説明

食品素材

【課題】 グルテンを含まず、小麦アレルギー症のヒトでも安心して喫食することができ、しかも小麦粉と同じような良好な二次加工適性を有する、小麦粉の代替となる食品素材の提供。
【解決手段】 ホワイトソルガム粉と、豆粉及び豆由来の蛋白質から選ばれる少なくとも1種とからなり、[ホワイトソルガム粉]:[豆粉及び豆由来の蛋白質から選ばれる少なくとも1種]の配合割合が99.5:0.5〜50:50(質量比)である食品素材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品素材に関する。より詳細には、本発明は、小麦アレルギー症の患者にも安全に用いることのできる、ホワイトソルガム粉を主体とする、グルテンを含まない食品素材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品に対してアレルギー反応を示すヒトの数が増えており、食品アレルギー症のヒトが食してもアレルギー症状を発生しない食品や食品素材についての研究、開発が進められている。
小麦粉は、小麦に含まれている小麦特有の蛋白質であるグルテンが粘性を示し、小麦粉の加工適性を優れたものにしているため、パン類、麺類、菓子類をはじめとして種々の食品に広く用いられている。
しかしながら、小麦は、厚生労働省から表示が義務づけられている5大食物アレルゲンの1つであり、小麦に含まれているグルテンが小麦アレルギーの主たる原因物質であることが判明している。
小麦アレルギー症のヒトが、小麦を用いた食品を喫食した場合には、発作、ジンマシン、湿疹などを発症し、重篤な場合は死に至ることもある。
【0003】
かかる点から、小麦アレルギー症のヒトでも安心して喫食することのできる食品についての研究が従来行われており、そのような従来技術の1つとして、グルテンを含んでいないホワイトソルガムを用いた食品が提案されている。具体的には、塩水を加えたホワイトソルガムを膨化したパフスナック菓子(特許文献1を参照)、精白したホワイトソルガムを粉末化したホワイトソルガム粉を主体とした主原料に、精白したホワイトソルガムをα化させ膨化した後に粉末化した膨化ホワイトソルガム粉を添加した混合物から製麺した麺類(特許文献2を参照)が知られている。
【0004】
特許文献1のパフスナック菓子および特許文献2の麺類は、いずれもグルテンを含まないホワイトソルガムを用いているため、小麦アレルギー症のヒトでも安心して食することができる。しかしながら、特許文献1のものは、パフスナック菓子という極めて限られた食品(菓子)であるために、汎用の食品素材として用いることはできない。
また、特許文献2のものも、麺類という特定の食品の範疇に限られるものであるために、食品素材としての汎用性に欠ける。また、特許文献2の従来技術では、グルテンを含まないことに起因するホワイトソルガム粉の製麺加工性を向上させるために、主たる製麺原料であるホワイトソルガム粉に、膨化ホワイトソルガム粉を配合しているが、膨化ホワイトソルガム粉は、ホワイトソルガムをα化させ膨化した後に粉末化するという手間のかかる調製工程を必要とする。
【0005】
【特許文献1】特開2004−135530号公報
【特許文献2】特開2004−337095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、グルテンを含んでおらず、小麦アレルギー症のヒトでも安心して食することのできるホワイトソルガム粉を主原料にしながら、種々の食品に共通して用いることのできる汎用性のある食品素材を提供することである。
さらに、本発明の目的は、食品を製造する際の取り扱い性、加工性などに優れ、しかも食感、食味、風味、外観、触感などに優れる高品質の食品を、円滑に製造することのできる、ホワイトソルガム粉を主体とする食品素材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の目的を達成すべく検討を重ねてきた。その結果、ホワイトソルガム粉に、豆粉および豆由来の蛋白質から選ばれる少なくとも1種を所定の割合で配合すると、グルテンを含んでいないにも拘わらず、豆粉および/または豆由来の蛋白質がホワイトソルガム粉の加工性や取り扱い性の向上材として働いて、小麦粉を用いた場合と同じように取り扱い性、二次加工適性に優れる食品素材が得られることを見出した。
そして、本発明者は、ホワイトソルガム粉に豆粉および/または豆由来の蛋白質を配合した前記食品素材には汎用性があり、菓子類、麺類、パン類、油揚げ食品用の衣材、お好み焼き、タコ焼き、水産練り製品用のつなぎ材などとして、種々の食品の製造に有効に使用することができることを見出した。
さらに、本発明者らは、ホワイトソルガム粉に豆粉および/または豆由来の蛋白質を配合した前記食品素材を用いて製造した各種食品は、食感、食味、風味、外観、触感などに優れることを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1) ホワイトソルガム粉と、豆粉および豆由来の蛋白質から選ばれる少なくとも1種とからなる食品素材であって、[ホワイトソルガム粉]:[豆粉および豆由来の蛋白質から選ばれる少なくとも1種]の配合割合が99.5:0.5〜50:50(質量比)であることを特徴とする食品素材である。
【0009】
そして、本発明は、
(2) ホワイトソルガム粉のタンニン含量が1質量%以下である、前記(1)の食品素材;
(3) 豆粉および豆由来の蛋白質から選ばれる少なくとも1種が、大豆粉、ソラマメ粉、大豆由来の蛋白質およびソラマメ由来の蛋白質から選ばれる少なくとも1種である、前記(1)または(2)の食品素材;および、
(4) 菓子類用、麺類用、パン類用、油揚げ食品の衣材用、お好み焼き用、タコ焼き用または水産練り製品のバインダー用である前記(1)〜(3)のいずれかの食品素材;
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の食品素材は、小麦アレルギーを引き起こすグルテンを含んでいないので、本発明の食品素材を用いることにより、小麦アレルギー症のヒトでも安心して食することのできる各種食品を製造することができる。
本発明の食品素材は、グルテンを含んでいないにも拘わらず、小麦粉を用いた場合と同じように良好な二次加工適性を有していて、食品を製造する際の取り扱い性および加工性に優れるため、本発明の食品素材を用いて各種食品を円滑に製造することができる。
本発明の食品素材は汎用性があり、菓子類、麺類、パン類、油揚げ食品用の衣材、お好み焼き、タコ焼き、水産練り製品などの種々の食品の製造に共通して有効に使用することができる。
本発明の食品素材を用いることにより、食感、食味、触感、外観などに優れる、高品質の各種食品を円滑に製造することができ、本発明の食品素材を用いて製造された食品は、時間が経っても硬くなりにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明について詳細に説明する。
ホワイトソルガム粉は、イネ科の植物であるソルガム(Sorghum)(モロコシ属に属する各種モロコシ)のうちのグレインソルガムの範疇に含まれる、白色の果皮を持ったホワイトソルガムの種実を原料として調製された粉である。米国連邦穀物検査局(FGIS)の規格では、タンニン含量が2〜10%のものをタンニンソルガム、タンニン含量が2%以下のものをホワイトソルガムと規定している。
本発明の食品素材で用いるホワイトソルガム粉は、ホワイトソルガム粉として取り扱われている粉であればいずれもよく、そのうちでも、タンニン含量が1質量%以下、更には0.5質量%以下、特に0.1質量%以下のホワイトソルガム粉を用いることが、本発明の食品素材を用いて食品を製造する際の二次加工適性が良好になり、しかも得られる食品の食感、食味、風味、色調、外観、触感などが良好になる点から好ましい。
ホワイトソルガム粉の粒径は特に制限されないが、一般的には平均粒径が5〜300μm程度、特に10〜150μm程度のものが、食品を製造する際の加工適性、分散性、入手の容易性などの点から好ましく用いられる。
【0012】
本発明の食品素材において、ホワイトソルガム粉と共に用いる豆粉の種類は特に制限されず、例えば、大豆、エンドウ豆、小豆、インゲン、ササゲ、ソラマメなどの豆類を粉砕して得られた粉などを挙げることができる。豆粉は、生豆粉、半生粉、焙焼または湿熱処理した豆粉、脱脂豆粉、豆乳粉のいずれであってもよく、そのうちでも生豆粉、脱脂豆粉、半生粉、豆乳粉が食品を製造する際の加工適性、ハンドリングなどの点から好ましい。
豆粉中の油脂含量が多すぎると、本発明の食品素材が酸敗し易くなるので、豆粉を有機溶媒で処理して余分の油脂分を除いた脱脂豆粉を用いることが好ましい。
食品素材に用いる豆粉における油脂分の含量は20質量%以下、特に12質量%以下であることが好ましい。
【0013】
また、豆由来の蛋白質としては、前記した大豆、エンドウ豆、小豆、インゲン、ササゲ、ソラマメなどの豆類から得られた蛋白質を粉末化したもの、例えば分離大豆蛋白質などを挙げることができる。豆から蛋白質を得る方法は特に制限されず、従来既知の方法を採用すればよい。例えば、大豆であれば、呉汁をアルカリ性溶液に溶解し、これを細孔から酸性凝固浴に押し出して繊維状の大豆蛋白を得た後に、粉砕する方法により得ることができる。豆由来の蛋白質は、従来から種々の製品が販売されており、本発明ではそのような従来から販売されているものを用いることができる。
【0014】
本発明では、前記した豆粉および豆由来の蛋白質の1種のみを用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。
そのうちでも、本発明では、生大豆粉、焙焼大豆粉、脱脂大豆粉、豆乳粉、生エンドウ豆粉、焙焼エンドウ豆粉、脱脂エンドウ豆粉、大豆蛋白質粉およびエンドウ蛋白質粉の1種または2種以上が、食感の点から好ましく用いられ、特に豆乳粉がより好ましく用いられる。
【0015】
豆粉および豆由来の蛋白質から選ばれる粉(以下これらを総称して「豆粉等」ということがある)の粒径は特に制限されないが、一般的には平均粒径が5〜300μm程度、特に10〜150μm程度の豆粉等が、食品を製造する際の加工適性、分散性、入手の容易性などの点から好ましく用いられる。
【0016】
本発明の食品素材におけるホワイトソルガム粉と豆粉等の使用割合は、ホワイトソルガム粉:豆粉等=99.5:0.5〜50:50(質量比)であり、95:5〜60:40(質量比)であることが好ましく、90:10〜70:30(質量比)であることがより好ましい。
ホワイトソルガム粉と豆粉等を前記した割合で用いることにより、本発明の食品素材を用いて食品を製造する際の加工適性が良好になり、しかも得られる食品の食感、食味、風味、外観、触感などが良好になる。
ホワイトソルガム粉と豆粉等の合計質量に基づいて豆粉等の割合が0.5質量%よりも少ないと、食品への加工適性、得られる食品はぽろぽろとした不良な食感になり、ボリューム感がなく外観が不良になり、またパンケーキなどの焼成品にあってはその内相が不良になる。一方、ホワイトソルガム粉と豆粉等の合計質量に基づいて豆粉等の割合が50質量%を超えると、しっとり感の低下による口溶けの不良、風味の低下などを生ずる。
【0017】
ホワイトソルガム粉と豆粉等からなる本発明の食品素材は、単独で小麦粉の代替として各種食品の製造に用いてもよいし、または通常の小麦粉製品と同様に、製造を目的とする食品の種類などに応じて、小麦アレルギーを引き起こすグルテンを含まない種々の副原料を併用してもよい。
副原料としては、小麦アレルギーを引き起こすグルテンを含まないものであればいずれでもよく特に制限されないが、例えば、米粉、澱粉、山芋粉、そば、卵、牛乳、落花生、増粘剤、酵素、動植物性油脂、ショートニングなどの油脂類、乳化剤、食塩、砂糖などの糖類、コショウなどの香辛料、ミネラル、ビタミン、アミノ酸などの栄養強化剤などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を併用することができる。
また、本発明の食品素材を用いて、小麦アレルギーだけでなく、他の特定の食材に対してもアレルギー反応を示すヒトのための食品を製造する場合は、本発明の食品素材を単独で用いるか、または本発明の食品素材と共に該他の特定の食材を含まない副原料を用いて食品を製造するようにすればよい。例えば、小麦と卵の両方にアレルギーを示すヒトのためには、本発明の食品素材と共に卵を含まない他の食材を用いて食品を製造すればよい。
【0018】
本発明の食品素材は、小麦粉を用いて従来製造されていた種々の食品およびそれ以外の食品の製造に有効に使用することができる。
本発明の食品素材を用いて製造できる食品としては、菓子類、麺類、パン類、油揚げ食品の衣材、お好み焼き、タコ焼き、水産練り製品などを挙げることができる。菓子類の具体例としては、パンケーキ、スポンジケーキ、パウンドケーキ、ホットケーキなどのケーキ類、カステラ、ワッフル、ドラ焼き、ビスケット、クッキー、煎餅、饅頭などを挙げることができる。麺類の具体例としては、うどん、中華麺、日本そば、即席麺、乾麺、スパゲッティ、マカロニ、麺皮(餃子、しゅうまい、ワンタン、春巻きの皮)などを挙げることができる。パン類の具体例としては、蒸しパン、食パン、ペストリー、調理パンなどを挙げることができる。油揚げ食品の衣材としては、テンプラ粉、カラ揚げ粉などを挙げることができる。
【実施例】
【0019】
以下に実施例などにより本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のものに限定されるものではない。
【0020】
《実施例1》[パンケーキの製造]
(1) 薄力小麦粉(日清製粉株式会社製「バイオレット」)、ホワイトソルガム粉(山形県食糧社製「ホワイトソルガム」;平均粒径78μm)、豆乳粉(フジプロテインテクノロジー社製「ソヤフィット2000」、油脂含量0.1質量%)、米粉(みたけ食品工業株式会社製「だんごの粉」)、上白糖(日新製糖株式会社製、20メッシュの篩でふるったもの)、全卵液、豆乳(紀文株式会社製)、ベーキングパウダー(オリエンタル酵母工業株式会社製「BP−M」)を準備し、これらの原料を、実験番号ごとに、以下の表1に示す割合で混合し、撹拌した後、5コートミキサー[(株)三英製作所製]に入れて、ホイッパーを用いて2分間中高速(198回転/分)で撹拌して種生地を調製した。
(2) 上記(1)で調製した種生地を180℃のホットプレートに流して(パンケーキ1個当り70gの種生地を使用)、表裏とも3分間焼成した後、ホットプレートから取り出して室温で放冷してパンケーキを製造した。
(3) 上記(2)で得られたパンケーキの外観、しっとり感(触感)および食感を下記の表2に示す評価基準にしたがって10名のパネラーが点数評価し、その平均値を採ったところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
【表3】

【0024】
表3の結果にみるように、実験番号4〜10(実施例)では、ホワイトソルガム粉と豆乳粉を本発明で規定する99.5:0.5〜50:50(質量比)の範囲内で用いていることにより、小麦粉を用いて得られた実験番号1(参考例)のパンケーキと比べても殆ど遜色のない、外観、しっとり感および食感に優れるパンケーキが得られている。
それに対して、実験番号2(比較例)では、豆乳粉を用いずにホワイトソルガム粉のみを用いたことにより、また実験番号3、11および12(比較例)では、ホワイトソルガム粉と豆乳粉を用いているが両者の割合が本発明で規定する範囲から外れていることにより、パンケーキの外観、しっとり感および食感が、小麦粉を用いた実験番号1(参考例)のパンケーキおよび実験番号4〜10のパンケーキに比べて大きく劣っている。
【0025】
《実施例2》[スポンジケーキの製造]
(1) 薄力小麦粉(日清製粉株式会社製「バイオレット」)、ホワイトソルガム粉(山形県食糧社製「ホワイトソルガム」;平均粒径86μm)、半生大豆粉(セーフテック・インターナショナル社製「ビゴーレpt」)、グラニュー糖(日新製糖株式会社製、目開き20メッシュの篩でふるったもの)、乳化剤(三菱化学フーズ株式会社製「SH−1570」)、ベーキングパウダー(オリエンタル酵母工業株式会社製「BP−M」)および全卵液を準備し、実験番号ごとに下記の表4に記載されている配合組成を採用した。
(2)(i) まず、下記の表4に記載されている原料のうち、グラニュー糖および全卵液以外の原料を混合してミックス粉を予め調製しておき、このミックス粉を目開き20メッシュの篩でふるった。
(ii) グラニュー糖100gを目開き20メッシュの篩でふるった後、全卵液100gを加えてホイッパーで十分に撹拌し、これを5コートミキサー[(株)三英製作所製]に入れて、ホイッパーを用いて比重が0.28になるまで高速で十分に撹拌してホイップした。
(iii) 上記(i)で調製しておいたミックス粉を、上記(ii)で調製したホイップ物に加えて、シャモジで生地比重が0.47±0.01になるまで混ぜ合わせてスポンジケーキ生地を調製した。
【0026】
(3) 上記(2)で得られたスポンジケーキ生地を、内部に型紙を配置しておいたスポンジケーキ型(6号型;直径18cm)に流し入れ、コンベクションオーブンにて180℃で30分間焼成した後、型紙ごとスポンジケーキ型から取り出して室温で放冷した。
(4) 焼成1日後に、スポンジケーキ円周部の型紙を剥ぎ取り、スポンジケーキの体積を菜種種子置換法で測定した。また、得られたスポンジケーキの両端部と中央部の高さを定規で測定したところ、下記の表6に示すとおりであった。
(5) また、焼成1日後のスポンジケーキの外観、しっとり感(触感)および食感を下記の表5に示す評価基準にしたがって10名のパネラーが点数評価し、その平均値を採ったところ、下記の表6に示すとおりであった。
【0027】
【表4】

【0028】
【表5】

【0029】
【表6】

【0030】
表6の結果にみるように、実験番号16〜22(実施例)では、ホワイトソルガム粉と半生大豆粉を本発明で規定する99.5:0.5〜50:50(質量比)の範囲内で用いていることにより、小麦粉を用いて得られた実験番号13(参考例)のスポンジケーキと比べても殆ど遜色のない、良く膨らんで体積が大きく、外観、しっとり感および食感に優れるスポンジケーキが得られている。
それに対して、実験番号14(比較例)では、半生大豆粉を用いずにホワイトソルガム粉のみを用いたことにより、また実験番号15、23および24(比較例)では、ホワイトソルガム粉と半生大豆粉を用いているが両者の割合が本発明で規定する範囲から外れていることにより、スポンジケーキの体積が小さく、中央部が十分に膨らんでおらず、しかも外観、しっとり感および食感においても、小麦粉を用いた実験番号13(参考例)のスポンジケーキおよび実験番号16〜22のスポンジケーキに比べて大きく劣っている。
【0031】
《実施例3》[バターケーキの製造]
(1) 薄力小麦粉(日清製粉株式会社製「フラワー)、ホワイトソルガム粉(山形県食糧社製「ホワイトソルガム」;平均粒径85μm)、エンドウ豆由来の蛋白粉(オルガノ株式会社製「エンドウたん白PP−CS」)、グラニュー糖(日新製糖株式会社製)、乳化剤(三菱化学フーズ株式会社製「SH−1570」)、バター(雪印乳業株式会社製「北海道バター])、ベーキングパウダー(オリエンタル酵母工業株式会社製「BP−デルトン」)、ブランデー(サントリー株式会社製「サントリーブランデーVO」)、全卵液および食塩(財団法人塩事業センター製の精製塩)を準備し、実験番号ごとに下記の表7に記載されている配合組成を採用した。
(2)(i) まず、下記の表7に記載されている原料のうち、ホワイトソルガム粉とエンドウ豆由来の蛋白粉を混合して混合粉を調製した。
(ii) バター、食塩および乳化剤を5コートミキサー[(株)三英製作所製]に入れて、ホイッパーを用いて低速(98回転/分)で1分30秒、次いで高速(295回転/分)で1分間撹拌してクリーム状にし、これにグラニュー糖を加えて高速で5分間撹拌した。これに全卵液を5回に分けて徐々に加えて、低速で8分間、次いで高速で5分間撹拌した後、ブランデーを加えてバター混合物を調製した。
(iii) 上記(ii)で調製したバター混合物に、上記(i)で調製した混合粉を加え、更にベーキングパウダーを加えて、低速で2分間撹拌してバターケーキ用生地を製造した。
このバターケーキ用生地の比重を測定したところ、下記の表8に示すとおりであった。
【0032】
(3) 上記(2)で得られたバターケーキ用生地の350gをパウンドケーキ型に流し入れ、コンベンションオーブンにて180℃で25分間焼成して、バターケーキを製造した。
(4) 上記(3)で得られたバターケーキの体積を菜種種子置換法で測定したところ、下記の表8に示すとおりであった。
(5) また、上記(3)で得られたバターケーキの外観、しっとり感(触感)および食感を上記の表5に示す評価基準にしたがって10名のパネラーが点数評価し、その平均値を採ったところ、下記の表8に示すとおりであった。
【0033】
【表7】

【0034】
【表8】

【0035】
表8の結果にみるように、実験番号28〜34(実施例)では、ホワイトソルガム粉とエンドウ豆由来の蛋白粉を本発明で規定する99.5:0.5〜50:50(質量比)の範囲内で用いていることにより、小麦粉を用いて得られた実験番号25(参考例)のバターケーキと比べても殆ど遜色のない、良く膨らんで体積が大きく、外観、しっとり感および食感に優れるバターケーキが得られている。
それに対して、実験番号26(比較例)では、エンドウ豆由来の蛋白粉を用いずにホワイトソルガム粉のみを用いたことにより、また実験番号27、35および36(比較例)では、ホワイトソルガム粉とエンドウ豆由来の蛋白粉を用いているが両者の割合が本発明で規定する範囲から外れていることにより、バターケーキの体積が小さく、しかも外観、しっとり感および食感においても、小麦粉を用いた実験番号25(参考例)のバターケーキおよび実験番号28〜34のバターケーキに比べて大きく劣っている。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の食品素材は、小麦アレルギーを引き起こすグルテンを含んでおらず、しかも小麦粉を用いた場合と同じように良好な二次加工適性を有し、食品を製造する際の取り扱い性および加工性に優れていて、食感、食味、触感、外観などに優れる各種食品を製造できるので、小麦アレルギー症のヒトでも安心して喫食することのできる各種食品の製造に有効に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホワイトソルガム粉と、豆粉および豆由来の蛋白質から選ばれる少なくとも1種とからなる食品素材であって、[ホワイトソルガム粉]:[豆粉および豆由来の蛋白質から選ばれる少なくとも1種]の配合割合が99.5:0.5〜50:50(質量比)であることを特徴とする食品素材。
【請求項2】
ホワイトソルガム粉のタンニン含量が1質量%以下である請求項1に記載の食品素材。
【請求項3】
豆粉および豆由来の蛋白質から選ばれる少なくとも1種が、大豆粉、ソラマメ粉、大豆由来の蛋白質およびソラマメ由来の蛋白質から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の食品素材。
【請求項4】
菓子類用、麺類用、パン類用、油揚げ食品の衣材用、お好み焼き用、タコ焼き用または水産練り製品のバインダー用である請求項1〜3のいずれか1項に記載の食品素材。