説明

食品用乳化剤

【課題】本発明は、セロオリゴ糖を含有し、低カロリーで、食品の食感や安定性を改善させることができる食品用乳化剤、およびそれを配合した食品組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、セロオリゴ糖を配合することで、低カロリーで、食品の食感や安定性を改善させることができる食品用乳化剤、およびそれを配合した食品組成物を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セロオリゴ糖を含有し、低カロリーで、食品の食感や安定性を改善させることができる食品用乳化剤、およびそれを配合した食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セロオリゴ糖は、腸内細菌叢改善などの様々な生理活性効果を有し、且つ、難消化性で低カロリーであることからも、その用途展開が望まれる食品素材の1つである。
食品の多くには、水溶性原材料と油溶性原材料の両者が配合されており、保存や流通の過程で不安定化し商品価値が損なわれるため、乳化安定化が望まれている。
【0003】
上記問題を解決する手段として、食品添加物である乳化剤を添加する方法が一般に良く知られているが、その殆どが合成食品添加物であり、昨今の消費者の健康志向に伴い、その低減化が望まれている。また上述の乳化剤を使用した場合、乳化は安定するものの、その食感は不自然なものとなり、おいしさを損なうという問題もある。
【0004】
特許文献1〜3には、オリゴ糖を配合した乳化物の記載があるが、セロオリゴ糖については何ら言及されていない。上述の文献にはトレハロースに関する記述があるが、トレハロースは消化性糖質であり、物性改良を目的として高カロリーの消化性糖質を使用することは、消費者の健康志向に沿うものではない。
特許文献4には、「CaまたはMg化合物」、「アラビアガム」、「キレート剤」に加え、「オリゴ糖」を併用した食品添加剤が提案されているが、その効果の実態はCaやMgの安定化にあり、さらにオリゴ糖の効果は、あくまで「アラビアガム」、「キレート剤」の存在の上でのみ成立するものである。またセロオリゴ糖を配合した具体例は提示されておらず、提示されているオリゴ糖とは化学構造が異なり、本発明の効果は期待できない。
【0005】
特許文献5には、β−グルコオリゴ糖と乳化安定剤を配合した、ヨーグルトアイスに関する記載があるが、β−グルコオリゴ糖の実態はゲンチオオリゴ糖であり、本発明のセロオリゴ糖とは化学構造が異なる。さらにその効果は味質改善であり、乳化の安定化については何ら言及されていない。
特許文献6には、ある特定の水不溶性天然セルロース系物質を、セルラーゼの存在下で酵素分解して得られた、セロオリゴ糖を含むことを特徴とする食品組成物や医薬品組成物の記載がある。しかしながら、具体的にセロオリゴ糖を含有する食品組成物や医薬品組成物の例は示されておらず、その効果の実態は不明である。
特許文献7には、セロオリゴ糖を含有する食品組成物についての記載があるが、乳化剤については何ら言及されておらず、本発明とは内容を異にする。
【0006】
【特許文献1】特開平9−192号公報
【特許文献2】特開平9−275922号公報
【特許文献3】特開平10−179070号公報
【特許文献4】特開2004−57146号公報
【特許文献5】特開2002−335903号公報
【特許文献6】WO/2006/011479
【特許文献7】WO/2007/037249
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、セロオリゴ糖を含有し、低カロリーで、食品の食感や安定性を改善させることができる食品用乳化剤、およびそれを配合した食品組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、セロオリゴ糖を配合することで、低カロリーで、食品の食感や安定性を改善させることができる食品用乳化剤、およびそれを配合した食品組成物を提供することができることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち本発明は、以下の通りである。
【0009】
(1) セロオリゴ糖と界面活性剤を含有する、食品用乳化剤。
(2) セロオリゴ糖におけるセロビオース含有量が90質量%以上である、請求項1に記載の食品用乳化剤。
(3) さらに0.0001〜10質量%の高甘味度甘味料を含有する、(1)または(2)に記載の食品用乳化剤。
(4) 界面活性剤がレシチン類、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、又はソルビタン脂肪酸エステルから選択される1種類以上である、(1)から(3)の何れかに記載の食品用乳化剤。
(5) 界面活性剤の親水性疎水性バランス(HLB)が3〜7である、(1)から(3)の何れか手に記載の食品用乳化剤。
(6) 界面活性剤の親水性疎水性バランス(HLB)が10〜16である、(1)から(3)の何れかに記載の食品用乳化剤。
(7) (1)から(6)のいずれかに記載の食品用乳化剤を含む、食品組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、セロオリゴ糖を含有し、低カロリーで、食品の食感や安定性を改善させることができる食品用乳化剤、およびそれを配合した食品組成物を提供することを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明者は、セロオリゴ糖を配合することで、低カロリーで、食品の食感や安定性を改善させることができる食品用乳化剤、およびそれを配合した食品組成物を提供することができることを見出し、本発明をなすに至った。
以下、本発明について具体的に説明する。
【0012】
本発明のセロオリゴ糖とは、グルコピラノース単位が2〜6個程度、β−1,4結合した構造を持つオリゴ糖であり、セロビオース、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオースおよびセロヘキサオースからなる群より選択される主成分を、50質量%以上含有する。この主成分とその含有量としては、セロビオースを70質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上であれば、さらに好ましい。これは上述のセロオリゴ糖主成分の中で、溶解度はセロビオースが最も高く扱いやすいからである。
また上述のセロオリゴ糖は、副成分としてグルコースを含有しても構わないが、吸湿性やカロリーの問題から、含有量は10質量%以下であることが好ましい。
【0013】
本発明のセロオリゴ糖の製造方法としては、特に規定するものではないが、安全性の点からは、パルプをはじめとするセルロース系物質を、セルラーゼで酵素分解して得られるものを使用するのが好ましい。
本発明におけるセロオリゴ糖の、主たる成分であるセロビオースのエネルギー換算係数は、2kcal/gであり、難消化性糖質である。昨今の消費者の健康志向からみて、品質改良を目的に、高カロリーの消化性糖質を使用することは問題がある。
【0014】
ここで言う消化性糖質とは、健康増進法に基づく、健康表示基準対応のエネルギー換算係数が、4kcal/gの糖質であり、トレハロースなどがこれに含まれる。
ここで言うセルラーゼとは、セルラーゼを分解する酵素の総称であり、セルロースの分解活性を有する酵素が全て含まれる。セルラーゼ酵素源は、特に限定されるものではないが、例えばセルラーゼ産生菌体、菌体の産生する酵素を精製したもの、精製酵素を添加剤等とともに製剤化したものなどがあげられる。またその剤形も、特に限定されるものではないが、例えば液体、粉末、顆粒などがある。
【0015】
さらに、本発明のセロオリゴ糖の甘味度は、30程度であり、高甘味度甘味料とは異なり、自然な甘みを有する。
セルラーゼの起源についても、特に限定されるものではなく、公知のセルラーゼ産生微生物としては、Tricoderma属、Acremonium属、Aspergillus属、Bacillus属、Pseudomonas属、Penicillium属、Aeromonus属、Irpex属、Sporotrichum属、Humicola属、Cellovibrio属などがあるが、セルロースを分解する酵素であれば、上記公知の菌由来の酵素に限らず、新規の菌由来の酵素も、本発明でいうセルラーゼに含まれる。
【0016】
本発明におけるセロオリゴ糖の配合量は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.001〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜20質量%である。0.001質量%未満であると効果が現れにくい場合があり、50質量%を超えると食品組成物の物性に悪影響を及ぼす。
【0017】
本発明の界面活性剤とは、その分子中に溶媒に対して親和性を持たない疎水基と、溶媒に対して親和性を持つ親媒基(通常は親水基)を持つ、両親媒性物質をさす。この親水基と疎水基の相対的なバランスは、HLB(親水性疎水性バランス)で表され、数値が大きいほど親水性が高く、低いほど疎水性が高いことを示し、複数の界面活性剤を混合する場合は、その算術平均から求めることができる。
【0018】
上述のHLBの算出方法としては、実験的に求める手法もあるが、非イオン性界面活性剤については、後述の(1)〜(4)に示す、いずれかの計算式から求めるのが一般的である。ただしHLBの算出方法は、公知の方法であれば特に限定されるものではなく、目的とする界面活性剤の化学構造や性質に応じ、適切な方法を選択すれば良い。
(1)Atlas式:界面活性剤が多価アルコールと脂肪酸エステルの場合
HLB=20×{1−(S/A)}
ここで、S:エステルのけん化価、A:脂肪酸の酸価である。なお、けん化価および酸価は、各々一般的な油脂分析方法により求めれば良く、例えば、「油脂化学便覧」(丸善株式会社 日本油化学協会編)などを参考とすることができる。
ただし明瞭なけん化価が求めにくい場合は、「HLB=(E+P)/5」の式から求めても良い。また、親水基としてポリオキシエチレン基のみを含む場合は、「HLB=E/5」の式で求めることができる。
ここで、E:オキシエチレン基の質量分率、P:多価アルコールの質量分率である。
(2)Griffin式:親水基を「ポリオキシエチレン基」、「多価アルコール」に限定した場合
HLB=20×(Mw/M)
ここで、Mw:親水基の式量の総和、M:界面活性剤の分子量である。
(3)Davies式
HLB=7+Σ(親水基の基数)+Σ(親油基の基数)
ここで用いる「親水基の基数」および「親油基の基数」は、公知のものを用いれば良く、例えば、「新版界面活性剤ハンドブック」、235頁、「表5−1−3 HLB基数」(工学図書株式会社、編者:吉田時行他、平成8年5月1日 第3版)などを参考とすることができる。
(4)川上式
HLB=7+11.7log(Mw/M0
ここで、Mw:親水基の式量の総和、M0:親油基の式量の総和である。
また、上述の計算式とは別に、相転移温度(以下、PITと言う)から、HLBを求めることも可能である。
(5)相転移温度法(PIT法):ポリオキシエチレン系の非イオン性界面活性剤に適した方法
あらかじめHLB値が既知の界面活性剤の水溶液と、油を使用してPITを測定し、PITとHLB値の相関関係を求めておく。次に、目的の界面活性剤についてPITを測定し、先の相関関係からその界面活性剤のHLB値を算出する。
食品用途として使用されるものの大部分は、非イオン性界面活性剤であるが、イオン性界面活性剤のHLBを求める必要がある場合は、「有機概念図法」や「経験的な実測値法」から算出すればよい。その方法は、例えば「有機概念図」(三共出版株式会社 甲田善生著)や「シュガーエステル物語」(第一工業製薬株式会社編)を参考にすることができる。
【0019】
ここで言う界面活性剤は、特に限定されるものではないが、例えば、レシチン類(HLB=3〜12程度)、グリセリン脂肪酸エステル(HLB=2〜5程度)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB=4〜14程度)、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(HLB=0〜2程度)、酢酸モノグリセリド(HLB=1前後)、乳酸モノグリセリド(HLB=3〜4程度)、クエン酸モノグリセリド(HLB=9前後)、ジアセチル酒石酸モノグリセリド(HLB=8〜10程度)、コハク酸モノグリセリド(HLB=5〜7程度)、プロピレングリコール脂肪酸エステル(HLB=1〜4程度)、ショ糖脂肪酸エステル(HLB=1〜18程度)、ソルビタンモノステアレート(HLB=2〜9程度)やソルビタントリステアレート(HLB=10〜14程度)などのソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(HLB=10〜17程度)、ポリソルベート20、40、60、65、80等(HLB=10〜17程度)、ステアロイル乳酸塩(Na、K、Ca塩)(HLB=5〜22程度)、オレイン酸塩(Na、K塩)(HLB=18〜20程度)、ドデシル硫酸ナトリウム、脂肪酸せっけん(Na、K、Ca塩)、サポニン類、ステロール類、微生物により産生されるバイオサーファクタントなどがあげられる。これらは単独で使用することも、複数を組み合わせて使用することも可能である。
【0020】
ここで言うレシチン類とは、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、牛乳レシチン、分別レシチン(ホスファチジルイノシトール)、酵素分解レシチン、酵素処理レシチン、水素添加レシチン、アセチル化レシチン、ヒドロキシル化レシチンなどがあげられる。界面活性剤の多くが化学合成品であるのに対し、レシチンは天然由来であり安全性が高いと言われており、好ましい選択である。
【0021】
本発明の界面活性剤のHLBは、特に限定されるものではないが、乳飲料や飲料ホワイトナーなどには、HLB=3〜5のものが適しており、チョコレートやショートニングなどの油脂含有量が高い食品組成物には、HLB=3未満のものが適している。
【0022】
上述の各々の界面活性剤の用途選択は、特に限定されるものではないが、例えば用途により、以下のような物質から選択することが好ましい。また市場への流通量を考えた場合、グリセリン脂肪酸エステルやショ糖脂肪酸エステルなどが入手しやすく、使いやすい。
【0023】
レシチン:ラーメンスープ、マヨネーズ、乳製品など
グリセリン脂肪酸エステル:マーガリン、ショートニング、ベーカリー製品、アイスクリーム、ホイップドクリーム、飲料用ホワイトナー、ケーキ用起泡剤、乳飲料など
ポリグリセリン脂肪酸エステル:O/W型エマルション用乳化剤など
ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル:チョコレートの粘度低下剤、W/O/W二重乳化エマルションなど
クエン酸モノグリセリド:O/W型エマルション、マヨネーズ、ドレッシング、ソーセージ等の畜肉製品、フライ用製品の水はね防止剤、油脂の酸化防止剤など
酢酸モノグリセリド:ホイップドクリームの起泡剤、ケーキ、ケーキミックスなど
ジアセチル酒石酸モノグリセリド:パン、O/W型エマルションなど
コハク酸モノグリセリド:製パン用改良剤、O/W型エマルションなど
プロピレングリコール脂肪酸エステル:油脂含有ケーキの起泡安定剤、ショートニングやマーガリンの起泡安定剤、O/W型エマルションなど
ショ糖脂肪酸エステル:O/W型エマルション、パン、麺類、ベーカリー製品、微粒子分散剤、キャンディー、チョコレート、静菌剤など
ソルビタン脂肪酸エステル:マーガリン、チョコレートのブルーム防止剤など
ポリソルベート:ドレッシング、ソース、アイスクリーム、飲料用ホワイトナーなど
ステアロイル乳酸塩:パンやベーカリー製品の生地改良剤など
サポニン:起泡剤など
【0024】
本発明の食品用乳化剤とは、食品組成物の乳化安定を目的に配合される物質であり、食品組成物に対する配合量は特に限定されるものではないが、好ましくは0.01〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜3質量%である。0.01質量%未満であると、処方によっては効果が見えにくい場合があり、10質量%を超える添加物の配合は、消費者の健康を阻害する恐れがあるためである。
【0025】
本発明の食品用乳化剤における、セロオリゴ糖と界面活性剤の質量比は、特に限定されるものではないが、好ましくはセロオリゴ糖:界面活性剤=99:1〜10:90、さらに好ましくは90:10〜30:70(合計で100)である。
【0026】
本発明の食品用乳化剤には、さらに必要に応じて、後述の増粘ゲル化剤を含有させることができる。
【0027】
また本発明の食品用乳化剤には、さらに必要に応じて0.0001〜10質量%の高甘味度甘味料を含有させることができる。本発明の高甘味度甘味料とは、砂糖と比較して、数倍〜数万倍程度の甘味度を持ち、例えば、サッカリン、サッカリンNa、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース、甘草抽出物、ステビア、ソーマチン、グリチルリチン、ネオテームなどがあげられる。
【0028】
本発明の食品用乳化剤の臨界ミセル濃度(以下、cmcと言う)は、特に限定されるものではないが、10-1〜10-7mol/Lであることが望ましい。10-1mol/L未満の場合、処方によっては機能が発現しにくくなり、10-7mol/Lより高い場合、配合量が少なすぎて、最終製品を安定生産することが困難になる。
ここで言うcmcとは、ミセルを形成するのに必要な最低限の界面活性剤濃度をさし、この値が小さいほど、界面活性剤としての能力が高いことを示している。
【0029】
本発明の食品組成物とは、一般に食品として供される組成物のことであり、例えば、「ゼリー、プリン、植物性発酵食品などのゲル状食品」、「アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、フローズンヨーグルトなどの冷菓」、「キャンディー、グミキャンディー、トローチ、錠菓、ビスケット、クッキー、米菓、餡製品、和洋菓子、洋生菓子、スナック菓子、砂糖菓子、チョコレート、ガム、プリンなどの菓子類」、「マヨネーズ、ドレッシング、ソース類、たれ類などの調味料」、「フライ類、コロッケ、餃子、中華饅頭などの調理加工品」、「カレー、ハヤシ、ミートソース、シチュー、スープなどのレトルト食品」、「麺類、スープ、野菜加工品などのチルド食品や冷凍食品」、「ハンバーグ、ベーコン、ソーセージ、サラミソーセージ、ハム類などの畜産加工品」、「蒲鉾、ちくわ、魚肉ハム・ソーセージ、揚げ蒲鉾などの水練製品」、「パン類、ケーキ類、生麺、乾麺、マカロニ、スパゲッティ、中華饅頭の皮、ケーキミックス、プレミックス、ホワイトソース、餃子・春巻等の皮類などの小麦加工食品」、「カレー、ソース、スープ、佃煮、ジャムなどの缶詰類や瓶詰類」、「野菜ペースト、肉のミンチ、果実ペースト、魚介類のペースト等のペースト類」、「果汁・果肉飲料、野菜飲料、酸性乳飲料、乳飲料、殺菌乳酸菌飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、緑茶、抹茶、ココア飲料、ウーロン茶、煎茶、フルーツ牛乳、炭酸飲料、アルコール飲料などの嗜好飲料」、「豆乳、調製豆乳、豆乳飲料、発酵豆乳、大豆飲料などの豆乳類」、「牛乳、加工乳、低脂肪乳などの牛乳類」、「クリーム、練乳、バター、ヨーグルト、チーズなどの乳製品」、「マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングなどの油脂加工品」、「栄養補助食品、特定保健用食品等を含む栄養強化食品」、「流動食、介護食などの病者用食品」、ベビーフード、「ペットフードなどの飼料」などがある。ここで言う栄養強化食品、病者用食品、ベビーフード、飼料などは、法規上、薬事法に規定される医薬品や医薬部外品に区分される医薬品組成物となる場合もあるが、食物として摂取するものは全て、本発明の食品組成物に含まれるものとする。
【0030】
本発明の医薬品組成物とは、薬事法に規定される医薬品または医薬部外品の組成物であり、例えば、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、エキス剤、丸剤の固形製剤が挙げられ、上記の固形製剤以外でも、菓子、健康食品、食感改良剤、食物繊維強化剤等の食品、固形ファンデーション、浴用剤、動物薬、診断薬、農薬、肥料、セラミックス触媒などに利用されるものも本発明に含まれる。
【0031】
本発明の食品用乳化剤と、それを含有する食品組成物には、本発明の効果を妨げない限りにおいて、上記の成分以外に、後述の食品素材、食品添加物、医薬品、医薬品添加物などを適宜配合しても良い。
ここで言う食品素材とは、一般に食品の原材料として使用される素材のことであり、薬事法で規定される医薬品および医薬部外品と、食品衛生法で規定される食品添加物を除き、飲食に供される全てのものが含まれる。
【0032】
ここで言う食品添加物とは、食品の加工もしくは保存の目的で添加される物質のことである。
食品添加物の例としては、厚生労働省の「指定添加物リスト」、「既存添加物名簿収載品目リスト」、「天然香料基原物質リスト」、「一般に食品として飲食に供させている物であって添加物として使用される品目リスト」などに収載される食品添加物や、JECFAなどの国際機関で安全性が確認されたもの、米国・欧州などの諸外国で使用が認可されている食品添加物などがあげられ、保存料・日持向上剤、酸化防止剤、甘味料、着色料・色素、乳化剤、増粘ゲル化剤、品質改良剤、調味料、酸味料、強化剤、香料、酵素などに分類される。
食品素材や食品添加物の例としては、以下のようなものがあげられる。
【0033】
ここで言う食品素材としては、例えば、果実・野菜およびそのエキス類、果実・野菜加工品(フルーツプレパレーション、フルーツソース、ジャム等)、乾燥果実(干しぶどう、干しパイナップル等)、ナッツ・種子類(くるみ、ピーナッツ、アーモンド、マカデミアナッツ、ピーカンナッツ、大豆、ゴマ、芥子等)、牛乳、加工乳、豆乳、果汁、野菜汁、卵類(液卵、卵黄粉末等)、ココア末、糖や糖アルコール類、肉や魚のエキス類、タンパク質、ペプチド、アミノ酸類、食物繊維、天然由来高分子(コラーゲン、ヒアルロン酸、天然繊維等)、ビタミン類、生理活性物質(コエンザイムQ10、α−リポ酸、β−グルカン、セラミド等)、澱粉類、デキストリン、油脂類(サラダ油、ゴマ油、ラード、菜種油、ショートニング等)、アルコール類、塩類(食塩、Ca、Mg、ドロマイドなどのミネラル類等)、調味料(醤油、味噌、酢、みりん、砂糖、マヨネーズ、ドレッシング、タレ、豆板醤、ソース類等)、香辛料(シナモン、コショウ、唐辛子等)などがあげられる。
【0034】
保存料・日持向上剤としては、例えば、例えば、過酸化水素、ソルビン酸およびソルビン酸K、デヒドロ酢酸Na、パラオキシ安息香酸エステル類、安息香酸および安息香酸Na、プロピオン酸およびその塩類、次亜塩素酸Na、酢酸、酢酸ナトリウム、グリシン、エチルアルコール、ポリリジンおよびその製剤、プロタミンおよびその製剤、リゾチームおよびその製剤、ペクチン分解物、アラニン、チアミンラウリル硫酸塩、ユッカフォーム抽出物、キトサンおよびその製剤、プロピレングリコールなどがあげられる。
【0035】
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、L−アスコルビン酸およびアスコルビン酸Na、エリソルビン酸およびエリソルビン酸Na、ミックストコフェノールなどがあげられる。
甘味料としては、例えば、上述の高甘味度甘味料、単糖類(アロース、タロース、グロース、グルコース、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドース、フルクトース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、アピオース、エリトロース、トレオース、グリセルアルデヒド、セドヘプツロース、コリオース、プシコース、ソルボース、タガトース、リブロース、キシルロース、エリトルロース、ジヒドロキシアセトン等)、二糖類やオリゴ糖類(トレハロース、コージビオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトース、イソトレハロース、ソホロース、ラミナリビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、スクロース、パラチノース、トレハルオース、フラクトオリゴ糖、パラチノースオリゴ糖、グリコシルスクロース、ラクトスクロース、テアンデロース、ガラクトシルラクトース、ラクチュロース、α−結合ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、パノース、ニゲロオリゴ糖、デキストリン、サイクロデキストリン、分岐サイクロデキストリン、ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ラフィノース、ビートオリゴ等)、糖アルコール類(グリセロール、エリスリトール、キシリトール、リビトール、アラビトール、ガラクチトール、ソルビトール、マンニトール、還元パラチノース、マルオトリイトール、イソマルトトリイトール、マルトテトライトール、イソマルトテトライトール等)、水飴、還元水飴、糖含有シロップ、液糖、糖蜜、蜂蜜などがあげられ、その化学構造や性状(固体、液体、顆粒など)は特に限定されない。
【0036】
着色料としては、β−カロチン色素、抽出カロチン色素、ビタミンB2、銅クロロフィルおよび銅クロロフィルNa、アナトー、アカキャベツ、アカダイコン、イカスミ、植物炭末、ウコン、エルダーベリー、カカオ、カロブ、クロロフィル、クチナシ黄、クチナシ青、クチナシ赤、グレープスキン、コチニール、コーリャン、シソ、シアナット、スピルリナ、タマリンド、タマネギ、トマト、パプリカ、ビートレッド、ブドウ果汁、ベニコウジ、ベニバナ黄、ベニバナ赤、マリーゴールド、ムラサキイモ、ムラサキコーン、ラック、カラメルなどがあげられる。
色素としては、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、青色1号、青色2号、赤色3号レーキ、赤色40号レーキ、黄色4号レーキ、黄色5号レーキ、青色1号レーキ、青色2号レーキなどがあげられる。
【0037】
増粘ゲル化剤としては、例えば、アルギン酸およびその塩(例えば、アルギン酸ナトリウムなど)、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム、メチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、アーモンドガム、アラビアガム、キサンタンガム、アラビノガラクタン、エレミ樹脂、カラヤガム、ガッディガム、ダンマル樹脂、トラガントガム、モモ樹脂、アマシードガム、カシアガム、グアーガム、グアーガム分解物、ローカストビーンガム、タラガム、サイリウムシードガム、サバクヨモギシードガム、セスバニアガム、タマリンドシードガム、ジェランガム、トリアカンソスガム、カラギーナン、フクロノリ抽出物、ファーセルラン、アロエベラ抽出物、オクラ抽出物、キダチアロエ抽出物、トロロアオイ、ペクチン、アエロモナスガム、アウレオバシジウム培養液、アゾトバクター・ビネランジーガム、ウェランガム、エルウィニア・ミツエンシスガム、エンテロバクター・シマナスガム、エンテロバクターガム、カードラン、ジェランガム、スクレロガム、デキストラン、納豆菌ガム、プルラン、大豆多糖類、水溶性ヘミセルロース、カラギーナン、マクロホモプシスガム、ラムザンガム、レバン、酵母細胞壁、微小繊維状セルロースおよびその製剤、バクテリアセルロースおよびその製剤、結晶セルロースおよびその製剤、粉末セルロースおよびその製剤、キチン、キトサン、グルコサミン、オリゴグルコサミン、グルコマンナン、こんにゃく粉、寒天、デキストリン、分岐デキストリン、難消化性デキストリン、PGA、ポルフィラン、ファーセルラン、フコイダン、ゼラチンなどがあげられる。
【0038】
品質改良剤としては、ステアロイル乳酸Ca、フィチン酸、プロピレングリコール、リン酸Ca、リン酸Na、ピロリン酸Na、ポリリン酸Na、メタ・ヘキサリン酸Na、リン酸K、リン酸アンモニウム、リン酸、焼みょうばん、生みょうばん、ホエーたん白、カゼイン、カゼイネート、プラズマパウダー、粉末状大豆たん白、粉末状小麦たん白、ペースト状小麦たん白、EDTA塩類などがあげられる。
調味料としては、例えば、グルタミン酸Na、核酸系調味料、アミノ酸系調味料、エキス系調味料、酵母エキス、グリシン、アラニンなどがあげられる。
【0039】
酸味料としては、例えば、クエン酸およびその塩、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、グルコン酸液、グルコノデルタラクトンなどがあげられる。
強化剤としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ニコチン酸およびニコチン酸アミド、葉酸、パトテン酸Ca、グルコン酸Ca、乳酸Ca、天然Ca、ミルクCaなどがあげられる。
【0040】
香料としては、例えば、ピーチフレーバー、オレンジフレーバー、レモンフレーバー等のフルーツフレーバー類、アロマフレーバー類、マルトール、フラネオール等のシュガーフレーバー類、ソトロン等のフレーバーエンハンサー類、フラボノイド類、カカオマス等のポリフェノール類、プリカーサーフレーバー類、ミートフレーバー類、コーヒーフレーバー類、ミルクフレーバー、メントール類、デカラクトン類などがあげられる。
酵素としては、例えば、αアミラーゼ、βアミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、グルコースイソメラーゼ、プロテアーゼ、レンネット、パンクレアチン、パパインなどがあげられる。
【0041】
ここで言う医薬品とは、薬事法に規定される医薬品をさす。つまり以下の(1)〜(3)に該当するものであり、医薬品薬効成分の多くがこれに含まれる。
(1)日本薬局方に収められている物
(2)人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって、機械器具、歯科材料、医療用品及び衛生用品(以下「機械器具等」という。)でないもの(医薬部外品を除く。)
(3)人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、機械器具等でないもの(医薬部外品及び化粧品を除く。)
【0042】
ここで言う医薬品添加物とは、薬事法上の医薬品や医薬部外品に該当しない、医薬品製剤に含まれる有効成分以外の物質であり、「製剤化を容易にする」、「品質の安定化を図る」、「有用性を高める」などを目的として、医薬品や医薬部外品などに添加される物質の総称である。用途により、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、矯味剤、香料、着色剤、甘味剤、溶剤、油脂、増粘剤、界面活性剤、ゲル化剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、懸濁化剤、粘稠剤などに分類される。代表的な医薬品添加物は、「医薬品添加剤事典」(株式会社薬事日報社)、「医薬品添加物ハンドブック」(株式会社薬事日報社)などに収載されている。
【0043】
次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお本願発明にかかる物質の諸物性の評価は以下の手法に拠った。
<糖組成>
以下の条件で、糖組成分析を行った。
装置:高速液体クロマトグラフ「LC−20A型」(株式会社島津製作所製)
検出器:示差屈折率検出器(RI検出器)
カラム:「Asahipak NH2P−50」(昭和電工株式会社製)
カラム温度:40℃
移動相:アセトニトリル/水=75/25(容積比)
流量:1mL/min
【0044】
<pH>
pH計(東亜ディーケーケー株式会社製、「HM−50G形」)で測定した。
【0045】
<ラーメンスープの食感評価(フレーバーリリース)>
ラーメンスープ(5倍濃縮品)を製造後、95℃の水で5倍希釈し、フレーバーリリース(油の風味とコク)について、健常男女各10名(計20名)による食感評価を実施した。「5点/人」を持ち点として、以下の基準で点数化して合算し、100点満点で評価を行った。
5点:基準より顕著に良好
4点:基準より良好
3点:基準と同等
2点:基準より劣る
1点:基準より顕著に劣る
得られた合算値を、以下の基準にあてはめて評価を行った。
◎:基準より顕著に良好(75点≦合算値)
○:基準より良好(65点≦合算値<75点)
−:基準と同等(55点≦合算値<65点)
×:基準より劣る(合算値<55点)
【0046】
<ミルクコーヒーの乳化安定性>
製造後、55℃で7日間保存後、乳化安定性(オイルオフ、分離層)を、目視で評価した。
【0047】
<食パンの食感評価(内部のしっとり感、歯切れ)>
製造後、20℃の雰囲気下で2日間保存し、トーストした後に、健常男女各10名(計20名)による食感評価を実施した。「5点/人」を持ち点として、以下の基準で点数化して合算し、100点満点で評価を行った。
5点:基準より顕著に良好
4点:基準より良好
3点:基準と同等
2点:基準より劣る
1点:基準より顕著に劣る
得られた合算値を、以下の基準にあてはめて評価を行った。
◎:基準より顕著に良好(75点≦合算値)
○:基準より良好(65点≦合算値<75点)
−:基準と同等(55点≦合算値<65点)
×:基準より劣る(合算値<55点)
【0048】
<コーヒーホワイトナーの乳化安定性>
円筒型の容器に充填したものを、10℃で7日間保存後、以下の手順で評価した。
a)外観
目視により、底面の沈殿状態を観察する。
b)光学顕微鏡観察による乳成分の観察
スポイドを用いて、「液面と底面の中間の高さから採取した溶液」と、「底面付近から採取した溶液」を、光学顕微鏡を用いて40倍で観察した時の、乳成分の凝集状態を観察した。
【0049】
<コーヒーホワイトナーの食感評価(食感の違和感、異味)>
製造したコーヒーホワイトナーを、原液で3mLずつ使用して、健常男女各10名(計20名)による食感評価を実施した。「5点/人」を持ち点として、以下の基準で点数化して合算し、100点満点で評価を行った。
5点:基準より顕著に良好
4点:基準より良好
3点:基準と同等
2点:基準より劣る
1点:基準より顕著に劣る
得られた合算値を、以下の基準にあてはめて評価を行った。
◎:基準より顕著に良好(75点≦合算値)
○:基準より良好(65点≦合算値<75点)
−:基準と同等(55点≦合算値<65点)
×:基準より劣る(合算値<55点)
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例と比較例を示して、具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
実施例で使用する原材料について、次の(1)〜(13)に示す。
【0051】
(1)セロオリゴ糖の製造:普通寒天培地にTricoderma reesei、GL−1株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、受領番号FERM BP−10323)を接種し、37℃で7日間培養後、その培地表面から胞子を1白金耳取り、ポリペプトン1g、酵母エキス0.5g、リン酸1カリウム2g、硫酸アンモニウム1.5g、硫酸マグネシウム0.3g、塩化カルシウム0.3g、トレースエレメント1mL(硼酸6mg、モリブデン酸アンモニウム4水和物26mg、塩化鉄(3)6水和物100mg、硫酸銅5水和物40mg、硫酸マンガン4水和物8mg、硫酸亜鉛7水和物200mgを全量100mLの精製水に溶解させたもの)、アデカノール1mL、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社製「セオラスPH−101」)10gを全量1Lの精製水に懸濁および溶解させた培地に植菌し、28℃で5日間通気攪拌培養した。
【0052】
培養中は、水酸化ナトリウム水溶液を用いて、培地のpHを2.8〜4.7となるように調節した。培養後の液を遠心分離し、上清を目開き0.46μmの精密ろ過膜で除菌し、ろ液を分画分子量13000の限外ろ過膜(旭化成ケミカルズ株式会社製 「マイクローザペンシル型モジュール ACP−0013」)を使用して、容積比で10倍濃縮し粗酵素を得た。
【0053】
次に、市販針葉樹由来の溶解パルプを使用し、加水分解条件を塩酸濃度0.4%塩酸水溶液、120℃、1時間として、加水分解し、酸不溶性残渣を洗浄、ろ過し、ウェットケークを得た。このウェットケークをセルロース10%濃度の水分散体とし、超高性能分散機・湿式微粉砕機(アシザワ株式会社製、「パールミルRL」、φ1mmジルコニアビーズ使用 充填率80%)を使用し、圧密・磨砕処理を施し、セルロース微粒子分散体を得た。
この磨砕セルロースが2質量%、粗酵素をタンパク質濃度0.25%になるように50mM酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)に懸濁溶解させ、全量1000mLとし、ガラス製フラスコに仕込んだ。
【0054】
このガラス製フラスコを、55℃の水槽に仕込み、内部を攪拌しながら4時間反応させた。反応終了後、反応液を懸濁状態で300μL分注し、限外ろ過モジュール(分画分子量10000)を使用し、酵素、未分解セルロースを取り除いた後、高速液体クロマトグラフィーで糖濃度を分析した。該反応液の糖濃度は、グルコース0.3質量%、セロビオース1.5質量%であった。
該反応液を、分画分子量13000の限外ろ過膜(旭化成ケミカルズ株式会社製、「マイクローザペンシル型モジュール ACP−0013」)でろ過し、得られたろ液を陽・陰イオン交換樹脂で脱イオン処理し、70℃、減圧下で蒸留し、20倍の糖濃度の水溶液を得た。
【0055】
上記で得られたセロオリゴ糖水溶液100mLを、200mLのガラス製フラスコに導入し、攪拌しながら、毎時10℃の速度で、70℃から5℃まで冷却した後、エタノールを水に加え晶析した。水溶液中に晶出したセロオリゴ糖を、減圧ろ過、乾燥、粉砕、篩下し、セロオリゴ糖粉末を得た。得たれたセロオリゴ糖粉末の糖組成は、グルコース0.9質量%、セロビオース98.2質量%、セロトリオース0.4質量%、セロテトラオース0.2質量%であった。
【0056】
(2)ショ糖(三井製糖株式会社)
(3)アセスルファムK(キリンフードテック株式会社製、「サネット」)
(4)スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)
(5)レシチン(株式会社J−オイルミルズ製)
(6)グリセリン脂肪酸エステル(花王株式会社製、ステアリン酸モノグリセライド「エキセルT−95」、HLB=3.8)
(7)ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ株式会社製、ショ糖パルミチン酸エステル「リョートーシュガーエステルP−1670」、HLB=16)
(8)ソルビタン脂肪酸エステル(花王株式会社製、ソルビタンモノパルミテート「エマゾールP−10」、HLB=6.7)
【0057】
(9)食品用乳化剤a
セロオリゴ糖:レシチン=98:2の質量比で混合したもの
(10)食品用乳化剤b
セロオリゴ糖:グリセリン脂肪酸エステル:ショ糖脂肪酸エステル=30:10:3の質量比で混合したもの
(11)食品用乳化剤c
セロオリゴ糖:グリセリン脂肪酸エステル:ショ糖脂肪酸エステル=20:10:3の比率で混合したもの
(12)食品用乳化剤d
セロオリゴ糖:ショ糖脂肪酸エステル=25:2の質量比で混合したもの
(13)食品用乳化剤e
セロオリゴ糖:ソルビタン脂肪酸エステル=47:3の質量比で混合したもの
【0058】
[実施例1]
表1の配合に従って、以下の手順でラーメンスープA(5倍濃縮品)を製造した。
80℃の水に、チキンエキス、ポークエキス、ニボシエキス、豚由来タンパク加水分解物、白豚湯、醤油を加え、プロペラ攪拌翼を使用して、400rpmで5分間攪拌した。
次いで、攪拌装置を回転型ホモジナイザー(プライミクス株式会社製、「T.K.ホモミクサー」)に交換後、ショ糖、食品用乳化剤a、食塩、グルタミン酸ナトリウム、キサンタンガムを加え、温度を維持しながら、7000rpmで10分間処理して乳化させた。
さらに70℃に調整した上記溶液にラードを加え、プロペラ攪拌翼を使用して、400rpmで10分間混合し、ラーメンスープA(5倍濃縮品)を製造した。
ラーメンスープAをビーカーに入れ、75℃で2時間加温したが、油が分離することはなかった。また10cm角のビニール製袋に充填し、10℃で5日間保存したが、分離することはなく乳化安定性に問題はなかった。また食感は、表2に示す通り、比較例1の基準と比較して優れていた。
【0059】
[実施例2]
表3の配合に従って、以下の手順でミルクコーヒーBを製造し、評価した。
水とコーヒー抽出液を混合して90℃に加温したものに、ショ糖と食品用乳化剤bを加え、実施例1の回転型ホモジナイザーを使用して、7000rpmで10分間混合したものに、牛乳を加える。この時、出来上がりがpH6.5〜6.7となるように、炭酸水素Naを適量加え、pH調整しておく。
この溶液を高圧ホモジナイザー(APV Gaulin社製、「15MR−8TA」)を使用し、15MPaの圧力で、2回、均質化処理したものを、耐熱ガラス容器に充填した。
さらに高圧蒸気殺菌装置(株式会社堀場製作所製)で、121℃で40分間、殺菌処理したのち、流水で冷却したものを、ミルクコーヒーBとした。pHは6.6であった。
表4に示すとおり、ミルクコーヒーBの乳化安定性は、基準である比較例2より良好であった。
【0060】
[実施例3]
表3の配合に従って、実施例2と同様の方法でミルクコーヒーCを製造し、評価した。pHは6.6であった。
表4に示すとおり、ミルクコーヒーCの乳化安定性は、基準である比較例2より良好であった。
【0061】
[実施例4]
表5に示した処方に従い、通常のストレート法にて食パンDを製造した。
具体的には、食品用乳化剤dを水に溶解させた後、他の原材料と一緒に混練し、パン生地を調製し、一次発酵工程、二次発酵工程、ベンチ工程を経た後、ホイロ工程で型の85%容積まで生地を膨張させてから、焼成工程を経て、1斤を4枚切りにして、食パンを製造した。なお、表5に記載の配合量の数値は、対粉に対する質量%、つまり、強力粉100質量%に対する質量%で表示した。
評価結果を表6に示した。比較例3に示す基準と比較して、ホイロ工程で型の85%体積まで生地を膨張させるのに要する時間は同等であるが、食品用乳化剤dを用いることで、食パンの食感が改善されることがわかった。
【0062】
[実施例5]
表7の配合に従い、以下の手順で、コーヒーホワイトナーEを製造し、評価した。
85℃の水に乳化剤を添加し、実施例1の回転型ホモジナイザーを用いて、5500rpmで3分間混合後、ヤシ油を加え、さらに2分間混合した。次いで残りの原料を全て添加し、さらに10分間混合した。
この溶液を実施例2の高圧ホモジナイザーを使用して、20MPaの圧力で均質化処理し、さらにHTST殺菌装置(株式会社日阪製作所製)で、138℃で、10秒間殺菌処理したものを、クリーンベンチ内で容器に充填したものを、コーヒーホワイトナーEとした。
評価結果を表8に示した。比較例4に示す基準と比較して、乳化安定性は同等であるが、食品用乳化剤eを用いることで、コーヒーホワイトナーの食感が改善されることがわかった。
【0063】
[比較例1]
表1の配合に従って、実施例1の食品用乳化剤aの代わりに、レシチンを用いて、実施例と同様の方法でラーメンスープW(5倍濃縮品)を製造し、評価した。
実施例1と同様、ラーメンスープW(5倍濃縮品)の乳化安定性に問題はなかった。しかしながら、表2に示すとおり、その食感については、実施例1と比較して明らかに劣っていた。
【0064】
[比較例2]
表3の配合に従って、実施例2と同様の方法でミルクコーヒーXを製造し、評価した。pHは6.6であった。
表4に示すとおり、ミルクコーヒーXには分離層が発生し、実施例2および3と比較して、乳化安定性に劣っていた。
【0065】
[比較例3]
表5の配合に従って、実施例3と同様の方法で食パンYを製造し、評価した。
表6に示すとおり、食パンYはしっとり感はあるものの、実施例4と比較して歯切れが悪いものであった。
【0066】
[比較例4]
表7の配合に従って、実施例4と同様の方法でコーヒーホワイトナーZを製造し、評価した。表8に示すとおり、コーヒーホワイトナーZは乳化安定性に問題は無いものの、食感が実施例5よりも劣っていた。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
【表5】

【0072】
【表6】

【0073】
【表7】

【0074】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、セロオリゴ糖と界面活性剤からなる食品用を配合することで、低カロリーで、食品の食感や安定性を改善させることができる食品用乳化剤、およびそれを配合した食品組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セロオリゴ糖と界面活性剤を含有する、食品用乳化剤。
【請求項2】
セロオリゴ糖におけるセロビオース含有量が90質量%以上である、請求項1に記載の食品用乳化剤。
【請求項3】
さらに0.0001〜10質量%の高甘味度甘味料を含有する、請求項1または2に記載の食品用乳化剤。
【請求項4】
界面活性剤がレシチン類、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、又はソルビタン脂肪酸エステルから選択される1種類以上である、請求項1から3の何れかに記載の食品用乳化剤。
【請求項5】
界面活性剤の親水性疎水性バランス(HLB)が3〜7である、請求項1から3の何れか手に記載の食品用乳化剤。
【請求項6】
界面活性剤の親水性疎水性バランス(HLB)が10〜16である、請求項1から3の何れかに記載の食品用乳化剤。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の食品用乳化剤を含む、食品組成物。