説明

食品の凍結方法及びこの凍結方法を用いて凍結される凍結食品

【課題】家庭等で簡便にミンチ肉やご飯など粘着性を有した小片の集合体からなる食品をバラ凍結する凍結方法を提供する。
【解決手段】食品3の凍結過程において食品3の接する気体空間の圧力を変動させる。まず、気体空間の減圧時に食品表面の水分を除去する効果や食品の小片間の空隙を増大させる効果が得られ、さらに大気圧を導入し、食品3の接する気体空間に急激な対流を起こすことにより、食品3に風圧を付与してバラけた状態としながら、所定の凍結温度まで凍結する。これにより、簡便にバラ凍結食品を得ることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミンチ肉やご飯などの、常温下で粘着性を有する小片が集合してなる食品において、各小片を分離した状態で凍結することが可能な凍結方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、女性の社会進出にともなう共働き家庭の増加や核家族化にともない、家庭用冷蔵庫では長期的に生鮮食品や調理加工済み食品を保存可能な冷凍室の活用頻度が増加している。冷凍保存において使用者が不満に感じる点には、容量の不足や、緩慢凍結や霜付きによる食品の味の低下などが挙げられるが、これらと並び、凍結した食品同士がくっつき、少量ずつ使用することが困難な点に不満を感じている使用者も多い。
【0003】
特に、ミンチ肉やご飯など粘着性を有した小片が集合してなる食品については、塊で凍結することにより、小片間の水分子が氷となり、小片同士を強固に接着していた。このため、このような食品を凍結後少量ずつ使用するには、凍結前に食品をラップなどで小分け包装したり、使用するたびに解凍したりと手間を要していた。
【0004】
よって、食品同士のくっつきを防いで凍結するため、食品メーカーの中には、特許文献1に示すような凍結方法を用いているものがある(特許文献1参照)。
【0005】
図3は、従来のバラ状凍結装置を示すものである。図3に示すように、食品を0℃〜−10℃の間の品温を保持してミンチとするミンチ形成手段101と、ミンチ状食品102をドライアイススノー103とともに回転攪拌してバラ状凍結品とする回転ドラム104と、ミンチ状食品を回転ドラムの入口105からその内部に供給するコンベア106と、コンベア上を搬送されるミンチ状食品又は該ミンチ状食品と回転ドラム内とにドライアイススノーを供給するドライアイス製造器107とを備えている。
【0006】
このような凍結装置により、ミンチ状食品のバラ凍結を実現し、広く消費者へ供給していた。
【特許文献1】特開平7−250614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の構成ではミンチ状食品のバラ凍結が可能であるが、装置が複雑かつ大規模、高コストであった。このような課題を解決した、家庭においても簡便かつ自動的にバラ凍結を行うことのできる凍結方法が求められる。本発明は上記従来の課題を解決するものであり、家庭はもちろんのこと、冷凍食品メーカーにおいても、簡便かつ自動的にバラ凍結を行うことのできる食品の凍結方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来の課題を解決するために、本発明の凍結方法では、複数の小片の集合体からなる食品において、前記食品が所定の凍結温度に達するまでのいずれかの過程において、前記食品と接する気体空間の圧力を変動させる工程を設けたものである。
【0009】
食品と接する気体空間を減圧した際、気体空間の飽和水蒸気量が増大し、食品の小片表面の水分の気化が促進される。これにより、凍結時に食品の小片同士を接着する氷の生成量が低減される。また、減圧時食品が膨張し、隣接する食品の小片間の空隙が増大する効果が得られ、粘着性を有した小片同士の接着性が低下する。このような状態で大気圧を導入または加圧することにより、食品に接する気体空間において急激な空気の対流が生じ、この風圧により小片からなる食品をバラけさせることが可能となる。凍結過程においてこのような圧力変動処理を繰り返すことにより、小片からなる食品をバラけさせた状態で所定の凍結温度まで凍結することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の食品の凍結方法は、ミンチ肉やご飯などの、常温下で粘着性を有する小片が集合してなる食品において、通常の家庭での凍結では手間を要したり、困難であったりする小片群を小分けにした状態で凍結することができる。これにより、凍結前に小分けにしたり、凍結後に解凍・再凍結したりする手間を省きながら、少量ずつ取り出して使用することが可能な凍結食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
請求項1に記載の発明は、複数の小片の集合体からなる食品において、前記食品が所定の凍結温度に達するまでのいずれかの過程において、前記食品と接する気体空間の圧力を変動させる工程を設けたものである。
【0012】
まず、食品と接する気体空間を減圧した際、気体空間の飽和水蒸気量が増大し、食品の小片表面の水分の気化が促進される。これにより、凍結時に食品の小片同士を接着する氷の生成量が低減される。また、減圧時に食品の小片内部や隣接する小片間の空隙が増大する効果が得られ、粘着性を有した小片同士の接着性が低下する。このような状態で大気圧を導入または加圧することにより、食品に接する気体空間において急激な空気の対流が生じ、この風圧により小片からなる食品をバラけさせることが可能となる。凍結過程においてこのような圧力変動処理を繰り返すことにより、小片からなる食品をバラけさせた状態で所定の凍結温度まで凍結することが可能となる。本発明の食品の凍結方法は、ミンチ肉やご飯などの、常温下で粘着性を有する小片が集合してなる食品において、通常の家庭での凍結では手間を要したり、困難であったりする小片群を小分けにした状態で凍結することができる。これにより、凍結前に小分けにしたり、凍結後に解凍・再凍結したりする手間を省きながら、少量ずつ取り出して使用することが可能な凍結食品を提供することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記圧力の変動工程は、減圧工程と大気圧導入工程とからなるものである。圧力変動をこの2工程とすることにより、凍結装置の簡素化および省スペース化を図ることが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記所定の凍結温度に達するまでの過程とは、前記食品の氷結率が0%の場合を指すものである。
【0015】
氷結率0%すなわち、食品が非凍結の状態において食品と接する空間を減圧することにより、凍結状態の場合よりも食品周辺の余分な水分の蒸発が容易かつ高速化する効果が得られ、効率よく水分除去を行うことが可能となる。また、食品の小片間の水分が凍結していない状態であるため、接着力が低く、減圧によって小片間の空隙を増大させることができる。この状態で圧力変動によるエアーを加えることにより、食品が凍結状態の場合よりも少ないエネルギーで食品の小片同士をバラけさせることが可能である。よって、食品のバラけ性の向上効果が得られる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記所定の凍結温度に達するまでの過程とは、前記食品の温度が0℃から−10℃の場合を指すものである。
【0017】
食品温度が0℃から−10℃の間である場合、食品は微凍結状態であり、手で容易にほぐすことが可能である。また、食品の凍結は表面から生じるため、食品表面は氷の被膜で被われ、食品特有の粘着性が低下した状態となっている。
【0018】
この状態において減圧処理を行うことにより、食品の表面の氷被膜の昇華が生じ、小片同士を接着する氷を除去することができる。よって、微凍結状態の食品はバラけやすい状態となる。
【0019】
さらに、圧力変動処理を行うことにより、食品表面の粘着性が低下しているため、エアーが付与された際のバラけ性が良好であるだけでなく、バラけた食品同士が表面の水滴により再び接着し、くっついた状態で凍結するのを防ぐことができる。
【0020】
よって、より少ない圧力変動回数でバラけ性の良好な冷凍食品を提供することが出来る。
【0021】
請求項5に記載の発明は、前記所定の凍結温度に達するまでの過程とは、前記食品の温度が−10℃から−20℃の場合を指すものである。
【0022】
食品温度がこのような低温下である場合、凍結率は約90%以上となっており、外観状はほぼ全体が凍結しているように見える。このような状態では、食品の機械強度が向上しており、繰り返し圧力変動を加え食品をバラけさせる衝撃を与えても、細胞組織がダメージをうけることがない。よって、ミンチ肉などではドリップの流出等を抑えることができ、食品の風味を損なうことがない。
【0023】
請求項6に記載の発明は、前記圧力の変動工程は、前記食品の温度が前記所定の凍結温度に到達後もおこなうものとしたものである。
【0024】
バラ凍結された食品は、所定の凍結温度で保存されるが、長期保存される間にドア開閉や冷蔵庫のデフロストにともなう温度変動の影響を受けて部分的に融解することがある。融解した食品同士が接着し、再凍結されることによりバラけ性が損なわれることになる。よって、所定の凍結温度に到達後も圧力変動工程を加えることにより、バラ凍結された食品の接着を防ぐことが可能となる。
【0025】
これにより、バラ凍結された食品は、長期的にバラけた状態を維持することが可能となる。
【0026】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の凍結方法を用いて凍結される凍結食品である。
【0027】
このような凍結方法を用いて製造された凍結食品はバラけ性が非常に良好であり、凍結状態であっても使いたい分だけ、少量ずつ取り出して調理などに使用することが可能となる。よって、解凍の手間や、凍結前に小分けする手間を省くことができ、使い勝手の良い食品を提供することができる。
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0029】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における凍結装置の断面図である。
【0030】
図1に示すように、本体1の内部には、扉2により引き出され、内部に食品3を収納するケース4と、扉2を閉じた際にケース4を密閉構造化する蓋5が設けられている。ケース4と蓋5との接合部にはパッキン(図示せず)が設けられており、扉2が閉状態となり、ケース4内が減圧された際に内部の真空度を維持する構造をなしている。
【0031】
蓋5はストッパー(図示せず)で本体1内に指示固定されており、使用者が扉2を引き出す際には、ケース4のみが上部を開口した状態で引き出される構成となる。また、ケース4内に入れられた食品3は、上部を開口した、たとえば発泡系樹脂からなる食品容器6内に入れられた状態で置かれている。
【0032】
蓋5には、ケース4内の大気を吸引する吸入配管7が、ケース4からの漏れが無いよう溶接またはシール材にて導入部がシールされて接続している。吸入配管7はケース4とケース4内を減圧するポンプ8とを接続しており、ケース4とポンプ8の途中経路には第一の開閉弁9が設けられ、ケース4内の空気の吸引量を調節している。ポンプ8に接続された排気配管10は、ポンプ8によってケース4より吸入された空気を排出するものである。
【0033】
また、吸入配管7は第一の開閉弁9とケース4の途中で分岐しており、分岐配管には第二の開閉弁11が設けられている。第二の開閉弁11によって、ケース4内が減圧状態の際に、ケース4内へ流入する空気量を調節し、ケース4内の圧力を大気圧まで変動させることができる。
【0034】
このようなポンプ8、第一の開閉弁9および第二の開閉弁11の動作は、ケース4内の圧力センサ18によって、制御基盤19により制御されるものである。
【0035】
また、本体1はケース4内を冷却する冷却サイクルを有している。冷却サイクルは、図示しない圧縮機、凝縮機、キャピラリーチューブを有し、強制対流式蒸発器12により、ケース4内を冷却できる構造になっている。強制対流式蒸発器12で冷却された冷気は、送風機13により本体1内に強制通風される。送風機13と本体の間に設けられたダンパーサーモ14は本体1内部の冷気流入量を調整するものであり、本体スイッチや、温度センサなどからの電気的入力を受けて、モーター15の駆動力によってダンパーサーモ14が開閉するよう構成されている。
【0036】
このような冷凍装置より供給される冷気は、吹き出し口16より本体1内部へ供給され、間接冷却によりケース4の外周から内部をゆるやかに冷却するものである。また、吹き出し口16より供給され、ケース4の外周を冷却し終えた冷気は、本体1に接合した吸い込みダクト17より前記冷却器に戻され、再び冷却された後本体1内へ供給される。本実施の形態ではこのようにして冷凍サイクルを形成している。
【0037】
図2は本実施の形態における凍結装置のフローチャートである。
【0038】
図2に沿って、本実施の形態の凍結装置の動作を説明する。
【0039】
まず、食品3の投入までについて説明する。一般的に、ミンチ肉などの場合であれば、食品はスーパーなどの店頭で販売される際、発泡樹脂容器に入れられ、上部をポリエチレン系のラップにより被覆されており、凍結装置に入れる前にはこのラップを剥がした状態としておく。その他、ご飯などの食品3であれば、タッパーなどの食品容器6にいれ、蓋を外した状態にしておく。扉2を引き出し、ケース4内に食品3の入った食品容器6を設置する。扉2を完全に閉じると同時に、本体1内の蓋5がケースを被覆し、パッキン等によって密閉構造となる。
【0040】
次いで、使用者がスタートボタンを押すと、冷凍サイクルの作動と、ポンプ8の作動開始、第一の開閉弁9の開、第二の開閉弁11の閉が制御基盤19より行われる。これにより、蓋5に接続された吸入配管7よりケース4内の空気が吸い出され、開状態となった第一の開閉弁9を通過してポンプ8内に吸入され、ケース4内の減圧が開始する。ポンプ8に吸入された空気は、排気配管10を通り、外気に放出される。このとき、第2の開閉弁11は閉状態であるため、ケース4内の空気が第二の開閉弁11を通じて漏れたり、外気がケース4内に流入することはない。また、冷凍サイクルの作動が開始し、圧縮機や凝縮機、キャピラリーチューブが作動すると、強制対流式蒸発器12で冷却された冷気が、送風機13により本体1内に強制通風される。冷却開始直後ではダンパーサーモ14は最大限開かれているが、温度センサにより、ケース4内や食品が所定の凍結温度である−18℃に達したことを検知すると、制御基盤19より入力され、その開度は小さくなる。このような冷凍サイクルにより供給される冷気は、吹き出し口16より本体1内部へ供給され、間接冷却によりケース4の外周から内部をゆるやかに冷却する。これにより、ケース4内部に収納している食品3は速やかに冷却され、−18℃に到達後は一定の温度で凍結保存される。また、吹き出し口より供給され、ケース4の外周を冷却し終えた冷気は、本体1に接合した吸い込みダクト17より前記冷却器に戻され、再び冷却された後本体1内へ供給される。
【0041】
そして、ケース4内が所定の圧力まで減圧されたことを圧力センサ18が検知すると、制御基盤19を通じてポンプ8の停止および第一の開閉弁9の閉が行われる。これにより、完全に密閉構造となったケース4内は所定の減圧状態に維持される。
【0042】
この状態において、まず、食品3が非凍結の場合であれば、ケース4内の減圧によって食品3の周囲に付着している水滴・水分の気化が生じるため、食品3同士を接着する主要因となる水分が除去でき、食品3はくっつきにくい状態となる。また、食品3は複数の小片の集合体からなるが、減圧により集合体の膨張が生じ、各小片間の空隙径が増大する効果が得られる。これによって、より小片同士の接着性が低減し、バラけやすい状態とすることができる。
【0043】
また、食品3が凍結している場合であっても、品温が0℃以下の場合、食品3は微凍結または凍結状態であり、手で容易にほぐすことが可能である。また、食品3の凍結は表面から生じるため、食品3表面は氷の被膜で被われ、食品3特有の粘着性が低下した状態となっている。
【0044】
この状態において減圧処理を行うことにより、食品3の表面の氷被膜の昇華が生じ、小片同士を接着する氷を除去することができる。よって、この減圧工程によりバラけやすさを向上させることが可能となる。
【0045】
続いて、ケース4内部の所定の圧力への到達が検知され、一定時間が経過した後、制御基盤19より入力が生じ、第二の開閉弁11が開となり、吸入配管7よりケース4内へ急激な外気の導入が生じる。このとき導入される外気によってケース4内には空気層の対流が生じ、対流を受けた食品3はその風圧によって、小片または小片群にバラけた状態となる。
【0046】
この後、食品温度センサ(図示せず)により食品3が所定の凍結温度に達したことが検知できれば、凍結装置の動作は終了し、所定の凍結温度で保存することが可能となる。所定の凍結温度に達していなければ、減圧工程と大気圧導入工程とが凍結過程において数回繰り返されるものである。
【0047】
以上で本凍結装置の動作は終了する。本凍結装置では、所定の凍結温度を家庭用冷蔵庫の冷凍温度である−20℃としたが、特に指定するものではない。
【0048】
凍結終了後は、食品容器6ごと食品を取り出し、家庭では保存用のプラスチック袋等に入れ、そのまま冷蔵庫で冷凍保存を行うのがよく、また業務用途では梱包後、冷凍温度雰囲気を保ちながらで店頭または飲食店等まで輸送されるのが望ましい。これにより、保存中もバラ凍結状態を維持することができる。
【0049】
また、本凍結装置でそのまま保存することも可能であり、食品3が所定の凍結温度に到達した後には、ケース4内は所定の凍結温度および減圧状態を維持し、また凍結処理中よりも長い間隔を設けて、たとえば一日1回などの間隔で、圧力変動工程を付与することができる。バラ凍結された食品3は、長期保存される間に扉2の開閉や凍結装置の温度変動の影響を受けて部分的に融解することがあり、融解した食品3同士が接着し、再凍結されることによりバラけ性が損なわれることになる。よって、所定の凍結温度に到達後も減圧状態を維持し、また圧力変動工程を加えることにより、バラ凍結された食品3の再接着を防ぐことが可能となる。
【0050】
これにより、バラ凍結された食品3は、長期的に良好な凍結状態を維持することが可能となる。
【0051】
また、このように得られた食品3は表面積が大きく、酸化の影響を受けやすいものであるが、減圧状態で保存することにより食品に触れる酸素の絶対量が減少することから、脂質の酸化による冷凍ヤケや、ミオグロビンのメト化による変色が抑制されるため、長期的に風味や外観品質を維持して保存することが可能となる。
【0052】
さらに、凍結過程で減圧処理を行い、食品3周囲に付着する過剰な水分を除去することにより、凍結後の食品3は霜付きなどがなく、外観的にも非常に優れた状態となる。また、通常の凍結法よりも水分量が低下し、また水分の分布も均一化しているため、解凍に要する時間が通常よりも短時間化するほか、電子レンジ解凍時にも、マイクロ波が均等に照射されるので、解凍ムラや端煮えなどが生じにくくなる。このように、本実施の形態の凍結装置で凍結することにより、凍結食品の保存品質および解凍品質を向上させる効果が得られる。
【0053】
また、繰り返しの減圧により水分を飛ばしても、ケース4は密閉容器内であるためすぐにケース4内の水蒸気量が飽和することから、食品3に過度な乾燥が生じることはない。
【0054】
なお、本実施の形態では、減圧手段として電動式のポンプ8を用いたが、これらは特に指定するものではない。たとえば、手動式ポンプの使用や、酸素吸着剤や窒素吸着剤などを設けて減圧することも可能である。また、ポンプ8と気体吸着剤とを併用することも可能であり、これによりポンプ8および吸着剤の経時性能の低下を互いに補完するため、冷凍装置を長期的に使用することができる。
【0055】
以上、本実施の形態の凍結装置では、食品3を凍結させる過程において、食品3の接する大気に減圧、大気導入のサイクルを数回繰り返し付与するものである。これにより、食品3の塊をバラけた状態に凍結することが可能となり、また保存中にも圧力変動を加えることにより、長期的にバラけた状態を維持することが可能となる。
【0056】
よって、凍結状態の食品3を、使いたい分量だけ取り出して調理などに用いることが可能となり、従来よりも簡便な手法で、使い勝手を大幅に向上させることができる。
【0057】
また、減圧工程における所定の圧力については特に指定するものではないが、大気圧より0.08から0.03MPa程度とすることで、十分な水分除去効果、膨張による食品間空隙増大効果、大気圧導入時のバラけ効果を得ることができる。
【0058】
以下、本実施の形態の凍結装置で食品を凍結する場合の、食品温度毎の圧力変動サイクル数を表1に示す。
【0059】
【表1】

【実施例1】
【0060】
表1は食品3の凍結過程の各温度帯において、減圧工程と大気圧導入工程とからなる圧力変動サイクルの回数を示すものである。食品3の温度は食品温度センサにより検知されるものである。
【0061】
実施例1では、食品3の温度が0℃以上の場合に4回、0℃から−10℃の場合に2回、−10℃から−20℃の場合に2回おこなうものである。
【0062】
食品3の温度が0℃以上、つまり非凍結状態の場合に圧力変動回数を多くする方法は、粘着性の低い食品3に適しており、非凍結状態の場合に多く圧力変動を加えることにより、簡便にバラけ性を高めることができる。また、食品3温度が比較的高い状態で圧力変動を加えることで、減圧がスムーズにおこなわれるため、ポンプ8への不可が軽減される。
【0063】
また、特異的に本実施例の方法が適した食品3としてご飯が挙げられる。ご飯は粘着性の高い食品3であるが、20℃から0℃の間に老化が進行し、粘着性の低下が生じる性質であることから、0℃以上の温度で多く圧力変動を加えることで、効率的にバラけさせることが可能となる。
【実施例2】
【0064】
実施例2では、食品3の温度が0℃以上の場合に2回、0℃から−10℃の場合に4回、−10℃から−20℃の場合に2回おこなうものである。
【0065】
食品3の温度が0℃から−10℃の微凍結状態の場合に圧力変動回数を多くする方法は、粘着性が高く、細胞の強度が比較的弱い肉、魚などの食品3に適している。非凍結状態の際には変動回数を少なくし、減圧時間を長くとることで食品の水分を除去することができる。そして、粘着性が低下した0℃から−10℃の微凍結状態において圧力変動回数を多く加えることで、食品3を効率よくバラけさせることができる。また、−10℃以上の状態で食品はほぼバラけた状態となっているが、−10℃から凍結温度の−20℃までの間にも、霜の発生によるくっつきを防ぐため、圧力変動を行うのがよい。
【0066】
たとえば、ミンチ肉などの粘着性の高い食品3は、0℃以上で圧力変動による衝撃を加えると、組織が破壊されてより粘性が増大することがある。よって、微凍結状態で圧力変動を加えることにより、効率よくバラけさせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上のように、本発明にかかる食品の凍結方法は、ミンチ肉やご飯などの食品を簡便にバラ凍結することが可能であるので、業務用または家庭用の冷凍装置や家庭用冷蔵庫などへの応用展開が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態1における凍結装置の断面図
【図2】本発明の実施の形態1における凍結装置のフローチャート
【図3】従来の凍結装置を示す図
【符号の説明】
【0069】
3 食品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の小片の集合体からなる食品において、前記食品が所定の凍結温度に達するまでのいずれかの過程において、前記食品と接する気体空間の圧力を変動させる工程を設けたことを特徴とした食品の凍結方法。
【請求項2】
前記圧力の変動工程は、減圧工程と大気圧導入工程とからなる請求項1に記載の食品の凍結方法。
【請求項3】
前記所定の凍結温度に達するまでの過程とは、前記食品の氷結率が0%の場合を指す請求項1または2に記載の食品の凍結方法。
【請求項4】
前記所定の凍結温度に達するまでの過程とは、前記食品の温度が0℃から−10℃の場合を指す請求項1または2に記載の食品の凍結方法。
【請求項5】
前記所定の凍結温度に達するまでの過程とは、前記食品の温度が−10℃から−20℃の場合を指す請求項1または2に記載の食品の凍結方法。
【請求項6】
前記圧力の変動工程は、前記食品の温度が前記所定の凍結温度に到達後もおこなうものとした請求項1から5のいずれか一項に記載の食品の凍結方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の凍結方法を用いて凍結される凍結食品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate