるWIDEボタン処理の詳細は図5Eに示されている。
【0059】
図5Eのフローチャートを説明すると、まず、S161において、広角リミットセンサ15bがON状態となる位置に電動ズーム鏡体17のズーム機構が位置しているかどうかが判定される。ここで、当該位置に位置していると判定されたとき(判定結果がYesのとき)は、このWIDEボタン処理を終了して図4の処理へ戻る。一方、当該位置に位置していないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S162において、ズーム部モータドライバ24aに指示を与えてズーム機構ステッピングモータ14aを駆動させ、当該ズーム機構の広角方向への移動を開始させる。
【0060】
その後、S163において、WIDEボタン35が離された(押下状態の継続を止めた)かどうかが判定され、WIDEボタン35が離されたと判定されたとき(判定結果がYesのとき)にはS164においてズーム部モータドライバ24aに指示を与えてズーム機構ステッピングモータ14aの駆動を終了させる処理が行われ、その後はこのWIDEボタン処理を終了して図4の処理へ戻る。
【0061】
一方、S163において、WIDEボタン35が離されていない(押下状態が継続中)と判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S165において、広角リミットセンサ15bがON状態となる位置に電動ズーム鏡体17のズーム機構が達したかどうかが判定される。ここで、当該位置に達したと判定されたとき(判定結果がYesのとき)には、S166においてズーム部モータドライバ24aに指示を与えてズーム機構ステッピングモータ14aの駆動を終了させる処理が行われ、その後はこのWIDEボタン処理を終了して図4の処理へ戻る。一方、当該位置に位置していないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S163へと処理を戻し、WIDEボタン35が一旦離されるか、若しくは広角リミットセンサ15bがON状態になるまで、電動ズーム鏡体17のズーム機構の駆動が継続される。
【0062】
以上までの処理がWIDEボタン処理である。なお、ズーム機構の駆動を終了させるS164及びS166の処理においては、駆動開始前のズーム位置アドレスと、ズーム機構ステッピングモータ14aの駆動分に相当するズーム位置アドレスの変化分とから駆動終了時における現ズーム位置アドレスを算出しておき、その算出結果をRAM23に格納しておくようにする。
【0063】
図4の説明へ戻り、S114の判定処理において、WIDEボタン35が押されていないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S104へと処理を戻して上述した処理が繰り返される。
【0064】
ところで、S107の判定処理において、操作入力部3における上述したいずれのボタンも押されていないと判定されたときは、S116において、粗微動切り換えボタン36が押されてその状態に変化が生じたか否かを判定する処理が行われる。ここで、状態変化が生じたと判定されたとき(判定結果がYesのとき)には、S117において、粗微動切り換えボタン36の処理が行われ、その後はS104へと処理を戻して上述した処理が繰り返される。なお、このS117処理の詳細は、S103の処理と同様、図5Aに示したものであるので、説明は省略する。
【0065】
一方、S116の判定処理において、状態変化が生じていないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、このままS104へと処理を戻して上述した処理が繰り返される。
【0066】
以上の処理をマイクロコンピュータ21が行うことによって、図1に示した顕微鏡装置の制御がコントローラ2によって行われる。
以上のように、本実施例によれば、電動焦準機構10と電動ズーム鏡体17のズーム変倍機構とを備えた図1の顕微鏡装置において、ズーム変倍機構と組み合わされる対物レンズ13の倍率を目安として設定する焦準機構速度重みダイアル31の値と、ズーム変倍機構によるズーム倍率とに基づいて電動焦準機構10の駆動速度を決定するようにしているので、拡大倍率を頻繁に変えながら試料Sの観察を行う場合において、どのような拡大倍率でも同等の感覚で焦準機構の操作を行えるようになり、焦準操作におけるユーザの負担が軽減される。
【0067】
また、焦準機構速度重みダイアル31を調整することにより、ピント合わせに熟練した人と、苦手な人とがそれぞれ各人の好みに応じた焦準機構の操作感覚が得られるので、幅広いユーザ層に対して焦準操作感の優れた顕微鏡を提供できるようになる。
【0068】
なお、本実施例においては、電動焦準機構10の駆動速度は、基準となる対物レンズ倍率とその際のズーム倍率毎の焦準速度を予め設定しておき、その値に焦準速度重み係数Kf1を乗じて算出するようにしているが、その代わりに、焦準機構速度重みダイアル31の値に対して観察光学系の擬似的なNA及び倍率値情報を予め割り当てておき、それらの擬似的な値と各ズーム倍率との組み合わせにより算出される、合成NA及び合成倍率値に基づいて焦点深度を計算し、その定数倍を電動焦準機構10の駆動速度とするようにしてもよい。
【0069】
また、本実施例では、電動焦準機構10の駆動速度は、電動ズーム鏡体17のズーム機構による全ズーム倍率範囲を、図6の表に示すように7つの範囲に分割して設定していたが、その代わりに、ズーム位置アドレス値を引数とする関数として、連続的な値をとるような近似式を求め、この式を計算することによって電動焦準機構10の駆動速度を算出するようにしてもよい。
【0070】
また、本実施例においては、ズーム変倍のための手段として電動ズーム機構(電動ズーム鏡体17)を用いているが、その代わりに、手動ズーム機構とズーム位置センシング部(例えばズーム操作ハンドルに可変抵抗を接続してその可変抵抗の変化によってズーム位置の検出を行う、若しくは、リニアセンサを用いてズームレンズ位置を計測する、などといったもの)を図1の顕微鏡装置に備える構成によっても、上述と同様の効果を得ることができる。
【0071】
また、本実施例において、操作入力部3は、単独の操作ユニットとしていたが、その代わりに、顕微鏡本体の例えば架台や支柱、あるいはズーム機構にボタン及びダイアル等の操作部を配置するようにしてもよい。
【0072】
また、本実施例において、焦準機構駆動速度の基準となる対物レンズ倍率とその際のズーム倍率毎の焦準速度は予め設定しておくようにされていたが、その代わりに、コントローラ2の外部インタフェースからケーブル7を介して接続されるPC8等から任意に設定できるようにしてもよい。
【0073】
また、本実施例においては、電動焦準機構10の駆動速度の粗動焦準速度は、微動焦準速度の定数倍としたが、その代わりに、所定の高速な速度に一律に固定しておくようにしてもよい。
【0074】
また、本実施例において、焦準機構速度重みダイアル31は可変抵抗を用いて構成したが、その代わりに、ロータリーディップスイッチを用いて構成するようにしてもよい。
【実施例2】
【0075】
次に、本発明の実施例2について説明する。
本実施例の特徴は、電動ズーム鏡体17に電動AS(開口絞り)機構を追加し、ASの開放度合いによって変化する観察光学系の焦点深度を考慮した電動焦準機構10の速度制御を行うところにある。
【0076】
本実施例において、実施例1と同様の構成のものには同符号を付けて表示することとし、それらについての詳細な説明は省略する。
図7は本実施例に係る顕微鏡装置の全体構成を示している。
【0077】
図7の顕微鏡装置は、図1に示した実施例1に係るものにおける電動ズーム機構17に、AS機構の電動手段としてのAS機構ステッピングモータ14cと、フォトインタラプタからなるCLOSEリミットセンサ15eが追加されて構成されている。
【0078】
AS機構ステッピングモータ14cには羽絞り(不図示)が歯車(不図示)を介して機械的に接続されており、AS機構ステッピングモータ14cを回転制御することにより、羽絞りの開口径が変化するように構成されている(以下、この構成を「AS機構」と称することとする)。
【0079】
CLOSEリミットセンサ15eは、この羽絞りの開口径を制御して最小径まで達するとON状態となるように構成されている。ここで、AS機構が最小径となるように駆動する方向をCLOSE方向と呼び、反対に最大径となるように駆動する方向をOPEN方向と呼ぶこととする。
【0080】
なお、電動ズーム鏡体17に配したズーム機構コネクタ16aは、ズーム機構ステッピングモータ14a、望遠リミットセンサ15a、広角リミットセンサ15b、AS機構ステッピングモータ14c、及びCLOSEリミットセンサ15eの各々と不図示のケーブルによって電気的に接続されており、コントローラ2との間でのモータ駆動信号やセンサ信号のインタフェースとなっている。
【0081】
また、電動ズーム鏡体17の上方には、投光管101と、光源となるランプハウス102とが配されており、いわゆる落射観察系が構築されている。ランプハウス102の像は、前述の羽絞り上に焦点を結ぶようにランプハウス102が配置されており、羽絞りの開口径によってAS調整が可能なように構成されている。
【0082】
更に、投光管101の上方には、接眼レンズ19が配置されている鏡筒18が固定されている。なお、この鏡筒18取り外しが可能である。
図8に本実施例におけるコントローラ2の概略構成を示す。
【0083】
図8のコントローラ2は、図2に示した実施例1に係るものに追加して、AS部モータドライバ24c及びDIPSW26がマイクロコンピュータ21に接続されて構成されている。
【0084】
AS部モータドライバ24cにはズーム機構制御コネクタ25aが接続されており、更にズーム機構コネクタ16aとケーブル4によって電気的に接続されている。従って、マイクロコンピュータ21が、AS部モータドライバ24cを介してAS機構ステッピングモータ14cを駆動させることが可能であり、また、CLOSEリミットセンサ15eからのセンサ信号を読み込むことが可能である。
【0085】
なお、マイクロコンピュータ21は、AS機構ステッピングモータ14cの回転角度を示すAS位置アドレス、ズーム機構ステッピングモータ14aの回転角度を示すズーム位置アドレス、及び、焦準機構ステッピングモータ14bの回転角度を示す焦準位置アドレスをRAM23に格納することで、それぞれのモータの現在位置の監視ができるように構成されている。また、マイクロコンピュータ21は、現在のAS位置アドレスから羽絞りの開口径を求めることができ、また、現在のズーム位置アドレスから現在の観察倍率(ズーム倍率)を求めることができ、更に、現在の焦準位置アドレスから現在の対物レンズ13の位置を求めることができる。
【0086】
また、マイクロコンピュータ21にはケーブル6を介して操作入力部3が接続されている。
図9は本実施例における操作入力部3の概略構成を示している。
【0087】
図9の操作入力部3は、図3に示した実施例1に係るものに追加して、AS設定ダイアル37が備えられている。AS設定ダイアル37は、例えば可変抵抗器における抵抗値を変化させる回転軸に取り付けられたものであり、その抵抗値に基づいてAS設定ダイアル37の設定値を検出してコントローラ2へ通知するように構成されている。
【0088】
次に図10について説明する。同図は、図8のコントローラ2のマイクロコンピュータ21によって行われる、図7に示した顕微鏡装置の制御処理の処理内容をフローチャートで示したものである。なお、この制御処理は、ROM22に格納されている制御プログラムをマイクロコンピュータ21が実行することによって実現される。
【0089】
まず、S201において顕微鏡装置に対する電源の投入が検出されると、S202において、コントローラ2に配置されているDIPSW26の設定値を読み込む処理が行われる。このDIPSW26に対して予めなされている設定により、電動ズーム鏡体17に組み合わされている対物レンズ13の種類(及び必要に応じてAS機構との連動の可否)を示す情報が示されている。
【0090】
続くS203では電動ズーム鏡体17のズーム機構の初期化処理が行われる。
この初期化処理では、マイクロコンピュータ21は、ズーム部モータドライバ24aに指示を与えて電動ズーム鏡体17のズーム機構ステッピングモータ14aを広角リミットセンサ15bの極近傍の位置まで広角方向へ回転駆動させ、その位置をズーム原点位置として、現ズーム位置アドレス「0」に設定する。
【0091】
なお、その後、ズーム機構ステッピングモータ14aを駆動させて、電源投入時のズーム位置まで戻す動作を行うようにしてもよい。但し、この場合には、上述のズーム原点位置をズーム位置アドレス「0」と設定した後、そこから電源投入時のズーム位置まで戻すのに用いたズーム機構ステッピングモータ14a駆動信号より、電源投入時のズーム位置におけるズーム位置アドレスを算出し、算出されたアドレスを現ズーム位置アドレスとして設定する。
【0092】
ズーム機構の初期化処理が終了すると、S204において、AS機構の初期化処理が行われる。この処理の詳細は図11Aに示されている。
図11Aのフローチャートを説明すると、まず、S221において、AS機構の原点出し処理、すなわち、AS部モータドライバ24cに指示を与えてAS機構のAS機構ステッピングモータ14cをCLOSEリミットセンサ15eの極近傍の位置までCLOSE方向へ回転駆動させ、その位置をAS原点位置として、現AS位置アドレス「0」として設定する処理が行われる。
【0093】
続くS222では、AS設定ダイアル37の設定値を読み込む処理が行われる。ここで、AS設定ダイアル37の設定値と現ズーム位置アドレスとを参照し、これらに加え、図10のS202の処理によって読み込まれているDIPSW26の設定値に基づいて判別される対物レンズ13の種別より、AS設定値を算出する。
【0094】
AS設定値とは、AS機構を制御してAS設定ダイアル37によって指示された開口径とするためのAS位置アドレスである。AS設定値は、対物レンズ13とズーム機構のズームレンズ群によって形成される瞳径を基準とし、前述のAS機構の羽絞り開口径をその瞳径の何%にするかがAS設定ダイアル37で指定されることによって決定される。ここで、瞳径は対物レンズ13の種類やズーム機構のズーム倍率によって変動するものであるので、この瞳径の変動の情報は、予めコントローラ2内のROM22に格納しておくようにし、AS設定値はこの情報に基づいて算出する。
【0095】
S223では、このようにして算出されたAS設定値が現AS位置アドレスと異なるか否かを判定する処理が行われる。ここで、この両者が一致しているとき(判定結果がNoのとき)には、このまま図10の処理へ戻る。一方、この両者が異なるとき(判定結果がYesのとき)には、S224において、AS機構位置指定駆動処理、すなわち、AS部モータドライバ24cに指示を与えてAS位置アドレスがAS設定値に近づく方向にAS機構ステッピングモータ14cを駆動させる処理が開始され、現AS位置アドレスがAS設定値に一致したときに、S225において、このAS機構位置指定駆動処理を終了させ、その後は図10の処理へ戻る。
【0096】
以上までの処理がAS機構の初期化処理である。
図10の説明へ戻り、AS機構の初期化処理が終了すると、S205において、粗微動切り換えボタン36の処理が行われる。この処理の詳細は図5Aに示した実施例1におけるものと同様のものであるので、説明は省略する。
【0097】
その後、S206では、前述した現ズーム位置アドレスの読み込み処理が行われ、続くS207では前述したAS位置アドレスの読み込み処理が行われ、更に続くS208では焦準機構速度重みダイアル31の設定値の読み込み処理が行われる。そして、S209において、電動焦準機構10を駆動する速度パラメータをこれらの値に基づいて決定する処理が行われる。以下、この速度パラメータの決定手法について説明する。
【0098】
本実施例において、電動焦準機構10の駆動速度は観察光学系の焦点深度に基づいて決定される。
焦点深度は、観察光学系の倍率をMaとすると、Maと観察光学系の開口数NAによって決定される。また、観察光学系の倍率Maは、対物レンズ13の倍率Moと電動ズーム鏡体17のズーム倍率Mzとの積、すなわち、
Ma=Mo×Mz………(3)
で表わされる。ここまでは実施例1と同様である。
【0099】
本実施例において、観察光学系のNAは、対物レンズ13のNAと電動ズーム鏡体17のズーム倍率値とに加えてAS機構のAS開口径に基づいて決定され、AS開口径が大きくなるに従ってその値は減少していく。
【0100】
本実施例における電動焦準機構10の駆動速度の代表値の例を図12に表で示す。なお、ここでは、ズーム機構のズーム全可動範囲をそのズーム倍率に応じた7つの範囲に分割してそれぞれの範囲ごとに電動焦準機構10の駆動速度パラメータを決定する方法について示すこととする。
【0101】
図12に示した表における駆動速度の単位は、焦準機構ステッピングモータ14bに対して与える駆動信号レベルpps(Pulse Per Second)で示しており、この数値が大きいほど速度は速くなる。なお、この表を表わしているデータはROM22に予め格納しておくようにする。また、この表の値は微動(低速モード)における焦準速度を示しており、粗動(高速モード)焦準速度については、本実施例においては、微動焦準速度を一律に定数倍した値とする。
【0102】
焦点深度は、電動ズーム鏡体17で決定されるズーム倍率を固定した状態の下で対物レンズ13を交換すると、対物レンズ13の倍率Moの2乗に反比例する。そこで、焦準速度重み係数Kf1を以下のように定める。
【0103】
Kf1=n/(Mo)2 ………(4)
なお、上式においてnは定数である。
また、焦点深度は、観察光学系の倍率を固定した状態の下でAS開口径を変化させると、前述の瞳径に対するAS開口径の割合(この割合を「AS開口率」と称することとする)にほぼ比例して変化する。その比例係数をKsとすると、焦点深度は、下記の式で表わすことができる。
【0104】
焦点深度=Ks×1/(AS開口率)×(AS開口率100%での焦点深度)+b
………(5)
なお、上式においてbは定数である。
【0105】
そして、基準となる対物レンズ13の倍率Moとその際におけるズーム倍率毎の焦準駆動速度(ここでは図12中、「焦準速度3」の列を基準とする)とを予め設定しておき、これに対し、上述の(4)式で求められるKf1の値と、上記の{Ks×1/(AS開口率)}とを乗じることによって、対物レンズ13の倍率が基準倍率から変更され且つAS開口率が変更された場合における焦準駆動速度を算出する。
【0106】
なお、本実施例は、上述の(4)式に対し、Moの値として、焦準機構速度重みダイアル31の読み出し値を代入することによって、焦準速度に任意の重みを設定して速度制御を可能なものとする。焦準機構速度重みダイアル31は、0.5x、1.0x、1.5xというような離散的な値ではなく、連続的に可変できるように構成されている。なお、図12に例示した表は、焦準機構速度重みダイアル31が1.0xに設定されている場合における焦準駆動速度を表わしている。
【0107】
なお、以上のようにして算出された微動焦準速度及びその定数倍の粗動焦準速度には、上値限及び下限値を設定することができるようになっており、算出結果がそれらの限度値を超えた場合には、その限度値を焦準速度とする。
【0108】
図10の説明へ戻り、S210では、操作入力部3におけるいずれかのボタンが押されたか否かを判定する処理が行われる。ここで、いずれかのボタンが押されたと判定されたとき(判定結果がYesのとき)は、S211においてボタン処理が行われ、その後はS206へと処理を戻す。ボタン処理の詳細は図11Bに示されている。
【0109】
図11Bのフローチャートを説明すると、まず、S231において、FARボタン32が押されていたか否かが判定され、FARボタン32が押されていたと判定されたとき(判定結果がYesのとき)には、S232においてFARボタン処理が行われ、その後は図10の処理へ戻る。FARボタン処理の詳細は図5Bに示した実施例1におけるものと同様のものであるので、説明は省略する。
【0110】
一方、S231の判定処理において、FARボタン32が押されていないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S233において、NEARボタン33が押されていたか否かが判定され、NEARボタン33が押されていたと判定されたとき(判定結果がYesのとき)には、S234においてNEARボタン処理が行われ、その後は図10の処理へ戻る。NEARボタン処理の詳細は図5Cに示した実施例1におけるものと同様のものであるので、説明は省略する。
【0111】
一方、S233の判定処理において、NEARボタン33が押されていないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S235において、TELEボタン34が押されていたか否かが判定され、TELEボタン34が押されていたと判定されたとき(判定結果がYesのとき)には、S236においてTELEボタン処理が行われ、その後は図10の処理へ戻る。本実施例におけるTELEボタン処理の詳細は図11Cに示されている。
【0112】
図11Cのフローチャートを説明すると、まず、S241において、望遠リミットセンサ15aがON状態となる位置に電動ズーム鏡体17のズーム機構が位置しているかどうかが判定される。ここで、当該位置に位置していると判定されたとき(判定結果がYesのとき)は、このTELEボタン処理を終了して図11Bの処理(すなわち図10の処理)へ戻る。一方、当該位置に位置していないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S242において、ズーム部モータドライバ24aに指示を与えてズーム機構ステッピングモータ14aを駆動させ、当該ズーム機構の望遠方向への移動を開始させる。
【0113】
その後、S243において、TELEボタン34が離されたかどうか(押下状態の継続を止めたかどうか)が判定され、TELEボタン34が離されたと判定されたとき(判定結果がYesのとき)にはS244においてズーム部モータドライバ24aに指示を与えてズーム機構ステッピングモータ14aの駆動を終了させる処理が行われ、その後はS247に処理を進める。
【0114】
一方、S243において、TELEボタン34が離されていない(押下状態が継続中)と判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S245において、望遠リミットセンサ15aがON状態となる位置に電動ズーム鏡体17のズーム機構が達したかどうかが判定される。ここで、当該位置に達したと判定されたとき(判定結果がYesのとき)には、S246においてズーム部モータドライバ24aに指示を与えてズーム機構ステッピングモータ14aの駆動を終了させる処理が行われ、その後はS247に処理を進める。一方、当該位置に位置していないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S243へと処理を戻し、TELEボタン34が一旦離されるか、若しくは望遠リミットセンサ15aがON状態になるまで、電動ズーム鏡体17のズーム機構の駆動が継続される。
【0115】
なお、ズーム機構の駆動を終了させる上述したS244及びS246の処理においては、駆動開始前のズーム位置アドレスと、ズーム機構ステッピングモータ14aの駆動分に相当するズーム位置アドレスの変化分とから駆動終了時における現ズーム位置アドレスを算出しておき、その算出結果をRAM23に格納しておくようにする。
【0116】
S247では、ズーム機構の駆動終了時におけるズーム位置アドレスよりAS設定値を算出し、算出されたAS設定値が現AS位置アドレスと異なるか否かを判定する処理が行われる。ここで、この両者が一致しているとき(判定結果がNoのとき)には、このまま図11Bの処理(すなわち図10の処理)へ戻る。一方、この両者が異なるとき(判定結果がYesのとき)には、S248において、AS機構位置指定駆動処理、すなわち、AS部モータドライバ24cに指示を与えてAS位置アドレスがAS設定値に近づく方向にAS機構ステッピングモータ14cを駆動させる処理が開始され、現AS位置アドレスがAS設定値に一致したときに、S249において、このAS機構位置指定駆動処理を終了させ、その後は図11Bの処理(すなわち図10の処理)へ戻る。
【0117】
以上までの処理がTELEボタン処理である。
図11Bの説明へ戻り、S235の判定処理において、TELEボタン34が押されていないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S237において、WIDEボタン35が押されていたか否かが判定され、WIDEボタン35が押されていたと判定されたとき(判定結果がYesのとき)には、S238においてWIDEボタン処理が行われ、その後は図10の処理へ戻る。本実施例におけるWIDEボタン処理の詳細は図11Dに示されている。
【0118】
図11Dのフローチャートを説明すると、まず、S251において、広角リミットセンサ15bがON状態となる位置に電動ズーム鏡体17のズーム機構が位置しているかどうかが判定される。ここで、当該位置に位置していると判定されたとき(判定結果がYesのとき)は、このWIDEボタン処理を終了して図11Bの処理(すなわち図10の処理)へ戻る。一方、当該位置に位置していないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S252において、ズーム部モータドライバ24aに指示を与えてズーム機構ステッピングモータ14aを駆動させ、当該ズーム機構の広角方向への移動を開始させる。
【0119】
その後、S253において、WIDEボタン35が離されたかどうか(押下状態の継続を止めたすどうか)が判定され、WIDEボタン35が離されたと判定されたとき(判定結果がYesのとき)にはS254においてズーム部モータドライバ24aに指示を与えてズーム機構ステッピングモータ14aの駆動を終了させる処理が行われ、その後はS257に処理を進める。
【0120】
一方、S253において、WIDEボタン35が離されていない(押下状態が継続中)と判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S255において、広角リミットセンサ15bがON状態となる位置に電動ズーム鏡体17のズーム機構が達したかどうかが判定される。ここで、当該位置に達したと判定されたとき(判定結果がYesのとき)には、S256においてズーム部モータドライバ24aに指示を与えてズーム機構ステッピングモータ14aの駆動を終了させる処理が行われ、その後はS257に処理を進める。一方、当該位置に位置していないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S253へと処理を戻し、WIDEボタン35が一旦離されるか、若しくは広角リミットセンサ15bがON状態になるまで、電動ズーム鏡体17のズーム機構の駆動が継続される。
【0121】
なお、ズーム機構の駆動を終了させるS254及びS256の処理においては、駆動開始前のズーム位置アドレスと、ズーム機構ステッピングモータ14aの駆動分に相当するズーム位置アドレスの変化分とから駆動終了時における現ズーム位置アドレスを算出しておき、その算出結果をRAM23に格納しておくようにする。
【0122】
S257では、ズーム機構の駆動終了時におけるズーム位置アドレスよりAS設定値を算出し、算出されたAS設定値が現AS位置アドレスと異なるか否かを判定する処理が行われる。ここで、この両者が一致しているとき(判定結果がNoのとき)には、このまま図11Bの処理(すなわち図10の処理)へ戻る。一方、この両者が異なるとき(判定結果がYesのとき)には、S258において、AS機構位置指定駆動処理、すなわち、AS部モータドライバ24cに指示を与えてAS位置アドレスがAS設定値に近づく方向にAS機構ステッピングモータ14cを駆動させる処理が開始され、現AS位置アドレスがAS設定値に一致したときに、S259において、このAS機構位置指定駆動処理を終了させ、その後は図11Bの処理(すなわち図10の処理)へ戻る。
【0123】
以上までの処理がWIDEボタン処理である。
図11Bの説明へ戻り、S237の判定処理において、WIDEボタン35が押されていないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、図10の処理へ戻る。
【0124】
以上までの処理が、図11Bに示されているボタン処理の処理内容である。
図10の説明へ戻り、S210の判定処理において、操作入力部3における上述したいずれのボタンも押されていないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S212において、AS設定ダイアル37が操作されたか否かを判定する処理が行われる。ここで、AS設定ダイアル37が操作されたと判定されたとき(判定結果がYesのとき)は、S213においてAS駆動処理が行われ、その後はS206へと処理を戻す。AS駆動処理の詳細は図11Eに示されている。
【0125】
図11Eのフローチャートを説明すると、まず、S261において、AS設定ダイアル37の設定値を読み込む処理が行われる。ここで、このAS設定ダイアル37の設定値と現ズーム位置アドレスとを参照し、これらに加え、図10のS202の処理によって読み込まれているDIPSW26の設定値に基づいて判別される対物レンズ13の種別より、AS設定値を算出する。
【0126】
S262では、算出されたAS設定値が現AS位置アドレスと異なるか否かを判定する処理が行われる。ここで、この両者が一致しているとき(判定結果がNoのとき)には、このまま図10の処理へ戻る。一方、この両者が異なるとき(判定結果がYesのとき)には、S263において、AS機構位置指定駆動処理、すなわち、AS部モータドライバ24cに指示を与えてAS位置アドレスがAS設定値に近づく方向にAS機構ステッピングモータ14cを駆動させる処理が開始され、現AS位置アドレスがAS設定値に一致したときに、S264において、このAS機構位置指定駆動処理を終了させ、その後は図10の処理へ戻る。
【0127】
以上までの処理がAS駆動処理である。
図10の説明へ戻り、S212の判定処理において、AS設定ダイアル37が操作されていないと判定されたときは、S214において、粗微動切り換えボタン36が押されてその状態に変化が生じたか否かを判定する処理が行われる。ここで、状態変化が生じたと判定されたとき(判定結果がYesのとき)には、S215において、粗微動切り換えボタン36の処理が行われ、その後はS206へと処理を戻して上述した処理が繰り返される。なお、このS117処理の詳細は、S205の処理と同様、図5Aに示したものであるので、説明は省略する。
【0128】
一方、S214の判定処理において、状態変化が生じていないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、このままS206へと処理を戻して上述した処理が繰り返される。
【0129】
以上の処理をマイクロコンピュータ21が行うことによって、図7に示した顕微鏡装置の制御が図8に示したコントローラ2によって行われる。
以上のように、本実施例によれば、電動焦準機構10と電動ズーム鏡体17のズーム変倍機構と電動のAS機構とを備えた図7の顕微鏡装置において、ズーム変倍機構と組み合わされる対物レンズ13の倍率を目安として設定する焦準機構速度重みダイアル31の値と、ズーム変倍機構によるズーム倍率と、電動AS機構のAS開口径がズーム変倍機構と対物レンズ13とに応じたAS開口率として設定されるAS設定ダイアル37の値とに基づいて電動焦準機構10の駆動速度を決定するようにしているので、拡大倍率を頻繁に変えながら試料Sの観察を行う場合において、どのような拡大倍率でもAS開口径が適切な開口率に制御され、また、どのような拡大倍率でも同等の感覚で焦準機構の操作を行えるようになる。従って、AS操作及び焦準操作におけるユーザの負担が軽減される。
【0130】
なお、本実施例においては、電動焦準機構10の駆動速度は、基準となる対物レンズ倍率とその際のズーム倍率毎の焦準速度を予め設定しておき、その値に焦準速度重み係数Kf1と前述した{Ks×1/(AS開口率)}とを乗じて算出するようにしているが、その代わりに、焦準機構速度重みダイアル31の値に対して観察光学系の擬似的なNA及び倍率値情報を予め割り当てておき、それらの擬似的な値と各ズーム倍率との組み合わせにより算出される合成NAに前述のAS開口率を加味した合成NA’と合成倍率値とに基づいて焦点深度を計算し、その定数倍を電動焦準機構10の駆動速度とするようにしてもよい。
【0131】
また、本実施例において、ズーム変倍機構のズーム倍率に対するAS設定値を、当該ズーム倍率のある範囲内において一定の値をとるものとし、当該ズーム倍率とAS設定値との対応関係を示すテーブルを予め作成しておいてROM22に格納しておき、このテーブルを参照することによってマイクロコンピュータ21がズーム変倍機構のズーム倍率に対するAS設定値を得るようにしてもよい。
【0132】
また、本実施例においては、マイクロコンピュータ21は対物レンズ13の種別をコントローラ2のDIPSW26の設定から得るようにしているが、その代わりに、電動ズーム鏡体17に対物レンズ13の種別を検出する検出部を設け、その検出部から出力される検出結果をマイクロコンピュータ21が受信することによって、マイクロコンピュータ21が対物レンズ13の種別を得るようにしてもよい。
【0133】
また、本実施例では、電動焦準機構10の駆動速度は、電動ズーム鏡体17のズーム機構による全ズーム倍率範囲を、図12の表に示すように7つの範囲に分割して設定していたが、その代わりに、ズーム位置アドレス値を引数とする関数として、連続的な値をとるような近似式を求め、この式を計算することによって電動焦準機構10の駆動速度を算出するようにしてもよい。
【0134】
また、本実施例においては、ズーム変倍のための手段として電動ズーム機構(電動ズーム鏡体17)を用いているが、その代わりに、手動ズーム機構とズーム位置センシング部(例えばズーム操作ハンドルに可変抵抗を接続してその可変抵抗の変化によってズーム位置の検出を行う、若しくは、リニアセンサを用いてズームレンズ位置を計測する、などといったもの)を図7の顕微鏡装置に備える構成によっても、上述と同様の効果を得ることができる。
【0135】
また、本実施例において、操作入力部3は、単独の操作ユニットとしていたが、その代わりに、顕微鏡本体の例えば架台や支柱、あるいはズーム機構にボタン及びダイアル等の操作部を配置するようにしてもよい。
【0136】
また、本実施例において、焦準機構駆動速度の基準となる対物レンズ倍率とその際のズーム倍率毎の焦準速度は予め設定しておくようにされていたが、その代わりに、コントローラ2の外部インタフェースからケーブル7を介して接続されるPC8等から任意に設定できるようにしてもよい。
【0137】
また、本実施例においては、電動焦準機構10の駆動速度の粗動焦準速度は、微動焦準速度の定数倍としたが、その代わりに、所定の高速な速度に一律に固定しておくようにしてもよい。
【0138】
また、本実施例において、焦準機構速度重みダイアル31は可変抵抗を用いて構成したが、その代わりに、ロータリーディップスイッチを用いて構成するようにしてもよい。
【実施例3】
【0139】
次に、本発明の実施例3について説明する。
本実施例の特徴は、コントローラ2に接続される操作入力部3に対する焦準機構駆動指示の操作を、ボタンではなく、JOGエンコーダによって行うようにした点である。
【0140】
本実施例において、実施例1若しくは実施例2と同様の構成のものには同符号を付けて表示することとし、それらについての詳細な説明は省略する。また、本実施例に係る顕微鏡装置の全体構成は、図7に示した実施例2におけるものと同様であるので、その説明は省略する。
【0141】
図13にコントローラ2の概略構成を示す。
図13のコントローラ2は、図8に示した実施例2に係るものに追加して、デコーダ27がマイクロコンピュータ21に接続され、更にデコーダ27が操作入力部インタフェースコネクタ25dに接続されている。従って、マイクロコンピュータ21は、操作入力部3に配置されているJOGエンコーダ38(後述)からの回転出力信号を数値として認識できるようになっている。
【0142】
また、マイクロコンピュータ21にはケーブル6を介して操作入力部3が接続されている。
図14は本実施例における操作入力部3の概略構成を示している。
【0143】
図14の操作入力部3は、図9に示した実施例2に係るものに追加して、JOGエンコーダ38が備えられている。JOGエンコーダ38は、回転操作をすることによって焦準部の動作指示を行うことができるように構成されている。
【0144】
次に図15について説明する。同図は、図8のコントローラ2のマイクロコンピュータ21によって行われる、図7に示した顕微鏡装置の制御処理の処理内容をフローチャートで示したものである。なお、この制御処理は、ROM22に格納されている制御プログラムをマイクロコンピュータ21が実行することによって実現される。
【0145】
図15におけるS301からS308にかけての処理は、図10に示した実施例2に係る制御処理におけるS201からS208にかけての処理と同様のものであるので、これらの処理についての詳細な説明は省略する。
【0146】
S309では、電動焦準機構10を駆動する駆動量パラメータをこれらの値に基づいて決定する処理が行われる。以下、この駆動量パラメータの決定手法について説明する。
本実施例においては、JOGエンコーダ38を一回転させるとデコーダ27が1000パルス分の信号を発生し、マイクロコンピュータ21ではその信号のパルス数を検知可能であるものとする。そして、このS309の処理では、JOGエンコーダ38への操作量に対する電動焦準機構10の駆動量を決定する。
【0147】
本実施例においては、JOGエンコーダ38への一回転の操作に対する電動焦準機構10の駆動量を、観察光学系の焦点深度に基づいて決定する。
焦点深度は、観察光学系の倍率をMaとすると、Maと観察光学系の開口数NAによって決定される。また、観察光学系の倍率Maは、対物レンズ13の倍率Moと電動ズーム鏡体17のズーム倍率Mzとの積、すなわち、
Ma=Mo×Mz………(6)
で表わされる。
【0148】
また、観察光学系のNAは、対物レンズ13のNAと電動ズーム鏡体17のズーム倍率値とに加えてAS機構のAS開口径に基づいて決定され、AS開口径が大きくなるに従ってその値は減少していく。
【0149】
本実施例における電動焦準機構10の駆動量の代表値の例を図16に表で示す。なお、ここでは、ズーム機構のズーム全可動範囲をそのズーム倍率に応じた7つの範囲に分割してそれぞれの範囲ごとに電動焦準機構10の駆動量パラメータを決定する方法について示すこととする。
【0150】
図16に示した表における駆動量の単位は、焦準機構ステッピングモータ14bに対して与える駆動信号のパルス数(Pulse )で示しており、この数値が大きいほどJOGエンコーダ38の回転量に対する駆動量は大きくなる。なお、この表を表わしているデータはROM22に予め格納しておくようにする。また、この表の値は微動(低速モード)における焦準駆動量を示しており、粗動(高速モード)焦準速度については、本実施例においては、微動焦準駆動量を一律に定数倍した値とする。
【0151】
焦点深度は、電動ズーム鏡体17で決定されるズーム倍率を固定した状態の下で対物レンズ13を交換すると、対物レンズ13の倍率Moの2乗に反比例する。そこで、焦準駆動量重み係数Kf2を以下のように定める。
【0152】
Kf2=n/(Mo)2 ………(7)
なお、上式においてnは定数である。
また、焦点深度は、観察光学系の倍率を固定した状態の下でAS開口径を変化させると、前述の瞳径に対するAS開口径の割合(この割合を「AS開口率」と称することとする)にほぼ比例して変化する。その比例係数をKsとすると、焦点深度は、下記の式で表わすことができる。
焦点深度=Ks×{1/(AS開口率)}×(AS開口率100%での焦点深度)+b
……(8)
なお、上式においてbは定数である。
【0153】
そして、基準となる対物レンズ13の倍率Moとその際におけるズーム倍率毎の焦準駆動量(ここでは図16中、「焦準駆動量3」の列を基準とする)とを予め設定しておき、これに対し、上述の(7)式で求められるKf2の値と、上記の{Ks×(1/AS開口率)}とを乗じることによって、対物レンズ13の倍率が基準倍率から変更され且つAS開口率が変更された場合における焦準駆動量を算出する。
【0154】
なお、本実施例は、上述の(7)式に対し、Moの値として、焦準機構速度重みダイアル31の読み出し値を代入することによって、JOGエンコーダ38の回転量に対する焦準駆動量に任意の重みを設定して当該焦準駆動量の制御を可能なものとする。焦準機構速度重みダイアル31は、0.5x、1.0x、1.5xというような離散的な値ではなく、連続的に可変できるように構成されている。なお、図16に例示した表は、焦準機構速度重みダイアル31が1.0xに設定されている場合における焦準駆動量を表わしている。
【0155】
なお、以上のようにして算出された微動焦準駆動量及びその定数倍の粗動焦準駆動量には、上値限及び下限値を設定することができるようになっており、算出結果がそれらの限度値を超えた場合には、その限度値を焦準駆動量とする。
【0156】
図15の説明へ戻り、S310では、操作入力部3のJOGエンコーダ38に対する回転操作がなされたか否かをデコーダ27から出力される信号に基づいて判定する処理が行われる。ここで、当該回転操作がなされたと判定されたとき(判定結果がYesのとき)は、S311においてJOG駆動処理が行われ、その後はS306へと処理を戻す。JOG駆動処理の詳細は図17に示されている。
【0157】
図17のフローチャートを説明すると、まず、S321において、JOG工ンコーダ38の工ンコーダ出力をコントローラ2中のデコーダ27がデコードして得られたデータを読み込んでこのデータからJOGエンコーダ38の操作量と操作方向とを判別し、その操作方向が電動焦準機構10の遠方方向への移動を示すものであるか否かを判定する処理が行われる。ここで、JOGエンコーダ38の操作方向が遠方方向を示すものであったとき(判定結果がYesのとき)にはS322に処理を進め、近接方向を示すものであったとき(判定結果がNoのとき)にはS329に処理を進める。
【0158】
S322では、遠方リミットセンサ15cがON状態となる位置に電動焦準機構10が位置しているかどうかが判定される。ここで、当該位置に位置していると判定されたとき(判定結果がYesのとき)は、このJOG駆動処理を終了して図15の処理へ戻る。一方、当該位置に位置していないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S323において、図15のS309の処理によって決定されたJOGエンコーダ38一回転当たりの焦準機構の駆動量と、同図のS305の処理によって認識されている電動焦準機構10の速度の選択の状態(粗動若しくは微動)とに基づき、電動焦準機構10の焦準駆動量と駆動速度とを求めて設定する処理が行われる。
【0159】
続いて、S324では、焦準部モータドライバ24bに指示を与えて焦準機構ステッピングモータ14bを駆動させ、前ステップの処理によって設定された駆動速度で電動焦準機構10の遠方方向への移動を開始させる。
【0160】
S325では、遠方リミットセンサ15cがON状態となる位置に電動焦準機構10が達したかどうかが判定される。ここで、当該位置に達したと判定されたとき(判定結果がYesのとき)には、S326において焦準部モータドライバ24bに指示を与えて焦準機構ステッピングモータ14bの駆動を終了させる処理が行われ、その後はこのJOG駆動処理を終了して図15の処理へ戻る。
【0161】
一方、S325の判定処理において、遠方リミットセンサ15cがON状態となる位置に未だ達していないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S327において、前述したS323の処理で設定された焦準駆動量に相当する距離の電動焦準機構10の移動が終了したか否かを判定する処理が行われ、当該距離の移動が終了したと判定したとき(判定結果がYesのとき)には、S328において焦準部モータドライバ24bに指示を与えて焦準機構ステッピングモータ14bの駆動を終了させる処理が行われ、その後はこのJOG駆動処理を終了して図15の処理へ戻る。
【0162】
S329では、近接リミットセンサ15dがON状態となる位置に電動焦準機構10が位置しているかどうかが判定される。ここで、当該位置に位置していると判定されたとき(判定結果がYesのとき)は、このJOG駆動処理を終了して図15の処理へ戻る。一方、当該位置に位置していないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S330において、図15のS309の処理によって決定されたJOGエンコーダ38一回転当たりの焦準機構の駆動量と、同図のS305の処理によって認識されている電動焦準機構10の速度の選択の状態(粗動若しくは微動)とに基づき、電動焦準機構10の焦準駆動量と駆動速度とを求めて設定する処理が行われる。
【0163】
続いて、S331では、焦準部モータドライバ24bに指示を与えて焦準機構ステッピングモータ14bを駆動させ、前ステップの処理によって設定された駆動速度で電動焦準機構10の近接方向への移動を開始させる。
【0164】
S332では、近接リミットセンサ15dがON状態となる位置に電動焦準機構10が達したかどうかが判定される。ここで、当該位置に達したと判定されたとき(判定結果がYesのとき)には、S333において焦準部モータドライバ24bに指示を与えて焦準機構ステッピングモータ14bの駆動を終了させる処理が行われ、その後はこのJOG駆動処理を終了して図15の処理へ戻る。
【0165】
一方、S332の判定処理において、近接リミットセンサ15dがON状態となる位置に未だ達していないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S334において、前述したS330の処理で設定された焦準駆動量に相当する距離の電動焦準機構10の移動が終了したか否かを判定する処理が行われ、当該距離の移動が終了したと判定したとき(判定結果がYesのとき)には、S335において焦準部モータドライバ24bに指示を与えて焦準機構ステッピングモータ14bの駆動を終了させる処理が行われ、その後はこのJOG駆動処理を終了して図15の処理へ戻る。
【0166】
以上までの処理がJOG駆動処理である。
図15の説明へ戻ると、S310の判定処理において、操作入力部3のJOGエンコーダ38に対する回転操作がなされていないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)は、S312以降の処理が行われる。これらのS312からS317にかけての処理は、図10に示した実施例2に係る制御処理におけるS210からS215にかけての処理と同様のものであるので、これらの処理についての詳細な説明は省略する。
【0167】
以上の処理をマイクロコンピュータ21が行うことによって、図7に示した顕微鏡装置の制御が図13に示したコントローラ2によって行われる。
以上のように、本実施例によれば、電動焦準機構10と電動ズーム鏡体17のズーム変倍機構と電動のAS機構とを備えた図7の顕微鏡装置において、ズーム変倍機構と組み合わされる対物レンズ13の倍率を目安として設定する焦準機構速度重みダイアル31の値と、ズーム変倍機構によるズーム倍率と、電動AS機構のAS開口径がズーム変倍機構と対物レンズ13とに応じたAS開口率として設定されるAS設定ダイアル37の値とに基づいて電動焦準機構10の駆動速度及びJOGエンコーダ38一回転当たりの電動焦準機構10の駆動量を決定するようにしているので、拡大倍率を頻繁に変えながら試料Sの観察を行う場合において、どのような拡大倍率でもAS開口径が適切な開口率に制御され、また、FARボタン32及びNEARボタン33に対する操作とJOGエンコーダ38に対する操作とを問わずに同等の感覚で焦準機構の操作を行えるようになる。従って、AS操作及び焦準操作におけるユーザの負担が軽減される。
【0168】
なお、本実施例においては、JOGエンコーダ38一回転当たりの電動焦準機構10の駆動量は、基準となる対物レンズ倍率とその際のズーム倍率毎の焦準速度を予め設定しておき、その値に焦準駆動量重み係数Kf2と前述した{Ks×1/(AS開口率)}とを乗じて算出するようにしているが、その代わりに、焦準機構速度重みダイアル31の値に対して観察光学系の擬似的なNA及び倍率値情報を予め割り当てておき、それらの擬似的な値と各ズーム倍率との組み合わせにより算出される合成NAに前述のAS開口率を加味した合成NA’と合成倍率値とに基づいて焦点深度を計算し、その定数倍をJOGエンコーダ38一回転当たりの電動焦準機構10の駆動量とするようにしてもよい。
【0169】
また、本実施例において、ズーム変倍機構のズーム倍率に対するAS設定値を、当該ズーム倍率のある範囲内において一定の値をとるものとし、当該ズーム倍率とAS設定値との対応関係を示すテーブルを予め作成しておいてROM22に格納しておき、このテーブルを参照することによってマイクロコンピュータ21がズーム変倍機構のズーム倍率に対するAS設定値を得るようにしてもよい。
【0170】
また、本実施例においては、マイクロコンピュータ21は対物レンズ13の種別をコントローラ2のDIPSW26の設定から得るようにしているが、その代わりに、電動ズーム鏡体17に対物レンズ13の種別を検出する検出部を設け、そのその検出部から出力される検出結果をマイクロコンピュータ21が受信することによって、マイクロコンピュータ21が対物レンズ13の種別を得るようにしてもよい。
【0171】
また、本実施例では、JOGエンコーダ38一回転当たりの電動焦準機構10の駆動量は、電動ズーム鏡体17のズーム機構による全ズーム倍率範囲を、図12の表に示すように7つの範囲に分割して設定していたが、その代わりに、ズーム位置アドレス値を引数とする関数として、連続的な値をとるような近似式を求め、この式を計算することによって当該駆動量を算出するようにしてもよい。
【0172】
また、本実施例においては、ズーム変倍のための手段として電動ズーム機構(電動ズーム鏡体17)を用いているが、その代わりに、手動ズーム機構とズーム位置センシング部(例えばズーム操作ハンドルに可変抵抗を接続してその可変抵抗の変化によってズーム位置の検出を行う、若しくは、リニアセンサを用いてズームレンズ位置を計測する、などといったもの)を図7の顕微鏡装置に備える構成によっても、上述と同様の効果を得ることができる。
【0173】
また、本実施例において、操作入力部3は、単独の操作ユニットとしていたが、その代わりに、顕微鏡本体の例えば架台や支柱、あるいはズーム機構にボタン、ダイアル、及びJOGエンコーダ38等の操作部を配置するようにしてもよい。
【0174】
また、本実施例において、JOGエンコーダ38一回転当たりの電動焦準機構10の駆動量を求める基準となる対物レンズ倍率とその際のズーム倍率毎の焦準速度は予め設定しておくようにされていたが、その代わりに、コントローラ2の外部インタフェースからケーブル7を介して接続されるPC8等から任意に設定できるようにしてもよい。
【0175】
また、本実施例においては、電動焦準機構10の駆動速度の粗動焦準速度は、微動焦準速度の定数倍としたが、その代わりに、所定の高速な速度に一律に固定しておくようにしてもよい。
【0176】
また、本実施例において、焦準機構速度重みダイアル31は可変抵抗を用いて構成したが、その代わりに、ロータリーディップスイッチを用いて構成するようにしてもよい。

ところで、以上までに説明した各実施例におけるコントローラ2の構成は、標準的な構成のコンピュータであれば大概有しているものであるので、このようなコンピュータをコントローラ2として機能させて図1や図7に示した顕微鏡装置を制御させることも可能である。そのためには、各実施例においてマイクロコンピュータ21に行わせていた各種の制御処理をこのコンピュータのCPU(中央演算装置)に行わせるための制御プログラムを作成してコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録させておき、このコンピュータと顕微鏡本体1とを電気的に接続した状態で、そのプログラムを記録媒体からこのコンピュータに読み込ませて当該CPUで実行させることにより可能となる。
【0177】
なお、記録させた制御プログラムをコンピュータで読み取ることの可能な記録媒体としては、例えば、コンピュータに内蔵若しくは外付けの付属装置として備えられるROMやハードディスク装置などの記憶装置、コンピュータに備えられる媒体駆動装置へ挿入することによって記録された制御プログラムを読み出すことのできるフレキシブルディスク、MO(光磁気ディスク)、CD−ROM、DVD−ROMなどといった携帯可能記録媒体等が利用できる。
【0178】
また、このような記録媒体は、通信回線を介してコンピュータと接続されるプログラムサーバが備えている記憶装置であってもよい。この場合には、制御プログラムを表現するデータ信号で搬送波を変調して得られる伝送信号を、プログラムサーバから伝送媒体である通信回線を通じてコンピュータへ伝送するようにし、コンピュータでは受信した伝送信号を復調して制御プログラムを再生することでこの制御プログラムをコンピュータのCPUで実行できるようになる。
【0179】
その他、本発明は、上述した各実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】実施例1に係る顕微鏡に適用される顕微鏡装置の全体構成を示す図である。
【図2】実施例1におけるコントローラの概略構成を示す図である。
【図3】実施例1における操作入力部の概略構成を示す図である。
【図4】実施例1における制御処理の処理内容をフローチャートで示した図である。
【図5A】粗微動切り換えボタン処理の処理内容をフローチャートで示した図である。
【図5B】FARボタン処理の処理内容をフローチャートで示した図である。
【図5C】NEARボタン処理の処理内容をフローチャートで示した図である。
【図5D】実施例1におけるTELEボタン処理の処理内容をフローチャートで示した図である。
【図5E】実施例1におけるWIDEボタン処理の処理内容をフローチャートで示した図である。
【図6】実施例1における電動焦準機構の駆動速度の代表値の例を表で示した図である。
【図7】実施例2及び実施例3に係る顕微鏡に適用される顕微鏡装置の全体構成を示す図である。
【図8】実施例2におけるコントローラの概略構成を示す図である。
【図9】実施例2における操作入力部の概略構成を示す図である。
【図10】実施例2における制御処理の処理内容をフローチャートで示した図である。
【図11A】AS機構初期化処理の処理内容をフローチャートで示した図である。
【図11B】ボタン処理の処理内容をフローチャートで示した図である。
【図11C】実施例2及び実施例3におけるTELEボタン処理の処理内容をフローチャートで示した図である。
【図11D】実施例2及び実施例3におけるWIDEボタン処理の処理内容をフローチャートで示した図である。
【図11E】AS駆動処理の処理内容をフローチャートで示した図である。
【図12】実施例2における電動焦準機構の駆動速度の代表値の例を表で示した図である。
【図13】実施例3におけるコントローラの概略構成を示す図である。
【図14】実施例3における操作入力部の概略構成を示す図である。
【図15】実施例3における制御処理の処理内容をフローチャートで示した図である。
【図16】実施例3における電動焦準機構の駆動量の代表値の例を表で示した図である。
【図17】JOG駆動処理の処理内容をフローチャートで示した図である。
【符号の説明】
【0181】
S 試料
1 顕微鏡本体
2 コントローラ
3 操作入力部
4、5、6、7 ケーブル
8 PC
10 電動焦準機構
11 架台
12 支柱
13 対物レンズ
14a ズーム機構ステッピングモータ
14b 焦準機構ステッピングモータ
14c AS機構ステッピングモータ
15a 望遠リミットセンサ
15b 広角リミットセンサ
15c 遠方リミットセンサ
15d 近接リミットセンサ
15e CLOSEリミットセンサ
16a ズーム機構コネクタ
16b 焦準機構コネクタ
17 電動ズーム鏡体
18 鏡筒
19 接眼レンズ
21 マイクロコンピュータ
22 ROM
23 RAM
24a ズーム部モータドライバ
24b 焦準部モータドライバ
24c AS部モータドライバ
25a ズーム機構制御コネクタ
25b 焦準機構制御コネクタ
25c ホストインタフェースコネクタ
25d 操作入力部インタフェースコネクタ
26 DIPSW
27 デコーダ
31 焦準機構速度重みダイアル
32 FARボタン
33 NEARボタン
34 TELEボタン
35 WIDEボタン
36 粗微動切り換えボタン
37 AS設定ダイアル
38 JOGエンコーダ
101 投光管
102 ランプハウス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と対物レンズとの間の距離を調整する焦準機構を駆動して当該距離を変化させる駆動手段と、
観察光学系の焦点深度に基づいて前記駆動の速度を制御する駆動制御手段と、
を有することを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項2】
前記試料の観察倍率を変更せしめる変倍手段を更に有し、
前記駆動制御手段は、前記対物レンズの倍率と前記変倍手段の倍率とに基づいて前記速度を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項3】
速度と前記変倍手段の倍率との関係を示す情報が格納されている格納手段を更に有し、
前記駆動制御手段は、前記情報において前記変倍手段の倍率に対応付けられている速度に対し、前記対物レンズの倍率に基づいた重み付けを行って得られる速度となるように前記駆動の速度を制御することを特徴とする請求項2に記載の顕微鏡装置。
【請求項4】
前記駆動制御手段は、前記顕微鏡装置の観察光学系に設けられている開口絞りの開口径に更に基づいて前記速度を制御することを特徴とする請求項2に記載の顕微鏡装置。
【請求項5】
速度と前記変倍手段の倍率及び前記開口絞りの開口径との関係を示す情報が格納されている格納手段を更に有し、
前記駆動制御手段は、前記情報において前記変倍手段の倍率及び前記開口絞りの開口径に対応付けられている速度に対し、前記対物レンズの倍率に基づいた重み付けを行って得られる速度となるように前記駆動の速度を制御することを特徴とする請求項4に記載の顕微鏡装置。
【請求項6】
前記駆動の速度には微動速度と粗動速度とが定義されており、
駆動制御手段は、前記微動速度を観察光学系の焦点深度に基づいて設定すると共に、前記粗動速度を前記微動速度の定数倍に設定する、
ことを特徴する請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の顕微鏡装置。
【請求項7】
操作されることによって前記焦準機構の駆動の指示を取得する駆動指示取得手段を更に有し、
前記駆動制御手段は、前記駆動指示取得手段への操作量に対する前記焦準機構の駆動量を前記焦点深度に基づいて制御する、
ことを特徴とする請求項1、2、及び4のうちのいずれか1項に記載の顕微鏡装置。
【請求項8】
顕微鏡での観察対象である試料と当該顕微鏡の対物レンズとの間の距離を調整する焦準機構を駆動して当該距離を変化させる際の当該駆動の速度を、当該顕微鏡の観察光学系の焦点深度に基づいて制御することを特徴とする顕微鏡の制御方法。
【請求項9】
顕微鏡での観察対象である試料と当該顕微鏡の対物レンズとの間の距離を調整する焦準機構を駆動して当該距離を変化させる際の当該駆動の速度を、当該顕微鏡の観察光学系の焦点深度に基づいて決定する処理と、
前記焦準機構を駆動して前記距離を変化させる駆動部を制御して当該駆動の速度を前記処理によって決定された速度にさせる処理と、
をコンピュータに行わせるためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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