説明

食品用および/または飼料用の組成物

【課題】脂溶性ビタミン類の生物体内での吸収性が改善された、食品用および/または飼料用の、脂溶性ビタミン類含有組成物、食品用および/または飼料用組成物に添加した脂溶性ビタミン類の、投与対象生物の消化管からの吸収性を高める方法であって、実用的、且つ、効率的な方法を提供する。
【解決手段】脂溶性ビタミン類および脂肪酸を含有する、食品用および/または飼料用の組成物であって、当該脂肪酸の含有量が当該脂溶性ビタミン類の含有量を1とした場合に、重量比で0.01以上である組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、脂溶性ビタミン類を含む、食品用および/または飼料用の組成物に関する。とりわけ、脂溶性ビタミン類の生物体内での吸収性が改善された、食品用および/または飼料用の脂溶性ビタミン類含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、脂溶性ビタミン類は水には難溶性であるが故、経口投与した場合に投与対象生物の消化管からの吸収性が非常に低いという問題がある。
【0003】
このような問題を解決する方法として、特許文献1は、β―カロテンをシクロデキストリンとの複合体とすることで、投与後の生物体内での吸収性を高める方法を開示している。
【0004】
また、特許文献2は、カロテノイド化合物およびカロテノイド混合物からなる脂溶性物質に、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤、、多価アルコール、水、レシチン、セラミドを配合して、0〜100℃で乳化処理したものを投与する方法を開示している。
【0005】
さらに、特許文献3は、カロテノイドの一種であるアスタキサンチンに乳化剤としてポリグリセリンオレイン酸エステルを添加し、水中油型乳化物としたものを投与する方法を開示している。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される方法は、非常に高価なシクロデキストリンを使用している点、また、特許文献2および3に開示される方法は、煩雑な乳化の工程が必要である点において、いずれも製造コストを考慮した時に不利である。従って、脂溶性ビタミン類を経口投与した場合に、投与対象生物の消化管からの吸収性を高めるための、より実用的、且つ、効果的な方法の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平11−506922号公報
【特許文献2】特開2008−255069号公報
【特許文献3】特開2008−179619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は、脂溶性ビタミン類の生物体内での吸収性が改善された、食品用および/または飼料用の、脂溶性ビタミン類含有組成物の提供を課題とする。また、食品用および/または飼料用組成物に添加した脂溶性ビタミン類の、投与対象生物の消化管からの吸収性を高める方法であって、実用的、且つ、効率的な方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、脂溶性ビタミン類含有組成物にさらに脂肪酸を添加して対象動物に経口摂取させることで、当該動物における脂溶性ビタミン類の吸収性を飛躍的に向上させ得ることを見出し、本願発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本願発明は、脂溶性ビタミン類および脂肪酸を含有する、食品用および/または飼料用の組成物であって、当該脂肪酸の含有量が当該脂溶性ビタミン類の含有量を1とした場合に、重量比で0.01以上であることを特徴とする組成物である。
【0011】
また、本願発明は、脂溶性ビタミン類を含有する、食品用および/または飼料用の組成物の製造方法であって、当該組成物中の当該脂溶性ビタミン類の含有量を1とした場合に、重量比で0.01以上となる量の脂肪酸を添加することを特徴とする、製造方法である。
【0012】
さらに、本願発明は、ヒトおよび/または動物に経口投与することを目的とした組成物が含有する脂溶性ビタミン類の、ヒトおよび/または動物体内での吸収性を向上させる方法であって、当該組成物中の当該脂溶性ビタミン類の含有量を1とした場合に、重量比で0.01以上となる量の脂肪酸を、当該組成物中に含有させることを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0013】
本願発明によれば、脂溶性ビタミン類の生物体内での吸収性が改善された、食品用および/または飼料用の、脂溶性ビタミン類含有組成物が提供可能となる。ひいては、食品用および/または飼料用組成物に添加した脂溶性ビタミン類の、投与対象生物の消化管からの吸収性を高めることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願発明は、脂溶性ビタミン類および脂肪酸を含有する、食品用および/または飼料用組成物である。また、本願発明は、脂溶性ビタミン類の吸収性が向上した、食品用および/または飼料用の、脂溶性ビタミン類含有組成物の製造方法であって、当該組成物に脂肪酸を添加することを特徴とする、製造方法である。
【0015】
本願発明の組成物において、当該脂肪酸の含有量は当該脂溶性ビタミン類の含有量を1とした場合の重量比で、0.01以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上、さらに好ましくは10以上である。また、本願発明の組成物において、当該脂肪酸の含有量は当該脂溶性ビタミン類の含有量を1とした場合の重量比で、1000000以下、好ましくは100000以下、より好ましくは10000以下、さらに好ましくは1000以下である。
【0016】
本願発明の製造方法において、脂溶性ビタミン類含有組成物に添加する脂肪酸の量は、当該脂溶性ビタミン類の含有量を1とした場合の重量比で、0.01以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上、さらに好ましくは10以上である。また、本願発明の製造方法において、脂溶性ビタミン類含有組成物に添加する脂肪酸の量は、当該脂溶性ビタミン類の含有量を1とした場合の重量比で、1000000以下、好ましくは100000以下、より好ましくは10000以下、さらに好ましくは1000以下である。
【0017】
本願発明の組成物中の脂溶性ビタミン類と脂肪酸の量比は、例えば、当該組成物の他の構成成分、当該組成物を投与するヒトを含めた動物の種類、当該組成物の所望する形態等を考慮し、本願発明の効果が得られる範囲において、適宜選択すればよい。
【0018】
本願発明において用いる脂溶性ビタミン類とは、フィロキノン、メナキノン誘導体等のビタミンK類、トコフェロール、トコトリエノール等のビタミンE類、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等のビタミンD類、レチノール、レチナール等のビタミンA類、および、カロテノイド類を指し、カロテノイド類が好ましい。カロテノイド類としては、例えば、α−カロテン、β−カロテン、γ−カロテン、δ−カロテン、リコペン、β−クリプトキサンチン、アドニキサンチン、フェニコキサンチン、ルテイン 、エキネノン、ヒドロキシエキネノン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、フコキサンチン、アンテラキサンチン、ビオラキサンチン、および、アスタキサンチンが挙げられる。また、これらカロテノイド類の誘導体も、生体内においてその生理機能を発揮する限りにおいて、本願発明において用いる脂溶性ビタミン類に包含される。当該誘導体とは、例えば、カロテノイド類の脂肪酸エステル、配糖体等を指す。
【0019】
本願発明の組成物に添加する脂溶性ビタミン類としては、例えば、化学合成的手法により得られたもの、および/または、動物、植物、微生物等の生物から得られたものを用いることができる。また、所望の脂溶性ビタミン類以外の夾雑物を含む混合物を用いても、高度に精製されたものを用いても構わない。例えば、脂溶性ビタミン類を生産する生物の細胞体、細胞体の処理物、細胞体の一部、細胞体の抽出物、及び/又は、それらの部分精製物等を、脂溶性ビタミン類として本願発明の組成物に添加することができる。上記の、細胞体の処理物とは、例えば、酸処理、塩基処理、酵素処理、加熱処理、加圧処理、破砕処理、乾燥処理等を、単独であるいは任意に組合わせて施した細胞体を指す。
【0020】
例えば、本願発明において脂溶性ビタミン類の一種と定義するアスタキサンチンでは、化学合成的に製造されたものの他、例えば、キサントフィロマイセス(Xanthophyllomyces)属、ファフィア(Phaffia)属、ヘマトコッカス(Haematococcus)属、クラミドモナス(Chlamydomonas)属、モノラフィディウム(Monoraphidium)属、エリスロバクター(Erythrobacter)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、パラコッカス(Paracoccus)属、ラビリンチュラ(Labyrinthulea)属等に属する微生物の細胞から得られたものが使用できる。
【0021】
本願発明の組成物が含有する脂溶性ビタミンの濃度は、本願発明の効果が得られる限り特に限定されないが、好ましくは1ppm以上、より好ましくは10ppm以上、さらに好ましくは100ppm以上、さらに好ましくは1000ppm以上であり、好ましくは100000ppm以下、より好ましくは10000ppm以下である。
【0022】
本願発明の組成物に添加する脂肪酸は、本願発明の効果が得られる限り特に限定されないが、炭素数8〜18の脂肪酸が好ましい。当該脂肪酸の例としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸が挙げられる。これらの脂肪酸は各々単独で用いてもよいし、任意に組合わせた混合物として用いてもよい。また、食品用および/または飼料として許容されるこれら脂肪酸の塩を用いてもよい。
【0023】
本願発明の組成物に添加する脂肪酸の組成に関し、幾つかの好適な例を示すことができる。好適な組成の一つは、カプリル酸含量0〜10重量%、カプリン酸含量0〜10重量%、ラウリン酸含量30〜70重量%、ミリスチン酸含量5〜30重量%、パルミチン酸含量5〜30重量%、ステアリン酸0〜10重量%、オレイン酸含量5〜30重量%、リノール酸含量0〜10重量%である。好適な組成の一つは、ラウリン酸含量0〜10重量%、ミリスチン酸0〜10重量%、パルミチン酸30〜60重量%、ステアリン酸0〜10重量%、オレイン酸20〜50重量%、リノール酸含量0〜10重量%である。好適な組成の一つは、パルミチン酸含量5〜20重量%、ステアリン酸0〜10重量%、オレイン酸含量10〜40重量%、リノール酸含量30〜70重量%、リノレン酸含量0〜15重量%である。しかしながら、上記組成はあくまで好適な組成の例であり、本発明は上記組成に限定されない。
【0024】
上記の脂肪酸および/またはそれらの混合物として、例えば、パーム油、パーム核油、コメ油、大豆油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、小麦胚芽油、コーン油、ナタネ油、ヒマワリ油、綿実油、牛脂、豚脂、鶏脂、羊脂、サバ油、タラ油、イワシ油等の油脂を精製する際の副生物として得られるものを用いることができ、安価に入手できる点において非常に有利である。油脂を精製する際の副生物として得られる脂肪酸は、例えば、油糧原料の抽出物等を蒸留精製する際に、グリセリン脂肪酸エステルと分画されて得られる。
【0025】
本願発明において、食品とは、常食以外に、着色料、サプリメント等をも包含するが、これらに限定されるものではない。また、飼料とは、例えば、魚類、甲殻類、貝類等の水産動物、ニワトリ、ウズラ、アヒル等の家禽類、牛、豚、羊、馬等の畜産動物、犬、猫等の愛玩動物等に与える飼料およびサプリメント等を指すが、これらに限定されるものではない。さらに、食品用および/または飼料用組成物とは、上記の食品および/または飼料として用いることが許容される組成物を指す。
【0026】
本願発明の組成物は、脂溶性ビタミン類および脂肪酸を含有し、当該脂肪酸の含有量が当該脂溶性ビタミン類の含有量を1とした場合の重量比で、0.01以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上、さらに好ましくは10以上である。また、1000000以下、好ましくは100000以下、より好ましくは10000以下、さらに好ましくは1000以下である。当該脂肪酸は、食品用および/または飼料用として許容されるものであれば、本願発明の効果が得られる限り特に限定されない。脂溶性ビタミン類および脂肪酸以外の組成として、例えば、脂質、蛋白質、糖質、ミネラル類、ビタミン類、賦形剤、結着剤、増粘剤、乳化剤、水分等を任意の割合で含み得る。
【0027】
本願発明の組成物に適当な乳化剤を添加することで、脂溶性ビタミン類の吸収性をさらに向上させることが可能であり、当該組成物も本願発明に包含される。本願発明の効果が得られる限りにおいて、乳化剤は特に限定されないが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン等が挙げられる。本願発明の組成物に添加する乳化剤の量は、本願発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されないが、本願発明の組成物が含有する脂肪酸の重量を1とした場合の重量比で、0.0001以上、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.1以上であり、且つ、1000以下、好ましくは100以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは1以下、となる量である。
【0028】
本願発明の組成物は、例えば、適当な容器中、配管中、エクストルーダー等で脂溶性ビタミン類、脂肪酸、その他の原料を混合することにより得られ、本願発明の効果が得られる限りにおいて、脂溶性ビタミン類、脂肪酸、その他の原料の投入方法、投入順序、混合条件等は特に限定されない。また、本願発明の組成物の形態は、本願発明の効果が得られる限りにおいて特に限定されないが、例えば、乳化液状、スラリー状、粉末状、および/または、ペレット状であり得る。脂溶性ビタミン類、脂肪酸、その他の原料の混合物に、必要に応じて、例えば、乳化、均質化、粉砕、成形、乾燥等の加工を、単独で、または任意に組合わせて施すことで、所望の形態を有する本願発明の組成物を得ることが可能である。
【0029】
本願発明の効果は、例えば、本願発明の脂溶性ビタミン類含有組成物を経口摂取した動物体内の脂溶性ビタミン類の濃度を測定し、本願発明の特徴を有しない脂溶性ビタミン類含有組成物を経口摂取した場合と比較することにより、評価、確認することができる。評価方法は特に限定されないが、例えば、評価対象となる脂溶性ビタミン類含有組成物をマウスに強制投与し、一定時間後に、当該マウスの血中または肝中の脂溶性ビタミン類濃度を測定することにより、当該脂溶性ビタミン類の吸収性を評価できる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例で本願発明を詳細に説明するが、本願発明はこれに限定されない。
【0031】
(実施例1)
<アスタキサンチン含有細胞体の調製>
グルコース1%、リン酸アンモニウム1.3%、リン酸カリウム0.7%、酵母エキス0.3%を含む培地に、キサントフィロマイセス・デンドロアス(Xanthophyllomyces dendrohous)NBRC10129(独立行政法人製品評価技術基盤機構生物遺伝資源部門(〒292-0818千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)より入手)の変異株を接種し、グルコースを流加しつつ通気、攪拌し、20℃で培養した。培養液に硫酸を添加して攪拌した後、さらに、水酸化ナトリウムを添加して攪拌し、培養で得られた細胞を酸およびアルカリで処理した。処理後の細胞を遠心分離で集め、水洗後、凍結乾燥して、アスタキサンチンを含む乾燥細胞体を得た。
【0032】
<投与する組成物の調製>
上記で得た乾燥細胞体に、脂質、および、水を混合し、アスタキサンチン濃度が1670ppm、脂質の含有量がアスタキサンチンの含有量を1とした場合の重量比で24となる組成物を調製した。脂質としては、大豆油(和光純薬工業製)、サフラワー油(サミット製油株式会社製)、イワシ油(ハリマ食品株式会社製)、コメ由来脂肪酸(築野食品工業株式会社製)、パーム由来脂肪酸、または、パーム核由来脂肪酸を添加し、当該組成物をマウスに経口投与した場合の吸収性を、脂質を添加しない場合と比較した。実験に使用した大豆油、サフラワー油、イワシ油、コメ由来脂肪酸、パーム由来脂肪酸、および、パーム核由来脂肪酸の構成脂肪酸の組成を表1に示した。マウスを用いた吸収性の評価は以下のように実施した。
【0033】
【表1】

【0034】
<マウスを用いた吸収性の評価>
7週齢の雄性ICRマウス(入手元:日本チャールズリバー)に上記の組成物を、それぞれアスタキサンチンとして50mg/kgの用量で経口投与した。被験物質投与4時間後に各マウスより肝臓を採取した。採取した肝臓をハサミで細かくミンスし、0.3gを秤量した。それに2mLの蒸留水を加えて、ポリトロンホモジナイザーを用いてホモジナイズした。2mLのメタノール(500ppmのBHTを含む)を加えて10秒間撹拌し、除蛋白処理した。次に4mLのn−ヘキサンを加え、振とう機を用いて5分間混合した。遠心分離(3000rpm×10分)を行った後、ヘキサン層中のアスタキサンチンをHPLCを用いて定量し、肝臓中のアスタキサンチン濃度を算出した。
【0035】
<HPLCによるアスタキサンチンの定量>
以下の分析系でアスタキサンチンを定量した。以下の分析系で、アスタキサンチンの保持時間は、9.1分であった。アスタキサンチンの標準には、シグマ社製の試薬を使用した。
カラム:SYMMETRY C18 250mm×φ4.6mm(Waters社製)
移動相:アセトニトリル/酢酸エチル/水/ギ酸=600/300/60/40(体積比)
検出波長:471nm
流速:0.8mL/分
結果を表2に示した。
【0036】
【表2】

【0037】
表2の結果は、脂質を添加していない組成物、および、脂質として、グリセリン脂肪酸エステルである大豆油、サフラワー油、イワシ油を添加した組成物と比較して、脂肪酸であるコメ由来脂肪酸、パーム由来脂肪酸、パーム核由来脂肪酸を添加した組成物では、それらを経口投与した生物体内でのアスタキサンチンの吸収性が高いことを示している。
【0038】
(実施例2)
実施例1と同様に調製したアスタキサンチンを含む乾燥細胞体に、パーム核由来脂肪酸、および、水を混合し、アスタキサンチン含有濃度が1670ppm、パーム核由来脂肪酸の含有量がアスタキサンチンの含有量を1とした場合の重量比で、それぞれ、0、3.8、11.4、19.0、26.6、となる組成物を調製し、実施例1と同様にマウスを用いて吸収性を評価した。結果を表3に示した。
【0039】
【表3】

【0040】
(実施例3)
実施例1と同様に調製したアスタキサンチンを含む乾燥細胞体に、脂質、乳化剤、および、水を混合し、アスタキサンチン濃度が1670ppm、脂質の含有量がアスタキサンチンの含有量を1とした場合の重量比で23.9、乳化剤の含有量がアスタキサンチンの含有量を1とした場合の重量比で2.7となる組成物を調製した。脂質として、大豆油またはコメ由来脂肪酸、乳化剤としてはジグリセリンモノオレエート(理研ビタミン製)を使用し、当該組成物をマウスに経口投与した場合の吸収性を、脂質を添加しない場合と比較した。吸収性の評価は、実施例1と同様に実施した。
【0041】
結果を表4に示した。
【0042】
【表4】

【0043】
表4の結果は、乳化剤を含有する場合においても、脂質を添加していない組成物、および、脂質として、グリセリン脂肪酸エステルである大豆油を添加した組成物と比較して、脂肪酸であるコメ由来脂肪酸を添加した組成物では、それらを経口投与した生物体内でのアスタキサンチンの吸収性が高いことを示している。
【0044】
また、表1と表3の結果から、脂肪酸を添加した組成物に適当な乳化剤を添加することで、アスタキサンチンの吸収性がさらに向上することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂溶性ビタミン類および脂肪酸を含有する、食品用および/または飼料用の組成物であって、当該脂肪酸の含有量が当該脂溶性ビタミン類の含有量を1とした場合に、重量比で0.01以上であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
脂溶性ビタミン類の含有濃度が1ppm以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
脂溶性ビタミン類がカロテノイドである請求項1および2に記載の組成物。
【請求項4】
カロテノイドがアスタキサンチンである請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
アスタキサンチンが、キサントフィロマイセス(Xanthophyllomyces)属酵母の細胞体、細胞体破砕物、細胞体の一部、及び/又は、それらの抽出物に由来する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
脂肪酸が、炭素数8〜18の脂肪酸から選択される1種以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
脂肪酸が、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸からなる群から選択される1種以上である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
脂肪酸が、油脂を精製する際の副生成物として得られるものである、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
乳化剤をさらに含む、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
形態が乳化液状、スラリー状、粉末状、および/または、ペレット状である、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
脂溶性ビタミン類を含有する、食品用および/または飼料用の組成物の製造方法であって、当該組成物中の当該脂溶性ビタミン類の含有量を1とした場合に、重量比で0.01以上となる量の脂肪酸を添加することを特徴とする、製造方法。
【請求項12】
当該組成物中の当該脂溶性ビタミン類の含有濃度が1ppm以上である、請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
脂溶性ビタミン類がカロテノイドである請求項11および12に記載の製造方法。
【請求項14】
カロテノイドがアスタキサンチンである請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
アスタキサンチンが、キサントフィロマイセス(Xanthophyllomyces)属酵母の細胞体、細胞体破砕物、細胞体の一部、及び/又は、それらの抽出物に由来する、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
脂肪酸が、炭素数8〜18の脂肪酸から選択される1種以上である、請求項11〜15のいずれかに記載の製造方法。
【請求項17】
脂肪酸が、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸の群から選択される1種以上である、請求項11〜16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
脂肪酸が、油脂を精製する際の副生成物として得られるものである、請求項11〜17のいずれかに記載の製造方法。
【請求項19】
乳化剤をさらに添加することを特徴とする、請求項11〜18のいずれかに記載の製造方法。
【請求項20】
組成物の形態が乳化液状、スラリー状、粉末状、および/または、ペレット状である、請求項11〜19のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
ヒトおよび/または動物に経口投与することを目的とした組成物が含有する脂溶性ビタミン類の、ヒトおよび/または動物体内での吸収性を向上させる方法であって、当該組成物中の当該脂溶性ビタミン類の含有量を1とした場合に、重量比で0.01以上となる量の脂肪酸を、当該組成物中に含有させることを特徴とする方法。

【公開番号】特開2011−62093(P2011−62093A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213206(P2009−213206)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】