説明

食品用の包装体、包装体入り食品、食材の調理方法

【課題】生鮮食品をはじめとするあらゆる食材について、焼き調理と蒸し調理とを、簡便に両立する技術を提供する。
【解決手段】本発明により提供される包装体入り食品10は、食材2と、食材2を収納する気密性包装体3とを有する。気密性包装体3は、マイクロ波の吸収により発熱する発熱体4を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材を収納する食品用の包装体に関する。また、本発明は、電子レンジを用いて簡単に調理することが可能な、包装体入り食品に関する。また、本発明は、魚類・肉類・野菜類・加工品等のあらゆる食材の調理に有用な電子レンジを用いた調理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、調理時間を短縮することや後片付けの手間を省くために、電子レンジを用いた調理方法が注目されている。
近年では、電子レンジのマイクロ波を照射することで発熱する発熱体を用いて、食品にクリスピー性を付与したり、食品の表面に焦げ目を付与したりするような調理方法が提案され、このような調理方法を補助する物も提案されている(特許文献1、2、3)。
【0003】
特許文献1には、電子レンジ発熱体を紙容器に装着した電子レンジ発熱体付き紙容器が開示されている。
【0004】
特許文献2には、金属を蒸着してなりマイクロ波吸収により発熱する金属層と、この金属層を覆う耐熱性プラスチックフィルムとからなる発熱体を、紙基材に設けた、前記発熱体と基材が一体となったシートであって、金属層がパターン状に形成されていることを特徴とする電子レンジ調理用シートが開示されている。
【0005】
特許文献3には、電子レンジを用いて魚などを調理する加熱補助部材が開示されており、これは、電磁波を照射することにより発熱する第1発熱体及び第2発熱体と、前記第1発熱体を支持する第1支持部と、前記第2発熱体を支持する第2支持部とを備え、また、前記第1支持部と前記第2支持部とは、第1発熱体上に載置された魚などを第2発熱体が接触するように屈曲可能に連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−289692号公報
【特許文献2】特開2011−89719号公報
【特許文献3】特開2011−11044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2、3に記載されるような物を用いた電子レンジでの調理では、確かに食品にクリスピー感を付与したり、食品の表面に焦げ目を付与したりすることが簡便に行えるようになった。
しかしながら、これらの技術では、例えば、生鮮食品に対し十分に火を通そうとして調理時間を長く設定すると、ぱさぱさした食感になってしまい美味しくないという問題があった。このような理由から、上記の技術は、半加工食品、加工食品の仕上げには十分であるものの、より鮮度の高い食材の調理には十分とはいえないものであった。
また、これらの技術では、食材を発熱体の上に載置する作業が必要となり、手指や調理器具に食中毒菌が付着したり、臭いが付着したりするなど、衛生上の問題があった。
【0008】
他方で、近年、仕事を持つ忙しい女性が増えたことや、子供だけで食事をせざるを得ないことが増えたこともあり、調理時間を短縮するだけでなく、後片付けや掃除もなるべく簡単に行いたいという要望は強い。
しかしながら、加工食品の製造技術が発達した現在でも、できるだけ新鮮な食材を、食する直前に簡単に調理したいという要求は強く、このような場面において電子レンジを用いることについて、大きな期待があった。
【0009】
そこで、本発明は、生鮮食品をはじめとするあらゆる食材について、焼き調理と、水分を含ませながら加熱する蒸し調理とを、両立する技術を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、衛生的に簡便に上記の調理をすることを可能とする技術を提供する。
【0010】
また、魚類やその干物のように匂いの強い食品の場合、その匂い対策が必要となるため、個人での持ち運びや冷蔵庫での保管などには消極的になることも多々あった。
そこで、本発明は、このような食材について個人での持ち運びや冷蔵庫での保管においても扱いやすい商品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための本発明は、食品用の包装体であって、食材の収納状態で気密性が保持される気密性包装体と、マイクロ波の吸収により発熱して前記食材を加熱するための発熱体と、を備えることを特徴とする。
このような包装体は、電子レンジで食材を調理する際に用いる包装体として極めて好適である。このような包装体を用いることにより、焼き調理と蒸し調理を同時に行うことができ、包装体に収納される食材の表面には焦げ目或いはクリスピー性を付与することができ、加えて食材の内部は、水分を含ませながらふっくらと仕上げることができる。
また、このような包装体は、食材の収納状態では気密性を保持するものであるため、冷凍食品、チルド食品等の包装体として価値が高く、流通、保管にも適したものである。
【0012】
本発明の包装体では、前記発熱体は、前記包装体の内側に備えられていても、外側に備えられていてもよい。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記発熱体は、シート状基材の表面に金属層を有する発熱シートであることを特徴とする。
発熱体として、このような発熱シートを用いることにより、気密性包装体に容易に発熱体を備え付けることができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記発熱シートは、前記気密性包装体に比して、曲げに対する変形率が小さいことを特徴とする。
このような構成とすることにより、加熱により気密性包装体内に充満した蒸気の圧力(内圧)により気密性包装体が膨張、変形した場合でも、加熱前のシートの形状を維持しやすいため、食材表面に対する発熱体の隣接度合い(距離)を維持しやすくなり、焼きむらを抑制することが可能となる。
【0015】
本発明の一形態では、前記発熱体は、前記包装体の内面に設けられていることを特徴とする。
発熱体を包装体の内面に設けることで、包装体と発熱体を一体化することができ、シンプルな構成とすることができる。
【0016】
本発明の一形態では、前記包装体の内面又は外面の少なくとも一方に前記発熱シートを収納する収納部が設けられていることを特徴とする。
このような構成とすることにより、包装体から発熱シートを容易に分離して、必要に応じて発熱シートを再利用することもできる。
【0017】
前記課題を解決する本発明は、包装体入り食品であって、食材と、食材を収納する気密性包装体とを有し、前記気密性包装体は、マイクロ波の吸収により発熱する発熱体を備える、ことを特徴とする包装体入り食品である。
このような包装体入り食品を電子レンジで加熱することにより、包装体内部の食材に対し、焼き調理と蒸し調理を同時に行うことができる。これにより、包装体内の食材の表面には焦げ目或いはクリスピー性を付与することができ、加えて食材の内部をふっくらと仕上げることができる。
【0018】
また、このような包装体入り食品は、気密性が保持された状態で、冷凍食品やチルド食品等として、流通させ、保管することが可能である。そのため、消費者は、持ち運び時、保管時に食材から臭いが発生することを気にする必要がない。また、包装体入り食品を購入した消費者は、これをそのまま電子レンジ調理に供することができる。したがって、加熱調理に先立ち、食材に直接触れる必要がないため、衛生的に簡便に食材を加熱調理することが可能となる。
【0019】
本発明の一形態では、前記発熱体は、シート状基材の表面に金属層を有する発熱シートであり、前記食材と気密性包装体との間に配置されていることを特徴とする。
発熱体として、このような発熱シートを用いることにより、気密性包装体に容易に発熱体を備え付けることができるため、食材に対し、適度な焦げ目或いはクリスピー性を付与することが可能となる。これにより、より美味しく食材を仕上げることができる。
また、このような発熱シートを用いることで、気密性包装体として比較的低温(120〜150℃前後)で溶融する可能性がある材料を用いた場合でも、気密性包装体に伝導する熱量を小さくすることができ、その溶融を抑制することができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記気密性包装体は、大気圧での最大体積より小さい体積となるように脱気されていることを特徴とする。
このような構成とすることにより、加熱により気密性包装体内に充満した蒸気の圧力により気密性包装体が膨張したときでも、一定の膨張率においては、気密性包装体の開封を抑制することができ、蒸し調理を適切な時間行うことができる。また、調理初期段階での臭いの発生を極力防ぐことができる。
【0021】
前記課題を解決するための本発明は、前記包装体入り食品を、前記気密性包装体の密閉性を保持しながら電子レンジで加熱することを特徴とする、食材の調理方法である。
このような調理方法によれば、気密性包装体の密閉性を生かして、蒸し調理を適切な時間行うことができる。また、臭いの発生を防ぐことができる。
【0022】
前記課題を解決するための本発明は、マイクロ波を用いた食材の調理方法であって、
マイクロ波を発熱体に照射することにより発熱体から発熱させ、該発熱により食材表面を加熱する工程と、マイクロ波を食材に照射することにより、食材から水蒸気を発生させ、該食材を水蒸気雰囲気下で加熱する工程と、を並行して行うことを特徴とする。
このような調理方法によれば、焼き調理と蒸し調理を同時に簡便に行うことができ、食材の調理が簡便なものとなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の包装体は、食材を流通させ、保管するのに必要な機能を有するのみならず、焼き調理と蒸し調理を簡便に同時に行うための包装体として有用である。
本発明の包装体入り食品を、包装体のまま電子レンジで加熱することにより、包装体内の食材に対し焼き調理と蒸し調理を同時に行うことができる。これにより、食材の表面には焦げ目或いはクリスピー性を付与することができ、食材の内部はふっくらと仕上げることができる。
また、本発明の包装体入り食品は、冷凍食品、チルド食品として、流通させることが可能であり、消費者は購入した包装体入り食品をそのまま電子レンジ調理に供することができるため、衛生的に簡便に食材を調理することが可能となる。
また、本発明の包装体入り食品の気密性包装体として透明なものを用い、食材として生鮮食品或いは半調理品を収納した場合には、加熱調理による食材の変化を外部から容易に観察することができる。このような包装体入り食品は、家庭科教育等の教材として用いることも可能である。
さらに、本発明の調理方法を用いることにより、焼き調理と蒸し調理を同時に簡便に行うことができ、食材の表面には焦げ目或いはクリスピー性を付与することができ、加えて食材の内部をふっくらと仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態1に係る包装体入り食品を示すもので、(a)は加熱前の断面図、(b)は加熱中又は加熱直後の断面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る気密性包装体と発熱シートの斜視図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る発熱シートの断面図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る食品用の包装体を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態3に係る食品用の包装体を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態3に係る食品用の包装体を示す平面図である。
【図7】本発明の実施形態4に係る食品用の包装体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<実施形態1>
本発明の包装体入り食品の実施形態1について、図1〜3を参照しながら説明する。
【0026】
図1(a)、(b)は、包装体入り食品10の断面図であり、(a)は加熱前を、(b)は加熱中又は加熱直後の状態を示している。
包装体入り食品10は、食材2と、気密性包装体3とを有している。気密性包装体3は発熱体4を備えている。
食材2としては、魚類、肉類、野菜類、穀類、或いはその加工品等、加熱調理され得るあらゆる食材が挙げられる。食材としては、焼き調理と蒸し調理を同時に行う調理方法で食されるものであることが特に好ましい。このような食材としては、魚、肉、野菜等の生鮮食品、焼きおにぎり、漬け魚、漬け肉、干物等の半加工食品が挙げられる。
【0027】
気密性包装体3は、食材2が収納された状態で、外気を遮断することができるものであって、電子レンジでの加熱において溶融しないものであればよい。このような材料として、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の、通常電子レンジ加熱用の包装体に用いられるプラスチックを用いることができる。本実施形態においては、気密性包装体3は、透明の厚めのポリプロピレンフィルムで構成されている。気密性包装体の色は特に制限されないが、流通販売の場面で食材の中味を確認しやすくしたり、調理の状態を観察しやすくしたりするためには、透明であることが好ましい。
【0028】
本実施形態においては、後述する発熱シート4を構成する基材シート41により、気密性包装体3に伝わる熱量を制御することができるので、通常の電子レンジ加熱用の包装体に用いられている材料を特に制限なく用いることが可能である。
【0029】
気密性包装体3は、袋状であり、図1(a)に示すように大気圧での最大体積より小さい体積となるように脱気されている。すなわち、食材2を収納して気密性包装体3を密閉した状態の体積が、食材2を収納しない状態で空気を入れた状態の気密性包装体3の体積より小さくなるように、内部の空気を逃がしてから密閉状態とされたものである。このようにすることで、加熱により気密性包装体3内に充満した蒸気の圧力により気密性包装体3が膨張したときでも、一定の膨張率においては、気密性包装体3の開封を抑制することができ、蒸し調理を十分に行うことができる。また、気密性包装体3の開封による臭いの発生を極力防ぐことができる。
【0030】
このように脱気した場合、全体の容積を小さくでき、酸化反応を抑制できる利点等も得られる。しかし、食材2の種類によっては、脱気しないほうが良い場合も想定されるので、必ずしも脱気する必要はない。
【0031】
気密性包装体3は、食材2を収納した状態ではその食材2が実質的に外気に触れないように密閉されている。この密閉性は、包装体入り食品10を電子レンジで加熱した場合に、所定時間保持されれば良い。すなわち、必要な加熱が終了する間、密閉性が保持されていてもよいし、所定時間が経過した時点で密閉性が解除されてもよい。これらの構成は、収納される食材2の種類等に応じて、適宜設計することができる。
【0032】
気密性包装体3は、発熱体4を備えている。本実施形態では、図2に示すように、シート状の発熱体4(発熱シート)が気密性包装体3内に挿入されている。なお、発熱体4等の発熱体は、複数備えられていてもよいし、その形状も制限されない。
発熱体4は、マイクロ波を吸収することで発熱する。発熱温度としては、焼き調理が可能である限り特に制限されないが、好ましくは食材表面にクリスピー性乃至は焦げ目を付与することができる温度である。具体的には120〜250℃程度、好ましくは170〜250℃程度である。
【0033】
発熱体4について、図3を用いてより詳細に説明する。この実施形態では、発熱体4は、紙からなるシート状基材41の表面に、金属蒸着層42を設け、さらにその表面にプラスチックフィルムからなる被覆層43を設けた構成となっている。
【0034】
シート状基材41は、コーティング等の表面処理が施された厚紙で形成され、金属蒸着層42からの熱が気密性包装体3に直接伝導するのを抑制すると共に、発熱体4全体の曲げに対する変形率を小さくしている。これにより、電子レンジで加熱した際に、気密性包装体3が蒸気圧によって膨張して変形した場合でも、発熱体4が気密性包装体3の変形に追随して変形することを極力防ぎ、食材表面に対する発熱体の隣接度合い(距離)を維持し、食材表面の焼きむらを抑制する。なお、シート状基材として、プラスチック基材を用いることも可能である。
【0035】
また、金属蒸着層42は、アルミニウムで形成されている。なお、金属蒸着層42を形成する金属系導電性粉体としては、ニッケル、金、銀、亜鉛、白金等の粉体を用いることもできる。金属蒸着層の製造方法については公知の方法を用いればよい。なお、焼き調理が可能な温度で発熱する材料であれば、発熱体に使用することができることはいうまでもなく、炭素系導電性粉体、又はこれと金属系導電性粉体の混合粉体等を用いてもよい。炭素系導電性粉体としては、カーボンブラック、活性炭、黒鉛等の粉体が挙げられる。
また、本実施形態では金属蒸着層を用いた例を示しているが、金属層は必ずしも蒸着の方法で形成することなく、公知の他の表面処理方法(めっき方法)を用いて形成することができることはいうまでもない。
【0036】
また、プラスチックフィルムからなる被覆層43は、ポリエチレンテレフタレート(PET)で形成されている。被覆層43は、金属蒸着層42からの熱に対して溶融しない材料で形成されていればよい。被覆層43は金属蒸着層42が食材2に直接触れないようにする機能も発揮する。なお、この被覆層43は設けなくても良い。
【0037】
ここまで、包装体入り食品の一実施形態について説明したが、この包装体入り食品10を構成する気密性包装体3と、これに備えられる発熱体4とは、本発明の食品用の包装体の一実施形態を構成する。
包装体入り食品10は、例えば、開口部3aから包装体3内に発熱体4と食材2とを収納した後、開口部3aを既存の熱融着等の手段で密閉することにより得られる。密閉前に包装体3を脱気する作業も既存の方法を採用することができる。
【0038】
本実施形態の包装体入り食品10は、そのまま電子レンジで加熱することができる。この加熱は、気密性包装体3の密閉性を保持しながら行うことが好ましい。密閉性は、必要な加熱が終了する間保持されていてもよいし、所定時間が経過した時点で解除されてもよい。密閉性の保持時間は、食材の種類に応じて、適宜設定すればよい。密閉性を終始保持する方法としては、蒸気圧に耐えられる強度の包装体を用いる方法、伸展性のある材料で包装体を形成する方法等が挙げられる。一方、密閉性を所定時間保持する方法としては、気密性包装体に、一定以上の圧力で開放する弁を設けること等が挙げられる。
【0039】
本実施形態の包装体入り食品10を電子レンジで加熱すると、電子レンジが発生するマイクロ波が、発熱体4の金属蒸着層42に照射され、吸収されることにより、金属蒸着層42が発熱し、発熱体4に近接した食材2の表面が高温で加熱される。それと同時に、マイクロ波は食材にも照射され、吸収されることにより、食材から水蒸気が発生する。これにより、気密性包装体3の内部は水蒸気で満たされ、食材は水蒸気で包み込まれた状態で加熱される。
このように、本実施形態の包装体入り食品10を、電子レンジを用いて加熱すれば、食材2に対し焼き調理と蒸し調理を同時に行うことができ、非常に美味しい料理を簡便に作ることができるのである。
【0040】
包装体入り食品10は、例えば、焼き魚、ステーキ、焼き野菜等の焼き物のほか、食材表面は十分に焼き調理がされていて食材内部は一定のレア状態のタタキ、ローストビーフ等を調理する物として構成することができる。食材内部を一定のレア状態とするためには、気密性包装体3の密閉状態の解除のタイミングを早めることや電子レンジのマイクロ波の発生を適当な時間に停止し、余熱を用いて調理することにより達成することができる。
【0041】
<実施形態2>
図4は、実施形態1において説明した食品用の包装体(気密性包装体及び発熱体)とは異なる形態の食品用の包装体の実施形態を示す図である。
なお、この図において、図1〜3と基本的に同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。
食品用の包装体1は、気密性包装体3を有している。気密性包装体3は、密封前は開口部を有する袋状である。気密性包装体3は、凹凸嵌合により強い結合力で密封するシール部(ファスナー)を有するものでもよい。
気密性包装体3は、食材を収納した場合に、外気を遮断することができるものであって、電子レンジでの加熱において溶融しないものであればよい。本実施形態においては、気密性包装体3の内面に発熱体4を設けるため、発熱体4の発熱温度に応じて、150〜250℃程度の温度に耐えられる材料で気密性包装体3を形成することが必要である。
このような材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。
【0042】
気密性包装体3は、発熱体4が、気密性包装体3の一内面に接着されている。発熱体4は、金属蒸着層42と、その表面のプラスチックフィルムからなる被覆層43とを有している。この実施形態2の発熱体4は、気密性包装体3の内面に対して、金属を直接蒸着して、金属蒸着膜を形成することにより構成することができる。
この実施形態2に係る食品用の包装体1についても、実施形態1で例示した食品用の包装体とほぼ同様の効果が得られる上に、特に、気密性包装体3と発熱体4とを一体に形成することができる。これにより、食品用の包装体自体の生産性向上を図れるだけでなく、気密性包装体3内への収納作業は食材のみとすることができる。
【0043】
<実施形態3>
図5は、本発明の実施形態3に係る断面図である。なお、同図において、図1〜3の実施形態1と基本的に同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。
この実施形態3では、気密性包装体3の内面に、発熱体(発熱シート)4の収納部31を設けたものである。この収納部31は、図6に示すように気密性包装体3の内面のほぼ中央部分に設けられている。この収納部31には、平面矩形状の発熱シート4を出し入れする開口部31aが設けられている。発熱シート4は、実施形態1のそれよりも小さく形成されている。したがって、収納部31もそれに対応して小さく形成されている。
【0044】
この実施形態3によれば、気密性包装体3から発熱シート4を容易に分離して(取り出して)、必要に応じて発熱シートを再利用することもできる。さらに、発熱シート4を収納部31内に収納してあるので、発熱シート4が気密性包装体3内を移動して、位置ずれしたりすることもない。これにより、食材2と発熱シート4との相対位置の対応付けを精度よく行うことが可能になる。
【0045】
<実施形態4>
図7は、本発明の実施形態4に係る断面図である。同図において、図1〜3の実施形態1と基本的に同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。
この実施形態4では、気密性包装体3の外面に、発熱体(発熱シート)4の収納部32を設けたものである。
この収納部32は、図7に示すように気密性包装体3の外面のほぼ中央部分に設けられている。この収納部32には、平面矩形状の発熱シート4を出し入れする開口部が設けられている。発熱シート4は、実施形態1のそれよりも小さく形成されている。したがって、収納部32もそれに対応して小さく形成されている。
【0046】
この実施形態4によれば、気密性包装体3から発熱シート4を容易に分離して(取り出して)、必要に応じて発熱シート4を再利用することもできる。さらに、発熱シート4を収納部32内に収納してあるので、発熱シートが気密性包装体3内を移動して、位置ずれしたりすることもない。特に、この実施形態によれば、発熱シート4が気密性包装体3の外側に装備されるので、必要時にのみ装備して調理できる利点がある。
【0047】
なお、以上の実施形態では、気密性包装体3を扁平な袋状に形成したものを例示したが、その形状については収納する食材との関係で決定されるものであり、特に限定されない。例えば、気密性包装体3を円筒状や角筒状に形成しても良い。その場合には、発熱体4も円筒状の内面に沿って湾曲する円筒状や、角筒状の内面に沿って湾曲する角筒状に形成することが望ましい。このようにすれば、例えば周囲に焼き焦げのあるローストビーフなどの調理にも適用することができる。
また、気密性包装体3としては、袋状に限らず、箱状や任意の外形の容器状としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の包装体入り食品は、現代の食生活に対し便利さと美味しさを提供するものであり極めて利用価値が高いものである。
特に、これまで生鮮食品にはなかった、生産者或いは加工者によって食材が包装された後、それがそのまま消費者の手に渡り調理に供されるという新しいシステムを可能とするものであり、消費者にとっての安心、安全が一層高まることにもつながる。
【符号の説明】
【0049】
10 包装体入り食品
1 食品用の包装体
2 食材
3 気密性包装体
3a 開口部
31、32 収納部
31a 開口部
4 発熱体
41 シート状基材
42 金属蒸着層
43 被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品用の包装体であって、
食材の収納状態で気密性が保持される気密性包装体と、
マイクロ波の吸収により発熱して前記食材を加熱するための発熱体と、
を備えることを特徴とする、食品用の包装体。
【請求項2】
前記発熱体は、前記気密性包装体の内側に備えられることを特徴とする、請求項1に記載の食品用の包装体。
【請求項3】
前記発熱体は、シート状基材の表面に金属層を有する発熱シートであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の食品用の包装体。
【請求項4】
前記発熱シートは、前記気密性包装体に比して、曲げに対する変形率が小さいことを特徴とする、請求項3に記載の食品用の包装体。
【請求項5】
前記発熱体は、前記気密性包装体の内面に設けられていることを特徴とする、請求項2〜4の何れかに記載の食品用の包装体。
【請求項6】
前記発熱体は、前記気密性包装体の外側に備えられることを特徴とする、請求項1、3及び4の何れかに記載の食品用の包装体。
【請求項7】
前記気密性包装体の内面又は外面の少なくとも一方に前記発熱シートを収納する収納部が設けられていることを特徴とする、請求項3〜6の何れかに記載の食品用の包装体。
【請求項8】
包装体入り食品であって、
食材と、食材を収納する気密性包装体とを有し、
前記気密性包装体は、マイクロ波の吸収により発熱する発熱体を備える、ことを特徴とする包装体入り食品。
【請求項9】
前記発熱体は、シート状基材の表面に金属層を有する発熱シートであり、前記食材と気密性包装体との間に配置されていることを特徴とする、請求項8に記載の包装体入り食品。
【請求項10】
前記気密性包装体は、大気圧での最大体積より小さい体積となるように脱気されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の包装体入り食品。
【請求項11】
請求項8〜10に記載の包装体入り食品を、前記気密性包装体の密閉性を保持しながら電子レンジで加熱することを特徴とする、食材の調理方法。
【請求項12】
マイクロ波を用いた食材の調理方法であって、
マイクロ波を発熱体に照射することにより発熱体から発熱させ、該発熱により食材表面を加熱する工程と、
マイクロ波を食材に照射することにより、食材から水蒸気を発生させ、該食材を水蒸気雰囲気下で加熱する工程と、
を気密性包装体内で並行して行うことを特徴とする、食材の調理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−10549(P2013−10549A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145401(P2011−145401)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(510042482)
【Fターム(参考)】