説明

食器

【課題】糸底に水や食物滓などを滞留させることなく、清潔かつ迅速に洗浄することができ、かつ糸底低縁部に切り込みのない食器を提供する。
【解決手段】
食器本体の底部に筒状の糸底部を有する食器において、前記糸底部には複数の貫通孔が所定間隙を有して離間して配設されているので、糸底部の内側に滞留する洗浄水または食物滓は複数の貫通孔を通して速やかに流すことができ、従来に比べて、食器洗い乾燥機で食器を洗浄および乾燥させる時間を短縮することができる。また、前記貫通孔は、糸底の底部から食器本体の底部に向かって、裾広がりの形状を有するので、洗浄水は糸底部の内底面から滞留することにより、その内底面から滞留する洗浄水を外表面側に流す流量を増やすことができる。さらに、糸底低縁部に切り込み等が一切無いので、食器としての使用感は従来のものと同じである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は食器の糸底部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、外食産業および一般家庭において普及している食器洗い乾燥機において、茶碗、皿、湯呑などの食器は、本体の内面の洗浄の効率化を図るために下向きにして洗浄されている。その反面、糸底部の内側部に水が滞留してしまい、これを乾燥させるために余分な電気エネルギーを消費するだけでなく、乾燥する時間も余分に消費してしまう問題が生じてしまう。
【0003】
そこで、前記問題を解決するために、糸底1の縁6に切込部2を設けた糸底1と、糸底1により囲まれた茶碗底面部3が、その中心4から糸底1にむけて傾斜をつけて形成された茶碗底面部3と、本体5とから構成される茶碗が開示されている(例えば、特許文献1に記載)。
【特許文献1】実開平6−5569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記特許文献1に記載の茶碗にあっては、糸底部の縁に設けた切込部により水の滞留を防ぐことができるが、切込部の食器本体側が幅狭に形成されており、食物の滓などが滞留してしまう。この食物の滓の滞留により、洗浄水を滞留させてしまい、乾燥エネルギーおよび乾燥時間を消費する問題が発生し、省エネルギーに反する。さらに、この発明に基づく形態では、それを保持した際に低縁部にある切れ込みに指がはまりこむために著しい違和感を催し、楽しく食事をするという本来の目的に反する。
【0005】
この発明は、前記問題を解決するためになされたもので、食器洗い乾燥機において、糸底部に水や食物滓などを滞留させることなく、清潔かつ迅速に洗浄することができて喫緊の課題である省エネルギーに貢献し、かつ使用感が通常のものと全く変わらない食器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明では、食器本体の底部に筒状の糸底部を有する食器において、前記糸底部の周壁に貫通孔を所定間隙を有して離間して配設すると共に、各貫通孔は、糸底部の内底面に位置する開口辺を最大開口辺とし、しかも、糸底部の内底面から食器本体の外壁面に向かって裾広がりの形状を有することを特徴とする。
【0007】
(2)本発明では、前記(1)において、前記各貫通孔は、その断面が略三角形、半円形、または略五角形のいずれかの形状を有することを特徴とする。
【0008】
(3)本発明では、前記(1)または(2)において、前記各貫通孔の開孔面積が、糸底部の内側面から糸底部の外側面に向かって徐々に増大していることを特徴とする。
【0009】
(4)本発明では、前記(1)〜(3)において、前記糸底の内底面が疎水面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
(1)請求項1に記載の発明によれば、食器本体の底部に筒状の糸底部を有する食器において、前記糸底部の周壁に貫通孔を所定間隙を有して離間して配設すると共に、各貫通孔は、糸底部の内底面に位置する開口辺を最大開口辺とし、しかも、糸底部の内底面から食器本体の外壁面に向かって裾広がりの形状を有しているので、糸底部の内側に滞留する洗浄水または食物滓は複数の貫通孔を通して速やかに流すことができ、従来に比べて、食器洗い乾燥機で食器を洗浄および乾燥させる時間を短縮することができ、省エネルギーに貢献できること大である。
【0011】
(2)特許文献1に公開された食器の構造と異なり、糸底の低縁部は通常の食器と同じ構造なので、使用時に違和感を感じることがない。
【0012】
また、前記各貫通孔は、糸底の底部から食器本体の底部に向かって、裾広がりの形状を有するので、糸底部の内底面から滞留する洗浄水を外表面側に流す流量を増やすことができる。さらに、裾広がりの形状を有するので、拡散させながら糸底部から貫通孔を通して洗浄水を排水することができる。しかも、糸底部の内側に滞留した洗浄水などが、スムーズに貫通孔を伝って、湾曲した食器本体の外表面を通すことができ、そのまま食器本体外に流すことができる。さらに、食物の滓などは、水と一緒に貫通孔を通して流すことができ、糸底部内において残留することもない。
【0013】
(2)請求項2に記載の発明によれば、前記各貫通孔は、その断面が略三角形、半円形、または略五角形のいずれかの形状を有するので、型抜きによりこれらの形状による貫通孔の形成が容易である。また、前記のように裾広がりの形状を有する貫通孔を形成することができる。
【0014】
(3)請求項3に記載の発明によれば、前記各貫通孔の開孔面積が、糸底部の内側面から糸底部の外側面に向かって徐々に増大しているので、糸底部の内側面から糸底部の外側面に流す洗浄水の速度を速めることができる。
【0015】
(4)請求項4に記載の発明によれば、前記糸底の内底面が疎水面を有するので、内底面に滞留する水が疎水面により、貫通孔の通しての水抜きが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本願発明の実施の形態について、図面を参照しながらより具体的に説明する。
【0017】
図1は略三角形の貫通孔を有する食器の全体構成を示す斜視図、図2は本実施形態における糸底部に設けられた貫通孔の構成を示す平面図、図3は本実施形態における食器の一部断面構造を示す断面図、図4は半円形の貫通孔を有する食器の全体構成を示す斜視図、図5は略五角形の貫通孔を有する食器の全体構成を示す斜視図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態における食器10は、例えば、茶碗、丼碗、皿、湯呑などであり、また、これらは陶磁器製、木製、金属製である。そして、これらはその食器本体13の底部に筒状の糸底部11が設けられ、その糸底部11に複数の貫通孔12a〜12c(図1では、略三角形を有する貫通孔12a)が設けられている。
【0019】
貫通孔12a〜12cは、所定間隙を有して複数個配設されている。なお、配設される貫通孔12a〜12c同士の間隙及び貫通孔12a〜12cの数は限定されず、例えば、茶碗などにおいては、120°間隔を有して3個配設してもよい。
【0020】
次に、貫通孔12a〜12cの配設方法について、陶磁器製の食器10を例として説明する。まず、糸底部11と食器本体13とが一体に成型できるような凹部を備えた型枠を準備し、それに柔軟性を有する陶土を載置する。次いで、型枠を回転させながら、上方からプレス本体で、陶土が凹部に入り込むようにプレスする。この後、型枠内の凹部に入り込んだ陶土の部分を取り外し、余分な箇所を取り除くことにより、その陶土の部分が食器10の型に成型される。
【0021】
前記成型された食器10の型は、未だ柔軟状態であるので、型抜き具を用いて、糸底部11に複数個の貫通孔12a〜12cを形成する。型抜き具の形は、略三角形、半円形、または略五角形の形状を有する。これにより、いずれかの形状を有する貫通孔12a〜12cを形成することができる。
【0022】
この後、糸底部11に貫通孔12a〜12cが形成された陶土の型を、表面に艶を出すような液剤を表面に塗布し、天日で乾燥させた後、窯炉内において所定時間を焼く。このようにして、糸底部11に複数個の貫通孔12a〜12cが形成された陶磁器製の食器10を完成することができる。
【0023】
また、前記では糸底部11と食器本体13とが一体に成型される場合を説明したが、糸底部11と食器本体13とを別々に形成することもできる。すなわち、糸底部11に貫通孔12a〜12cを前記型抜き具で型抜きして形成した後、食器本体13に糸底部11を連結して食器10を完成することもできる。
【0024】
そして、前記製法により製造された糸底部11に複数個の貫通孔12a〜12cを設けた食器10を、糸底部11を上にして食器洗い乾燥機の洗浄槽の内部に収納する。ここで、食器洗い乾燥機は、前面が開口した筐体と、その筐体から前方に引き出し自在であって上面が開口した洗浄槽と、同洗浄槽内に設置され食器類を収容する食器籠と、前記洗浄槽内で下方から上方に水を噴射する水噴射手段とを備えたものである。
【0025】
前記、食器洗い乾燥機の洗浄槽の内部において食器10を洗浄すると、糸底部11の内底面14に洗浄水が滞留する。そして、前記糸底部11の内底面14に滞留した洗浄水は、複数個の貫通孔12a〜12cを通して、糸底部11の内底面14側から食器本体13の外表面側に流れ出す。
【0026】
このように、糸底部11には複数の貫通孔12a〜12cが所定間隙を有して離間して配設されているので、糸底部11の内側に滞留する洗浄水または食物滓は複数の貫通孔12a〜12cを通して速やかに流すことができ、従来に比べて、食器洗い乾燥機で食器10を洗浄および乾燥させる時間を短縮することができる。
【0027】
また、貫通孔12aは、図1に示すように、その形状が略三角形である。または、図4及び図5に示すように、半円形の貫通孔12b若しくは略五角形の貫通孔12cを有するものである。これらの形状は、裾広がりの形状であるので、洗浄水は糸底部11の内底面14から滞留するため、その内底面14に滞留する洗浄水を外表面側に流す流量を増やすことができる。また、裾広がりの形状を有するので、拡散させながら糸底部11から貫通孔12a〜12cを通して洗浄水を排水することができる。
【0028】
さらに、図2に示すように、糸底部11を平面視すると、貫通孔12a〜12cの開孔面積が内側部(A側)から外側部(B側)に向かって除々に増大している。このようにして、糸底部11の内側部(A側)から糸底部11の外側部(B側)に流す洗浄水の速度を速めることができる。
【0029】
さらに、図1及び図3に示すように、各貫通孔12a〜12cの内底面14が、糸底の内底面14と面一であるので、糸底部11の内側に滞留した洗浄水などを、スムーズに貫通孔12a〜12cの内底面14を伝って通すことができ、しかも、糸底部11の内側に滞留した洗浄水は、湾曲した食器本体13の外表面を通すことができ、そのまま食器本体13外に流すことができる。
【0030】
また、各貫通孔12a〜12cの内底面14が、糸底部11の内底面14と面一であるので、食物の滓などは、水と一緒に貫通孔12a〜12cを通して流すことができ、糸底部11内において残留することもない。貫通孔12a〜12cより大きな食物滓であっても、その食物滓は水を含み柔軟な状態であるので、貫通孔12a〜12cの大きさと同じ大きさに変形しながら、貫通孔12a〜12cを通して食器本体13の表面側に流れ出す。
【0031】
さらに、糸底部11の内底面14を疎水面とすることで、洗浄水は糸底の内底面14に吸着されずに逃げ道のない貫通孔12a〜12cの方向に流れ、貫通孔12a〜12cを通して、食器本体13の外表面側に流れる。疎水面は、例えば、フッ素コートすることにより形成することができる。このようにして、糸底部11の内底面14に滞留する洗浄水を速やかに食器本体13の外表面側に流すことができる。
【0032】
例えば、湯呑からお茶がこぼれると茶托に溜まり、茶托と湯呑が一体化して、上方に持ち上げると茶托も同時に持ち上がるが、ある高さで茶托が落下して滞留したお茶がテーブルや服にこぼれるといった現象が頻繁に生じるが、本実施形態における貫通孔12a〜12cを配設することにより、この問題が解消される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態における略三角形の貫通孔を有する食器の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本実施形態における糸底部に設けられた貫通孔の構成を示す平面図である。
【図3】本実施形態における食器の一部断面構造を示す断面図である。
【図4】本実施形態における半円形の貫通孔を有する食器の全体構成を示す斜視図である。
【図5】本実施形態における略五角形の貫通孔を有する食器の全体構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
10 食器
11 糸底部
12a〜12c 貫通孔
13 食器本体
14 内底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食器本体の底部に筒状の糸底部を有する食器において、
前記糸底部の周壁に貫通孔を所定間隙を有して離間して配設すると共に、
各貫通孔は、糸底部の内底面に位置する開口辺を最大開口辺とし、しかも、糸底部の内底面から食器本体の外壁面に向かって裾広がりの形状を有することを特徴とする食器。
【請求項2】
前記各貫通孔は、その断面が略三角形、半円形、または略五角形のいずれかの形状を有することを特徴とする請求項1に記載の食器。
【請求項3】
前記各貫通孔の開孔面積が、糸底部の内側面から糸底部の外側面に向かって徐々に増大していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の食器。
【請求項4】
前記糸底の内底面が疎水面を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の食器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−261577(P2009−261577A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113996(P2008−113996)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(508126572)有限会社科学技術ソフト開発 (3)
【Fターム(参考)】