食器洗浄機
【課題】洗浄運転中に洗浄槽を引き出すことが必要となった場合に、洗浄槽を引き出すことができるようになるまでの時間を従来の食器洗浄機に比べて短くすることが可能で、操作性に優れた食器洗浄機を提供する。
【解決手段】洗浄槽が第1引出し位置にあるときには、内蓋は上面開口部から離間せず、洗浄運転の実行中に、洗浄槽位置センサ53が、洗浄槽が第1引出し位置に引き出されて、洗浄槽が非収納状態にあることを検出したときには、制御手段(コントローラ)58は、ポンプ59の運転を停止させる停止指令を送出し、回転速度検出手段59aによってポンプの回転速度が、洗浄液が洗浄槽外に漏れ出さない所定の速度以下であることを検出したときに、ロック機構によるロックを解除し、第1引出し位置を超えて引き出すことができるように構成する。
所定の速度を、洗浄液が洗浄槽外に漏れ出さない、ポンプの回転速度の最大値に設定する。
【解決手段】洗浄槽が第1引出し位置にあるときには、内蓋は上面開口部から離間せず、洗浄運転の実行中に、洗浄槽位置センサ53が、洗浄槽が第1引出し位置に引き出されて、洗浄槽が非収納状態にあることを検出したときには、制御手段(コントローラ)58は、ポンプ59の運転を停止させる停止指令を送出し、回転速度検出手段59aによってポンプの回転速度が、洗浄液が洗浄槽外に漏れ出さない所定の速度以下であることを検出したときに、ロック機構によるロックを解除し、第1引出し位置を超えて引き出すことができるように構成する。
所定の速度を、洗浄液が洗浄槽外に漏れ出さない、ポンプの回転速度の最大値に設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器洗浄機に関し、詳しくは、食器洗浄機本体の前面に設けられた開口部分を通じて洗浄槽を略水平方向に出し入れすることができるとともに、この洗浄槽の出し入れに連動して洗浄槽に設けられた食器類の出し入れ用の上面開口部を内蓋で開閉できるようにした引き出し式の食器洗浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、システムキッチンなどに組み込むためのビルトインタイプの食器洗浄機においては、洗浄機本体の前面側に設けられた開口部分を通じて洗浄槽を略水平方向にスライドさせて出し入れすることができるようにした、いわゆる引き出し式のものが適用される場合が多い。この場合、洗浄槽としては、通常、洗浄すべき食器類を出し入れできるようにその上部に上面開口部が形成され、また、洗浄機本体の前面側の開口部分を開閉する扉部が設けられたものが用いられている。さらに、洗浄機本体の内側上部には内蓋が昇降可能に設けられており、洗浄槽を洗浄機本体の所定の収納位置まで収納すると、内蓋が下降して洗浄槽の上面開口部を封止するように構成されている。
【0003】
このような引き出し式の食器洗浄機においては、洗浄運転中に使用者が誤って洗浄槽を洗浄機本体から外部に引き出すと、これに連動して内蓋が上昇し、洗浄槽の上面開口部から離間するので、洗浄槽内の洗浄水が上面開口部から外部に噴出、飛散するなどの不具合を生じる。
【0004】
そこで、洗浄運転時には洗浄槽が洗浄機本体内に収納されて引き出すことができないようにロック状態とし、洗浄運転が行われていない状態では洗浄槽を洗浄機本体から引き出すことができるようにロック解除状態とするロック機構を備えた食器洗浄機が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
この特許文献1の食器洗浄機において、ロック機構は、洗浄槽が所定の収納位置にあることを検出する洗浄槽位置センサと、ロック機構の係止部材が係止位置にあるのか非係止位置にあるのかを検出する係止部材位置センサと、食器洗浄用の洗浄液を循環させるポンプと、洗浄運転の開始および停止操作用のスイッチと、少なくともポンプおよび係止解除用駆動手段の動作を制御する制御手段とを具備しており、制御手段は、スイッチ操作により洗浄運転が指令された場合には、係止部材が係止位置に保持されるように係止解除用駆動手段の動作を規制するとともに、洗浄槽位置センサにより洗浄槽が所定の収納位置にあることが検出され、かつ、係止部材位置センサにより係止部材が係止位置にあることが検出された場合にのみポンプを起動して洗浄運転を開始し、洗浄運転が終了して待機状態に移行する場合またはスイッチ操作により洗浄運転の停止が指令された場合には、ポンプを停止した後に係止解除用駆動手段を動作させて係止部材を非係止位置に移動させる制御を実行するように構成されている。
【0006】
したがって、
(a)洗浄運転開始前や洗浄運転後の待機状態においては、係止解除駆動部の作用によって係止部材が非係止位置に保持されて保洗浄槽がロック解除状態になっているので、洗浄槽を洗浄機本体に対して自由に出し入れすることができる、
(b)また、洗浄運転の開始時には、係止部材が係止位置に保持されるように係止解除用駆動手段の動作を規制するとともに、洗浄槽位置センサにより洗浄槽が所定の収納位置にあることが検出され、かつ、係止部材位置センサにより係止部材が係止位置にあることが検出された場合にのみポンプを起動して洗浄運転を開始するので、洗浄運転中、洗浄槽側の被係止部は、洗浄機本体側の係止部材によって確実に係止される、
(c)したがって、洗浄運転中、洗浄槽が洗浄機本体の所定の収納位置にロックされた状態が安定的に保持され、使用者が誤って洗浄槽を強く引っ張った場合にも、洗浄槽が不用意に外部に引き出されてしまうことがない、
というような効果が得られる。
【0007】
しかし、この特許文献1の食器洗浄機の場合、洗浄運転中に洗浄槽を引き出す際には、スイッチ操作により洗浄運転の停止を行った後でないと洗浄槽を引き出すことができないため、面倒である(操作性が悪い)という問題点がある。
【0008】
また、従来の他の食器洗浄機として、洗浄槽が所定の収納位置にある状態での運転中に、洗浄槽が所定の範囲で動かされて、洗浄槽が所定の収納位置にないことを位置検知手段により検知した場合に、ポンプの運転を停止し、ポンプの動作終了より所定時間後に洗浄槽の拘束を解除するようにロック手段を制御する食器洗浄機が提案されている(特許文献2参照))。
【0009】
しかし、この食器洗浄機の場合、ポンプの停止後所定時間経過後でないと洗浄槽が引き出せないため、洗浄運転中に洗浄槽を引き出すことが必要になった場合に、待ち時間が生じるという問題点がある。
【0010】
また、さらに他の食器洗浄機として、洗浄槽が第一の拘束位置から第二の拘束位置に移動したことを位置検知手段が検知してから所定時間後に、ロック手段による拘束を解除するようにした食器洗浄機が提案されている(特許文献3参照)。
【0011】
しかしこの食器洗浄機においても、洗浄槽が第一の拘束位置から第二の拘束位置に移動したことを位置検知手段が検知してから所定時間経過後でないと洗浄槽を引き出すことができないという問題点がある。なお、この食器洗浄機の場合、上記所定時間を短かく設定すると洗浄液が洗浄槽外に漏れ出すことになるため、種々の条件においても確実に洗浄液が洗浄槽外に漏れ出さないように構成する必要があり、部品のバラツキや電源電圧、環境温度などの条件を考慮して上記所定時間を定めておく必要があるため、上記所定時間として、安全をみた長い時間が設定されることになり、洗浄運転中に洗浄槽を引き出すことができるようになるまでの待ち時間が長くなるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−142538号公報
【特許文献2】特許第4692392号公報
【特許文献3】特許第4650335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本願発明は、上記課題を解決するものであり、洗浄運転中に洗浄槽を引き出すことが必要となった場合に、洗浄槽を引き出すことができるようになるまでの時間を従来の食器洗浄機に比べて短くすることが可能で、操作性に優れた食器洗浄機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明にかかる食器洗浄機は、
洗浄すべき食器類が収容される洗浄槽と、食器洗浄用の洗浄液を循環させるポンプと、制御手段と、
前記洗浄槽が出し入れされる前面開口部を有し、前記制御手段から前記ポンプに送出される運転指令により前記ポンプを運転させて洗浄運転を実行する洗浄機本体と、
前記洗浄機本体の前記前面開口部を開閉する扉部と、
前記洗浄槽が洗浄機本体内の所定収納位置まで収納されたときには前記洗浄槽に設けられた食器類の出し入れ用の上面開口部を封止し、前記洗浄槽が前記洗浄機本体から引き出されときには前記洗浄槽の前記上面開口部から離間するように、前記洗浄槽の出し入れに連動して前記上面開口部を開閉する内蓋と、
前記洗浄運転の実行中に前記洗浄機本体内の前記所定収納位置にある前記洗浄槽を引き出そうとしたときに、第1引出し位置までの引き出しは許容するが、前記第1引出し位置を超えて引き出すことができないようにするロック機構と、
前記洗浄槽が前記所定収納位置に収納されているときには収納状態を検出し、前記洗浄槽が前記第1引出し位置に引き出されたときには非収納状態を検出する洗浄槽位置センサと、
前記ポンプの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
を具備し、
前記洗浄槽が前記第1引出し位置にあるときには、前記内蓋が前記上面開口部から離間せず、
前記洗浄運転の実行中に、前記洗浄槽が前記第1引出し位置に引き出されて前記洗浄槽位置センサが非収納状態を検出したときには、前記制御手段が、前記ポンプの運転を停止させる停止指令を送出し、
前記回転速度検出手段が、前記ポンプの前記回転速度が、洗浄液が前記洗浄槽外に漏れ出さない所定の速度以下であることを検出したときには、前記ロック機構によるロックを解除し、前記第1引出し位置を超えて引き出すことができるように構成されていること
を特徴としている。
【0015】
また、本発明の食器洗浄機においては、前記所定の速度が、洗浄液が前記洗浄槽外に漏れ出さない、前記ポンプの回転速度の最大値に設定されていることが好ましい。
【0016】
また、本発明の食器洗浄機においては、前記ロック機構が、前記洗浄槽に配設されたストライクピンと、前記洗浄機本体に配設されたフックとを係合、離脱させることにより、前記洗浄槽を、前記第1引出し位置を超えて引き出すことができないようにするロック状態と、前記洗浄槽を、前記第1引出し位置を超えて引き出すことができるようにするロック解除状態とを切り換えるように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明(請求項1の発明)においては、洗浄槽が第1引出し位置にあるときには、内蓋が上面開口部から離間せず、洗浄運転の実行中に洗浄槽が第1引出し位置に引き出されて、洗浄槽位置センサが、洗浄槽が非収納状態にあることを検出したときには、制御手段が、ポンプの運転を停止させる停止指令を送出し、ポンプの回転速度を検出する回転速度検出手段によって回転速度が、洗浄液が洗浄槽外に漏れ出さない所定の速度以下であることを検出したときに、ロック機構によるロックを解除し、第1引出し位置を超えて引き出すことができるようにしているので、洗浄運転中に洗浄槽を引き出す際に、スイッチ操作により洗浄運転の停止を行うことを必要とせずに、速やかに洗浄槽を引き出すことが可能になり、操作性がよい食器洗浄機を提供することが可能になる。
【0018】
また、所定の速度を、洗浄液が洗浄槽外に漏れ出さないポンプの回転速度に設定しておけば、洗浄液が洗浄槽外に漏れ出すことがないから、洗浄運転中に洗浄槽を引き出す際の待ち時間を短くすることができる。すなわち、洗浄運転中に洗浄槽を引き出す際に、洗浄槽内の洗浄水が開口部から外部に噴出、飛散するおそれがなくなるのに要する時間を適切に、かつ短くして、操作性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の食器洗浄機においては、ポンプの回転速度についての、上述の所定の速度を、洗浄液が洗浄槽外に漏れ出さないポンプの回転速度の最大値に設定しておくことにより、洗浄運転中に洗浄槽を引き出す際の、洗浄液が洗浄槽外に漏れ出すことを防止しつつ洗浄槽を引き出しことができるようになるまでの時間をさらに短くすることが可能になり、より操作性に優れた食器洗浄機を提供することが可能になる。
【0020】
また、ロック機構が、洗浄槽に配設されたストライクピンと、洗浄機本体に配設されたフックとを係合、離脱させることにより、洗浄槽を、第1引出し位置を超えて引き出すことができないようにするロック状態と、洗浄槽を、第1引出し位置を超えて引き出すことができるようにするロック解除状態とを切り換えるように構成した場合、複雑な機構を必要とせずに、洗浄槽のロックとロック解除とを確実に行うことが可能になり、信頼性の高い食器洗浄機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機の全体構成を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機を構成する洗浄槽が引き出し状態にある場合を示す側面断面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機の動作を説明する図であって、洗浄槽が引き出し状態にある場合を示す図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機を構成する洗浄槽が引き出し状態と収納状態との間の中間状態にある場合を示す側面断面図である。
【図5】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機の動作を説明する図であって、洗浄槽が引き出し状態と収納状態の中間状態にある場合を示す図である。
【図6】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機を構成する洗浄槽が収納状態にある場合を示す側面断面図である。
【図7】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機の動作を説明する図であって、洗浄槽が収納状態にある場合を示す図である。
【図8】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機を構成する洗浄槽の収納状態を、一部を省略して示す平面図である。
【図9】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機を構成する洗浄槽の収納状態を、内蓋を除いて示す平面図である。
【図10】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機を構成するクランプ部材の洗浄機本体への取り付け状態を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機を構成するロック機構の平面図である。
【図12】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機を構成するロック機構の側面図であり、(イ)は洗浄槽が収納状態にある場合、(ロ)は洗浄槽が第1引出し位置に引き出された状態にある場合、(ハ)はロック状態が解除された状態にある場合を示す図である。
【図13】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機を構成する洗浄槽位置センサの取り付け状態を示す要部側面断面図である。
【図14】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機の動作制御系の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を示して、その特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【0023】
[実施形態1]
図1は本発明の実施形態にかかる食器洗浄機の全体構成を示す概略斜視図、図2は洗浄槽の引き出し状態を示す側面断面図、図3は洗浄槽の引き出し状態を示す動作説明図、図4は洗浄槽の引き出し状態と収納状態との間の中間状態を示す側面断面図、図5は洗浄槽の引き出し状態と収納状態との間の中間状態を示す動作説明図、図6は洗浄槽の収納状態を示す側面断面図、図7は洗浄槽の収納状態を示す動作説明図、図8は洗浄槽の収納状態を一部を省略して示す平面図、図9は洗浄槽の収納状態を内蓋を除いて示す平面図である。
この実施形態の食器洗浄機は、略箱状で、前面側に、洗浄槽2を出し入れするための前面開口部3が形成され洗浄機本体(本体ケーシング)1を備えており、洗浄機本体1の内側の収納空間内には上述の洗浄槽2が、上記前面開口部3を通して略水平方向に出し入れすることができるような態様で収容されている。
そして、この洗浄槽2の上面側には、食器類5(図1)や洗浄かご6(図6など)を出し入れするための上面開口部4が設けられている。また、洗浄機本体1の内側の上部には、洗浄槽2の上面開口部4を開閉する内蓋10が略上下方向に昇降可能に保持された状態で配置されている。さらに、洗浄機本体1内には、洗浄運転を実行するために、図示しないが、食器洗浄用の洗浄液を循環させるポンプが設けられている。
【0024】
また、洗浄機本体1の内側には、洗浄槽2を出し入れする際のガイド用の左右一対のレール7が配設され、その左右一対のレール7を介して洗浄槽2が洗浄機本体1の収納空間に対して、矢印Aで示す収納移動方向と、矢印Bで示す引き出し移動方向へスライド移動することができるように構成されている。
【0025】
洗浄槽2は、その前面側に洗浄機本体1の前面開口部3を開閉する扉部9が設けられており、この扉部9には把手8が設けられているとともに、使用者が洗浄運転やその停止を行うための運転/停止スイッチ57などを有する操作パネルが設けられている。そして、使用者が把手8を把持して、洗浄槽2を引き出し移動方向Bへスライド移動させることにより、図1に示すように、洗浄槽2が洗浄機本体1の前方側に引き出されて、食器類5や洗浄かご6を取り出したり収納したりすることが可能になる。また、使用者が、洗浄槽2を収納移動方向Aへスライド移動させることにより、洗浄機本体1内に洗浄槽2を収納して、食器類5を洗浄したり乾燥したりすることができるように構成されている。
【0026】
内蓋10は、洗浄槽2が洗浄機本体1に収納移動されると閉状態となり、洗浄槽が洗浄機本体1から引き出し移動されると開状態となるように開閉動するように構成されており、閉状態においては食器洗浄時などにおいて洗浄水が洗浄槽2から飛散することを抑制、防止し、開状態においては洗浄槽2に食器類5などを出し入れすることができるように構成されている。
【0027】
内蓋10の左右の各側部には、カムフォロアとして機能する前後一対のカムピン37(図3)がそれぞれ外側に向けて突出するように設けられている。また、内蓋10の上部と洗浄機本体1の前端部との間には、内蓋10を洗浄機本体1の前面開口部3側に向けて付勢するコイルスプリングからなる蓋用スプリング38が介装されている。
【0028】
また、洗浄機本体1の内側の上部左右の側端には、図10に示すように、前後一対の保持舌片23が内蓋10の各カムピン37に個別に対応するように洗浄機本体1と一体的に設けられている。そして、各前後一対の保持舌片23間には、クランプ部材26が上下方向(符号Cで示す方向)に移動可能な状態で嵌入されている。
【0029】
各クランプ部材26は、合成樹脂や金属製の成形品からなり、その上部には、内蓋10の前述のカムピン37がそれぞれ嵌入するカム溝22が、また、カム溝22の両端部の外側には各保持舌片23の上縁に当接して位置決め保持される保持片24が形成されている。さらに、クランプ部材26の下部には、洗浄槽2の後述の受け止め面35(図3(イ)など)が当接することで当該クランプ部材26の上下方向Cへの移動を規制するための当接部25が形成されている。
【0030】
前記カム溝22は図3に示すように、中心線Lを中心として左右対称形に略V字状に形成されており、洗浄槽2が洗浄機本体1内に収納されたときにはカムピン37はカム溝22の最下方位置に、洗浄槽2が洗浄機本体1から引き出されたときにはカムピン37はカム溝22の最上方位置にそれぞれ移行する。
【0031】
前記洗浄槽2は、その上面開口部4の外周に沿った各辺に外方に張り出したフランジ部32(図3(イ),図5(イ))が形成され、その内の左右の各フランジ部32からは下方へ向けて突出する状態で受け止め面35(図3(イ),図5(イ))が形成され、各受け止め面35の下縁がクランプ部材26の当接部25に対向している。
【0032】
洗浄機本体1の内側後方の上部左右の位置には、内蓋開閉操作具としての一対の案内レバー11(図3,図5)がそれぞれ配置されている。各案内レバー11は、洗浄機本体1に固定された取付固定部12、揺動支承軸39、プッシュレバー13、および案内ピン14を備えている。そして、プッシュレバー13の基端側は、取付固定部12に設けられた揺動支承軸39を軸心として揺動自在に取り付けられ、また、先端側には上下方向に沿って延びる円筒状の案内ピン14が設けられている。
【0033】
一方、内蓋10の後端部の左右には、洗浄槽2の移動方向と直交する方向に延びる長穴16(図3(イ))が形成されており、各長穴16にプッシュレバー13の先端部の案内ピン14が常時嵌入されている。これにより、案内ピン14が長穴16に沿って摺動する摺動可能範囲内でプッシュレバー13が揺動し得るので、これに応じて内蓋10もプッシュレバー13の揺動可能範囲内で前後方向(図3(ロ)の左右方向)に沿って移動するように構成されている。そして、前述のように、内蓋10の左右にはカムピン37が固定されているので、内蓋10の前後の移動に伴ってカムピン37は、クランプ部材26のカム溝22に沿って摺動する。
【0034】
また、洗浄槽2の後方端の上部左右には、図9に示すように、洗浄槽溝15が案内レバー11に個別に対応して設けられている。この洗浄槽溝15は、例えば図3(ロ)に示すように、嵌合手前側当接部17と奥側当接部18とで囲まれた状態で形成されており、嵌合手前側当接部17は洗浄槽2の側面まで延び、また奥側当接部18は途中で後方側に後退するようにそれぞれ形成されている。そして、各洗浄槽溝15は、プッシュレバー13の揺動によってプッシュレバー13の先端の案内ピン14と係脱するように構成されている。
【0035】
また、洗浄機本体1内の後方箇所には、洗浄槽2を収納移動方向および引き出し移動方向に移動させる際にその移動力を補助するための左右一対のトグル機構27が設けられている。
各トグル機構27は、洗浄槽2の後端部に係合用ピン36が配設される一方、洗浄機本体1の後端部には、略L字状のレバー29が枢支ピン31によって揺動自在に設けられ、このレバー29の枢支ピン31を挟む一端側には上記の係合用ピン36に係合する係合用切欠き28が形成され、他端側は洗浄機本体1に一端が固定されたコイルスプリング30(図3(イ),図5(イ))の他端が取り付けられて構成されている。これにより、レバー29に対するコイルスプリング30の付勢力(回動作用方向)が、図5(イ)に示す設定切換位置Dを境として時計方向と反時計方向とに切り換わるように構成されている。
【0036】
また、この実施形態にかかる食器洗浄機では、洗浄機本体1内の後部側にロック機構40が設けられている。このロック機構40は、洗浄運転の実行中に洗浄機本体1内の所定収納位置にある洗浄槽2を引き出そうとしたときに、第1引出し位置までの引き出しは許容するが、第1引出し位置を超えて引き出すことができないようにする機能と、洗浄運転が行われていない場合や、ポンプ59からの洗浄液の噴出量(送液量)が、洗浄槽2から洗浄液が外部に噴出しないような量である場合には、洗浄槽2を洗浄機本体1内から引き出すことを許容する機能を果たすことができるように構成されている。
【0037】
ロック機構40は、この実施形態の場合、具体的には図11,図12(イ),(ロ),(ハ)に示すように、洗浄槽2の後端部に、被係止部としてストライクピン41を配設するとともに、洗浄機本体1の所定収納位置(この実施形態では、洗浄機本体1の最奥側の位置)に収納された洗浄槽2が第1引出し位置まで引き出されたときに、ストライクピン41を係止する係止部材としてのフック42、このフック42をストライクピン41の係止位置側に向けて付勢する係止用付勢手段としての捩りバネ43、この捩りバネ43の付勢力に抗してフック42をストライクピン41との係止位置から、非係止位置まで、すなわちストライクピン41から離脱した位置まで動作させる係止解除用駆動手段としてのカム44をそれぞれ配設することにより構成されている。また、カム44のカム軸48には、カム44を回転駆動する図示しないカム駆動モータが連結されて構成されている。
【0038】
なお、図12(イ)は、洗浄槽2が洗浄機本体1の最奥側に位置している(所定収納位置にある)場合における、ストライクピン41とフック42と位置関係を示しており、図12(ロ)は、洗浄槽2が上記第1引出し位置まで引き出されたときに、ストライクピン41と、フック42とが係合した状態を示している。
また、図12(ハ)は、フック42がストライクピン41から離脱した非係止位置に保持された状態(すなわち、ロック機構40によるロックが解除され、洗浄槽2の出し入れを自由に行うことが可能な状態)を示している。
【0039】
また、この実施形態の食器洗浄機においては、洗浄槽2が洗浄機本体1の最奥側に押し込まれた、所定収納位置にある場合には、ストライクピン41とフック42の間隔Gが3mm(図12(イ)参照)となり、洗浄槽2がその所定収納位置から3mm引き出されて、フック42がストライクピン41に当接した状態が、洗浄槽2が第1引出し位置まで引き出された状態(図12(ロ)に示す状態)となるように構成されている。
【0040】
以上の説明からも理解されるように、ストライクピン41とフック42とが、図12(イ)に示すような位置関係となる、洗浄槽2が洗浄機本体1の最奥側に押し込まれた位置から、洗浄槽2が第1引出し位置まで引き出された状態となる直前の位置(ストライクピン41とフック42とが、図12(ロ)に示すような位置関係となる直前)までの間の領域が、本願発明における洗浄槽2が所定収納位置にある状態となる。
【0041】
また、フック42は、洗浄機本体1に固定された支軸45によって揺動可能に支持されるとともに、この支軸45に巻回された捩りバネ43によってストライクピン41の係止位置に向けて付勢(図12では時計方向に付勢)されている。さらに、フック42には、ストライクピン41と対向する先端部分に傾斜部46が形成されている。この傾斜部46は、引き出されていた洗浄槽2を所定の位置まで押し込んだときに、ストライクピン41が当接して捩りバネ43による付勢力に抗してフック42を非係止位置まで円滑に移動させるように作用するものである。なお、洗浄槽3が第1引出し位置より奥側(所定収納位置)まで戻った場合には、再びストライクピン41がフック42により係止された状態になる。
【0042】
また、図11に示すように、フック42の遮光部材47に近接して、フック42が係止位置にあるか、あるいは非係止位置にあるかを検出する係止部材位置センサとしてのフック位置センサ50が配設されている。フック位置センサ50は、例えば投光部50aと受光部50bとが対向配置されたフォトカプラからなる。
また、上記フック42の傾斜部46と支軸45を挟んで反対側の位置には、遮光部材47が突設されている。この実施形態の構成においては、図12(イ)に示すように、フック42の遮光部材47が投光部50aと受光部50bとの間に介在するときには、受光部50bの出力がオフとなり、フック42が係止位置にあることが検出される。また、図12(ハ)に示すように、遮光部材47が投光部50aと受光部50bとの間から離脱したときには、受光部50bの出力がオンとなり、フック42が非係止位置にあることが検出される。
【0043】
また、図13(イ),(ロ)に示すように、洗浄槽2の後端部には取付板52が設けられ、この取付板52に洗浄槽位置センサ53が固定されるとともに、この洗浄槽位置センサ53に近接してレバー54が揺動自在に取り付けられている。また、洗浄機本体1のレール7の取付板55にはレバー54に対向する位置にレバー押圧用の突起部56が形成されている。
【0044】
この洗浄槽位置センサ53は、洗浄槽2が所定収納位置にあるか否かを検出するものであって、前述のフック位置センサ50と同様、例えば投光部53aと受光部53bとが対向配置されたフォトカプラからなる。そして、図13(イ)に示すように、レバー54が突起部55から離間していて投光部53aと受光部53bとの間に位置するときには、受光部53bの出力がオフするので、洗浄槽2が所定収納位置から前方に引き出されていること、すなわち、洗浄槽2が第1引き出し部あるいはそれよりも外側の位置まで引き出されていることが検出され、また、図13(ロ)に示すように、レバー54が突起部55に押圧されて投光部53aと受光部53bとの間から離脱したときには、受光部53bの出力がオンするので、洗浄槽2が所定収納位置に収納されたことが検出されるように構成されている。
【0045】
図14はこの実施形態の食器洗浄機の動作制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0046】
制御手段としてのコントローラ58は、例えばマイクロコンピュータからなるもので、所定の制御プログラムをインストールすることにより、運転/停止スイッチ57からの操作信号、および前述のフック位置センサ50と洗浄槽位置センサ53からの検出信号に基づいて洗浄液を循環させるポンプ59、およびカム44を駆動するカム駆動モータ60の動作を制御するように構成されている。この実施形態の食器洗浄機は、さらに、ポンプ59の回転速度を検出する回転速度検出手段59aを備えており、回転速度検出手段59aが、ポンプ59の回転速度として、洗浄液が洗浄槽1の外部に噴出することのない速度を検出した時点で、コントローラ58が、洗浄槽2を洗浄機本体1から引き出すことを許容する信号を送出するように構成されている。
なお、このコントローラ58による制御動作については以下に詳述する。
【0047】
次に、上記構成を備えた食器洗浄機の動作について説明する。
(1)洗浄槽2の収納移動および引き出し移動に伴う内蓋10の開閉動作
洗浄槽2が洗浄機本体1から引き出された状態では、図3(ロ)に示すように、洗浄機本体1の案内ピン14は洗浄槽溝15から離脱しており、また内蓋10は蓋用スプリング38で洗浄機本体1の前方開口側に引っ張られているので、各案内ピン14は内蓋10の長穴16内の外方端側の位置(以下、引き出し操作位置という)にある。このため、内蓋10のカムピン37はクランプ部材26のカム溝22の最上方位置に移行しており、内蓋10は上昇して洗浄槽2の上面開口部4から離脱している。
【0048】
この状態から洗浄槽2を収納移動方向Aへ次第に移動させていくと、洗浄槽2が図4および図5に示す中間位置に到達するまでの範囲では、洗浄槽溝15は案内ピン14に依然として係合しないので、案内ピン14は引き出し操作位置に保持されている。
【0049】
そして、洗浄槽2が図4および図5に示す中間位置に到達すると、図5(ロ)に示すように、洗浄槽2の手前側当接部17が案内ピン14に当接する。洗浄槽2をさらに収納移動方向Aへ移動させると、案内ピン14が洗浄槽2の手前側当接部17によって押圧されるので、案内ピン14は内蓋10の長穴16に沿って内方に向けて摺動するとともに、洗浄槽溝15内に嵌入する。これに伴いプッシュレバー13が図中反時計方向に回動する。このプッシュレバー13の回動によって内蓋10が蓋用スプリング38の引っ張り力に抗して収納移動方向Aへ押し移動される。そのため、内蓋10のカムピン37はクランプ部材26のカム溝22の最上方位置から最下方位置に向けて移行し、その結果、内蓋10が洗浄槽2の上面開口部4に向けて下降する。
【0050】
洗浄槽2を所定収納位置まで移動させると、図7(ロ)に示すように、各案内ピン14は内蓋10の長穴16内の内方端側の位置(以下、収納操作位置という)に移行する。これに伴い、内蓋10のカムピン37はクランプ部材26のカム溝22の最下方位置に移行し、その結果、各クランプ部材26の当接部25が、洗浄槽2の受け止め面35に当接し、クランプ部材26の開閉方向Cへの移動が阻止されるとともに、内蓋10が洗浄槽2側に押し付けられて洗浄槽2の上面開口部4が確実に封止される。
【0051】
一方、洗浄槽2を第1引出し位置からさらに外側に移動させる(引き出し移動方向B(図6参照)へ移動させる)ときは、上記の説明とは逆の動作となる。すなわち、洗浄槽2の手前側当接部17による案内ピン14への押圧作用が解除されるとともに、内蓋10には蓋用スプリング38の引っ張り力が加わるため、案内ピン14は内蓋10の長穴16に沿って収納操作位置から引き出し操作位置に向けて摺動するとともに、内蓋10のカムピン37はクランプ部材26のカム溝22の最下方位置から最上方位置まで移行する。その結果、内蓋10が洗浄槽2の上部開口部から離間して開状態となる。
ただし、洗浄槽2が第1引出し位置にある場合には、内蓋10が洗浄槽2側に押し付けられて洗浄槽2の上面開口部4が確実に封止された状態が保たれるように構成されている。
【0052】
このように、洗浄槽2を収納移動および引き出し移動すると、これに応じて案内レバー11、クランプ部材26のカム溝22、および蓋用スプリング38の相互作用によって内蓋10が連動して内蓋10の開閉操作が行われることになる。
【0053】
(2)洗浄槽2の収納移動および引き出し移動に伴うトグル機構27の動作
洗浄槽2を洗浄機本体1の収納空間に収納した状態では、図6、図7(イ)に示すように、洗浄槽2から後方に向けて突出する係合用ピン36が、レバー29の係合用切欠き28内に嵌入し、コイルスプリング30の付勢力に起因するレバー29の回動力が、洗浄槽2の収納移動方向A側に作用する。
【0054】
その際、前述のように、洗浄槽2の手前側当接部17が案内ピン14に当接してこれを収納移動方向A側に押圧しているので、内蓋10のカムピン37がカム溝22内における最下方位置に位置し、その結果、内蓋10が洗浄槽2の上面開口部4を密閉した状態となる。
【0055】
ポンプ59の回転速度が、所定の速度以下であることが検出され、ロックが解除された状態で、洗浄槽2を、第1引出し位置を超えて、引き出し移動方向B側へ移動させると、レバー29がコイルスプリング30の付勢力に抗して引き出し移動方向B側に回動され、レバー29が図5(イ)に示した設定切換位置Dを越えると、図3(イ)、図4に示すように、コイルスプリング30の付勢力に起因するレバー29の回動力が、引き出し移動方向B側に作用するように切り換わる。これにより、コイルスプリング30の付勢力によって、洗浄槽2が引き出し移動方向B側に押し出され、その後、係合用ピン36が係合用切欠き28から外れるとともに、前述のように内蓋10の上昇による洗浄槽2の上面開口部4の閉鎖が解除されるので、洗浄槽2を洗浄機本体1から引き出すことができるようになる。
【0056】
この引き出し状態から逆に洗浄槽2を収納移動方向A側へ押し込むと、洗浄槽2から突出する係合用ピン36がレバー29の係合用切欠き28内に嵌入してこれを押圧するので、引き出し時とは逆に、レバー29をコイルスプリング30の付勢力に抗して収納移動方向A側に回動させる。そして、レバー29が設定切換位置Dを越えると、レバー29の回動力が収納移動方向A側に作用するように切り換わるので、コイルスプリング30の付勢力によって洗浄槽2が収納移動方向A側に引き込まれる。
【0057】
このように、洗浄槽2の収納移動および引き出し移動に伴って、トグル機構27のレバー29に対するコイルスプリング30の付勢力(回動作用方向)が、設定切換位置Dを境として時計方向と反時計方向とに切り換わるので、洗浄槽2の収納移動および引き出し移動を小さな操作力でもって行うことが可能になる。
【0058】
(3)食器洗浄機の運転/停止などに伴うコントローラ58による制御動作
本発明においては、洗浄運転中に洗浄槽2を引き出すことが必要となった場合に、洗浄槽2を引き出すことが可能になるまでの時間を短くして、操作性を向上させるようにしている。ここでは、本発明の特徴的な部分を含めて、この実施形態にかかる食器洗浄機の運転/停止などに伴う、コントローラによる制御動作について説明する。
【0059】
洗浄運転開始前や洗浄運転後の待機状態においては、コントローラ58はカム駆動モータ60を駆動してカム44を回動させ、フック42を洗浄槽2のストライクピン41から離脱した非係止位置に保持する(図12(ハ)の状態)。すなわち、待機状態では洗浄槽2はロック機構40によるロックが解除されているので、洗浄槽2の出し入れを自由に行うことが可能で、食器の出し入れも自由に行うことができる。
【0060】
コントローラ58は、運転/停止スイッチ57が操作されて洗浄運転が指令されたときには、まず洗浄槽位置センサ53の検出出力がオンになっているか否かを判定する。洗浄槽位置センサ53がオンになっていれば、洗浄槽2が所定収納位置に収納されたと見なされるので、カム駆動モータ60を起動する。これにより、カム44が回動されてフック42が係止位置まで移動するので、フック42によって洗浄槽2のストライクピン41が係止される(図12(イ)の状態)。その際、コントローラ58は、フック位置センサ50がオフになっているか否かを判定する。フック位置センサ50がオフになっておれば、フック42によって洗浄槽2のストライクピン41が確実に係止されたと見なされるので、このときに初めてコントローラ58はポンプ59を起動する。これにより、洗浄運転が開始され、ポンプ59で加圧された洗浄水が食器類5に吹き付けられて洗浄が実施される。
【0061】
そして、この洗浄運転中は、捩りバネ43の作用によってフック42がストライクピン41を確実に係止しているので、洗浄槽2が所定収納位置にロックされた状態が安定的に保持される。したがって、使用者が不用意に洗浄槽2を強く引っ張った場合にも、洗浄槽2が外部に引き出されてしまうという不具合の発生を確実に防止することができる。
【0062】
そして、この洗浄運転中において、洗浄を停止して、洗浄槽2を引き出す必要が生じた場合、洗浄槽2を洗浄機本体1から引き出す操作を行う。これにより、洗浄機2が図6の矢印Bの方向に移動する。
このとき、洗浄槽2の後端部に配設されたストライクピン41と、洗浄機本体1に配設されたフック42が係合することにより、洗浄槽2は第1引出し位置に保持されるとともに、内蓋10が洗浄槽2側に押し付けられて洗浄槽2の上面開口部4が封止された状態が保持される。
【0063】
そして、洗浄槽2が第1引出し位置に位置すると、洗浄槽位置センサ53が、洗浄槽2が第1引出し位置に位置することを検出する(すなわち、洗浄槽2が非収納状態にあると検出する)と、コントローラ(制御手段)58は、ポンプ59の運転を停止させる停止指令を送出する(図12(ロ),14参照)。
そして、回転速度検出手段59aが、ポンプ59の回転速度が、洗浄液が洗浄槽2の外部に噴出することのない速度になったことを検出した時点で、コントローラ58が、カム駆動モータ60を駆動してカム44を作動させ、フック42を捩りバネ43の付勢力に抗して回動させ、ストライクピン41から離脱した非係止位置まで移動させる(図12(ハ)参照)。これにより、ロック機構40による洗浄槽2に対するロックが解除され、洗浄槽2は出し入れを自由に行うことができるようになる。
【0064】
また、所定の洗浄時間が経過し、洗浄運転が終了して待機状態に移行する場合、コントローラ58は、これに応じて先ずポンプ59を停止した後、カム駆動モータ60を駆動してカム44を作動させ、フック42を捩りバネ43の付勢力に抗して回動させてストライクピン41から離脱した非係止位置まで移動させる。これにより、洗浄槽2はロック機構40によるロックが再び解除されるので、洗浄槽2の出し入れを自由に行うことができる。
【0065】
なお、ストライクピン41がフック42で係止され、洗浄槽2がロックされている状態では、フック42は捩りバネ43によって係止位置に付勢されているだけでカム44による拘束はない。したがって、停電時や万一の故障などでカム駆動モータ60が動作しない場合でも、フック42に対して外力を加えることによりストライクピン41から離脱させることにより洗浄槽2のロック解除を行うことができる。
【0066】
そして、洗浄槽2のロック解除後に洗浄槽2を引き出して食器類を取り出した後は、停電からの復電や故障が未修理のままでも、洗浄槽2を洗浄機本体1の所定収納位置まで移動させようとすると、ストライクピン41がフック42の先端の傾斜部46に当接して押圧するので、フック42が捩りバネ43の付勢力に抗して非係止位置まで揺動し、洗浄槽が収納位置に収納されると再びストライクピン41がフック42に係止された状態になる。このため、洗浄槽2を所定収納位置まで押し込むことができる。
【0067】
したがって、洗浄槽2が引き出された状態のままで、引き出した洗浄槽2が邪魔になったり、洗浄槽2が引き出されたままの見苦しい状態のまま放置せざるを得なくなるというような事態を回避することが可能になり、かつ、洗浄槽2を収納する際に、ストライクピン(被係止部)41とフック(係止部材)とが当接しても無理な応力が発生しないため、ロック機構40の破損、変形などの故障の発生を確実に防止することができる。
【0068】
なお、上記実施形態にかかる食器洗浄機では、ロック機構40を、十分な信頼性が得られるように、洗浄槽2に設けたストライクピン41と、洗浄機本体1に設けたフック42などからなる構成としているが、ロック機構の構成はこれに限られるものではなく、例えば、洗浄機本体に設けた、ソレノイドにより動作するプランジャーを、洗浄槽に設けた係合孔を備えた係合部材に係合、離脱させる構成など、他の構成とすることも可能である。
【0069】
また、上記実施形態の食器洗浄機では、トグル機構27を設けた例を示したが、このトグル機構27は必須のものではなく、トグル機構27を省略した構成とすることもできる。
【0070】
また、上記実施形態では、ロック機構40を洗浄機本体1内の後端部側に設けているが、ロック機構40の位置は必ずしも洗浄機本体1内の後端部側に設ける必要はなく、洗浄機本体1の前側開口部3を開閉する扉部9以外の領域であれば、任意の箇所に配設することが可能である。
【0071】
本発明は、さらにその他の点においても上記実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 洗浄機本体(本体ケーシング)
2 洗浄槽
3 前面開口部
4 上面開口部
9 扉部
10 内蓋
40 ロック機構
41 ストライクピン(被係止部)
42 フック(係止部材)
43 捩りバネ(係止用付勢手段)
44 カム(係止解除用駆動手段)
46 傾斜部
50 フック位置センサ(係止部材位置センサ)
53 洗浄槽位置センサ
57 運転/停止スイッチ
58 コントローラ(制御手段)
59 ポンプ
59a 回転速度検出手段
60 カム駆動モータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器洗浄機に関し、詳しくは、食器洗浄機本体の前面に設けられた開口部分を通じて洗浄槽を略水平方向に出し入れすることができるとともに、この洗浄槽の出し入れに連動して洗浄槽に設けられた食器類の出し入れ用の上面開口部を内蓋で開閉できるようにした引き出し式の食器洗浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、システムキッチンなどに組み込むためのビルトインタイプの食器洗浄機においては、洗浄機本体の前面側に設けられた開口部分を通じて洗浄槽を略水平方向にスライドさせて出し入れすることができるようにした、いわゆる引き出し式のものが適用される場合が多い。この場合、洗浄槽としては、通常、洗浄すべき食器類を出し入れできるようにその上部に上面開口部が形成され、また、洗浄機本体の前面側の開口部分を開閉する扉部が設けられたものが用いられている。さらに、洗浄機本体の内側上部には内蓋が昇降可能に設けられており、洗浄槽を洗浄機本体の所定の収納位置まで収納すると、内蓋が下降して洗浄槽の上面開口部を封止するように構成されている。
【0003】
このような引き出し式の食器洗浄機においては、洗浄運転中に使用者が誤って洗浄槽を洗浄機本体から外部に引き出すと、これに連動して内蓋が上昇し、洗浄槽の上面開口部から離間するので、洗浄槽内の洗浄水が上面開口部から外部に噴出、飛散するなどの不具合を生じる。
【0004】
そこで、洗浄運転時には洗浄槽が洗浄機本体内に収納されて引き出すことができないようにロック状態とし、洗浄運転が行われていない状態では洗浄槽を洗浄機本体から引き出すことができるようにロック解除状態とするロック機構を備えた食器洗浄機が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
この特許文献1の食器洗浄機において、ロック機構は、洗浄槽が所定の収納位置にあることを検出する洗浄槽位置センサと、ロック機構の係止部材が係止位置にあるのか非係止位置にあるのかを検出する係止部材位置センサと、食器洗浄用の洗浄液を循環させるポンプと、洗浄運転の開始および停止操作用のスイッチと、少なくともポンプおよび係止解除用駆動手段の動作を制御する制御手段とを具備しており、制御手段は、スイッチ操作により洗浄運転が指令された場合には、係止部材が係止位置に保持されるように係止解除用駆動手段の動作を規制するとともに、洗浄槽位置センサにより洗浄槽が所定の収納位置にあることが検出され、かつ、係止部材位置センサにより係止部材が係止位置にあることが検出された場合にのみポンプを起動して洗浄運転を開始し、洗浄運転が終了して待機状態に移行する場合またはスイッチ操作により洗浄運転の停止が指令された場合には、ポンプを停止した後に係止解除用駆動手段を動作させて係止部材を非係止位置に移動させる制御を実行するように構成されている。
【0006】
したがって、
(a)洗浄運転開始前や洗浄運転後の待機状態においては、係止解除駆動部の作用によって係止部材が非係止位置に保持されて保洗浄槽がロック解除状態になっているので、洗浄槽を洗浄機本体に対して自由に出し入れすることができる、
(b)また、洗浄運転の開始時には、係止部材が係止位置に保持されるように係止解除用駆動手段の動作を規制するとともに、洗浄槽位置センサにより洗浄槽が所定の収納位置にあることが検出され、かつ、係止部材位置センサにより係止部材が係止位置にあることが検出された場合にのみポンプを起動して洗浄運転を開始するので、洗浄運転中、洗浄槽側の被係止部は、洗浄機本体側の係止部材によって確実に係止される、
(c)したがって、洗浄運転中、洗浄槽が洗浄機本体の所定の収納位置にロックされた状態が安定的に保持され、使用者が誤って洗浄槽を強く引っ張った場合にも、洗浄槽が不用意に外部に引き出されてしまうことがない、
というような効果が得られる。
【0007】
しかし、この特許文献1の食器洗浄機の場合、洗浄運転中に洗浄槽を引き出す際には、スイッチ操作により洗浄運転の停止を行った後でないと洗浄槽を引き出すことができないため、面倒である(操作性が悪い)という問題点がある。
【0008】
また、従来の他の食器洗浄機として、洗浄槽が所定の収納位置にある状態での運転中に、洗浄槽が所定の範囲で動かされて、洗浄槽が所定の収納位置にないことを位置検知手段により検知した場合に、ポンプの運転を停止し、ポンプの動作終了より所定時間後に洗浄槽の拘束を解除するようにロック手段を制御する食器洗浄機が提案されている(特許文献2参照))。
【0009】
しかし、この食器洗浄機の場合、ポンプの停止後所定時間経過後でないと洗浄槽が引き出せないため、洗浄運転中に洗浄槽を引き出すことが必要になった場合に、待ち時間が生じるという問題点がある。
【0010】
また、さらに他の食器洗浄機として、洗浄槽が第一の拘束位置から第二の拘束位置に移動したことを位置検知手段が検知してから所定時間後に、ロック手段による拘束を解除するようにした食器洗浄機が提案されている(特許文献3参照)。
【0011】
しかしこの食器洗浄機においても、洗浄槽が第一の拘束位置から第二の拘束位置に移動したことを位置検知手段が検知してから所定時間経過後でないと洗浄槽を引き出すことができないという問題点がある。なお、この食器洗浄機の場合、上記所定時間を短かく設定すると洗浄液が洗浄槽外に漏れ出すことになるため、種々の条件においても確実に洗浄液が洗浄槽外に漏れ出さないように構成する必要があり、部品のバラツキや電源電圧、環境温度などの条件を考慮して上記所定時間を定めておく必要があるため、上記所定時間として、安全をみた長い時間が設定されることになり、洗浄運転中に洗浄槽を引き出すことができるようになるまでの待ち時間が長くなるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−142538号公報
【特許文献2】特許第4692392号公報
【特許文献3】特許第4650335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本願発明は、上記課題を解決するものであり、洗浄運転中に洗浄槽を引き出すことが必要となった場合に、洗浄槽を引き出すことができるようになるまでの時間を従来の食器洗浄機に比べて短くすることが可能で、操作性に優れた食器洗浄機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明にかかる食器洗浄機は、
洗浄すべき食器類が収容される洗浄槽と、食器洗浄用の洗浄液を循環させるポンプと、制御手段と、
前記洗浄槽が出し入れされる前面開口部を有し、前記制御手段から前記ポンプに送出される運転指令により前記ポンプを運転させて洗浄運転を実行する洗浄機本体と、
前記洗浄機本体の前記前面開口部を開閉する扉部と、
前記洗浄槽が洗浄機本体内の所定収納位置まで収納されたときには前記洗浄槽に設けられた食器類の出し入れ用の上面開口部を封止し、前記洗浄槽が前記洗浄機本体から引き出されときには前記洗浄槽の前記上面開口部から離間するように、前記洗浄槽の出し入れに連動して前記上面開口部を開閉する内蓋と、
前記洗浄運転の実行中に前記洗浄機本体内の前記所定収納位置にある前記洗浄槽を引き出そうとしたときに、第1引出し位置までの引き出しは許容するが、前記第1引出し位置を超えて引き出すことができないようにするロック機構と、
前記洗浄槽が前記所定収納位置に収納されているときには収納状態を検出し、前記洗浄槽が前記第1引出し位置に引き出されたときには非収納状態を検出する洗浄槽位置センサと、
前記ポンプの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
を具備し、
前記洗浄槽が前記第1引出し位置にあるときには、前記内蓋が前記上面開口部から離間せず、
前記洗浄運転の実行中に、前記洗浄槽が前記第1引出し位置に引き出されて前記洗浄槽位置センサが非収納状態を検出したときには、前記制御手段が、前記ポンプの運転を停止させる停止指令を送出し、
前記回転速度検出手段が、前記ポンプの前記回転速度が、洗浄液が前記洗浄槽外に漏れ出さない所定の速度以下であることを検出したときには、前記ロック機構によるロックを解除し、前記第1引出し位置を超えて引き出すことができるように構成されていること
を特徴としている。
【0015】
また、本発明の食器洗浄機においては、前記所定の速度が、洗浄液が前記洗浄槽外に漏れ出さない、前記ポンプの回転速度の最大値に設定されていることが好ましい。
【0016】
また、本発明の食器洗浄機においては、前記ロック機構が、前記洗浄槽に配設されたストライクピンと、前記洗浄機本体に配設されたフックとを係合、離脱させることにより、前記洗浄槽を、前記第1引出し位置を超えて引き出すことができないようにするロック状態と、前記洗浄槽を、前記第1引出し位置を超えて引き出すことができるようにするロック解除状態とを切り換えるように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明(請求項1の発明)においては、洗浄槽が第1引出し位置にあるときには、内蓋が上面開口部から離間せず、洗浄運転の実行中に洗浄槽が第1引出し位置に引き出されて、洗浄槽位置センサが、洗浄槽が非収納状態にあることを検出したときには、制御手段が、ポンプの運転を停止させる停止指令を送出し、ポンプの回転速度を検出する回転速度検出手段によって回転速度が、洗浄液が洗浄槽外に漏れ出さない所定の速度以下であることを検出したときに、ロック機構によるロックを解除し、第1引出し位置を超えて引き出すことができるようにしているので、洗浄運転中に洗浄槽を引き出す際に、スイッチ操作により洗浄運転の停止を行うことを必要とせずに、速やかに洗浄槽を引き出すことが可能になり、操作性がよい食器洗浄機を提供することが可能になる。
【0018】
また、所定の速度を、洗浄液が洗浄槽外に漏れ出さないポンプの回転速度に設定しておけば、洗浄液が洗浄槽外に漏れ出すことがないから、洗浄運転中に洗浄槽を引き出す際の待ち時間を短くすることができる。すなわち、洗浄運転中に洗浄槽を引き出す際に、洗浄槽内の洗浄水が開口部から外部に噴出、飛散するおそれがなくなるのに要する時間を適切に、かつ短くして、操作性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の食器洗浄機においては、ポンプの回転速度についての、上述の所定の速度を、洗浄液が洗浄槽外に漏れ出さないポンプの回転速度の最大値に設定しておくことにより、洗浄運転中に洗浄槽を引き出す際の、洗浄液が洗浄槽外に漏れ出すことを防止しつつ洗浄槽を引き出しことができるようになるまでの時間をさらに短くすることが可能になり、より操作性に優れた食器洗浄機を提供することが可能になる。
【0020】
また、ロック機構が、洗浄槽に配設されたストライクピンと、洗浄機本体に配設されたフックとを係合、離脱させることにより、洗浄槽を、第1引出し位置を超えて引き出すことができないようにするロック状態と、洗浄槽を、第1引出し位置を超えて引き出すことができるようにするロック解除状態とを切り換えるように構成した場合、複雑な機構を必要とせずに、洗浄槽のロックとロック解除とを確実に行うことが可能になり、信頼性の高い食器洗浄機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機の全体構成を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機を構成する洗浄槽が引き出し状態にある場合を示す側面断面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機の動作を説明する図であって、洗浄槽が引き出し状態にある場合を示す図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機を構成する洗浄槽が引き出し状態と収納状態との間の中間状態にある場合を示す側面断面図である。
【図5】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機の動作を説明する図であって、洗浄槽が引き出し状態と収納状態の中間状態にある場合を示す図である。
【図6】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機を構成する洗浄槽が収納状態にある場合を示す側面断面図である。
【図7】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機の動作を説明する図であって、洗浄槽が収納状態にある場合を示す図である。
【図8】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機を構成する洗浄槽の収納状態を、一部を省略して示す平面図である。
【図9】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機を構成する洗浄槽の収納状態を、内蓋を除いて示す平面図である。
【図10】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機を構成するクランプ部材の洗浄機本体への取り付け状態を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機を構成するロック機構の平面図である。
【図12】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機を構成するロック機構の側面図であり、(イ)は洗浄槽が収納状態にある場合、(ロ)は洗浄槽が第1引出し位置に引き出された状態にある場合、(ハ)はロック状態が解除された状態にある場合を示す図である。
【図13】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機を構成する洗浄槽位置センサの取り付け状態を示す要部側面断面図である。
【図14】本発明の実施形態にかかる食器洗浄機の動作制御系の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を示して、その特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【0023】
[実施形態1]
図1は本発明の実施形態にかかる食器洗浄機の全体構成を示す概略斜視図、図2は洗浄槽の引き出し状態を示す側面断面図、図3は洗浄槽の引き出し状態を示す動作説明図、図4は洗浄槽の引き出し状態と収納状態との間の中間状態を示す側面断面図、図5は洗浄槽の引き出し状態と収納状態との間の中間状態を示す動作説明図、図6は洗浄槽の収納状態を示す側面断面図、図7は洗浄槽の収納状態を示す動作説明図、図8は洗浄槽の収納状態を一部を省略して示す平面図、図9は洗浄槽の収納状態を内蓋を除いて示す平面図である。
この実施形態の食器洗浄機は、略箱状で、前面側に、洗浄槽2を出し入れするための前面開口部3が形成され洗浄機本体(本体ケーシング)1を備えており、洗浄機本体1の内側の収納空間内には上述の洗浄槽2が、上記前面開口部3を通して略水平方向に出し入れすることができるような態様で収容されている。
そして、この洗浄槽2の上面側には、食器類5(図1)や洗浄かご6(図6など)を出し入れするための上面開口部4が設けられている。また、洗浄機本体1の内側の上部には、洗浄槽2の上面開口部4を開閉する内蓋10が略上下方向に昇降可能に保持された状態で配置されている。さらに、洗浄機本体1内には、洗浄運転を実行するために、図示しないが、食器洗浄用の洗浄液を循環させるポンプが設けられている。
【0024】
また、洗浄機本体1の内側には、洗浄槽2を出し入れする際のガイド用の左右一対のレール7が配設され、その左右一対のレール7を介して洗浄槽2が洗浄機本体1の収納空間に対して、矢印Aで示す収納移動方向と、矢印Bで示す引き出し移動方向へスライド移動することができるように構成されている。
【0025】
洗浄槽2は、その前面側に洗浄機本体1の前面開口部3を開閉する扉部9が設けられており、この扉部9には把手8が設けられているとともに、使用者が洗浄運転やその停止を行うための運転/停止スイッチ57などを有する操作パネルが設けられている。そして、使用者が把手8を把持して、洗浄槽2を引き出し移動方向Bへスライド移動させることにより、図1に示すように、洗浄槽2が洗浄機本体1の前方側に引き出されて、食器類5や洗浄かご6を取り出したり収納したりすることが可能になる。また、使用者が、洗浄槽2を収納移動方向Aへスライド移動させることにより、洗浄機本体1内に洗浄槽2を収納して、食器類5を洗浄したり乾燥したりすることができるように構成されている。
【0026】
内蓋10は、洗浄槽2が洗浄機本体1に収納移動されると閉状態となり、洗浄槽が洗浄機本体1から引き出し移動されると開状態となるように開閉動するように構成されており、閉状態においては食器洗浄時などにおいて洗浄水が洗浄槽2から飛散することを抑制、防止し、開状態においては洗浄槽2に食器類5などを出し入れすることができるように構成されている。
【0027】
内蓋10の左右の各側部には、カムフォロアとして機能する前後一対のカムピン37(図3)がそれぞれ外側に向けて突出するように設けられている。また、内蓋10の上部と洗浄機本体1の前端部との間には、内蓋10を洗浄機本体1の前面開口部3側に向けて付勢するコイルスプリングからなる蓋用スプリング38が介装されている。
【0028】
また、洗浄機本体1の内側の上部左右の側端には、図10に示すように、前後一対の保持舌片23が内蓋10の各カムピン37に個別に対応するように洗浄機本体1と一体的に設けられている。そして、各前後一対の保持舌片23間には、クランプ部材26が上下方向(符号Cで示す方向)に移動可能な状態で嵌入されている。
【0029】
各クランプ部材26は、合成樹脂や金属製の成形品からなり、その上部には、内蓋10の前述のカムピン37がそれぞれ嵌入するカム溝22が、また、カム溝22の両端部の外側には各保持舌片23の上縁に当接して位置決め保持される保持片24が形成されている。さらに、クランプ部材26の下部には、洗浄槽2の後述の受け止め面35(図3(イ)など)が当接することで当該クランプ部材26の上下方向Cへの移動を規制するための当接部25が形成されている。
【0030】
前記カム溝22は図3に示すように、中心線Lを中心として左右対称形に略V字状に形成されており、洗浄槽2が洗浄機本体1内に収納されたときにはカムピン37はカム溝22の最下方位置に、洗浄槽2が洗浄機本体1から引き出されたときにはカムピン37はカム溝22の最上方位置にそれぞれ移行する。
【0031】
前記洗浄槽2は、その上面開口部4の外周に沿った各辺に外方に張り出したフランジ部32(図3(イ),図5(イ))が形成され、その内の左右の各フランジ部32からは下方へ向けて突出する状態で受け止め面35(図3(イ),図5(イ))が形成され、各受け止め面35の下縁がクランプ部材26の当接部25に対向している。
【0032】
洗浄機本体1の内側後方の上部左右の位置には、内蓋開閉操作具としての一対の案内レバー11(図3,図5)がそれぞれ配置されている。各案内レバー11は、洗浄機本体1に固定された取付固定部12、揺動支承軸39、プッシュレバー13、および案内ピン14を備えている。そして、プッシュレバー13の基端側は、取付固定部12に設けられた揺動支承軸39を軸心として揺動自在に取り付けられ、また、先端側には上下方向に沿って延びる円筒状の案内ピン14が設けられている。
【0033】
一方、内蓋10の後端部の左右には、洗浄槽2の移動方向と直交する方向に延びる長穴16(図3(イ))が形成されており、各長穴16にプッシュレバー13の先端部の案内ピン14が常時嵌入されている。これにより、案内ピン14が長穴16に沿って摺動する摺動可能範囲内でプッシュレバー13が揺動し得るので、これに応じて内蓋10もプッシュレバー13の揺動可能範囲内で前後方向(図3(ロ)の左右方向)に沿って移動するように構成されている。そして、前述のように、内蓋10の左右にはカムピン37が固定されているので、内蓋10の前後の移動に伴ってカムピン37は、クランプ部材26のカム溝22に沿って摺動する。
【0034】
また、洗浄槽2の後方端の上部左右には、図9に示すように、洗浄槽溝15が案内レバー11に個別に対応して設けられている。この洗浄槽溝15は、例えば図3(ロ)に示すように、嵌合手前側当接部17と奥側当接部18とで囲まれた状態で形成されており、嵌合手前側当接部17は洗浄槽2の側面まで延び、また奥側当接部18は途中で後方側に後退するようにそれぞれ形成されている。そして、各洗浄槽溝15は、プッシュレバー13の揺動によってプッシュレバー13の先端の案内ピン14と係脱するように構成されている。
【0035】
また、洗浄機本体1内の後方箇所には、洗浄槽2を収納移動方向および引き出し移動方向に移動させる際にその移動力を補助するための左右一対のトグル機構27が設けられている。
各トグル機構27は、洗浄槽2の後端部に係合用ピン36が配設される一方、洗浄機本体1の後端部には、略L字状のレバー29が枢支ピン31によって揺動自在に設けられ、このレバー29の枢支ピン31を挟む一端側には上記の係合用ピン36に係合する係合用切欠き28が形成され、他端側は洗浄機本体1に一端が固定されたコイルスプリング30(図3(イ),図5(イ))の他端が取り付けられて構成されている。これにより、レバー29に対するコイルスプリング30の付勢力(回動作用方向)が、図5(イ)に示す設定切換位置Dを境として時計方向と反時計方向とに切り換わるように構成されている。
【0036】
また、この実施形態にかかる食器洗浄機では、洗浄機本体1内の後部側にロック機構40が設けられている。このロック機構40は、洗浄運転の実行中に洗浄機本体1内の所定収納位置にある洗浄槽2を引き出そうとしたときに、第1引出し位置までの引き出しは許容するが、第1引出し位置を超えて引き出すことができないようにする機能と、洗浄運転が行われていない場合や、ポンプ59からの洗浄液の噴出量(送液量)が、洗浄槽2から洗浄液が外部に噴出しないような量である場合には、洗浄槽2を洗浄機本体1内から引き出すことを許容する機能を果たすことができるように構成されている。
【0037】
ロック機構40は、この実施形態の場合、具体的には図11,図12(イ),(ロ),(ハ)に示すように、洗浄槽2の後端部に、被係止部としてストライクピン41を配設するとともに、洗浄機本体1の所定収納位置(この実施形態では、洗浄機本体1の最奥側の位置)に収納された洗浄槽2が第1引出し位置まで引き出されたときに、ストライクピン41を係止する係止部材としてのフック42、このフック42をストライクピン41の係止位置側に向けて付勢する係止用付勢手段としての捩りバネ43、この捩りバネ43の付勢力に抗してフック42をストライクピン41との係止位置から、非係止位置まで、すなわちストライクピン41から離脱した位置まで動作させる係止解除用駆動手段としてのカム44をそれぞれ配設することにより構成されている。また、カム44のカム軸48には、カム44を回転駆動する図示しないカム駆動モータが連結されて構成されている。
【0038】
なお、図12(イ)は、洗浄槽2が洗浄機本体1の最奥側に位置している(所定収納位置にある)場合における、ストライクピン41とフック42と位置関係を示しており、図12(ロ)は、洗浄槽2が上記第1引出し位置まで引き出されたときに、ストライクピン41と、フック42とが係合した状態を示している。
また、図12(ハ)は、フック42がストライクピン41から離脱した非係止位置に保持された状態(すなわち、ロック機構40によるロックが解除され、洗浄槽2の出し入れを自由に行うことが可能な状態)を示している。
【0039】
また、この実施形態の食器洗浄機においては、洗浄槽2が洗浄機本体1の最奥側に押し込まれた、所定収納位置にある場合には、ストライクピン41とフック42の間隔Gが3mm(図12(イ)参照)となり、洗浄槽2がその所定収納位置から3mm引き出されて、フック42がストライクピン41に当接した状態が、洗浄槽2が第1引出し位置まで引き出された状態(図12(ロ)に示す状態)となるように構成されている。
【0040】
以上の説明からも理解されるように、ストライクピン41とフック42とが、図12(イ)に示すような位置関係となる、洗浄槽2が洗浄機本体1の最奥側に押し込まれた位置から、洗浄槽2が第1引出し位置まで引き出された状態となる直前の位置(ストライクピン41とフック42とが、図12(ロ)に示すような位置関係となる直前)までの間の領域が、本願発明における洗浄槽2が所定収納位置にある状態となる。
【0041】
また、フック42は、洗浄機本体1に固定された支軸45によって揺動可能に支持されるとともに、この支軸45に巻回された捩りバネ43によってストライクピン41の係止位置に向けて付勢(図12では時計方向に付勢)されている。さらに、フック42には、ストライクピン41と対向する先端部分に傾斜部46が形成されている。この傾斜部46は、引き出されていた洗浄槽2を所定の位置まで押し込んだときに、ストライクピン41が当接して捩りバネ43による付勢力に抗してフック42を非係止位置まで円滑に移動させるように作用するものである。なお、洗浄槽3が第1引出し位置より奥側(所定収納位置)まで戻った場合には、再びストライクピン41がフック42により係止された状態になる。
【0042】
また、図11に示すように、フック42の遮光部材47に近接して、フック42が係止位置にあるか、あるいは非係止位置にあるかを検出する係止部材位置センサとしてのフック位置センサ50が配設されている。フック位置センサ50は、例えば投光部50aと受光部50bとが対向配置されたフォトカプラからなる。
また、上記フック42の傾斜部46と支軸45を挟んで反対側の位置には、遮光部材47が突設されている。この実施形態の構成においては、図12(イ)に示すように、フック42の遮光部材47が投光部50aと受光部50bとの間に介在するときには、受光部50bの出力がオフとなり、フック42が係止位置にあることが検出される。また、図12(ハ)に示すように、遮光部材47が投光部50aと受光部50bとの間から離脱したときには、受光部50bの出力がオンとなり、フック42が非係止位置にあることが検出される。
【0043】
また、図13(イ),(ロ)に示すように、洗浄槽2の後端部には取付板52が設けられ、この取付板52に洗浄槽位置センサ53が固定されるとともに、この洗浄槽位置センサ53に近接してレバー54が揺動自在に取り付けられている。また、洗浄機本体1のレール7の取付板55にはレバー54に対向する位置にレバー押圧用の突起部56が形成されている。
【0044】
この洗浄槽位置センサ53は、洗浄槽2が所定収納位置にあるか否かを検出するものであって、前述のフック位置センサ50と同様、例えば投光部53aと受光部53bとが対向配置されたフォトカプラからなる。そして、図13(イ)に示すように、レバー54が突起部55から離間していて投光部53aと受光部53bとの間に位置するときには、受光部53bの出力がオフするので、洗浄槽2が所定収納位置から前方に引き出されていること、すなわち、洗浄槽2が第1引き出し部あるいはそれよりも外側の位置まで引き出されていることが検出され、また、図13(ロ)に示すように、レバー54が突起部55に押圧されて投光部53aと受光部53bとの間から離脱したときには、受光部53bの出力がオンするので、洗浄槽2が所定収納位置に収納されたことが検出されるように構成されている。
【0045】
図14はこの実施形態の食器洗浄機の動作制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0046】
制御手段としてのコントローラ58は、例えばマイクロコンピュータからなるもので、所定の制御プログラムをインストールすることにより、運転/停止スイッチ57からの操作信号、および前述のフック位置センサ50と洗浄槽位置センサ53からの検出信号に基づいて洗浄液を循環させるポンプ59、およびカム44を駆動するカム駆動モータ60の動作を制御するように構成されている。この実施形態の食器洗浄機は、さらに、ポンプ59の回転速度を検出する回転速度検出手段59aを備えており、回転速度検出手段59aが、ポンプ59の回転速度として、洗浄液が洗浄槽1の外部に噴出することのない速度を検出した時点で、コントローラ58が、洗浄槽2を洗浄機本体1から引き出すことを許容する信号を送出するように構成されている。
なお、このコントローラ58による制御動作については以下に詳述する。
【0047】
次に、上記構成を備えた食器洗浄機の動作について説明する。
(1)洗浄槽2の収納移動および引き出し移動に伴う内蓋10の開閉動作
洗浄槽2が洗浄機本体1から引き出された状態では、図3(ロ)に示すように、洗浄機本体1の案内ピン14は洗浄槽溝15から離脱しており、また内蓋10は蓋用スプリング38で洗浄機本体1の前方開口側に引っ張られているので、各案内ピン14は内蓋10の長穴16内の外方端側の位置(以下、引き出し操作位置という)にある。このため、内蓋10のカムピン37はクランプ部材26のカム溝22の最上方位置に移行しており、内蓋10は上昇して洗浄槽2の上面開口部4から離脱している。
【0048】
この状態から洗浄槽2を収納移動方向Aへ次第に移動させていくと、洗浄槽2が図4および図5に示す中間位置に到達するまでの範囲では、洗浄槽溝15は案内ピン14に依然として係合しないので、案内ピン14は引き出し操作位置に保持されている。
【0049】
そして、洗浄槽2が図4および図5に示す中間位置に到達すると、図5(ロ)に示すように、洗浄槽2の手前側当接部17が案内ピン14に当接する。洗浄槽2をさらに収納移動方向Aへ移動させると、案内ピン14が洗浄槽2の手前側当接部17によって押圧されるので、案内ピン14は内蓋10の長穴16に沿って内方に向けて摺動するとともに、洗浄槽溝15内に嵌入する。これに伴いプッシュレバー13が図中反時計方向に回動する。このプッシュレバー13の回動によって内蓋10が蓋用スプリング38の引っ張り力に抗して収納移動方向Aへ押し移動される。そのため、内蓋10のカムピン37はクランプ部材26のカム溝22の最上方位置から最下方位置に向けて移行し、その結果、内蓋10が洗浄槽2の上面開口部4に向けて下降する。
【0050】
洗浄槽2を所定収納位置まで移動させると、図7(ロ)に示すように、各案内ピン14は内蓋10の長穴16内の内方端側の位置(以下、収納操作位置という)に移行する。これに伴い、内蓋10のカムピン37はクランプ部材26のカム溝22の最下方位置に移行し、その結果、各クランプ部材26の当接部25が、洗浄槽2の受け止め面35に当接し、クランプ部材26の開閉方向Cへの移動が阻止されるとともに、内蓋10が洗浄槽2側に押し付けられて洗浄槽2の上面開口部4が確実に封止される。
【0051】
一方、洗浄槽2を第1引出し位置からさらに外側に移動させる(引き出し移動方向B(図6参照)へ移動させる)ときは、上記の説明とは逆の動作となる。すなわち、洗浄槽2の手前側当接部17による案内ピン14への押圧作用が解除されるとともに、内蓋10には蓋用スプリング38の引っ張り力が加わるため、案内ピン14は内蓋10の長穴16に沿って収納操作位置から引き出し操作位置に向けて摺動するとともに、内蓋10のカムピン37はクランプ部材26のカム溝22の最下方位置から最上方位置まで移行する。その結果、内蓋10が洗浄槽2の上部開口部から離間して開状態となる。
ただし、洗浄槽2が第1引出し位置にある場合には、内蓋10が洗浄槽2側に押し付けられて洗浄槽2の上面開口部4が確実に封止された状態が保たれるように構成されている。
【0052】
このように、洗浄槽2を収納移動および引き出し移動すると、これに応じて案内レバー11、クランプ部材26のカム溝22、および蓋用スプリング38の相互作用によって内蓋10が連動して内蓋10の開閉操作が行われることになる。
【0053】
(2)洗浄槽2の収納移動および引き出し移動に伴うトグル機構27の動作
洗浄槽2を洗浄機本体1の収納空間に収納した状態では、図6、図7(イ)に示すように、洗浄槽2から後方に向けて突出する係合用ピン36が、レバー29の係合用切欠き28内に嵌入し、コイルスプリング30の付勢力に起因するレバー29の回動力が、洗浄槽2の収納移動方向A側に作用する。
【0054】
その際、前述のように、洗浄槽2の手前側当接部17が案内ピン14に当接してこれを収納移動方向A側に押圧しているので、内蓋10のカムピン37がカム溝22内における最下方位置に位置し、その結果、内蓋10が洗浄槽2の上面開口部4を密閉した状態となる。
【0055】
ポンプ59の回転速度が、所定の速度以下であることが検出され、ロックが解除された状態で、洗浄槽2を、第1引出し位置を超えて、引き出し移動方向B側へ移動させると、レバー29がコイルスプリング30の付勢力に抗して引き出し移動方向B側に回動され、レバー29が図5(イ)に示した設定切換位置Dを越えると、図3(イ)、図4に示すように、コイルスプリング30の付勢力に起因するレバー29の回動力が、引き出し移動方向B側に作用するように切り換わる。これにより、コイルスプリング30の付勢力によって、洗浄槽2が引き出し移動方向B側に押し出され、その後、係合用ピン36が係合用切欠き28から外れるとともに、前述のように内蓋10の上昇による洗浄槽2の上面開口部4の閉鎖が解除されるので、洗浄槽2を洗浄機本体1から引き出すことができるようになる。
【0056】
この引き出し状態から逆に洗浄槽2を収納移動方向A側へ押し込むと、洗浄槽2から突出する係合用ピン36がレバー29の係合用切欠き28内に嵌入してこれを押圧するので、引き出し時とは逆に、レバー29をコイルスプリング30の付勢力に抗して収納移動方向A側に回動させる。そして、レバー29が設定切換位置Dを越えると、レバー29の回動力が収納移動方向A側に作用するように切り換わるので、コイルスプリング30の付勢力によって洗浄槽2が収納移動方向A側に引き込まれる。
【0057】
このように、洗浄槽2の収納移動および引き出し移動に伴って、トグル機構27のレバー29に対するコイルスプリング30の付勢力(回動作用方向)が、設定切換位置Dを境として時計方向と反時計方向とに切り換わるので、洗浄槽2の収納移動および引き出し移動を小さな操作力でもって行うことが可能になる。
【0058】
(3)食器洗浄機の運転/停止などに伴うコントローラ58による制御動作
本発明においては、洗浄運転中に洗浄槽2を引き出すことが必要となった場合に、洗浄槽2を引き出すことが可能になるまでの時間を短くして、操作性を向上させるようにしている。ここでは、本発明の特徴的な部分を含めて、この実施形態にかかる食器洗浄機の運転/停止などに伴う、コントローラによる制御動作について説明する。
【0059】
洗浄運転開始前や洗浄運転後の待機状態においては、コントローラ58はカム駆動モータ60を駆動してカム44を回動させ、フック42を洗浄槽2のストライクピン41から離脱した非係止位置に保持する(図12(ハ)の状態)。すなわち、待機状態では洗浄槽2はロック機構40によるロックが解除されているので、洗浄槽2の出し入れを自由に行うことが可能で、食器の出し入れも自由に行うことができる。
【0060】
コントローラ58は、運転/停止スイッチ57が操作されて洗浄運転が指令されたときには、まず洗浄槽位置センサ53の検出出力がオンになっているか否かを判定する。洗浄槽位置センサ53がオンになっていれば、洗浄槽2が所定収納位置に収納されたと見なされるので、カム駆動モータ60を起動する。これにより、カム44が回動されてフック42が係止位置まで移動するので、フック42によって洗浄槽2のストライクピン41が係止される(図12(イ)の状態)。その際、コントローラ58は、フック位置センサ50がオフになっているか否かを判定する。フック位置センサ50がオフになっておれば、フック42によって洗浄槽2のストライクピン41が確実に係止されたと見なされるので、このときに初めてコントローラ58はポンプ59を起動する。これにより、洗浄運転が開始され、ポンプ59で加圧された洗浄水が食器類5に吹き付けられて洗浄が実施される。
【0061】
そして、この洗浄運転中は、捩りバネ43の作用によってフック42がストライクピン41を確実に係止しているので、洗浄槽2が所定収納位置にロックされた状態が安定的に保持される。したがって、使用者が不用意に洗浄槽2を強く引っ張った場合にも、洗浄槽2が外部に引き出されてしまうという不具合の発生を確実に防止することができる。
【0062】
そして、この洗浄運転中において、洗浄を停止して、洗浄槽2を引き出す必要が生じた場合、洗浄槽2を洗浄機本体1から引き出す操作を行う。これにより、洗浄機2が図6の矢印Bの方向に移動する。
このとき、洗浄槽2の後端部に配設されたストライクピン41と、洗浄機本体1に配設されたフック42が係合することにより、洗浄槽2は第1引出し位置に保持されるとともに、内蓋10が洗浄槽2側に押し付けられて洗浄槽2の上面開口部4が封止された状態が保持される。
【0063】
そして、洗浄槽2が第1引出し位置に位置すると、洗浄槽位置センサ53が、洗浄槽2が第1引出し位置に位置することを検出する(すなわち、洗浄槽2が非収納状態にあると検出する)と、コントローラ(制御手段)58は、ポンプ59の運転を停止させる停止指令を送出する(図12(ロ),14参照)。
そして、回転速度検出手段59aが、ポンプ59の回転速度が、洗浄液が洗浄槽2の外部に噴出することのない速度になったことを検出した時点で、コントローラ58が、カム駆動モータ60を駆動してカム44を作動させ、フック42を捩りバネ43の付勢力に抗して回動させ、ストライクピン41から離脱した非係止位置まで移動させる(図12(ハ)参照)。これにより、ロック機構40による洗浄槽2に対するロックが解除され、洗浄槽2は出し入れを自由に行うことができるようになる。
【0064】
また、所定の洗浄時間が経過し、洗浄運転が終了して待機状態に移行する場合、コントローラ58は、これに応じて先ずポンプ59を停止した後、カム駆動モータ60を駆動してカム44を作動させ、フック42を捩りバネ43の付勢力に抗して回動させてストライクピン41から離脱した非係止位置まで移動させる。これにより、洗浄槽2はロック機構40によるロックが再び解除されるので、洗浄槽2の出し入れを自由に行うことができる。
【0065】
なお、ストライクピン41がフック42で係止され、洗浄槽2がロックされている状態では、フック42は捩りバネ43によって係止位置に付勢されているだけでカム44による拘束はない。したがって、停電時や万一の故障などでカム駆動モータ60が動作しない場合でも、フック42に対して外力を加えることによりストライクピン41から離脱させることにより洗浄槽2のロック解除を行うことができる。
【0066】
そして、洗浄槽2のロック解除後に洗浄槽2を引き出して食器類を取り出した後は、停電からの復電や故障が未修理のままでも、洗浄槽2を洗浄機本体1の所定収納位置まで移動させようとすると、ストライクピン41がフック42の先端の傾斜部46に当接して押圧するので、フック42が捩りバネ43の付勢力に抗して非係止位置まで揺動し、洗浄槽が収納位置に収納されると再びストライクピン41がフック42に係止された状態になる。このため、洗浄槽2を所定収納位置まで押し込むことができる。
【0067】
したがって、洗浄槽2が引き出された状態のままで、引き出した洗浄槽2が邪魔になったり、洗浄槽2が引き出されたままの見苦しい状態のまま放置せざるを得なくなるというような事態を回避することが可能になり、かつ、洗浄槽2を収納する際に、ストライクピン(被係止部)41とフック(係止部材)とが当接しても無理な応力が発生しないため、ロック機構40の破損、変形などの故障の発生を確実に防止することができる。
【0068】
なお、上記実施形態にかかる食器洗浄機では、ロック機構40を、十分な信頼性が得られるように、洗浄槽2に設けたストライクピン41と、洗浄機本体1に設けたフック42などからなる構成としているが、ロック機構の構成はこれに限られるものではなく、例えば、洗浄機本体に設けた、ソレノイドにより動作するプランジャーを、洗浄槽に設けた係合孔を備えた係合部材に係合、離脱させる構成など、他の構成とすることも可能である。
【0069】
また、上記実施形態の食器洗浄機では、トグル機構27を設けた例を示したが、このトグル機構27は必須のものではなく、トグル機構27を省略した構成とすることもできる。
【0070】
また、上記実施形態では、ロック機構40を洗浄機本体1内の後端部側に設けているが、ロック機構40の位置は必ずしも洗浄機本体1内の後端部側に設ける必要はなく、洗浄機本体1の前側開口部3を開閉する扉部9以外の領域であれば、任意の箇所に配設することが可能である。
【0071】
本発明は、さらにその他の点においても上記実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 洗浄機本体(本体ケーシング)
2 洗浄槽
3 前面開口部
4 上面開口部
9 扉部
10 内蓋
40 ロック機構
41 ストライクピン(被係止部)
42 フック(係止部材)
43 捩りバネ(係止用付勢手段)
44 カム(係止解除用駆動手段)
46 傾斜部
50 フック位置センサ(係止部材位置センサ)
53 洗浄槽位置センサ
57 運転/停止スイッチ
58 コントローラ(制御手段)
59 ポンプ
59a 回転速度検出手段
60 カム駆動モータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄すべき食器類が収容される洗浄槽と、食器洗浄用の洗浄液を循環させるポンプと、制御手段と、
前記洗浄槽が出し入れされる前面開口部を有し、前記制御手段から前記ポンプに送出される運転指令により前記ポンプを運転させて洗浄運転を実行する洗浄機本体と、
前記洗浄機本体の前記前面開口部を開閉する扉部と、
前記洗浄槽が洗浄機本体内の所定収納位置まで収納されたときには前記洗浄槽に設けられた食器類の出し入れ用の上面開口部を封止し、前記洗浄槽が前記洗浄機本体から引き出されときには前記洗浄槽の前記上面開口部から離間するように、前記洗浄槽の出し入れに連動して前記上面開口部を開閉する内蓋と、
前記洗浄運転の実行中に前記洗浄機本体内の前記所定収納位置にある前記洗浄槽を引き出そうとしたときに、第1引出し位置までの引き出しは許容するが、前記第1引出し位置を超えて引き出すことができないようにするロック機構と、
前記洗浄槽が前記所定収納位置に収納されているときには収納状態を検出し、前記洗浄槽が前記第1引出し位置に引き出されたときには非収納状態を検出する洗浄槽位置センサと、
前記ポンプの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
を具備し、
前記洗浄槽が前記第1引出し位置にあるときには、前記内蓋が前記上面開口部から離間せず、
前記洗浄運転の実行中に、前記洗浄槽が前記第1引出し位置に引き出されて前記洗浄槽位置センサが非収納状態を検出したときには、前記制御手段が、前記ポンプの運転を停止させる停止指令を送出し、
前記回転速度検出手段が、前記ポンプの前記回転速度が、洗浄液が前記洗浄槽外に漏れ出さない所定の速度以下であることを検出したときには、前記ロック機構によるロックを解除し、前記第1引出し位置を超えて引き出すことができるように構成されていること
を特徴とする食器洗浄機。
【請求項2】
前記所定の速度が、洗浄液が前記洗浄槽外に漏れ出さない、前記ポンプの回転速度の最大値に設定されていることを特徴とする請求項1記載の食器洗浄機。
【請求項3】
前記ロック機構が、前記洗浄槽に配設されたストライクピンと、前記洗浄機本体に配設されたフックとを係合、離脱させることにより、前記洗浄槽を、前記第1引出し位置を超えて引き出すことができないようにするロック状態と、前記洗浄槽を、前記第1引出し位置を超えて引き出すことができるようにするロック解除状態とを切り換えるように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の食器洗浄機。
【請求項1】
洗浄すべき食器類が収容される洗浄槽と、食器洗浄用の洗浄液を循環させるポンプと、制御手段と、
前記洗浄槽が出し入れされる前面開口部を有し、前記制御手段から前記ポンプに送出される運転指令により前記ポンプを運転させて洗浄運転を実行する洗浄機本体と、
前記洗浄機本体の前記前面開口部を開閉する扉部と、
前記洗浄槽が洗浄機本体内の所定収納位置まで収納されたときには前記洗浄槽に設けられた食器類の出し入れ用の上面開口部を封止し、前記洗浄槽が前記洗浄機本体から引き出されときには前記洗浄槽の前記上面開口部から離間するように、前記洗浄槽の出し入れに連動して前記上面開口部を開閉する内蓋と、
前記洗浄運転の実行中に前記洗浄機本体内の前記所定収納位置にある前記洗浄槽を引き出そうとしたときに、第1引出し位置までの引き出しは許容するが、前記第1引出し位置を超えて引き出すことができないようにするロック機構と、
前記洗浄槽が前記所定収納位置に収納されているときには収納状態を検出し、前記洗浄槽が前記第1引出し位置に引き出されたときには非収納状態を検出する洗浄槽位置センサと、
前記ポンプの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
を具備し、
前記洗浄槽が前記第1引出し位置にあるときには、前記内蓋が前記上面開口部から離間せず、
前記洗浄運転の実行中に、前記洗浄槽が前記第1引出し位置に引き出されて前記洗浄槽位置センサが非収納状態を検出したときには、前記制御手段が、前記ポンプの運転を停止させる停止指令を送出し、
前記回転速度検出手段が、前記ポンプの前記回転速度が、洗浄液が前記洗浄槽外に漏れ出さない所定の速度以下であることを検出したときには、前記ロック機構によるロックを解除し、前記第1引出し位置を超えて引き出すことができるように構成されていること
を特徴とする食器洗浄機。
【請求項2】
前記所定の速度が、洗浄液が前記洗浄槽外に漏れ出さない、前記ポンプの回転速度の最大値に設定されていることを特徴とする請求項1記載の食器洗浄機。
【請求項3】
前記ロック機構が、前記洗浄槽に配設されたストライクピンと、前記洗浄機本体に配設されたフックとを係合、離脱させることにより、前記洗浄槽を、前記第1引出し位置を超えて引き出すことができないようにするロック状態と、前記洗浄槽を、前記第1引出し位置を超えて引き出すことができるようにするロック解除状態とを切り換えるように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の食器洗浄機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図4】
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【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−90868(P2013−90868A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236009(P2011−236009)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(301071893)株式会社ハーマン (94)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(301071893)株式会社ハーマン (94)
【Fターム(参考)】
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