説明

飛翔体に対する能動的防御方法

【課題】接近してくる飛翔体を検知して、前記飛翔体の爆発力を軽減するか、前記飛翔体のセンサ機能を低下させるか、あるいは前記飛翔体の進路を誤らせることを可能とした飛翔体に対する能動的防御方法を提供する。
【解決手段】無指向性のアンテナ57を通してミリ波受信機58で第三者の送信するミリ波のレーダ波を受信しその情報をコンピュータ20に加える。また、受光方向の異なる複数の受光器46の出力をスイッチ56を通してコンピュータ20に加えている。コンピュータ20ではミリ波を受信すると、飛翔体が接近して来ると判断するが、ミリ波の受信方向が分からないのでとりあえずペルチェ素子ユニット29を順に選択し消費電力の集中を抑える。そして、特定の受光器46で受光方向が判定されればその方向のペルチェ素子ユニット29のみを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接近してくる火薬を具備した飛翔体を検知し、飛翔体の爆発力によって防御側移動装置(例えば自動車等)が損傷しないように飛翔体の爆発力を軽減させる、又は飛翔体のセンサが目標点を見失うようにする、或いは誤った目標点を示すことにより飛翔体の経路を修正させることにより防御側移動装置の損傷を免れることができるようにする、飛翔体に対する能動的防御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の防御方法として、防御すべき移動装置(例えば自動車等)に火薬を充填した箱を装備しておき、飛翔体の衝突時に前記箱を発火させて飛翔体の爆発力を軽減させる方法があった。しかし、火薬を飛翔体の前後に2段具備した飛翔体が、防御すべき移動装置に衝突した時に、前部の火薬の爆発力が移動装置に具備された火薬の入った箱を破壊し、飛翔体の後部の火薬の爆発力が移動装置を損傷させるため、移動装置に装備された火薬の箱の防御力が弱かった。
【0003】
また、防御すべき移動装置としての自動車の車体の熱を目標にして飛来する飛翔体を欺瞞する方法として、煙幕を車体周囲に張る方法があるが、自動車が移動中の場合はその効果が弱く、或いは複数の熱源体を車体に具備させ赤外線の面模様を変化させる方法があるが、飛翔体は温度の高い熱源の急激な位置変化に惑わされないようになってきているため自動車である移動装置に衝突する確率が高かった。
【0004】
そして、防御すべき移動装置に照射されたレーザ光を検知すると、その欺瞞レーザ光を遠隔に投光し飛翔体のレーザセンサを誤認させる方法では、周囲の外来光をレーザ光として誤検知したり、外来光により受光感度の設定が誤ったりしていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車の車体例えばボンネットやドアの表面に設置した、火薬の層を挟み込んだ金属層から成る複数の火薬の箱を具備した自動車である移動装置にあっては、特に無誘導の飛翔体の接近を検知する手段がないので、飛来してくる飛翔体の前後に火薬を2段具備した飛翔体が自動車側の火薬の箱に接触し、前部の火薬の爆発力により自動車側の火薬の箱が無力化され、飛翔体の後部の火薬の爆発力により自動車は大きな損傷を受けていた。
【0006】
また、移動中の例えば時速40kmの速度で走行している自動車にあっては、飛翔体の赤外線センサを欺くための手段を具備していないため、飛翔体の飛翔経路を自動車方向以外にさせることができず、飛翔体が自動車である移動装置に衝突し自動車は大きな損傷を受けていた。
【0007】
そして、飛来してくる飛翔体を誘導するための自動車に照射されたパルス又は連続波のレーザ光を検知するとその欺瞞用レーザ光を遠隔に照射する防御方法にあっては、受光器の使用波長域が可視光のため外来光を誤検知し、誤って欺瞞光を投光したり、自動車周辺に照らされたレーザの波長域又はレーザ波長域を含む可視光線域における不用の光、例えば夜間における街灯の光等を誤検知し、閾値が高くなってしまい、散乱した弱いレーザ光が受光できず、正確なパルスコードの欺瞞用レーザ光を照射(投光)できず、飛翔体はその欺瞞用レーザ光に惑わされることなく飛翔体が自動車に衝突し自動車は大きな損傷を受けていた。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑み、接近してくる飛翔体を検知して、前記飛翔体の爆発力を軽減するか、前記飛翔体のセンサ機能を低下させるか、あるいは前記飛翔体の進路を誤らせることを可能とした飛翔体に対する能動的防御方法を提供することにある。
【0009】
本発明のその他の目的や新規な特徴は後述の実施の形態において明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る飛翔体に対する能動的防御方法は、レーザ光の受光器及び電波の受信機を防御側移動装置に設けておき、前記防御側移動装置の周囲の紫外線量から可視光線量を算出し、算出された可視光線量に対応した閾値を超えるレーザの反射光を受光する、又は予め設定した周波数帯の電波を受信する、或いはそれら両方の場合に、前記防御側移動装置の表面に設置された複数のペルチェ素子のいずれかを選択して作動させ、前記地面や地表物体の背景温度と同等の温度に変化させ、赤外線センサを搭載した前記飛翔体のセンサ機能を低下させ前記防御側移動装置を検知できないようにすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の飛翔体に対する能動的防御方法を使用することにより、高速で接近してくる飛翔体の爆発力による自動車等の防御側移動装置に対する損傷を低減できる、或いは免れることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る飛翔体に対する能動的防御方法の実施の形態1であって、レーダと火薬ユニットを組み合わせたときの回路構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1において、自動車に火薬ユニット及びレーダのアンテナ群を設置した外観図である。
【図3】前記レーダにおけるアンテナ群と飛翔体との関係を示す平面図である。
【図4】実施の形態1の回路構成における伝搬時間検出器に入力されるパルスの時系列の説明図である。
【図5】本発明に係る飛翔体に対する能動的防御方法の実施の形態2であって、実施の形態1に防御側移動装置としての自動車の動作を検知する手段を追加して機能を向上させた回路構成を示すブロック図である。
【図6】本発明に係る飛翔体に対する能動的防御方法の実施の形態3であって、レーダとペルチェ素子ユニットを組み合わせたときの回路構成を示すブロック図である。
【図7】実施の形態3において、自動車にペルチェ素子ユニット及びレーダのアンテナ群を設置した外観図である。
【図8】本発明に係る飛翔体に対する能動的防御方法の実施の形態4であって、レーダにおけるアンテナ群と飛翔体との関係を示す平面図である。
【図9】本発明に係る飛翔体に対する能動的防御方法の実施の形態5であって、レーダにおけるアンテナ群と飛翔体との関係を示す立体図である。
【図10】本発明に係る飛翔体に対する能動的防御方法の実施の形態6であって、レーダにおけるアンテナ群と飛翔体との関係を示す立体図である。
【図11】本発明に係る飛翔体に対する能動的防御方法の実施の形態7及び8であって、飛翔体を誘導するレーザ光の受光及び直接変調方式の欺瞞用レーザ光を投光するときの回路構成を示すブロック図である。
【図12】自動車に対して照射されたレーザ及びその拡散反射光の広がり、また自動車に設置された受光投光ユニットの受光領域の概略を示した説明図である。
【図13】自動車に対しレーザ光を投光し、その拡散反射光を基に飛翔体が飛来する原理を示した説明図である。
【図14】受光投光ユニットから欺瞞用レーザが投光された場合の飛翔体の予測飛翔経路を示した説明図である。
【図15】太陽光の波長と利用エネルギーの関係を示したグラフである。
【図16】本発明に係る飛翔体に対する能動的防御方法の実施の形態9であって、飛翔体を誘導するレーザ光の受光及び外部変調方式の欺瞞用レーザ光を投光するときの回路構成を示すブロック図である。
【図17】本発明に係る飛翔体に対する能動的防御方法の実施の形態10であって、ミリ波受信機とレーザ光の受光器とペルチェ素子ユニットとを組み合わせたときの回路構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、飛翔体に対する能動的防御方法の実施の形態を図面に従って説明する。
図1乃至図4で本発明に係る飛翔体に対する能動的防御方法の実施の形態1を説明する。図1は実施の形態1の回路構成のブロック図、図2は3つのアンテナを防御側移動装置としての自動車の上部(屋根)に設置するとともに、複数の火薬箱を自動車の左側面に設置した時の概要図、図3は検知すべき飛翔体と3つのアンテナとの関係及び飛翔体の位置を導く連立方程式を表した平面図である。
【0014】
図1は防御側移動装置である自動車に設けられた、飛翔体を検知するレーダ及び飛翔体が自動車に衝突する場合の推定位置に対応した火薬箱を発火させる手段を含む全体構成のブロック図である。飛翔体を検知する無指向性レーダは、1基の送受信アンテナ6と2基の受信アンテナ16とを用い、1基の送受信アンテナ6から符号変調された連続波の送信波7を送信するための送信手段と、その送受信アンテナ6及び2基の受信アンテナ16に対応して設けられていて、前記送信手段で送信された送信電波が飛翔体8で反射された反射電波(受信波9)を受信する受信手段とを備えるものである。送受信アンテナ6には受信ユニットA10が対応し、2基の受信アンテナ16には受信ユニットB17及び受信ユニットC18がそれぞれ対応している。
【0015】
図2は前記アンテナ群を自動車35に設置した時の概要図であり、1基の送受信アンテナ6及び2基の受信アンテナ16は、例えば、無指向性のホイップアンテナであり、車体屋根上にそれぞれ設置されている。なお、各アンテナは無指向性に近い特性を示せばバッチアンテナでも何でも良い。
【0016】
また、図2の自動車35には、火薬箱を有する火薬ユニット21が、例えば自動車車体の左右側面(ドア)や前面(ボンネット)等の複数箇所に装備されている。火薬箱は火薬を充填した箱で、具体的には火薬の層を挟み込んだ金属層を有する箱であり、自動車表面から空間に向かう側に火力を放出するように設定され、発火により金属層を飛ばし、飛翔体に損傷を与え飛翔体の爆発力を軽減する機能を有する。
【0017】
図3は送信アンテナ及び受信アンテナを平面上に配置し、上から眺めた移動体としての飛翔体とアンテナ群の位置関係を示したものである。この図におけるアンテナ群の各アンテナは正三角形の各頂点に配置され、1基のアンテナは送受信兼用となっている。つまり、図3のX軸及びこれに直交するY軸のなすXY平面(具体的には水平面)上のXY直交座標で示す正三角形の頂点A(d,0)には送受信アンテナ6が、頂点B(0,31/2・d),C(−d,0)には受信アンテナ16がそれぞれ配置されている。なお、この図3におけるアンテナの配置点は給電点を表しており、例えばアンテナがホイップアンテナの場合、その長さは考慮していない。飛翔体8の位置は座標(x,y)で示される。送受信アンテナ6から送信された送信波7(後述するように符号変調された連続波)が飛翔体8で反射された反射電波は受信波9として3点のアンテナ6,16で受信される。
【0018】
XY平面上を移動してくる飛翔体8の座標(x,y)は図3に記載されている2元2次連立方程式(1)を解くことにより算出される。なお、この式(1)はアンテナを図3のように配置した場合の式であり、図8のように配置が異なると方程式も変わってくる(図8については後述する)。
【0019】
ここで、飛翔体がXY平面上にない空間上を飛翔してくる場合は式(1)中の電波時間tに誤差が生ずるので、飛翔体8の座標(x,y)に誤差が生じてくる。この場合は図9のアンテナ配置(図9については後述する)を適用したほうが賢明である。そして、図2の自動車車体の凹凸や設置可能な場所に制約がある場合など物理的にXY平面を保てない場合は、アンテナがXY平面近傍のXY平面から垂直方向にずれた多平面上(つまり、XY平面に近い領域)に配置される場合もある。この場合もtに誤差が生ずるので、飛翔体の座標(x,y)に誤差が生じてくる。
【0020】
図1に示されたレーダにおいて、1基の送受信アンテナ6から符号変調された連続波の送信波7を送信するための送信手段は、高周波発振器1、変調器2、符号発生器3及び電力増幅器4を有する。また、A点の送受信アンテナ6に対応する受信手段は受信ユニットA10を、B点の受信アンテナ16に対応する受信手段は受信ユニットB17を、C点の受信アンテナ16に対応する受信手段は受信ユニットC18をそれぞれ有する。各受信ユニットは混合器11、増幅器12、バンドパスフィルタ(BPF)13、波形成形器14及び相関器15を有する。また、符号発生器3とサーキュレータ5とは送信手段と受信手段と共用され、伝搬時間検出器19及びコンピュータ20は各受信ユニットに共用されている。
【0021】
図2の自動車35が具備する火薬ユニット21は、図1に示すように、短絡スイッチ22、雷管23及び自動車表面から空間に向かう側に火力を放出する火薬箱24が組になっていて、コンピュータ20によって選択的に発火されるものである。
【0022】
コンピュータ20は飛翔体位置算出、飛翔体将来位置算出、飛翔体速度算出、発火箱選択(発火させる火薬箱の選択)、発火指令の各機能を有する。
【0023】
なお、短絡スイッチ21はコンピュータ20からの指令がこない時は、雷管23に電気が行かないように短絡状態にし火薬箱24が誤発火しないようにしている。
【0024】
以上の実施の形態1の構成による全体的動作説明を行う。
【0025】
図1に含まれるレーダの送信手段の高周波発振器1から出力された搬送波は、符号発生器3で作成されたM系列符号やGOLD系列符号等の符号で変調器2において変調され、電力増幅器4で電力増幅されて、サーキュレータ5を経由して送受信アンテナ6から送信電波として送信される。送信波7の周波数をfとすると、接近してくる飛翔体8から反射された反射電波である受信波9の周波数はf+fとなりドップラ周波数fが加算されている。
【0026】
レーダの受信手段においては、受信波9はA点の送受信アンテナ6、サーキュレータ5を通り受信ユニットA10の混合器11にて、高周波発振器1の出力の搬送波と混合され周波数fを主としたビデオ信号が抽出され、増幅器12で増幅され、希望の周波数帯のみを通すBPF13を通り波形成形器14に入力される。波形成形器14ではハイ(high)、ロー(Low)のデジタル信号に変換され相関器15に入力される。
【0027】
波形成形器14の出力符号と符号発生器3の符号の逆符号を相関器15(例えば、SAWコンボルバ)に入力し、相関がとれた時に相関パルス信号を出力する。ここで、逆符号とは、送信時の変調に用いた符号の1周期が[1011...1010]であれば、逆符号は1周期の最後から先頭に向かう0,1数字の配列で[0101...1101]となる。
【0028】
伝搬時間検出器19では、符号発生器3からの符号の1周期の開始を知らせる符号発生トリガと受信ユニットA10における相関器15の相関ピーク出力との間の時間、つまりA点で送信した電波が飛翔体8で反射し、A点で受信したときの伝搬時間tを出力する。
【0029】
一方、B点、C点の受信アンテナ16を通って受信された受信電波9は受信ユニットB17及び受信ユニットC18に入力され、受信ユニットA10と同様に作動し、各々の相関ピーク出力が伝搬時間検出器19に入力され、A点で送信した電波が飛翔体で反射し、B点で受信したときの伝搬時間tを得るとともに、A点で送信した電波が飛翔体で反射し、C点で受信したときの伝搬時間tを得る。アンテナ配置は既知であるから、それらの伝搬時間t,t,tを基に位置算出手段としてのコンピュータ20において、図3で示された連立方程式(1)の解を算出し、飛翔体8の位置座標(x,y)を時々刻々と算出し、また、位置座標(x,y)の変化から速度、さらには将来位置も算出するようにしている。なお、将来位置の予測はコンピュータ20において飛翔体の位置を高速に直線回帰演算することにより算出している。
【0030】
ところでブロック図には書かれていないが飛翔体8の速度については、高周波発振器1出力の搬送波の周波数f及びドップラ周波数fから算出することができ、飛翔体に対する視線速度を得るようにしても良い。但しこの場合の視線速度は、飛翔体が送受信アンテナ6に追突するように接近してきた場合は正しい速度を示すが、送受信アンテナ6をかすめる様に接近してきた場合は速度に誤差を生ずる。
【0031】
図4は伝搬時間検出器19に入力される符号発生器3の符号発生トリガと各相関ピークの関係を表したもので、アンテナ群と飛翔体が図3の配置にある場合のものである。
【0032】
図4では符号発生トリガと各相関ピークの組が時間の経過とともに繰り返し描かれているが、この符号発生トリガの間隔は符号の1周期のビット数と符号のクロック周波数により決定される。
【0033】
以上のようにして、前記レーダにより飛翔体8の位置を検知し、かつ飛翔体8の将来位置をコンピュータ20で予測した結果、飛翔体8が防御すべき自動車に衝突し爆発し自動車に損傷を与えると想定される場合に、推定された衝突位置に対応する火薬ユニット21を選択し、飛翔体8が自動車に衝突する前に火薬箱24を発火させ、火薬を具備した飛翔体8又は火薬を飛翔体の前後に2段具備した飛翔体8の爆発力を軽減し自動車の損傷を小さくするようにしている。
【0034】
この実施の形態1によれば、次の通りの効果を得ることができる。
【0035】
(1) 防御側移動装置としての図2の自動車35は、これに装備されているレーダによって、接近してくる飛翔体8を高速に検知及び追尾できる。具体的には、無指向性の送受信アンテナ1基及び無指向性の受信アンテナ2基を同一平面(あるいは同一平面近傍の多平面を含む)上の任意点に配置し、送受信アンテナ6から送信され飛翔体8から反射してきた符号変調の連続波を受信点(1基の送受信アンテナ6及び2基の受信アンテナ16が配置された点)で受信し、各々の反射波の伝搬時間を基に平面上において接近してくる飛翔体8を高速に検知及び追尾し、自動車35のどの箇所に衝突するかを推定できる。
【0036】
(2) そして、飛翔体8が自動車35の車体に装備された火薬箱24に接触する手前で、複数ある火薬箱24の中から推定衝突位置に対応するものとしてコンピュータ20が選択した火薬箱24を発火させ、その火薬箱24の金属層を飛ばし、飛翔体8に損傷を与え飛翔体8の爆発力を軽減することを可能としている。
【0037】
(3) 前記レーダは、モータでアンテナを駆動する回転式のアンテナではなく、3点の無指向性アンテナの組み合わせを用いており、高速で移動する(接近する)飛翔体8の位置情報、速度情報を瞬時に得ることができ、このため、飛翔体8の接近に対する対処をとるための時間の確保に余裕ができ、この結果、飛翔体8が自動車35側の火薬箱24に接触する手前で火薬箱24を発火させて、飛翔体8の爆発力軽減が実現できる。
【0038】
(4) 送信波7を符号変調波としたことで、レーダの相互干渉及び他の送信局からの電波干渉が軽減され、また自ら送信した送信波が自らの受信ユニットに与える電波干渉を抑圧することができる。
【0039】
図5は本発明の実施の形態2のブロック図を示す。この場合、防御側移動装置としての自動車は、GPS受信機25、自動車の走行速度を検知するための車速パルス(速度パルス)発生器26及び3軸加速度センサ27のうちのいずれか或いは全てを具備し、それらの出力をコンピュータ20に加えて自動車の動作状況を詳細に得るように図1の実施の形態1に新たな機能を追加している。なお、その他の構成は前述した実施の形態1と同様であり、同一又は相当部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0040】
GPS受信機25では前記自動車の車速及び進行方向の概略が分かり、車速の詳細は車速パルス発生器26の出力である速度とパルス数が比例した車速パルスにより得ることができ、進行方向及び発進、停止は3軸加速度センサ27の加速度より得ることができる。この結果、コンピュータ20は飛翔体位置算出、飛翔体将来位置算出、飛翔体速度算出、発火箱選択(発火させる火薬箱の選択)、発火指令に加えて、自動車動作に関する車速算出及び車の進路方向算出機能を備えることになり、飛翔体8の衝突位置の予測精度を向上させることができる。
【0041】
図6は本発明の実施の形態3のブロック図を示し、図7は、図2の火薬ユニット21の代わりにペルチェ素子33を防御側移動装置としての自動車35に装備した構成を示す。図6の例では、車の左側面に配置された複数のペルチェ素子33を有するペルチェ素子ユニット29と、車の右側面に配置された複数のペルチェ素子33を有するペルチェ素子ユニット29とが少なくとも設けられており、各ペルチェ素子ユニット29は、ペルチェ素子33に加えて、スイッチ30、極性方向スイッチ31、電流制御器32及び温度センサ34を有している。スイッチ30はペルチェ素子ユニット29がコンピュータ20から選択されると、極性方向スイッチ31、電流制御器32を介してペルチェ素子33に電力を供給する。極性方向スイッチ31ではペルチェ素子33の表側(自動車表面から空間に向かう側)を熱くするのか冷やすのかを切り替える。温度センサ34はペルチェ素子33の表面温度を監視し、背景模擬用の温度になるように電流制御器32で電流を制御する。
【0042】
また、地面や地表物体(例えば、木々等)の温度を検知する赤外線センサ28が自動車に搭載され、その温度検知出力がコンピュータ20に加えられている。この結果、コンピュータ20は飛翔体位置算出、飛翔体将来位置算出、飛翔体速度算出、車速算出及び車の進路方向算出機能に加えて、背景温度算出、ペルチェ素子ユニット選択、ペルチェ素子温度設定機能を有する。なお、その他の構成は前述した実施の形態2と同様であり、同一又は相当部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
この場合、レーダで飛翔体8の接近を検知し、コンピュータ20において飛翔体8が衝突すると予測される位置付近のペルチェ素子ユニット29を選択し、例えば自動車の左側面に設置された複数個のペルチェ素子33をすばやく特定温度に変化させるようにしている。なお、その特定温度は、赤外線センサ28から得られた地面や地表物体の背景温度、或いはその背景温度及び自動車に設置されたペルチェ素子33の密度を基にコンピュータ20で算出した背景模擬用の温度としている。例えば、ペルチェ素子33の設置していない車体部分がある場合には、ペルチェ素子33とペルチェ素子の無い車体部分の面積とを合わせた平均温度が背景温度に近づくように背景模擬用の温度を設定することができる。
【0044】
このように、飛翔体8が衝突すると予測される位置付近のペルチェ素子33を選択して作動させ、前記地面や地表物体の背景温度と同等の温度に変化させる。ペルチェ素子33の表面温度が背景温度に近づくことにより、背景温度と自動車35の車体の温度差を基に目標として捕捉し飛来してくる飛翔体8の赤外線センサ(温度センサ)に対して背景であると欺瞞することができ、捕捉を外させ飛翔体8の新たな飛翔経路を更新させない、即ち現在の進行方向を維持させ自動車35の速度に伴う自動車位置の移動に追随させないようにすることができる。
【0045】
また、遠隔の飛翔体8の赤外線センサに対しては、目標が消えたように見せかけて欺瞞し、自動車35が移動中であろうが静止していようが、飛翔体8が捜索した新たな他の熱源に向かうことにより自動車に衝突しないようにできる。
【0046】
図8は本発明の実施の形態4であって、防御側移動装置としての自動車が備えるレーダのアンテナ配置の他の例を示す。この図8は送信アンテナ及び受信アンテナを平面上に配置し、上から眺めた飛翔体とアンテナ群の位置関係及び飛翔体の位置を導く連立方程式を示したものである。この図におけるアンテナ群、つまり、図8のXY平面(具体的には水平面)上の直角三角形の頂点A(2d,0)には送受信アンテナ6が、頂点B(0,d),C(0,0)には受信アンテナ16がそれぞれ配置されている。なお、この図8におけるアンテナの配置点は給電点を表している。
【0047】
レーダの送信手段及び受信手段は図1のブロック図の通りであり、実施の形態1,2,3と同様に既知のアンテナ配置と伝搬時間t,t,tを基にコンピュータ20において、図8で示された連立方程式(2)の解を算出し、飛翔体8の位置座標(x,y)を算出することができる。そして、この飛翔体位置座標から飛翔体の将来位置を算出して、実施の形態1,2と同様に自動車が備える火薬箱のいずれかを選択して発火させることにより飛翔体8の爆発力を減衰させることができる。あるいは、実施の形態3のようにペルチェ素子33を有するペルチェ素子ユニット29を自動車が具備する場合には、複数のペルチェ素子ユニット29のいずれかを選択して作動させ、選択されたペルチェ素子33を地面や地表物体の背景温度と同等の温度に変化させ、赤外線センサを搭載した飛翔体8のセンサ機能を低下させて自動車を検知不能とすることができる。
【0048】
図9は本発明の実施の形態5であって、防御側移動装置としての自動車が備えるレーダのアンテナ配置の他の例を示す。この図9は、XY平面に垂直なXZ平面或いはYZ平面上に受信アンテナ16を追加したアンテナ群と空間上にいる飛翔体8の位置関係及び飛翔体の位置を導く連立方程式を示したものである。この図におけるアンテナ群の各アンテナはABCDを頂点とする三角錐の各頂点に配置され、1基のアンテナは送受信兼用となっている。つまり、図9のXY平面(具体的には水平面)上のXYZ直交座標で示す正三角形の頂点A(d,0,0)には送受信アンテナ6が、頂点B(0,31/2・d,0),C(−d,0,0)には受信アンテナ16が図3と同様に配置され、さらにXY平面からZ軸方向にずれた頂点D(0,0,31/2・d)に受信アンテナ16が配置されている。なお、図3と同様にこの図9の場合もアンテナの配置点は給電点を表している。
【0049】
XYZ空間上を移動してくる飛翔体8の座標(x,y,z)は図9に記載されている3元2次連立方程式(3)を解くことにより算出される。なお、この式(3)はアンテナを図9のように配置した場合の式であり、配置が異なると方程式も変わってくる。
【0050】
前記式(3)中の伝搬時間t,t,t,tは図1と同様の構成(但し、D点の受信アンテナ16に対応した受信ユニットD(図示せず)を追加する)で得ることができる。
【0051】
この実施の形態5によれば、飛翔体8がXY平面から離れた空間を移動している場合でも、Z軸方向の高さを考慮することで、より精度の高い飛翔体8の位置算出が可能である。そして、この飛翔体位置座標から飛翔体の将来位置を算出して、実施の形態1,2と同様に自動車が備える火薬箱のいずれかを選択して発火させることにより飛翔体8の爆発力を減衰させることができる。あるいは、実施の形態3のようにペルチェ素子33を有するペルチェ素子ユニット29を自動車が具備する場合には、複数のペルチェ素子ユニット29のいずれかを選択して作動させ、選択されたペルチェ素子33を地面や地表物体の背景温度と同等の温度に変化させ、赤外線センサを搭載した飛翔体8のセンサ機能を低下させて自動車を検知不能とすることができる。
【0052】
図10は本発明の実施の形態6であって、防御側移動装置としての自動車が備えるレーダのアンテナ配置の他の例を示す。この図10は、送受信アンテナ6をZ軸上に配置し、X軸上だけでなくY軸上にも受信アンテナ16を2基配置し、それらのアンテナ群と空間上にいる飛翔体8の位置関係及び飛翔体の位置を導く連立方程式を示したものである。図10のXY平面上のXYZ直交座標で示す正三角形の頂点A(d,0,0)、頂点B(0,31/2・d,0)、頂点C(−d,0,0)に受信アンテナ16が配置されるとともに、X軸に関して頂点Bと対称な点D(0,−31/2・d,0)にも受信アンテナ16が配置され、さらにXY平面からZ軸方向にずれた頂点E(0,0,31/2・d)に送受信アンテナ6が配置されている。なお、図3と同様にこの図10の場合もアンテナの配置点は給電点を表している。
【0053】
この実施の形態6の場合、送信手段及び受信手段は図1と同様の構成(但し、受信アンテナ数に対応した受信ユニットを追加する)であればよい。
【0054】
図10のアンテナ群の場合、Y軸上に2基の受信アンテナが配置されているので空間ダイバシティを構成し、Y軸上の一方の受信アンテナの電波9が弱いときは他方の受信アンテナの強い受信波9を使った図1の波形成形器14の出力を基にその相関ピークを優先して使用するようにしている。従ってマルチパスによるフェージングを防止(受信波の変動を防止)することができ、ひいては位置データの歯抜けを防止でき、飛翔体8の正確な位置座標(x,y,z)が得られる。そして、この飛翔体位置座標から飛翔体の将来位置を算出して、実施の形態1,2と同様に自動車が備える火薬箱のいずれかを選択して発火させることにより飛翔体8の爆発力を減衰させることができる。あるいは、実施の形態3のようにペルチェ素子を有するペルチェ素子ユニットを自動車が具備する場合には、複数のペルチェ素子ユニットのいずれかを選択して作動させ、選択されたペルチェ素子を地面や地表物体の背景温度と同等の温度に変化させ、赤外線センサを搭載した飛翔体8のセンサ機能を低下させて自動車を検知不能とすることができる。
【0055】
なお、Y軸上に2基の受信アンテナを設ける代わりに、Z軸上に2基の受信アンテナを配置して空間ダイバシティを構成してもよい。
【0056】
このように、受信アンテナを最低限の必要数よりも多く配置することにより、空間ダイバシティを構成して、レーダの捕捉追尾性能の向上を図ることができる。
【0057】
なお、実施の形態1〜6において、3基のアンテナをXY平面に上に配置したが、各アンテナのXY平面上での位置は任意であり、また、当該XY平面に近い領域の任意の3点にそれぞれ配置したアンテナを用いることもできる。
【0058】
また、実施の形態5,6において、4基以上のアンテナを用いる場合、XY平面上若しくは当該XY平面に近い領域の任意の3点以上にそれぞれ配置したアンテナと、前記XY平面若しくは前記第XY平面に近い領域に垂直なXZ若しくはYZ平面上若しくは当該平面に近い領域の任意の1点に配置したアンテナとを用いることができる。
【0059】
なお、一般的にはXY平面を水平面、Z軸を鉛直方向に設定するが、XY平面が水平面に対して所定の角度をなした面でZ軸がそれに垂直であるとしても本発明は適用できる。
【0060】
図11乃至図15で本発明の実施の形態7及び8を説明する。ここで、図11にブロック図を示す実施の形態7は、レーザ光で照射された位置を目標として飛来してくる飛翔体を防御する場合にパルスレーザ光が照射されてきたときの防御方法であり、同じブロック図に示される実施の形態8は連続波(モノパルス)レーザに対応する(連続波レーザ光が照射されてきたときの)防御方法である。
【0061】
まず、図12乃至図14においてレーザ光で飛翔体の目標となる自動車が照射されたときの拡散反射光の様子及びレーザ光で照射された位置を目標として飛来してくる飛翔体の飛翔原理等について説明する。
【0062】
図12はレーザ光で照射された位置を目標として飛来してくる飛翔体に関する側面図であり、防御側移動装置である自動車35の左側面にレーザ光38が照射又は投光されると、拡散反射光が広がり、弱い拡散反射光を含む角度範囲39が生じる。この時の受光器及び投光器を具備した受光投光ユニット36(自動車35に装備されている)におけるレーザの受光領域37が図12に示される。
【0063】
図13は飛翔体の飛翔原理を示す平面図であり、第3者が投光器41からレーザ光38を自動車35に投光した場合、弱い拡散反射光を含む角度範囲39と共に強い拡散反射光を含む角度範囲40が生じ、飛翔体8は強い拡散反射光を含む角度範囲40を基に飛翔経路42を描きながら自動車35に向かっていく。
【0064】
図14はレーザ光で照射された位置を目標として飛来してくる飛翔体8の飛翔経路が欺瞞により修正を強いられたときの飛翔経路を示す平面図であり、一方の受光投光ユニット36でレーザ光38の弱い拡散反射光を受光すると、受光投光ユニット36から欺瞞用レーザ光43を自動車35から離れた位置に投光する。この時欺瞞用レーザ光43を投光された位置には欺瞞光による強い拡散反射光を含む角度範囲44が生じ、飛翔体8は新たな飛翔経路45上を飛翔していくことになる。
【0065】
図11のブロック図の構成を用いた実施の形態7(パルスレーザ光が照射されてきたときの防御方法)では、まずパルス(デジタル01001011等の信号)のレーザ光38(図12、図13参照)を受光器46で受光し電気信号としてゲート49とゲート51に加える。ゲート49では閾値設定器48の閾値出力を越えた場合に受光器46の出力電圧が、カウンタ又は積分器50に加えられる。カウンタでは単位時間当たりのパルス数を数え予め設定した数に達した場合にゲート51を一定時間開く、或いは受光器46の出力される電圧のパルスをオペアンプによる積分器により積分し予め設定した電圧に達した場合にゲート51を一定時間開くようにしている。
【0066】
図15は太陽光の波長と利用エネルギーの関係を示したもので、閾値設定器48の閾値設定用の紫外線センサ47が利用する紫外線の利用エネルギーと可視光線の利用エネルギーの強弱関係が分かる。この関係により任意の日時の天候による自動車の周囲の紫外線の強さから可視光線の強さを閾値設定器48で算出することができる。つまり、閾値設定器48において、紫外線センサ47で検知した紫外線量からそのときの可視光線量を算出し、算出された可視光線量に対応した閾値に設定することができる。
【0067】
閾値設定器48で出力される閾値は次のように決定される。図15の太陽光スペクトラムのうちUVA(長波長域紫外線)帯域を検知する紫外線センサ47で自動車35の周囲の紫外線量を求め、この時の利用エネルギー量の平均が50%だとし(図15の縦軸から読み取る)、受光器46の検知波長が500nmとした場合の太陽光に基づく可視光線量を図15から利用エネルギー量90%程度と判断する。そして閾値は90%程度を超える利用エネルギー量に応じた電圧としている。
【0068】
この図15の波長対利用エネルギーの関係が閾値設定器48に記録されており、紫外線量に応じて、即ち任意の天候に応じて閾値を逐次設定し、可視光線域又はレーザ波長域の光を出す不用な電灯等の光が、閾値に影響することがないようにし、一般の電灯光によって閾値が高くなり、弱いレーザ散乱光が受光できなくなることを防いでいる。
【0069】
そしてカウンタ又は積分器50により設定したパルス数がこないとゲート51が開かないようになっているのでいっそう誤検知確率を小さくしている。特に、カウンタの場合、連続レーザ光、連続可視光をカットできるから、パルスレーザ光の検知に有効である。
【0070】
ゲート51が開くと波形成形器52で主として歪んだパルス列を生成し直すのであるが、波形成形器52にも閾値設定器48の閾値出力が加えられており、閾値以上の電圧の信号のみから前記照射されたパルスレーザ光に対応するパルス列を生成するようにしている。この理由は、レーザ波長と同じ波長の光がノイズとして入っている場合に、パルス列生成時において前記ノイズによる符号誤りを防ぐためである。波形成形器52で生成された前記パルス列をレーザダイオード53に加えることによって、レーザダイオード53で欺瞞用レーザ光43を直接変調して発生し、光増幅器54で増幅し、図14のように自動車35に装備された受光投光ユニット36の投光器から欺瞞用レーザ光43を自動車35から離れた位置に投光する。この結果、飛翔体8に対して誤った進路を示すことができ、飛翔体8の進路を修正させるようにして自動車に衝突しないようにしている。この場合、レーザダイオード53を直接オン、オフして変調するため、オン時にレーザダイオード53で発生するレーザ光の波長が揺れるため、スペクトラムは若干拡がる。
【0071】
なお、波形成形器52では、受光器46からの出力信号が一定時間来なくなった場合は、波形成形器52内のメモリに逐次記録された途切れる前までの波形を一定時間出力するようにし断続的な途切れを防いでいる。
【0072】
図11のブロック図の構成を用いた実施の形態8(連続波レーザ光が照射されてきたときの防御方法)では、まず連続波のレーザ光38(図12、図13参照)を受光器46で受光し電気信号としてゲート49とゲート51に加える。ゲート49では閾値設定器48の閾値出力を越えた場合に受光器46の出力電圧が、積分器50に加えられる。そして、積分器50による積分値が予め設定した電圧に達した場合にゲート51を一定時間開くようにしている。以後の動作は実施の形態7(パルスレーザ光が照射されてきたときの防御方法)と同様である。
【0073】
図11の実施の形態7及び8の場合、第3者が飛翔体の誘導目的のために自動車に向けて照射したパルス又は連続波のレーザ光を検知するセンサを用いているが、閾値の設定に際して、レーザ光と周囲光の合成光を検知することのないように、レーザ光と同じ可視光線のセンサを使わずに紫外線センサ47を使用して可視光をカットし、閾値設定器48にて紫外線量から自動車周囲のレーザ波長帯の可視光線量を算出し、その算出値に対応した閾値としている。そして、前記閾値を超えた強さのレーザ光を検知することで、誤検知確率を下げ、照射されたレーザ光と同等なパルスか連続波の欺瞞用レーザ光を自動車の離れた位置に投光することにより、飛翔体に対して誤った進路を示すことができ、飛翔体の進路を修正させるようにし自動車に衝突しないようにすることができる。
【0074】
図16は本発明の実施の形態9であり、図14の欺瞞用レーザ光43を作り出す過程において、変調器55によって波形成形器52の出力でレーザダイオード53の出力を変調している。その他の構成は前述した実施の形態7,8と同様であり、同一又は相当部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0075】
図16のように、変調器55による外部変調を使用すると欺瞞用レーザ光43のスペクトラムが広がらなくなり単一波長の光として強く投光されることになる。
【0076】
図17は本発明の実施の形態10のブロック図を示す。この場合、防御側移動装置としての自動車は、レーザ光を検知するために、受光方向の異なる複数の受光器46、受光方向の切り換えのために受光器46に選択的に接続する方位切換用のスイッチ56、紫外線センサ47、閾値設定器48及びゲート49を有するとともに、ミリ波帯の電波を受信するために、無指向性のアンテナ57及びミリ波受信機58を具備している。また、ゲート49の出力及びミリ波受信機58の出力を受けるコンピュータ20、赤外線センサ28及び複数のペルチェ素子33を有するペルチェ素子ユニット29を有している。
【0077】
紫外線センサ47、閾値設定器48及びゲート49の機能は図11の実施の形態7と同様であり、可視光線域又はレーザ波長域の光を出す不用な電灯等の光が、閾値に影響することがないようにし、一般の電灯光によって閾値が高くなり、弱いレーザ散乱光が受光できなくなることを防いでいる。
【0078】
コンピュータ20、赤外線センサ28及び複数のペルチェ素子ユニット29を含む構成は、図6の実施の形態3の場合と同様の機能を果たすものである。コンピュータ20は、レーザ照射面算出、背景温度算出、ペルチェ素子ユニット選択、ペルチェ素子温度設定機能を有している。コンピュータ20はペルチェ素子33の温度を制御してペルチェ素子33の表面温度を背景温度に近づけ、背景温度と自動車の車体の温度差を基に目標として捕捉し飛来してくる飛翔体の赤外線センサ(温度センサ)に対して背景であると欺瞞する。
【0079】
この場合の動作は、まず、無指向性のアンテナ57を通してミリ波受信機58で第三者(例えば飛翔体)の送信するミリ波のレーダ波を受信しその情報をコンピュータ20に加える。また、受光方向の異なる複数の受光器46の出力をスイッチ56を通してコンピュータ20に加えている。コンピュータ20ではミリ波を受信すると、飛翔体が接近して来ると判断するが、ミリ波の受信方向が分からないのでとりあえずペルチェ素子ユニット29を順に選択し消費電力の集中を抑える。そして、特定の受光器46で受光方向が判定されればその方向のペルチェ素子ユニット29のみを選択する。なお設定温度算出及びペルチェ素子ユニット作動方法は図6と同様である。
【0080】
この実施の形態10は目標の追尾に電波の照射を併用する飛翔体に対する防御に有効である。
【0081】
なお、図6の実施の形態3や図17の実施の形態10において、複数のペルチェ素子を有するペルチェ素子ユニットは、車の左側面と右側面に設けた例を示したが、車のボンネットや屋根に配置してもよい。
【0082】
以上本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく請求項の記載の範囲内において各種の変形、変更が可能なことは当業者には自明であろう。
【符号の説明】
【0083】
1 高周波発振器
2 変調器
3 符号発生器
4 電力増幅器
5 サーキュレータ
6 送受信アンテナ
7 電波(送信波)
8 飛翔体
9 電波(受信波、飛翔体から反射されてきた送信波)
10,17,18 受信ユニット
ll 混合器
12 増幅器
13 BPF(バンドパスフィルタ)
14 波形成形器
15 相関器
16 受信アンテナ
19 伝搬時間検出器
20 コンピュータ
21 火薬ユニット
22 短絡スイッチ
23 雷管
24 火薬箱
25 GPS受信機
26 車速パルス発生器
27 3軸加速度センサ
28 赤外線センサ
29 ペルチェ素子ユニット
30 スイッチ
31 極性方向スイッチ
32 電流制御器
33 ペルチェ素子
34 温度センサ
35 自動車
36 受光投光ユニット
37 受光投光ユニットの受光領域
38 レーザ光
39 弱い拡散反射光を含む角度範囲
40 強い拡散反射光を含む角度範囲
41 投光器
42 飛翔経路
43 欺瞞用レーザ光
44 欺瞞光による強い拡散反射光を含む角度範囲
45 新たな飛翔経路
46 受光器
47 紫外線センサ
48 閾値設定器
49,51 ゲート
50 カウンタ又は積分器
52 波形成形器
53 レーザダイオード
54 光増幅器
55 変調器
56 スイッチ
57 アンテナ
58 ミリ波受信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光の受光器及び電波の受信機を防御側移動装置に設けておき、前記防御側移動装置の周囲の紫外線量から可視光線量を算出し、算出された可視光線量に対応した閾値を超えるレーザの反射光を受光する、又は予め設定した周波数帯の電波を受信する、或いはそれら両方の場合に、前記防御側移動装置の表面に設置された複数のペルチェ素子のいずれかを選択して作動させ、前記地面や地表物体の背景温度と同等の温度に変化させ、赤外線センサを搭載した前記飛翔体のセンサ機能を低下させ前記防御側移動装置を検知できないようにすることを特徴とする飛翔体に対する能動的防御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−198175(P2009−198175A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137255(P2009−137255)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【分割の表示】特願2006−156386(P2006−156386)の分割
【原出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(390014306)防衛省技術研究本部長 (169)
【Fターム(参考)】