説明

食品加工機械、特に充填機または切断機に食品を充填する装置および方法

【課題】食品を受け入れた容器から食品加工機械へ食品を充填する際、安全に動作させることができ、アイドル時間および待機時間を最小にすることのできる充填装置および充填方法を提供する。
【解決手段】食品を受け入れる容器3と、容器を上方に駆動することのできる昇降手段2と、昇降手段の駆動装置と、容器3の中の食品の量を検出する測定手段を備えている。更に制御システム10を備え、駆動装置は測定手段の測定結果に基づいて駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品加工機械、特に充填機または切断機に充填する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品業界では、食品加工機械、例えば真空充填機または切断機に充填する目的に昇降手段が採用されている。これらの昇降手段は、通常、アーム型昇降手段(arm lifting means)またはポール型昇降手段(pole lifting means)として実施されており、機械(例えば真空充填機または切断機)に取り付けることができる、または独立したユニット(「スタンドアロンユニット」)として設計されている。これらの昇降手段は、部分的に標準化されている容器、例えばソーセージ肉用の移動台車(ローラーが設けられている)を受け入れるように設計されている。工程において、ソーセージ肉の台車は、一般には、昇降手段の収容ユニットまで運ばれて、落下しないようにしっかりとロックされ、昇降手段によって上方に、例えば真空充填機の供給ホッパーの上まで移動する。その位置で、ソーセージ肉台車の内容物が供給ホッパーの中に空けられる。次に、ソーセージ肉台車は昇降手段によって元の位置に戻され、オペレータが昇降手段におけるロックを解除することによって、再び取り外される。切断機の充填では、同様に切断機のボウルに充填される。
【0003】
この場合、アーム型昇降手段の上方移動は、傾け動作と重なり合う(superposed)ように設計することができる。このとき、昇降手段の上方移動(したがってソーセージ肉台車の移動)は、下方移動と同じように、意図せず作用する影響要因(例えば振動)を除いて、ほぼ一定の上昇速度または下降速度で行われる。
【0004】
ほとんどの場合、昇降手段は、油圧駆動装置を備えている。この場合、駆動装置(例えば油圧ポンプ)は、最大時に要求される上昇力(例えば3000Nより大きい)、すなわち最大充填負荷または最大許容負荷(例えば3000N)に対応する最大負荷よりも大きい力、が供給される高い出力で動作する。たとえソーセージ肉台車が半分しか満たされていない場合でも、この力が供給され、駆動装置は対応する高い出力で動作する。
【0005】
これらの食品機械では、安全性の理由、特に、下方に動くソーセージ肉台車の下に位置する人が、自動的な(したがって場合によっては制御されていない)下方移動によって負傷することを防止する目的で、ソーセージ肉台車の下降動作を制御することが要求される。この安全上の要件は、実際には、いわゆる「デッドマンコントロール」によって達成され、オペレータは、ソーセージ肉台車を下降させている間、ボタンを押し続けなければならず、ボタンを離すと下方移動はただちに停止する。
【0006】
しかしながら、公知の昇降手段は、本質的な欠点を有する。例えば、オペレータは、下方移動の間、ボタンを押し続けなければならず、したがって生産にかかわる作業を行うことができない。さらに、オペレータは、次のソーセージ肉台車を傾けて真空充填機に空ける前に、完全に満たされたソーセージ肉台車の内容物を、ソーセージ肉がホッパーの縁部からあふれることなく受け入れることができるように、必ずホッパーが十分に空であるようにしなければならない。これを確実にするため、通常では必要よりも長い時間待機する。以上のことから、不必要な待機時間が発生し、一連の動作が妨げられる。
【0007】
昇降動作を確実に行うため、昇降手段の最大の力(例えば3000Nより大きい)がつねにかかっているため、昇降手段の移動軌跡上に位置する人が負傷する危険性、または物体が損傷する危険性は、例えば半分だけ満たされたソーセージ肉台車では増大し、余剰出力(例:1500N)は高い危険性につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第1040758号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この状況を鑑み、本発明の目的は、食品加工機械の充填装置および充填方法であって、安全に動作させることができ、アイドル時間および待機時間を最小にすることのできる充填装置および充填方法、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、本発明によると、請求項1および請求項8の特徴によって達成される。
【0011】
本発明によると、本装置は、容器の中の食品の量を検出する測定手段を備えている。この場合、食品の量は、食品の質量または体積、あるいは対応する測定値を意味する。したがって、容器の中の食品の量は、自動的に求めることができる。食品の量を求めることによって、選択的な工程管理を実現することができ、アイドル時間および待機時間が減少する。充填動作を、食品の量に適合させることができる。特に、速度および駆動出力を最適に調整することができる。過充填をただちに検出することができる。
【0012】
特に、機械に投入した後、容器が完全に空になったかおよびいつ完全に空になったか、または容器の中に食品の残留物が依然として存在するかを、調べることができる。これは、測定値と既知の空重量とを比較することによる。この情報の評価に基づいて、さらなる方策を行うことができる。さらに、食品の量を求めることによって、対応する量の食品を受け入れるだけの十分な空間が例えば供給ホッパー側に確保されているかを判定することができ、食品があふれることが防止される。
【0013】
本装置は、検出された食品の量に応じて、昇降手段の駆動装置の出力が調整されるように設計されている制御システム、を備えており、これは特に有利である。したがって、制御システムは、測定値、または測定手段によって生成された信号に依存する、駆動装置のための制御信号、を生成する。すなわち、安全性に関連して余剰の昇降出力が供給されず、これは有利であり、したがって実際には半分しか満たされていない容器を持ち上げる場合、対応する食品に対して半分の出力のみが供給される。駆動装置は、食品の量が少ない場合にはそれに応じた低い出力で動作するため、相当なエネルギコストを節約することもできる。昇降手段の動作範囲内に位置する人の危険性と、昇降手段との衝突によって物体が損傷する危険性も、減少する。
【0014】
食品の量を検出するため、測定手段は、例えば食品の質量を求める。これを目的として、容器または容器の外側に(例えば容器の取付け部の領域に)、例えばスケール(重量センサ)を設けることができる。特に、負荷も求めることができ、なぜなら、容器の空重量と、例えばアーム型昇降手段の重量は一定であるためである。負荷の検出機能は、昇降手段、特に、昇降手段の駆動領域に組み込むことが有利であり、例えば、油圧システムにおける圧力センサによって、または昇降手段の電気駆動装置の電流計によって、実施することができる。これを目的として、油圧式昇降手段に、電気駆動装置を有する油圧ポンプが設けられていることが有利であり、電気駆動装置の出力を食品の量に応じて調整することができ、特に、昇降手段の速度をスロットル手段によって調整することができる。測定手段は、容器の位置決めセンサを備えていることもできる。
【0015】
本装置は、衝突を検出する装置を備えており、この衝突検出装置は、測定手段の測定値の変化、または設定値からの逸脱を検出し、測定値の変化または逸脱量に応じて、衝突が起きたかを判定し、衝突が起きた場合、特に、昇降手段を停止させる、もしくは、特定の距離だけ逆向きに駆動する、またはその両方を行い、これは有利である。測定手段は、衝突によって発生する力を検出できるように設計および配置されていることが好ましい。容器の下方駆動時に衝突が起きると、空の容器に対して検出される測定値が減少する。測定値の対応する変化を評価し、例えば、昇降手段の上方移動または下方移動中に測定値の変化が所定値よりも大きいと判定された場合、それは衝突として評価され、それに応じて対策を講じることができる。この衝突検出装置によって、昇降手段は、デッドマンコントロールなしに独立して下方駆動を行うことができる。容器の下方駆動時には空重量のみが下方に駆動されるため、満たされた容器と比較して駆動力も小さく、空の容器を下降させるのに必要な出力のみが供給され、したがって安全性が向上する。もはやデッドマンコントロールが必要ないため、アイドル時間および待機時間を本質的に最小にすることができる。
【0016】
食品加工機械の受入れ領域、特に供給ホッパーに、少なくとも1つのレベルセンサが設けられているならば、特に有利である。レベルセンサによって、供給ホッパーまたは受入れ領域内の食品の含有量を求めることができる。受入れ領域またはホッパーの全容量が既知であり制御システムに格納されているため、パラメータ「受入れ領域の現在の充填レベル」、「受入れ領域の全容量」、および「容器内の食品の量」を使用して、本装置が容器の内容物を受入れ領域に投入するべき理想的なタイミングを自動的に求めることができる。容器を持ち上げるのに必要な時間長も既知であるため、対応して早期に上昇動作を開始することができる。これによって、不必要な待機時間を排除することができる。さらに、重量のある満たされた容器が持ち上がった状態に不必要に長い時間にわたり保持されることがなく、作業場所における潜在的な危険性がさらに低減する。例えば、ソーセージ肉台車の内容物が供給ホッパーにちょうど入りきる状態に達するタイミングを、光学的、音響的、あるいは他の方法で、機械が示すことができ、あるいは、機械の制御システムが充填動作を自動的に開始し、したがって上昇移動もしくは内容物投入またはその両方を開始することができる。このため、求めた値に基づいて予測的に容器を上昇させることができ、受入れ領域またはホッパー内の充填レベルが、容器の内容物を収容できるレベルになった時点で、ただちに投入することができる。これに代えて、上昇移動を開始する最適なタイミングを求めることができる。
【0017】
さらに、本発明では、昇降手段の速度を変更することができるように、特に、特定の速度プロファイルを調整できるように、制御システムを設計することができる。例えば、速度を変化させながら容器を上昇および下降させることができる。製品ごとに特性が異なる(固体あるいは液状のソーセージ肉)ため、例えば、各製品の最適な傾け動作を、対応するメモリに格納しておくことができる。例えば、粘度の低い内容物がソーセージ肉台車から流れ出ることを防止するため、例えば、ソーセージ肉台車をゆっくりと持ち上げる(ゆるやかな開始)ことができる。その後、ソーセージ肉台車を最大速度まで加速し、傾ける直前に、例えば再び減速することができる。結果として、ソーセージ肉台車から内容物が流出することなく、充填動作を最適化することが可能になる。したがって、例えば粘度の低い製品の場合にも、容器を完全に満たすことができる。容器が空になった後、デッドマンコントロールあり、またはなしで、下方移動を手動または自動的に開始することができる。
【0018】
昇降手段を投入位置まで持ち上げるための時間長を格納しておくことができる。容器を空けることのできるタイミングは、供給ホッパー内で測定される充填レベルに応じて予測的に求めることができる。制御システムは、容器をできる限り早く空けることができるように、容器の上昇移動を開始するタイミングを求めることができ、特に、容器が投入位置になった時点でただちに空けることができるように、上昇移動の始動を予測的に開始することができる。
【0019】
これに代えて、所定のイベントまたはタイミングにおいて(例えば、ソーセージ肉台車の内容物が供給ホッパーにちょうど入りきるとき)、容器を上方に駆動して傾け動作を開始することができる。
【0020】
特に、内容物投入の後、測定手段は、容器が完全に空になったかを判定することができる。これを目的として、例えば、容器を空けた後、容器の重量を求めて既知の空重量と比較することができ、容器がまだ完全に空ではないと判定される(例えば、容器の重量が空重量よりも特定の量だけ依然として大きい)ときには、昇降手段の傾け動作を時間的に延長する、新たに傾け動作を開始する、容器を停止部(limit stop)に何度かぶつけることによって振とう動作(shaking motion)を行う、のうちの少なくとも1つを実行する。
【0021】
以下では、本発明について、図面を参照しながらさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による装置を示しており、アーム型昇降手段が降りた状態である。
【図2】図1に示した装置を示しており、アーム型昇降手段が途中まで上昇した状態である。
【図3】図1および図2に示した装置を示しており、アーム型昇降手段が投入位置にある。
【図4】油圧式の昇降手段を備えた本発明による装置を概略的に示している。
【図5】質量に対する駆動出力を示している。
【図6】時間に対する測定手段の測定値を示している。
【図7】本発明による、測定手段と、制御システムと、昇降手段の駆動装置と、を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜図3、および図4は、アーム型昇降手段によって食品加工機械に充填するための好ましい実施形態を示している。しかしながら、ポール型昇降手段も等しく適している。この実施形態においては、昇降手段2は、機械11(この場合には充填機)に結合されている。しかしながら、本装置は、独立したユニットとして設計することもできる。本装置は、切断機に充填する場合にも等しく適している。
【0024】
本装置は、食品(例えばソーセージ肉)を受け入れる容器3を備えている。この容器の容積は、例えば100〜1000リットルの範囲内である。この場合、容器3は、ローラー5が設けられた移動式台車として具体化されている。容器3は、落下しないようにしっかりロックされるように、昇降手段2の収容ユニット21(詳細には示していない)に固定されている。これは、容器を所定位置に、例えば収容ケージ(詳細には示していない)にロックすることによる。容器3が取付け部に配置されてロックされたかを検出するセンサを設けることができる。ソーセージ肉台車が確実にロックされたときにのみ、昇降手段2をさらに動作させることができる。
【0025】
特に図4から理解できるように、容器3は、アーム16に配置されている。容器3を空にするため、例えば、旋回機構(詳細には示していない)によって容器3をアーム16に対して軸線A2を中心に旋回させることができる。アーム16は、軸線A1を中心に旋回して上方移動および下方移動を行うように配置されている。この装置の動作時、上昇動作と旋回動作が重なり合うようにすることもできる。
【0026】
本装置は、駆動装置7をさらに備えている。この実施形態においては、昇降手段2は、油圧式昇降手段として具体化されており、油圧シリンダ15を備えており、油圧シリンダ15の動きによって、アーム16を対応する機構を介して上昇および下降させることができる。油圧式昇降手段は、周知の様式においては、電気駆動装置(この場合には駆動モータM)を有する油圧ポンプ7と、上方移動および下方移動を制御するための油圧バルブ18と、作動液の容器17(この場合にはオイルリザーバ)と、を備えている。油圧システムには圧力センサ12(その機能については後からさらに詳しく説明する)が設けられており、例えば、測定値を制御システム10に送信する。昇降手段2の駆動装置(この場合には油圧ポンプ7のモータ)は、制御システム10に接続されており、モータの出力が容器の含有量に応じて調整される。
【0027】
食品を加工する機械(この場合には充填機11)は、食品の受入れ領域(この場合には供給ホッパー4)を備えている。食品は供給ホッパー4の中に空けられてさらに加工される。
【0028】
本発明によると、本装置は、容器3の中の食品の量を検出する測定手段を備えている。
【0029】
食品の量は、いくつかの方法で検出することができる。
【0030】
1つの好ましい可能な方法は、負荷に対応する値を求めることのできる少なくとも1つのセンサ12を、昇降手段2の駆動領域に組み込むことである。空重量は一定であるため、実際の負荷は容器の含有量に依存する。
【0031】
1つの可能な方法は、油圧システムの圧力を測定する圧力センサ12を設けることである。これに代えて、またはこれに加えて、電気駆動装置(この場合には油圧ポンプ7のモータ)の電流を測定することができる。電気式の昇降手段の場合にも、電流の測定が適している。
【0032】
測定は、例えば、容器3が昇降手段2に固定およびロックされた状態で、動作センサ(図示していない)によって上昇が検出されるまでモータの出力を増大させていくことによって実施することができる。この場合、上昇力は本質的に負荷に等しく、対応する測定値S1を圧力センサ12によって検出する、またはモータMにおける対応する電流の強さ(特定の負荷あるいは容器3の中の食品の特定の量に対応する)を検出することができる。対応する信号S1は、特に図7において理解できるように、制御システム10に送られる。
【0033】
容器の内容物は、昇降手段2の駆動領域における圧力センサ12および電流計によって以下のように求めることもできる。スロットルバルブが所定の位置にある状態で、駆動装置の出力をゆっくりと増大させていく。これにより油圧システムの圧力が上昇する。この圧力をセンサ12によって測定する。油圧駆動装置によって発生する力が負荷に相当するならば、油圧シリンダが動くことができ、圧力は一定のままであり容器3の中の質量に対応する。測定値を制御システム10に送信することができる。測定を絶え間なく続けることができる。
【0034】
しかしながら、容器台車の内容物または負荷を、上述したように動的に求めるのではなく、静的に求めることも可能である。この場合、容器を高さhだけ持ち上げた後、例えば圧力センサまたは電流計によって負荷を求める。これは例えば次のように行う。
【0035】
モータMの出力を、所定の変化率でゆっくりと増大させる。容器3を、(容器3の最も低い位置から開始して)所定の高さ(例えば2〜5cm)に持ち上げる。高さhに達したかは、位置決めセンサ(図示していない)によって検出することができる。対応する測定値S1を、例えば圧力センサ12によって検出する。測定値S1は負荷または容器の内容物に比例し、制御システム10は、測定値S1を評価することにより、それに応じて昇降手段の出力を調整することができる。
【0036】
静的な測定においては、例えば上述したように、モータMの出力を所定の変化率でゆっくりと増大させ、所定の時間tの後に容器3が到達した高さを測定することも可能である。所定の時間tの後に達する高さは、負荷または容器の内容物に比例する。
【0037】
この場合にも、制御システムは、求めた測定値に対応する質量を、以前に格納した比較値(実測値または計算値)によって求めることができ、必要な場合、容器の内容物の密度に基づいて体積を求めることもできる。
【0038】
しかしながら、容器3における少なくとも1つのレベルセンサ14によって食品の量を求めることもできる。対応する値を制御システム10に送信することもできる。
【0039】
例えば重量センサ(例:スケール)を容器3または容器の取付け部21に配置することも可能である。この場合も、対応する値を制御システム10に送信することができる。
【0040】
したがって、制御システム10は、図7から理解できるように、測定手段の信号S1を検出し、この信号S1は、容器3の中の充填量に依存する。制御システム10は、信号S1に依存する制御信号S2を、昇降手段2の駆動装置7に送信する。すなわち、駆動装置7の出力が、検出された食品の量に応じて制御される。特に図5から理解できるように、駆動装置7の出力は、容器3の中の食品の質量mが大きいほど高い。
【0041】
この場合、駆動装置の出力は、負荷よりもわずかに大きい(例:20〜100N)上昇力が供給されるように設計されており、したがって、容器3を高い信頼性で上昇および下降させることが可能である。
【0042】
すなわち、昇降手段2の駆動出力を、自動的に負荷に適合させることができ、したがって従来技術とは異なり、昇降手段をつねに全出力で動作させる必要がない。これによる利点として、安全性に関連して余剰の上昇出力が供給されることがない。すなわち、容器が実際には半分だけ満たされている場合、出力の1/2のみが供給される。これによって、昇降手段2の動作範囲内に位置している人の危険性が低減する。
【0043】
ポール型昇降手段では、負荷は本質的に一定であるが、アーム型昇降手段では、印加される上昇力はアームレバーの作用に起因して変化する。例えば静的に求められた測定値S1から開始して、所定のプロファイルに対応して、好ましくは油圧および速度の一定の測定値によって、容器3またはアーム6の各位置において上昇力を適合させることができる。すなわち、上昇中、出力または上昇力が変化する。さらに、容器の中の食品の量に応じて、出力プロファイルを適合化する。しかしながら、アーム型昇降手段において、上昇時に、最大に要求される負荷よりもいくらか(20〜100N)大きい一定の出力として調整することも可能である。
【0044】
本装置は、好ましくは制御システム10に組み込まれている衝突検出装置を備えており、これは有利である。衝突検出装置は、昇降手段の上方駆動および下方駆動時に、食品の量(この場合には質量)または負荷を検出するための測定値S1を絶え間なく検出する。この場合、昇降手段の昇降動作時、負荷を動的に測定することが有利である。この動的な測定は、例えば、センサ12によって圧力を測定することによる、または、容器の外側に配置されている測定手段によって、容器に作用する力を検出することによる。したがって、上昇および下降時の測定は、例えば、収容手段21における重量センサによって、または電気駆動装置における電流の流れを監視することによっても、行うことができる。
【0045】
例えば、昇降手段2の下降時、容器3が人または物体に衝突すると、負荷とは反対の力が作用し、したがって、空の容器の測定値S1が変化する。特に図6から理解できるように、衝突検出装置20によって、対応する変化ΔS1を検出する。これを目的として、比較器を設けることができ、この比較器は、一例として、以下のように測定値の比較を行う。測定値の変動ΔS1または測定値の曲線の傾きが、所定の値を超えている場合、衝突検出装置は、衝突が起きたものと判定する。この場合、制御システム10によって、昇降手段2をただちに遮断する、もしくは逆向きに駆動する、またはその両方を行うことができ、オプションとして、対応する警告信号を発する。衝突検出装置20は、上方移動および下方移動中に衝突を判定するが、容器3を空けるときには、変動ΔS1が投入によるものであるため衝突として判定しない。
【0046】
例えば、測定値の動的な検出を行わずに、昇降手段の出力または出力プロファイルを静的な測定に対応して求める場合、上述したように、圧力センサ12によって、またはモータMにおける電流の対応する強さを検出することによって、さらに測定値Sを求めることができる。この場合、測定値は、特定の設定値(一定の出力または所定の出力プロファイルに対応する)に一致していなければならない。上述したように、所定の設定値からの測定値の変動ΔS1が生じた場合、衝突が起きたものと判定される。
【0047】
昇降手段2の駆動出力が容器3の中の食品の内容物に依存する、すなわち従来技術と比較して低減した力が供給されることと、衝突が検出されることとによって、デッドマンコントロールが必要なく、自動的な工程が可能になる。したがって、アイドル時間および待機時間を実質に最小にすることができる。
【0048】
受入れ領域(すなわちホッパー4)に少なくとも1つのレベルセンサがさらに設けられているならば、特に有利である。このレベルセンサによって、ホッパーにおける現在の充填レベルを検出することができる。ホッパー内の食品の充填レベルを求めるための少なくとも1つのレベルセンサ13が、受入れ領域4または供給ホッパーに設けられていることが有利である。受入れ領域または供給ホッパー4の全容量は既知であり、制御システムに格納されている。したがって、容器3からの製品のための十分な空間が受入れ領域4に存在するかを判定することができる。パラメータ「受入れ領域4の現在の充填レベル」、「受入れ領域4の全容量」、および「容器3内の食品の量」を使用して、特に、対応する容量と、容器3を空ける、または昇降手段の上昇移動を開始するべき理想的なタイミングとを、自動的に求めることができる。容器3の中の食品の体積は、レベルセンサによって検出する、または、測定手段によって求められる質量および対応する密度から制御システムによって計算することができる。
− 密度は、機械の制御システムにおけるプログラムメモリに格納されている値から、または現在の製造の測定値から、求めることができる。例えば、食材の現在の流量または総流量、あるいは所定の時間間隔内に加工される流量を、機械の送り機構によって(例えばリットル単位で)検出することができる。さらに、ホッパーにおける充填レベルをレベルセンサによって求める。供給ホッパーに投入される製品の総重量が既知である。
− 密度は、外部で測定して制御システムに入力することもできる。
− 密度を測定し、例えば容器に取り付けられたRFIDタグによって自動的に制御システムに送信することもできる。
− ソーセージ肉台車の内容物の体積および質量によって密度を求めることもできる。これを目的として、追加のレベルセンサ14が有利である。あるいは、例えば特許文献1に記載されているように、ソーセージ肉における空気含有量のインライン測定によって、密度を求めることもできる。
【0049】
昇降手段がソーセージ肉台車をホッパーに投入するべき理想的なタイミングを求めることができることによって、不必要な待機時間を排除することができる。例えば、ソーセージ肉台車の内容物が供給ホッパーにちょうど入りきる状態となるタイミングを、光学的、音響的、あるいは他の方法で、機械によって示すことができ、あるいは、機械の制御システムが、充填動作(したがって昇降手段の始動)を自動的に開始することができる。
【0050】
したがって、予測的に容器を上昇させることができ、供給ホッパー内の充填レベルが、内容物を収容できるレベルになった時点でただちに投入することができる。これに代えて、昇降手段を始動する最適なタイミングを求めることもできる。
【0051】
変化する上昇速度もしくは下降速度またはその両方を制御システムに格納しておくことも可能であり、したがって、アイドル時間および待機時間をさらに短縮することができる。昇降手段は、可変速度による半自動型または全自動型とすることができる。例えば、容器は、特定の動作プロファイルまたは速度プロファイルに従うことができる。これらのプロファイルは、例えば制御システム(例えば、機械に組み込まれている主制御システムまたは外部の制御システム)に格納しておくことができる。速度は、スロットルバルブ9aおよびスロットルバルブ9bの少なくとも一方を調整することによって、もしくは、モータ速度によって、またはその両方によって、制御される。製品ごとに特性が異なる(固体あるいは液状のソーセージ肉)ため、各製品の最適な傾け動作を、例えば製品データメモリに格納しておくことができる。
【0052】
例えば、粘度の低い内容物がソーセージ肉台車から流れ出ることを防止するため、例えば、ソーセージ肉台車をゆっくりと持ち上げる(ゆるやかな開始)ことができる。次に、ソーセージ肉台車を最大速度まで加速し、傾ける直前に、例えば再び減速することができる。結果として、ソーセージ肉台車から内容物がこぼれることなく、充填動作を最適化することが可能になる。したがって、ソーセージ肉台車を例えば液状製品によって完全に満たすことができる。
【0053】
さらに、食品を受入れ領域4に空ける前および後に食品の量を求めることによって、真空充填機に供給される全量を求めることができる。したがって、対応する真空充填機における例えば1日あたりの総生産量、あるいは特定の種類のソーセージの全ロット量を、求めることができる。これに代えて、またはこれに加えて、食材(特にソーセージ肉)の供給を、(例えば中央制御室のホストシステムによって)以下のパラメータを評価することによって、制御することができる。
− 充填機の現在の処理能力(リットル/分)
− 受入れ領域4の現在の充填レベル
− 容器の現在の含有量
したがって、例えば以下のメッセージを出力することができる。
− ライン1:ソーセージ肉の不足のため14分後に生産が停止します
− ライン2:ソーセージ肉の不足のため4分後に生産が停止します
【0054】
以下では、本発明による方法について、充填機に関連して図1〜図4を参照しながらさらに詳しく説明する。しかしながら、この方法は、別の食品加工機械と組み合わせることも可能である。
【0055】
オペレータまたは他の作業者は、満たされた容器3(特にソーセージ肉台車)を真空充填機11まで搬送し、容器3を昇降手段2の収容ケージ21にしっかりとロックする。取付け部に台車が存在しているか、および台車がロックされているかを(図1を参照)、センサによって識別することが有利である。
【0056】
台車が存在してロックされている場合、測定手段12が、容器の中の食品の量または対応する値を検出し、対応する信号S1を制御システム10に送信する。過充填(例えば、ソーセージ肉台車に許容量を超えて充填することによる)を、検出することができる。信号S1に基づいて、制御システム10は、容器を持ち上げるように(図2を参照)昇降手段2の駆動装置を作動させるための制御信号S2を生成する。供給ホッパー4の内容物をレベルセンサ13によって求める。上述したように、食品の量を検出する測定手段12,14によって、容器3の中の食品の体積を求める、または計算する。次に、制御システムは、昇降手段2がソーセージ肉台車の内容物をホッパー4に投入するべき理想的なタイミングを、自動的に求める。これによって、不必要な待機時間を排除することができる。例えば、ソーセージ肉台車の内容物が供給ホッパーにちょうど入りきる状態に達するタイミングを、光学的、音響的、あるいは他の方法で、機械が示すことができる。機械を自動制御する場合、制御システムは、充填動作(したがって昇降手段の始動)を自動的に開始し、容器3の内容物を正しいタイミングで自動的にホッパー4に注入する。
【0057】
昇降手段が動く速度は、スロットルバルブ9aおよびスロットルバルブ9bの少なくとも一方によって調整することができる。制御システムのメモリに格納されている特定の速度プロファイルを選択することもできる。上方移動および下方移動中、衝突検出装置は、測定手段(特に、昇降手段の駆動領域におけるセンサ、または例えば取付け部21の領域における重量センサ)の測定値S1を、絶え間なく検出する。容器3の下方移動中に衝突が起きると、重量とは反対の力が発生するため測定値が変化する。特に、例えば油圧システムにおいてセンサ12によって測定される圧力が変化する。重量センサの測定値も変化する。変化した測定値が所定の量を超えている場合、機械を自動的に停止する、または昇降手段を逆向きに駆動する。上方移動中に衝突が起きた場合にも、負荷以外の別の力が下向きに作用するため、対応して測定値が変化し、したがって、そのような測定値の変化によって同様に衝突が検出される。この場合も、昇降手段2を例えば停止させる。予測しない負荷条件が起きた場合、デッドマンコントロールによってのみ容器3の移動を実行できるように、昇降手段2を設計することもできる。
【0058】
容器を傾けて内容物をホッパー4に空けた後(図3)、完全に空になったか、または容器の中に依然として残留物が存在するかを、傾けた後に求めた容器重量と、制御システム10のメモリに格納されている既知の空重量とを比較することによって、確認することができる。この確認は、例えば上述したように重量センサによって行う、あるいは圧力センサ12の測定値の変化ΔS1を単純に求めることによって、行うことができる。この情報の評価に基づいて、さらなる方策を行うことができる。すなわち、昇降手段の傾け動作を延長する、傾け動作をもう一度行う、または台車を停止部に何度かぶつける(振とう動作)ことができる。
【0059】
容器が完全に空になった後、昇降手段によって容器を下げ、ロックを解除して装置から取り外す。次の容器3を装置に配置することができる。
【0060】
本発明による方法では、機械のオペレータは、自動的または半自動の運転手順によって管理責務が軽減されるため、中断することなく製造を行うことができる。さらなる自動化としては、ソーセージ肉台車を下げた後、台車のロックを自動的に解除することもできる。静的な測定においては、衝突の監視のため、測定手段、例えば圧力センサ12によって絶え間なく圧力を測定し、例えば、食品の量に依存する出力に対応する圧力設定値と比較し、例えば衝突を検出する、または容器が完全に空になったかを判定する目的で、測定値の対応する変化を検出する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品加工機械(11)、特に充填機または切断機に、食品を充填する装置であって、
前記食品を受け入れる容器(3)と、
前記容器(3)を上方に駆動することのできる昇降手段(2)と、
前記昇降手段(2)の駆動装置(7)と、
を備えている、装置において、
前記容器(3)の中の食品の量を検出する測定手段(12,14)、
を特徴とする、装置。
【請求項2】
前記駆動装置(7)の出力が、検出された食品の前記量に応じて調整される、ように設計されている制御システム(10)、
を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記測定手段(12,14)が、前記食品の質量または対応する値、特に、負荷または充填レベル、を検出し、前記測定手段(12,14)が、特に、重量センサ、圧力センサ(12)、電気駆動装置の電流計、レベルセンサ(14)、前記容器(3)の位置決めセンサ、のうちの少なくとも1つ、を備えている、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記昇降手段(2)が油圧式昇降手段を備えており、前記駆動装置(7)が油圧ポンプであり、前記油圧ポンプの流量を食品の前記量に応じて調整することができ、特に、前記昇降手段(2)の速度をスロットル手段(9)によって調整することができる、
ことを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
衝突検出装置(20)を備えており、前記衝突検出装置(20)が、前記測定手段の測定値の変化ΔS1、または、設定値からの測定値の逸脱量ΔS1、を検出し、前記測定値の前記変化または前記逸脱量ΔS1に応じて、衝突が起きたかを判定し、衝突の場合、特に、前記昇降手段を停止させる、もしくは、前記昇降手段を特定の距離だけ逆向きに駆動する、またはその両方を行う、
ことを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記食品加工機械(11)の受入れ領域(4)、特に、供給ホッパー(4)が、少なくとも1つのレベルセンサ(13)を備えている、
ことを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記制御システム(10)が、
前記受入れ領域(4)における充填レベルと、検出された食品の前記量とに応じて、前記容器(3)を空けるタイミングを求めることができるように、設計されている、
ことを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記制御システム(10)が、
前記昇降手段(2)の速度を変化させることができ、特に、特定の移動速度プロファイルを、調整することができ、特に、メモリに格納することができる、ように設計されている、
ことを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
食品加工機械(11)、特に充填機または切断機に、食品を充填する方法であって、満たされた容器(3)が昇降手段(2)によって上方に駆動されて空けられる、
方法において、
前記容器(3)の中の食品の量が検出される、
ことを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記昇降手段(2)の駆動装置(7)の出力が、検出された前記食品の前記量に応じて変更される、
ことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記食品の質量または対応する値、特に、負荷もしくは前記容器(3)内の充填レベルまたはその両方、が検出される、
ことを特徴とする、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
測定手段(2)の測定値の変化ΔS1、または、設定値からの測定値の逸脱量ΔS1、が検出され、前記測定値の前記変化または前記逸脱量ΔS1に応じて、衝突が起きたかが判定され、衝突と判定された場合、前記昇降手段が停止する、もしくは、前記昇降手段が特定の距離だけ逆向きに駆動される、またはその両方が行われる、
ことを特徴とする、請求項9から請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記食品加工機械(11)の受入れ領域(4)、特に、供給ホッパー(4)において、充填レベルが求められ、前記受入れ領域における前記充填レベルと、検出された食品の前記量とに応じて、ソーセージ肉台車を空けるタイミングが求められる、
ことを特徴とする、請求項9から請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記容器(3)が、変化する速度で上昇および下降し、特に、所定の移動速度プロファイルに従う、
もしくは、
前記容器が、変化する出力で上昇および下降し、特に、特定の出力プロファイルに従う、
またはその両方である、
ことを特徴とする、請求項9から請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記昇降手段を投入位置まで上方に駆動するための時間長が格納され、
前記容器(3)をできる限り早く空けることができるように、前記容器(3)の上昇移動の開始のタイミングが、制御システムによって求められ、特に、前記容器が前記投入位置になった時点で空けることができるように、前記上昇移動の始動が、前記制御システムによって予測的に開始される、
ことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記容器(3)を空けた後、前記測定手段が、前記容器が完全に空になったかを判定し、前記容器が完全には空になっていないと判定された場合、前記昇降手段の前記傾け動作を時間的に延長する、新たに傾け動作を開始する、容器を停止部に何度かぶつけることによって振とう動作を行う、のうちの少なくとも1つを実行する、
ことを特徴とする、請求項8から請求項15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記容器が完全に空になった後、前記容器(3)の下方移動が、前記制御システム(10)によって自動的に開始される、または、デッドマンコントロールあり、またはなしでオペレータによって開始され、
特に、前記下方移動の出力が、上方移動における出力よりも小さいかまたは等しい、
ことを特徴とする、請求項8から請求項15のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−165742(P2012−165742A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−16426(P2012−16426)
【出願日】平成24年1月30日(2012.1.30)
【出願人】(503209940)アルベルト ハントマン マシネンファブリク ゲーエムベーハー ウント ツェーオー.カーゲー (18)
【Fターム(参考)】