食品抗原または自己抗原に特異的なTR1細胞の白血球またはPBMCの集団からの獲得
本発明は、PBMCまたは白血球の集団を、食品抗原または自己抗原で刺激し、食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団を、刺激した細胞の集団から回復することを含む、白血球またはPBMCの集団から食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団を獲得するためのin vitro方法に関する。好ましくは、PBMCまたは白血球の集団を、IL−2、ならびにIL−4およびIL−13からなる群から選択される少なくとも1つのインターロイキンの存在下で、ステップ(1)の後、同じ抗原で少なくとも1回再刺激する。このin vitro方法は、有利には、回復した抗原特異的なTr1細胞の集団を拡張に必要な因子を発現することができるフィーダー細胞と接触させることにより、これらを拡張する第3のステップをさらに含んでもよい。好ましくは、フィーダー細胞は組換え昆虫のフィーダー細胞である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PBMCまたは白血球の集団を、食品抗原または自己抗原で刺激し、食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団を、刺激した細胞の集団から回復することを含む、白血球またはPBMCの集団から食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団を獲得するためのin vitro方法に関する。好ましくは、PBMCまたは白血球の集団を、IL−2、ならびにIL−4およびIL−13からなる群から選択される少なくとも1つのインターロイキンの存在下で、ステップ(1)の後、同じ抗原で少なくとも1回再刺激する。このin vitro方法は、有利には、拡張に必要な因子を発現することができるフィーダー細胞と、回復した抗原特異的なTr1細胞の集団を接触させることにより、これらを拡張する第3のステップをさらに含んでもよい。好ましくは、フィーダー細胞は組換え昆虫のフィーダー細胞である。
【0002】
T細胞の集団の中でも、調節性Tr1細胞またはTr1細胞と呼ばれる、新規な、機能的に異なるT細胞の亜集団に関して、現在、証拠が蓄積しつつある。本発明者らは、調節性T1(Tr1)細胞を、炎症性疾患(すなわち、クローン病(H.Grouxら、Nature、1997年、389巻、737〜742頁)、皮膚の炎症(Foussatら、2003年、J.Immunol.、171巻、5018〜5026頁)、アテローム性動脈硬化(Mallatら、Circulation、2003年、108巻、1232〜1237頁)、または多発性硬化症(Barratら、2002年、195巻、603〜616頁)を処置するのに用いることができることを示した。これらのモデル全てにおいて、抗炎症性のTr1細胞は、特定の抗原に対して向けられており、抗原の、優先的には炎症部位上における送達は、その抗炎症の機能を誘発するためにTr1細胞の刺激に必要とされることが示された。したがって、ヒトの疾患を処置するためのTr1細胞を用いるために、抗原特異的なTr1細胞を単離することができなければならない。しかし、これは非常に困難であることが証明されていた。
【0003】
本発明者らは、Tr1細胞は、特異的な表面マーカーを発現し、かつCD3およびCD4マーカーの同時発現、ならびにCD49bの発現および高レベルのCD18の発現により特徴付けられ得ること、ならびに、好適な場合には、タンパク質CD4、PSGL−1、PECAM−1、およびαV/β3をコードする遺伝子の過剰発現を実証することにより特徴付けられ得ることも示している(WO2005/000344号で公開された国際特許出願を参照)。
【0004】
驚くべきことに、本発明者らは、ヒト血液から、これらのマーカーの発現に基づいて単離された、精製されたTr1細胞(および、結果的にPBMCまたは白血球の集団に存在するTr1細胞)は、食品抗原または自己抗原に反応して活発に増殖すること、ならびにこれらの細胞の増殖性の反応はIL−2およびIL−4(ILはインターロイキン)の両方を用いた刺激により維持され得ることを観察している。当業者に一般的である知識によれば、以前は、第一にPBMCの集団から抗原特異的なナイーブのT細胞を単離し、第二に抗原特異的なTr1細胞の分化を誘発することが必要であったので、この可能性は、先行技術に勝る重要な利点をもたらすものであり、一方、食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞をPBMC(または白血球)の集団から直接獲得することは、今や可能である。本発明では、食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞を獲得するためにin vitro方法が単純化され、これらの細胞は質に関して変化していないので、これらの細胞を投与する患者に対する安全性は増大している。
【0005】
したがって、本発明の主題は、食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団を、白血球の集団または末梢血単核細胞(PBMC)の集団から獲得するためのin vitro方法であり、前記方法は:
1)PBMCまたは白血球の集団を、食品抗原または自己抗原で刺激するステップと、
2)食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団を、刺激した細胞集団から回復するステップと
を含む。
【0006】
白血球は、その重要性、その分布、その数、その生存期間、およびその可能性により特徴付けられるいくつかのタイプの細胞を包含する。これらのタイプは、以下の通りである:多核または顆粒白血球、その中に好酸球性、好中球性、および抗塩基球性の白血球、ならびに単核細胞、または末梢血単核細胞(PBMC)、が見出され、末梢血単核細胞は大型の白血球細胞であり免疫系の細胞型(リンパ球および単球)である。白血球またはPBMCは、当業者には知られている任意の方法により末梢血から分離することができる。有利には、PBMCを分離するために、遠心分離、好ましくは密度勾配遠心分離、好ましくは不連続密度勾配遠心分離を用いることができる。一代替は特異的なモノクローナル抗体の使用である。ある実施形態では、典型的には、標準の手順を用いて、Ficoll−Hypaqueにより全血製品からPBMCを単離する。他の実施形態では、PBMCを白血球搬出法により回収する。
【0007】
「抗原特異的なTr1細胞の集団」の表現における「抗原」の語は、免疫原性のペプチドを意味する。免疫原性のペプチドは、個体の主要組織適合複合体(MHC)分子に結合することができ、前記個体のT細胞受容体によって認識されるペプチドである。
【0008】
本出願で使用されるタンパク質、ポリペプチド、ペプチドの語は、より小さい基本であるアミノ酸の長鎖における結合により形成される分子を、分け隔てなく意味するものである。
【0009】
「食品抗原」の語は、以下の非限定的なリストの食品抗原などの、食料品に由来する免疫原性のペプチドを意味する:ウシ血清、例えばリポカリン、Ca結合性S100、α−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリン、ウシ血清アルブミン、免疫グロブリン、またはカゼイン。食品抗原は、また、タイセイヨウサケ抗原、例えばパルブアルブミン、トリ抗原、例えばオボムコイド、オバルブミン、Ag22、コナルブミン、リゾチーム、またはトリ血清アルブミン、エビ抗原、例えばトロポミオシン、コムギ抗原、例えばアグルチニンまたはω−5グリアジン、セロリ抗原、例えばセロリプロフィリン、ニンジン抗原、例えばニンジンプロフィリン、リンゴ抗原、例えば、タウマチン、リンゴ脂質輸送タンパク質、リンゴプロフィリン、洋ナシ抗原、例えば、洋ナシプロフィリン、イソフラボンレダクターゼ、アボカド抗原、例えばエンドキチナーゼ、アンズ抗原、例えばアンズ脂質輸送タンパク質、モモ抗原、例えばモモ脂質輸送タンパク質またはモモプロフィリン、大豆抗原、例えばHPS、大豆プロフィリン、または(SAM22)PR−10プロット(prot)。
【0010】
「自己抗原」の語は、前記個体のタンパク質に由来する免疫原性のペプチドを意味する。例示によるものでは、これは以下の非限定的なリストの自己抗原であってよい:アセチルコリン受容体、アクチン、アデニンヌクレオチドトランスロケーター、β−アドレナリン受容体、芳香族L−アミノ酸デカルボキシラーゼ、アシオアログリコプロテイン(asioaloglycoprotein)受容体、殺菌性/透過性増強タンパク質(BPi)、カルシウム感知受容体、コレステロール側鎖切断酵素、コラーゲンIV型αγ鎖、チトクロームP450 2D6、デスミン、デスモグレイン、デスモグレイン−3、F−アクチン、GM−ガングリオシド、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、グルタミン酸受容体、H/K ATPase、17−α−ヒドロキシラーゼ、21−ヒドロキシラーゼ、IA−2(ICAS12)、インスリン、インスリン受容体、1型内因子、白血球機能抗原1、ミエリン関連糖タンパク質、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンオリゴデンドロサイトタンパク質、ミオシン、P80−コイリン(coilin)、ピルビン酸脱水素酵素複合体E2(PDC−E2)、ヨウ化ナトリウム共輸送体、SOX−10、甲状腺および眼筋共有タンパク質、チログロブリン、甲状腺ペルオキシダーゼ、チロトロピン受容体、組織トランスグルタミナーゼ、転写活性化補助因子p75、トリプトファンヒドロキシラーゼ、チロシナーゼ、チロシンヒドロキシラーゼ、ACTH、アミノアシル−tRNA−ヒスチジル合成酵素、カルジオリピン、カルボン酸脱水酵素II、セブトロメア(cebtromere)関連タンパク質、DNA依存ヌクレオソーム刺激ATPase、フィブリラリン、フィブロネクチン、グルコース6リン酸イソメラーゼ、β2−糖タンパク質I、ゴルジン(95、97、160、180)、熱衝撃タンパク質、半接着斑タンパク質180、ヒストンH2A、H2B、ケラチン、IgE受容体、Ku−DNAタンパク質キナーゼ、Ku−核タンパク質、Laリンタンパク質、ミエロペルオキシダーゼ、プロテイナーゼ3、RNAポリメラーゼI〜III、シグナル認識タンパク質、トポイソメラーゼI、チューブリン、ビメンシン(vimenscin)、ミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質(MOBP)、プロテオリピドタンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP/クローディン11)、環状ヌクレオチド3’ホスホジエステラーゼ(CNPase)、BP抗原1(BPAG1−e)、トランスアルドラーゼ(TAL)、ヒトミトコンドリア自己抗原PDC−E2(Novo1および2)、OGDC−E2(Novo3)、およびBCOADC−E2(Novo4)、水疱性類天疱瘡(BP)180、ラミニン5(LN5)、DEAD−boxタンパク質48(DDX48)、またはインスリノーマ関連抗原2。
【0011】
細菌またはウィルスの抗原などは、「食品抗原または自己抗原」の表現から除外される。
【0012】
アミノ酸の一配列から大部分構成される食品抗原または自己抗原は、アミノ酸の配列が知られている場合にはFmoc法などの通常の技術により、または知られている組換えDNA技術により合成することができる(Sambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory press(1989年)を参照)。いくつかの食品抗原または自己抗原は、また、市販されている(Sigma、L’Isle d’Abeau、フランス)。食品抗原または自己抗原は、また、抽出することができる。
【0013】
好ましくは、Tr1細胞の集団に特異的な食品抗原または自己抗原は、PBMCの集団から獲得することができる。
【0014】
より好ましくは、PBMCまたは白血球の集団を、インターロイキン−2(IL−2)、ならびにインターロイキン−4(IL−4)およびインターロイキン−13(IL−13)からなる群から選択される少なくとも1つのインターロイキンの存在下で、ステップ(1)の後、同じ抗原で少なくとも1回再刺激する。
【0015】
食品抗原または自己抗原の刺激の頻度は、少なくとも1回、好ましくは数週間(通常約3週間)にわたり週1回、または5から12日の間隔で数回である。培地の上清の一部分を抗原を含む新鮮なPBMCまたは白血球の培地の同量で交換することにより、複数の刺激を行うことができる。PBMCまたは白血球の集団の再刺激に用いられるIL−2およびIL−4は、合成または組換えインターロイキンであってよく、当業者であればこのようなインターロイキンを得るための方法に広い経験がある(例えば、Sambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laborator press(1989年)を参照)。IL−2およびIL−4は、R&D Systems and Peprotechなどの様々な供給源から購入することができる。
【0016】
好ましくは、食品抗原または自己抗原は組換えまたは合成の抗原である。
【0017】
より好ましくは、食品抗原は、オバルブミン、カゼイン、ソヤタンパク質、それらのフラグメント、変異体および混合物を含む群から選択される。
【0018】
本明細書において食品抗原または自己抗原の「変異体」の語は、天然の抗原とほとんど同一である抗原、および同じ生物学的活性を共有する抗原を意味する。天然の抗原とその変異体との間の、最小の相違は、例えば、アミノ酸の置換、欠失、および/または付加にある。このような変異体は、例えば、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されている、保存的アミノ酸置換を含むことができる。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野では定義されており、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷の極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β−分枝側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。
【0019】
最も好ましくは、食品抗原は、配列番号23の配列の鶏卵オバルブミン、配列番号24の配列のウシαS1−カゼイン、配列番号25の配列のウシβ−カゼイン、ならびに配列番号23、配列番号24、および配列番号25の配列の1つと少なくとも70%、好ましくは、75、77、80、82、85、87、90、92、95、96、97、98、99%の同一性を有する配列を含む群から選択される。
【0020】
別の好ましい一実施形態では、自己抗原は、インスリン、ミエリン塩基性タンパク質、それらのフラグメント、変異体、および混合物を含む群から選択される
本明細書で用いられる「食品抗原または自己抗原でPBMCまたは白血球の集団を刺激する」の表現は、抗原を、PBMCまたは白血球の集団に加え、前記PBMCまたは白血球の集団のT細胞と反応するように培養することを意味する。食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団を生成するために、PBMCまたは白血球の集団を、前記PBMCまたは白血球の集団のT細胞における主要な活性化シグナルを誘発するのに適する形態で、本発明による抗原と接触させ、すなわち、CD3/TCR複合体によりT細胞においてシグナルが誘発されるように、抗原がPBMCまたは白血球の集団に提示される。例えば、抗原は、可溶性の形態で(PBMCもしくは白血球により発現されるMHC分子と複合体を形成するために直接、または抗原は可溶性の、重合体の、もしくは表面(プラスチック、...)に結合した形態のMHC分子のいずれかに連結することができる)、あるいはMHC分子と伝導して抗原提示細胞(APC)により、PBMCまたは白血球に提示され得る。B細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、または前記PBMCもしくは白血球の集団のT細胞に抗原を提示することができる他の細胞などの抗原提示細胞(APC)を、抗原提示細胞がPBMCまたは白血球に抗原を提示するように、抗原(例えば、可溶性の抗原)の存在下で、PBMCまたは白血球とインキュベートすることができる。あるいは、APCを、抗原とプレインキュベートしてから、PBMCまたは白血球に加えることができる。あるいは、食品抗原または自己抗原を発現する細胞をPBMCまたは白血球の集団とインキュベートすることができる。
【0021】
好ましくは、PBMCまたは白血球の集団の刺激は、マイクロプレートのウェル、細胞培養フラスコ、または細胞培養バッグで行う。用いることができるPBMCまたは白血球の培地は、当業者には非常によく知られており、例えば、PBMCまたは白血球は、ヒト血清またはX−vivo 15(Cambrex)で補ったRPMI培地で刺激してもよい。
【0022】
有利には、ステップ(1)で刺激したPBMCの集団は、0.01.106から100.106細胞/mLまで、好ましくは0.2.106から5.106細胞/mLまで、より好ましくは0.1.106から3.106細胞/mLまで、さらにより好ましくは0.5.106から2.5.106細胞/mlまで、最も好ましくは106から2.106細胞/mLまでを含む。
【0023】
より有利には、ステップ(1)において、PBMCの集団の刺激に用いられる食品抗原または自己抗原は、0.1μg/mLから5mg/mLまで、好ましくは1から200μg/mLまでの可溶性の形態である。
【0024】
しかし、PBMCまたは白血球の集団の刺激に用いる食品抗原または自己抗原の特定の量は、用いる食品抗原または自己抗原次第であるということは、当業者には知られている。
【0025】
別の特定の一実施形態では、PBMCまたは白血球の集団を、ステップ(1)の刺激の前に、細胞蛍光測定法により決定することを可能にする細胞分裂蛍光マーカーとインキュベートし、刺激した細胞集団の蛍光強度が、PBMCまたは白血球の集団の蛍光強度の2分の1以下であり、細胞分裂が前記の刺激された細胞の集団で起こり、ステップ(2)で回復した前記の刺激された細胞集団が抗原特異的なTr1細胞の集団である。
【0026】
このような方法では、蛍光マーカーを用いて細胞分裂をモニターすることが可能であり、当業者にはよく知られており、抗原特異的なTr1細胞の集団を回復するステップ(2)で用いるのに非常に良好に好適である、というのは蛍光強度がPBMCまたは白血球の集団の蛍光強度の2分の1以下である、刺激された細胞の集団は、食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団を含むからである。有利には、蛍光強度がPBMCまたは白血球の集団の蛍光強度の2分の1以下である、刺激された細胞の集団は、食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団である。
【0027】
好ましくは、細胞分裂蛍光マーカーは、カルボキシフルオレセイン二酢酸スクシンイミジルエステル(CFSE)マーカー、オレゴングリーン488カルボン酸二酢酸(Carboxy−DFFDA SE)マーカー、またはPKH26(発見者であるPaul Karl Horan、PKHより)マーカーであり、全て、数ある中でもInvitrogenで市販されている。
【0028】
ステップ(2)の食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団の回復は、当業者にはよく知られている様々な方法により行うことができる。例えば、Tr1細胞は、Elisa、フローサイトメトリー、前記Tr1細胞のマーカーに対して向けられた標識された抗体での、例えば:
APC−複合した抗−CD4(RPA−T4)−Becton Dickinson(APCは、アロフィコシアニン)
PC5−複合した抗−CD3(UCHT−1)−Caltag(PC5はフィコエリスリン−シアニン5)
PE−複合した抗−CD18(6.7)−Becton Dickinson(PEはフィコエリスリン)
FITC−複合した抗−CD49b(AK−7)−Becton Dickinson、またはPE−標識したマウス抗ヒトCD49b(12F1−H6)(FITCはフルオレセインイソチオシアネート)
でのイムノアフィニティークロマトグラフィーで同定および/または精製することができる。特異的なTr1細胞のマーカーは、今では当業者にはよく知られており、国際特許出願WO2005/000344に十分に記載されている。
【0029】
したがって、好ましい一実施形態では、抗原特異的なTr1細胞の集団を、前記抗原特異的なTr1細胞の集団の細胞の表面に存在するタンパク質に対して向けられている蛍光標識した抗体を用いて、細胞蛍光測定法によりステップ(2)で回復する。
【0030】
IL−4、IL−10、およびIFN−γの発現を測定し、Tr1細胞をそのサイトカイン発現プロファイルにより同定するために、ELISA試験および細胞内染色も用いることができる。当業者は通常このような方法を使用する。例えば、ステップ(1)の刺激の後に得られた上清を、IL−4、IL−10、およびIFN−γの発現に対して向けられたNIP−標識した抗体(NIPは、(4−ヒドロキシ−5−ヨード−3−ニトロフェニル)アセチル(NIP))と接触させ、その後、ペルオキシダーゼ標識した抗−NIP抗体およびABTSを加えてもよい(ABTSは2,2'−アジノ−ジ(3−エチル−ベンズチアゾリン−6−スルホネート))(R&D Systems、Minneapolis、ミネソタ州、およびChiron Corp.、Emmeryville、カリフォルニア州より)。
【0031】
好ましくは、抗原特異的なTr1細胞の集団を、ステップ(2)で、クローニング技術、例えば有利には限界希釈によりにより回復する。このような技術は当業者にはよく知られており、本記載ではさらに公開しない。
【0032】
抗原特異的なTr1細胞の集団を回復するこれらの方法は、単独で、または組み合わせて使用してもよいことを想定しなければならない。例えば「CFSE法」を、細胞蛍光測定法と、またはクローニング限界希釈技術と組み合わせて用いてもよい。細胞蛍光測定法と、その後クローニング技術を用いることも可能である。
【0033】
PBMCまたは白血球の集団は、哺乳動物の集団であることが好ましい。これは、ヒト、および非ヒトの哺乳動物(イヌ、ネコ、マウス、ラット;家畜、および家禽などの農業の対象の動物など)であってよい。より好ましくは、PBMCまたは白血球の集団はヒトの集団である。
【0034】
有利には、本発明は、さらに:
3)Mp培地で、ステップ(2)で回復した抗原特異的なTr1細胞の集団を拡張するステップ
を含む。
【0035】
Mp培地は、それが前記抗原特異的なTr1細胞の集団に好適であるならば、任意の種類であってよく、当業者であれば選択は容易である(シュナイダー(Schneider's)培地、無血清培地、...)。
【0036】
本出願において「拡張」、「増殖」、および「成長」の語は、交換可能に使用することができ、細胞集団における増大する数の細胞を意味する。好ましくは、抗原特異的なTr1細胞の集団は指数関数的に拡張する。
【0037】
有利には、ステップ(3)の抗原特異的なTr1細胞の集団の拡張は、前記細胞の集団を、IL−2およびIL−4の存在下でCD3+CD28ビーズ(例えば、Dynal、Oslo、ノルウェーから購入)と接触させることにある。
【0038】
特に有利な一実施形態では、抗原特異的なTr1細胞の集団を拡張するステップ(3)が、Mp培地における因子のグループの存在を必要とし、前記拡張ステップが、
a)温度T1で、Mf培地で前記グループの因子を発現することができるフィーダー細胞を培養するステップであって、このT1が、前記フィーダー細胞の増殖を可能にするステップと、
b)そのMf培地を除いた、またはMf培地のないステップ(a)で得たフィーダー細胞を、Mp培地に含まれる抗原特異的なTr1細胞の集団と接触させるステップであって、ここで、抗原特異的なTr1細胞の集団、フィーダー細胞、およびMp培地を含む混合物を得るために、前記Mp培地は、因子のグループを最初に含んでいないステップと、
c)Mp培地において、フィーダー細胞によって発現されているグループの因子を含むステップ(b)で得られた混合物を培養するステップであって、ここで、
抗原特異的なTr1細胞の集団が増殖し、
フィーダー細胞が増殖しないように
培養する前記ステップ(c)を少なくとも約35℃である温度T2で行い、
抗原特異的なTr1細胞の集団を拡張するステップと、
d)そのように拡張した抗原特異的なTr1細胞の集団を回復するステップと
を含む。
【0039】
フィーダー細胞を抗原特異的なTr1細胞の集団に加える場合(ステップ(b))、[フィーダー細胞:抗原特異的なTr1細胞の集団]の比は重要ではない。有利には、この比は[1:1]であってよい。
【0040】
フィーダー細胞は、少なくとも約35℃であり、抗原特異的なTr1細胞の集団の培養温度T2で増殖しないのであれば、任意のタイプであってよい。
【0041】
「少なくとも約35℃」の表現は、温度が35℃より0.1℃下から(34.9℃から35℃まで)変化してよいことを意味する。当業者であればとにかく温度のこのような最小の変動を知っている。
【0042】
細胞培養に広い経験のある当業者であれば、用いるべき特定の条件、特に、各々のフィーダー細胞の集団および抗原特異的なTr1細胞の集団の至適培養温度T1およびT2を知っている。Mf培地は、それが前記フィーダー細胞のタイプに好適であるならば任意の種類であってよく、当業者であれば選択は容易である(シュナイダー培地、...)。
【0043】
ステップ(b)のフィーダー細胞の抗原特異的なTr1細胞の集団との接触、およびステップ(c)の温度T2での混合物の培養は、通常、同時のステップであると考えるべきであり、接触前、フィーダー細胞と抗原特異的なTr1細胞の集団は、それぞれ一方はMf培地で温度T1で、他方はMp培地で温度T2で別々に培養される。次いで、フィーダー細胞「単独」、またはフィーダー細胞を含むMf培地を、そのMp培地に存在し、温度T2で培養される抗原特異的なTr1細胞の集団と接触させる。その結果、フィーダー細胞によって発現される因子のグループのおかげで拡張する、抗原特異的なTr1細胞の集団と異なり、フィーダー細胞は温度T1から温度T2に即座に通過し、止まって増殖する。
【0044】
長時間、例えば、少なくとも2または3カ月の間、フィーダー細胞を定期的に、例えば毎週、前記抗原特異的なTr1細胞の集団と接触させることにより、抗原特異的なTr1細胞の集団のin vitroの指数関数的な成長を維持することが可能である。
【0045】
より有利には、フィーダー細胞は、フィーダー細胞の培養にそれ以上好適ではない温度T2のために、ステップ(c)の間に死滅する。最も有利には、フィーダー細胞の死滅によってもたらされる前記細胞の細胞膜のフラグメントを、ステップ(d)で除去する。
【0046】
ステップ(c)で、抗原特異的なTr1細胞の集団を培養する十分な時間、例えば、好ましくは数時間の後、得られたMp培地は抗原特異的なTr1細胞の集団、生存可能なフィーダー細胞、および場合によりフィーダー細胞の細胞膜のフラグメントの混合物からなり、拡張された抗原特異的なTr1細胞の集団をステップ(d)で回復しなければならない。このような回復は、生存可能なフィーダー細胞、および場合により前記細胞膜のフラグメントから抗原特異的なTr1細胞の集団を、当業者にはよく知られている任意の好適な分離方法、例えば、フィーダー細胞の表面で結合することができる特異的な標識されたリガンド、または抗原特異的なT細胞の集団の細胞表面タンパク質を用いて、フローサイトメトリーなどを用いて分離することにより行うことができる。他の方法、例えば、洗浄方法、および/または、Ficoll(登録商標)などの分離培地を用いた密度勾配遠心分離などの遠心分離も使用することができ、このような遠心分離は、細胞膜のフラグメントを除去するのに好適な方法である。
【0047】
拡張された抗原特異的なTr1細胞の集団を哺乳動物に投与することが企図される場合にはなおさら、フィーダー細胞の細胞膜のフラグメントの除去は強制ではないが推奨されるものであることに留意しなければならない。そうでないと、前記の拡張された抗原特異的なTr1細胞の集団が汚染される危険性がある。
【0048】
有利には、因子のグループは、フィーダー細胞の細胞膜に固定される因子、および前記フィーダー細胞によって分泌される因子を含む。より有利には、前記グループの因子は、拡張するべき抗原特異的なTr1細胞の集団の細胞表面タンパク質と相互作用する。
【0049】
フィーダー細胞をステップ(a)で培養する場合、フィーダー細胞はその細胞膜表面でグループのいくつかの因子を、Mf培地でいくつかの他の因子を発現する。ステップ(b)の接触では、「膜因子」はフィーダー細胞の膜にすでに固定されているが、フィーダー細胞がそのMf培地から予め除去されている場合は「分泌因子」を除去してもよい。いずれにしても、フィーダー細胞がそれ以上増殖しない場合でも、前記フィーダー細胞が死滅するまで、「膜因子」および「分泌因子」の両方が、ステップ(c)でフィーダー細胞により発現される。死滅したフィーダー細胞の細胞膜のフラグメントに固定されている「膜因子」が、抗原特異的なTr1細胞の集団の生成で依然として役割を担っていることもあり得る。
【0050】
拡張された抗原特異的なTr1細胞の集団は、その拡張を可能にする細胞のシグナルに結び付けられている細胞表面タンパク質を有する。このような細胞表面タンパク質は、本発明ではフィーダー細胞により提供される特定のリガンド、または因子のおかげで活性化され、フィーダー細胞は抗原特異的なTr1細胞の集団の拡張を可能にする因子のグループを発現する。当業者であれば、このような因子が抗原特異的なTr1細胞の集団の細胞表面タンパク質と相互作用するように、フィーダー細胞が発現しなければならない特定の因子を知っている。
【0051】
さらにより好ましくは、フィーダー細胞は組換え細胞であり、前記グループの因子をコードする異種核酸を含む。
【0052】
「組換え細胞」または「組換えフィーダー細胞」の表現は、前記細胞においてグループの因子をコードする異種核酸を導入することを意味する。このような導入は、電気穿孔、リン酸カルシウム沈降、DEAE−デキストラン処置、リポフェクション、マイクロインジェクション、およびウィルスベクターでの感染を含む、核酸のフィーダー細胞中への導入に有用な様々な技術を包含する。このような適切な方法は、当業者には非常によく知られており、例えば、Sambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory press(1989年))に見ることができる。導入すべき核酸は、例えば、拡張すべき抗原特異的なTr1細胞の集団の細胞表面タンパク質との相互作用を受けやすい因子をコードする遺伝子を包囲するDNA、ゲノムのDNAフラグメント、センス鎖のRNA、またはこのような遺伝子をコードするcDNAを含む組換え発現ベクターであってよい。異種核酸は、全長の因子をコードすることができ、あるいは、フィーダー細胞中に導入される場合は、本発明にしたがって抗原特異的なTr1細胞の集団の生成を可能にするのに十分であるそのペプチドフラグメントをコードすることができる。核酸は、抗原特異的なTr1細胞の集団の細胞表面タンパク質の天然のリガンド(共刺激タンパク質)、またはそのフラグメント、またはリガンドもしくはそのフラグメントの修飾された形態をコードすることができる。本発明は、抗原特異的なTr1細胞の集団の拡張を増強する能力を保持する因子の、フラグメント、突然変異体、または変異体(例えば修飾された形態)の使用を含むことが企図される。因子の「変異体」は、天然のリガンドと著しい相同性を共有するタンパク質、および抗原特異的なTr1細胞の集団の拡張に結び付けられるタンパク質を意味する。生物学的に活性な、または生物学的に活性な形態のタンパク質の語は、抗原特異的なTr1細胞の集団の拡張をもたらすことができる因子の形態を含む。当業者であれば、フィーダー細胞において因子をコードする核酸を導入する際に、細胞の拡張を増強するその能力に基づいてそのような因子の変異体を選択することができる。因子の特定の変異体が抗原特異的なTr1細胞の集団の拡張を増強する能力は、例えば、任意の知られているアッセイまたは方法により組換えフィーダー細胞を非組換えフィーダー細胞と比べることにより、容易に決定することができる。さらに、当業者であれば、因子の主要なアミノ酸配列における変更は、タンパク質が抗原特異的なTr1細胞の集団の拡張を可能にする能力を著しく損なうことなしに許容されると考えられることを理解するであろう。したがって、比較可能な天然の因子の天然に存在するアミノ酸配列に比べてアミノ酸の置換、欠失、および/または付加を有する因子の変異体は、本明細書に記載する天然型の因子の機能上の活性を依然として保持しており、やはり本発明に包含される。このような変異体は、例えば保存的なアミノ酸の置換を含むことができる(上記を参照)。
【0053】
核酸は、因子の発現に適する形態であり、前記の形態は、遺伝子の転写および翻訳に必要とされるコード配列および制御配列を全て含んでおり、プロモーター、エンハンサー、およびポリアデニル化シグナル、ならびにN末端シグナル配列を含む、場合により因子をフィーダー細胞の表面に輸送するのに必要な配列を含むことができる。制御配列は、また、構成性の、または誘導性の転写をもたらすように選択することもできる。フィーダー細胞の表面における因子の発現は、細胞を免疫蛍光染色することにより確認することができる。例えば、細胞を、共刺激分子に対して反応性の蛍光標識したモノクローナル抗体で、または因子に結合する蛍光標識した可溶性の受容体で染色してもよい。フィーダー細胞が発現する因子を非常によく知っている当業者であれば、フィーダー細胞が発現する因子を認識する好適なモノクローナル抗体も知っている。あるいは、因子に結合する標識した可溶性のリガンドタンパク質を用いて、フィーダー細胞表面上のそれらの発現を検出することができる。当業者であれば、免疫蛍光染色した細胞を検出するために使用される技術および装置を非常によく知っており、好ましくは、蛍光標示式細胞分取器(FACS)が検出に用いられる。
【0054】
因子をコードする核酸が調節エレメントに操作可能に連結している場合、これは、典型的には、例えばプラスミドおよびウィルスを含むベクターで運ばれる。したがって、調節コントロールエレメントに操作可能に連結している、本発明の因子をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を、本明細書では「発現ベクター」とも呼ぶ。発現ベクターは、形質転換されるべきフィーダー細胞のタイプを基準として選択される。例えば、フィーダー細胞がショウジョウバエの昆虫のフィーダー細胞である場合、培養した昆虫細胞においてタンパク質の発現に利用可能な、ショウジョウバエの構成的なベクターには、pAcシリーズ(Smithら、(1983年)、Mol.Cell Biol.、3巻、2156〜2165頁)、およびpVLシリーズ(Lucklow,V.A.、およびSummers,M.D.、(1989年)、Virology、170巻、31〜39頁)が含まれる。
【0055】
さらに、フィーダー細胞は、その表面にいかなる内因性のクラスIおよび/またはIIの主要組織適合複合体(MHC)分子も有さないことが好ましい。これは、これらの細胞が、遺伝的に形質転換されていなければ、天然にMHC分子を発現しないことを意味する。フィーダー細胞の表面にこれらの内因性のクラスIおよび/またはII MHC分子が存在しないことは、フィーダー細胞と抗原特異的なTr1細胞の集団との間の同種間の反応を避けるのにきわめて重要である。その結果、本発明のフィーダー細胞を用いて、短時間で任意のドナーからの抗原特異的なTr1細胞の集団を拡張することができる。
【0056】
より特定の一実施形態では、ステップ(b)でフィーダー細胞がそのMf培地から除去される。
【0057】
好ましくは、フィーダー細胞は昆虫のフィーダー細胞であり、T1がT2よりも低い。
【0058】
本発明では、それが上記の条件を満たすのであれば、任意の好適な昆虫のフィーダー細胞を用いることができる。例えば、Sf9(数ある中で、ATCCにCRL1711番で、またはDSMZにACC125番で寄託され、BD Biosciences Pharmingen、米国により市販されてもいる)、Sf21(数ある中でDSMZにACC119番で寄託され、BD Biosciences Pharmingen、米国により、やはり市販されている)、またはS2細胞系の昆虫のフィーダー細胞であってよい。好ましくは、昆虫のフィーダー細胞はS2ショウジョウバエ細胞系由来である。S2ショウジョウバエ細胞系は当業者にはよく知られており、先行技術に広く開示されている。S2ショウジョウバエ細胞系は市販されており(Invitrogen、フランス、など...)、特にGerman collection of micro−organisms and culture cells DSMZ(「Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen」)にACC130番で寄託されており、Schneider、J Embryol Exp Morphol、27巻、1972年、353ページに公開されており、これはアメリカ培養細胞系統保存機関ATCCにCRL1963番でやはり寄託されている。好ましくは、昆虫のフィーダー細胞は、2005年3月25日に、National Collection of Micro−organisms Cultures(CNCM、Pasteur Institute、パリ)にI−3407番で寄託されているS2ショウジョウバエ細胞系由来である。
【0059】
哺乳動物の細胞の集団、およびここでは抗原特異的なTr1細胞の集団が拡張される場合に、昆虫のフィーダー細胞を使用することによってもたらされる大きな利点は、(1)フィーダー細胞および哺乳動物の細胞は、同じ温度で増殖せず(T1はT2より低く、T2は少なくとも約35℃である)、(2)哺乳動物のウィルスは昆虫のフィーダー細胞では増殖せず、したがって抗原特異的なTr1細胞の集団の、フィーダー細胞から可能なウィルス汚染を回避することである。
【0060】
最も好ましくはMp培地は無血清培地である。培地は、いかなる生物学的な汚染もなく、例えば市販されている無血清培地(Biowhittaker、Wakersvill、メリーランド州からのXVIVO−15、InvitrogenからのAIM V培地)が好ましい。
【0061】
最も好ましくはMf培地は無血清培地である。培地は、いかなる生物学的な汚染もなく、例えばよく知られており市販されている無血清培地(BioWhittaker、Walkersville、メリーランド州により市販されている無血清シュナイダー培地、例えば、Invitrogenによって市販されているSFMなどのGIBCO(登録商標)無血清昆虫細胞培地、またはKrackeler Scientific Inc.、米国により市販されているInsectagro(登録商標)無血清培地など...)が、細胞集団Pのその後の汚染を避けるために好ましい。
【0062】
より有利には、フィーダー細胞は、拡張されるべき抗原特異的なTr1細胞の集団の以下の細胞表面タンパク質:
CD3/TCRタンパク質複合体、
CD28タンパク質、
CD2タンパク質、
インターロイキン−2(IL−2)受容体、および
インターロイキン−4(IL−4)受容体
と相互作用をする組換え因子のグループを発現する組換えフィーダー細胞である。
【0063】
実際、抗原特異的なTr1細胞の集団を拡張するために、TCR/CD3複合体(TCRはT細胞受容体であり、CDは細胞分化抗原である)の刺激が、T細胞における主要な活性化シグナルの送達に必要とされている。抗−CD3モノクローナル抗体を、TCR/CD3複合体、有利には修飾された抗−CD3抗体によるT細胞の集団の活性化に用いることができ、この場合抗−CD3抗体の修飾は、細胞質内ドメインの膜貫通ドメインとの置換にあり、したがって前記修飾された抗−CD3抗体はフィーダー細胞の細胞膜を固定しており、T細胞のCD3/TCRタンパク質複合体と相互作用をする。
【0064】
さらに、T細胞の表面上の数々のタンパク質は、同じ意味に「共刺激分子」または「補助刺激因子」と呼ばれ、休止期のT細胞の芽細胞への形質転換への移行、およびその後の増殖および分化の調節に結び付けられている。したがって、TCR/CD3複合体によりもたらされる主要な活性化シグナルに加えて、T細胞の反応を誘導することは、第2の共刺激シグナルを必要とする。1つの共刺激または付属の分子であるCD28は、TCR複合体によって刺激されるものと異なるシグナル伝達経路を開始し、または調節すると考えられている。
【0065】
抗原特異的なTr1細胞の表面に存在し、フィーダー細胞により発現されるCD28タンパク質と相互作用をする因子は、CD28分子と架橋結合することができる抗−CD28モノクローナル抗体またはそのフラグメントであってよく、この場合、膜貫通ドメインがフィーダー細胞の細胞表面に固定する目的で膜貫通ドメインを加えることにより、抗−CD28モノクローナル抗体の修飾が想定され得る。好ましくは、CD28に対する天然のリガンド、すなわち、例えばB7−1(CD80)およびB7−2(CD86)タンパク質などのB7ファミリーのタンパク質のメンバーが、抗−CD28モノクローナル抗体の代わりに使用される。
【0066】
別の共刺激分子であるCD2は、抗原特異的なTr1細胞の集団の拡張を可能にする細胞シグナルと結び付けられている。同様に、CD2と相互作用するフィーダー細胞により発現される因子は、CD2分子と架橋結合することができる抗−CD2モノクローナル抗体またはそのフラグメントであってよく、フィーダー細胞の細胞表面に固定するために、膜貫通ドメインを加えることにより、抗−CD2モノクローナル抗体の修飾が想定され得る。好ましくは、抗−CD2モノクローナル抗体の代わりに、CD2に対する天然のリガンド、すなわちCD58タンパク質が使用される。
【0067】
フィーダー細胞の細胞膜に固定されている因子の他に、インターロイキンなど、分泌される因子が、抗原特異的なTr1細胞の集団の拡張に、やはり必要とされている。これらインターロイキンの中には、抗原特異的なTr1細胞の表面に存在するIL−2受容体と相互作用するIL−2、および抗原特異的なTr1細胞のIL−4受容体と相互作用するIL−4またはIL−13のいずれかがある。
【0068】
最も有利には、組換え因子のグループは、
抗−CD3抗体の修飾が抗−CD3重鎖の抗−CD3細胞質内ドメインの、膜貫通ドメインでの置換にあり、前記修飾された抗−CD3抗体はフィーダー細胞の細胞膜に固定されており、T細胞のCD3/TCRタンパク質複合体との相互作用を受けやすい、修飾された抗−CD3抗体またはその変異体、
T細胞のCD28タンパク質との相互作用を受けやすい、フィーダー細胞の細胞膜に固定されている、CD80またはCD86タンパク質、好ましくはCD80タンパク質、またはその変異体、および
Tr1細胞のCD2タンパク質との相互作用を受けやすい、フィーダー細胞の細胞膜に固定されているCD58タンパク質、またはその変異体、
Tr1細胞のIL−2受容体との相互作用を受けやすい、フィーダー細胞により分泌されるIL−2、またはその変異体、および
インターロイキンがフィーダー細胞により分泌され、Tr1細胞のIL−4受容体との相互作用を受けやすい、IL−4およびインターロイキン13(IL−13)を含む群から選択されるインターロイキン、好ましくはIL−4、またはその変異体、
を含む。
【0069】
好ましくは、抗−CD3抗体の重鎖の細胞質内のドメインに置換する膜貫通ドメインは、血小板由来成長因子(PDGF)の膜貫通ドメインである。
【0070】
フィーダー細胞が発現する因子は任意の起源であってよい。好ましくは、これらは、それから抗原特異的なTr1細胞の集団が獲得されるPBMCまたは白血球の集団のものと同じ起源のものである。より有利には、PBMCまたは白血球の集団はヒト集団である。最も好ましくは、前記グループの因子はヒト起源である。
【0071】
好ましくは、修飾された抗−CD3抗体の軽鎖は、配列番号1の配列の異種核酸、または配列番号1と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされ、修飾された抗−CD3抗体の重鎖が配列番号2の配列の異種核酸、または配列番号2に少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる。
【0072】
より好ましくは、CD80タンパク質は、配列番号3の配列の異種核酸、または配列番号3と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる。
【0073】
有利には、CD86タンパク質は、配列番号4の配列の異種核酸、または配列番号4と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる。
【0074】
さらにより好ましくは、CD58タンパク質は、配列番号6の配列の異種核酸、または配列番号6と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる。
【0075】
好ましい一実施形態では、IL−2は、配列番号5の配列の異種核酸、または配列番号5と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる。
【0076】
有利には、IL−4は、配列番号7の配列の異種核酸、または配列番号7と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる。
【0077】
より有利には、IL−13は、配列番号8の配列の異種核酸、または配列番号8と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる。
【0078】
「配列番号Xと少なくとも70%の同一性を有する核酸分子」の表現は、前記配列番号Xの配列と少なくとも70、75、80、85、90、95、または99%の同一性を有する任意の配列を意味する。
【0079】
一般的には、拡張すべき抗原特異的なTr1細胞の集団を数時間、例えば12時間、好ましくは24時間の培養後、より好ましくは48時間培養後、それ以上生存可能なフィーダー細胞は、Mp培地には存在しない。有利には、拡張された抗原特異的なTr1細胞の集団を、フィーダー細胞が全て死滅したときに回復し、これにより、第一に、より大きく拡張した抗原特異的なTr1細胞の集団を獲得し、第二に、フィーダー細胞の細胞膜のフラグメントを除去することにより、例えば、上記に公開したように、洗浄法および/または密度勾配遠心分離により除去することにより、抗原特異的なTr1細胞の集団を迅速かつ容易に回復することが可能になる。
【0080】
したがって、好ましい一実施形態では、非常に拡張された抗原特異的なTr1細胞の集団を、少なくとも12時間、有利には24時間の間、ステップ(c)で抗原特異的なTr1細胞の集団を培養した後、ステップ(d)で回復する。
【0081】
本発明における2つの核酸(または核酸配列)または2つのプロテイック(proteic)配列間の同一性パーセントは、最善のアラインメント後に得られた、比較すべき2配列間の同一のヌクレオチドまたはアミノ酸のパーセント値を意味し、このパーセント値は、純粋に統計上のものであり、2配列間の相違はランダムに分布し、全てその全長上にある。最善のアラインメントまたは最適のアラインメントは、比較すべき2配列間の同一性の最高のパーセント値に対応するアラインメントであり、これは本明細書で以降のように計算される。2つの核酸または2つのプロテイック配列間の配列比較は、それらの最適のアラインメント後にこれらの配列を比較することにより通常行い、前記の比較は、配列の類似性の局所領域を同定し、比較するために、1セグメントに対して、または1つの「比較ウィンドウ」に対して行う。比較のための配列の最適のアラインメントは、手作業により、またはSmithおよびWaterman(1981年)(Ad.App.Math.、2巻、482頁)の局所的ホモロジーのアルゴリズムにより、NeedlemanおよびWunsch(1970年)(J.Mol.Biol.、48巻、443頁)の局所的なホモロジーのアルゴリズムにより、PearsonおよびLipman(1988年)(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、85巻、2444頁)の同様の調査方法により、これらのアルゴリズムを用いたコンピュータソフトウェア(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、ウィスコンシン州におけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)により行うことができる。2つの核酸配列間または2つのプロテイック配列間の同一性パーセント値は、これら2つのアラインされた配列を、最適の様式で、核酸配列またはプロテイック配列の比較すべき領域がこれら2配列間の最適アラインメントに対する参照配列に関して付加または欠質を含むことができる「比較ウィンドウ」と比較することによって決定する。2配列間でヌクレオチドまたはアミノ酸が同一である位置の数を決定することにより、同一の位置の数を「比較ウィンドウ」における位置の総数で除することにより、および、これら2つの配列間の同一性のパーセントを得るために、得られた結果に100をかけることにより同一性パーセント値が計算される。
【0082】
フィーダー細胞を用いて本発明にしたがって抗原特異的なTr1細胞の集団を拡張するステップ(3)は、以下の利点をもたらす:
フィーダー細胞の拡張システムは、in vitroで少なくとも2または3カ月間、抗原特異的なTr1細胞の集団の指数関数的な成長を維持することができ、
フィーダー細胞は、同種間の反応を避けるために、MHCクラスIおよびII分子を欠き、
フィーダー細胞にはマイコプラズマフリーであり、
フィーダー細胞は、無血清培地を用いて良好に成長することができ、
フィーダー細胞は、照射を必要とせず、
フィーダー細胞は、哺乳動物のウィルスの拡張を許さず、
拡張された抗原特異的なTr1細胞の集団は、注射の目的に対して非常に良好に特徴付けられる。
【0083】
本発明を以下の図面および実施例においてさらに記載する。これらの図面および実施例は、説明の目的で提供するにすぎず、添付の特許請求の範囲の範囲を限定することを意図するものではない。様々な筋書きが、多くの実際的な場合に関連し、当業者には単に例示を意図するにすぎない。したがって、本発明は、本明細書に提供する教示の結果として明らかになる任意の、かつ全ての変形形態を包含するものと解釈すべきである。
【0084】
図の説明
図1は、CD4+CD18brightCD49b+Tr1細胞は、食品抗原に反応し、リコール抗原に反応しないで増殖することを示す図である。
A)精製したCD4+T細胞(灰色バー)、CD4+CD18brightCD49b+Tr1細胞(白色バー)、およびCD4+CD45RO+CD49b−メモリーT細胞を、自己由来の精製した単球の存在下で、破傷風毒素(10μg/mL)、PPD(20μg/mL)、または抗−CD3+抗CD28mAb(10μg/mL)で刺激した。5日目に、チミジンの組入れにより増殖を分析した。B)Aにおけるのと同じ集団を、オバルブミン(OVA、20μg/mL)、カゼイン(20μg/mL)、またはソヤ(soya)タンパク質の混合物(Soya)、50μg/mLで刺激した。結果は、10名の異なる患者の増殖反応の平均を表している。
【0085】
図2は、CD4+CD18brightCD49b+T細胞は、食品抗原に対して増殖し、ワクチン抗原に対して増殖しないことを示す図である。
CD4+T細胞、または精製したCD4+CD45RO+CD49b-、またはCD4+CD18+CD49b+をCFSEで標識し、示してあるように、ワクチン抗原(PPD、精製タンパク質誘導体:ツベルクリン、TT:破傷風毒素)、または食品抗原(OVA:オバルブミン、カゼインまたはSoyaタンパク質)のいずれかの異なる抗原で刺激した。8日後、細胞を細胞蛍光測定法により分析し、分裂した細胞のパーセント値をCFSEの発現の低減により分析した。CFSElow細胞のパーセント値を、各象限に示してある。
【0086】
図3は、食品抗原に特異的なCD4+増殖性T細胞はTr1サイトカイン特性の表現型を有することを示す図である。
CD4+T細胞をCFSEで標識し、示してあるワクチン(PPD、TT)、または食品(OVA、Soya、カゼイン)抗原で刺激した。CFSElowCD4+T細胞を精製し、抗−CD3および抗−CD28mAbで再刺激し、48時間後に上清をELISAにより分析して示したサイトカインの量を測定した。食品抗原に特異的な増殖性CD4+T細胞は、IL−10highIL−4-IFN−g+/-、IL−5+/-、IL−2-分泌レベルを有するTr1表現型を提示し、一方、リコール抗原特異的なT細胞はIFN−γ分泌の高いTh1表現型を提示した。
【0087】
図4は、CD4+CD18brightCD49b+T細胞は、自己抗原およびTr1サイトカイン表現型を提示した自己抗原特異的細胞に対して増殖することを示す図である。
CD4+T細胞、または精製したCD4+CD45RO+CD49b-、またはCD4+CD18+CD49b+をCFSEで標識し、示してあるように、自己抗原(MBP:ミエリン塩基性タンパク質)、またはインスリンで刺激した。8日後、細胞を細胞蛍光測定法により分析し、分裂した細胞のパーセント値をCFSEの発現の低減により分析した。CFSElow細胞のパーセント値を、各象限に示してある。CFSElow細胞を精製し、抗−CD3および抗−CD28mAbで再刺激し、48時間後、上清をELISAにより分析して、示されているサイトカインの量を測定した。自己抗原特異的な増殖性CD4+T細胞は、IL−10highIL−4-IFN−γ+/-、IL−5+/-、IL−2-分泌レベルのTr1表現型を提示した。
【0088】
図5は、Tr1細胞は、試験した抗原に対する自己免疫疾患またはアレルギー性疾患に罹患している患者で観察することができることを示す図である。
CD4+T細胞、または精製したCD4+CD45RO+CD49b-、またはCD4+CD18+CD49b+を、示してあるように、多発性硬化症(MS)またはカゼインに対するアレルギーに罹患している患者から単離し、CFSEで標識し、自己抗原(MBP:ミエリン塩基性タンパク質)、またはカゼイン、または示してあるように陽性コントロールとして結核菌からの精製したプロテインド(proteind)誘導体(PPD)で刺激した。8日後、細胞を細胞蛍光測定法により分析し、分裂した細胞のパーセント値をCFSEの発現の低減により分析した。CFSElow細胞のパーセント値を、各象限で示してある。CFSElowT細胞を精製し、抗−CD3および抗−CD28mAbで再刺激し、48時間後、上清をELISAにより分析して、示してあるサイトカインの量を測定した。
【0089】
図6は、食品抗原特異的なTr1細胞は、IL−2単独に反応して増殖しなかったが、IL−2およびIL−4に反応して活発に増殖したことを示す図である。
CD4+T細胞をCFSEで標識し、示してある抗原で刺激し、図3におけるように精製した。次いで、精製した細胞を、IL−2単独(1μg/mL)、またはIL−2およびIL−4(それぞれ1μg/mLおよび500ng/mL)の存在下で拡張した。次いで、異なる条件下での細胞数を測定し、開始後の日数に対してプロットした。リコール抗原T細胞は、IL−2、ならびにIL−2およびIL−4の組合せに反応して増殖し、一方、食品抗原特異的なTr1細胞は、IL−2およびIL−4サイトカインの組合せに対してのみ増殖した。
【0090】
図7は、IL−2およびIL−4で拡張した食品抗原特異的なTr1細胞は、拡張後そのサイトカインの特性を維持することを示す図である。
図5で得られた、異なる抗原特異的なT細胞の集団を、CD3およびCD28mAbで刺激し、それらのサイトカインの特性を、刺激48時間後に回収した上清におけるELISAにより決定した。PPD特異的およびTT特異的なT細胞は、IL−2単独で拡張した後、そのTh1サイトカインの特性を維持し、一方、IL−4の添加により、予想通りこれらの細胞におけるIL−4の分泌が誘発された。これとは対照的に、食品抗原特異的なTr1細胞は、IL−2およびIL−4の存在下における拡張後でも、それらのサイトカインの特性を維持した。
【0091】
図8は、S2細胞系上のヒトタンパク質の発現の分析を示す図である。
OKT3重鎖および軽鎖、ならびに親(S2)細胞またはセルファクトリー(CF)細胞におけるCD80およびCD58の発現の2色フローサイトメトリー分析。
【0092】
図9は、操作されたCFがCD4+Tr1細胞と相互作用する画である。
S2細胞に、TCR/CD3複合体に結合させるために、膜結合している抗−CD3mAbを、CD28およびCD2分子との相互作用によりいくらかの共刺激シグナルを加えるためにそれぞれCD80、およびCD58を、ならびに細胞の成長を誘発するためにIL−2およびIL−4を形質移入した。
【0093】
図10:CF細胞系により誘発されたT細胞の増殖を示す図である。
セルファクトリーで刺激した、ポリクローナルPBL、CD4+T細胞Tr1細胞系(L1およびL2)、またはTr1クローン(C1およびC2)の増殖を、3および4日の間の培養物で、[3H]チミジンの組入れにより測定した。示してあるように、外因性のサイトカインの非存在下でT細胞をCF細胞で刺激した。72時間後、細胞を[3H]チミジンでパルス刺激を与え、さらなる18時間インキュベートした後、回収した。1分あたりの計数値を、3個の培養物からの平均値s.e.m.として示してある。
【0094】
図11は、セルファクトリーで刺激した主要なポリクローナルヒトTr1細胞の長期の成長を示す図である。
Tr1細胞を、外因性のIL−およびIL−4の存在下、CD3/28ビーズプラス外因性IL−2およびIL−4;OKT3、CD80およびCD58を発現するがIL−2およびIL−4を発現しないCF’細胞で、またはいかなる外因性の添加なしの完全なセルファクトリー系で刺激した。T細胞を、培養0、10および20日目にCF細胞で刺激した。
【0095】
図12は、CF細胞系と同時培養後のT細胞の純度を示す図である。
T細胞の純度、およびCF細胞系での刺激後を、培養の最初の7日間にCD3、CD4の発現に対して染色することにより評価した。培養物における全細胞を表すために、この実験では細胞のサイズ/破片に対するゲーティングを用いなかった。生存細胞は、死細胞を除外するためにヨウ化プロピジウムに対してゲーティングすることにより示してある。結果は、各々異なるドナーの、>10の異なる実験を表す。
【0096】
図13は、T細胞との同時培養後のCF細胞系の運命を示す図である。
CF刺激性因子細胞の運命を、培養の最初の7日間に、CD4およびOKT3H発現に対して染色することにより評価した。培養物における全細胞を表すために、この実験では細胞のサイズ/破片に対するゲーティングを用いなかった。生存細胞は、死細胞を除外するためにヨウ化プロピジウムに対してゲーティングすることにより示してある。結果は、各々異なるドナーの、>10の異なる実験を表す。
【0097】
図14は、用いた実験プロトコールの概略図である。
【0098】
図15は、OVA特異的Tr1クローンの単離を示す図である。
CFSEで染色したPBLをOVAで刺激し、CD4 CD49b、およびCD18で染色した。CD4+CD49b+CD18bright細胞をゲーティングし、CFSE細胞を選別した。選別された細胞をクローニングして、クローン1および2を産生し、大量の集団をOVAで刺激し、IL−10およびIFN−γで染色し、Tr1表現型を明らかにした。
【0099】
図16は、Tr1クローンの長期増殖の分析を示す図である。
次いで、2つのクローンを照射したセルファクトリーで刺激した。細胞の総数を、細胞数対培養日数の、片対数のプロットで表してある。
【0100】
図17は、70日間セルファクトリー上で拡張後のOVA−特異的Tクローン1および2のサイトカイン特性を示す図である。
サイトカインを、OVAで刺激したクローン、および自己由来の照射した単球の上清で測定した。抗原特異的な抑制を、また、トランスウェルアッセイにより試験した。自己由来のPBLを、底部ウェルにおける抗−CD3mAbで刺激し、無細胞、コントロールのCD4 T細胞、および2つのクローンを上部のバスケットにおいて加え、CD4細胞に対しては抗−CD3および自己由来の照射した単球で、2つのTr1クローンに対してはOVAおよび照射した自己由来の単球で刺激した。全体のプロトコールは、各々が異なるドナーからの、10回の実験を代表するものである。
【0101】
実施例
実施例1:食品抗原または自己抗原での刺激による、PBMC集団からの食品抗原または自己抗原特異的Tr1細胞の集団のin vitroでの獲得
1.1 材料と方法
細胞の精製およびフローサイトメトリー
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、健常ドナーのバフィーコートから、フィコール勾配上で遠心分離後、回収した。CD4+Tリンパ球を、CD11b+(OKM1−95)、CD20+(1F5C9)、およびCD8+(G42−8)細胞の枯渇後、ヤギ抗マウス−コーティングしたDynabeads(Dynal、Oslo、ノルウェー)を用いたネガティブ選択により、PBMCから精製した。20%FCSで補ったRPMIで37℃、1時間、PBMCを培養後、接着により、単球を精製した。回収した接着細胞の90%を超えたものがCD14+単球であった。CD4+Tリンパ球を蛍光抗体で細胞を染色し、FACS vantage SE、Beckton Dickinson、Le pont de Claix、フランス)上で選別後、CD49b+CD18brightまたはCD49b+CD45RO+T細胞で分離した。フローサイトメトリーでは以下の抗体を用いた:FITC、APC、またはPC5標識したマウス抗ヒトCD4(RPA−T4)、PC5標識したマウス抗ヒトCD3(UCHT1)、PE標識したマウス抗ヒトCD49b(12F1−H6)、FITC標識したマウス抗ヒトCD14(M5−E2)、PEまたはPC5標識したマウス抗ヒトCD8(6.7)、PE標識したマウス抗ヒトCD25(M−A251)、PE標識したマウス抗ヒトHLA−DR(G46−6)、PE標識したマウス抗ヒトCD69(FN50)、FITC抗ヒトCD45RO(UCHL−1)。抗体は全てBD−Pharmingen(Le Pont de Claix、フランス)より購入した。
【0102】
細胞培養
CD4+抗原特異的Tリンパ球を検出するために、PBMC(1000万細胞/mL)を、0.2μMのCFSEまたは2.5μMのPKH26(Molecular Probes、Leiden、オランダ)のいずれかで、PBS 1X中、37℃で5分間染色した。PBS 1Xで2回洗浄後、細胞の集団を、トリオバルブミン200μg/mL、ウシカゼイン200μg/mL、ヒトインスリン200μg/mL(Sigma、L'Isle d'Abeau、フランス)、破傷風毒素50μg/mL(Lederie、Pearl River、ニューヨーク)および結核菌からの精製タンパク質誘導体(PPD)(Staten serum Institute、デンマーク)2μg/mL、またはMBP(Sigma、L'Isle d'Abeau、フランス)50μg/mLの存在下または非存在下で、5%ヒト血清ABで補ったRPMI中、200万/mLでインキュベートした。培養9日後、細胞をPC5標識したマウス抗ヒトCD4で染色し、フローサイトメトリーにより分析した。CD49b+CD18bright、またはCD49b+CD45RO+T細胞を、また、選別し、0.2μMのCFSEまたは2.5μMのPKH26で染色し、4.105自己由来の単球の存在下、および抗原の存在下、200万/mLで培養した。
【0103】
抗原特異的細胞の選別および拡張
培養10日後、CD4+CFSEloまたはCD4+PKH26lo抗原特異的T細胞を、FACS vantage SE(Beckton Dickinson)上で選別し、抗原の存在下、IL−4 10ng/mLおよびIL−2 5ng/mLで補ったX−vivo15培地(Biowhittaker、Emerainville、フランス)中、自己由来の照射PBMCで拡張した。
【0104】
サイトカインの検出
サイトカインの生成を、10%FCS(Life Technologies、Cergy Pontoise、フランス)で補い、コーティングした抗CD3(UCHT1)10μg/mLおよび可溶性抗CD28(CD28.2)1μg/mLで刺激したRPMI中48時間培養したヒト細胞集団(200万/mL)の上清で行ったELISAにより検出した。用いた抗体は、抗−IL10(JES3−9D7)、抗−IL4(8D4)、抗−IL2(17H12)、抗−IL5(39D10)、および抗−IFNγ(A35)捕捉抗体、およびNIP標識した抗−IL10(JES3−12D8)、抗−IL4(MP4−25D2)、抗−IL2(B33−2)、抗−IL5(5A10)、および抗−IFNγ(B27)検出抗体であり、その後、ペルオキシダーゼ標識した抗−NIP抗体およびABTSを添加した。IL10、IL4、およびIFNγは、R&D systems(Minneapolis、ミネソタ州)からであり、IL2はChiron corp(Emmeryville、カリフォルニア州)からであった。抗体は全て、BD pharmingenからであった。
【0105】
増殖の測定
増殖を評価するために、T細胞の集団(100万細胞/mL)を、10%FCSで補ったRPMI中、示してあるサイトカインの存在下37℃で、自己由来の照射したPBMCおよび特異的な抗原を用いて、in vitroにおいて刺激した。T細胞の増殖を、生細胞を計数することにより評価した。
【0106】
抗原特異的Tr1細胞を単離する方法
本発明者らは、抗原特異的Tr1細胞の集団およびクローンを単離する方法をデザインした。
【0107】
第一の方法は、CFSEまたは任意の類似の色素(PHK)の組入れによる。細胞をCFSEで標識し、食品抗原で刺激し(0.1μg/mLから5mg/mLの範囲)、9から10日後、細胞を細胞蛍光測定法により選別し、CD3+CD28ビーズ、およびIL−2+IL−4で維持する。これらの培養条件下で著しく増殖することができなかった任意の他の細胞を除去するために、細胞を、1ウェルにつき1細胞クローニングし、異なるクローンを特異性およびサイトカインの分泌について分析してもよい。
【0108】
第二の方法は、活性化または増殖マーカーの細胞表面の発現による。PBMCを食品抗原または自己抗原で刺激し、抗原刺激した細胞を、抗−CD69、抗−CD25、または任意の活性化もしくは増殖マーカーに対して向けられた抗体により精製する。次いで、精製した細胞を、CD3+CD28刺激、およびIL−2+IL−4で維持する。あるいは、細胞を、IL−2およびIL−4の存在下で、フィーダー細胞およびCD3/CD28刺激で維持してもよい。精製した細胞は、FACS選別または限界希釈により、1ウェルにつき1細胞でクローニングしてもよい。
【0109】
第三の方法は、食品抗原または自己抗原で刺激後、増殖性の集団を濃縮することによる。PBMCをオバルブミン(または、任意の他の食品もしくは自己抗原)で刺激し、1週間後、細胞を、IL−2およびIL−4の存在下、同じ抗原で再刺激した。この組合せは最適であったが、任意の組合せまたは時間を用いてもよい。次いで、濃縮した集団を限界希釈によりクローニングした(が、任意の他のクローニング技術を用いてもよい)。次いで、クローンを、フィーダー細胞、抗−CD3、CD28、ならびにIL−2およびIL−4で刺激することにより増加させた。次いで、増殖性のクローンを、自己由来の照射したPBMCにより提示されるオバルブミンを用いることにより、特異性およびサイトカインの分泌について分析した。
【0110】
1.2 結果
CD4+CD3+CD49b+CD18brightTr1細胞は、食品抗原に反応して増殖するがワクチン抗原には反応しない
本発明者らは、CD4+CD3+CD49b+CD18brightTr1細胞を精製した場合、これらの細胞は、相反する集団とは対照的に、PPDの破傷風毒素などのリコール抗原に反応して増殖しなかったことを観察した(図1A)。本発明者らは、CD4+CD3+CD49b+CD18brightTr1細胞が、食品抗原に対して増殖する能力も試験した。以前に報告されているように、全体のCD3+CD4+T細胞の集団を食品抗原(オバルブミン、カゼイン、ソヤタンパク質またはウシ免疫グロブリン)で刺激した場合に、バックグラウンドを超えた至って最小限の増殖性の反応だけが観察された。しかし、本発明者らは、精製したCD4+CD3+CD49b+CD18brightTr1細胞の集団では活発な増殖性の反応を観察したものの、相反するメモリー集団では増殖を観察しなかった(図1B)。
【0111】
したがって、本発明者らは、CFSE組入れの、より感受性の高い技術を用い、Tr1細胞はリコール抗原に対して増殖しなかったが、オバルブミン、カゼイン、またはソヤタンパク質などの食品抗原に対して著しい増殖性の反応を示したことを観察した。これとは対照的に、CD4+T細胞の相反する集団は、食品抗原に対していかなる増殖性の反応を示さなかったが、リコール抗原に対して活発に増殖した(TTおよびPPD)(図2)。
【0112】
食品抗原特異的なCD4+CD3+CD49b+CD18brightT細胞はTr1サイトカインの特性を有する
CFSE組入れ技術を用いて(図3)、本発明者らは、FACSによりCFSElow増殖性細胞を単離し、ポリクローナル刺激(抗−CD3+CD28 mAb)により、それらのサイトカイン特性を分析した。これらの実験は、OVA、カゼイン、およびソヤに特異的な細胞は、以前に記載されているように、高レベルのIL−10、いくらかのIFN−γ、いくらかのIL−5を分泌し、IL−2およびIL−4は分泌しないTr1サイトカインの特性を有することを示した(Grouxら、Nature、1997年)。これとは対照的に、TT特異的またはPPD特異的な細胞は、予想通り、主にIFN−γを分泌するTr1表現型を提示した。
【0113】
Tr1細胞は自己抗原に対しても特異的である
CFSE技術を用いて、本発明者らは、様々なCD4+T細胞集団の、MBP(ミエリン塩基性タンパク質)またはインスリンなどの自己抗原に対する増殖性の反応も分析した。食品抗原同様、バルクのCD4+集団に(報告されている通り)、またはCD49b+メモリー(CD45RO+)集団に認められた増殖性の反応は、最小から無であった。驚くべきことに、精製したCD4+CD3+CD49b+CD18brightTr1細胞をインスリンまたはMBPで刺激した場合に、活発な増殖反応が観察された。さらに、これらのインスリン特異的またはMBP特異的な細胞は、IL−10分泌が高いTr1サイトカインの特性を提示した(図4)。
【0114】
Tr1細胞は、試験した抗原に対する自己免疫またはアレルギーに罹患している患者で単離できる
食品抗原および自己抗原は、それぞれアレルギーまたは自己免疫疾患に結び付けられているので、本発明者らは、MSに罹患している患者(MBPなどのミエリン成分に対して向けられている自己免疫疾患で)、またはカゼインに対する食品アレルギーを有する患者の、精製したCD4+CD3+CD49b+CD18brightT細胞の集団における増殖性のT細胞の存在を分析した。図5に示すように、本発明者らは、予想通り、MBP刺激またはカゼイン刺激が、それぞれ多発性硬化症またはカゼインアレルギーに罹患している患者における精製したCD4+CD3+CD45RO+CD49b-中への細胞の増殖を誘発することを観察した。増殖性の細胞の再刺激により、予想通り、これらの細胞が、MBPで刺激したMSに罹患している患者からの細胞の場合はTh1サイトカインの特性を、アレルギー患者の場合はカゼインに反応したTh2サイトカインの特性を提示したことが示された。しかし、本発明者らは、予想外に、正常コントロール同様、食品または自己抗原特異的なTr1細胞が、試験した抗原に対する自己免疫またはアレルギーを罹患している患者でも観察できたことを示す、CD4+CD3+CD49b+CD18brightTr1細胞における増殖も観察した(図5)。
【0115】
IL−2およびIL−4の組合せは、Ag特異的なTr1細胞の増殖を維持するために必要とされる
Tr1細胞(CD4+CD3+CD49b+CD18bright細胞)は、食品または自己抗原に反応して増殖したが、その増殖は、TT−またはPPD−特異的T細胞の増殖とは対照的に(図6)、IL−2単独を加えることにより維持することはできなかった(図6)。驚くべきことに、本発明者らは、IL−2およびIL−4を組み合わせて加えることにより、食品抗原または自己抗原特異的なTr1細胞の増殖性の反応を維持することができることを見出した(図7)。
【0116】
実施例2:フィーダー細胞を用いた、獲得された抗原特異的Tr1細胞集団の拡張
2.1 実験プロトコール
標識した抗体
ビーズ選別用
用いたビーズ:
《MagCellect Ferrofluid、ストレプトアビジン》(R&D)
《ヒツジ抗ラットビーズ》(Dako)
CD80用:ビオチン化マウス抗ヒトCD80(B7−1)、クローンL307.4(BD Biosciences Pharmingen)
OKT3用:精製ラット抗マウスIgκ軽鎖、クローン187.1(BD Biosciences Pharmingen)。
【0117】
FACS選別および通常のコントロールマーカー用
CD80用:マウス抗ヒトCD80−PE(フィコエリスリン)またはFITC(フルオレセインイソチオシアネート、クローンL307.4(BD Biosciences Pharmingen)
CD58用:マウス抗ヒトCD58−PEまたはPECy5(フィコエリスリン−シアニン5)(LFA−3)クローン1C3(BD Biosciences Pharmingen)
OKT3用:
重鎖:ビオチン化抗マウスIgG2a、クローンR19−15+ストレプトアビジン−FITC、またはストレプトアビジン−PE、またはストレプトアビジン−PECy5(BD Biosciences Pharmingen)
軽鎖:精製ラット抗マウスIgκ軽鎖、クローン187.1(BD Biosciences Pharmingen)+ウサギ抗ラットFITC(Dako)。
【0118】
増幅プライマー
OKT3−L FWD:
5’−ATGCGGATCCATGGATTTTCAAGTGCAG−3’(配列番号9)
OKT3−L REV:
5’−ATGCGAATTCCTAACACTCATTCCTGTTG−3’(配列番号10)。
【0119】
プライマーOKT3H1可変重鎖(571pb):
HSPAT1 FWD:
5’−ATG CCC GCG GGG TAC CCA CTG AAA ACT CTG ACT CAA C−3’(配列番号11)
OKT3 H2/3 REV:
5’−ACT GGA CAG GGA TCC AGA GTT C−3’(配列番号12)。
【0120】
プライマーOKT3H2重鎖CH1−CH3(850pb)
OKT3 H3/5 FWD:
5’−GAA CTC TGG ATC CCT GTC CAG TG−3’(配列番号13)
OKT3 H3/3 REV:
5’−ATG CGA ATT CTT TAC CCG GAG TCC GGG AGA AGC TC−3’(配列番号14)。
【0121】
プライマーpdgf血小板由来成長因子受容体、β(151pb)
PDGFR 5 FWD:
5’−ATG CGA ATT CGC TGT GGG CCA GGA CAC GCA G−3’(配列番号15)
PDGFR 3 REV:
5’−ATG CGG GCC CAA GCT TCT AAC GTG GCT TCT TCT GCC AAA G−3’(配列番号16)
IL−2 FWD:
5’−ATGCGGATCCATGTACAGGATGCAACTCCT−3’(配列番号17)
IL−2 REV:
5’−ATGCGAATTCTCAAGTCAGTGTTGAGATGA−3’(配列番号18)
LFA3 FWD:
5’−ATGCTGGATCCATGGTTGCTGGGAGCGACGC−3’(配列番号19)
LFA3 REV:
5’−ATGCTAAGCTTTCAATTGGAGTTGGTTCTGT−3’(配列番号20)
IL−4 FWD:
5’−ATGCGGATCCATGGGTCTCACCTCCCAACT−3’(配列番号21)
IL−4 REV:
5’−ATGCAAGCTTTCAGCTCGAACACTTTGAAT−3’(配列番号22)。
【0122】
セルファクトリーのクローニングおよび構築
ヒトCD80、IL−2、IL−4、およびCD58を、健常ドナーから得た末梢血Tリンパ球(PBL)から、pACベクター(Invitrogen)中に、昆虫アクチンプロモーターを用いてクローニングし(ChungおよびKeller、Mol Cell Biol.、1990年12月、10巻(12)、6172〜80頁;ChungおよびKeller、Mol Cell Biol.、1990年1月、10巻(1)、206〜16頁)、電気穿孔(elcectroporator Biorad、米国)により、S2細胞中に、CNCMに、I−3407番で2005年3月25日に寄託されたS2細胞系から形質移入した。同様に、OKT3の重鎖および軽鎖(Kungら、Science.、1979年10月19日、206巻(4416)、347頁)を、OKT3ハイブリドーマ細胞(ATCC CRL8001;Manassas、Virginia、米国)から、pACベクター中にクローニングし、FACSの前にS2細胞中に形質移入した。膜結合した抗−CD3mAbを得るために、重鎖の3'末端を除去し、血小板由来成長因子(PDGF)遺伝子CF'細胞の膜貫通部分により置換し、すなわちhCD80、hCD58、および抗−CD3モノクローナル抗体(mAB)、およびCFを発現する細胞、すなわちhCD80、hCD58、hIL−2、hIL−4、および抗−CD3モノクローナル抗体(mAb)を発現する細胞を、蛍光活性化細胞選別FACSにより、上記に記載した抗体を用いて単離した。選択マーカーは用いず、安定して形質移入した細胞をFACS染色により選択した。選別された細胞をクローニングし、形質移入および選択の各ラウンドでは、Tr1細胞の刺激に対して最も効果的なクローンを選択した。
【0123】
CD4+Tリンパ球の調製およびS2細胞培養
新鮮な末梢血リンパ球を、Ficoll hypaque遠心分離により得、CD4+T細胞を、抗−CD8抗体(Beckton Dickinson)を用いてネガティブ選択により精製した。培養物全てを、血清無添加のX−vivo(BioWhittaker、Walkersville、メリーランド州)で維持した。指摘されている場合はヒトIL−2(Chiron Thrapeutics、Emeryville、カリフォルニア州)を20IU/mLで加え、hIL−4を1μg/mLで用いた(フィーダー細胞がインターロイキンを発現した場合に得られる生物学的利点を組換えインターロイキンを培地に加えた場合に得られる結果と比べるため)。S2細胞を血清を含まないSFM培地(Gibco)で維持した。
【0124】
フローサイトメトリーおよびFACS選別
細胞を、4℃で、抗体で染色し、FACSCalibur(BD BioSciences、Mountain View、カリフォルニア州)上で分析し、またはFACStarシステムで選別した。
【0125】
2.2 結果
aAPCの構築
Tr1細胞は長期の成長に別個の共刺激の要求を有するという仮説を試験するために、本発明者らは、CD3/CD28の古典的な刺激に加えて、様々な共刺激性分子およびサイトカインを発現するように遺伝子操作され得る細胞ベースの系をデザインした。本発明者らがS2細胞を選択したのは、これらが同種の反応を促進するヒトHLAタンパク質を発現しないからであり、これらがヒトウィルスによって汚染され得ないからである(図8)。また、照射されたフィーダー細胞は、27℃で成長し、37℃で容易に死滅し、無血清培地で繁殖するので、これらの細胞が臨床上のセッティング中に最終的に導入されることは避けることができる。本発明者らは、ヒトCD80、ヒトCD58、および抗−hCD3mAbの2本の鎖を発現するS2細胞に形質移入し、次いでクローニングして、ヒトTr1細胞の刺激(CF')を可能にした(図8)。同様に、本発明者らは、CF'細胞にヒトIL−4およびIL−2のcDNAを形質移入することにより、CF系(図8、9)を産生した。CF細胞をネガティブ選択により調製した新鮮ヒトCD4+T細胞に加えることにより培養を開始した(実験プロトコールを参照)。
【0126】
CF細胞系はヒトポリクローナルCD4+T細胞およびTr1細胞を効果的に活性化する
セルファクトリーが、主なCD4+T細胞およびTr1細胞系またはTr1細胞のクローンの、初期の活性化ならびに増殖を刺激するその能力について試験した。様々な精製したT細胞を、1/1比のセルファクトリーで刺激した。本発明者らは、Tr1細胞の増殖反応が他のCD4+T細胞をわずかに上回って増強される[3H]チミジンの組入れ(図10)により判断して、セルファクトリーで刺激したT細胞の初期の成長速度は等しいことを見出した。本発明者らは、新鮮なT細胞をカルボキシフルオレセイン二酢酸スクシンイミジルエステル(CFSE)で標識し、培養の最初の5日間の間、細胞分裂を追跡することにより、この観察を確認した(データは示さず)。本発明者らは、細胞ベースの系は、CD4+T細胞の増殖および細胞分裂を誘発するのにCD3/28ビーズよりもより有効であったことも見出した(データは示さず)。セルファクトリーまたはCD4+T細胞を別々にインキュベートした場合は、増殖は見られなかった(図10、およびデータは示さず)。したがって、CD4+T細胞増殖の最初のラウンドに対する必要は、ポリスチレンビーズの状況でもたらされたCD3/CD28刺激に比べて、セルファクトリーではさらにより十分であった。
【0127】
CF細胞系はヒトTr1細胞の長期の拡張を可能にする
次に、本発明者らは、セルファクトリーはTr1細胞の長期の繁殖を維持するのに十分であったか否かを決定した(図11)。Tr1細胞を、hIL−2およびIL−4を分泌するCFで、サイトカインを分泌しないCF'であるが外因性のサイトカインの添加で、および外因性のサイトカインと共にCD3/28ビーズで刺激した。CD3/28ビーズで刺激した細胞は、第2の刺激の後、増殖することができず、先の試験と一致した。同様に、CF'で刺激したTr1細胞は、IL−2およびIL−4を外因性に添加した状況で、培養2から3週間以内に成長曲線のプラトー期に入り、再刺激後、さらなる最終的な細胞の成長は起こらなかった。これとは対照的に、Tr1細胞培養物をセルファクトリーで刺激した場合は、第3の刺激後でも指数関数的成長のままであった。T細胞の総数における平均的な増大は、6回の独立した実験においてCD3/28ビーズで刺激した培養物におけるよりもセルファクトリーで刺激した培養物において810倍高かったので、この長期の増殖の増大は再現性があった。
【0128】
培養物の表現型を分析すると、セルファクトリーで刺激した後、CD3+CD4+T細胞に進行性の濃縮が示された(図12)。7日後にフローサイトメトリーにより抗−CD3mAbを発現する細胞が検出できなかったことから分かるように、S2細胞は、細胞培養物から急速に消失し(図13)、この発見は、大規模な実験で確認され、ショウジョウバエ遺伝子に対するRT−PCRによっても確認された(データは示さず)。したがって、T細胞およびセルファクトリーの混合の培養により、1週間以内に純粋なT細胞の集団が得られる。
【0129】
セルファクトリーによる抗原特異的なTr1細胞の効率的な繁殖
Tr1細胞での免疫療法は、抗原特異的な調節機能を有する細胞を必要とすると思われる。セルファクトリーを、抗原特異的なTr1を拡張するために用いることができるか否かを決定するために、本発明者らは、10週間、それを用いてOVA特異的Tr1クローンを培養した(図14)。何百もの異なる自己抗原特異的な、または食品抗原特異的なT細胞のクローンで行った実験は、2つの異なるクローンの一例を示している。正常個体からのPBLをCFSEで標識して細胞分裂を追跡し、細胞を7日間オバルブミン(20μg/mL)で刺激した。次いで、細胞をCD4、CD18、およびCD49bで染色して、これらのマーカーを過剰発現するTr1細胞に対して選択し、OVA特異的細胞を、抗原特異的な細胞分裂によるCFSE標識における低減にしたがって選別した(図15)。これらの表現型をコントロールするために、大量の選別された集団をOVAで刺激し、典型的なTr1の集団を明らかにする細胞質内染色によりサイトカインの生成を分析した(図15)。クローニングの後細胞をセルファクトリーで刺激した(図16)。細胞全てを、10日間隔でセルファクトリーで再刺激した。培養中、特定のOVAの刺激は与えなかった。数カ月間、両クローンの指数対数的な成長曲線が得られた。ある抗原特異的なTr1細胞は、培養1ヵ月半後に、免疫療法に十分な細胞数である、1.5 109細胞を産生した。培養30日後に残存するTr1細胞の実質的な増殖能力により、これらのTr1は養子移植後、実質的に長期の移植の可能性があり得ることが示唆される。
【0130】
拡張された集団の抗原特異性が、培養中に維持されるか否かを決定するために、細胞をOVAで刺激した(図17)。1カ月半培養後、細胞をOVAで刺激し、自己由来APCおよびサイトカインの分泌を分析した。分析した2つの異なるクローンにTr1の典型的な特性が観察された。
【0131】
培養したTr1細胞のエフェクター機能を調べるために、典型的なトランスウェルアッセイで、抗原特異的な抑制性の機能を試験した(図17、およびデータは示さず)。両クローンともバイスタンダー細胞に対する典型的なTr1の抑制性効果を表した。抑制は、阻止抗体の使用により示されるように、IL−10およびTGF−βの分泌によるものであった(示さず)。OVA刺激の非存在下では抑制は得られなかった(データは示さず)。異なるドナーおよび異なるTr1クローンで、同様の結果が得られた(データは示さず)。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】CD4+CD18brightCD49b+Tr1細胞は、食品抗原に反応し、リコール抗原に反応しないで増殖することを示す図である。
【図2】CD4+CD18brightCD49b+T細胞は、食品抗原に対して増殖し、ワクチン抗原に対して増殖しないことを示す図である。
【図3】食品抗原に特異的なCD4+増殖性T細胞はTr1サイトカイン特性の表現型を有することを示す図である。
【図4】CD4+CD18brightCD49b+T細胞は、自己抗原およびTr1サイトカイン表現型を提示した自己抗原特異的細胞に対して増殖することを示す図である。
【図5】Tr1細胞は、試験した抗原に対する自己免疫疾患またはアレルギー性疾患に罹患している患者で観察することができることを示す図である。
【図6】食品抗原特異的なTr1細胞は、IL−2単独に反応して増殖しなかったが、IL−2およびIL−4に反応して活発に増殖したことを示す図である。
【図7】IL−2およびIL−4で拡張した食品抗原特異的なTr1細胞は、拡張後そのサイトカインの特性を維持することを示す図である。
【図8】S2細胞系上のヒトタンパク質の発現の分析を示す図である。
【図9】操作されたCFがCD4+Tr1細胞と相互作用する画である。
【図10】CF細胞系により誘発されたT細胞の増殖を示す図である。
【図11】セルファクトリーで刺激した主要なポリクローナルヒトTr1細胞の長期の成長を示す図である。
【図12】CF細胞系と同時培養後のT細胞の純度を示す図である。
【図13】T細胞との同時培養後のCF細胞系の運命を示す図である。
【図14】用いた実験プロトコールの概略図である。
【図15】OVA特異的Tr1クローンの単離を示す図である。
【図16】Tr1クローンの長期増殖の分析を示す図である。
【図17】70日間セルファクトリー上で拡張後のOVA−特異的Tクローン1および2のサイトカイン特性を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、PBMCまたは白血球の集団を、食品抗原または自己抗原で刺激し、食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団を、刺激した細胞の集団から回復することを含む、白血球またはPBMCの集団から食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団を獲得するためのin vitro方法に関する。好ましくは、PBMCまたは白血球の集団を、IL−2、ならびにIL−4およびIL−13からなる群から選択される少なくとも1つのインターロイキンの存在下で、ステップ(1)の後、同じ抗原で少なくとも1回再刺激する。このin vitro方法は、有利には、拡張に必要な因子を発現することができるフィーダー細胞と、回復した抗原特異的なTr1細胞の集団を接触させることにより、これらを拡張する第3のステップをさらに含んでもよい。好ましくは、フィーダー細胞は組換え昆虫のフィーダー細胞である。
【0002】
T細胞の集団の中でも、調節性Tr1細胞またはTr1細胞と呼ばれる、新規な、機能的に異なるT細胞の亜集団に関して、現在、証拠が蓄積しつつある。本発明者らは、調節性T1(Tr1)細胞を、炎症性疾患(すなわち、クローン病(H.Grouxら、Nature、1997年、389巻、737〜742頁)、皮膚の炎症(Foussatら、2003年、J.Immunol.、171巻、5018〜5026頁)、アテローム性動脈硬化(Mallatら、Circulation、2003年、108巻、1232〜1237頁)、または多発性硬化症(Barratら、2002年、195巻、603〜616頁)を処置するのに用いることができることを示した。これらのモデル全てにおいて、抗炎症性のTr1細胞は、特定の抗原に対して向けられており、抗原の、優先的には炎症部位上における送達は、その抗炎症の機能を誘発するためにTr1細胞の刺激に必要とされることが示された。したがって、ヒトの疾患を処置するためのTr1細胞を用いるために、抗原特異的なTr1細胞を単離することができなければならない。しかし、これは非常に困難であることが証明されていた。
【0003】
本発明者らは、Tr1細胞は、特異的な表面マーカーを発現し、かつCD3およびCD4マーカーの同時発現、ならびにCD49bの発現および高レベルのCD18の発現により特徴付けられ得ること、ならびに、好適な場合には、タンパク質CD4、PSGL−1、PECAM−1、およびαV/β3をコードする遺伝子の過剰発現を実証することにより特徴付けられ得ることも示している(WO2005/000344号で公開された国際特許出願を参照)。
【0004】
驚くべきことに、本発明者らは、ヒト血液から、これらのマーカーの発現に基づいて単離された、精製されたTr1細胞(および、結果的にPBMCまたは白血球の集団に存在するTr1細胞)は、食品抗原または自己抗原に反応して活発に増殖すること、ならびにこれらの細胞の増殖性の反応はIL−2およびIL−4(ILはインターロイキン)の両方を用いた刺激により維持され得ることを観察している。当業者に一般的である知識によれば、以前は、第一にPBMCの集団から抗原特異的なナイーブのT細胞を単離し、第二に抗原特異的なTr1細胞の分化を誘発することが必要であったので、この可能性は、先行技術に勝る重要な利点をもたらすものであり、一方、食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞をPBMC(または白血球)の集団から直接獲得することは、今や可能である。本発明では、食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞を獲得するためにin vitro方法が単純化され、これらの細胞は質に関して変化していないので、これらの細胞を投与する患者に対する安全性は増大している。
【0005】
したがって、本発明の主題は、食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団を、白血球の集団または末梢血単核細胞(PBMC)の集団から獲得するためのin vitro方法であり、前記方法は:
1)PBMCまたは白血球の集団を、食品抗原または自己抗原で刺激するステップと、
2)食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団を、刺激した細胞集団から回復するステップと
を含む。
【0006】
白血球は、その重要性、その分布、その数、その生存期間、およびその可能性により特徴付けられるいくつかのタイプの細胞を包含する。これらのタイプは、以下の通りである:多核または顆粒白血球、その中に好酸球性、好中球性、および抗塩基球性の白血球、ならびに単核細胞、または末梢血単核細胞(PBMC)、が見出され、末梢血単核細胞は大型の白血球細胞であり免疫系の細胞型(リンパ球および単球)である。白血球またはPBMCは、当業者には知られている任意の方法により末梢血から分離することができる。有利には、PBMCを分離するために、遠心分離、好ましくは密度勾配遠心分離、好ましくは不連続密度勾配遠心分離を用いることができる。一代替は特異的なモノクローナル抗体の使用である。ある実施形態では、典型的には、標準の手順を用いて、Ficoll−Hypaqueにより全血製品からPBMCを単離する。他の実施形態では、PBMCを白血球搬出法により回収する。
【0007】
「抗原特異的なTr1細胞の集団」の表現における「抗原」の語は、免疫原性のペプチドを意味する。免疫原性のペプチドは、個体の主要組織適合複合体(MHC)分子に結合することができ、前記個体のT細胞受容体によって認識されるペプチドである。
【0008】
本出願で使用されるタンパク質、ポリペプチド、ペプチドの語は、より小さい基本であるアミノ酸の長鎖における結合により形成される分子を、分け隔てなく意味するものである。
【0009】
「食品抗原」の語は、以下の非限定的なリストの食品抗原などの、食料品に由来する免疫原性のペプチドを意味する:ウシ血清、例えばリポカリン、Ca結合性S100、α−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリン、ウシ血清アルブミン、免疫グロブリン、またはカゼイン。食品抗原は、また、タイセイヨウサケ抗原、例えばパルブアルブミン、トリ抗原、例えばオボムコイド、オバルブミン、Ag22、コナルブミン、リゾチーム、またはトリ血清アルブミン、エビ抗原、例えばトロポミオシン、コムギ抗原、例えばアグルチニンまたはω−5グリアジン、セロリ抗原、例えばセロリプロフィリン、ニンジン抗原、例えばニンジンプロフィリン、リンゴ抗原、例えば、タウマチン、リンゴ脂質輸送タンパク質、リンゴプロフィリン、洋ナシ抗原、例えば、洋ナシプロフィリン、イソフラボンレダクターゼ、アボカド抗原、例えばエンドキチナーゼ、アンズ抗原、例えばアンズ脂質輸送タンパク質、モモ抗原、例えばモモ脂質輸送タンパク質またはモモプロフィリン、大豆抗原、例えばHPS、大豆プロフィリン、または(SAM22)PR−10プロット(prot)。
【0010】
「自己抗原」の語は、前記個体のタンパク質に由来する免疫原性のペプチドを意味する。例示によるものでは、これは以下の非限定的なリストの自己抗原であってよい:アセチルコリン受容体、アクチン、アデニンヌクレオチドトランスロケーター、β−アドレナリン受容体、芳香族L−アミノ酸デカルボキシラーゼ、アシオアログリコプロテイン(asioaloglycoprotein)受容体、殺菌性/透過性増強タンパク質(BPi)、カルシウム感知受容体、コレステロール側鎖切断酵素、コラーゲンIV型αγ鎖、チトクロームP450 2D6、デスミン、デスモグレイン、デスモグレイン−3、F−アクチン、GM−ガングリオシド、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、グルタミン酸受容体、H/K ATPase、17−α−ヒドロキシラーゼ、21−ヒドロキシラーゼ、IA−2(ICAS12)、インスリン、インスリン受容体、1型内因子、白血球機能抗原1、ミエリン関連糖タンパク質、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンオリゴデンドロサイトタンパク質、ミオシン、P80−コイリン(coilin)、ピルビン酸脱水素酵素複合体E2(PDC−E2)、ヨウ化ナトリウム共輸送体、SOX−10、甲状腺および眼筋共有タンパク質、チログロブリン、甲状腺ペルオキシダーゼ、チロトロピン受容体、組織トランスグルタミナーゼ、転写活性化補助因子p75、トリプトファンヒドロキシラーゼ、チロシナーゼ、チロシンヒドロキシラーゼ、ACTH、アミノアシル−tRNA−ヒスチジル合成酵素、カルジオリピン、カルボン酸脱水酵素II、セブトロメア(cebtromere)関連タンパク質、DNA依存ヌクレオソーム刺激ATPase、フィブリラリン、フィブロネクチン、グルコース6リン酸イソメラーゼ、β2−糖タンパク質I、ゴルジン(95、97、160、180)、熱衝撃タンパク質、半接着斑タンパク質180、ヒストンH2A、H2B、ケラチン、IgE受容体、Ku−DNAタンパク質キナーゼ、Ku−核タンパク質、Laリンタンパク質、ミエロペルオキシダーゼ、プロテイナーゼ3、RNAポリメラーゼI〜III、シグナル認識タンパク質、トポイソメラーゼI、チューブリン、ビメンシン(vimenscin)、ミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質(MOBP)、プロテオリピドタンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP/クローディン11)、環状ヌクレオチド3’ホスホジエステラーゼ(CNPase)、BP抗原1(BPAG1−e)、トランスアルドラーゼ(TAL)、ヒトミトコンドリア自己抗原PDC−E2(Novo1および2)、OGDC−E2(Novo3)、およびBCOADC−E2(Novo4)、水疱性類天疱瘡(BP)180、ラミニン5(LN5)、DEAD−boxタンパク質48(DDX48)、またはインスリノーマ関連抗原2。
【0011】
細菌またはウィルスの抗原などは、「食品抗原または自己抗原」の表現から除外される。
【0012】
アミノ酸の一配列から大部分構成される食品抗原または自己抗原は、アミノ酸の配列が知られている場合にはFmoc法などの通常の技術により、または知られている組換えDNA技術により合成することができる(Sambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory press(1989年)を参照)。いくつかの食品抗原または自己抗原は、また、市販されている(Sigma、L’Isle d’Abeau、フランス)。食品抗原または自己抗原は、また、抽出することができる。
【0013】
好ましくは、Tr1細胞の集団に特異的な食品抗原または自己抗原は、PBMCの集団から獲得することができる。
【0014】
より好ましくは、PBMCまたは白血球の集団を、インターロイキン−2(IL−2)、ならびにインターロイキン−4(IL−4)およびインターロイキン−13(IL−13)からなる群から選択される少なくとも1つのインターロイキンの存在下で、ステップ(1)の後、同じ抗原で少なくとも1回再刺激する。
【0015】
食品抗原または自己抗原の刺激の頻度は、少なくとも1回、好ましくは数週間(通常約3週間)にわたり週1回、または5から12日の間隔で数回である。培地の上清の一部分を抗原を含む新鮮なPBMCまたは白血球の培地の同量で交換することにより、複数の刺激を行うことができる。PBMCまたは白血球の集団の再刺激に用いられるIL−2およびIL−4は、合成または組換えインターロイキンであってよく、当業者であればこのようなインターロイキンを得るための方法に広い経験がある(例えば、Sambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laborator press(1989年)を参照)。IL−2およびIL−4は、R&D Systems and Peprotechなどの様々な供給源から購入することができる。
【0016】
好ましくは、食品抗原または自己抗原は組換えまたは合成の抗原である。
【0017】
より好ましくは、食品抗原は、オバルブミン、カゼイン、ソヤタンパク質、それらのフラグメント、変異体および混合物を含む群から選択される。
【0018】
本明細書において食品抗原または自己抗原の「変異体」の語は、天然の抗原とほとんど同一である抗原、および同じ生物学的活性を共有する抗原を意味する。天然の抗原とその変異体との間の、最小の相違は、例えば、アミノ酸の置換、欠失、および/または付加にある。このような変異体は、例えば、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されている、保存的アミノ酸置換を含むことができる。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野では定義されており、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷の極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β−分枝側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。
【0019】
最も好ましくは、食品抗原は、配列番号23の配列の鶏卵オバルブミン、配列番号24の配列のウシαS1−カゼイン、配列番号25の配列のウシβ−カゼイン、ならびに配列番号23、配列番号24、および配列番号25の配列の1つと少なくとも70%、好ましくは、75、77、80、82、85、87、90、92、95、96、97、98、99%の同一性を有する配列を含む群から選択される。
【0020】
別の好ましい一実施形態では、自己抗原は、インスリン、ミエリン塩基性タンパク質、それらのフラグメント、変異体、および混合物を含む群から選択される
本明細書で用いられる「食品抗原または自己抗原でPBMCまたは白血球の集団を刺激する」の表現は、抗原を、PBMCまたは白血球の集団に加え、前記PBMCまたは白血球の集団のT細胞と反応するように培養することを意味する。食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団を生成するために、PBMCまたは白血球の集団を、前記PBMCまたは白血球の集団のT細胞における主要な活性化シグナルを誘発するのに適する形態で、本発明による抗原と接触させ、すなわち、CD3/TCR複合体によりT細胞においてシグナルが誘発されるように、抗原がPBMCまたは白血球の集団に提示される。例えば、抗原は、可溶性の形態で(PBMCもしくは白血球により発現されるMHC分子と複合体を形成するために直接、または抗原は可溶性の、重合体の、もしくは表面(プラスチック、...)に結合した形態のMHC分子のいずれかに連結することができる)、あるいはMHC分子と伝導して抗原提示細胞(APC)により、PBMCまたは白血球に提示され得る。B細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、または前記PBMCもしくは白血球の集団のT細胞に抗原を提示することができる他の細胞などの抗原提示細胞(APC)を、抗原提示細胞がPBMCまたは白血球に抗原を提示するように、抗原(例えば、可溶性の抗原)の存在下で、PBMCまたは白血球とインキュベートすることができる。あるいは、APCを、抗原とプレインキュベートしてから、PBMCまたは白血球に加えることができる。あるいは、食品抗原または自己抗原を発現する細胞をPBMCまたは白血球の集団とインキュベートすることができる。
【0021】
好ましくは、PBMCまたは白血球の集団の刺激は、マイクロプレートのウェル、細胞培養フラスコ、または細胞培養バッグで行う。用いることができるPBMCまたは白血球の培地は、当業者には非常によく知られており、例えば、PBMCまたは白血球は、ヒト血清またはX−vivo 15(Cambrex)で補ったRPMI培地で刺激してもよい。
【0022】
有利には、ステップ(1)で刺激したPBMCの集団は、0.01.106から100.106細胞/mLまで、好ましくは0.2.106から5.106細胞/mLまで、より好ましくは0.1.106から3.106細胞/mLまで、さらにより好ましくは0.5.106から2.5.106細胞/mlまで、最も好ましくは106から2.106細胞/mLまでを含む。
【0023】
より有利には、ステップ(1)において、PBMCの集団の刺激に用いられる食品抗原または自己抗原は、0.1μg/mLから5mg/mLまで、好ましくは1から200μg/mLまでの可溶性の形態である。
【0024】
しかし、PBMCまたは白血球の集団の刺激に用いる食品抗原または自己抗原の特定の量は、用いる食品抗原または自己抗原次第であるということは、当業者には知られている。
【0025】
別の特定の一実施形態では、PBMCまたは白血球の集団を、ステップ(1)の刺激の前に、細胞蛍光測定法により決定することを可能にする細胞分裂蛍光マーカーとインキュベートし、刺激した細胞集団の蛍光強度が、PBMCまたは白血球の集団の蛍光強度の2分の1以下であり、細胞分裂が前記の刺激された細胞の集団で起こり、ステップ(2)で回復した前記の刺激された細胞集団が抗原特異的なTr1細胞の集団である。
【0026】
このような方法では、蛍光マーカーを用いて細胞分裂をモニターすることが可能であり、当業者にはよく知られており、抗原特異的なTr1細胞の集団を回復するステップ(2)で用いるのに非常に良好に好適である、というのは蛍光強度がPBMCまたは白血球の集団の蛍光強度の2分の1以下である、刺激された細胞の集団は、食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団を含むからである。有利には、蛍光強度がPBMCまたは白血球の集団の蛍光強度の2分の1以下である、刺激された細胞の集団は、食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団である。
【0027】
好ましくは、細胞分裂蛍光マーカーは、カルボキシフルオレセイン二酢酸スクシンイミジルエステル(CFSE)マーカー、オレゴングリーン488カルボン酸二酢酸(Carboxy−DFFDA SE)マーカー、またはPKH26(発見者であるPaul Karl Horan、PKHより)マーカーであり、全て、数ある中でもInvitrogenで市販されている。
【0028】
ステップ(2)の食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団の回復は、当業者にはよく知られている様々な方法により行うことができる。例えば、Tr1細胞は、Elisa、フローサイトメトリー、前記Tr1細胞のマーカーに対して向けられた標識された抗体での、例えば:
APC−複合した抗−CD4(RPA−T4)−Becton Dickinson(APCは、アロフィコシアニン)
PC5−複合した抗−CD3(UCHT−1)−Caltag(PC5はフィコエリスリン−シアニン5)
PE−複合した抗−CD18(6.7)−Becton Dickinson(PEはフィコエリスリン)
FITC−複合した抗−CD49b(AK−7)−Becton Dickinson、またはPE−標識したマウス抗ヒトCD49b(12F1−H6)(FITCはフルオレセインイソチオシアネート)
でのイムノアフィニティークロマトグラフィーで同定および/または精製することができる。特異的なTr1細胞のマーカーは、今では当業者にはよく知られており、国際特許出願WO2005/000344に十分に記載されている。
【0029】
したがって、好ましい一実施形態では、抗原特異的なTr1細胞の集団を、前記抗原特異的なTr1細胞の集団の細胞の表面に存在するタンパク質に対して向けられている蛍光標識した抗体を用いて、細胞蛍光測定法によりステップ(2)で回復する。
【0030】
IL−4、IL−10、およびIFN−γの発現を測定し、Tr1細胞をそのサイトカイン発現プロファイルにより同定するために、ELISA試験および細胞内染色も用いることができる。当業者は通常このような方法を使用する。例えば、ステップ(1)の刺激の後に得られた上清を、IL−4、IL−10、およびIFN−γの発現に対して向けられたNIP−標識した抗体(NIPは、(4−ヒドロキシ−5−ヨード−3−ニトロフェニル)アセチル(NIP))と接触させ、その後、ペルオキシダーゼ標識した抗−NIP抗体およびABTSを加えてもよい(ABTSは2,2'−アジノ−ジ(3−エチル−ベンズチアゾリン−6−スルホネート))(R&D Systems、Minneapolis、ミネソタ州、およびChiron Corp.、Emmeryville、カリフォルニア州より)。
【0031】
好ましくは、抗原特異的なTr1細胞の集団を、ステップ(2)で、クローニング技術、例えば有利には限界希釈によりにより回復する。このような技術は当業者にはよく知られており、本記載ではさらに公開しない。
【0032】
抗原特異的なTr1細胞の集団を回復するこれらの方法は、単独で、または組み合わせて使用してもよいことを想定しなければならない。例えば「CFSE法」を、細胞蛍光測定法と、またはクローニング限界希釈技術と組み合わせて用いてもよい。細胞蛍光測定法と、その後クローニング技術を用いることも可能である。
【0033】
PBMCまたは白血球の集団は、哺乳動物の集団であることが好ましい。これは、ヒト、および非ヒトの哺乳動物(イヌ、ネコ、マウス、ラット;家畜、および家禽などの農業の対象の動物など)であってよい。より好ましくは、PBMCまたは白血球の集団はヒトの集団である。
【0034】
有利には、本発明は、さらに:
3)Mp培地で、ステップ(2)で回復した抗原特異的なTr1細胞の集団を拡張するステップ
を含む。
【0035】
Mp培地は、それが前記抗原特異的なTr1細胞の集団に好適であるならば、任意の種類であってよく、当業者であれば選択は容易である(シュナイダー(Schneider's)培地、無血清培地、...)。
【0036】
本出願において「拡張」、「増殖」、および「成長」の語は、交換可能に使用することができ、細胞集団における増大する数の細胞を意味する。好ましくは、抗原特異的なTr1細胞の集団は指数関数的に拡張する。
【0037】
有利には、ステップ(3)の抗原特異的なTr1細胞の集団の拡張は、前記細胞の集団を、IL−2およびIL−4の存在下でCD3+CD28ビーズ(例えば、Dynal、Oslo、ノルウェーから購入)と接触させることにある。
【0038】
特に有利な一実施形態では、抗原特異的なTr1細胞の集団を拡張するステップ(3)が、Mp培地における因子のグループの存在を必要とし、前記拡張ステップが、
a)温度T1で、Mf培地で前記グループの因子を発現することができるフィーダー細胞を培養するステップであって、このT1が、前記フィーダー細胞の増殖を可能にするステップと、
b)そのMf培地を除いた、またはMf培地のないステップ(a)で得たフィーダー細胞を、Mp培地に含まれる抗原特異的なTr1細胞の集団と接触させるステップであって、ここで、抗原特異的なTr1細胞の集団、フィーダー細胞、およびMp培地を含む混合物を得るために、前記Mp培地は、因子のグループを最初に含んでいないステップと、
c)Mp培地において、フィーダー細胞によって発現されているグループの因子を含むステップ(b)で得られた混合物を培養するステップであって、ここで、
抗原特異的なTr1細胞の集団が増殖し、
フィーダー細胞が増殖しないように
培養する前記ステップ(c)を少なくとも約35℃である温度T2で行い、
抗原特異的なTr1細胞の集団を拡張するステップと、
d)そのように拡張した抗原特異的なTr1細胞の集団を回復するステップと
を含む。
【0039】
フィーダー細胞を抗原特異的なTr1細胞の集団に加える場合(ステップ(b))、[フィーダー細胞:抗原特異的なTr1細胞の集団]の比は重要ではない。有利には、この比は[1:1]であってよい。
【0040】
フィーダー細胞は、少なくとも約35℃であり、抗原特異的なTr1細胞の集団の培養温度T2で増殖しないのであれば、任意のタイプであってよい。
【0041】
「少なくとも約35℃」の表現は、温度が35℃より0.1℃下から(34.9℃から35℃まで)変化してよいことを意味する。当業者であればとにかく温度のこのような最小の変動を知っている。
【0042】
細胞培養に広い経験のある当業者であれば、用いるべき特定の条件、特に、各々のフィーダー細胞の集団および抗原特異的なTr1細胞の集団の至適培養温度T1およびT2を知っている。Mf培地は、それが前記フィーダー細胞のタイプに好適であるならば任意の種類であってよく、当業者であれば選択は容易である(シュナイダー培地、...)。
【0043】
ステップ(b)のフィーダー細胞の抗原特異的なTr1細胞の集団との接触、およびステップ(c)の温度T2での混合物の培養は、通常、同時のステップであると考えるべきであり、接触前、フィーダー細胞と抗原特異的なTr1細胞の集団は、それぞれ一方はMf培地で温度T1で、他方はMp培地で温度T2で別々に培養される。次いで、フィーダー細胞「単独」、またはフィーダー細胞を含むMf培地を、そのMp培地に存在し、温度T2で培養される抗原特異的なTr1細胞の集団と接触させる。その結果、フィーダー細胞によって発現される因子のグループのおかげで拡張する、抗原特異的なTr1細胞の集団と異なり、フィーダー細胞は温度T1から温度T2に即座に通過し、止まって増殖する。
【0044】
長時間、例えば、少なくとも2または3カ月の間、フィーダー細胞を定期的に、例えば毎週、前記抗原特異的なTr1細胞の集団と接触させることにより、抗原特異的なTr1細胞の集団のin vitroの指数関数的な成長を維持することが可能である。
【0045】
より有利には、フィーダー細胞は、フィーダー細胞の培養にそれ以上好適ではない温度T2のために、ステップ(c)の間に死滅する。最も有利には、フィーダー細胞の死滅によってもたらされる前記細胞の細胞膜のフラグメントを、ステップ(d)で除去する。
【0046】
ステップ(c)で、抗原特異的なTr1細胞の集団を培養する十分な時間、例えば、好ましくは数時間の後、得られたMp培地は抗原特異的なTr1細胞の集団、生存可能なフィーダー細胞、および場合によりフィーダー細胞の細胞膜のフラグメントの混合物からなり、拡張された抗原特異的なTr1細胞の集団をステップ(d)で回復しなければならない。このような回復は、生存可能なフィーダー細胞、および場合により前記細胞膜のフラグメントから抗原特異的なTr1細胞の集団を、当業者にはよく知られている任意の好適な分離方法、例えば、フィーダー細胞の表面で結合することができる特異的な標識されたリガンド、または抗原特異的なT細胞の集団の細胞表面タンパク質を用いて、フローサイトメトリーなどを用いて分離することにより行うことができる。他の方法、例えば、洗浄方法、および/または、Ficoll(登録商標)などの分離培地を用いた密度勾配遠心分離などの遠心分離も使用することができ、このような遠心分離は、細胞膜のフラグメントを除去するのに好適な方法である。
【0047】
拡張された抗原特異的なTr1細胞の集団を哺乳動物に投与することが企図される場合にはなおさら、フィーダー細胞の細胞膜のフラグメントの除去は強制ではないが推奨されるものであることに留意しなければならない。そうでないと、前記の拡張された抗原特異的なTr1細胞の集団が汚染される危険性がある。
【0048】
有利には、因子のグループは、フィーダー細胞の細胞膜に固定される因子、および前記フィーダー細胞によって分泌される因子を含む。より有利には、前記グループの因子は、拡張するべき抗原特異的なTr1細胞の集団の細胞表面タンパク質と相互作用する。
【0049】
フィーダー細胞をステップ(a)で培養する場合、フィーダー細胞はその細胞膜表面でグループのいくつかの因子を、Mf培地でいくつかの他の因子を発現する。ステップ(b)の接触では、「膜因子」はフィーダー細胞の膜にすでに固定されているが、フィーダー細胞がそのMf培地から予め除去されている場合は「分泌因子」を除去してもよい。いずれにしても、フィーダー細胞がそれ以上増殖しない場合でも、前記フィーダー細胞が死滅するまで、「膜因子」および「分泌因子」の両方が、ステップ(c)でフィーダー細胞により発現される。死滅したフィーダー細胞の細胞膜のフラグメントに固定されている「膜因子」が、抗原特異的なTr1細胞の集団の生成で依然として役割を担っていることもあり得る。
【0050】
拡張された抗原特異的なTr1細胞の集団は、その拡張を可能にする細胞のシグナルに結び付けられている細胞表面タンパク質を有する。このような細胞表面タンパク質は、本発明ではフィーダー細胞により提供される特定のリガンド、または因子のおかげで活性化され、フィーダー細胞は抗原特異的なTr1細胞の集団の拡張を可能にする因子のグループを発現する。当業者であれば、このような因子が抗原特異的なTr1細胞の集団の細胞表面タンパク質と相互作用するように、フィーダー細胞が発現しなければならない特定の因子を知っている。
【0051】
さらにより好ましくは、フィーダー細胞は組換え細胞であり、前記グループの因子をコードする異種核酸を含む。
【0052】
「組換え細胞」または「組換えフィーダー細胞」の表現は、前記細胞においてグループの因子をコードする異種核酸を導入することを意味する。このような導入は、電気穿孔、リン酸カルシウム沈降、DEAE−デキストラン処置、リポフェクション、マイクロインジェクション、およびウィルスベクターでの感染を含む、核酸のフィーダー細胞中への導入に有用な様々な技術を包含する。このような適切な方法は、当業者には非常によく知られており、例えば、Sambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory press(1989年))に見ることができる。導入すべき核酸は、例えば、拡張すべき抗原特異的なTr1細胞の集団の細胞表面タンパク質との相互作用を受けやすい因子をコードする遺伝子を包囲するDNA、ゲノムのDNAフラグメント、センス鎖のRNA、またはこのような遺伝子をコードするcDNAを含む組換え発現ベクターであってよい。異種核酸は、全長の因子をコードすることができ、あるいは、フィーダー細胞中に導入される場合は、本発明にしたがって抗原特異的なTr1細胞の集団の生成を可能にするのに十分であるそのペプチドフラグメントをコードすることができる。核酸は、抗原特異的なTr1細胞の集団の細胞表面タンパク質の天然のリガンド(共刺激タンパク質)、またはそのフラグメント、またはリガンドもしくはそのフラグメントの修飾された形態をコードすることができる。本発明は、抗原特異的なTr1細胞の集団の拡張を増強する能力を保持する因子の、フラグメント、突然変異体、または変異体(例えば修飾された形態)の使用を含むことが企図される。因子の「変異体」は、天然のリガンドと著しい相同性を共有するタンパク質、および抗原特異的なTr1細胞の集団の拡張に結び付けられるタンパク質を意味する。生物学的に活性な、または生物学的に活性な形態のタンパク質の語は、抗原特異的なTr1細胞の集団の拡張をもたらすことができる因子の形態を含む。当業者であれば、フィーダー細胞において因子をコードする核酸を導入する際に、細胞の拡張を増強するその能力に基づいてそのような因子の変異体を選択することができる。因子の特定の変異体が抗原特異的なTr1細胞の集団の拡張を増強する能力は、例えば、任意の知られているアッセイまたは方法により組換えフィーダー細胞を非組換えフィーダー細胞と比べることにより、容易に決定することができる。さらに、当業者であれば、因子の主要なアミノ酸配列における変更は、タンパク質が抗原特異的なTr1細胞の集団の拡張を可能にする能力を著しく損なうことなしに許容されると考えられることを理解するであろう。したがって、比較可能な天然の因子の天然に存在するアミノ酸配列に比べてアミノ酸の置換、欠失、および/または付加を有する因子の変異体は、本明細書に記載する天然型の因子の機能上の活性を依然として保持しており、やはり本発明に包含される。このような変異体は、例えば保存的なアミノ酸の置換を含むことができる(上記を参照)。
【0053】
核酸は、因子の発現に適する形態であり、前記の形態は、遺伝子の転写および翻訳に必要とされるコード配列および制御配列を全て含んでおり、プロモーター、エンハンサー、およびポリアデニル化シグナル、ならびにN末端シグナル配列を含む、場合により因子をフィーダー細胞の表面に輸送するのに必要な配列を含むことができる。制御配列は、また、構成性の、または誘導性の転写をもたらすように選択することもできる。フィーダー細胞の表面における因子の発現は、細胞を免疫蛍光染色することにより確認することができる。例えば、細胞を、共刺激分子に対して反応性の蛍光標識したモノクローナル抗体で、または因子に結合する蛍光標識した可溶性の受容体で染色してもよい。フィーダー細胞が発現する因子を非常によく知っている当業者であれば、フィーダー細胞が発現する因子を認識する好適なモノクローナル抗体も知っている。あるいは、因子に結合する標識した可溶性のリガンドタンパク質を用いて、フィーダー細胞表面上のそれらの発現を検出することができる。当業者であれば、免疫蛍光染色した細胞を検出するために使用される技術および装置を非常によく知っており、好ましくは、蛍光標示式細胞分取器(FACS)が検出に用いられる。
【0054】
因子をコードする核酸が調節エレメントに操作可能に連結している場合、これは、典型的には、例えばプラスミドおよびウィルスを含むベクターで運ばれる。したがって、調節コントロールエレメントに操作可能に連結している、本発明の因子をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を、本明細書では「発現ベクター」とも呼ぶ。発現ベクターは、形質転換されるべきフィーダー細胞のタイプを基準として選択される。例えば、フィーダー細胞がショウジョウバエの昆虫のフィーダー細胞である場合、培養した昆虫細胞においてタンパク質の発現に利用可能な、ショウジョウバエの構成的なベクターには、pAcシリーズ(Smithら、(1983年)、Mol.Cell Biol.、3巻、2156〜2165頁)、およびpVLシリーズ(Lucklow,V.A.、およびSummers,M.D.、(1989年)、Virology、170巻、31〜39頁)が含まれる。
【0055】
さらに、フィーダー細胞は、その表面にいかなる内因性のクラスIおよび/またはIIの主要組織適合複合体(MHC)分子も有さないことが好ましい。これは、これらの細胞が、遺伝的に形質転換されていなければ、天然にMHC分子を発現しないことを意味する。フィーダー細胞の表面にこれらの内因性のクラスIおよび/またはII MHC分子が存在しないことは、フィーダー細胞と抗原特異的なTr1細胞の集団との間の同種間の反応を避けるのにきわめて重要である。その結果、本発明のフィーダー細胞を用いて、短時間で任意のドナーからの抗原特異的なTr1細胞の集団を拡張することができる。
【0056】
より特定の一実施形態では、ステップ(b)でフィーダー細胞がそのMf培地から除去される。
【0057】
好ましくは、フィーダー細胞は昆虫のフィーダー細胞であり、T1がT2よりも低い。
【0058】
本発明では、それが上記の条件を満たすのであれば、任意の好適な昆虫のフィーダー細胞を用いることができる。例えば、Sf9(数ある中で、ATCCにCRL1711番で、またはDSMZにACC125番で寄託され、BD Biosciences Pharmingen、米国により市販されてもいる)、Sf21(数ある中でDSMZにACC119番で寄託され、BD Biosciences Pharmingen、米国により、やはり市販されている)、またはS2細胞系の昆虫のフィーダー細胞であってよい。好ましくは、昆虫のフィーダー細胞はS2ショウジョウバエ細胞系由来である。S2ショウジョウバエ細胞系は当業者にはよく知られており、先行技術に広く開示されている。S2ショウジョウバエ細胞系は市販されており(Invitrogen、フランス、など...)、特にGerman collection of micro−organisms and culture cells DSMZ(「Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen」)にACC130番で寄託されており、Schneider、J Embryol Exp Morphol、27巻、1972年、353ページに公開されており、これはアメリカ培養細胞系統保存機関ATCCにCRL1963番でやはり寄託されている。好ましくは、昆虫のフィーダー細胞は、2005年3月25日に、National Collection of Micro−organisms Cultures(CNCM、Pasteur Institute、パリ)にI−3407番で寄託されているS2ショウジョウバエ細胞系由来である。
【0059】
哺乳動物の細胞の集団、およびここでは抗原特異的なTr1細胞の集団が拡張される場合に、昆虫のフィーダー細胞を使用することによってもたらされる大きな利点は、(1)フィーダー細胞および哺乳動物の細胞は、同じ温度で増殖せず(T1はT2より低く、T2は少なくとも約35℃である)、(2)哺乳動物のウィルスは昆虫のフィーダー細胞では増殖せず、したがって抗原特異的なTr1細胞の集団の、フィーダー細胞から可能なウィルス汚染を回避することである。
【0060】
最も好ましくはMp培地は無血清培地である。培地は、いかなる生物学的な汚染もなく、例えば市販されている無血清培地(Biowhittaker、Wakersvill、メリーランド州からのXVIVO−15、InvitrogenからのAIM V培地)が好ましい。
【0061】
最も好ましくはMf培地は無血清培地である。培地は、いかなる生物学的な汚染もなく、例えばよく知られており市販されている無血清培地(BioWhittaker、Walkersville、メリーランド州により市販されている無血清シュナイダー培地、例えば、Invitrogenによって市販されているSFMなどのGIBCO(登録商標)無血清昆虫細胞培地、またはKrackeler Scientific Inc.、米国により市販されているInsectagro(登録商標)無血清培地など...)が、細胞集団Pのその後の汚染を避けるために好ましい。
【0062】
より有利には、フィーダー細胞は、拡張されるべき抗原特異的なTr1細胞の集団の以下の細胞表面タンパク質:
CD3/TCRタンパク質複合体、
CD28タンパク質、
CD2タンパク質、
インターロイキン−2(IL−2)受容体、および
インターロイキン−4(IL−4)受容体
と相互作用をする組換え因子のグループを発現する組換えフィーダー細胞である。
【0063】
実際、抗原特異的なTr1細胞の集団を拡張するために、TCR/CD3複合体(TCRはT細胞受容体であり、CDは細胞分化抗原である)の刺激が、T細胞における主要な活性化シグナルの送達に必要とされている。抗−CD3モノクローナル抗体を、TCR/CD3複合体、有利には修飾された抗−CD3抗体によるT細胞の集団の活性化に用いることができ、この場合抗−CD3抗体の修飾は、細胞質内ドメインの膜貫通ドメインとの置換にあり、したがって前記修飾された抗−CD3抗体はフィーダー細胞の細胞膜を固定しており、T細胞のCD3/TCRタンパク質複合体と相互作用をする。
【0064】
さらに、T細胞の表面上の数々のタンパク質は、同じ意味に「共刺激分子」または「補助刺激因子」と呼ばれ、休止期のT細胞の芽細胞への形質転換への移行、およびその後の増殖および分化の調節に結び付けられている。したがって、TCR/CD3複合体によりもたらされる主要な活性化シグナルに加えて、T細胞の反応を誘導することは、第2の共刺激シグナルを必要とする。1つの共刺激または付属の分子であるCD28は、TCR複合体によって刺激されるものと異なるシグナル伝達経路を開始し、または調節すると考えられている。
【0065】
抗原特異的なTr1細胞の表面に存在し、フィーダー細胞により発現されるCD28タンパク質と相互作用をする因子は、CD28分子と架橋結合することができる抗−CD28モノクローナル抗体またはそのフラグメントであってよく、この場合、膜貫通ドメインがフィーダー細胞の細胞表面に固定する目的で膜貫通ドメインを加えることにより、抗−CD28モノクローナル抗体の修飾が想定され得る。好ましくは、CD28に対する天然のリガンド、すなわち、例えばB7−1(CD80)およびB7−2(CD86)タンパク質などのB7ファミリーのタンパク質のメンバーが、抗−CD28モノクローナル抗体の代わりに使用される。
【0066】
別の共刺激分子であるCD2は、抗原特異的なTr1細胞の集団の拡張を可能にする細胞シグナルと結び付けられている。同様に、CD2と相互作用するフィーダー細胞により発現される因子は、CD2分子と架橋結合することができる抗−CD2モノクローナル抗体またはそのフラグメントであってよく、フィーダー細胞の細胞表面に固定するために、膜貫通ドメインを加えることにより、抗−CD2モノクローナル抗体の修飾が想定され得る。好ましくは、抗−CD2モノクローナル抗体の代わりに、CD2に対する天然のリガンド、すなわちCD58タンパク質が使用される。
【0067】
フィーダー細胞の細胞膜に固定されている因子の他に、インターロイキンなど、分泌される因子が、抗原特異的なTr1細胞の集団の拡張に、やはり必要とされている。これらインターロイキンの中には、抗原特異的なTr1細胞の表面に存在するIL−2受容体と相互作用するIL−2、および抗原特異的なTr1細胞のIL−4受容体と相互作用するIL−4またはIL−13のいずれかがある。
【0068】
最も有利には、組換え因子のグループは、
抗−CD3抗体の修飾が抗−CD3重鎖の抗−CD3細胞質内ドメインの、膜貫通ドメインでの置換にあり、前記修飾された抗−CD3抗体はフィーダー細胞の細胞膜に固定されており、T細胞のCD3/TCRタンパク質複合体との相互作用を受けやすい、修飾された抗−CD3抗体またはその変異体、
T細胞のCD28タンパク質との相互作用を受けやすい、フィーダー細胞の細胞膜に固定されている、CD80またはCD86タンパク質、好ましくはCD80タンパク質、またはその変異体、および
Tr1細胞のCD2タンパク質との相互作用を受けやすい、フィーダー細胞の細胞膜に固定されているCD58タンパク質、またはその変異体、
Tr1細胞のIL−2受容体との相互作用を受けやすい、フィーダー細胞により分泌されるIL−2、またはその変異体、および
インターロイキンがフィーダー細胞により分泌され、Tr1細胞のIL−4受容体との相互作用を受けやすい、IL−4およびインターロイキン13(IL−13)を含む群から選択されるインターロイキン、好ましくはIL−4、またはその変異体、
を含む。
【0069】
好ましくは、抗−CD3抗体の重鎖の細胞質内のドメインに置換する膜貫通ドメインは、血小板由来成長因子(PDGF)の膜貫通ドメインである。
【0070】
フィーダー細胞が発現する因子は任意の起源であってよい。好ましくは、これらは、それから抗原特異的なTr1細胞の集団が獲得されるPBMCまたは白血球の集団のものと同じ起源のものである。より有利には、PBMCまたは白血球の集団はヒト集団である。最も好ましくは、前記グループの因子はヒト起源である。
【0071】
好ましくは、修飾された抗−CD3抗体の軽鎖は、配列番号1の配列の異種核酸、または配列番号1と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされ、修飾された抗−CD3抗体の重鎖が配列番号2の配列の異種核酸、または配列番号2に少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる。
【0072】
より好ましくは、CD80タンパク質は、配列番号3の配列の異種核酸、または配列番号3と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる。
【0073】
有利には、CD86タンパク質は、配列番号4の配列の異種核酸、または配列番号4と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる。
【0074】
さらにより好ましくは、CD58タンパク質は、配列番号6の配列の異種核酸、または配列番号6と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる。
【0075】
好ましい一実施形態では、IL−2は、配列番号5の配列の異種核酸、または配列番号5と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる。
【0076】
有利には、IL−4は、配列番号7の配列の異種核酸、または配列番号7と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる。
【0077】
より有利には、IL−13は、配列番号8の配列の異種核酸、または配列番号8と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる。
【0078】
「配列番号Xと少なくとも70%の同一性を有する核酸分子」の表現は、前記配列番号Xの配列と少なくとも70、75、80、85、90、95、または99%の同一性を有する任意の配列を意味する。
【0079】
一般的には、拡張すべき抗原特異的なTr1細胞の集団を数時間、例えば12時間、好ましくは24時間の培養後、より好ましくは48時間培養後、それ以上生存可能なフィーダー細胞は、Mp培地には存在しない。有利には、拡張された抗原特異的なTr1細胞の集団を、フィーダー細胞が全て死滅したときに回復し、これにより、第一に、より大きく拡張した抗原特異的なTr1細胞の集団を獲得し、第二に、フィーダー細胞の細胞膜のフラグメントを除去することにより、例えば、上記に公開したように、洗浄法および/または密度勾配遠心分離により除去することにより、抗原特異的なTr1細胞の集団を迅速かつ容易に回復することが可能になる。
【0080】
したがって、好ましい一実施形態では、非常に拡張された抗原特異的なTr1細胞の集団を、少なくとも12時間、有利には24時間の間、ステップ(c)で抗原特異的なTr1細胞の集団を培養した後、ステップ(d)で回復する。
【0081】
本発明における2つの核酸(または核酸配列)または2つのプロテイック(proteic)配列間の同一性パーセントは、最善のアラインメント後に得られた、比較すべき2配列間の同一のヌクレオチドまたはアミノ酸のパーセント値を意味し、このパーセント値は、純粋に統計上のものであり、2配列間の相違はランダムに分布し、全てその全長上にある。最善のアラインメントまたは最適のアラインメントは、比較すべき2配列間の同一性の最高のパーセント値に対応するアラインメントであり、これは本明細書で以降のように計算される。2つの核酸または2つのプロテイック配列間の配列比較は、それらの最適のアラインメント後にこれらの配列を比較することにより通常行い、前記の比較は、配列の類似性の局所領域を同定し、比較するために、1セグメントに対して、または1つの「比較ウィンドウ」に対して行う。比較のための配列の最適のアラインメントは、手作業により、またはSmithおよびWaterman(1981年)(Ad.App.Math.、2巻、482頁)の局所的ホモロジーのアルゴリズムにより、NeedlemanおよびWunsch(1970年)(J.Mol.Biol.、48巻、443頁)の局所的なホモロジーのアルゴリズムにより、PearsonおよびLipman(1988年)(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、85巻、2444頁)の同様の調査方法により、これらのアルゴリズムを用いたコンピュータソフトウェア(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、ウィスコンシン州におけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)により行うことができる。2つの核酸配列間または2つのプロテイック配列間の同一性パーセント値は、これら2つのアラインされた配列を、最適の様式で、核酸配列またはプロテイック配列の比較すべき領域がこれら2配列間の最適アラインメントに対する参照配列に関して付加または欠質を含むことができる「比較ウィンドウ」と比較することによって決定する。2配列間でヌクレオチドまたはアミノ酸が同一である位置の数を決定することにより、同一の位置の数を「比較ウィンドウ」における位置の総数で除することにより、および、これら2つの配列間の同一性のパーセントを得るために、得られた結果に100をかけることにより同一性パーセント値が計算される。
【0082】
フィーダー細胞を用いて本発明にしたがって抗原特異的なTr1細胞の集団を拡張するステップ(3)は、以下の利点をもたらす:
フィーダー細胞の拡張システムは、in vitroで少なくとも2または3カ月間、抗原特異的なTr1細胞の集団の指数関数的な成長を維持することができ、
フィーダー細胞は、同種間の反応を避けるために、MHCクラスIおよびII分子を欠き、
フィーダー細胞にはマイコプラズマフリーであり、
フィーダー細胞は、無血清培地を用いて良好に成長することができ、
フィーダー細胞は、照射を必要とせず、
フィーダー細胞は、哺乳動物のウィルスの拡張を許さず、
拡張された抗原特異的なTr1細胞の集団は、注射の目的に対して非常に良好に特徴付けられる。
【0083】
本発明を以下の図面および実施例においてさらに記載する。これらの図面および実施例は、説明の目的で提供するにすぎず、添付の特許請求の範囲の範囲を限定することを意図するものではない。様々な筋書きが、多くの実際的な場合に関連し、当業者には単に例示を意図するにすぎない。したがって、本発明は、本明細書に提供する教示の結果として明らかになる任意の、かつ全ての変形形態を包含するものと解釈すべきである。
【0084】
図の説明
図1は、CD4+CD18brightCD49b+Tr1細胞は、食品抗原に反応し、リコール抗原に反応しないで増殖することを示す図である。
A)精製したCD4+T細胞(灰色バー)、CD4+CD18brightCD49b+Tr1細胞(白色バー)、およびCD4+CD45RO+CD49b−メモリーT細胞を、自己由来の精製した単球の存在下で、破傷風毒素(10μg/mL)、PPD(20μg/mL)、または抗−CD3+抗CD28mAb(10μg/mL)で刺激した。5日目に、チミジンの組入れにより増殖を分析した。B)Aにおけるのと同じ集団を、オバルブミン(OVA、20μg/mL)、カゼイン(20μg/mL)、またはソヤ(soya)タンパク質の混合物(Soya)、50μg/mLで刺激した。結果は、10名の異なる患者の増殖反応の平均を表している。
【0085】
図2は、CD4+CD18brightCD49b+T細胞は、食品抗原に対して増殖し、ワクチン抗原に対して増殖しないことを示す図である。
CD4+T細胞、または精製したCD4+CD45RO+CD49b-、またはCD4+CD18+CD49b+をCFSEで標識し、示してあるように、ワクチン抗原(PPD、精製タンパク質誘導体:ツベルクリン、TT:破傷風毒素)、または食品抗原(OVA:オバルブミン、カゼインまたはSoyaタンパク質)のいずれかの異なる抗原で刺激した。8日後、細胞を細胞蛍光測定法により分析し、分裂した細胞のパーセント値をCFSEの発現の低減により分析した。CFSElow細胞のパーセント値を、各象限に示してある。
【0086】
図3は、食品抗原に特異的なCD4+増殖性T細胞はTr1サイトカイン特性の表現型を有することを示す図である。
CD4+T細胞をCFSEで標識し、示してあるワクチン(PPD、TT)、または食品(OVA、Soya、カゼイン)抗原で刺激した。CFSElowCD4+T細胞を精製し、抗−CD3および抗−CD28mAbで再刺激し、48時間後に上清をELISAにより分析して示したサイトカインの量を測定した。食品抗原に特異的な増殖性CD4+T細胞は、IL−10highIL−4-IFN−g+/-、IL−5+/-、IL−2-分泌レベルを有するTr1表現型を提示し、一方、リコール抗原特異的なT細胞はIFN−γ分泌の高いTh1表現型を提示した。
【0087】
図4は、CD4+CD18brightCD49b+T細胞は、自己抗原およびTr1サイトカイン表現型を提示した自己抗原特異的細胞に対して増殖することを示す図である。
CD4+T細胞、または精製したCD4+CD45RO+CD49b-、またはCD4+CD18+CD49b+をCFSEで標識し、示してあるように、自己抗原(MBP:ミエリン塩基性タンパク質)、またはインスリンで刺激した。8日後、細胞を細胞蛍光測定法により分析し、分裂した細胞のパーセント値をCFSEの発現の低減により分析した。CFSElow細胞のパーセント値を、各象限に示してある。CFSElow細胞を精製し、抗−CD3および抗−CD28mAbで再刺激し、48時間後、上清をELISAにより分析して、示されているサイトカインの量を測定した。自己抗原特異的な増殖性CD4+T細胞は、IL−10highIL−4-IFN−γ+/-、IL−5+/-、IL−2-分泌レベルのTr1表現型を提示した。
【0088】
図5は、Tr1細胞は、試験した抗原に対する自己免疫疾患またはアレルギー性疾患に罹患している患者で観察することができることを示す図である。
CD4+T細胞、または精製したCD4+CD45RO+CD49b-、またはCD4+CD18+CD49b+を、示してあるように、多発性硬化症(MS)またはカゼインに対するアレルギーに罹患している患者から単離し、CFSEで標識し、自己抗原(MBP:ミエリン塩基性タンパク質)、またはカゼイン、または示してあるように陽性コントロールとして結核菌からの精製したプロテインド(proteind)誘導体(PPD)で刺激した。8日後、細胞を細胞蛍光測定法により分析し、分裂した細胞のパーセント値をCFSEの発現の低減により分析した。CFSElow細胞のパーセント値を、各象限で示してある。CFSElowT細胞を精製し、抗−CD3および抗−CD28mAbで再刺激し、48時間後、上清をELISAにより分析して、示してあるサイトカインの量を測定した。
【0089】
図6は、食品抗原特異的なTr1細胞は、IL−2単独に反応して増殖しなかったが、IL−2およびIL−4に反応して活発に増殖したことを示す図である。
CD4+T細胞をCFSEで標識し、示してある抗原で刺激し、図3におけるように精製した。次いで、精製した細胞を、IL−2単独(1μg/mL)、またはIL−2およびIL−4(それぞれ1μg/mLおよび500ng/mL)の存在下で拡張した。次いで、異なる条件下での細胞数を測定し、開始後の日数に対してプロットした。リコール抗原T細胞は、IL−2、ならびにIL−2およびIL−4の組合せに反応して増殖し、一方、食品抗原特異的なTr1細胞は、IL−2およびIL−4サイトカインの組合せに対してのみ増殖した。
【0090】
図7は、IL−2およびIL−4で拡張した食品抗原特異的なTr1細胞は、拡張後そのサイトカインの特性を維持することを示す図である。
図5で得られた、異なる抗原特異的なT細胞の集団を、CD3およびCD28mAbで刺激し、それらのサイトカインの特性を、刺激48時間後に回収した上清におけるELISAにより決定した。PPD特異的およびTT特異的なT細胞は、IL−2単独で拡張した後、そのTh1サイトカインの特性を維持し、一方、IL−4の添加により、予想通りこれらの細胞におけるIL−4の分泌が誘発された。これとは対照的に、食品抗原特異的なTr1細胞は、IL−2およびIL−4の存在下における拡張後でも、それらのサイトカインの特性を維持した。
【0091】
図8は、S2細胞系上のヒトタンパク質の発現の分析を示す図である。
OKT3重鎖および軽鎖、ならびに親(S2)細胞またはセルファクトリー(CF)細胞におけるCD80およびCD58の発現の2色フローサイトメトリー分析。
【0092】
図9は、操作されたCFがCD4+Tr1細胞と相互作用する画である。
S2細胞に、TCR/CD3複合体に結合させるために、膜結合している抗−CD3mAbを、CD28およびCD2分子との相互作用によりいくらかの共刺激シグナルを加えるためにそれぞれCD80、およびCD58を、ならびに細胞の成長を誘発するためにIL−2およびIL−4を形質移入した。
【0093】
図10:CF細胞系により誘発されたT細胞の増殖を示す図である。
セルファクトリーで刺激した、ポリクローナルPBL、CD4+T細胞Tr1細胞系(L1およびL2)、またはTr1クローン(C1およびC2)の増殖を、3および4日の間の培養物で、[3H]チミジンの組入れにより測定した。示してあるように、外因性のサイトカインの非存在下でT細胞をCF細胞で刺激した。72時間後、細胞を[3H]チミジンでパルス刺激を与え、さらなる18時間インキュベートした後、回収した。1分あたりの計数値を、3個の培養物からの平均値s.e.m.として示してある。
【0094】
図11は、セルファクトリーで刺激した主要なポリクローナルヒトTr1細胞の長期の成長を示す図である。
Tr1細胞を、外因性のIL−およびIL−4の存在下、CD3/28ビーズプラス外因性IL−2およびIL−4;OKT3、CD80およびCD58を発現するがIL−2およびIL−4を発現しないCF’細胞で、またはいかなる外因性の添加なしの完全なセルファクトリー系で刺激した。T細胞を、培養0、10および20日目にCF細胞で刺激した。
【0095】
図12は、CF細胞系と同時培養後のT細胞の純度を示す図である。
T細胞の純度、およびCF細胞系での刺激後を、培養の最初の7日間にCD3、CD4の発現に対して染色することにより評価した。培養物における全細胞を表すために、この実験では細胞のサイズ/破片に対するゲーティングを用いなかった。生存細胞は、死細胞を除外するためにヨウ化プロピジウムに対してゲーティングすることにより示してある。結果は、各々異なるドナーの、>10の異なる実験を表す。
【0096】
図13は、T細胞との同時培養後のCF細胞系の運命を示す図である。
CF刺激性因子細胞の運命を、培養の最初の7日間に、CD4およびOKT3H発現に対して染色することにより評価した。培養物における全細胞を表すために、この実験では細胞のサイズ/破片に対するゲーティングを用いなかった。生存細胞は、死細胞を除外するためにヨウ化プロピジウムに対してゲーティングすることにより示してある。結果は、各々異なるドナーの、>10の異なる実験を表す。
【0097】
図14は、用いた実験プロトコールの概略図である。
【0098】
図15は、OVA特異的Tr1クローンの単離を示す図である。
CFSEで染色したPBLをOVAで刺激し、CD4 CD49b、およびCD18で染色した。CD4+CD49b+CD18bright細胞をゲーティングし、CFSE細胞を選別した。選別された細胞をクローニングして、クローン1および2を産生し、大量の集団をOVAで刺激し、IL−10およびIFN−γで染色し、Tr1表現型を明らかにした。
【0099】
図16は、Tr1クローンの長期増殖の分析を示す図である。
次いで、2つのクローンを照射したセルファクトリーで刺激した。細胞の総数を、細胞数対培養日数の、片対数のプロットで表してある。
【0100】
図17は、70日間セルファクトリー上で拡張後のOVA−特異的Tクローン1および2のサイトカイン特性を示す図である。
サイトカインを、OVAで刺激したクローン、および自己由来の照射した単球の上清で測定した。抗原特異的な抑制を、また、トランスウェルアッセイにより試験した。自己由来のPBLを、底部ウェルにおける抗−CD3mAbで刺激し、無細胞、コントロールのCD4 T細胞、および2つのクローンを上部のバスケットにおいて加え、CD4細胞に対しては抗−CD3および自己由来の照射した単球で、2つのTr1クローンに対してはOVAおよび照射した自己由来の単球で刺激した。全体のプロトコールは、各々が異なるドナーからの、10回の実験を代表するものである。
【0101】
実施例
実施例1:食品抗原または自己抗原での刺激による、PBMC集団からの食品抗原または自己抗原特異的Tr1細胞の集団のin vitroでの獲得
1.1 材料と方法
細胞の精製およびフローサイトメトリー
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、健常ドナーのバフィーコートから、フィコール勾配上で遠心分離後、回収した。CD4+Tリンパ球を、CD11b+(OKM1−95)、CD20+(1F5C9)、およびCD8+(G42−8)細胞の枯渇後、ヤギ抗マウス−コーティングしたDynabeads(Dynal、Oslo、ノルウェー)を用いたネガティブ選択により、PBMCから精製した。20%FCSで補ったRPMIで37℃、1時間、PBMCを培養後、接着により、単球を精製した。回収した接着細胞の90%を超えたものがCD14+単球であった。CD4+Tリンパ球を蛍光抗体で細胞を染色し、FACS vantage SE、Beckton Dickinson、Le pont de Claix、フランス)上で選別後、CD49b+CD18brightまたはCD49b+CD45RO+T細胞で分離した。フローサイトメトリーでは以下の抗体を用いた:FITC、APC、またはPC5標識したマウス抗ヒトCD4(RPA−T4)、PC5標識したマウス抗ヒトCD3(UCHT1)、PE標識したマウス抗ヒトCD49b(12F1−H6)、FITC標識したマウス抗ヒトCD14(M5−E2)、PEまたはPC5標識したマウス抗ヒトCD8(6.7)、PE標識したマウス抗ヒトCD25(M−A251)、PE標識したマウス抗ヒトHLA−DR(G46−6)、PE標識したマウス抗ヒトCD69(FN50)、FITC抗ヒトCD45RO(UCHL−1)。抗体は全てBD−Pharmingen(Le Pont de Claix、フランス)より購入した。
【0102】
細胞培養
CD4+抗原特異的Tリンパ球を検出するために、PBMC(1000万細胞/mL)を、0.2μMのCFSEまたは2.5μMのPKH26(Molecular Probes、Leiden、オランダ)のいずれかで、PBS 1X中、37℃で5分間染色した。PBS 1Xで2回洗浄後、細胞の集団を、トリオバルブミン200μg/mL、ウシカゼイン200μg/mL、ヒトインスリン200μg/mL(Sigma、L'Isle d'Abeau、フランス)、破傷風毒素50μg/mL(Lederie、Pearl River、ニューヨーク)および結核菌からの精製タンパク質誘導体(PPD)(Staten serum Institute、デンマーク)2μg/mL、またはMBP(Sigma、L'Isle d'Abeau、フランス)50μg/mLの存在下または非存在下で、5%ヒト血清ABで補ったRPMI中、200万/mLでインキュベートした。培養9日後、細胞をPC5標識したマウス抗ヒトCD4で染色し、フローサイトメトリーにより分析した。CD49b+CD18bright、またはCD49b+CD45RO+T細胞を、また、選別し、0.2μMのCFSEまたは2.5μMのPKH26で染色し、4.105自己由来の単球の存在下、および抗原の存在下、200万/mLで培養した。
【0103】
抗原特異的細胞の選別および拡張
培養10日後、CD4+CFSEloまたはCD4+PKH26lo抗原特異的T細胞を、FACS vantage SE(Beckton Dickinson)上で選別し、抗原の存在下、IL−4 10ng/mLおよびIL−2 5ng/mLで補ったX−vivo15培地(Biowhittaker、Emerainville、フランス)中、自己由来の照射PBMCで拡張した。
【0104】
サイトカインの検出
サイトカインの生成を、10%FCS(Life Technologies、Cergy Pontoise、フランス)で補い、コーティングした抗CD3(UCHT1)10μg/mLおよび可溶性抗CD28(CD28.2)1μg/mLで刺激したRPMI中48時間培養したヒト細胞集団(200万/mL)の上清で行ったELISAにより検出した。用いた抗体は、抗−IL10(JES3−9D7)、抗−IL4(8D4)、抗−IL2(17H12)、抗−IL5(39D10)、および抗−IFNγ(A35)捕捉抗体、およびNIP標識した抗−IL10(JES3−12D8)、抗−IL4(MP4−25D2)、抗−IL2(B33−2)、抗−IL5(5A10)、および抗−IFNγ(B27)検出抗体であり、その後、ペルオキシダーゼ標識した抗−NIP抗体およびABTSを添加した。IL10、IL4、およびIFNγは、R&D systems(Minneapolis、ミネソタ州)からであり、IL2はChiron corp(Emmeryville、カリフォルニア州)からであった。抗体は全て、BD pharmingenからであった。
【0105】
増殖の測定
増殖を評価するために、T細胞の集団(100万細胞/mL)を、10%FCSで補ったRPMI中、示してあるサイトカインの存在下37℃で、自己由来の照射したPBMCおよび特異的な抗原を用いて、in vitroにおいて刺激した。T細胞の増殖を、生細胞を計数することにより評価した。
【0106】
抗原特異的Tr1細胞を単離する方法
本発明者らは、抗原特異的Tr1細胞の集団およびクローンを単離する方法をデザインした。
【0107】
第一の方法は、CFSEまたは任意の類似の色素(PHK)の組入れによる。細胞をCFSEで標識し、食品抗原で刺激し(0.1μg/mLから5mg/mLの範囲)、9から10日後、細胞を細胞蛍光測定法により選別し、CD3+CD28ビーズ、およびIL−2+IL−4で維持する。これらの培養条件下で著しく増殖することができなかった任意の他の細胞を除去するために、細胞を、1ウェルにつき1細胞クローニングし、異なるクローンを特異性およびサイトカインの分泌について分析してもよい。
【0108】
第二の方法は、活性化または増殖マーカーの細胞表面の発現による。PBMCを食品抗原または自己抗原で刺激し、抗原刺激した細胞を、抗−CD69、抗−CD25、または任意の活性化もしくは増殖マーカーに対して向けられた抗体により精製する。次いで、精製した細胞を、CD3+CD28刺激、およびIL−2+IL−4で維持する。あるいは、細胞を、IL−2およびIL−4の存在下で、フィーダー細胞およびCD3/CD28刺激で維持してもよい。精製した細胞は、FACS選別または限界希釈により、1ウェルにつき1細胞でクローニングしてもよい。
【0109】
第三の方法は、食品抗原または自己抗原で刺激後、増殖性の集団を濃縮することによる。PBMCをオバルブミン(または、任意の他の食品もしくは自己抗原)で刺激し、1週間後、細胞を、IL−2およびIL−4の存在下、同じ抗原で再刺激した。この組合せは最適であったが、任意の組合せまたは時間を用いてもよい。次いで、濃縮した集団を限界希釈によりクローニングした(が、任意の他のクローニング技術を用いてもよい)。次いで、クローンを、フィーダー細胞、抗−CD3、CD28、ならびにIL−2およびIL−4で刺激することにより増加させた。次いで、増殖性のクローンを、自己由来の照射したPBMCにより提示されるオバルブミンを用いることにより、特異性およびサイトカインの分泌について分析した。
【0110】
1.2 結果
CD4+CD3+CD49b+CD18brightTr1細胞は、食品抗原に反応して増殖するがワクチン抗原には反応しない
本発明者らは、CD4+CD3+CD49b+CD18brightTr1細胞を精製した場合、これらの細胞は、相反する集団とは対照的に、PPDの破傷風毒素などのリコール抗原に反応して増殖しなかったことを観察した(図1A)。本発明者らは、CD4+CD3+CD49b+CD18brightTr1細胞が、食品抗原に対して増殖する能力も試験した。以前に報告されているように、全体のCD3+CD4+T細胞の集団を食品抗原(オバルブミン、カゼイン、ソヤタンパク質またはウシ免疫グロブリン)で刺激した場合に、バックグラウンドを超えた至って最小限の増殖性の反応だけが観察された。しかし、本発明者らは、精製したCD4+CD3+CD49b+CD18brightTr1細胞の集団では活発な増殖性の反応を観察したものの、相反するメモリー集団では増殖を観察しなかった(図1B)。
【0111】
したがって、本発明者らは、CFSE組入れの、より感受性の高い技術を用い、Tr1細胞はリコール抗原に対して増殖しなかったが、オバルブミン、カゼイン、またはソヤタンパク質などの食品抗原に対して著しい増殖性の反応を示したことを観察した。これとは対照的に、CD4+T細胞の相反する集団は、食品抗原に対していかなる増殖性の反応を示さなかったが、リコール抗原に対して活発に増殖した(TTおよびPPD)(図2)。
【0112】
食品抗原特異的なCD4+CD3+CD49b+CD18brightT細胞はTr1サイトカインの特性を有する
CFSE組入れ技術を用いて(図3)、本発明者らは、FACSによりCFSElow増殖性細胞を単離し、ポリクローナル刺激(抗−CD3+CD28 mAb)により、それらのサイトカイン特性を分析した。これらの実験は、OVA、カゼイン、およびソヤに特異的な細胞は、以前に記載されているように、高レベルのIL−10、いくらかのIFN−γ、いくらかのIL−5を分泌し、IL−2およびIL−4は分泌しないTr1サイトカインの特性を有することを示した(Grouxら、Nature、1997年)。これとは対照的に、TT特異的またはPPD特異的な細胞は、予想通り、主にIFN−γを分泌するTr1表現型を提示した。
【0113】
Tr1細胞は自己抗原に対しても特異的である
CFSE技術を用いて、本発明者らは、様々なCD4+T細胞集団の、MBP(ミエリン塩基性タンパク質)またはインスリンなどの自己抗原に対する増殖性の反応も分析した。食品抗原同様、バルクのCD4+集団に(報告されている通り)、またはCD49b+メモリー(CD45RO+)集団に認められた増殖性の反応は、最小から無であった。驚くべきことに、精製したCD4+CD3+CD49b+CD18brightTr1細胞をインスリンまたはMBPで刺激した場合に、活発な増殖反応が観察された。さらに、これらのインスリン特異的またはMBP特異的な細胞は、IL−10分泌が高いTr1サイトカインの特性を提示した(図4)。
【0114】
Tr1細胞は、試験した抗原に対する自己免疫またはアレルギーに罹患している患者で単離できる
食品抗原および自己抗原は、それぞれアレルギーまたは自己免疫疾患に結び付けられているので、本発明者らは、MSに罹患している患者(MBPなどのミエリン成分に対して向けられている自己免疫疾患で)、またはカゼインに対する食品アレルギーを有する患者の、精製したCD4+CD3+CD49b+CD18brightT細胞の集団における増殖性のT細胞の存在を分析した。図5に示すように、本発明者らは、予想通り、MBP刺激またはカゼイン刺激が、それぞれ多発性硬化症またはカゼインアレルギーに罹患している患者における精製したCD4+CD3+CD45RO+CD49b-中への細胞の増殖を誘発することを観察した。増殖性の細胞の再刺激により、予想通り、これらの細胞が、MBPで刺激したMSに罹患している患者からの細胞の場合はTh1サイトカインの特性を、アレルギー患者の場合はカゼインに反応したTh2サイトカインの特性を提示したことが示された。しかし、本発明者らは、予想外に、正常コントロール同様、食品または自己抗原特異的なTr1細胞が、試験した抗原に対する自己免疫またはアレルギーを罹患している患者でも観察できたことを示す、CD4+CD3+CD49b+CD18brightTr1細胞における増殖も観察した(図5)。
【0115】
IL−2およびIL−4の組合せは、Ag特異的なTr1細胞の増殖を維持するために必要とされる
Tr1細胞(CD4+CD3+CD49b+CD18bright細胞)は、食品または自己抗原に反応して増殖したが、その増殖は、TT−またはPPD−特異的T細胞の増殖とは対照的に(図6)、IL−2単独を加えることにより維持することはできなかった(図6)。驚くべきことに、本発明者らは、IL−2およびIL−4を組み合わせて加えることにより、食品抗原または自己抗原特異的なTr1細胞の増殖性の反応を維持することができることを見出した(図7)。
【0116】
実施例2:フィーダー細胞を用いた、獲得された抗原特異的Tr1細胞集団の拡張
2.1 実験プロトコール
標識した抗体
ビーズ選別用
用いたビーズ:
《MagCellect Ferrofluid、ストレプトアビジン》(R&D)
《ヒツジ抗ラットビーズ》(Dako)
CD80用:ビオチン化マウス抗ヒトCD80(B7−1)、クローンL307.4(BD Biosciences Pharmingen)
OKT3用:精製ラット抗マウスIgκ軽鎖、クローン187.1(BD Biosciences Pharmingen)。
【0117】
FACS選別および通常のコントロールマーカー用
CD80用:マウス抗ヒトCD80−PE(フィコエリスリン)またはFITC(フルオレセインイソチオシアネート、クローンL307.4(BD Biosciences Pharmingen)
CD58用:マウス抗ヒトCD58−PEまたはPECy5(フィコエリスリン−シアニン5)(LFA−3)クローン1C3(BD Biosciences Pharmingen)
OKT3用:
重鎖:ビオチン化抗マウスIgG2a、クローンR19−15+ストレプトアビジン−FITC、またはストレプトアビジン−PE、またはストレプトアビジン−PECy5(BD Biosciences Pharmingen)
軽鎖:精製ラット抗マウスIgκ軽鎖、クローン187.1(BD Biosciences Pharmingen)+ウサギ抗ラットFITC(Dako)。
【0118】
増幅プライマー
OKT3−L FWD:
5’−ATGCGGATCCATGGATTTTCAAGTGCAG−3’(配列番号9)
OKT3−L REV:
5’−ATGCGAATTCCTAACACTCATTCCTGTTG−3’(配列番号10)。
【0119】
プライマーOKT3H1可変重鎖(571pb):
HSPAT1 FWD:
5’−ATG CCC GCG GGG TAC CCA CTG AAA ACT CTG ACT CAA C−3’(配列番号11)
OKT3 H2/3 REV:
5’−ACT GGA CAG GGA TCC AGA GTT C−3’(配列番号12)。
【0120】
プライマーOKT3H2重鎖CH1−CH3(850pb)
OKT3 H3/5 FWD:
5’−GAA CTC TGG ATC CCT GTC CAG TG−3’(配列番号13)
OKT3 H3/3 REV:
5’−ATG CGA ATT CTT TAC CCG GAG TCC GGG AGA AGC TC−3’(配列番号14)。
【0121】
プライマーpdgf血小板由来成長因子受容体、β(151pb)
PDGFR 5 FWD:
5’−ATG CGA ATT CGC TGT GGG CCA GGA CAC GCA G−3’(配列番号15)
PDGFR 3 REV:
5’−ATG CGG GCC CAA GCT TCT AAC GTG GCT TCT TCT GCC AAA G−3’(配列番号16)
IL−2 FWD:
5’−ATGCGGATCCATGTACAGGATGCAACTCCT−3’(配列番号17)
IL−2 REV:
5’−ATGCGAATTCTCAAGTCAGTGTTGAGATGA−3’(配列番号18)
LFA3 FWD:
5’−ATGCTGGATCCATGGTTGCTGGGAGCGACGC−3’(配列番号19)
LFA3 REV:
5’−ATGCTAAGCTTTCAATTGGAGTTGGTTCTGT−3’(配列番号20)
IL−4 FWD:
5’−ATGCGGATCCATGGGTCTCACCTCCCAACT−3’(配列番号21)
IL−4 REV:
5’−ATGCAAGCTTTCAGCTCGAACACTTTGAAT−3’(配列番号22)。
【0122】
セルファクトリーのクローニングおよび構築
ヒトCD80、IL−2、IL−4、およびCD58を、健常ドナーから得た末梢血Tリンパ球(PBL)から、pACベクター(Invitrogen)中に、昆虫アクチンプロモーターを用いてクローニングし(ChungおよびKeller、Mol Cell Biol.、1990年12月、10巻(12)、6172〜80頁;ChungおよびKeller、Mol Cell Biol.、1990年1月、10巻(1)、206〜16頁)、電気穿孔(elcectroporator Biorad、米国)により、S2細胞中に、CNCMに、I−3407番で2005年3月25日に寄託されたS2細胞系から形質移入した。同様に、OKT3の重鎖および軽鎖(Kungら、Science.、1979年10月19日、206巻(4416)、347頁)を、OKT3ハイブリドーマ細胞(ATCC CRL8001;Manassas、Virginia、米国)から、pACベクター中にクローニングし、FACSの前にS2細胞中に形質移入した。膜結合した抗−CD3mAbを得るために、重鎖の3'末端を除去し、血小板由来成長因子(PDGF)遺伝子CF'細胞の膜貫通部分により置換し、すなわちhCD80、hCD58、および抗−CD3モノクローナル抗体(mAB)、およびCFを発現する細胞、すなわちhCD80、hCD58、hIL−2、hIL−4、および抗−CD3モノクローナル抗体(mAb)を発現する細胞を、蛍光活性化細胞選別FACSにより、上記に記載した抗体を用いて単離した。選択マーカーは用いず、安定して形質移入した細胞をFACS染色により選択した。選別された細胞をクローニングし、形質移入および選択の各ラウンドでは、Tr1細胞の刺激に対して最も効果的なクローンを選択した。
【0123】
CD4+Tリンパ球の調製およびS2細胞培養
新鮮な末梢血リンパ球を、Ficoll hypaque遠心分離により得、CD4+T細胞を、抗−CD8抗体(Beckton Dickinson)を用いてネガティブ選択により精製した。培養物全てを、血清無添加のX−vivo(BioWhittaker、Walkersville、メリーランド州)で維持した。指摘されている場合はヒトIL−2(Chiron Thrapeutics、Emeryville、カリフォルニア州)を20IU/mLで加え、hIL−4を1μg/mLで用いた(フィーダー細胞がインターロイキンを発現した場合に得られる生物学的利点を組換えインターロイキンを培地に加えた場合に得られる結果と比べるため)。S2細胞を血清を含まないSFM培地(Gibco)で維持した。
【0124】
フローサイトメトリーおよびFACS選別
細胞を、4℃で、抗体で染色し、FACSCalibur(BD BioSciences、Mountain View、カリフォルニア州)上で分析し、またはFACStarシステムで選別した。
【0125】
2.2 結果
aAPCの構築
Tr1細胞は長期の成長に別個の共刺激の要求を有するという仮説を試験するために、本発明者らは、CD3/CD28の古典的な刺激に加えて、様々な共刺激性分子およびサイトカインを発現するように遺伝子操作され得る細胞ベースの系をデザインした。本発明者らがS2細胞を選択したのは、これらが同種の反応を促進するヒトHLAタンパク質を発現しないからであり、これらがヒトウィルスによって汚染され得ないからである(図8)。また、照射されたフィーダー細胞は、27℃で成長し、37℃で容易に死滅し、無血清培地で繁殖するので、これらの細胞が臨床上のセッティング中に最終的に導入されることは避けることができる。本発明者らは、ヒトCD80、ヒトCD58、および抗−hCD3mAbの2本の鎖を発現するS2細胞に形質移入し、次いでクローニングして、ヒトTr1細胞の刺激(CF')を可能にした(図8)。同様に、本発明者らは、CF'細胞にヒトIL−4およびIL−2のcDNAを形質移入することにより、CF系(図8、9)を産生した。CF細胞をネガティブ選択により調製した新鮮ヒトCD4+T細胞に加えることにより培養を開始した(実験プロトコールを参照)。
【0126】
CF細胞系はヒトポリクローナルCD4+T細胞およびTr1細胞を効果的に活性化する
セルファクトリーが、主なCD4+T細胞およびTr1細胞系またはTr1細胞のクローンの、初期の活性化ならびに増殖を刺激するその能力について試験した。様々な精製したT細胞を、1/1比のセルファクトリーで刺激した。本発明者らは、Tr1細胞の増殖反応が他のCD4+T細胞をわずかに上回って増強される[3H]チミジンの組入れ(図10)により判断して、セルファクトリーで刺激したT細胞の初期の成長速度は等しいことを見出した。本発明者らは、新鮮なT細胞をカルボキシフルオレセイン二酢酸スクシンイミジルエステル(CFSE)で標識し、培養の最初の5日間の間、細胞分裂を追跡することにより、この観察を確認した(データは示さず)。本発明者らは、細胞ベースの系は、CD4+T細胞の増殖および細胞分裂を誘発するのにCD3/28ビーズよりもより有効であったことも見出した(データは示さず)。セルファクトリーまたはCD4+T細胞を別々にインキュベートした場合は、増殖は見られなかった(図10、およびデータは示さず)。したがって、CD4+T細胞増殖の最初のラウンドに対する必要は、ポリスチレンビーズの状況でもたらされたCD3/CD28刺激に比べて、セルファクトリーではさらにより十分であった。
【0127】
CF細胞系はヒトTr1細胞の長期の拡張を可能にする
次に、本発明者らは、セルファクトリーはTr1細胞の長期の繁殖を維持するのに十分であったか否かを決定した(図11)。Tr1細胞を、hIL−2およびIL−4を分泌するCFで、サイトカインを分泌しないCF'であるが外因性のサイトカインの添加で、および外因性のサイトカインと共にCD3/28ビーズで刺激した。CD3/28ビーズで刺激した細胞は、第2の刺激の後、増殖することができず、先の試験と一致した。同様に、CF'で刺激したTr1細胞は、IL−2およびIL−4を外因性に添加した状況で、培養2から3週間以内に成長曲線のプラトー期に入り、再刺激後、さらなる最終的な細胞の成長は起こらなかった。これとは対照的に、Tr1細胞培養物をセルファクトリーで刺激した場合は、第3の刺激後でも指数関数的成長のままであった。T細胞の総数における平均的な増大は、6回の独立した実験においてCD3/28ビーズで刺激した培養物におけるよりもセルファクトリーで刺激した培養物において810倍高かったので、この長期の増殖の増大は再現性があった。
【0128】
培養物の表現型を分析すると、セルファクトリーで刺激した後、CD3+CD4+T細胞に進行性の濃縮が示された(図12)。7日後にフローサイトメトリーにより抗−CD3mAbを発現する細胞が検出できなかったことから分かるように、S2細胞は、細胞培養物から急速に消失し(図13)、この発見は、大規模な実験で確認され、ショウジョウバエ遺伝子に対するRT−PCRによっても確認された(データは示さず)。したがって、T細胞およびセルファクトリーの混合の培養により、1週間以内に純粋なT細胞の集団が得られる。
【0129】
セルファクトリーによる抗原特異的なTr1細胞の効率的な繁殖
Tr1細胞での免疫療法は、抗原特異的な調節機能を有する細胞を必要とすると思われる。セルファクトリーを、抗原特異的なTr1を拡張するために用いることができるか否かを決定するために、本発明者らは、10週間、それを用いてOVA特異的Tr1クローンを培養した(図14)。何百もの異なる自己抗原特異的な、または食品抗原特異的なT細胞のクローンで行った実験は、2つの異なるクローンの一例を示している。正常個体からのPBLをCFSEで標識して細胞分裂を追跡し、細胞を7日間オバルブミン(20μg/mL)で刺激した。次いで、細胞をCD4、CD18、およびCD49bで染色して、これらのマーカーを過剰発現するTr1細胞に対して選択し、OVA特異的細胞を、抗原特異的な細胞分裂によるCFSE標識における低減にしたがって選別した(図15)。これらの表現型をコントロールするために、大量の選別された集団をOVAで刺激し、典型的なTr1の集団を明らかにする細胞質内染色によりサイトカインの生成を分析した(図15)。クローニングの後細胞をセルファクトリーで刺激した(図16)。細胞全てを、10日間隔でセルファクトリーで再刺激した。培養中、特定のOVAの刺激は与えなかった。数カ月間、両クローンの指数対数的な成長曲線が得られた。ある抗原特異的なTr1細胞は、培養1ヵ月半後に、免疫療法に十分な細胞数である、1.5 109細胞を産生した。培養30日後に残存するTr1細胞の実質的な増殖能力により、これらのTr1は養子移植後、実質的に長期の移植の可能性があり得ることが示唆される。
【0130】
拡張された集団の抗原特異性が、培養中に維持されるか否かを決定するために、細胞をOVAで刺激した(図17)。1カ月半培養後、細胞をOVAで刺激し、自己由来APCおよびサイトカインの分泌を分析した。分析した2つの異なるクローンにTr1の典型的な特性が観察された。
【0131】
培養したTr1細胞のエフェクター機能を調べるために、典型的なトランスウェルアッセイで、抗原特異的な抑制性の機能を試験した(図17、およびデータは示さず)。両クローンともバイスタンダー細胞に対する典型的なTr1の抑制性効果を表した。抑制は、阻止抗体の使用により示されるように、IL−10およびTGF−βの分泌によるものであった(示さず)。OVA刺激の非存在下では抑制は得られなかった(データは示さず)。異なるドナーおよび異なるTr1クローンで、同様の結果が得られた(データは示さず)。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】CD4+CD18brightCD49b+Tr1細胞は、食品抗原に反応し、リコール抗原に反応しないで増殖することを示す図である。
【図2】CD4+CD18brightCD49b+T細胞は、食品抗原に対して増殖し、ワクチン抗原に対して増殖しないことを示す図である。
【図3】食品抗原に特異的なCD4+増殖性T細胞はTr1サイトカイン特性の表現型を有することを示す図である。
【図4】CD4+CD18brightCD49b+T細胞は、自己抗原およびTr1サイトカイン表現型を提示した自己抗原特異的細胞に対して増殖することを示す図である。
【図5】Tr1細胞は、試験した抗原に対する自己免疫疾患またはアレルギー性疾患に罹患している患者で観察することができることを示す図である。
【図6】食品抗原特異的なTr1細胞は、IL−2単独に反応して増殖しなかったが、IL−2およびIL−4に反応して活発に増殖したことを示す図である。
【図7】IL−2およびIL−4で拡張した食品抗原特異的なTr1細胞は、拡張後そのサイトカインの特性を維持することを示す図である。
【図8】S2細胞系上のヒトタンパク質の発現の分析を示す図である。
【図9】操作されたCFがCD4+Tr1細胞と相互作用する画である。
【図10】CF細胞系により誘発されたT細胞の増殖を示す図である。
【図11】セルファクトリーで刺激した主要なポリクローナルヒトTr1細胞の長期の成長を示す図である。
【図12】CF細胞系と同時培養後のT細胞の純度を示す図である。
【図13】T細胞との同時培養後のCF細胞系の運命を示す図である。
【図14】用いた実験プロトコールの概略図である。
【図15】OVA特異的Tr1クローンの単離を示す図である。
【図16】Tr1クローンの長期増殖の分析を示す図である。
【図17】70日間セルファクトリー上で拡張後のOVA−特異的Tクローン1および2のサイトカイン特性を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)末梢血単核細胞(PBMC)または白血球の集団を、食品抗原または自己抗原で刺激するステップと、
2)食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団を、刺激した細胞の集団から回復するステップと
を含む、食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団を、白血球の集団またはPBMCの集団から獲得するためのin vitro方法。
【請求項2】
食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団をPBMCの集団から獲得する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(1)の後、インターロイキン−2(IL−2)、ならびにインターロイキン−4(IL−4)およびインターロイキン−13(IL−13)からなる群から選択される少なくとも1つのインターロイキンの存在下で、同じ抗原でPBMCまたは白血球の集団を少なくとも1回再刺激する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
食品抗原または自己抗原が組換えまたは合成の抗原である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
食品抗原が、オバルブミン、カゼイン、ソヤタンパク質、それらのフラグメント、変異体および混合物を含む群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
食品抗原が、配列番号23の配列の鶏卵オバルブミン、配列番号24の配列のウシαS1−カゼイン、配列番号25の配列のウシβ−カゼイン、ならびに配列番号23、配列番号24、および配列番号25の配列の1つと少なくとも70%の同一性を有する配列を含む群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
自己抗原が、インスリン、ミエリン塩基性タンパク質、それらのフラグメント、変異体、および混合物を含む群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(1)で刺激したPBMCの集団が、0.01.106から100.106細胞/mLまで、好ましくは106から2.106細胞/mLまでからなる、請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(1)でPBMC集団の刺激に用いられる食品抗原または自己抗原が、0.1μg/mLから5mg/mLまで、好ましくは1から2000μg/mLまでの可溶性の形態である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
PBMCまたは白血球の集団を、ステップ(1)の刺激の前に、細胞蛍光測定法による決定を可能にする細胞分裂蛍光マーカーとインキュベートし、刺激した細胞集団の蛍光強度が、PBMCまたは白血球の集団の蛍光強度の2分の1以下であり、細胞分裂が前記刺激した細胞の集団において起こり、ステップ(2)で回復した前記刺激した細胞の集団が抗原特異的なTr1細胞の集団を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
細胞分裂蛍光マーカーが、カルボキシフルオレセイン二酢酸スクシンイミジルエステル(CFSE)マーカー、オレゴングリーン488カルボン酸二酢酸(Carboxy−DFFDA SE)マーカー、またはPKH26マーカーである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
抗原特異的なTr1細胞の集団を、前記抗原特異的なTr1細胞の集団の細胞の表面に存在するタンパク質に対して向けられている蛍光標識した抗体を用いて、細胞蛍光測定法によりステップ(2)で回復する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
抗原特異的なTr1細胞の集団を、有利には限界希釈などのクローニング技術によりステップ(2)で回復する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
PBMCまたは白血球の集団が、ヒトの集団である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
3)Mp培地でステップ(2)で回復した抗原特異的なTr1細胞の集団を拡張するステップ
をさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
抗原特異的なTr1細胞の集団を拡張するステップ(3)が、前記細胞の集団を、IL−2およびIL−4の存在下でCD3+CD28ビーズと接触させることにある、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
抗原特異的なTr1細胞の集団を拡張するステップ(3)が、Mp培地における因子のグループの存在を必要とし、前記拡張ステップが、
a)温度T1で、Mf培地で前記グループの因子を発現することができるフィーダー細胞を培養するステップであって、このT1が、前記フィーダー細胞の増殖を可能にするステップと、
b)前記Mf培地を除いた、またはMf培地のないステップ(a)で得たフィーダー細胞を、Mp培地に含まれる抗原特異的なTr1細胞の集団と接触させるステップであって、ここで、抗原特異的なTr1細胞の集団、フィーダー細胞、およびMp培地を含む混合物を得るために、前記Mp培地は、因子のグループを最初に含んでいないステップと、
c)Mp培地において、フィーダー細胞によって発現されているグループの因子を含むステップ(b)で得られた混合物を培養するステップであって、ここで、
抗原特異的なTr1細胞の集団が増殖し、
フィーダー細胞が増殖しないように
培養する前記ステップ(c)を少なくとも約35℃である温度T2で行い、
抗原特異的なTr1細胞の集団を拡張するステップと、
d)そのように拡張した抗原特異的なTr1細胞の集団を回復するステップと
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
フィーダー細胞がステップ(c)の間に死滅する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(d)で、フィーダー細胞の死滅によりもたらされる前記細胞の細胞膜のフラグメントが除去される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
因子のグループがフィーダー細胞の細胞膜に固定されている因子、および前記フィーダー細胞により分泌される因子を含む、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記グループの因子が、拡張すべき抗原特異的なTr1細胞の集団の細胞表面タンパク質と相互作用する、請求項17から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
フィーダー細胞が組換え細胞であり、前記グループの因子をコードする異種核酸を含む、請求項17から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
フィーダー細胞が、細胞の表面にいかなる内因性のクラスIおよび/またはIIの主要組織適合複合体(MHC)分子も持たない、請求項17から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(b)でフィーダー細胞がそのMf培地から除去される、請求項17から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記フィーダー細胞が昆虫のフィーダー細胞であり、T1がT2よりも低い、請求項17から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記昆虫のフィーダー細胞が、2005年3月25日に、National Collection of Micro−organisms Cultures(CNCM)にI−3407番で寄託されているS2ショウジョウバエ細胞系由来である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
Mp培地が無血清培地である、請求項17から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
Mf培地が無血清培地である、請求項17から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
フィーダー細胞が、拡張すべき抗原特異的なTr1細胞の集団の以下の細胞表面タンパク質:
CD3/TCRタンパク質複合体、
CD28タンパク質、
CD2タンパク質、
インターロイキン−2(IL−2)受容体、および
インターロイキン−4(IL−4)受容体
と相互作用をする組換え因子のグループを発現する組換えフィーダー細胞である、請求項22から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
組換え因子のグループが、
抗−CD3抗体の修飾が抗−CD3重鎖の抗−CD3細胞質内ドメインの膜貫通ドメインとの置換にあり、前記修飾された抗−CD3抗体はフィーダー細胞の細胞膜に固定されており、T細胞のCD3/TCRタンパク質複合体との相互作用を受けやすい、修飾された抗−CD3抗体またはその変異体、
T細胞のCD28タンパク質との相互作用を受けやすい、フィーダー細胞の細胞膜に固定されている、CD80またはCD86タンパク質、好ましくはCD80タンパク質、またはその変異体、および
Tr1細胞のCD2タンパク質との相互作用を受けやすい、フィーダー細胞の細胞膜に固定されているCD58タンパク質、またはその変異体、
Tr1細胞のIL−2受容体との相互作用を受けやすい、フィーダー細胞により分泌されるIL−2、またはその変異体、
インターロイキンがフィーダー細胞により分泌され、Tr1細胞のIL−4受容体との相互作用を受けやすい、IL−4およびインターロイキン13(IL−13)を含む群から選択されるインターロイキン、好ましくはIL−4、またはその変異体
を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
抗−CD3抗体重鎖の細胞質内ドメインに置換する膜貫通ドメインが、血小板由来成長因子(PDGF)の膜貫通ドメインである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記グループの因子がヒト起源である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
修飾された抗−CD3抗体の軽鎖が、配列番号1の配列の異種核酸、または配列番号1に少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされ、修飾された抗−CD3抗体の重鎖が配列番号2の配列の異種核酸、または配列番号2と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
CD80タンパク質が、配列番号3の配列の異種核酸、または配列番号3と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
CD86タンパク質が、配列番号4の配列の異種核酸、または配列番号4と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる、請求項32または33に記載の方法。
【請求項36】
CD58タンパク質が、配列番号6の配列の異種核酸、または配列番号6と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる、請求項32から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
IL−2が、配列番号5の配列の異種核酸、または配列番号5と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる、請求項32から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
IL−4が、配列番号7の配列の異種核酸、または配列番号7と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる、請求項32から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
IL−13が、配列番号8の配列の異種核酸、または配列番号8と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる、請求項32から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記のように拡張された抗原特異的なTr1細胞の集団を、少なくとも12時間、有利には24時間の間、ステップ(c)で抗原特異的なTr1細胞の集団を培養した後、ステップ(d)で回復する、請求項32から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
1)末梢血単核細胞(PBMC)または白血球の集団を、食品抗原または自己抗原で刺激するステップと、
2)食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団を、刺激した細胞の集団から回復するステップと
を含む、食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団を、白血球の集団またはPBMCの集団から獲得するためのin vitro方法。
【請求項2】
食品抗原または自己抗原に特異的なTr1細胞の集団をPBMCの集団から獲得する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(1)の後、インターロイキン−2(IL−2)、ならびにインターロイキン−4(IL−4)およびインターロイキン−13(IL−13)からなる群から選択される少なくとも1つのインターロイキンの存在下で、同じ抗原でPBMCまたは白血球の集団を少なくとも1回再刺激する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
食品抗原または自己抗原が組換えまたは合成の抗原である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
食品抗原が、オバルブミン、カゼイン、ソヤタンパク質、それらのフラグメント、変異体および混合物を含む群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
食品抗原が、配列番号23の配列の鶏卵オバルブミン、配列番号24の配列のウシαS1−カゼイン、配列番号25の配列のウシβ−カゼイン、ならびに配列番号23、配列番号24、および配列番号25の配列の1つと少なくとも70%の同一性を有する配列を含む群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
自己抗原が、インスリン、ミエリン塩基性タンパク質、それらのフラグメント、変異体、および混合物を含む群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(1)で刺激したPBMCの集団が、0.01.106から100.106細胞/mLまで、好ましくは106から2.106細胞/mLまでからなる、請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(1)でPBMC集団の刺激に用いられる食品抗原または自己抗原が、0.1μg/mLから5mg/mLまで、好ましくは1から2000μg/mLまでの可溶性の形態である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
PBMCまたは白血球の集団を、ステップ(1)の刺激の前に、細胞蛍光測定法による決定を可能にする細胞分裂蛍光マーカーとインキュベートし、刺激した細胞集団の蛍光強度が、PBMCまたは白血球の集団の蛍光強度の2分の1以下であり、細胞分裂が前記刺激した細胞の集団において起こり、ステップ(2)で回復した前記刺激した細胞の集団が抗原特異的なTr1細胞の集団を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
細胞分裂蛍光マーカーが、カルボキシフルオレセイン二酢酸スクシンイミジルエステル(CFSE)マーカー、オレゴングリーン488カルボン酸二酢酸(Carboxy−DFFDA SE)マーカー、またはPKH26マーカーである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
抗原特異的なTr1細胞の集団を、前記抗原特異的なTr1細胞の集団の細胞の表面に存在するタンパク質に対して向けられている蛍光標識した抗体を用いて、細胞蛍光測定法によりステップ(2)で回復する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
抗原特異的なTr1細胞の集団を、有利には限界希釈などのクローニング技術によりステップ(2)で回復する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
PBMCまたは白血球の集団が、ヒトの集団である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
3)Mp培地でステップ(2)で回復した抗原特異的なTr1細胞の集団を拡張するステップ
をさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
抗原特異的なTr1細胞の集団を拡張するステップ(3)が、前記細胞の集団を、IL−2およびIL−4の存在下でCD3+CD28ビーズと接触させることにある、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
抗原特異的なTr1細胞の集団を拡張するステップ(3)が、Mp培地における因子のグループの存在を必要とし、前記拡張ステップが、
a)温度T1で、Mf培地で前記グループの因子を発現することができるフィーダー細胞を培養するステップであって、このT1が、前記フィーダー細胞の増殖を可能にするステップと、
b)前記Mf培地を除いた、またはMf培地のないステップ(a)で得たフィーダー細胞を、Mp培地に含まれる抗原特異的なTr1細胞の集団と接触させるステップであって、ここで、抗原特異的なTr1細胞の集団、フィーダー細胞、およびMp培地を含む混合物を得るために、前記Mp培地は、因子のグループを最初に含んでいないステップと、
c)Mp培地において、フィーダー細胞によって発現されているグループの因子を含むステップ(b)で得られた混合物を培養するステップであって、ここで、
抗原特異的なTr1細胞の集団が増殖し、
フィーダー細胞が増殖しないように
培養する前記ステップ(c)を少なくとも約35℃である温度T2で行い、
抗原特異的なTr1細胞の集団を拡張するステップと、
d)そのように拡張した抗原特異的なTr1細胞の集団を回復するステップと
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
フィーダー細胞がステップ(c)の間に死滅する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(d)で、フィーダー細胞の死滅によりもたらされる前記細胞の細胞膜のフラグメントが除去される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
因子のグループがフィーダー細胞の細胞膜に固定されている因子、および前記フィーダー細胞により分泌される因子を含む、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記グループの因子が、拡張すべき抗原特異的なTr1細胞の集団の細胞表面タンパク質と相互作用する、請求項17から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
フィーダー細胞が組換え細胞であり、前記グループの因子をコードする異種核酸を含む、請求項17から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
フィーダー細胞が、細胞の表面にいかなる内因性のクラスIおよび/またはIIの主要組織適合複合体(MHC)分子も持たない、請求項17から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(b)でフィーダー細胞がそのMf培地から除去される、請求項17から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記フィーダー細胞が昆虫のフィーダー細胞であり、T1がT2よりも低い、請求項17から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記昆虫のフィーダー細胞が、2005年3月25日に、National Collection of Micro−organisms Cultures(CNCM)にI−3407番で寄託されているS2ショウジョウバエ細胞系由来である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
Mp培地が無血清培地である、請求項17から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
Mf培地が無血清培地である、請求項17から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
フィーダー細胞が、拡張すべき抗原特異的なTr1細胞の集団の以下の細胞表面タンパク質:
CD3/TCRタンパク質複合体、
CD28タンパク質、
CD2タンパク質、
インターロイキン−2(IL−2)受容体、および
インターロイキン−4(IL−4)受容体
と相互作用をする組換え因子のグループを発現する組換えフィーダー細胞である、請求項22から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
組換え因子のグループが、
抗−CD3抗体の修飾が抗−CD3重鎖の抗−CD3細胞質内ドメインの膜貫通ドメインとの置換にあり、前記修飾された抗−CD3抗体はフィーダー細胞の細胞膜に固定されており、T細胞のCD3/TCRタンパク質複合体との相互作用を受けやすい、修飾された抗−CD3抗体またはその変異体、
T細胞のCD28タンパク質との相互作用を受けやすい、フィーダー細胞の細胞膜に固定されている、CD80またはCD86タンパク質、好ましくはCD80タンパク質、またはその変異体、および
Tr1細胞のCD2タンパク質との相互作用を受けやすい、フィーダー細胞の細胞膜に固定されているCD58タンパク質、またはその変異体、
Tr1細胞のIL−2受容体との相互作用を受けやすい、フィーダー細胞により分泌されるIL−2、またはその変異体、
インターロイキンがフィーダー細胞により分泌され、Tr1細胞のIL−4受容体との相互作用を受けやすい、IL−4およびインターロイキン13(IL−13)を含む群から選択されるインターロイキン、好ましくはIL−4、またはその変異体
を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
抗−CD3抗体重鎖の細胞質内ドメインに置換する膜貫通ドメインが、血小板由来成長因子(PDGF)の膜貫通ドメインである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記グループの因子がヒト起源である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
修飾された抗−CD3抗体の軽鎖が、配列番号1の配列の異種核酸、または配列番号1に少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされ、修飾された抗−CD3抗体の重鎖が配列番号2の配列の異種核酸、または配列番号2と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
CD80タンパク質が、配列番号3の配列の異種核酸、または配列番号3と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
CD86タンパク質が、配列番号4の配列の異種核酸、または配列番号4と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる、請求項32または33に記載の方法。
【請求項36】
CD58タンパク質が、配列番号6の配列の異種核酸、または配列番号6と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる、請求項32から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
IL−2が、配列番号5の配列の異種核酸、または配列番号5と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる、請求項32から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
IL−4が、配列番号7の配列の異種核酸、または配列番号7と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる、請求項32から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
IL−13が、配列番号8の配列の異種核酸、または配列番号8と少なくとも70%の同一性を有する任意の核酸によってコードされる、請求項32から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記のように拡張された抗原特異的なTr1細胞の集団を、少なくとも12時間、有利には24時間の間、ステップ(c)で抗原特異的なTr1細胞の集団を培養した後、ステップ(d)で回復する、請求項32から39のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2008−544760(P2008−544760A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520023(P2008−520023)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【国際出願番号】PCT/IB2006/002801
【国際公開番号】WO2007/010406
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(502329441)アンスティテュ ナショナル ド ラ サンテ エ ド ラ ルシェルシュ メディカル (イ.エヌ.エス.エ.エール.エム.) (1)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE (I.N.S.E.R.M.)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【国際出願番号】PCT/IB2006/002801
【国際公開番号】WO2007/010406
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(502329441)アンスティテュ ナショナル ド ラ サンテ エ ド ラ ルシェルシュ メディカル (イ.エヌ.エス.エ.エール.エム.) (1)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE (I.N.S.E.R.M.)
【Fターム(参考)】
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