説明

食品の切断刃機構

【課題】 構造簡単で「摺り切り」を実現でき、洗浄も容易な食品の切断刃機構を得ること。
【解決手段】 筐体内において回転軸を水平に支持し、上記回転軸にその軸方向に直交する方向の回転腕の一端を接続し、上記回転腕の他端部に切断刃取付部を設け、上記切断刃取付部に細長板状の切断刃を取り付けて、当該切断刃が上記回転腕の方向に交差する方向であって上記回転軸の軸方向と直交する面内に位置するように構成し、上記切断刃の上記回転腕に対する接続方向が、上記回転腕の回転方向に対して遅れる方向となるように構成し、上記切断刃の先端の回転軌跡の範囲内に、上記平面に直交する方向の食品載置部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば巻寿司等の棒状食品その他の食品を切断するための食品の切断刃機構及び食品切断刃に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、巻寿司等の切断装置は、回転軸を中心として略180度を隔てた2方向に切断刃を設け、上記回転軸を回転させることにより、上記一対の切断刃により巻寿司を切断する構成のものがある(特許文献1)。
【0003】
また、同一の回転軸上に半円形状の切断刃を複数設け、上記同一回転軸を回転することにより所定位置の巻寿司を軸方向に切断する構成の切断装置がある(特許文献2)。
【0004】
また、直線状の棒状の切断刃を複数設け、これら切断刃を4本のリンク機構により上方から下方に移動させることにより、巻寿司に対する切断刃の移動量を大きくとって切断効率を向上させたものがある(特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】特開平5−30928号
【特許文献2】実開平6−46891号
【特許文献3】特開平7−31392号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の切断装置は、切断刃がその回転軸に直交する方向に延在しており、切断刃の回転により、その刃が巻寿司の軸方向と直交する方向(幅方向)に直線的にくい込んでいく構成である。従って、海苔の弾性により該海苔を円滑に切断できない場合があり、結果として海苔が引きちぎられるように切断され、これによりきれいな切断面が得られない場合があった。
【0007】
また、上記特許文献2の切断装置は、切断刃が半円形状であり切断刃自体の面積が大きいため、例えば棒状食品を切断すると切断刃の広い範囲に食品の粘着成分が付着し、洗浄が比較的面倒であるという課題があった。
【0008】
また、上記特許文献3の切断装置は、切断刃の上下方向の移動量を大きくとって切断効率を向上させたものであるが、切断刃を幅方向に移動させながら上下方向にも移動させるために4本のリンク機構を使用する必要があり、全体的な構成が極めて複雑であり、切断装置としてはコスト高であるとの課題があった。
【0009】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、効率的な切断を実現しつつ、構造が簡単で、かつ洗浄も容易な棒状食品の切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため本発明は、
第1に、筐体内において回転軸を支持し、上記回転軸にその軸方向に直交する方向の回転腕の一端を接続し、上記回転腕の他端部に切断刃取付部を設け、上記切断刃取付部に細長板状の切断刃を取り付けて、当該切断刃が上記回転腕の方向に交差する方向であってかつ上記回転軸の軸方向と直交する平面内に位置するように構成し、かつ上記切断刃の上記回転腕に対する接続方向が、上記回転腕の回転方向に対して遅れる方向となるように構成し、上記切断刃の先端の回転軌跡の範囲内に、上記平面に直交する方向の食品載置部を設けたものであることを特徴とする食品の切断刃機構により構成されるものである。
【0011】
上記回転腕は、例えば一対の接続板部(9a,9a’)により構成することができる。上記切断刃取付部は、例えば連結板部(9b)とそれに接続された切断刃取付ブロック(10d)等により構成することができるが、回転腕の他端部に直接切断刃を取り付けることもできる。回転腕の方向と交差する方向は、例えば回転腕の方向と直交する方向とすることができるが、必ずしも直交する必要はない。上記回転軸の軸方向と直交する平面は、例えば図7に示す上記回転中心軸(5a)に直交する平面(H)であるが、当該平面(H)に平行で上記回転中心軸(5a)に沿った他の平面であっても良い。また、回転軸は水平に限らず、水平から所定角度傾斜させてもよい(図13)。上記食品載置部は、例えば巻寿司載置部(3a’)により構成することができるが、巻寿司等のような棒状食品に限らず、サンドイッチ等の形状、卵等の食品を載置し得る食品載置部により構成することができる。このように構成すると、巻寿司等の棒状食品等を切断する際に、切断刃は棒状食品を切断する方向に移動しながら、その切断方向に対して傾斜する方向にスライド移動するので、いわゆる「擦り切り」動作を実現し得て、棒状食品をきれいかつ確実に切断することができる。尚、切断する食品は棒状食品に限らず、例えばサンドイッチ等の方形、三角形状の食品、卵等の球形状の食品でも良い。
【0012】
第2に、筐体内において回転軸を支持し、上記回転軸にその軸方向に直交する方向の回転腕の一端を接続し、上記回転腕の他端部に切断刃取付部を設け、上記切断刃取付部に細長板状の刃の一端を固定してその他端を開放状態とし、当該刃が上記回転腕の方向に交差する方向であってかつ上記回転軸の軸方向と直交する平面内に位置するように構成し、かつ上記刃の上記回転腕に対する接続方向が、上記回転腕の回転方向に対して遅れる方向となるように構成し、上記刃の先端の回転軌跡の範囲内に、上記平面に直交する方向の食品載置部を設けたものであることを特徴とする食品切断刃により構成されるものである。上記細長板状の刃は、切断刃(12)により構成することが好ましい。
【0013】
第3に、上記切断刃を幅方向に所定間隔を以って3本並設し、中央の1本の切断刃の回転軸を水平とし、左右の2本の切断刃の回転軌跡が各々中央の切断刃の回転軌跡の方向に所定角度傾斜するように、両回転軸の角度を水平状態から同一角度だけ傾斜させ、上記3本の切断刃の各回転軌跡の範囲内に上記食品載置部を設けたものであることを特徴とする食品の切断刃機構により構成される。
【0014】
このように構成すると、例えば巻寿司を長手方向に対して斜めに切断することができ、傾斜した切断面を有する複数の巻寿司を複数個同時に形成することができる。上記食品載置部は中央の切断刃の回転方向に直交する方向であることが好ましい。
【0015】
また、上記食品載置部に、上記切断刃の回転方向に直交する方向の棒状食品を複数本載置し得るように構成したものであることを特徴とする上記食品の切断刃機構により構成されるものである。
【0016】
このように構成すると上述のような「摺り切り」動作により、例えば巻寿司等を2本同時に確実に切断することもできる。
【0017】
また、上記切断刃を上記回転軸の軸方向に複数枚並設したものであることを特徴とする上記食品の切断刃機構により構成されるものである。これにより、棒状食品等を複数個にきれいに切断し得る。
【0018】
また、上記筐体の一端部に支持軸を設け、当該支持軸に蓋体を軸支することで当該蓋体により上記食品載置部を閉鎖し得るように構成し、かつ上記蓋体の内側に押え板を支持し、上記蓋の閉鎖時において、上記押え板が上記食品の上部に位置するものであることを特徴とする食品の切断刃機構により構成されるものである。
【0019】
よって、切断刃による切断中は、蓋体の閉鎖により安全性を確保できるし、押え板により食品を上面から押えることにより、確実に切断動作を行うことができる。
【0020】
また、上記回転軸の一端にカム板を設け、かつ上記蓋体の支持軸を回転駆動し得る駆動アーム手段を設けると共に、当該駆動アーム手段に上記蓋体の閉鎖時において上記カム板に接触し得る係合突起を設け、上記蓋体の閉鎖状態において、上記切断刃による上記棒状食品の切断が終了した後、上記回転軸の引き続く回転に基づいて上記係合突起を上記カム板に沿って移動させることにより、上記駆動アーム手段を介して上記支持軸を蓋体の開方向に回転駆動し得るように構成したものであることを特徴とする食品の切断刃機構により構成されるものである。上記駆動アーム手段は、例えばアーム(18)と駆動アーム(19)により構成することができる。このように構成すると、切断終了後に自動的に蓋体を開成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上述のように構成したので、複雑な機構を採用することなく非常に簡単な構成でありながら、巻寿司等の食品に対して「摺り切り」を実現することができ、効率的な切断動作を行うことができる。
【0022】
また、「摺り切り」を実現し得るが故に、切断刃は細い板状のものを使用することができ、切断刃の洗浄が非常に容易な切断機構を実現し得る。
【0023】
また、「摺り切り」を実現し得るが故に、巻寿司等の食品の複数本の同時切断をも実現できるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る食品の切断機構を添付図面に沿って詳細に説明する。尚、ここでは棒状食品として巻寿司Mを例に説明する。
【0025】
図1は、同上切断装置1の全体構成を示す斜視図(右側のパネルを外した状態)、図2は同上装置の正面図、図3は同上装置の側面図であり、何れも上部の蓋体6を開いた状態を示す。
【0026】
これらの図において、2は筐体であり、略方形をなし、上面開口部2aに巻寿司載置板3が載置固定されている。この筐体2の内部には、左側固定側板4a、及び右側固定側板4a’に左右方向に水平に切断刃回転軸5,5’が回転可能に軸支されており(図5参照)、上記筐体2の正面に向かって左側の駆動機構収納部2b内には、切断刃回転軸5の駆動機構6’が収納されている(図4、図5参照)。尚、上記切断刃回転軸5,5’に共通の回転中心を回転中心軸5aとする(図5、図7参照)。
【0027】
上記巻寿司載置板3は、略長方形状の上面板部3aと該上面板部3aの後部から略直角方向下方に設けられた支持板部3bとから構成されており、上記上面板部3aの前縁を上記筐体2の前面側上部2c上に載置すると共に、上記支持板部3b下縁を上記筐体2内の後方段部2dに載置することにより、図1に示すように、上記上面開口部2aを塞ぐように取り付けられている。
【0028】
この巻寿司載置板3の上面板部3a中央部は、下方向けて凹設することで、左右方向(平面Hに直交する方向、即ち切断刃12の回転方向に直交する方向)の凹状の巻寿司載置部3a’(食品載置部)が形成されており、この載置部3a’上に巻寿司Mが2本左右方向に載置し得るように構成されている。尚、巻寿司載置部3a’は図4、図8、図11に示すように1本の巻寿司Mを載置し得る幅で設けても良い。
【0029】
また、この巻寿司載置板3の上面板部3aには、上記巻寿司載置部3a’を含めて前後方向の7本のスリットSが等間隔に平行に貫設されており、上記載置部3a’に図1に示すように巻寿司Mを載置した状態で、後述の7枚の切断刃12を回転させることにより、上記スリットSを介して載置板3上に臨出しながら前方(矢印A方向)に回転する切断刃12により上記巻寿司Mを8等分に切断し得るように構成している(図8参照)。
【0030】
6は、上記筐体2の上部を閉鎖する蓋体であり、透明のアクリル等により下方開口の略横長円柱状に形成されている。この蓋体6はその後方の円筒側面下端部を支持軸7により回動自在に軸支されており(図2、図4参照)、当該支持軸7を中心に矢印A方向に回動した閉状態(図11(ロ)の状態)と、矢印B方向に回動した開状態(図1の状態)との間を開閉自在に設けられている。
【0031】
8は、上記支持軸7に後端を固定的に接続された押え板であり、当該板面には、上記巻寿司載置板3に設けられた上記スリットSと同様の7本のスリットS’が前後方向に貫設されており、上記蓋体6を閉鎖したとき、上記支持軸7の回転に伴って矢印A方向に回動して、上記載置部3a’上に位置し、上記載置部3a’上の巻寿司Mの上部を押さえて、切断時の巻寿司Mを固定するものである(図4参照)。上記押え板8の上記スリットS’は、上記巻寿司Mの上部に位置しているときには、上記巻寿司載置板3の上記スリットSの設置位置と重なるように構成されており(図5参照)、後述の切断刃12は上記スリットS及びスリットS’を介して前方(矢印A方向)に回動して上記巻寿司Mを切断する(図8参照)。
【0032】
9は、切断刃支持用杆であり(図4,図5,図7参照)、切断刃回転軸5,5’(回転中心軸5a)の径方向に伸びる板状部材であって、上記切断刃回転軸5,5’にその一端を固定的に接続された一対の接続板部(回動腕)9a,9a’と、これら接続板部9a,9a’を左右方向に連結する連結板部9bとから構成されており、全体として「コ」字形状をなしている。
【0033】
10は、切断刃保持部材であり、左右方向の基板10aの両端部の、幅方向の一方側縁において、上記基板10aに直交する方向に設けられた一対の二股状係合部10b,10b’と、上記基板10aの中央部において、上記二股状係合部10b,10b’から間隔t1を介して二股状係合部10b,10b’に平行状態で上記基板10aに設けられた取付用基板10cと、当該取付用基板10cの上記二股状係合部10b,10b’とは反対側の板面に固着された切断刃取付ブロック10dとから構成されている。上記切断刃取付ブロック10dには上記取付用基板10cの板面に直交する7箇所の切断刃取付スリット11が等間隔で設けられており、各スリット11に7枚の切断刃12が同一方向に並列状態で取り付けられている。
【0034】
上記切断刃12は、図4、図7に示すように上記スリット11に挿入される長方形状の基部12aと、当該基部12aから直線的に延出形成された刃部12bを有し、かつ該刃部12bとは反対側の部分12cは、上記基部12aから先端部方向に徐々に刃の幅が細くなるようなテーパー状に形成されており、全体として極めて幅の狭い、細長板状を成している(図4、図7参照)。そして、上記切断刃12は上記基部12aを上記切断刃取付ブロック10dのスリット11に挿入固定することで、上記取付用基板10cに沿って、各刃部12bを上記回転中心軸5aとは反対側に位置させた状態で固定される。これにより、上記刃部12bは切断刃12の回転方向側(矢印A方向側)に位置する。
【0035】
この切断刃保持部材10は、その二股状係合部10b,10b’と上記取付用基板10cとの間(上記間隔t1)に、上記切断刃支持用杆9の連結板部9bを位置させた状態で(図7二点鎖線参照)、当該切断刃支持用杆9に取り付けられる。即ち、図4、図5に示すように、上記筐体2内に軸支されている上記切断刃支持用杆9の連結板部9bに上記二股係合部10b,10b’を以って切断刃保持部材10を係合させる。具体的には上記連結板部9bを上記二股状係合部10b,10b’と上記取付用基板10cとの間に位置させ、上記連結板部9bを上記二股係合部10b,10b’と上記取付用基板10cとの間に挟持した状態で、二股状係合部10b,10b’側から取付ネジ13,13’を上記連結板部9bの螺子孔にねじ込み、図7に示すように、上記連結板部9bの裏面側からナットN,N’で締め付け固定することで、上記切断刃保持部材10を上記切断刃支持用杆9に一体的に取り付ける(取り付け状態を図4、図5に示す)。
【0036】
かかる取り付け状態においては、上記接続板部9a,9a’の他端部側に連結板部9bに接続された切断刃取付用ブロック10dが設けられ、当該切断刃取付用ブロック10dに細長板状の切断刃12が取り付けられており、当該切断刃12は上記接続板部9a,9a’の方向に交差する方向(本実施形態では直交する方向)であってかつ上記回転軸5の軸方向と直交する平面H内に位置するように構成されており(図7参照)、かつ該切断刃12の上記接続板部9a,9a’に対する接続方向が、上記接続板部9a,9a’の回転方向(矢印A方向)に対して遅れる方向となるように構成されている(図8参照)。尚、上記切断刃12の取付位置を規定する上記平面Hは、当該面Hに平行であって上記回転中心軸5aに沿って観念される他の面であっても良い。
【0037】
側面からみると、図4、図8に示すように上記切断刃12は上記回転中心軸5aから所定距離T離れた位置において、上記接続板部9a,9a’に交差(直交)する方向に固定されている。かかる状態において、上記回転中心軸5aを中心として上記回転軸5,5’を矢印A方向に回転することにより、上記各切断刃12をその刃部12bの方向に回転し得るように構成している。即ち、上記切断刃12の一端は固定され、他端は開放状態となっている。
【0038】
ここで、切断刃12の方向が、上記接続板部9a,9a’の回転方向(矢印A方向)に対して遅れる方向とは、接続板部9aの回転方向(矢印A方向)に対して後ろ向きの方向のことをいう(図8の切断刃12の取り付け方向参照)。
【0039】
上記切断刃12の駆動機構6’は(図4参照)、駆動モータM’と、当該駆動モータM’の出力軸14と、該出力軸14の回転を直角方向に伝達する傘歯車15と、該傘歯車15の回転駆動を上記切断刃回転軸5に伝達する伝達軸16から構成されており(図6参照)、上記駆動モータM’の回転により、図8に示すように上記切断刃12は、始端位置X1から矢印A方向に一回転(360度)の回転を行って再び始端位置X1にて戻って停止するという回転動作を行う。
【0040】
上記切断刃12と上記巻寿司Mとの位置関係は図8に示すように、上記巻寿司載置板3の載置部3a’上に載置された巻寿司Mは、上記切断刃12の先端部12dの回動軌跡Rの内側に位置しており、切断刃12の刃部12bは図8の切断開始位置X2から巻寿司Mを切り始め、切断終了位置X3で切断が完了する。
【0041】
これにより、切断開始位置X2から切断終了位置X3に至る経路において、切断刃12が巻寿司Mの軸方向に直交する切断方向に移動する際、切断刃12全体が巻寿司Mの軸方向に直交する方向において、切断刃12全体が巻寿司Mの切断方向(矢印a方向)に対して上方(位置Y1)から下方(位置Y2)(切断方向(矢印a方向)に交差する矢印b方向)に大きくスライドしながら切断することができる。即ち、切断刃12は巻寿司Mの切断方向(図8の矢印a方向)に移動しつつ、該切断方向対して交差する方向(矢印b方向)にスライドしながら切断が行われる。
【0042】
これは、いわゆる棒状食品に対して半径方向に単に切断刃を移動させるだけではなく、半径方向に移動しながら切断刃を半径方向とは交差する方向にスライドさせつつ移動するという、切断刃12のいわゆる「擦り切り」を実現していることになるため、切断刃12を上記巻寿司Mの半径方向に単に直線的に移動させる切断方法より効率的な切断を実現することができる。
【0043】
単に切断刃を巻寿司の半径方向に直線的に移動させるだけでは、例えば海苔の弾性等で海苔が引きちぎられるように切断され、きれいな切断面が得られないおそれがあるが、本発明においては上述のような切断刃12の巻寿司Mに対する「擦り切り」を容易に実現できるので、海苔も確実に切断することができ、巻寿司Mのきれいな切断面を形成することができる。
【0044】
図11は、蓋体6の開閉と切断刃12の回転の連動機構を示すものである。17は上記切断刃12の回転軸5に一端を固着されたカム板であり、上記回転軸5と共に同一方向に回転するものである。上記カム板17と切断刃12との位置関係は、上記切断刃12が図11(イ)の始端位置X1に位置している状態において、上記カム板17が同図(イ)に示す位置に存在するような位置関係(カム板17が切断刃12と略直交する位置関係)とする。
【0045】
18は、上記蓋体6の支持軸7に一端を固着されたアームであり、当該アーム18の他端部には駆動アーム19が軸支されている。この駆動アーム19の他端は長孔19aが貫設され、上記切断刃12の上記回転軸5は上記長孔19aを介して外側に突出し、上記傘歯車15の伝達軸16に接続されている。上記駆動アーム19の略中間位置には外側に突出する係合突起19bが設けられており、蓋体6の閉鎖状態(図11(ロ))から上記切断刃12の矢印A方向の回転に伴って上記カム板17が当該突起19bに当接すると、上記カム板17と上記係合突起19bとの当接関係によって、上記カム板17の回転に伴って上記駆動アーム19は矢印C方向に持ち上げられ、それに伴って上記アーム19の他端を以って上記アーム18を矢印B方向に回動せしめ、これにより上記蓋体6を矢印B方向に回動した開蓋状態を自動的に実現し得るように構成されている。
【0046】
蓋体6の開閉のタイミングは、切断刃12の始端位置X1(図11(イ))においては、蓋体6は開状態であり、この状態から手動で蓋体6を閉鎖すると、図11(ロ)に示すように上記駆動アーム19が上記支持軸7の矢印A方向の回転に伴って矢印D方向(下降方向)に移動して閉蓋位置となる(図11(ロ))。この状態では、上記駆動アーム19の係合突起19bがカム板板17の回転軸5近傍の基部17aに接触した状態となる。かかる状態で切断刃12を駆動すると、切断刃12が矢印A方向に回動開始し、該切断刃12による巻寿司Mの切断が終了する位置X3(図11(ハ)の二点鎖線位置)までは、上記係合突起19bが上記カム板17の移行部17bの基部17a側近傍に位置しているので、上記蓋体6は殆ど閉鎖状態を維持する(図11(ハ)二点鎖線参照)。
【0047】
切断刃12がさらに回動して巻寿司Mの切断を終了し、上記載置板3の下方に完全に隠れてた時点から、上記係合突起19bは上記カム板17の移行部17bを徐々に回動端部17c側に移行していき(図11(ハ)から同図(ニ))、これに伴って上記駆動アーム19が矢印C方向に上昇していくため、上記アーム18を介して上記蓋体6の支持軸7を矢印B方向に回動し、蓋体6を自動的に開成し得るように構成されている。
【0048】
上記図11(ニ)の開蓋位置から上記切断刃12がさらに矢印A方向に回転して同図(イ)の始端位置X1に至ると、上記カム板板17と上記係合突起19bとの係合が解除されるが、当該解除状態においても上記蓋体6はそのバランス上図11(イ)の開蓋状態を維持する。尚、蓋体6が開蓋状態に至った時点において、当該蓋体6を開蓋状態(図11(イ)の状態)にロックし、手動で蓋体6を閉鎖するときにロック解除されるロック機構を設けることが好ましい。
【0049】
図1、図4、図5中20は消毒用のアルコール水の入った液槽であり、上記筐体2内の切断刃12の下半分の回動経路R内に位置している。上記切断刃12は、上記巻寿司Mを切断した後の回動経路において、上記液槽20内のアルコール水内を移行していく。これにより巻寿司Mを切断する度に切断刃12を洗浄することができる。
【0050】
本発明は上述のように構成されているので、次に、本発明の動作を説明する。
【0051】
まず、切断刃12は図8、図11(イ)の始端位置X1に位置しており、蓋体6は開状態にあるものとする。この状態において図1に示すように巻寿司M2本(或は1本)を巻寿司載置板3の巻寿司載置部3a’に図1に示すように並列状態で載置する。尚、図1の巻寿司Mは切断後の状態を示すが、勿論この状態では、未だ巻寿司Mは切断されていない。
【0052】
かかる状態から蓋体6を手動で矢印A方向に回動して閉鎖する。すると、押え板8も蓋体6と共に矢印A方向に回動し、蓋体6の閉鎖状態(図4の蓋体6の二点鎖線参照)において、押え板8は上記巻寿司Mの上面に近接して位置する状態となる。これにより、巻寿司Mの切断時に巻寿司Mの浮き上がりを防止し得る。
【0053】
その後、図示しない駆動スイッチをオンすれば良い。すると、駆動モータM’が回転し、当該モータM’の回転がシャフト14、傘歯車15及び伝達軸16を介して切断刃回転軸5を矢印A方向に回転駆動する。
【0054】
すると、切断刃12は始端位置X1から、切断刃保持部材10共々矢印A方向に回転を開始し(図11(イ)(ロ))、各切断刃12は上記巻寿司載置板3のスリットSを介して当該載置板3の上側に臨出し(図8、図11(ロ))、さらに回転して切断開始位置X2に達する。このとき、切断刃12の上端部は押え板8のスリットS’を介して押え板8の上側に臨出する。そして、上記切断開始位置X2から巻寿司Mの長手方向に直交する方向に移動しながら該巻寿司Mを切断して行き、切断終了後に切断終了位置X3に達し、さらに矢印A方向に回転して上記始端位置X1に戻って停止する。
【0055】
このとき、切断開始位置X2から切断終了位置X3に至る経路において、切断刃12の全体を上記巻寿司Mに対して上方から下方に移動しながら当該巻寿司Mを切断する、いわゆる「摺り切り」が行われるため、巻寿司Mの海苔も確実に切断することができ、きれいな切断面を得ることができる。
【0056】
即ち、切断刃12は、上記切断開始位置X2から回動中心軸5aを中心に矢印A方向に回動するが、このとき、切断刃12は切断方向(矢印a方向)に移動しながら、その全体を上方位置Y1から下方位置Y2の方向(切断方向aに交差する矢印b方向)に大きくスライドしながら巻寿司Mに切り込んでいくため、刃部12bの露出部分の略全域12b’を使用して巻寿司Mを切断していくことになる。これにより、いわゆる「摺り切り」を実現することができ、効率的な切断動作を実現できる。
【0057】
また、切断の過程において、切断刃12が上記巻寿司載置板3及び押え板8の各スリットS,S’を介して当該載置板3及び押え板8の上側に臨出するが、上記蓋体6が閉鎖されているので、回転する切断刃12で操作者が怪我をすることもなく、安全に切断動作を行うことができる。
【0058】
切断刃12の回転と蓋体6の開閉を連動させる場合は、上記蓋体6を閉鎖した状態(図11(ロ))で始端位置X1から切断刃12の回転が開始されると、切断刃12が切断開始位置X2から切断終了位置X3に至るまでは、係合突起19bがカム板17の基部17a近傍に位置するため、蓋体6は閉鎖状態を維持する(図11(ロ)(ハ))。その後、上記切断刃12が切断終了位置X3からさらに矢印A方向に回転して、同切断刃12が上記巻寿司載置板3上部から該載置板3の下に完全に隠れた後のタイミングにおいて、上記係合突起19bが上記カム板17の回動端17c側に移動していき、当該カム板17の回転によって上記突起19bを介して駆動アーム19が矢印C方向に上昇していく。そして、このアーム19の上昇によりアーム18を介して支持軸7が矢印B方向に回動し、これによって上記切断刃12が始端位置X1に達した時点では、上記蓋体6は図11(イ)に示す開状態となる。
【0059】
このように、切断刃12が上記巻寿司Mを切断している過程、即ち、切断刃12が上記巻寿司載置板3と押え板8の上側に臨出している過程においては、蓋体6が閉状態を維持するため、蓋体の自動開成を実現しながら、安全に巻寿司Mを切断することができる。
【0060】
図12に示すものは、本発明の他の実施形態であり、上記第1の実施形態に対応する部分には同一符号を付して便宜上その説明を省略する。この実施形態では、切断刃12は、回転軸5を中心に矢印A方向に回転し、その切断刃12の先端部の回転軌跡Rの範囲内において、上記切断刃12の移転方向に直交する方向の前後方向に2本の巻寿司Mが載置される構成となっている。また、上記切断刃12は上記第1の実施形態と異なり、図12の始端位置L1から矢印A方向に略120度回転することで上記2本の巻寿司Mを同時に切断し、終端位置L2において一端停止する。そして、切断後の巻寿司Mの取り卸しが終了した後、切断刃12は、終端位置L2から始端位置L1に逆方向(矢印B方向)に反転して始端位置に戻る。
【0061】
このように構成すると、切断刃12の回転が360度より少ない角度で足りるので、切断装置全体を小型化することができる。尚、切断刃12の構成は上記の実施形態と同様なので、切断刃12は巻寿司Mの切断方向(図13の矢印a’方向)に移動しつつ、該切断方向対して、交差する方向(矢印b’方向)にスライドしながら切断が行われる。このように、当該実施形態においても切断刃による巻寿司Mの「摺り切り」を実現することができ、効率的な切断を行うことができる。よって、図12に示すように巻寿司Mを2本並設しても、2本ともきれいに切断することができる。
【0062】
図13は、本発明のさらに他の実施形態を示すものであり、上記実施形態と同一形状の細長板状の切断刃12’,12,12”を幅方向に所定間隔を以って3本並設し(図13において切断刃12,12’,12”は、紙面に向かって直交する奥部方向に向かって延びている)、中央の1本の切断刃12の回転軸5aを水平とし、左右の2本の切断刃12’、12”の回転軌跡R1、R3が各々中央の切断刃12の回転軌跡R2の方向に所定角度傾斜するように、両回転軸5b,5cの角度を水平状態から同一角度(θ)だけ同一方向に傾斜させ、上記3本の切断刃12’,12,12”の各回転軌跡R1,R2,R3の範囲内に上記中央の切断刃12の回転方向に直交する方向の上記棒状食品載置部3a’を設けたものである。
【0063】
このように構成すると、中央の切断刃12は上記載置部3a’上の巻寿司Mを中央位置P2から垂直に2分割し、左側の切断刃12’は左下がりの傾斜角度を以って巻寿司Mの左側位置P1を切断し、右側の切断刃12”は右下がりの傾斜角度を以って巻寿司Mの右側位置P3を切断する。そうすると、傾斜した切断面S”を有する4個の巻寿司m1〜m4を一度に製造することができる(図13(a)参照)。
【0064】
図14、図15は上記実施形態を実際の装置に適用したものであり、図14は蓋6開放時の正面図、図15は蓋6閉鎖時の背面図を示す。尚、図14において切断刃12’,12,12”は紙面に向かって直交する手前方向に向かって延びており、図15においても切断刃12’,12,12”は紙面に向かって直交する手前方向に向かって延びている。
【0065】
図15は切断前の切断刃12',12,12”の位置を示し、中央の切断刃12は図12の始端位置L1にあり、他の切断刃12’,12”も同様の始端位置にある。この状態から、各駆動モータM1乃至M3を同時に駆動して、切断刃12’,12,12”を矢印A方向(手前方向)に回転する。図14は切断刃12’,12,12”の回転終了位置を示し、上記図15の位置から略180度回転した状態を示す。かかる回転により図13(イ)に示すように傾斜切断面を有する4個の巻寿司m1乃至m4を形成することができる。尚、図14は切断後の位置であり、切断刃12等の回転に伴って蓋6が開き、切断刃12,12’,12”の回転動作とのリンク機構6”によって蓋6を開き、同時に載置部3a’を持ち上げて切断後の巻寿司Mの取り卸しを容易としている。
【0066】
以上のように本発明は、複雑な機構を採用することなく非常に簡単な構成でありながら、巻寿司等の棒状食品その他の食品に対して「摺り切り」を実現することができ、効率的な切断動作を行うことができ、例えば巻寿司Mの海苔も容易に、かつきれいに切断することができる。
【0067】
また、「摺り切り」を実現し得るが故に、切断刃12は極めて細い板状のものを使用することができ、切断刃12の洗浄が非常に容易であるという効果を奏する。
【0068】
また、「摺り切り」を実現し得るが故に、巻寿司等の棒状食品を2本同時、或は2本以上の複数本の棒状食品もきれいに切断できるという効果を有する。
【0069】
また、例えばサラダ巻のように、傾斜した切断面を有する巻寿司等の棒状食品をも容易に形成することができる。
【0070】
また、本発明に係る切断刃機構は、巻寿司等の棒状食品のみならず、サンドイッチ等の方形状、三角形状、卵等の球形状等の食品の切断にも適用が可能であり、各種の素材からなる食品を容易かつきれいに切断できるという効果を有する。
【0071】
尚、上記実施形態では、切断刃12を回転軸を中心として回動させることにより食品を切断する機構について説明したが、切断刃12を固定した状態で、食品を切断刃12に対して「摺り切り」状態となるように移動させることによっても、同様に実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の食品の切断刃機構によると、巻寿司に限らず、ちくわ、ロールケーキ、羊羹等の棒状食品、その他、サンドイッチ等の方形状、三角形状の食品、卵等の球形状の各種食品をも好適に切断することができ、多方面の食品加工産業において利用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係る食品の切断刃機構を有する装置の斜視図である。
【図2】同上装置の正面図である。
【図3】同上装置の側面図である。
【図4】同上装置の内部機構を示す側面図である。
【図5】同上装置の内部機構を示す正面図である。
【図6】同上装置の駆動機構の拡大図である。
【図7】同上装置の切断刃の取り付け機構を示す組み立て斜視図である。
【図8】同上装置の切断刃の回転軌跡を示す側面図である。
【図9】(イ)は切断前の巻寿司の斜視図、(ロ)は切断後の巻寿司の斜視図である。
【図10】同上装置の押え板の平面図である。
【図11】同上装置の切断刃の回転と蓋体体の開閉の連動機構を示す側面図であり、(イ)は切断刃の始端位置、(ロ)は切断刃の切断開始直前位置、(ハ)は切断刃の切断中の位置、(ニ)は切断刃の切断終了直後の位置を示す。
【図12】同上装置の他の実施形態の切断刃近傍の側面図である。
【図13】(イ)は同上装置の他の実施形態により切断された巻寿司の正面図、(ロ)は同上他の実施形態の装置により巻寿司を切断する場合の概念図である。
【図14】図13の実施形態を適用した場合の切断刃機構を有する装置の正面図である。
【図15】図13の実施形態を適用した場合の切断刃機構を有する装置の背面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 切断装置
2 筐体
3 棒状食品載置板
3a’ 棒状食品載置部
5,5’ 回転軸
5a 回転中心軸
6 蓋体
7 支持軸
8 押え板
9a,9a’ 接続板部
9b 連結板部
10d 切断刃取付ブロック
12 切断刃
17 カム板
18 アーム
19 駆動アーム
19b 係合突起
M 巻寿司

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内において回転軸を支持し、
上記回転軸にその軸方向に直交する方向の回転腕の一端を接続し、
上記回転腕の他端部に切断刃取付部を設け、
上記切断刃取付部に細長板状の切断刃を取り付けて、当該切断刃が上記回転腕の方向に交差する方向であってかつ上記回転軸の軸方向と直交する平面内に位置するように構成し、
かつ上記切断刃の上記回転腕に対する接続方向が、上記回転腕の回転方向に対して遅れる方向となるように構成し、
上記切断刃の先端の回転軌跡の範囲内に、上記平面に直交する方向の食品載置部を設けたものであることを特徴とする食品の切断刃機構。
【請求項2】
筐体内において回転軸を支持し、
上記回転軸にその軸方向に直交する方向の回転腕の一端を接続し、
上記回転腕の他端部に切断刃取付部を設け、
上記切断刃取付部に細長板状の刃の一端を固定してその他端を開放状態とし、当該刃が上記回転腕の方向に交差する方向であってかつ上記回転軸の軸方向と直交する平面内に位置するように構成し、
かつ上記刃の上記回転腕に対する接続方向が、上記回転腕の回転方向に対して遅れる方向となるように構成し、
上記刃の先端の回転軌跡の範囲内に、上記平面に直交する方向の食品載置部を設けたものであることを特徴とする食品切断刃。
【請求項3】
上記切断刃を幅方向に所定間隔を以って3本並設し、中央の1本の切断刃の回転軸を水平とし、
左右の2本の切断刃の回転軌跡が各々中央の切断刃の回転軌跡の方向に所定角度傾斜するように、両回転軸の角度を水平状態から同一角度だけ傾斜させ、
上記3本の切断刃の各回転軌跡の範囲内に上記食品載置部を設けたものであることを特徴とする請求項1記載の食品の切断刃機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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