説明

食器洗い機用洗剤

【課題】天然の木の実であるムクロジを活用して、健康志向や環境志向に対応した食器洗い機用洗剤を提供する。
【解決手段】
ムクロジの実を乾燥させる乾燥工程と、乾燥した前記ムクロジの実を粉砕する粉砕行程と、を経て食器洗い機用洗剤を製造する。このときムクロジの実の果皮部分だけを選択的に抽出して粉砕することが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗剤に係り、特に食器洗い機に専ら利用される洗剤に関する。
【背景技術】
【0002】
外食産業などの業務用として発展してきた食器洗い機も、近年は一般家庭用として広く普及するに至っている。このような一般家庭への普及に伴って、これら一般家庭用食器洗い機に使用される洗剤も、専用品が種々登場している。
【0003】
これは例えば、手洗いにて食器を洗浄する際に使用する洗剤(所謂家庭用台所洗剤)をそのまま食器洗い機用の洗剤として利用してしまうと、泡立ちが良すぎることによって反って洗浄能力が低下し、更には泡切れが悪いため洗浄後においても食器の表面に洗剤成分が残留してしまうという問題があるからである。
【0004】
専用品としては、例えば、溶解性を向上させたものや洗浄力を強めたもの、安定性や泡切れを考慮したものなど、種々の観点から様々な工夫がされている(例えば特許文献1、2を参照)。
【0005】
一方、従来より、ムクロジ(無患子、ソープナッツ(学名:Sapindus
Mukorossi))に天然のサポニンが豊富に含まれていることは周知の事実であり、古来よりせっけんとして利用されてきた事実がある。しかし、天然物であるが故に泡立ちは化学合成系の洗剤には及ばず(泡立ちと洗浄力とは必ずしも比例しないが、一般的には泡立ちが良い=洗浄力が高いという認識が強い)、一部の健康志向の強い消費者を除いては、所謂化学合成系の家庭用台所洗剤が主流を占める状況に至っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−171197号公報
【特許文献2】特開2004−277651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、種々改良されている専用洗剤を利用することで、洗浄能力の問題や泡切れの問題などを同時に解決することが可能となっている。
【0008】
しかしながら、これらの専用洗剤はいずれも化学合成された成分(組成)が少なからず配合されており、特に健康志向や環境志向が強い現代においては、化学合成成分を完全に排除したより安全な食器洗い機用洗剤が切望されている。
【0009】
本発明は、このような要望に応えるべくなされたものであって、天然の木の実であるムクロジを活用して、健康志向や環境志向に対応した食器洗い機用洗剤を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ムクロジは天然のサポニン(界面活性成分)を豊富に含有しており「せっけん」として広く利用されていたが、上述の通り、天然物であるが故に泡立ちが(化学合成洗剤に比べて)良くなく、発泡性が悪いとされてきた。発明者は、ムクロジのこの性質を逆手にとって、発泡性が悪い(=泡切れが良い)という性質を専ら利用することで、食器洗い機用洗剤としての用途を導き出したのである。同時にムクロジは、天然の木の実であるから、化学合成成分などを一切含んでおらず、健康面に気を遣う者にとって最適である。更に、パームヤシのように採取にあたって木を切り倒す必要もなく、地球環境を破壊することもなく環境面にも配慮していると言える。
【0011】
即ち、乾燥したムクロジの実を粉砕して粉状物又は粒状物として、この粉状物や粒状物を食器洗い機用洗剤として利用するのである。
【0012】
このとき、例えば、ムクロジの実の果皮部分だけを選択的に抽出して粉砕すれば、堅い種子部分が含まれないため、食器洗い機に使用しても機械の目詰まりを防止することができる。また、サポニンを豊富に含んだ果皮の割合が多くなることから、少量の使用でも洗浄力の高い食器洗い機用洗剤を提供することができる。
【0013】
もちろん、粉状や粒状に限らず、予めこれらの粉状物や粒状物に加水処理して液体洗剤としてもよい。予め液体としておくことによって、食器洗い機内での溶け残りを防止でき、投入した洗剤の性能を漏れなく発揮させて食器を洗浄することが可能となる。
【0014】
また、上記発明は見方を変えると、ムクロジの実を乾燥させる乾燥工程と、乾燥した前記ムクロジの実を粉砕する粉砕行程と、を経て作成された粉状物又は粒状物を食器洗い機用洗剤として使用する使用方法の発明として捉えることも可能である。
【発明の効果】
【0015】
ムクロジの泡切れの良さを最大限に生かし、洗浄力、安全性に優れ、環境にも優しい食器洗い機用洗剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〈製造方法〉
本発明に係る食器洗い機用洗剤の製造方法は、概略すると、天然のムクロジの実を採取した後、乾燥させ(乾燥工程)、粉砕する(粉砕行程)のみで完成する。もちろん、乾燥には様々な手法を利用でき、一般的な天日干しはもちろん、乾燥機に入れて乾燥時間を短縮させたり、更には凍結乾燥法(フリーズドライ)などを用いて乾燥させることも可能である。
【0017】
また、粉砕行程においても、一定のメッシュに粉砕できる限りにおいて特にその方法が制限されることはない。例えば、すり鉢でするように粉砕してもよいし、ミキサーなどで粉砕してもよい。更には杵様のもので破打することで粉砕してもよい。
【0018】
また、粉砕する際、ムクロジの実の全体を粉砕するのではなく、サポニンが豊富に含有されている果皮部分のみを選択的に抽出し、この果皮部分のみを粉砕するといった工夫も可能である。このようにすれば、粉砕後の粉状物又は粒状物中に堅い種子部分が含まれることを防止できるため、食器洗い機に使用しても機械の目詰まりを防止することができる。また、サポニンを豊富に含んだ果皮の割合が多くなることから、少量の使用でも洗浄力の高い食器洗い機用洗剤となる。
【0019】
また、粉状物や粒状物としてではなく、これら粉砕後の粉状物や粒状物に対して加水処理を行い、液体洗剤として構成することもできる。液体洗剤とすれば、食器洗い機に使用した際の溶け残りを完全に防止でき、投入した洗剤の効果を漏れなく発揮させることが可能となる。
【0020】
また、液体とした後、目の細かい濾過材(メッシュなど)で濾過することで、固形成分を排除でき、より目詰まりの発生を防止することもできる。
【0021】
〈使用方法〉
完成した洗剤は、通常の食器洗い機用洗剤と同様の方法で使用することができ、特段の操作は不要である。例えば、食器洗い機に洗剤投入口が設けられている場合には、その投入口に所定量投入し、食器洗い機を通常通り操作すれば良い。
【0022】
〈一般的な食器洗い機用洗剤との比較実験結果〉
以下、一般的に使用されている食器洗い機用洗剤(化学合成されたもの)との比較において、本発明に係る食器洗い機用洗剤(以下単に「本洗剤」という場合がある。)の性能を検証する実験を行った。その結果を以下に示している。
【0023】
【表1】

【0024】
実験環境は上記表1に示したとおりである。
【0025】
【表2】

【0026】
実験結果は、上記表2及び図1、2に示したとおりである。この結果から、本考案にかかる食器洗い機用洗剤(ムクロジ粉末)は、市販されている専用品との比較において、洗浄力及び泡切れの程度において全く遜色がなかった。また、いずれも食器洗い機に目詰まり等の不具合は見られなかった。
【0027】
このように、本発明では、従来からせっけんとして利用されてきたムクロジの性質(洗浄力は高いが、化学合成系の洗剤に比べて泡立ちは悪いという性質)を逆手にとって、その性質を専ら利用して食器洗い機用洗剤としての用途を見出しているのである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥したムクロジの実を粉砕して粉状物又は粒状物とした、ことを特徴とする食器洗い機用洗剤。
【請求項2】
請求項1において、
前記ムクロジの実の果皮部分だけを選択的に抽出して粉砕した、ことを特徴とする食器洗い機用洗剤。
【請求項3】
請求項1又は2の粉状物又は粒状物に加水処理して得られた液状の食器洗い機用洗剤。
【請求項4】
ムクロジの実を乾燥させる乾燥工程と、乾燥した前記ムクロジの実を粉砕する粉砕行程と、を経て作成された粉状物又は粒状物を食器洗い機用洗剤として使用する使用方法。




【公開番号】特開2011−32354(P2011−32354A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179274(P2009−179274)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(509154578)
【Fターム(参考)】