説明

飛翔害虫用トラップ及びそれに用いるスリット付粘着物

【課題】 設置後のトラップ全体の容量がかさばらず、走行移動の状況に左右されずに捕獲可能なトラップを提供する。
【解決手段】上面体(10)と底面体(11)と側面体(12)とで構成され、内部が空洞である円柱状の本体(13)の内部空間(14)に、誘引剤ホルダー(19)を用いて誘引剤(15)を中央部に設置し、該本体(13)の側面体(12)の裏面側の全体に粘着部(16)を設けると共に、均等間隔で4個のスリット(17)を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飛翔害虫用トラップ及びそれに用いるスリット付粘着物に関する。
【背景技術】
【0002】
飛翔害虫用トラップとして、例えば、特許文献1に記載の果樹カメムシの乾式トラップが知られている。
【0003】
該乾式トラップは、果樹カメムシを集合フェロモンによって誘い込むカメムシ誘引部と、前記カメムシを捕獲するカメムシ捕獲部とからなり、該カメムシ捕獲部は、前記カメムシ誘引部の上側に配置したものである。
【特許文献1】特開2002−125564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のトラップは、カメムシ誘引部の上側にカメムシ捕獲部を配置しているので、トラップ全体の容量が大きく、設置後に邪魔になることがある。
また、カメムシの行動の習性を利用して捕獲するので、走行移動の状況によって捕獲できない場合があった。
【0005】
従って、設置後のトラップ全体の容量がかさばらず、走行移動の状況に左右されずに捕獲可能な、飛翔害虫用のトラップが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1に、
上面体と底面体と側面体とで構成され、内部が空洞である本体の内部空間に、誘引剤を設置し、該本体の側面体に粘着部を設けると共に縦長のスリットを形成した、飛翔害虫用トラップ。
ここで、粘着部は側面体の裏面側となる誘引剤の設置側に設けることができる他に、反対面である表面側に設けることができるし、表と裏の両面に設けることもできる。
また、該粘着部は、側面体の一部に設けることができる他に、側面体の全面に設けることができるが、側面体の裏面全面に設けることが望ましい。
第2に、
前記本体が円柱状である、前記第1に記載の飛翔害虫用トラップ。
ここで、本体の形状としては、円柱状以外にも、三角柱状や四角柱状等の多角形柱状を採用できるが、内部の誘引剤の誘引成分の外部周辺への拡散性を考慮すると、円柱状とすることが望ましい。
すなわち、特に屋外に設置した場合の条件として重要となる、自然風の通り抜け等を考慮すると、本体内部に自然風がなるべく滞留しないようにするには、角部に滞留しやすい多角柱状よりも、内側面が円滑な円柱状の方が望ましい。
なお、本発明に係る飛翔害虫用トラップについて、スリットの代わりに多数の開孔部を設けることも考えられるが、特に屋外に設置した場合の条件として重要となる、自然風の通り抜け等を考慮すると、多数の開孔部は、スリットよりも乱流発生の要因となり易く、拡散性に劣ると考えられるので、好ましくない。
第3に、
前記本体が円柱状であり、前記本体の側面体のスリットが、均等間隔で4個形成されている、前記第1に記載の飛翔害虫用トラップ。
ここで、スリットの個数としては、4個以外にも6個や8個等を採用できるが、誘引剤の外部周辺への拡散性、本体強度のバランス、粘着部の面積等を考えると、4個であることが望ましい。
第4に、
前記本体が、上面体と底面体とを側面体の設置空間を保持して連結した粘着物ホルダーと、該粘着物ホルダーに、側面体として着脱自在に組み合わせるスリット付粘着物とで構成される、前記第1〜3のいずれか一つに記載の飛翔害虫用トラップ。
ここで、スリット付粘着物を粘着物ホルダーに対して着脱自在に組み合わせると、スリット付粘着物の設置や交換が容易に行えるので望ましい。
第5に、
前記誘引剤を誘引剤ホルダーに組み合わせ、該誘引剤ホルダーを本体の内部空間の中央部に設置した、前記第1〜4のいずれか一つに記載の飛翔害虫用トラップ。
ここで、誘引剤ホルダーを本体の内部空間の中央部に設置すると、誘引成分の拡散性に優れるので望ましい。
該誘引剤ホルダーを本体の内部空間の中央部に設置する手段としては、上面体の内部空間側に吊下フックを取り付け、該吊下フックに誘引剤ホルダーを懸架して設置する他に、底面体の内部空間側に、誘引剤ホルダーを内部空間の中央部で保持する誘引剤ホルダー支柱を取り付け、該誘引剤ホルダー支柱を用いて設置することもできる。
第6に、
前記側面体のスリットの幅が、10〜20mmである、前記第1〜5のいずれか一つに記載の飛翔害虫用トラップ。
ここで、製造時のスリット加工の容易性と誘引成分の拡散性とのバランスを考えると、スリットの幅は15mm程度であることが望ましい。
第7に、
上面体と底面体と側面体とで構成され、内部が空洞である本体の内部空間に、誘引剤を設置した飛翔害虫用トラップの側面体として用いるスリット付粘着物であって、
粘着部を設けると共に縦長のスリットが形成され、
上面体と底面体とを側面体の設置空間を保持して連結した粘着物ホルダーに、着脱自在に組み合わせる、スリット付粘着物。
第8に、
前記スリット付粘着物のスリットは、均等間隔で4個形成され、幅が10〜20mmである、前記第7に記載のスリット付粘着物。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る飛翔害虫用トラップによると、本体の内部空間に誘引剤を設置し、粘着部を設けた側面体のスリットから誘引成分が拡散するようにしたので、設置後のトラップ全体の容量がかさばらず、走行移動の状況に左右されずに捕獲可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
図1は、本発明に係る飛翔害虫用トラップを一部を切り欠いて示す正面図である。
図2は、本発明に係る飛翔害虫用トラップに用いるスリット付粘着物の展開図である。
【0010】
本例の飛翔害虫用トラップは、上面体10と底面体11と側面体12とで構成され、内部が空洞である円柱状の本体13の内部空間14に、誘引剤15を設置し、該本体13の側面体12の裏面の全面に粘着部16を設けると共に縦長の4個のスリット17を均等間隔で形成したものであり、前記粘着部16に位置に特に着目すると、裏面タイプのものとなる。
【0011】
ここで、前記本体13は、上面体10と底面体11とを側面体12の設置空間を保持して連結材18で一体に連結した粘着物ホルダーAと、該粘着物ホルダーAに、側面体12として着脱自在に組み合わせるスリット付粘着物Bとで構成されている。
【0012】
また、前記誘引剤15は、誘引剤ホルダー19に組み合わされている。
【0013】
なお、本発明に係る飛翔害虫用トラップに用いる誘引剤15は、例えば、カメムシ類を捕捉する場合には、カメムシ類に有効な成分を含有するものを用いる。
【0014】
そして、該誘引剤ホルダー19は、上面体10の内部空間側に設けた吊下フックである半環体20を介して本体13の内部に吊り下げられている。
【0015】
このように誘引剤ホルダー19を吊り下げることで、誘引剤15が本体13の内部空間14の中央部に設置され、屋外に設置した場合に外部からの自然の風の流れ等による影響を受け易くなり、誘引成分が周囲に有効に拡散する。
【0016】
ここで、側面体12としてのスリット付粘着物は、図2に概略を示すように、4個の縦長のスリット17が均等間隔で形成され、粘着物ホルダーAに着脱自在に組み合わせた際に、内部側となる面の全面に粘着部16が形成されている。
【0017】
該スリット17の幅は、10〜20mmで15mm程度とすることが、製造時のスリット加工の容易性と誘引成分の拡散性とのバランスを考えると好ましい。
【0018】
スリット付粘着物Bを粘着物ホルダーAに着脱自在に取り付けるために、該スリット付粘着物Bの両端部には、上下2箇所に開孔部21が形成されている。
【0019】
該開孔部21を、粘着物ホルダーAの上下2カ所に設けた突起22に重ねて組み合わせ、その上から、押板23を取り付けることで、スリット付粘着物Bを粘着物ホルダーAに取り付けることができる。
【0020】
なお、図1中、符号24は、上面体10の外部面側に取り付けた本体13設置用のフックを示し、符号25は、底面体11に組み合わせる本体13設置用の支持棒を示している。
【0021】
上記の裏面タイプの例とは別に、図示は省略するが、粘着部を、本体13の側面体12の裏面側ではなく、外側面である表面側の全面に設けた表面タイプのスリット付粘着物を用いることで、本発明に係る表面タイプの飛翔害虫用トラップを製造した。
【0022】
また、比較例1として、該表面タイプのスリット付粘着物を、粘着物ホルダーに取り付けることなく、平板状態にした比較用の飛翔害虫用トラップを準備した。
【0023】
両者を、同一条件で設置し、捕虫性能を試験した結果、本発明に係る表面タイプの飛翔害虫用トラップは、比較用の飛翔害虫用トラップに対して、2倍の捕虫性能を示した。
【0024】
さらに、比較例2として、図示は省略するが、15mm幅のスリットの代わりに、直径15mmの多数の孔をスリットと同様に4列の縦長に配置した、パンチタイプの粘着物を用い、該パンチタイプの粘着物を粘着物ホルダーに取り付けることで、粘着部が表面側にあるパンチタイプの飛翔害虫用のトラップを製造した。
【0025】
該比較例2のパンチタイプの飛翔害虫用のトラップと、前記本発明に係る表面タイプの飛翔害虫用トラップとを、同一条件で設置し、捕虫性能を試験した結果、本発明に係る表面タイプの飛翔害虫用トラップは、比較例2のパンチタイプの飛翔害虫用トラップに対して、約2倍の捕虫性能を示した。
【0026】
この結果から、スリットをパンチ穴に置き換えることはできないものと考えられる。
【0027】
これは、トラップ内に充満した誘引剤成分を効果的に外に拡散させるためには、トラップを通過する風の流れが重要であると考えられるためである。
【0028】
また、比較例3として、図示は省略するが、誘引剤ホルダーを、天井面である上面体と一体に設けた、天井面タイプの飛翔害虫用トラップを製造した。
【0029】
該比較例3の天井面タイプの飛翔害虫用のトラップと、前記本発明に係る表面タイプの飛翔害虫用トラップとを、同一条件で設置し、捕虫性能を試験した結果、本発明に係る表面タイプの飛翔害虫用トラップは、比較例3の天井面タイプの飛翔害虫用トラップに対して、約2倍の捕虫性能を示した。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る飛翔害虫用トラップを一部を切り欠いて示す正面図
【図2】本発明に係る飛翔害虫用トラップに用いるスリット付粘着物の展開図
【符号の説明】
【0031】
10 上面体
11 底面体
12 側面体
13 本体
14 内部空間
15 誘引剤
16 粘着部
17 スリット
18 連結材
19 誘引剤ホルダー
20 半環体
21 開孔部
22 突起
23 押板
24 フック
25 支持棒
A 粘着物ホルダー
B スリット付粘着物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面体と底面体と側面体とで構成され、内部が空洞である本体の内部空間に、誘引剤を設置し、該本体の側面体に粘着部を設けると共にスリットを形成した、飛翔害虫用トラップ。
【請求項2】
前記本体が円柱状である、請求項1に記載の飛翔害虫用トラップ。
【請求項3】
前記本体が円柱状であり、前記本体の側面体のスリットが、均等間隔で4個形成されている、請求項1に記載の飛翔害虫用トラップ。
【請求項4】
前記本体が、上面体と底面体とを側面体の設置空間を保持して連結した粘着物ホルダーと、該粘着物ホルダーに、側面体として着脱自在に組み合わせるスリット付粘着物とで構成される、請求項1〜3のいずれか一つに記載の飛翔害虫用トラップ。
【請求項5】
前記誘引剤を誘引剤ホルダーに組み合わせ、該誘引剤ホルダーを本体の内部空間の中央部に設置した、請求項1〜4のいずれか一つに記載の飛翔害虫用トラップ。
【請求項6】
前記側面体のスリットの幅が、10〜20mmである、請求項1〜5のいずれか一つに記載の飛翔害虫用トラップ。
【請求項7】
上面体と底面体と側面体とで構成され、内部が空洞である本体の内部空間に、誘引剤を設置した飛翔害虫用トラップの側面体として用いるスリット付粘着物であって、
粘着部を設けると共にスリットが形成され、
上面体と底面体とを側面体の設置空間を保持して連結した粘着物ホルダーに、着脱自在に組み合わせる、スリット付粘着物。
【請求項8】
前記スリット付粘着物のスリットは、均等間隔で4個形成され、幅が10〜20mmである、請求項7に記載のスリット付粘着物。

【図1】
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【図2】
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