説明

食品包装用フィルムおよびこれを用いた電子レンジ加熱用包装袋

【課題】
食品を充填した包装袋を加熱した際、内容物の水蒸気や膨張したガスを外部に放出することができる食品包装用フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、少なくとも樹脂フィルムAと樹脂フィルムBとが積層された積層フィルムであり、樹脂フィルムAが面上に切断部を有することを特徴とする食品包装用フィルムと、これを用いた電子レンジ加熱用包装袋である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装用フィルムおよびこれを用いた電子レンジ加熱用包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍食品やチルド食品を包装袋に充填し密封した包装体を電子レンジで加熱調理する場合、密封された包装体内における内圧の上昇に伴い、包装体が膨張し、破裂してしまうおそれがある。このような包装体の破裂を防ぐため、従来より、加熱前に包装体を予め開封したり、包装袋を製造する際に蒸気抜き用の穴や弁などを設ける等、加熱により膨張したガスを包装体外に放出する手段が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ラミネートフィルムを構成する合成樹脂層間に非接着部分を設け、容器内部空間と隣接する合成樹脂層に切込みを入れて連通口を設け、容器外に隣接する合成樹脂層に開口周縁部分を設けることにより、容器内部空間と容器外との連通路を構成するラミネートフィルムについて記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、合成樹脂製延伸フィルムの所要箇所に低融点のヒートシール剤または剥離剤を塗布し、前記合成樹脂製延伸フィルム上にその箇所を通過する切断線を刻設し、さらに前記合成樹脂製延伸フィルムにヒートシール性をもつ合成樹脂製未延伸フィルムを貼りあわせた積層フィルムについて記載されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、易開封性シール部を有する包装体について記載されており、所定幅のヒートシールにより合掌状に接合した合掌接合部と底部に自立手段を設けた包装体において、加熱による内部圧力の上昇に伴って上部に位置する前記合掌接合部が逃圧を行なうことが記載されている。
【特許文献1】特開平8−85580号公報
【特許文献2】国際公開01/081201号パンフレット
【特許文献3】特開2000−185777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、包装体を加熱した場合、内容物の水蒸気や膨張したガスを外部に放出することができる食品包装用フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明は、少なくとも樹脂フィルムAと樹脂フィルムBとが積層された積層フィルムであり、樹脂フィルムAが面上に切断部を有することを特徴とする食品包装用フィルムに関する。
【0008】
さらに1つの態様として本発明は、前記樹脂フィルムAが延伸フィルムであり、かつ樹脂フィルムBが熱融着性を有するフィルムである食品包装用フィルムに関する。
【0009】
また、本発明は、前記の食品包装用フィルムを用いて形成される電子レンジ加熱用包装袋に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の食品包装用フィルムを使用した包装体を加熱すると、前記食品包装用フィルムが切断部領域において伸張して破断し、フィルム面に小穴を形成する。形成された小穴から、包装体における内容物の水蒸気や膨張したガスが外部へ放出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の食品包装用フィルムは、少なくとも樹脂フィルムAおよび樹脂フィルムBが積層された積層フィルムであり、前記樹脂フィルムAが面上に切断部を有するフィルムである。
【0013】
本発明の食品包装用フィルムは、電子レンジ加熱や湯煎などの加熱用の食品包装材料として使用することができ、具体的には、トレーやカップ等に使用される蓋や、包装用の袋として使用される。
【0014】
本発明における食品包装用フィルムは、樹脂フィルムA面上の切断部と同切断部に重なる部分の樹脂フィルムBとを含む切断部領域を有する。なお、前記切断部については樹脂フィルムAに関する記載にて後述する。
【0015】
本発明の食品包装用フィルムを構成する前記積層フィルムにおいて、前記切断部領域は他の領域に比べてフィルム厚が薄く破断強度が小さい。したがって、前記食品包装用フィルムを例えば上述の食品包装用の袋に使用してこれを加熱した場合、前記袋の内圧の上昇に伴い生じる応力が食品包装用フィルムの切断部領域に集中して、その結果、切断部領域で破断して食品包装用フィルムに小穴が生じる。本発明において破断強度とは、フィルムを破断するのに要する応力であり、破断強度が小さいフィルムほど破断しやすい。
【0016】
図1は、本発明における例示的な食品包装用フィルムの断面図である。図1において、食品包装用フィルム1は、樹脂フィルムA 1aと樹脂フィルムB 1bとからなり、接着層Rにより2層のフィルム1a、1bは密着している。また、図1には樹脂フィルムA 1aの切断部2と、切断部2と重なる部分の樹脂フィルムB 1bとを有する切断部領域2´が示されている。ここにおいて接着層Rは概念的な接着部位であり、単なる接着部位であっても、接着剤塗布部位であってもよく、その接着手段は限定されない。
【0017】
ところで食品包装用フィルムを構成する積層フィルムは、一般に、気密性、耐熱性、遮光性等の1または複数の機能を有するフィルムを複数組み合わせて積層し形成される。本発明における積層フィルムにおいても、樹脂フィルムAおよび樹脂フィルムB以外の他の機能を有するフィルムを有してよい。例えば本発明における積層フィルムは、バリア性を有するアルミナやシリカ等を用いた透明蒸着フィルムを積層してもよい。バリア性を有するフィルムとしてアルミ蒸着フィルムやアルミ箔フィルム等は、電子レンジによる加熱の場合、火花を発生させるおそれがある。
【0018】
本発明における樹脂フィルムAは、面上に切断部を有するフィルムである。
【0019】
前記樹脂フィルムAは、耐熱性、気密性を有し、さらに応力に対し変形しないフィルムであることが好ましく、そのような樹脂として例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド等が挙げられる。さらに、高い破断強度を有する点で、前記樹脂フィルムAは二軸延伸フィルムであることが好ましい。したがって、好ましい本発明における樹脂フィルムAとして、例えば、二軸延伸ナイロン(ON)、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)等が挙げられるが、特に汎用性の点で、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ナイロン(NY)が好ましい。
【0020】
前記樹脂フィルムAにおける面上とは、フィルム表面の任意の領域を意味する。また、前記樹脂フィルムAにおいて切断部は、樹脂フィルムA面に垂直方向に貫通、または非貫通の、任意の手段で施された切断部分であり、非貫通の切断部は、例えばその断面がV字状や凹状等の溝形状であってよい。また、切断部は、樹脂フィルムA面で実線、破線(点線を含む)等の任意の線状に連続するものであってよい。
【0021】
本発明において樹脂フィルムBは、樹脂フィルムAと積層されるフィルムであり、切断部を有さないフィルムである。
【0022】
前記樹脂フィルムBは、応力の集中する切断部領域で破断する程度の強度を有する樹脂であればよいが、特に包装用フィルムとして使用される観点から、ヒートシール機能を有するものとして熱融着性を有するフィルムであることが好ましい。本発明における熱融着性とは、同じまたは異なる樹脂のフィルムを熱接着させるのに適した特性を意味する。したがって熱融着性を有する樹脂フィルムBの樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や低密度ポリエチレン(LDPE)などのポリエチレンやポリプロピレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)等が挙げられる。また、樹脂フィルムBは、応力により伸張しやすいフィルムであることが好ましく、例えば未延伸フィルムであることが好ましいが、これに限定されない。
【0023】
本発明の食品包装用フィルムを構成する積層フィルムは、上述した樹脂フィルムAと樹脂フィルムBとが互いに異なる特性を有するフィルムを組み合わせたものであることがより好ましい。前記特性は、切断部領域で小穴を生じるためのより好ましい特性であり、樹脂フィルムAと樹脂フィルムBの、延伸などによって生じるフィルムの破断強度や、耐熱性等に基づく特性の差、またはこれらを組み合わせて生じる特性の差等が挙げられる。具体的には樹脂フィルムAには延伸により得られる耐熱性と高い破断強度、樹脂フィルムBにはヒートシール性と内圧により破断し得る低い破断強度が挙げられる。本発明の食品包装用フィルムにおいては、特に、前記異なる特性を有するフィルムの組み合わせとして、樹脂フィルムAが延伸フィルムであり、かつ樹脂フィルムBが熱融着性を有するフィルムであることが好ましい。また、本発明の食品包装用フィルムは、これを用いた包装袋をボイル殺菌する場合においては、95℃前後の加熱により破断やラミネート剥離を生じないものであることが好ましく、例えば樹脂フィルムAとしてナイロン等のポリアミドを用いた二軸延伸フィルムと、樹脂フィルムBとしてポリエチレンフィルムとを組み合わせた積層フィルム等挙げられる。ここにおいて本発明の食品包装用フィルムを構成する積層フィルムは、切断部領域にて破断する組み合わせであればよく、樹脂フィルムAと樹脂フィルムBとが互いに異なる特性を有するフィルムを組み合わせたものに限定されない。
【0024】
本発明の食品包装用フィルムを構成する積層フィルムは、一般に使用されるラミネート加工方法により樹脂フィルムAおよび樹脂フィルムBとを積層、密着させることができ、具体的な方法としてドライラミネート、押し出しラミネート、ヒートラミネート等が挙げられる。特にドライラミネートおよび押し出しラミネートは、本発明における樹脂フィルムAと樹脂フィルムBとを剥離することなく完全に密着させることができる。したがって、本発明の食品包装用フィルムの加工方法としてドライラミネートまたは押し出しラミネートを用いることが好ましい。なお、ドライラミネートおよび押し出しラミネートにおける各積層条件は、従来方法に基づくものであってよく、ドライラミネートに使用する接着剤としては二液反応型または一液反応型ポリウレタン系の接着剤、押し出しラミネートに使用される接着剤としてはポリエチレンイミン、アルキルチタネート、ポリウレタン系プライマー等が挙げられる。
【0025】
図2は、樹脂フィルムAと樹脂フィルムBとを積層してなる食品包装用フィルムの製造方法の例示的な説明図を示す。図2において、スリット刃Qにより点線状の切断部が施された樹脂フィルムA 1aと、接着剤(図2には掲載なし)を塗布し乾燥させた樹脂フィルムB 1bとを積層させ、ロールSにて加熱および圧着させて、食品包装用フィルム1を得ることができる。
【0026】
本発明において樹脂フィルムA 1aに切断部を施す方法は特に限定されず、図2に例示する方法の他に、例えば、完全に裁断された2枚の樹脂フィルムを樹脂フィルムB上に並列して積層する方法や、切断部を有さないフィルムを用いて積層した後に積層したフィルムの1面に切断部を施す方法等挙げられる。また、切断部を施す手段は、スリット刃、レーザー光、ルレット等の任意の手段であってよい。
【0027】
本発明における少なくとも樹脂フィルムAと樹脂フィルムBとが積層された食品包装用フィルムの切断部領域での厚さは、20〜100μmの範囲であり、より好ましくは30〜60μmである。ここにおいて切断部領域での厚さは、樹脂フィルムAの切断部が非貫通の場合、樹脂フィルムAの切断部における切断されていない部分の厚さを含むこととなる。この場合は、切断部領域における応力の集中により、樹脂フィルムAと樹脂フィルムBとが破断する。また、本発明の食品包装用フィルムの切断部領域以外での厚さは、40〜120μmの範囲であり、より好ましくは50〜80μmであることが好ましい。
【0028】
以上詳述した本発明の食品包装用フィルムは、これを使用した包装袋を加熱した際、前記食品包装用フィルムに生じた小穴から包装袋における内容物の水蒸気や膨張したガスが外部へ放出することができるフィルムである。また、本発明の食品包装用フィルムの実施形態において、ガス抜き手段である切断部をフィルム加工工程において簡便に設けることができる。さらに、本発明の食品包装用フィルムは、ガス抜き手段として剥離剤等を使用しない点から、切断部領域周辺において食品包装用フィルムを構成するフィルム同士の接着強度が低下することなく維持されるので、流通経路またはボイル殺菌等により切断部領域周辺からラミネート剥離を生じる恐れがなく、また、食品と剥離剤とが接することがないので食品衛生上の利点をも有するものである。
【0029】
本発明の電子レンジ加熱用包装袋は、本発明の食品包装用フィルムを用いて形成される。
【0030】
また、本発明の電子レンジ加熱用包装袋の形状は、特に限定されず、合掌平袋、三方平袋、自立袋、ウイングシール袋等が挙げられる。
【0031】
また、本発明の電子レンジ加熱用包装袋における切断部の位置は、特に限定されない。
【0032】
本発明の電子レンジ加熱用包装袋は、1または複数枚の前記食品包装用フィルムにおける樹脂フィルムB同士を重ねてヒートシールすることにより作製することができる。本発明の食品包装用フィルムにおける熱融着性を有する樹脂フィルムBは、本発明の電子レンジ加熱用包装袋の内面にあることが好ましく、接合された樹脂フィルムB同士がヒートシールされることにより融着する。本発明の食品包装用フィルムを三方シール、合掌シール、ウイングシール等の形態でヒートシールすることにより、上述の包装袋形状を形成することができる。
【0033】
また、本発明の電子レンジ加熱用包装袋において、加熱による前記包装袋の変形を抑えるという観点から、樹脂フィルムAが、前記包装袋の外面に位置することが好ましい。
【0034】
本発明の電子レンジ加熱用包装袋について、図3〜図10の例示図により説明する。
【0035】
図3は、内容物が充填され四方が完全にシールされた三方平袋5であり、電子レンジ加熱で膨張した状態を示している。切断部2において、食品包装用フィルム1が破断し小穴11が形成され水蒸気や膨張したガスが放出される。
【0036】
図4は、図3で示す三方平袋5の例示的な製袋工程を示す。この三方平袋5は、食品包装用フィルム1を折り曲げ、その折り曲げ部分と、同折り曲げ部分の両端と係合する2開放端との3辺をヒートシールすることにより作製され、食品包装用フィルム1からなる2壁部4(4a、4b)に、ヒートシール部3、開放端T、および壁部4a上の切断部2を有する。壁部4aにおいて、樹脂フィルムA(図1におけるフィルム1a)は、三方平袋5の外面に位置する。内容物をシールされていない開放端Tより充填し、開放端Tをヒートシールすることにより、三方平袋5が完全に密封される。
【0037】
また、図5(a)〜(c)はヒートシール部3の例示的な形状としてのヒートシール部3a〜cを示している。
【0038】
図6は、内容物が充填され密封された合掌平袋7であり、電子レンジ加熱で膨張した状態を示している。食品包装用フィルムは切断部領域2´で破断し小穴11を形成する。
【0039】
図7は、図6で示す合掌平袋7の例示的な製袋工程を示す。この合掌平袋7は、食品包装用フィルム1の上下または左右いずれかの両端を合掌形に接合しヒートシールすることにより筒状とした後、残る開放端の一方をヒートシールすることにより作製され、背シール部6a、底シール部6b、開放端T、および切断部2を有する。内容物をシールされていない開放端Tより充填し、開放端Tをヒートシールすることにより、合掌平袋7が完全に密封される。
【0040】
図8(a)および(b)は、切断部2の位置が異なる例示的な合掌平袋7(7a、7b)を示している。(a)は、切断部を底シール部6bの中心から垂直方向に、また背シール部6a(図8に記載なし)の長手方向に平行に施した合掌平袋7aである。また(b)は、合掌平袋7aにおける切断部2(2a)の配置が異なる切断部2bを有する合掌平袋7bである。切断部2bは、底シール部6bの中心から長さL離れた位置に配置されている。
【0041】
図9は、例示的なウイング付き平袋10とその製袋工程を示す。図9に示すように食品包装用フィルム1の上下または左右いずれかの両端を合掌形に接合しヒートシールすることにより筒状とした後、ヒートシールされた合掌形の接合部をウイングシール部9とする。また、残る2つの開放端および前記開放端と係合する2つの折り曲げ部分のうち一方をヒートシール部8とし、他方の折り曲げ部分を切り取り(切り取り線U)、開放端Tとすることにより、ウイングシール部9に破線の破断部2が施されたウイング付きの平袋10を形成する。内容物を前記開放端Tより充填し、開放端Tをヒートシールすることにより、ウイング付き平袋10が完全に密封される。
【0042】
また、図10(a)〜(c)は、ウイング付き平袋10における例示的なウイングシール部9の形状としてウイングシール部9a〜9cを示す。
【0043】
上述の特徴を有する本発明の電子レンジ加熱用包装袋は、冷凍野菜、チャーハン、中華点心などの冷凍食品や、エビチリ、中華丼の具などのペースト状食品を充填し加熱することができる。
【0044】
また、本発明の電子レンジ加熱用包装袋を電子レンジにて加熱する場合、切断部を有する面を上面にして加熱することが好ましいが、切断部領域により小穴が形成されて水蒸気や膨張したガスが放出できる面であれば特に限定されない。
【0045】
上述した本発明の電子レンジ加熱用包装袋に使用する本発明の食品包装用フィルムは、トレーやカップ等の食品用容器の蓋として使用することができ、その場合、前記食品包装用フィルムと前記食品用容器とが互いに接する面を接着させることにより、加熱用容器として使用することができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の食品包装用フィルムとこれを用いた電子レンジ加熱用包装袋の具体例を示す。
【0047】
実施例1(本発明の食品包装用フィルムを使用した包装袋における加熱試験)
同じ特性または異なる特性のフィルムを組み合わせて得られる4種類の食品包装用フィルムを用いた本発明の電子レンジ加熱用包装袋に関して、加熱による食品包装用フィルムの小穴形成状態について評価した。
【0048】
食品包装用フィルムとして、表1に示される樹脂フィルムAおよび樹脂フィルムBを組み合わせて積層された4種類の食品包装用フィルムを使用した。
【0049】
使用した前記食品包装用フィルムは全て、2枚のフィルムをドライラミネートにて接着剤ポリウレタン(商品名A969/A5、三井化学ポリウレタン社製)を用いて加工された。また、作製した食品包装用フィルムにおける切断部は、スリット刃を用いて、図2と同様にラミネート加工する前に予め施した。なお、この切断部は、樹脂フィルムAにおいて実線状に切断された貫通した切断部である。
【0050】
次に、この食品用包装フィルムを用いて、図7に示される方法により、合掌平袋(巾140mm丈200mm)を作製した。前記合掌平袋は1セット各3袋としこれを2セット作製した。なお、この合掌平袋の実線状の切断部は、合掌平袋の中央にあり、背シール部の長手方向と平行である。
【0051】
次に前記の4種類の前記包装袋各セットに、冷凍野菜100g、チャーハン100gを充填し、電子レンジ(シャープ(株)製RE−S160A型高周波出力500w、ターンテーブル直径260mm)に入れて、切断部を有する面(樹脂フィルムA)を上にして、包装袋が膨張して水蒸気の放出が確認されるまで加熱した。
【0052】
本発明の食品包装用フィルムの加熱による小穴形成状態を下記の条件で評価した。
【0053】
評価は、切断部領域にて小穴を形成しかつ包装袋本来のフィルム形状を維持しているものを◎、切断部領域にて小穴を形成し、フィルム形状をほぼ維持しているものを○、切断部領域にて小穴を形成し、フィルム形状に多少の変形が見られるものを△、および包装袋が切断部領域と異なる位置にて破裂してしまったものを×とした。
【表1】

【0054】
LLDPE60、LLDPE50、LLDPE40・・・・商品名TUX−HC、東セロ(株)社製
OPP20・・・・商品名FOR、フタムラ化学(株)社製
PET12・・・・商品名P60、東レフィルム加工(株)社製
前記の結果、本発明の食品包装用フィルムを用いた包装袋は全て、加熱により切断部領域に小穴を形成した。特にそれぞれ異なる樹脂を用いた延伸フィルム(樹脂フィルムA)および未延伸フィルム(樹脂フィルムB)を組み合わせて作製された食品包装用フィルムを用いた包装袋は、切断部領域より小穴が形成され、フィルムの変形もなく、安定した蒸気放出が見られた。それぞれ同じ樹脂を用いた未延伸フィルムを組み合わせて作製された食品包装用フィルムを用いた包装袋においても、食品包装用フィルムに多少の変形が見られたものの、切断部領域に小穴を形成した。
【0055】
このことから、本発明の食品包装用フィルムは、これを用いて電子レンジ加熱用包装袋とした場合、電子レンジ加熱により、食品包装用フィルムの切断部領域に小穴を形成し、水蒸気や膨張したガスを容器外に放出することが示された。さらに、互いに異なる特性を有する樹脂フィルムAと樹脂フィルムBを組み合わせることで、前記の効果をより好適に達成できることが示された。
【0056】
実施例2(本発明の食品包装用フィルムを使用した三方平袋における加熱試験)
ヒートシール形状が異なる三方平袋である2種類の電子レンジ加熱用包装袋に関し、これに食品を充填して加熱した場合の形状変化について評価した。
【0057】
本発明の食品包装用フィルムは、ナイロンのニ軸延伸フィルム(ユニチカ(株)社製、エンブレムONM、厚さ15μm)(樹脂フィルムA)、およびポリエチレンの未延伸フィルム(東セロ(株)社製、TUX−HC、厚さ50μm)(樹脂フィルムB)をドライラミネート(接着剤:三井化学ポリウレタン社製、A969/A5)によりラミネート加工して作製した。作製した食品包装用フィルムにおける切断部は、スリット刃を用いて、図2に示される方法と同様にラミネート加工する前に予め施した。なお、この切断部は、ナイロンの延伸フィルムにおいて実線状に切断された貫通した切断部である。
【0058】
次に、作製された食品包装用フィルムを用いて三方平袋を図4に示す方法により作製し、ヒートシール部3を図5に示すヒートシール3aまたは3bの形状とした2種類の三方平袋(巾140mm丈200mm)を各10袋ずつ3セット作製した。作製された2種類の三方平袋各セットにそれぞれ水200cc、市販の中華丼の具200g、およびエビチリ200gを充填して、電子レンジ(シャープ(株)製RE−S160A型高周波出力500W、ターンテーブル直径260mm)に入れて、切断部を有する面(樹脂フィルムA)を上にして加熱した。
【0059】
加熱に伴い内圧が上昇して、小穴を形成する状態を「小穴状態」とし、さらに蒸気放出が確認されてから1分間加熱を持続させた状態を「過加熱」として、その状態を観察し、各包装袋の食品包装用フィルムの小穴形成状態ついて評価を行なった。結果は表2に示すとおりである。
【0060】
前記の「小穴状態」での各内容物が充填された三方平袋10袋において、食品包装用フィルムの切断部領域にて小穴が形成された包装袋を10袋有するものを◎、9〜8袋有するものを○、7〜6袋有するものを△、5袋以下であるものを×とし、各内容物を充填した包装袋の食品包装用フィルムの小穴形成状態の評価を行なった。
【0061】
前記の「過加熱」での各内容物が充填された三方平袋10袋において、食品包装用フィルムの切断部領域に形成された小穴から包装袋内部の水蒸気が安定して包装袋の外部へ放出された包装袋を10袋有するものを◎、9〜8袋有するものを○、7〜6袋有するものを△、5袋以下であるものを×とし、各内容物を充填した包装袋の食品包装用フィルムの小穴形成状態の評価を行なった。前記の「水蒸気が安定して包装袋の外部へ放出された」状態とは、食品包装用フィルムの小穴以外において変形や破裂等の不具合を発生せずに小穴のみから水蒸気やガスが放出される状態であり、具体的には切断部領域の小穴が蒸気によって拡大した状態、切断部領域以外の箇所より破裂した状態等の不具合を生じない状態とする。
【表2】

【0062】
前記の結果より、ヒートシール部の形状が異なる2種類の本発明の三方平袋において、食品包装用フィルムの切断部領域に小穴が形成され、さらに加熱を持続させた結果、本発明の三方平袋内部の水蒸気が、形成された小穴から安定して包装袋の外部へ放出されることが示された。
【0063】
このことから、本発明の食品包装用フィルムは、これを用いた電子レンジ加熱用包装袋において、加熱によりヒートシールの形状に関係なく切断部領域に小穴を形成し、さらに加熱を続けた場合、形成された小穴から包装袋内の水蒸気を安定に放出することが示された。
【0064】
実施例3(本発明の食品包装用フィルムを使用した合掌平袋における加熱試験)
切断部が包装袋の中央に施された本発明の合掌平袋に関し、これに食品を充填して加熱した場合の形状変化について評価した。
【0065】
食品包装用フィルムは、実施例2と同様のフィルムを使用した。
【0066】
さらに、前記のフィルムを用いて合掌平袋を図6に示す方法により作製し、図8に示す合掌平袋(巾140mm丈200mm)を各10袋ずつ3セット作製した。また、この合掌平袋の実線状の切断部は、図8(a)に示すとおり、合掌平袋の中央にあり、背シール部の長手方向と平行である。
【0067】
この合掌平袋各セットにそれぞれ水20ccを含むティッシュ、冷凍食品である中華まん1個、およびチャーハン100gを充填した後、電子レンジ(シャープ(株)製RE−S160A型高周波出力500W、ターンテーブル直径260mm)に入れて切断部を有する面(樹脂フィルムA)を上にして加熱した。
【0068】
加熱に伴い内圧が上昇して、小穴を形成する状態を「小穴状態」とし、さらに蒸気吹出しが確認されてから1分間加熱を持続させた状態を「過加熱」として、その状態を観察し、各包装袋の食品包装用フィルムの小穴形成状態ついて実施例2と同様の基準により評価を行なった。結果は表3に示すとおりである。
【表3】

【0069】
前記の結果から、切断部の位置を合掌平袋の中央に配置した場合の合掌平袋において、食品包装用フィルムの切断部領域に小穴が形成され、さらに加熱を持続させた結果、形成された小穴から包装袋内部の水蒸気が安定して外部へ排出されることが示された。
【0070】
このことから、本発明の食品包装用フィルムは、これを用いた電子レンジ加熱用包装袋において、切断部の位置を中央に配置した場合、食品包装用フィルムの切断部領域にて小穴を形成、さらに加熱を続けた場合、形成された小穴から包装袋内の水蒸気を安定に放出することが示された。
【0071】
実施例4(本発明の食品包装用フィルムを使用したウイング付き平袋における加熱試験)
ウイングシール部のヒートシール形状が異なるウイング付き平袋である2種類の電子レンジ加熱用包装袋に関し、これに食品を充填して加熱した場合の形状変化について評価した。
【0072】
食品包装用フィルムは、実施例2と同様のフィルムを使用した。
【0073】
次に、前記の食品包装用フィルムを用いてウイング付き平袋を図9に示す方法により作製し、図10に示すウイングシール部9aまたは9bの形状の2種類のウイング付き平袋(巾140mm丈200mm)を各10袋ずつ3セット作製した。
【0074】
さらに、作製されたウイング付き平袋各セットに、それぞれ水300cc、市販の中華丼の具300g、およびエビチリ300gを充填して、電子レンジ(シャープ(株)製RE−S160A型高周波出力500W、ターンテーブル直径260mm)に入れて切断部を有する面(樹脂フィルムA)を上にして加熱した。
【0075】
加熱に伴い内圧が上昇して、小穴を形成する状態を「小穴状態」とし、さらに蒸気吹き出しが確認されてから1分間加熱を持続させた状態を「過加熱」として、その状態を観察し、各包装袋の食品包装用フィルムの小穴形成状態について実施例2と同様の基準により評価を行なった。結果は表4に示すとおりである。
【表4】

【0076】
前記結果から、ウイングシール部の形状が異なる2種類の本発明のウイング付き平袋において、食品包装用フィルムの切断部領域に小穴が形成され、さらに加熱を持続させた結果、形成された小穴から包装袋内部の水蒸気が安定して外部へ排出されることが示された。
【0077】
このことから、本発明の食品包装用フィルムは、これを用いた電子レンジ加熱用包装袋であるウイング付き合掌平袋において、そのウイングシール部の形状に関係なく、加熱により食品包装用フィルムの切断部領域に小穴を形成し、さらに加熱を続けた場合、形成された小穴から包装袋内の水蒸気を安定に放出することが示された。
【0078】
実施例5(本発明の食品包装用フィルムを使用した三方平袋およびウイング付き平袋におけるボイル殺菌のための加熱試験)
実施例2の三方平袋3a、実施例4のウイング付き平袋9aに関し、これらに食品を充填してボイル殺菌条件で加熱した場合の形状変化について評価した。
【0079】
三方平袋は実施例2の食品包装用フィルムを用いて実施例2と同様の製袋方法、またウイング付き平袋は実施例4の食品包装用フィルムを用いて実施例4と同様の製袋方法で各10袋ずつそれぞれ3セット作製した。
【0080】
さらに作製した各セットに、それぞれ水200cc、市販の中華丼の具200g、およびエビチリ200gを充填し、予め95℃に加熱した湯浴に前記包装袋が完全につかるように投入し、湯浴温度95℃を保ったまま30分間加熱した。なお加熱は湯浴槽に蓋をしめずに開放状態で行なった。加熱後の前記包装袋の食品包装用フィルムの形状変化について下記のように評価した。
【0081】
前記の各内容物が充填された三方平袋および合掌平袋各セットにおいて、食品包装用フィルムの加熱前の形状を維持している包装袋を10袋有するものを◎、9〜8袋有するものを○、7〜6袋有するものを△、5袋以下であるものを×とした。結果は表5に示すとおりである。前記の「形状を維持している」状態は、切断部領域または切断部領域外で破断することなく、切断部領域周辺でフィルムが剥離することなく、またフィルムが伸張していない状態とする。
【表5】

【0082】
前記の結果から、本発明の三方平袋およびウイング付き平袋において、ボイル殺菌条件での加熱により、食品包装フィルムは加熱前の形状を維持していることが確認された。
【0083】
このことから、本発明の食品包装用フィルムは、これを用いた電子レンジ加熱用包装袋において、冷凍食品やペースト状食品等の充填密封後に行なうボイル殺菌により、切断部領域に小穴を形成せず、内容物が漏れることはなく、包装直後のフィルム形状を保つことが示された。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の例示的な食品包装用フィルムの断面図である。
【図2】本発明の食品包装用フィルムの製造方法の例示的な説明図である。
【図3】本発明の実施形態の一例としての三方平袋の電子レンジ加熱用包装袋に食品等の内容物を充填した包装体の斜視図である。
【図4】図3における三方平袋の電子レンジ加熱用包装袋の例示的な製袋工程を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態の一例としての三方平袋の電子レンジ加熱用包装袋の例示的なヒートシール形状を示す正面図である。
【図6】本発明の実施形態の一例としての合掌平袋の電子レンジ加熱用包装袋に食品等の内容物を充填した包装体の斜視図である。
【図7】図6における合掌平袋の電子レンジ加熱用包装袋の例示的な製袋工程を示す説明図である。
【図8】本発明の実施形態の一例としての合掌平袋の電子レンジ加熱用包装袋の例示的な破断部位置を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施形態の一例としてのウイング付き平袋の電子レンジ加熱用包装袋の例示的な製袋工程を示す説明図である。
【図10】本発明の実施形態の一例としてのウイング付き平袋の電子レンジ加熱用包装袋のウイングシール部での例示的なヒートシール形状を示す正面図である。
【符号の説明】
【0085】
1 食品包装用フィルム
1a 樹脂フィルムA
1b 樹脂フィルムB
2 切断部
2´ 切断部領域
3、3a、3b、3c ヒートシール部
4、4a、4b 壁部
5 三方平袋
6a 背シール部
6b 底シール部
7、7a、7b 合掌平袋
8 ヒートシール部
9、9a、9b、9c ウイングシール部
10 ウイング付き平袋
11 小穴
Q スリット刃
R 接着層
S ロール
T 開放端
U 切り取り線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂フィルムAと樹脂フィルムBとが積層された積層フィルムであり、樹脂フィルムAが面上に切断部を有することを特徴とする食品包装用フィルム。
【請求項2】
前記樹脂フィルムAが延伸フィルムであり、かつ樹脂フィルムBが熱融着性を有するフィルムである請求項1に記載の食品包装用フィルム。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載の食品包装用フィルムを用いて形成される電子レンジ加熱用包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−110763(P2008−110763A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293017(P2006−293017)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000219222)東タイ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】