説明

飛翔体発射システム及び飛翔体の発射制御方法

【課題】飛翔体を目標に向けて発射する際に、検出目標を確実にロックオンして飛翔体を発射し得る飛翔体発射システムを提供する。
【解決手段】飛翔体11のシーカ111とは別に、外部照準器13により移動目標を検出し、演算装置14により飛翔体11のシーカ111で得られる目標情報に略一致する疑似目標情報を生成して飛翔体11に送信して、飛翔体11の処理に移管するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば目標をロックオンした後に、目標方向に向けて飛翔体を発射する飛翔体発射システム及び飛翔体の発射制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、飛翔体にあっては、撮像装置によるシーカを搭載して、その撮像画像を解析することで移動目標の検出を行うものがある。そして、上記飛翔体を発射する飛翔体発射システムでは、飛翔体にて検出目標をロックオンした後、検出目標に向けて飛翔体を発射装置から発射するようにしている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平6−323787号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記システムでは、発射筒または発射管を飛翔体の加速に利用する場合に、飛翔体のシーカは目標を直視できず、このためロックオンが不可能となり、発射できなくなる。
【0004】
そこで、この発明の目的は、飛翔体を目標に向けて発射する際に、検出目標を確実にロックオンして飛翔体を発射し得る飛翔体発射システム及び飛翔体の発射制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記目的を達成するために、以下のように構成される。
移動目標を飛翔体の検出器にて検出し、この検出器により得られた目標情報に基づいて飛翔体を検出目標に向けて発射する飛翔体発射システムにおいて、飛翔体の検出器とは別に移動目標を検出し、飛翔体の検出器により得られる目標情報に略一致する疑似目標情報を発生する疑似情報発生手段と、飛翔体の発射前に、疑似情報発生手段で得られる疑似目標情報を飛翔体に送信する送信手段とを具備し、飛翔体にて疑似目標情報に基づいて発射するようにしたものである。
【0006】
この構成によれば、飛翔体の検出器とは別に、疑似情報発生装置にて移動目標を検出して、飛翔体の検出器により得られる目標情報に略一致する疑似目標情報を生成して飛翔体に送信して、飛翔体の処理に移管するようにしている。従って、移動目標の検出処理から飛翔体発射処理までを飛翔体に頼らずに疑似情報発生装置で分担して実行することが可能となり、これにより飛翔体を目標に向けて発射する際に、疑似情報発生装置と飛翔体とが協働して検出目標を疑似的にロックオンし、飛翔体を目標に向けて発射することができる。
【0007】
飛翔体が前記疑似目標情報を記録媒体に記録し、この記録した疑似目標情報に基づいて、飛翔体を移動目標に向けて発射する機能を有するとき、送信手段は、1度のみ疑似目標情報を前記飛翔体へ送信することを特徴とする。
この構成によれば、飛翔体にて記憶された疑似目標情報を利用して検出目標を疑似的にロックオンすることができるので、疑似情報発生装置は疑似目標情報を飛翔体へ1度送信すればよいことになり、これにより疑似情報発生装置の処理負荷を低く抑えることができる。
【0008】
疑似情報発生手段は、飛翔体との通信により飛翔体の位置情報を取得するとともに、測位システムの衛星から送られてくる信号に基づいて自己の位置情報を求め、これら飛翔体の位置情報及び自己の位置情報に基づいて、疑似目標情報を生成することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、飛翔体と疑似情報発生装置との間が遠く離れている場合にも、既存の衛星測位システムを使用して疑似情報発生装置の位置を検出することができ、また飛翔体との通信により飛翔体の位置情報を得ることができ、これら位置情報に基づいて飛翔体の検出器から得られる目標情報に略一致する疑似目標情報を生成することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上詳述したようにこの発明によれば、飛翔体を目標に向けて発射する際に、検出目標を確実にロックオンして飛翔体を発射し得る飛翔体発射システム及び飛翔体の発射制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係わる飛翔体発射システムの構成を示すブロック図である。図1において、飛翔体11は発射筒12に収容されている。この飛翔体11の頭部には目標を検出するためのシーカ111が搭載されている。
【0012】
また、発射筒12の外部には、外部照準器13が設けられている。外部照準器13は、飛翔体11のシーカ111と同等の検出機能を有し、目標を含む領域を撮像して、その撮像画像を解析することで移動目標の検出・追尾を行うものである。また、外部照準器13には、演算装置14が設けられている。
【0013】
演算装置14は、外部照準器13により得られる目標情報を、飛翔体11のシーカ111から見た疑似目標情報に変換して、この疑似目標情報を例えば電波や光によって飛翔体11に送信する。
【0014】
これに対し、飛翔体11は、図2に示すように構成される。
飛翔体11は、演算装置14から送られた疑似目標情報を受信部112で受信し、演算部113に取り込む。演算部113は、シーカ111により得られる撮像画像を解析することで移動目標の検出・追尾を行うものであり、受信部112から疑似目標情報が送られてきた場合に、この疑似目標情報を発射信号生成部114に供給する。
【0015】
発射信号生成部114は、上記疑似目標情報から目標の重心移動を求め、その移動方向及び移動量に基づいて発射信号を生成する。この発射信号は、搭載飛翔体の発射制御とともに、シーカ111の視野を目標中心に位置させる撮像制御に供される。
【0016】
次に、上記構成において、以下にその動作を説明する。
図3は、外部照準器13により目標を撮像した際の演算装置14の処理手順を示すフローチャートである。
【0017】
演算装置14は、制御処理を開始すると、外部照準器13により得られる撮像画像を取り込み(ステップST3a)、この撮像画像信号を図示しないメモリに記憶して次の撮像画像を取り込み、この撮像画像とメモリに記憶されている撮像画像との相関比較を行い、時間軸をずらして重ね合わせる(ステップST3b)。ここで、同じパターンになる箇所が最大の相関となり、それだけ目標が動いたことになる。また相関を取り続けると、目標の移動方向がわかる。
【0018】
続いて、演算装置14は、相関検出結果から移動目標があるか否かの判断を行い(ステップST3c)、移動目標がなければ上記ステップST3aに移行する。
【0019】
ここで、移動目標がある場合に(Yes)、演算装置14は予め記憶されている飛翔体11及び発射筒12の位置情報及び角度情報を使用して、目標情報を飛翔体11のシーカ111から見た疑似目標情報に変換し(ステップST3d)、この疑似目標情報を飛翔体11に向けて送信する(ステップST3e)。
【0020】
飛翔体11は、演算装置14から疑似目標情報が送られてくると、あたかもシーカ111自身が目標を捉えたかのように動作することができ、疑似的にロックオンが可能になる。ロックオン後は飛翔体11の発射が可能になり、飛翔体11は発射筒12の内部を移動開始する。このとき、演算装置14からの疑似目標情報が常に送信される。
【0021】
そして、飛翔体11のシーカ111が直接、目標を含む領域を捉えられる状況になったとき、飛翔体11はロックオンが維持されると同時に発射筒12から離脱する。
【0022】
以上のように上記実施形態では、飛翔体11のシーカ111とは別に、外部照準器13により移動目標を検出し、演算装置14により飛翔体11のシーカ111で得られる目標情報に略一致する疑似目標情報を生成して飛翔体11に送信して、飛翔体11の処理に移管するようにしている。
【0023】
従って、移動目標の検出処理から飛翔体11の発射処理までを飛翔体11に頼らずに外部照準器13及び演算装置14で分担して実行することが可能となり、これにより飛翔体11を目標に向けて発射する際に、外部照準器13及び演算装置14と飛翔体11とが協働して検出目標を疑似的にロックオンし、飛翔体11を目標に向けて発射筒12から発射することができる。
【0024】
なお、上記実施形態では、飛翔体11において、演算装置14から常に送られてくる疑似目標情報に基づいてロックオンする例について説明したが、飛翔体11に記憶装置を備え、演算装置14から送られてくる疑似目標情報を記憶装置に記憶し、この記憶した疑似目標情報から既知の条件に従って移動目標を推測できるものであるならば記憶した疑似目標情報に基づいてロックオンするようにしてもよい。この場合、演算装置14は疑似目標情報を飛翔体へ1度送信すればよいことになり、これにより演算装置14の処理負荷を低く抑えることができ、また演算装置14に高機能処理を実現させることができる。
【0025】
また、上記実施形態では、飛翔体11と外部照準器13及び演算装置14との間が遠く離れている場合に、飛翔体11及び演算装置14にそれぞれGPS(Global Positioning System)受信機を設けるようにしてもよい。このようにすれば、GPSを利用して演算装置14の位置を検出し、飛翔体11との通信により飛翔体11の位置を検出し、これら位置情報に基づいて飛翔体11のシーカ111から得られる目標情報に略一致する疑似目標情報を生成することができる。
【0026】
また、上記実施形態では、飛翔体11を発射筒12に収容して発射する例について説明したが、発射管であってもよい。
【0027】
その他、システム構成、飛翔体の内部構成、外部照準器の種類、飛翔体の発射制御手順等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の一実施形態に係わる飛翔体発射システムの構成を示すブロック図。
【図2】図1における飛翔体の内部構成を示すブロック図。
【図3】同実施形態において、外部照準器により目標を撮像した際の演算装置の処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0029】
11…飛翔体、12…発射筒、13…外部照準器、14…演算装置、111…シーカ、112…受信部、113…演算部、114…発射信号生成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動目標を飛翔体の検出器にて検出し、この検出器により得られた目標情報に基づいて前記飛翔体を検出目標に向けて発射する飛翔体発射システムにおいて、
前記飛翔体の検出器とは別に前記移動目標を検出し、前記飛翔体の検出器により得られる目標情報に略一致する疑似目標情報を発生する疑似情報発生手段と、
発射前の前記飛翔体に対し、前記疑似情報発生手段で得られる疑似目標情報を前記飛翔体に送信する送信手段とを具備し、
前記飛翔体にて前記疑似目標情報に基づいて、発射するようにしたことを特徴とする飛翔体発射システム。
【請求項2】
前記飛翔体が前記疑似目標情報を記録媒体に記録し、この記録した疑似目標情報に基づいて、前記飛翔体を前記移動目標に向けて発射する機能を有するとき、
前記送信手段は、1度のみ前記疑似目標情報を前記飛翔体へ送信することを特徴とする請求項1記載の飛翔体発射システム。
【請求項3】
前記疑似情報発生手段は、前記飛翔体との通信により前記飛翔体の位置情報を取得するとともに、衛星測位システムの衛星から送られてくる信号に基づいて自己の位置情報を求め、これら前記飛翔体の位置情報及び自己の位置情報に基づいて、前記疑似目標情報を生成することを特徴とする請求項1記載の飛翔体発射システム。
【請求項4】
移動目標を飛翔体の飛翔用検出器にて検出し、この飛翔用検出器により得られた目標情報に基づいて前記飛翔体を検出目標に向けて発射する飛翔体発射システムで使用される飛翔体の発射制御方法において、
前記飛翔体の飛翔用検出器とは別の検出器で前記移動目標を検出し、
得られる目標情報に略一致する疑似目標情報を生成し、
この疑似目標情報を前記飛翔体に送信し、
前記飛翔体において、前記疑似目標情報を受信し、
前記疑似目標情報に基づいて、前記飛翔体を前記移動目標に向けて発射するようにしたことを特徴とする飛翔体の発射制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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