説明

食品用粉末組成物

【課題】ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを主成分とし、食品に均一に配合し易いよう、極めて良好な粉末特性を有する食品用粉末組成物の提供。
【解決手段】ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びデキストリンを含有し、比容積が2〜9.5cm3/gである食品用粉末組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル含有食品用粉末組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、食品用の乳化剤として使用され、食品に乳化性、分散性、起泡性等の各種特性を付与する。その添加量は食品に対して0.1質量%程度であるが、形態が粘性を有する液体であるため、食品中に均一に混合することが困難である。
【0003】
そこで、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルに、無水結晶マルトースを配合し、固化後に粉砕することにより粉末化する方法が知られている(特許文献1参照)。また、油脂等の液状物を粉末化する方法として、澱粉加水分解物の乾燥粉末を粉末化基材とし、これに液状油等を吸収保持させて粉状含油組成物とする技術が知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平1−242133号公報
【特許文献2】特開昭53−23305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来技術においては、無水結晶マルトースを用いる方法では、粉末化した後に粉砕工程を必要としている。また、粉末化基材としてデキストリンを用いた場合には、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを上手く粉末化できなかったことが記載されている。更に、澱粉加水分解物の乾燥粉末を粉末化基材とし、これに液状油等を吸収保持させて粉状含油組成物とする技術は、食品への分散性や溶解性の点で課題が残るものである。
【0005】
従って、本発明は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを、食品に均一に配合し易いよう、極めて良好な粉末特性を有する食品用粉末組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの粉末化基材について検討を行ったところ、デキストリンを用い、粉末化したものの比容積を一定の範囲とすることにより、流動性、並びに食品への分散性及び溶解性に優れる食品用粉末組成物が得られることを見出した。
【0007】
すなわち本発明は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びデキストリンを含有し、比容積が2〜9.5cm3/gである食品用粉末組成物を提供するものである。
また、本発明は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを比容積3〜12cm3/gのデキストリンに含浸させることによる、比容積が2〜9.5cm3/gである食品用粉末組成物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の食品用粉末組成物は、流動性、並びに食品への分散性及び溶解性に優れるため、少ない量でもポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを食品に均一に配合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の食品用粉末組成物は、その比容積が2〜9.5cm3/g、更に2.5〜9cm3
g、特に3〜8cm3/gであることが、粉末流動性、分散性及び溶解性の点から好ましい。比容積を上記範囲とするには、例えば、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステルを、比容積が3〜12cm3/gのデキストリンに含浸させることにより得ることができる。デキストリンの比容積は、好ましくは4〜11cm3/gであり、更に4.3〜10cm3/gであり、特に4.3〜9cm3/gであることが、液体吸収保持能及び粉末粒子強度の点から好ましい。
【0010】
本発明において使用されるデキストリンは、各種穀物由来のデンプンを酸またはアミラーゼで加水分解し、脱色、脱塩、脱臭等の精製を行ったものを用いることが好ましい。加水分解の度合いや構造により種々の分解物が挙げられるが、例えば、アミロデキストリン(可溶性デンプン)、エリトロデキストリン、アクロデキストリン、マルトデキストリン、シクロデキストリン等が挙げられる。
【0011】
デキストリンは、DE(デキストロース当量、デンプンの分解率の指標であり、(グルコース相当質量/全固形分質量)×100により算出)が3〜30、更に5〜25、特に6〜20のものを用いることが、溶解分散性及び保存安定性の点から好ましい。
【0012】
更に、デキストリンは、加水分解し精製した後に、ドラムドライヤーまたは噴霧乾燥法等で乾燥することにより、平均粒子径を30〜700μm、更に40〜500μm、特に50〜300μmとすることが、液体含浸時における均一分散の点から好ましい。
【0013】
本発明において使用されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、一般にポリソルベートと称されるものであり、ポリオキシエチレンの重合度、脂肪酸エステルの種類及び置換度を変化させることにより、種々のものが含まれる。例えば、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウリン酸エステル)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアリン酸エステル)、ポリソルベート65(ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアリン酸エステル)、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレイン酸エステル)等が挙げられる。
【0014】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビトール及び/又はソルビタンと脂肪酸との部分エステルの混合物であるソルビタン脂肪酸エステル(モノエステル、ジエステル、トリエステル等)にエチレンオキサイドを付加させることにより製造することができる。まず、ソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビトール及び/又はソルビタンと脂肪酸を、窒素ガス気流下、通常160〜280℃の温度で、生成水を留去させながら反応させることにより合成することができる。より具体的には、特開2002−284773号に記載の方法等が利用できる。
【0015】
ソルビトールはエステル化反応時にソルビトール自身の分子内脱水反応が起こり、水1分子の脱水でソルビタンに、水2分子の脱水でソルバイドになるため、ソルビタン脂肪酸エステルは、通常、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルバイド脂肪酸エステルの混合物となる。従って、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、当該混合物にエチレンオキサイドを付加反応させたものを用いることが、工業的生産性の点から好ましい。
【0016】
ソルビタン脂肪酸エステルの原料の脂肪酸は、炭素数6〜22、特に8〜18の飽和又は不飽和の直鎖脂肪酸、これらを主成分とする混合脂肪酸、あるいは炭素数8〜36の分岐鎖脂肪酸が好ましい。具体的には、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ヤシ脂肪酸、牛脂脂肪酸、2−エチルヘキサン酸、イソステアリン酸等が挙げられ、特にラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸が好ましい。
【0017】
ソルビタン脂肪酸エステルを得る際の脂肪酸の使用量は、ソルビトール及び/又はソルビタンに対してモル比で、脂肪酸:ソルビトール及び/又はソルビタン=(0.5〜5):1が好ましく(0.8〜3.5):1が特に好ましい。
【0018】
ソルビタン脂肪酸エステルへエチレンオキサイドを付加する前、即ちソルビトール及び/又はソルビタンと脂肪酸との反応後に、有機カルボン酸を添加することにより乳化性能を改善することもできる。
【0019】
有機カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、カプロン酸、乳酸等の短鎖脂肪族モノカルボン酸、アクリル酸、リノール酸、エルカ酸、リシノール酸、ドコサヘキサエン酸等の不飽和カルボン酸、シュウ酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸、クエン酸等の多価カルボン酸、安息香酸、サリチル酸等の芳香族モノカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族多価カルボン酸等が挙げられる。これらの中では、安定な乳化性能を得る観点から、ソルビタン脂肪酸エステルの製造原料として用いた、脂肪酸、即ち炭素数6〜22、特に8〜18の飽和又は不飽和の直鎖脂肪酸、これらを主成分とする混合脂肪酸、あるいは炭素数8〜36の分岐鎖脂肪酸が好ましい。有機カルボン酸の添加量は、ソルビタン脂肪酸エステルに対し、0.5〜10質量%(以下、単に「%」と表記する)が好ましく、更に1〜7%が好ましい。
【0020】
ソルビトール及び/又はソルビタンと脂肪酸との反応で得られるソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビトール及び/又はソルビタンと脂肪酸との部分エステルの混合物であるが、これらの中で本発明に用いるソルビタン脂肪酸エステルは、平均エステル化度においてモノエステル又はトリエステルが好ましい。また、本発明では、ソルビタン脂肪酸エステルとして市販品を用いることもできる。具体的には例えば、エマゾールS−10V、エマゾールO−10V、エマゾールL−10V、エマゾールS−30V(いずれも花王(株)製)等が挙げられる。
【0021】
本発明で使用されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキサイドを付加させることにより得られる。エチレンオキサイドの平均付加モル数は、1〜50が好ましく、特に食品添加物として用いる場合は3〜30が更に好ましく、15〜25が特に好ましく、20が最も好ましい。
【0022】
ソルビタン脂肪酸エステルへのエチレンオキサイド付加反応は、従来から知られる触媒を使用することができ特に限定されないが、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属触媒、脂肪酸石鹸類等が使用される。エチレンオキサイド付加反応の反応温度は80〜200℃ が好ましく、140〜180℃が更に好ましい。また、反応圧力は0.1〜0.8MPaが好ましく、0.1〜0.6MPaが更に好ましい。
【0023】
エチレンオキサイド付加反応後に得られる反応粗製物に対し、まず脱色処理及び/又は中和処理を行う。脱色処理は、一般に過酸化水素等の脱色剤を用いて行う。脱色剤の添加量は、35%過酸化水素水の場合、反応粗製物100質量部(以下、単に「部」と表記する)に対し、0.01〜1.0部が好ましく、0.05〜0.5部が更に好ましい。脱色処理の温度は、70〜100℃ が好ましく、処理時間は0.5〜2時間が好ましい。この脱色処理では同時に反応粗製物が中和される。本発明ではこの脱色処理の代わりに、あるいは脱色処理と併用して、中和処理を行うこともできる。中和処理に用いられる中和剤は特に限定されないが、例えばリン酸、硫酸等の鉱酸、あるいは酢酸、乳酸、クエン酸等の有機酸を使用することができ、これら2種以上を混合あるいは併用してもよい。中和剤は、反応粗製物のpHが5〜8となるように添加することが好ましい。
【0024】
また、反応粗製物を脱色処理及び/又は中和処理後、水蒸気を吹き込んで水蒸気処理を行うか、又は水を添加して蒸留処理を行うが、泡立ちや効率面から、水蒸気処理が好ましい。水蒸気処理とは、ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキサイドを付加して得られる反応粗製物に水蒸気を流通等で接触させることにより、該反応粗製物中の不純物等を水蒸気と共に系外へ除去することを意味する。蒸留処理とは、ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキサイドを付加して得られる反応粗製物に水を添加して該反応粗製物中の不純物等を水と共に蒸留により系外へ除去することを意味する。
【0025】
水蒸気処理又は蒸留処理で使用する水蒸気又は水の量は、反応粗製物100部に対して6〜20部、好ましくは8〜12部である。水蒸気又は水の量が6部以上の場合、風味改善の効果が大きく、20部以下で、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの風味を改善させる水蒸気又は水の量としては十分であり、また処理工程に長時間を要さず経済的である。
【0026】
水蒸気処理又は蒸留処理の温度は、処理を効率良く行い、工業的に設備にかかる負荷を小さくする観点から、60〜200℃ が好ましく、80〜160℃ が更に好ましい。水蒸気処理は常圧又は減圧下で行うことができるが、一般的には減圧下で行う方が効率的であり、その場合の圧力は27kPa以下が好ましく、7kPa以下が更に好ましい。また、蒸留処理は、減圧下で行い、圧力は27kPa以下が好ましく、7kPa以下が更に好ましい。
【0027】
水蒸気処理又は蒸留処理の後、濁り成分を溶解させたり外観を良好なものにするため、必要であれば水あるいはエタノール等の溶剤を添加してもよい。また、保存時の劣化を抑制するために、BHTやハイドロキノン等の酸化防止剤を添加してもよい。
【0028】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを比容積3〜12cm3/gのデキストリンに含浸させるには、例えば、該デキストリンにポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを一括または少量ずつ添加またはスプレーしながら混合する方法を採用することができる。混合は一般的な方法を用いる事ができ、特に限定されないが、例えば混合機を用いて均一に混合する方法が挙げられる。混合機としては任意の装置が使用でき、例えばリボン型混合機、スクリュー型混合機、円錐型スクリュー混合機、パドル型混合機、ローター型混合機、容器回転型混合機、流動層装置、ニーダー等が挙げられる。混合する際は、添加するポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの融点を超える温度で行う事が、混合性の観点から好ましい。
【0029】
また、別の製造法として、該デキストリンとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを水等の溶媒に分散した後に乾燥してもよい。この場合、必要に応じてデキストリンとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル以外に他の物質が含まれても良く、例えば乳化剤、賦形剤、増粘剤、崩壊剤等を添加する事ができる。乾燥は一般的な方法で行う事ができ、特に限定されないが、例えば噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、棚乾燥、ドラム乾燥等が挙げられる。
【0030】
デキストリン/ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの質量比は、1/4〜4/1、更に1/3〜3.5/1、特に1/2〜3/1であることが、粉末流動性及び分散性の点から好ましい。また、本発明の食品用粉末組成物は、デキストリンがポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含浸した状態となっているもの(以下、「含浸デキストリン」という)であることが好ましいが、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含浸していないデキストリン(以下、「非含浸デキストリン」という)を含んでいることがより好ましい。特に、食品用粉末組成物中のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを40質量%以上、更に45質量%以上、特に50質量%以上とした場合に、非含浸デキストリンを含む状態とすることが好ましい。なお、ここで「含浸デキストリン」とは、デキストリンの粉末又は粒状の表面又は内部にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが付着した状態のものをいう。
【0031】
本発明の食品用粉末組成物は、安息角が20〜50度、更に30〜45度、特に35〜43度であることが、流動性、ハンドリング性の点から好ましい。
【0032】
本発明の食品用粉末組成物を水に分散した際の、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの初期溶解率は70%以上、更に80%以上、特に85%以上であることが、分散性、溶解性の点から好ましい。特に、水への分散性、溶解性が良好である点から、アイスクリーム、ホイップクリーム、コーヒーホワイトナー等の食品に好ましく用いることができる。
【0033】
本発明の食品用粉末組成物には、炭酸カルシウムやリン酸カルシウム等の表面改質剤を含有していてもよく、また非含浸デキストリンを含有してもよいが、特に非含浸デキストリンを含有するのが食品用粉末組成物の流動性を向上できる点から好ましい。非含浸デキストリンを含有させるためには、前述のように本発明の食品用粉末組成物中のデキストリンの含有量を調整することが好ましいが、より好ましくは、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを比容積3〜12cm3/gのデキストリンに含浸させた後に、更にデキストリンを混合することが、食品用粉末組成物の流動性を向上し、食品中に均一に混合し易くなり、またポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有量を高めても好ましい物性とすることができる点から好ましい。別途混合するデキストリンは、本発明の原材料として記載されている上記デキストリンを使用すればよく、この平均粒径が30〜700μm、更に40〜500μm、特に50〜300μmであることが、混合時における均一分散の点から好ましい。また、別途混合するデキストリンの比容積は、好ましくは3〜12cm3/gであり、更に4〜11cm3/g、特に4.3〜10cm3/gであり、殊更6〜9cm3/gであることが、流動性を向上する点から好ましい。
【0034】
また、含浸デキストリンに非含浸デキストリン等を含有させるために、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを比容積3〜12cm3/gのデキストリンに含浸させた後に、更にデキストリンを混合する方法としては、例えば、上記の如く製造された含浸デキストリンに、デキストリン等を一括又は少量ずつ添加しながら混合する方法を採用することができる。混合は、上記の一般的な方法や任意の装置を用いて行なうことができる。混合する際は、製造された含浸デキストリンを10〜50℃に冷却した後にデキストリンと混合することが流動性を向上する点から好ましい。
本発明の食品用粉末組成物中の非含浸デキストリンの含有量は、流動性向上とポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有量を高める点から、食品用粉末組成物中に1〜30質量%、更に1〜20質量%、特に1〜15質量%含有させるのが好ましい。
【実施例】
【0035】
〔ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの調製〕
ソルビタンモノステアリン酸エステル(エマゾールS−10V、花王(株)製)500.0gと48%水酸化ナトリウム0.5gをオートクレーブにとり、110℃、2.7kPa(20Torr)で脱水した後、155℃でエチレンオキサイド997gを0.4MPaで圧入しながら付加反応を行った。
反応終了後、同一温度で熟成を行った後、90℃まで冷却した。後処理として、得られた反応粗製物に35%過酸化水素水溶液3.8gを加えて1時間処理した。水蒸気処理は、115℃、6kPaの条件で水蒸気154g(反応粗製物100重量部に対して10重量部)を吹き込んで行った。最後に製品中の水分量が2.7%となるように水を加えて、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアリン酸エステル(以下ポリソルベート60という)を含む製品を得た。
【0036】
ソルビタンモノラウリン酸エステル(エマゾールL−10(F)、花王(株)製)500.0gと48%水酸化ナトリウム0.7gをオートクレーブにとり、110℃、2.7kPa(20Torr)で脱水した後、155℃でエチレンオキサイド1276gを0.4MPaで圧入しながら付加反応を行った。
反応終了後、同一温度で熟成を行った後、90℃まで冷却した。後処理として、得られた反応粗製物に35%過酸化水素水溶液3.8gを加えて1時間処理した。水蒸気処理は、115℃、6kPaの条件で水蒸気182g(反応粗製物100重量部に対して10重量部)を吹き込んで行った。最後に製品中の水分量が2.7%となるように水を加えて、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウリン酸エステル(以下ポリソルベート20という)を含む製品を得た。
【0037】
実施例1
デキストリン(パインフロー、松谷化学工業(株)、以下同じ)49gをニーダー(入江商会(株)、PNV−1)で40r/minで撹拌しながら、前記ポリソルベート60を21g、20g/minの添加速度で添加し、その後50℃に維持しながら30分混合して、本発明品の食品用粉末組成物を得た。
【0038】
実施例2
実施例1におけるデキストリンをパインフロー24.5gとパインデックス#6(松谷
化学工業(株) 、以下同じ)24.5gの混合品とした以外は、実施例1と同じ操作にて食品用粉末組成物を得た。
【0039】
実施例3
実施例1におけるポリソルベート60を前記ポリソルベート20とした以外は、実施例1と同じ操作にて食品用粉末組成物を得た。
【0040】
実施例4
実施例1におけるデキストリンの添加量を28g、ポリソルベート60の添加量を42gとした以外は、実施例1と同じ操作にて食品用粉末組成物を得た。
【0041】
実施例5
実施例1におけるデキストリンをオイルQ(日澱化學(株)、以下同じ)とし、デキストリンの添加量を28g、ポリソルベート60の添加量を12gとした以外は、実施例1と同じ操作にて食品用粉末組成物を得た。
【0042】
実施例6
実施例1におけるデキストリンをオイルQS(日澱化學(株))とし、デキストリンの添加量を28g、ポリソルベート60の添加量を12gとした以外は、実施例1と同じ操作にて食品用粉末組成物を得た。
【0043】
比較例1
実施例1におけるデキストリンに替えて、無水結晶マルトース(ファイントース、三和澱粉工業(株))を用い、無水結晶マルトースの添加量を140g、ポリソルベート60の添加量を60gとした以外は、実施例1と同じ操作にて比較品である食品用粉末組成物を得た。
【0044】
比較例2
実施例1におけるデキストリンをパインデックス#6とし、デキストリンの添加量を140g、ポリソルベート60の添加量を60gとした以外は、実施例1と同じ操作にて食品用粉末組成物を得た。
【0045】
比較例3
実施例6におけるデキストリンの添加量を36g、ポリソルベート60の添加量を4gとした以外は、実施例6と同じ操作にて食品用粉末組成物を得た。
【0046】
上記実施例及び比較例で使用した原料、その物性、及び得られた食品用粉末組成物の物性を表1に示す。
【0047】
〔初期溶解率の測定法〕
200mLビーカー中で25℃の水100mLに食品用粉末組成物1gを分散し、スターラー(回転子:30mm×φ8mm)で600r/minの条件で1分間攪拌した。その水溶液を0.2μmフィルターで濾過し、濾液の吸光度(波長400nm)を分光光度計(U−2000、(株)日立製作所)にて測定し、次の式により初期溶解率を求めた。
初期溶解率[%]=(1分間撹拌液の吸光度/30分間撹拌液の吸光度)×100
【0048】
〔平均粒子径の測定法〕
レーザー散乱回折法粒度分布測定装置LS 13 320(ベックマン・コールター(株)製)を用い、メジアン径を粉末の平均粒子径とした。測定においては、トルネードドライパウダーモジュールを用いた。
【0049】
〔安息角の測定法〕
JIS R 9301−2−2で規定された方法により求めた。
【0050】
〔比容積の測定法〕
JIS K 7365で規定された方法で求められた見掛け密度を用い、次の式により算出した。
比容積[cm3/g]=1/(見掛け密度[g/cm3])
【0051】
【表1】

【0052】
以上の結果より、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びデキストリンを含有し、比容積が所定範囲にある食品用粉末組成物は、その粉末物性が良好であり、水への溶解性も良好であることが分かった。
【0053】
実施例7〜12
〔食品用粉末組成物の調製〕
上記で使用したポリソルベート60とオイルQの配合割合量を、それぞれ40gと60g、45gと55g、50gと50gとし、混合機としてニーダーに替えてホバートミキサー(ホバート・ジャパン(株)、容量3L)を使用し混合時間を10分とする以外は上記実施例1と同様の方法にて食品用粉末組成物3種(ポリソルベート濃度40質量%(実施例7)、45質量%(実施例8)及び50質量%(実施例9))を調製した。
【0054】
実施例9の食品用粉末組成物(90g)に対して、上記で使用したオイルQ(10g)を25℃で添加し、上記ホバートミキサーにて、30秒間混合し、食品用粉末組成物(ポリソルベート濃度45質量%(実施例10))を調製した。
また、オイルQ10gに替えて炭酸カルシウム(和光純薬工業社製)10g又はリン酸カルシウム(和光純薬工業社製)10gを用いた以外は同様にして調製し、それぞれ食品用粉末組成物(実施例11、12)を得た。
【0055】
実施例7〜12で得た食品用粉末組成物の流動性を、下記に示す方法で評価し、その結果を表2及び3に示した。
【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
<評価方法>
目開き1.7mm、直径20cmの篩に、食品用粉末組成物50gを入れ、10分間振盪し、篩上に残った食品用粉末組成物のg数を測定し、前者に対する後者の質量比率を%表示したものを「メッシュオン率」とした。流動性が高いものほど、篩の目を通りやすいことから、メッシュオン率が小さいものほど、流動性が高いことを表す。
【0059】
表2及び3に示すように、実施例10〜12の食品用粉末組成物、特に非含浸デキストリンを添加し混合した実施例10の食品用粉末組成物は、実施例9の食品用粉末組成物と比較し、流動性が向上した。
表2及び3に示すように、実施例9の食品用粉末組成物に非含浸デキストリンを添加した実施例10の食品用粉末組成物は、実施例8の食品用粉末組成物と同じポリソルベートの濃度であるものの、実施例8の食品用粉末組成物と比較しても流動性が向上した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びデキストリンを含有し、比容積が2〜9.5cm3/gである食品用粉末組成物。
【請求項2】
デキストリン/ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの質量比が、1/4〜4/1である請求項1に記載の食品用粉末組成物。
【請求項3】
デキストリンのDE(デキストロース当量)が3〜30である請求項1又は2に記載の食品用粉末組成物。
【請求項4】
平均粒子径が30〜700μmであるデキストリンを用いて得られるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の食品用粉末組成物。
【請求項5】
比容積が3〜12cm3/gのデキストリンを用いて得られるものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の食品用粉末組成物。
【請求項6】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル含浸デキストリン及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル非含浸デキストリンを含有するものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の食品用粉末組成物。
【請求項7】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル非含浸デキストリンの含有量が、1〜30質量%である請求項6に記載の食品用粉末組成物。
【請求項8】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを比容積3〜12cm3/gのデキストリンに含浸させることによる、比容積が2〜9.5cm3/gである食品用粉末組成物の製造方法。
【請求項9】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを比容積3〜12cm3/gのデキストリンに含浸させた後、更にデキストリンを混合することによる請求項8に記載の食品用粉末組成物の製造方法。