説明

食品切断装置

【課題】小さな食品がインペラ内を回転することを抑止し、異物がナイフは先を破損させることを防止する。
【解決手段】環状の切断ヘッド42と、切断ヘッド42の内部に同軸に設置されて回転し、切断ヘッド42に向けて半径方向外側に食品を移送するインペラアセンブリとを備える食品切断装置であって、切断ヘッド42は、インペラアセンブリに向けて半径方向内側に伸長する1つ以上のナイフ44を有し、ナイフ44は、半径方向内端部に刃先45と、刃先45によって食品から切り離されたスライスが辿る軌道面35を形成する半径方向外側面82とを有し、ナイフ44は、締付け部材によって、切断ヘッド42に固定されるが、この締付け部材は、スライスがナイフ44の軌道面35を移動する際に、該スライスが通過しうる空間を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは切断方法および切断装置に関する。より具体的には、切断装置にかける前に、幅のある食品をしかるべき方向に向かわせて置くためのインペラアセンブリを備えた装置に係り、ほぼ均一な厚みの小型サイズの食品を製造する。
【背景技術】
【0002】
野菜、果物、肉などの食品をスライスしたり、千切り、微塵切りにするための装置は、様々なタイプのもが知られている。これらのうち、根菜をカットするための装置があり、この装置は、たとえばポテトチップ(ポテトクリスプとも呼ばれる)用にジャガイモを薄くスライスするのに適している。この目的のために広く用いられている機具は、アーシェル ラボラトリーズ社によって、Urschel Model CC(登録商標)の商品名で市販されている。Model CC(登録商標)は、遠心型のスライサーであり、幅広い食品を、高い生産能力で、均一な輪切り、拍子木切り、千切り、微塵切りにする。Model CC(登録商標)を、ポテトチップ用にジャガイモをスライスするために用いた場合、最小限のロスで、ほぼ球形のジャガイモを、所望の円形チップ形状することができる。Model CC(登録商標)の構造と作用に関する記述は、改良形態も含めて、米国特許第5,694,825号および第6,968,765号に開示されており、これら特許の内容全体は、参照により本願に組み込まれる。
【0003】
図1および図3は、それぞれ、Model CC(登録商標)に用いられるタイプのインペラ10と切断ヘッド12を示す斜視図である。作動状態において、インペラ10は、周囲に切断ナイフ14を配した略環状の切断ヘッド12の内部に、これと同軸上に設置される。インペラ10は、切断ヘッド12の内部を回転するが、切断ヘッド12は静止したままである。各ナイフ14は、インペラ10に向かって半径方向内側に突出し、その半径方向内端部には刃先が形成されている。インペラ10は、ほぼ半径方向に向いたパドル16を有しており、パドル16は、インペラ10の回転に伴って、食品36(たとえばジャガイモ)を捕捉し、これを切断ヘッド12のナイフ14に向けて、半径方向外側に方向付けるフェース34を備える。ここに示されているパドル16は、本願において負ピッチと呼ぶ方向に向いている。ここで負ピッチとは、図2に示すように、各パドル16のフェース34の半径方向内端部が、インペラ10(フェース34の半径方向外端部で終了する)の半径38に対して、回転方向と反対方向に傾斜している場合を指す。図1〜図3に示すインペラ10および切断ヘッド12の場合、このような方向付け(負ピッチ)が好ましい。インペラ10は、典型的に、マンガン・アルミニウム・ブロンズ(MAB)合金のような合金で鋳造され、従って、一体構造を有する。
【0004】
図3に示す切断ヘッド12は、下部支持リング18、上部固定リング20、および円周方向に間隔を空けて配置された支持セグメント22を備える。切断ヘッド12のナイフ14は、締め付けアセンブリ26によって、それぞれ支持セグメント22に固定される。支持セグメント22は、たとえば、下部支持リング18および/または上部固定リング20の孔と係合する1本以上の同軸ピン(図示せず)によって、枢動可能に、下部支持リング18および上部固定リング20に取り付けられている。ピンを軸に枢動させることにより、支持セグメント22の方向を調整して、切断ヘッド12の軸に対するナイフ14の刃先の位置を、半径方向に変更することが可能であり、これによりスライスされる食品の厚みをコントロールできる。例えば、この調整は、枢動ピンの後方に、円周方向に配置された調整ネジ/ピン24によって行うことができる。さらに図3は、各ナイフ14に隣接して、それぞれの支持セグメント22に設置されたゲート・インサート・ストリップ23を示している。ゲート・インサート・ストリップ23は、切断ヘッド12の軸方向全長をカバーしているわけではなく、それぞれの下端部に開口部25を形成している。この開口部25を通じて、重力でインペラ10の底部に沈降してくる小石や破片などを、ナイフ14を破損することなく切断ヘッド12の外へ排出することが可能となる。
【0005】
各ナイフ14は、ボルトや締め付けアセンブリなどによって、それぞれ支持セグメントに固定される。図9および図10は、切断ヘッド12の一部を、下部支持リング18の方向へ見た断面図である。図9では、内ホルダ27と外ホルダ28からなる締め付けアセンブリを、ボルト29で支持セグメント22に固定することにより、ナイフ14を所定の位置に固定しており、これは、米国特許6,968,765号の記載、具体的には該先行特許の図7が示すところとほぼ同様である。図10では、ナイフ14はプラスチック製カートリッジに収められており、これにより、インペラ10から送り込まれる食品に埋め込まれる等して存在する可能性のある小石や破片などによる破損から、ナイフ14を保護することができる。ナイフ14およびプラスチック製カートリッジ30は、一対のホルダ27、28の間に支持した状態で、半径方向外側のホルダ28を、締め付けロッド32で強制的に支持セグメント22に固定することにより、所定位置に取り付けられる。締め付けロッド32は、下部および上部固定リング18、20に対して垂直の方向に、締め具31により半径方向内側のホルダ27に固定される。レバー33を回転させると、カム作用が生じ、ロッド32に対して外ホルダ28を外側に強いる力がかかり、外ホルダ28をナイフ14に押しつける。いずれの場合も、ナイフ14は、取り外し可能な使い捨てタイプであり、切断ヘッド12の切削効率を維持し、食品スライスの品質を保つため、ナイフを交換できるようになっている。図9および図10に示すナイフ14の刃先は、ダブルベベル形状である。図9から明らかなように、刃先15によって製造されるスライスの軌道35は、下流に何ら障害物を有さず、外ホルダ28の外表面が形成する平面よりも半径方向外側にある。図10においては、プラスチック製カートリッジ30が、スライスを締め付けロッド32からそらす役割を果たしている。
【0006】
Model CC(登録商標)は、意図された目的を極めて良好に達成するものではあるが、Model CC(登録商標)に代表されるタイプのスライスマシンには、さらなる改良が継続的に望まれ、模索されている。たとえば、図9および図10に示すようなダブルベベルのナイフは、スライスする際に食品を圧迫する傾向にある。ジャガイモをスライスし、油で揚げてポテトチップを作る場合、スライス中の圧迫から生じるデンプンの損失により、調理中、油の吸収が促進されてしまう可能性があり、好ましくない。シングルベベルのナイフは、圧迫を軽減はするものの、軌道の角度を減少させるため、スライスされた食品が、下流の締め付けロッド32と衝突する可能性を高めてしまう。プラスチック製カートリッジ30を用いれば、スライスされた食品を締め付けロッド32からそらすことができるため、衝突を回避できるが、プラスチック材料の圧縮性は、ナイフ14の刃先15を設置する際の正確性を減少させ、その結果、スライスされた食品の厚みを一定に保つことが困難となる。その他にも、Model CC(登録商標)タイプのスライスマシンの作動に影響を及ぼしたり、スライスの一貫性を害する可能性が生じる場合がある。たとえば、小石などの異物が食品に埋め込まれていたり今夕していたりする場合、ナイフの刃先を破損する危険性があり、また、小さい食品の場合、インペラ10内を回転してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,694,825号公報
【特許文献2】米国特許第6,968,765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、小さな食品がインペラ内を回転することが抑止され、食品に混じった小石などの混入異物が、ナイフの刃先と接触して、破損させることを防止しうる食品切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、環状の切断ヘッドと、この切断ヘッド内に同軸に設置された回転するインペラアセンブリとを有する切断装置を提供する。インペラアセンブリは、切断ヘッドの軸の周りを回転し、切断ヘッドに向けて半径方向外側に丸い食品を移送させる。切断ヘッドは、インペラアセンブリに向けて半径方向内側に、インペラアセンブリの回転方向とは逆に伸長する1つ以上のナイフを有する。ナイフは、その半径方向内端部に刃先を有し、ナイフの半径方向外側面は、刃先によって食品から切り離されたスライスが辿る軌道面を形成している。
【0010】
本発明の態様の1つによれば、ナイフは、締め付けバーを有するクランプ機構によって、切断ヘッドに取り付けられる。すなわち、締め付けバーの作用でクランプ機構にクランプ力を発生させ、これによりナイフを切断ヘッドに固定する。締め付けバーは、ナイフの半径方向外端部に隣接して、ナイフとほぼ並行に設置され、その切断ヘッド半径方向の厚みは、ナイフ方向に向かうにつれ薄くなり、スライスがナイフの軌道面を通過する際に空間を提供できるようになっている。この態様における本発明の利点は、下流において何らかの構造と衝突することなく、食品のスライスは切断ヘッドから排出されるということであり、かつ、そのためにダブルベベルの刃先を用いたり、ナイフをプラスチック製カートリッジに収納したりする必要がないということである。従って、食品への圧迫が最小限ですむシングルベベルの刃先をナイフに用いることが可能であり、また、より正確なナイフの刃先設置が可能となるため、さらに一定した厚みのスライスを提供することができる。
【0011】
インペラアセンブリは、切断ヘッドに向けて半径方向外側に食品を移送させるパドルを備えることが好ましい。本発明の別の態様によれば、各パドルは、インペラアセンブリの外周と隣接する半径方向外端部と、その反対側に位置する半径方向内端部と、これら内端部および外端部の間を伸長し、インペラアセンブリの回転方向に向いたフェースを有する。また、各パドルは、その半径方向外端部と平行に走る溝を備える。本発明のさらに別の態様によれば、各パドルは、半径方向外端部に設置され、インペラアセンブリの半径方向外側に伸長する、取り外し可能な複数のポストを備える。
【発明の効果】
【0012】
パドルに溝を設けることにより、小さな食品がインペラ内を回転することが抑止される。また、取り外し可能なポストを備えることにより、食品に混じった小石などの混入異物が、ナイフの刃先に強制的に押し付けられ、ナイフの刃先が破損してしまうことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】Model CC(登録商標)タイプのスライサー用の既存インペラを示す斜視図である。
【図2】Model CC(登録商標)タイプのスライサー用の既存インペラを示す断面図である。
【図3】Model CC(登録商標)タイプのスライサー用の既存切断ヘッドの斜視図である。
【図4A】Model CC(登録商標)タイプのスライサーに用いるのに適した、本発明の好ましい実施形態によるインペラアセンブリを示す斜視図である。
【図4B】Model CC(登録商標)タイプのスライサーに用いるのに適した、本発明の好ましい実施形態によるインペラアセンブリを示す側面図である。
【図4C】Model CC(登録商標)タイプのスライサーに用いるのに適した、本発明の好ましい実施形態によるインペラアセンブリを示す断面図である。
【図4D】本発明の任意に選択可能な態様により、図4AおよびBのインペラアセンブリに使用されるディフレクタの平面図、斜視図および断面図である。
【図4E】Model CC(登録商標)タイプのスライサーに用いるのに適した、本発明の別の実施形態によるインペラアセンブリを示す斜視図である。
【図4F】Model CC(登録商標)タイプのスライサーに用いるのに適した、本発明の別の実施形態によるインペラアセンブリを示す側面図である。
【図4G】Model CC(登録商標)タイプのスライサーに用いるのに適した、本発明の別の実施形態によるインペラアセンブリを示す断面図である。
【図5】図4Dのディフレクタを組み込み、図3の切断ヘッド内に設置された図4A、図4Bおよび図4Cのインペラアセンブリを示す断面図である。
【図6A】図4A、BおよびCのインペラアセンブリのパドルを単独で示す平面図である。
【図6B】図4A、BおよびCのインペラアセンブリのパドルを単独で示す側面図である。
【図7】図4E、FおよびGのインペラアセンブリのパドルを単独で示す側面図である。
【図8】図4A、BおよびCのインペラアセンブリの一端部を示す斜視図であり、様々なサイズの食品と係合するパドルの1つを概略的に示している。
【図9】Model CC(登録商標)タイプのスライサーに用いられる既存の切断ヘッドの一部を示す断面図である。
【図10】Model CC(登録商標)タイプのスライサーに用いられる既存の切断ヘッドの一部を示す断面図である。
【図11】図4A、BおよびCのインペラアセンブリに用いるのに適した、Model CC(登録商標)タイプのスライサー用の改良切断ヘッドの一部を示す、一実施形態についての断面図である。
【図12】図4A、BおよびCのインペラアセンブリに用いるのに適した、Model CC(登録商標)タイプのスライサー用の改良切断ヘッドの一部を示す、別の実施形態についての断面図である。
【図13】図4A、BおよびCのインペラアセンブリに用いるのに適した、Model CC(登録商標)タイプのスライサー用の改良切断ヘッドの一部を示す、さらに別の実施形態についての断面図である。
【図14】図13の締め付けアセンブリを示す側面図である。
【図15】図13の締め付けアセンブリを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のその他の目的および利点は、以下の詳細な説明を参照することにより、十分に理解される。
【0015】
図4A〜Cは、本発明に従い改良されたインペラアセンブリ40を示している。図5に示されるように、インペラアセンブリ40は、図3の切断ヘッド12や、図11〜13に対応する切断ヘッド42のような切断ヘッド内を回転するよう構成されている。
【0016】
図1および図2のインペラ10と同様に、インペラアセンブリ40は、略半径方向に向いたパドル46を有しており、パドル46は、インペラアセンブリ40の回転に伴い、食品(たとえばジャガイモ)を捕捉し、これを切断ヘッド12のナイフ14へと半径方向外側に向かわせるフェース60を備える。しかしながら、図4A〜Cから明らかなように、パドル46は、図1および図2に示す従来のパドル16と、構成も構造もかなり異なる。パドル46の構造上、インペラアセンブリ40は、個別に形成したパドル46を、一対の環状プレート48、50の間に設置し、固定して構成することが好ましい。こうしたモジュール構成のため、インペラ40およびその部品は、鋳造以外の方法で形成され、一般に用いられるMAB合金のほか、様々な金属を使用することができる。
【0017】
図4Aの各パドル46は、それぞれ、プレート48および50に切削された一組の固定孔53に、ボルト51とピン52でそれぞれ固定される。設置ホール53の配置により、フェース60の半径方向外端部に終端が来るインペラアセンブリ40の半径64に対する、各パドルのフェース60の方向またはピッチが定まる。可能なパドルフェース60のピッチとしては、負ピッチ(図2に示す方向)、中立ピッチ(各パドルのフェース60が、インペラアセンブリ40の半径46の方向に伸長する)、正ピッチ(図4Cに示す方向であり、各パドルフェース60の半径方向内端部66が、インペラアセンブリ40の半径46に対して、回転方向の方へ傾斜している)がある。各パドル46に対して、一組の孔53を設け、任意のインペラアセンブリ40に対して、その必要に応じて、パドル46のピッチを、負ピッチ、中立ピッチまたは正ピッチのいずれかに限定する。図4E〜Gに示す代替例では、プレート48および50に複数組の固定孔53を設け、インペラアセンブリ40の各パドル46のピッチを、変更できるようにしている。
【0018】
図6AおよびBは、パドル46の1つを単独で示している。パドル46は、インペラアセンブリ40の軸方向(図4Aおよび4Bにおける上部から底部方向)において、対称になっている。各パドル46の半径方向内端部66は、ほぼ直線的で軸方向に配向している。パドル46の寸法は、処理される食品のサイズにある程度左右されるため、それに応じて変動する。約4インチ(約10cm)までの食品に対応するためには、パドル46の半径方向の幅(パドルフェース60の半径方向外端部から、パドルフェース60がパドル46の半径方向内端部66を形成する半径と交わるラインまでの距離)は、約2インチ(約5cm)までであることが適切である。図7は、図4E〜4Gに示す代替例のパドル46である。図7に示す代替的パドル46は、インペラアセンブリ40の軸方向(図4EおよびFにおける上部から底部方向)において非対称であり、図4A〜C、図6AおよびBのパドル46と著しく異なる。この代替的な各パドル46においては、下部プレート48に隣接する半径方向内端部66は、ほぼ直線的で軸方向に配向しているが、上部プレート50に隣接する境界68は、上部プレート50に近づくにつれ、半径方向外側に向けて湾曲している。パドル46内端部のこうした形状、輪郭は、必ずしも必要というわけではないが、処理される食品の損傷を軽減するという望ましい効果を有する。
【0019】
図示のパドル46は、その半径方向外端部に間隔を空けて配置された多数のポスト54を備え、多数の間隙56を形成している。この間隙56を通じて、小石や破片などは、インペラアセンブリ40の外に排出され、その後切断ヘッドからも出る。これにより、インペラアセンブリ40のパドル46や、切断ヘッドのナイフが破損するのを回避できる。ポスト54は、交換可能であることが好ましく、たとえば、パドル46の半径方向外端部に機械加工により設けられたフェース58にネジ止めにより固定される。ポスト54は、ほぼ円錐形状であり、図6に示すように、その円錐形状の一側面が、パドル46のフェース60と同一平面上にくるよう角度づけされていることが好ましい。図4、図5および図7から明らかなように、各パドル46のフェース60は、軸方向に配向した溝62を備えており、パドル46に係合する食品の回転が阻止される。2インチ(約5cm)以下のポテトのような、より小さな食品は、形状が球形であり、軽量であるため、パドル46との係合において回転しやすいため、隣接する溝62間の距離は、インペラアセンブリ40の外径方向側に向けて、狭められるようにする。インペラのパドル46に溝62を設けることと、正ピッチに設定することとの組合せにより、小さなジャガイモをインペラアセンブリ40に供給する場合に、最適な反回転効果がもたらされる。
【0020】
図4Dは、本発明のインペラアセンブリ40のいずれかと共に用いるデフレクタ90を示している。デフレクタ90には、ほぼ円錐形状となるようテーパがつけられており、これより、食品はインペラパドル46に向けて半径方向外側に方向付けられる。さらに、デフレクタ90は、その中央に半球形状の凹部92を有するように形成される。凹部92の機能は、まず最初に凹部92に向かって落ちてくる水(または、食品の処理工程で一般に用いられるその他の潤滑流体)を、インペラパドル46の上端部へと半径方向外側に向かわせ、その後パドル46の垂直面を降下させることにより、潤滑および洗浄効果を提供することである。デフレクタ90は、デフレクタ90をインペラアセンブリ40の下部プレート48中央に設置する(図5参照)ための中央穴94と、下部プレート48にデフレクタ90を固定する皿ボルト(図示せず)用の穴96を有する。
【0021】
図5は、図4Dのデフレクタ90を備えた図4A〜Cのインペラアセンブリ40を、図3の切断ヘッド12内に同軸かつ同心円に回転可能に設置したところを概略的に示している。切断ヘッド12は固定フレーム13上に支持され、一方、インペラアセンブリ40はドライブシャフト41と連結される。図5の右側は、ナイフ(図示せず)に隣接して、支持セグメント22に設置されたゲート・インサート・ストリップ23の断面を表している。図示のように、ゲート・インサート・ストリップ23は、パドル46の軸方向全長をカバーしておらず、代わりに、その下端に開口部25を形成している。この開口部を通して、重力によりインペラアセンブリ40の底部に集まってくる小石や破片は、ナイフを損傷することなく切断ヘッド12を出る。
【0022】
図8は、図4E〜Gに示すインペラアセンブリ40の平面図であり、上部プレート50を取り除き、直径の異なる丸いジャガイモ72がパドル46の1つと係合しているところを表している。図8から明らかなように、4インチ(約10cm)のジャガイモは、パドル46の内側直線境界66が位置する半径とフェース60とが交わる地点で、フェース60と接しており、従って、パドル46は、直径4インチ(約10cm)までの食品に対応できることが分かる。図8に示されるパドル46は、およそ5°の正ピッチである。パドル46を、その上側にある一組の固定孔53(図8参照)に設置した場合、ハドル46にはさらに5°の角度が追加され、10°の正ピッチとなる。パドル46を、下側にある一組の固定孔53(図8参照)に設置した場合、パドル46は中立ピッチとなる。
【0023】
図11、図12および図13は、切断ヘッド12の部分を示す断面図であり、本発明の異なる実施形態における、それぞれのナイフ締め付け具とともに構成された切断ヘッドを表している。いずれの場合も、ナイフ44は、一対のホルダ74、76によって固定されるが、これは、本質的に図10のところで記述したのと同様に、半径方向外側のホルダ76を、締め付けロッド78で強制的に支持セグメント70の所定位置に固定することにより行う。しかしながら、図10における場合と異なり、図11〜13に示されるナイフはいずれも、プラスチック製カートリッジに収められていない。プラスチック製カートリッジを排除したのは、切断ヘッド42の軸に対し、各ナイフ42の刃先45をより正確に設置することにより、スライスの厚みの正確性および一貫性を改善するためである。すなわち、プラスチック材料の柔軟性により、プラスチック製カートリッジ30は圧縮可能となるため、切断ヘッド42の軸に対するナイフの刃先45の位置の正確性は、ある程度、低減されてしまう。従って、カートリッジ30を排除し、金属のような実質的に非圧縮性の材料でナイフ44およびホルダ74、76を形成することにより、ロッド78で締め付ける際の負荷による圧縮から生じる寸法の変化を回避でき、ナイフの刃先45のより正確な位置決めが保証される。
【0024】
図11においては、本質的に図9のナイフ14と同様の、従来的なダブルベベルのナイフ44が示されている。実際、ナイフ44から下流へと移動するスライスの軌道35(ナイフ44の半径方向外側面82と半径方向外ホルダ76により定まる)は、締め付けロッド78と衝突してしまう可能性が高い。第1の解決策としては、図12に示すように、締め付けロッド78の断面を半円形にすることである。これにより、締め付けロッド78の外形は、ナイフ44から送り出されるスライスの軌道35よりも、半径方向内側にくるよう十分に低くなる。図12のナイフ44は、インサート(挿入部)80に支持され、インサート80と内ホルダ74の間に維持されている。インサート80は、図らずも食品に混じってしばしばインペラアセンブリ40から供給されてしまう小石や破片等から、内ホルダの端部を保護する役割を果たす。
【0025】
ここまで述べてきたナイフ44とは対照的に、図13のナイフ44は、半径方向外側の面82にはベベルが形成されていない。本発明によれば、シングルベベルの刃先45は、図9〜図12に示されるダブルベベルのナイフ14、44よりも、鋭い切れ味を提供することができ、スライス作業中における食品の圧迫を軽減できる。しかしながら、図13に示すシングルベベルのナイフ44の場合、外側面82上にベベルがないため、図9〜図12に示すダブルベベルのナイフ14、44ほど、スライスされた食品をそらすことができない。締め付けロッド78との衝突を回避するため、図13の締め付けロッド78は、テーパ状の先端部84を有する、ほぼ直線的なバーの形状をしており、ナイフ44に近接する部分が、ナイフ44から送り出されるスライスの軌道35よりも、半径方向内側にくるようにな形状になっている。
【0026】
図14および図15は、締め付けロッド78による締め付け作用をより詳細に示している。図14および図15に示す実施形態は、図12のインサート80と図13のテーパ状の先端部84を有する締め付けロッド78とを組み合わせたものである。図14および図15から明らかなように、レバー77が、外ホルダ76の一端を締め付けロッド78に押しつけ、その一方で、締め付けロッド78が、外ホルダ76の反対側の一端を押して、ナイフ44を内ホルダ74に押しつけ、ホルダとナイフ44を係合させる。レバー77を時計回り(図15)に回転させ、レバー77のフラット面86が外ホルダ76に面するようにすると、締め付けロッド78と外ホルダ76との係合が解除され、ナイフ44は解放可能となる。
【0027】
ここまで、本発明の具体的な実施形態について説明してきたが、当業者であれば、その他の形態も採用できることは明らかである。たとえば、インペラアセンブリ40、切断ヘッド42、およびこれらの構成要素の物理的構造は、変更可能であるし、また、実施形態として示した以外の材料および製造工程を用いることも可能である。従って、本発明の範囲は、請求の範囲によってのみ、限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の切断ヘッドと、および該切断ヘッドの内部に同軸に配置され、該切断ヘッドの軸の周りを回転するインペラアセンブリとを備え、該インペラアセンブリが、該切断ヘッドに向けて半径方向外側に食品を移送させる手段を有している、食品切断装置であって、
該切断ヘッドは、該インペラアセンブリに向けて半径方向内側に、かつ、該インペラアセンブリの回転方向とは逆に伸長する1つ以上のナイフを備え、該ナイフは、半径方向内端部に刃先と、該刃先によって食品から切り離されたスライスが辿る軌道面を形成する半径方向外側面とを有しており、
該切断ヘッドは、該ナイフを該切断ヘッドに締め付ける手段を備え、該締付け手段は締付け部材を有し、該締付け部材によって、該ナイフを該切断ヘッドに固定するクランプ力が生み出され、該締付け部材は、該ナイフの半径方向外端部に隣接して、該ナイフと略並行に配置され、該切断ヘッドの半径方向における該締付け部材の厚みは、該ナイフの方向に向かうにつれ薄くなり、前記スライスが該ナイフの前記軌道面を移動する際に、該スライスが通過しうる空間を提供する、
食品切断装置。
【請求項2】
前記ナイフは、前記半径方向外側面の反対側に半径方向内側面を有し、前記刃先の該半径方向内側面にはベベルが形成され、前記刃先の該半径方向外側面にはベベルが形成されていない、請求項1に記載の食品切断装置。
【請求項3】
前記ナイフの前記半径方向外側面にはベベルが形成されていないにもかかわらず、前記ナイフの軌道面は、前記スライスと前記締付け部材とが衝突しないようになっている、請求項2に記載の食品切断装置。
【請求項4】
前記締付け手段は、前記ナイフの前記半径方向外側面と接触する外側保持部材と、該半径方向外側面の反対側に位置する該ナイフの前記半径方向内側面と接触する内側保持部材と、該内側保持部材に前記締付け部材を固定するための手段と、前記外側保持部材を強制して該ナイフの前記半径方向外側面と係合させ、前記内側および外側保持部材の間に該ナイフを締め付ける強制手段とをさらに備える、請求項1に記載の食品切断装置。
【請求項5】
前記強制手段が、前記外側保持部材の一端を前記締付け部材に押し付け、これにより反対側に位置する前記外側保持部材の他端が押されて、前記ナイフの前記半径方向外側面と係合し、該ナイフを前記内側保持部材に押し付けるようになっている、請求項4に記載の食品切断装置。
【請求項6】
前記締付け手段は、前記内側保持部材の半径方向内端部を形成する取外し可能なインサートをさらに備え、該取外し可能なインサートが、前記ナイフの刃先と隣接する前記半径方向内側面と接触するようになっている、請求項4に記載の食品切断装置。
【請求項7】
前記締付け部材によりクランプ力を発生させる際、前記締付け手段が、ポリマー材料を圧縮することのない、請求項1に記載の食品切断装置。
【請求項8】
前記締付け手段が、金属材料のみで構成される、請求項1に記載の食品切断装置。
【請求項9】
環状の切断ヘッドと、および該切断ヘッドの内部に同軸に配置され、該切断ヘッドの軸の周りを回転するインペラアセンブリとを備え、該インペラアセンブリは、該切断ヘッドに向けて半径方向外側に食品を移送させる手段を有している、食品切断装置であって、
該切断ヘッドは、該インペラアセンブリに向けて半径方向内側に、かつ、該インペラアセンブリの回転方向とは逆に伸長する1つ以上のナイフを有し、該ナイフは、半径方向内端部に刃先と、該刃先によって食品から切り離されたスライスが辿る軌道面を形成する半径方向外側面と、該半径方向外側面と反対に位置する半径方向内側面とを有し、該半径方向内側面の刃先にはベベルが形成され、該半径方向外側面の刃先にはベベルが形成されておらず、
該切断ヘッドは、該ナイフを該切断ヘッドに締め付ける手段を備え、該締付け手段の締付け部材によって、該ナイフを該切断ヘッドに固定するクランプ力が生み出され、該締付け部材は、該ナイフの半径方向外端部に隣接して、該ナイフと略並行に配置され、該切断ヘッドの半径方向における該締付け部材の厚みは、該ナイフの方向に向かうにつれ薄くなり、前記スライスが該ナイフの前記軌道面を移動する際に、該スライスが通過しうる空間を提供し、
該半径方向外側面にはベベルが形成されていないにもかかわらず、該ナイフの軌道面は、スライスと前記締付け部材とが衝突しないようになっている、
食品切断装置。
【請求項10】
前記締付け手段は、前記ナイフの前記半径方向外側面と接触する外側保持部材と、該半径方向外側面の反対側に位置する該ナイフの前記半径方向内側面と接触する内側保持部材と、該内側保持部材に前記締付け部材を固定するための手段と、前記外側保持部材を強制して該ナイフの前記半径方向外側面と係合させ、前記内側および外側保持部材の間にナイフを締め付ける強制手段とをさらに備える、請求項9に記載の食品切断装置。
【請求項11】
前記強制手段が、前記外側保持部材の一端を前記締付け部材に押し付け、これにより反対側に位置する前記外側保持部材の他端が押されて、前記ナイフの前記半径方向外側面と係合し、該ナイフを前記内側保持部材に押し付けるようになっている、請求項10に記載の切断装置。
【請求項12】
前記締付け手段は、前記内側保持部材の半径方向内端部を形成する取外し可能なインサートをさらに備え、該取外し可能なインサートが、前記ナイフの刃先と隣接する前記半径方向内側面と接触するようになっている、請求項10に記載の切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−172765(P2009−172765A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70497(P2009−70497)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【分割の表示】特願2009−506598(P2009−506598)の分割
【原出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(504444120)アーシェル ラボラトリーズ,インク. (5)
【出願人】(500208519)フリト−レイ ノース アメリカ インコーポレイテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】FRITO−LAY NORTH AMERICA,INC.