説明

風力井戸掘削機

【課題】 化石燃料を用いない環境にやさしい井戸掘削機に関する発明である。
【解決手段】解決手段として、巻上機のワイヤーの先端に取り付けた掘削部材を井戸掘削に必要な位置エネルギーを確保できるレベルまで巻き上げ、次に前記掘削部材を落下させその先端に取り付けた掘削部材の衝撃で掘削する掘削方法において掘削部材の巻上げエネルギーとして風力エネルギーを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
風力エネルギーを用いた井戸掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境破壊が世界的に大きな問題としてクローズアップされてきた。中でも代表的な例として、アジア地域を始めとした大陸の急速な砂漠化の進行があげられる。
これを食い止めるため砂漠緑化が叫ばれてはいるが、遅々として進んでいないのが現状である。
砂漠緑化のためには水の確保は必須条件である。 近くに河川、池などの水資源が確保できる地域は良いが、水資源が容易に確保できない地域では、井戸の掘削が必要になる。井戸を掘削するには通常ボーリング機械が用いられるが、ボーリング機械は一般にエンジン駆動となっている。地質や井戸の口径にもよるが、一本の井戸が完成するまでには大量のエネルギーが消費される。そのエネルギー源としては通常軽油などの化石燃料が使用され、砂漠緑化のためとはいえ地球温暖化防止のためには好ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特に砂漠地帯の場合、井戸が完成した後も給水のためのポンプの動力源として化石燃料を用いたエンジンが用いられることによって化石燃料は継続して消費され続けることになる。
電力の供給が可能な場合においては、ポンプの駆動は電動機を用いることも出来るが、その大元の発電所は化石燃料に依存している場合が多い。
よって砂漠緑化のために、多くの場合井戸掘削後も継続して膨大な化石燃料が消費され続けることになる。


【課題を解決するための手段】
【0004】

本発明は上記のような問題に鑑み地球環境にやさしい砂漠緑化システムを提供しようとするものである。
即ち、井戸の掘削から、井戸完成後前記井戸から水の汲み上げるポンプの駆動エネルギーまで化石燃料を消費することなく自然エネルギーで賄おうとするものである。
【0005】
井戸の掘削方式としては通常パーカッション方式といわれている方式を用いる。即ち巻上機のワイヤーの先端に取り付けて重力で落下する掘削部材の衝撃力で掘りさげていく掘削方式を用いる。
【0006】
本発明のしくみを更に詳細に説明するとワイヤーを巻上げる時は、巻上機と結合部材を用いるが結合部材としては通常電磁クラッチが用いられる為、以下電磁クラッチとして説明を行う。
第一電磁クラッチを介して巻上機と結合された風車の羽根車の回転力を利用して掘削部材を掘削時必要な位置のエネルギーを確保できる高さに到達するまで巻上機で吊り上げ、次に掘削部材を井戸底に落下させることになるが、掘削部材の落下のしくみは、羽根車と巻上機を結合している第一電磁クラッチをOFFにして結合を切り離して掘削部材を重力で落下させ衝撃力で掘削中の井戸底を砕いていく。このサイクルを繰りかえすことによって井戸を掘り下げていく。
【0007】
電磁クラッチや制御部駆動に必要な電力は、巻上機と羽根車が切り離されている間、即ち掘削部材落下時、第二電磁クラッチがONとなって発電機と羽根車が結合され発電機が駆動されて発電し、その際蓄電部材に蓄積された電気エネルギーによって賄われる。
【0008】
このようなシステムを構成することによって、井戸掘削に必要なエネルギーとしては自然エネルギーである風力エネルギー以外には全く化石燃料などを消費する必要が無い井戸掘削機を提供しようとするものである。
【0009】
井戸完成後井戸掘削ユニットは不要となるが、前記ユニット羽根車から切り離しとなっており、次の新しい井戸掘削時に使用することが可能で、次々に新しい井戸掘削のために同一井戸掘削ユニットを使用することができる。

【発明の効果】
【0010】

本発明によれば、電磁クラッチの駆動や制御に要する少量の電気エネルギー以外に、例えばモーター駆動のため電気エネルギーへ変換する際ロスとなるエネルギー等が無い為、付帯的エネルギーは極めて少なくてすみ、大半の風力エネルギーを直接井戸掘削に用いることが出来る。従って効率の良い風力井戸掘削システムを提供することが出来る。
また井戸の掘削から、掘削が終了した後のポンプによる井戸水の給水まですべて風力エネルギーで賄うことが出来るため、砂漠の奥地であっても燃料供給無しに井戸の掘削が可能である。従って化石燃料を消費しない地球環境に真にやさしい砂漠の緑化システムを提供するもので、その効果は大なるものがある。
【実施例】
【0011】

以下実施例を図面に基づいて説明すると、図1は風力井戸掘削機の構造を示したもので、羽根車1の主軸2は軸受3で支持されており、主軸2は変速機4の歯車4aに接続され、更に歯車4aは歯車4bとかみ合っており歯車4bの軸5aは第一電磁クラッチ5に接続されている。第一電磁クラッチ5はワイヤー7の巻き上げ巻き下げを行う巻上機6と結合している。
【0012】
ワイヤーガイダー19aによって導かれたワイヤー7の端部には掘削刃8aを先端に有する掘削部材8が連結されている。
変速機4の歯車4aは歯車4cとも噛み合っており又歯車4cは第二電磁クラッチ10
に結合されており前記電磁クラッチ10は発電機9に結合されている。
発電機9で発電された電力は過充電防止装置等を内蔵したコントローラ11を介して蓄電部材12に充電される。
制御ボックス13は制御回路部17と切り替えスイッチ14から構成されており前記制御回路部17には、巻上長検知器15及びワイヤー7静止確認検知器16が接続されている。
【0013】
ベース19上に巻上機6、第一電動クラッチ5、変速機4等よりなる井戸掘削ユニット
101が着脱自在に固定されており、前記ベース19は支柱20に接続され地面21上に設置されている。
【0014】
次に動作につき説明する。ワイヤー静止確認検知器16がワイヤー7の静止状態を検知するとその信号は制御ボックス13内の制御回路17に送られ制御回路17の指令によって切替スイッチ14は接点14aに切替わる。その際畜電部材12に接続されている第一電磁クラッチ5は通電状態となり、結合状態となって羽根車1の回転力は変速機4、第一電磁クラッチ5を介し巻上機6に伝達されワイヤー7が巻き上げられる。
【0015】
ワイヤー7が巻き上げられとワイヤー7の先端に結合されている掘削部材8が上昇し掘削に必要な位置のエネルギー確保可能な距離まで掘削部材8が上昇する。掘削部材8が上昇し井戸底22aから所定の位置まで到達すると巻上長検知器15が検知し制御回路17に信号が伝達され、切替えスイッチ14は接点14bへ切替わり第一電磁クラッチ5は開放され巻上機6は羽根車1との結合を遮断される。
【0016】
羽根車1と結合を遮断されフリーとなった巻上機6のワイヤー7に連結されている掘削部材8は重力によって井戸底22aに落下し、掘削部材8の衝撃力によって前記井戸底22aの岩盤や土砂が砕かれる。
【0017】
一方制御ボックス13の切り替えスイッチ14は接点14bへと切り替わることによって第二電磁クラッチが結合状態となり羽根車1は変速機4を介して発電機9に結合され、掘削部材8が落下して掘削中の井戸22の底部に到達するまで発電機9が羽根車1の回転力によって回転することによって発電された電力は蓄電部材12は充電される。蓄電部材12としては鉛蓄電池やニッケルカドミウム等の蓄電池を用いて良いし、電気エネルギーを瞬時に蓄えることが出来る大容量キャパシターなどであっても良い。
一定の風速が確保される場合は昼夜を問わず、上記サイクルを繰り返すことによって井戸22の掘削は進行していく。
【0018】
尚、実際の井戸掘削には掘削によって発生する土砂を排出するためのポンプ設備等が必要になるが本発明の本質と直接の関係が無いため省略する。
【0019】
図3に示すように井戸22が完成すると井戸掘削ユニット101は不要となるが、その場合ベースから取り外し発電機ユニット103と置き換えることによって、通常の風力発電機として発電し、その発電エネルギーは揚水ポンプ104の駆動電力に用いることが出来る。
発電機としては電磁クラッチや制御回路駆動のための電力確保のため掘削時に用いた発電機9を転用することも出来る。
【0020】
以上本発明の一実施形態について説明したが上述の風力井戸掘削機と同様の効果が得られるものであれば本発明の範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】風力井戸掘削機の簡略断面を示した側面図
【図2】風力井戸掘削機の外観図
【図3】風力発電機より電力供給の井戸ポンプシステム外観図
【図4】実施形態の流れを示すフローチャート
【符号の説明】
【0022】

1 羽根車 2 主軸
3 軸受 4 変速機
4a 歯車 4b 歯車
4c 歯車 5 第一電磁クラッチ
5a 軸 6 巻上機
7 ワイヤー 8 掘削部材
9 発電機 10 第二電磁クラッチ
11 コントローラ 12 蓄電器
13 制御ボックス 14 切替スイッチ
14a 接点a 14b 接点b
15 巻上長検知器 16 ワイヤー静止確認検知器
17 制御回路 18 ケーシング
19 ベース 19a ワイヤーガイダー
20 支柱 21 地面
22 井戸 22a 井戸底
101 井戸掘削ユニット 102 井戸掘削ユニット制御ボックス
103 発電機ユニット 104 発電機ユニット制御ボックス
105 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車の主軸に結合部材を介して巻上機を結合し、巻上機ワイヤーの先端部に掘削部材を取り付け、羽根車と巻上機を結合部材で結合状態にして掘削部材を巻き上げ又前記結合部材を非結合状態にして掘削部材を地面に落下させることによって掘削を行う風力井戸掘削機。

【請求項2】
発電機及び蓄電部材と第1結合部材、第2結合部材を備え、第一結合部材が結合時には巻上機がワイヤーを介して掘削部材を巻き上げ、第一結合部材が非結合の場合は第二結合部材が結合状態となって、第二結合部材に結合している発電機が羽根車の回転力で回転して発電し前記蓄電部材に電力が充電されることを特徴とする請求項1記載の風力井戸掘削機。

【請求項3】
第一結合部材及び第二結合部材に電磁クラッチを用い、蓄電部材に充電された電力を用いて電磁クラッチの駆動エネルギーとすることを特徴とする請求項2に記載の風力井戸掘削機。

【請求項4】
巻上機ブロックはベースから着脱自在となっており、巻上機ブロックを取り外した後は、発電機ブロックと交換し前記発電機ブロックと羽根車と結合可能としたことを特徴とする風力井戸掘削機。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−303639(P2008−303639A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152908(P2007−152908)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(300053298)エヌ・ビー・エス株式会社 (6)
【Fターム(参考)】