説明

食料及びエネルギーのためのロボット利用海洋養殖の方法及び装置

ロボット利用海洋養殖場は、太陽光露出のための第1の浮上位置及び栄養素収集のための第2の沈水位置に支持格子を位置決めするための沈水可能な牽引システムを有する、海草支持格子を含む。この牽引システムは、航行及び横方向張力維持のための、格子の前部に連結される牽引ボートを組み込む。反応ボートが格子の後部周囲に連結される。収穫ステーションが、航行中にある位置でこの養殖場と出会うように配置される。基地ステーションは、養殖場の動作のために相互支持及び情報交換を与えるために養殖場と通信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は一般にバイオマス栽培の分野に関し、より詳しくは、自動化された位置及び深さの制御を有する移動可能な支持システム上での海洋植物の栽培のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界は比較的急に石油を使い果たしている。米国では、新規な石油資源の発見、及び生産速度は何年も前に頂点に達した。米国での状況とおおよそ平行して、発見の頂点に数十年遅れて、近い将来世界の生産の頂点になると予想されている。この後、油井にますます入念な「促進措置(encouragement)」が与えられるとしても、油井の生産はだんだん少なくなるので下り坂の長い期間が続くであろう。ある人達は生産はここ10年でピークに達するであろうと言い、他の人達は頂点に達する前にもう2〜3年しかないと言う。石油の不足を価格及び生産量の両方で妥当に置き換え得る代替エネルギー源は明らかでない。この問題点は極めて大きい。現在世界は約1.3×1013ワットの割合でエネルギーを消費しており、これは地球上の全ての人当たり連続的に約2kWになる。米国では一人当たりの消費量は10kWに近い。石油159リットル(1バレル)当たり100ドルで、エネルギーの原料コストは(電気ではなく、熱の形態で)キロワット時当たり約6セントになる。3.79リットル(1ガロン)当たり3.50ドルのガソリンで、このコストは熱kWh当たりほとんど10セントになる。文明によって使用されるエネルギーの最大の割合は、年間数兆ドルのドル価値で石油によってもたらされる。石油生産は、過去1世紀にわたり成長してきた方式の鏡像として、おおよそ次の世紀にわたり減少することが予想される。温室ガスの極めて大きな問題点に対処することがない場合でさえ、国家及び世界は急速に消費されている石油資源を置き換えるための代替エネルギー源を用意する必要がある。
太陽エネルギーは、たとえ拡散しているとしても、地球上に豊富に降り注いでいる。連続的に地球表面に到達する太陽光のパワーは約1017ワットであり、全ての人類によって使用されるパワーの割合のほとんど10,000倍である。多分最も重要なことであるが、この出力は、(何れにせよ太陽エネルギーは天然に地球上に降り注ぐのであるから)地球の熱バランスも、又は(太陽エネルギーを使用することは大気の吸収又は放出特性を変化させるガスの正味の放出を本質的に伴わないので)大気中のガスのバランスも撹乱させない方式で収集し、使用することができる。
【0003】
太陽エネルギーの基本的な問題点はそれが極めて拡散していることであり、それはピーク輝度で約1000W/m、地球表面上の任意の代表的な地点で年間を通して平均して約160W/mしか供給しない。このことは、各1平方メートル当たりの太陽光収集器は、100%の効率で変換されたとしても、1年当たりエネルギー値において、(100ドル/159リットル(1バレル)での石油と熱等価である)kWh当たり6セントで約86ドルしか発生させないことを意味する。太陽パワーを電力に変換する効率は、現在約30%より下の範囲にあり、その結果各1平方メートル当たりの太陽熱収集器は(電力は一般に熱エネルギー価格の数倍で売られているが)1年当たり1平方メートル当たりの総計経済的収益で多分25ドルを発生させる。伝統的な経済法則は、投下資本は3年間の総計売上高以下に、望ましくはそれより少なくすべきであるということなので、エネルギーのこの価格は、実行可能であるどのような「ハイテク(high tech)」解決策に対しても低すぎる。現在のところ、例えば太陽電池アレイは、年間にそれらが発生させることができる電力の価値の何倍もの資本コストを有する。例えば、ピークワット当たり3ドルの代表的な太陽電池アレイのコストで、1年当たり1400時間のピーク等価時間で動作すると、電力がkWh当たり10セントで売られると仮定した場合、このアレイの資本コスト回収の時間は22年である。石油に置き換わり、世界経済に激変を引き起こさないように提示されるどのような基本的なエネルギー源も、熱エネルギーのkWh当たり6セント又は電気エネルギーのkWh当たり10〜15セントに近い又はそれより下の価格を有する必要がある。
【0004】
1970年代初頭、この全体的な問題点に対する一解決策がU.S. Naval Ocean Systems CenterのHoward A.Wilcox博士によって示唆された。(1994年に死去したWilcox博士は、本願の発明者の父であった。)この解決策は、世界の人々のために比較的安価なエネルギー(及び食料)を供給するために海洋養殖を使用することであった。カリフォルニア工科大学(Caltech)のWheeler North教授と一緒に作業し、米国海軍、米国国立科学財団(National Science Foundation)、米国ガス協会(American Gas Association)及びその他からの資金助成により、彼は急成長の海草(特にマクロシスティスピリフェラ(Macrocystis Pyrifera)、「カルフォルニアジャイアントケルプ(California Giant Kelp)」)が1%を超える入射太陽光を有用な蓄積された化学エネルギーに変換できることを示した小さな試験養殖場を配備した。彼は、深海からの栄養素を使用することを心に描いていた。表層水は栄養素が非常に少ないので海洋のほとんどは光合成「砂漠(desert)」であるが、サルガッソー海等のより深い層からの湧昇が自然である場所では豊富な光合成作用が存在する。Wilcox博士は、巨大な「網(net)」からそれぞれが構成される、代表的には404.7km(100,000エーカー)の大きな養殖場を提案しており、この巨大な「網(net)」は、上記植物の全てを付着させる数メートルの間隔をあけた格子を有していた。Wilcox博士は、この養殖場が底にアンカー留めされ、潮流、波、及び嵐の力に耐えなければならない場合は、この基板のコストは高価になりすぎることを実証した。その代わりに彼は、自由に浮遊し、それらを海洋内の大きな渦パターン内を回って循環して維持するための細密な制御を与える推進システムを使用した養殖場を心に描いていた。
【0005】
Wilcox博士はそのような養殖場は、十分大きく作られる場合は経済的であり得ることを示したが、彼は、石油輸出国機構(Organization of Petroleum Exporting Countries)(OPEC)の石油生産者が、エネルギーの価格の全体的制御を介して、何らかの新規な代替エネルギー源を組織的に市場から駆逐することができ、且つ実際に駆逐したという基本的な問題点が残っていることを警告した(「Hothouse Earth」、Wilcox,Howard A.,Praeger 1975年参照)。その時点での幾つかの国での159リットル(1バレル)の石油の生産コストは約0.25ドルであり、それは20ドル又はそれ以上で売られていたが、OPEC国(特にサウジアラビア)は、エネルギーの代替資源へのどのような投資も組織的に弱体化させる、又は全滅させることができるように、エネルギーの価格を操作することができた。Wilcox博士は、芽生えたばかりのどのような代替エネルギー資源であろうが、それらが生き延びるべき場合は政府布告によって保護する必要があることを記した。海洋養殖の特別な利点は、海洋の表面領域が「自由(free)」であること、上記植物を育てるのに要求される必要な栄養素は太陽に照らされる表層水の下のたった数百メートルのところにあること、この発生したバイオマスは既存の食料及びエネルギー分配ネットワークの両方内へのほとんど理想的な供給原料になること、及びこれらの植物の生長は結果として温室ガスの正味の生産又は熱汚染に全くならないことである。乾燥ケルプは家畜に直接餌として与えることができ、現在石油より高く売られている供給原料と置き換えることができるので、食料としてこのバイオマスを使用することは魅力的である。ケルプは、たった数週間で堆肥化して極めて高効率で直接天然ガスにすることができ、結果として得られる天然ガスは分配配管網内に注入することができ、又はガソリン、ジェット燃料、若しくは他の共通の石油化学商品に容易に変換することができる。
【0006】
Wilcox博士によって思い描かれた巨大なケルプ養殖場に伴う主要な問題点は、このシステムの非常に大きな資本コストである。正味の収益を発生させるために、Wilcox博士によって思い描かれたこの養殖場は、極めて大きくする必要がある。これは、任意の大きな湧昇装置の程度の差はあるが固定の最小サイズと、養殖場が走り回らないように維持する大きな「推進器(propulsor)」(ジーゼル又は波動で動力供給されるプロペラ)の設計を規定するスケーリング則とに起因し、上記任意の大きな湧昇装置は栄養素に富んだ水を深部(通常300mの深さ)から持ち上げるものである。Wilcox博士は、この養殖場の全体効率は彼とNorth博士が実証した1%から約2%に増加させることができ、その点で彼が思い描かれたこの大きな養殖場が経済的になると推測した。これらの養殖場に伴う別の主要な問題点は、大量の冷たい深水の湧昇が海洋の表面温度を変化させ、水蒸気又は他のガスが表層水と大気の間で交換する速度を変化させるであろうことである。これらの変化の世界的規模の気候への影響は知られていないが、食料及びエネルギーの世界的規模の生産に対する著しい効果が存在すべきである場合に養殖場の途方もなく大きな面積が必要とされるなら、大きくなる恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、比較的小さな規模で、貯蔵される化学エネルギーに対する実証された1%の太陽光の変換効率でさえ経済的な、地球の気候に予見できない衝撃を与えかねない方式での相当量の深水の海洋表面への湧昇を必要としない、海洋バイオマス生産のためのシステムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、沈水可能な牽引システムを備えた植物支持格子を含むロボット利用海洋養殖場を提供し、この沈水可能な牽引システムは、外洋における上記支持格子の航行のための手段と、上記植物の太陽光露出のための第1の浮上位置及び上記植物による栄養素収集のための第2の沈水位置に上記支持格子を位置決めするための手段とを有する沈水可能な牽引システムとを有している。
【0009】
本願発明の第1の実施形態では、この沈水可能な牽引システムは、上記格子の前部周囲の対向する外延部に連結された2つの牽引ボートを組み込んでおり、これら牽引ボートのそれぞれは、上記格子の航行のため及び上記格子の前部周囲内の横方向張力を維持するための推進システムを組み込んでいる。その上、上記格子の後部周囲の対向する外延部に反応ボートが連結されている。これら反応ボートのそれぞれは、上記格子の後部周囲の横方向張力を維持するため、及び上記牽引ボートと協力して上記格子における長手方向張力を維持するように反応するための推進システムを組み込んでいる。
【0010】
複数の独立に動作する養殖場を収穫するためのシステムは収穫ステーションを組み込んでおり、この収穫ステーションは、航海中に所定の位置でこれら養殖場と会い、上記の養殖場格子が運ぶ上記植物を収穫し補充するように配置されるか、又は自分自身を位置決めする。この収穫ステーションとは別個の、又はこの収穫ステーションの一部としての基地ステーションが上記養殖場と通信して、これら養殖場の最適動作のための相互支持及び情報交換を与える。
【0011】
本願発明のこれら及び他の特徴及び利点は、添付の図面と一緒に考察するとき以下の詳細な説明を参照することによってより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本願発明による沈水可能な養殖場の要素の概略図である。
【図2】海洋層のグラフである。
【図3】養殖場システムの沈水可能な牽引及び反応ボートの第1の実施形態の要素のブロック図である。
【図4】収穫及び支持のためのシステム要素の要素のブロック図である。
【図5】システムの養殖場要素の動作の流れ図である。
【図6】本願発明を実施するシステムと共に使用するための牽引及び反応ボートの第2の実施形態の絵画的な図である。
【図7】本願発明の代替の実施形態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照すると、図1は本願発明による養殖場10を示す。2つの同様なロープ14を有する強力な中立の浮力のロープ12が支持格子を作り出しており、このロープ12は、2つのロープ14の間に広がった(多分より小さな直径であるが、やはり中立の浮力の)追加のロープ16を後ろに引きずっている。代替の実施形態では、この支持格子は、実質的に中立の浮力の格子を形成するために間隔をあけた距離のところでブイによって支持されるワイヤ又はロープを使用して作り出すことができる。海草18は、周期的な間隔(カルフォルニアジャイアントケルプに対してはこれら植物を収穫可能なサイズで収容するために、10メートルの下降海流間隔のロープに沿って約1メートル間隔)で、ロープの網によって作り出される格子に固定される。代替の実施形態では、この支持格子は実質的に中立の浮力の格子を形成するために間隔をあけた距離でブイによって支持されるワイヤ又は他の高強度フィラメントを使用して作り出すことができる。この格子は、沈水可能な牽引システムによって推進される。本願発明の第1の実施形態ではロボット利用の「帆船(sailboat)」である、2台の牽引ボート20及び22が、牽引システムの第1の要素を形成する。2台の反応ボート24及び26が、2台の牽引ボートに対する相対的な位置決めによって、線内に張力を作り出し、張力を維持するための牽引システムの第2の要素を形成する。代替の一実施形態では、単一の牽引ボート及び単一の反応ボートが半剛性の格子と共に使用される。格子の必要な制御及び航行を達成するための沈水可能な牽引及び反応ボートの様々な数及び構成の組み合わせが追加の代替の実施形態で採用される。同様に、養殖場格子全体にわたり分布させた錘及びホースで供給される浮き袋のアレイが浮力の変更を与えることができる。
【0014】
続いてより詳細に説明するように、この牽引ボート及び反応ボートは、この格子を所望の深さのところに位置決めするための制御されたバラスト機能によって沈水可能である。海草は、栄養素及び太陽光を同時に加えなくても効果的に成長することができる。カルフォルニア工科大学のWheeler Northによる実験は、植物を夜に栄養素に富んだ水に浸し、日中に(栄養素の貧弱な水にのみ取り囲まれて)太陽光に露出させることができ、それで両方が同時に入手可能であるかのように同様に成長することを実証した。ほとんどの生物学的有機体のように、海草は栄養素に露出されるときは何時でも栄養素を集め蓄え、従って、エネルギー源が利用可能になったときは何時でも栄養素を代謝させるために作り上げられた少なくとも1つの適度な貯蔵所が存在する。
【0015】
最初の例示的な実施形態については、この牽引ボート及び反応ボートは、相対的な動きにある流体層を使用する「帆船」推進を利用する。これらの層のうちで最も明瞭なものは空気/水界面であり、数千年の間、この空気/水界面における2つの流体の間の何らかの局所的なずれが帆船によって推進のために使用されてきた。しかし、海洋にはその相対的な動きを推進に使用できる異なる層も存在する。図2は、異なる緯度のところのこれらの層の典型的な配置を示す。頂部層202、即ち「混合層(mixed layer)」は、より深い層より栄養素が貧弱で、更により暖かく、より塩分を含んでいない。比重躍層204は混合層に隣接しており、深層206はこの比重躍層の下にある。大気内の局地的な小気候のような追加の局所的な層が存在し、この追加の局所的な層は、使用可能なときには必要な相対的なずれの動きのために利用することができる。ほとんどの場合、これらの層間の境界は、通常数メートルの厚さより小さいほとんど階段状の移行を作り出す熱及び塩分濃度の一方又は双方の勾配によって比較的はっきりと区別されている。
【0016】
図3は、第1の実施形態の牽引ボート及び反応ボートのための基本的な構成を示す。各ボート300は、船体304上を延びて翼として作用する(図示の実施形態については単一の剛体の又は半剛体のアセンブリに一体化された)マスト及び帆302を使用して、海洋表面上の大気の風等の上層をさえぎり、横方向の力(空気力学的「揚力(lift)」であるが、この「翼」が垂直であり、そのために「揚力」が水平面内にあることは除く)を発生させる。水層をさえぎるための別の翼として作用し、異なる横の「揚力」ベクトルを発生させる竜骨306は、船体から、船体が水面のところにある状態では水中に下がり、又は沈水するときはより下の層内に下がる。帆を竜骨に連結するモータ駆動される歯車セット308又はそれぞれに取り付けられる個々の歯車セットが帆と竜骨の間の角度を変更し、それによって、(所望の動きが「風上へ(into the wind)」である場合に帆船が行うような「タッキング(tacking)」を含む)任意の所与の方向への動きを可能にするように、帆及び竜骨からの揚力ベクトルを管理することによって通常の「帆走方式」の航行が可能となる。代替の実施形態では、例えば竜骨が帆のチッピングモーメント(tipping moment)に反応して、通常の帆船での場合より垂直に帆を維持できるように、1つ又は複数の追加の制御面310が設けられる。標準的な方向舵制御器312が方向制御のために設けられる。コンピュータ制御されたサーボ装置313が制御面の動作のために設けられる。
【0017】
沈水可能な動作のために、各ボートは浮力制御システムを有しており、この浮力制御システムは、波力で動力供給される空気圧縮機314、タンク316、及びコンピュータ制御されたバルブ320を有する浮力制御チャンバ318等であり、各ボートが「潜水する」のを可能にし、栄養素を持っている海洋層に到達するのに必要な深さに、又は、嵐若しくは近づいてくる船若しくは他の障害物を回避するのに必要な深さに養殖場全体を沈水させるのを可能にする。
【0018】
各ボートは、ロープ格子へのその取り付けシステム322の一部分として、養殖場囲い線内の張力を感知するためのロードセル(例えばストレインゲージ)324を組み込んでおり、それによって張力をロボット利用帆船の操縦によって管理することができる。受動的張力制御器(例えば、ばね及びショックアブソーバ)325が、(例えば波の作用に起因する)瞬間的な過荷重を防止するために、取り付け及び張力感知システムの一部分として含まれる。格子が引っかかった場合、解放機構がこの格子をボートから解放するのを可能にし、その結果(格子への投下資本よりずっと大きな)ボートの投下資本を救うことができる。
【0019】
各ボートは、エネルギーを生産し貯蔵するための(小さな太陽電池パネル若しくはマストの頂部近くの風力タービン、又は水中の波力駆動される発電機等の)発電機326を組み込んでいる。この発電機は、直接又はエネルギー貯蔵器(例えば電池)328を介して使用され、必要に応じて航行及び制御電子機器を動作させ、また、流体ずれ力が全く使用できないときに牽引される進路を維持するためのモータ330を介した一時的な推進を提供する。例示的な実施形態の航行電子機器には、マスト/帆の頂部上のGPSアンテナ332及び水面下である間の地球の磁場ベクトルの感知のための磁気コンパス(例えば3軸磁束センサ)334が含まれる。制御コンピュータ338内の関連するプログラミングを有する制御電子機器内に、太陽に照らされる時間を予測し、全体的な養殖場制御システムとの通信時間を手配し、予定した収穫予約地点までの経路を計画する等のための時計336が含まれる。この制御コンピュータは更に、バラストタンク制御のためのバルブの開閉、帆、竜骨及び方向舵を制御し、格子上の張力を維持すること、点から点への航行、衝突を防止すること、等を制御する。
【0020】
音響感知、レーダー検出、及び制御センターからの遠隔感知された助言等のうちの1以上の検出システム340が、嵐及び近接する船を検出するために使用される。温度、塩分濃度、及び密度センサ等のうちの1以上の環境測定センサ342が、水面下の層境界を検出するために設けられる。風又は相対的な水の指向性流れのための流れ方向センサ343が、コンピュータによって帆設定のための航行計算のために使用される。
【0021】
音波通信又は一次張力ケーブル内に埋め込まれたワイヤ若しくは光ファイバー等の局所的通信リンク344が、養殖場の角のところの他のロボットボートと通信するために設けられる。衛星電話又は電離層から反射する低周波数ラジオ等の長距離通信リンク346が、1つ又は複数の制御センターと通信するために設けられ、時折命令を受信すること及び状態情報を伝達することの一方又は双方を行う。他の同様な養殖場と通信して衝突及びもつれ合いを防止するために、音波通信若しくはラジオ通信又はそれらの両方等の中間距離通信リンクが設けられる。
【0022】
本願発明のために思い描かれた全体システムが図4に示されており、この全体システムは、制御及び収穫/補給システムに対して集合的に動作する個々の養殖場10を含み、この制御及び収穫/補給システムは、1つ又は複数の通信及び制御ステーション28と、図示の実施形態では大型の漁船団で使用される処理船と類似する1つ又は複数の収穫ステーション30とを含んでいる。この収穫ステーションは、個々の養殖場が所定の時間間隔で集合する集中場所に留まるか、又は集中場所まで移動する。養殖場の所定の進路は、結果的に(1つ又は複数の)収穫ステーションから走り出て行き、(1つ又は複数の)収穫ステーションに戻る回路になることが見込まれている。この回路のための航行計画は、支援の海洋潮流データを含み、航行中の個々の養殖場の制御システムによって再計算されるか、中央制御ステーションから入力されるか、又は再計算され且つ入力されるであろう。ロープ格子に固定された上記植物は、得られた生物学的物質と共に収穫され、処理及び輸送の一方又は双方のために収穫ステーションに移送される。格子上の上記植物の取り付けと本体を危うくしない収穫方法が使用される場合、この養殖場は次の成長サイクルのためにその所定の出航ステーションに戻る。収穫が結果的に格子からの成熟した上記植物の完全な除去になる場合は、この収穫ステーションは、格子へ未成熟の植物の「苗木(seedling)」を取り付けることによって、養殖場を「植え直す(replant)」。次いでこの養殖場は、新たな植物の成長を作り出すためにその航行を開始する。
【0023】
次いで収穫ステーションは、荷おろし港32又は荷おろし港に輸送するために収穫ステーションからバイオマスを荷おろしする特定の輸送船34の何れかまで航行する。次いで発生したバイオマスは、エネルギー供給原料又は食料材料として処理するために利用することができる。
【0024】
図5は、開示された実施形態によって定められたシステムの養殖場要素の動作の流れ図を提供する。各養殖場は、所定の動作帆走パターンに自己位置決めする502。ほとんどの場合この帆走パターンは、それらの航行を容易にするために、自然に起きる潮流から助力を得るための大規模外洋循環パターンに従う。次いで養殖場は、システム全体をわずかに負の浮力にするように各ボートのバラストタンクに水が入ることを可能にすることによって夜間に沈水する504。この養殖場が装備している場合は、分配されたブイ内のバラストタンクも負の浮力にさせられる。養殖場は、推定された栄養素に富んだ層まで境界を突き抜けたことを(例えば、温度、塩分濃度、又は水密度の測定によって)感知するまで潜水する506。養殖場は、養殖場支持構造体に係合された上記植物が栄養素を注入するのを可能にしながら、その境界のすぐ下に留まるように浮力調整しながら夜を過ごす508。沈水中の航行は、マスト及び帆アセンブリが隣接する層内に上昇した状態で、ボート船体、及び主として竜骨を1つの層内に正確に配置するのを可能にする深さ制御によって達成することができる。これらの層によって作り出される相対的な動き及びずれは、格子に張力を掛けるため及び養殖場の全体としての指向性の動きのために、牽引及び反応ボートの位置を維持するための推進力を与えて、前に説明した一時的な推進モータを置き換え又は補う。(その時計及びその概略の緯度の知識に基づいて)ほぼ夜明けに、貯蔵されたエネルギー(例えば圧縮された空気又は蓄電池)を使用して、このボートは上昇するためにバラストタンクから幾らかの水を取り除く510。やはり装備する場合は、分配されたブイは同じ手法によって正の浮力にさせられる。
【0025】
養殖場が水面に近づくとき、(例えば音響感知によって)近づいてくる船等の養殖場を損傷させる可能性のある相容れない海洋システムの可能性を感知し512、相容れない物体が通過するまで安全な深さのところに沈水して留まる514。養殖場の角のところのロボット利用ボート間の音響データの到達の位相を比較することによって、正確な方向の情報を得ることができる。近づいてくる船が一定に向かってくるままである場合は、それは衝突進路上にある。帆又は他の機器を損傷させる可能性のある荒れ狂う嵐が水面に存在するかどうか調査するために、同様な音響感知及び波高感知を使用することができる。同様に、図4に示されたような中央養殖場制御ステーション28は、数日先の予想される嵐について、養殖場が沈水したままであることを理解するように養殖場に警告することができる。近づいてくる船がなく、評価された風が許容できると推定されると、この養殖場はほぼ日の出のときに浮上する516。帆の先端が最初に水面を突き抜け、GPS受信アンテナ、風速及び風向きセンサ、及び通信アンテナを露出させる。測定された風速が音響的に評価された速度より相当に大きく、安全でないレベルにあるときは、このロボットボートは帆全体を風に露出させずに再度沈水することができる。風速及び波高が安全な場合、帆全体を風に露出するようにバラストタンクはより完全に空にすることができる。制御コンピュータは風向きセンサを用いて、帆が水から出てくるときに帆を正しい方向に向けるように歯車駆動部を作動させて518、必要以上の力が帆、竜骨、又は張力線に掛からないことを保証する。ボート上のGPSセンサは、養殖場の正確な位置及び向きを求める520。通信アンテナは情報を養殖場制御センターと交換することを可能とし522、このことは、例えば、養殖場の状態及び位置、記録された水柱センサのデータ、並びに(回線容量が許容する場合)養殖場のマスト先端からの画像の送信と、最新の気象予報、海洋潮流予報、この領域内での大型船の予想される移動、収穫待ち合わせの時間及び位置の更新の受信とを含むが、これらに限定されるわけではない。日中を通してボートは、所望の海洋循環内に留まり、所望の時間に収穫点に到達できるように、(帆と竜骨の間の角度を変更することによって)養殖場を操縦するために風速及び風向を監視する524。このロボットは、回避の沈水を実施すること526ができるように、近づいてくる船を感知するための(音響を含み、多分レーダー受信機も伴う)センサデータも入手する。風速又は波高が危険なレベルまで上昇する場合、この養殖場はやはり沈水する。どのような事象でも、その日の終わりに養殖場は沈水し、この工程が繰り返される。上昇及び下降の予想される速度は約0.1m/秒であり、そのため300メートル沈水し又は上昇するのに約1時間掛かる。所定の航行パターンの終わりに、この養殖場は収穫ステーションと会い、又は収穫ステーションまで移動する528。
【0026】
本明細書で開示されたような一実施形態の例示として、この養殖場全体は、海洋の主要な循環渦内に留まり、収穫点まで航行することができるために、多分0.1m/秒(0.2ノット)で広く行き渡る潮流に対して直角に操縦する必要がある。このシステムに対して、2.0の抗力係数と、1026kg/mの水(海水)の密度と、0.1m/秒(0.2ノット)の代表的な速度が見込まれている。この養殖場がそれぞれの側面がSである長さを有する正方形として近似できると仮定すると、それはSの面積を有する。各植物が10mに広がる場合、P個の植物を有する養殖場に対して、10P=S、即ちS=3.2P1/2メートルになる。従ってこの養殖場は、(例えばこの格子を太陽光が吸収されている間、水面に又は水面近くに浮遊させると)(メートルで)3.2P1/2幅×約1メートル深さになる。前面面積は3.2P1/2であり、従って養殖場に掛かる抗力はF=1/2ρVAC=(0.5)(1026)(0.1)(3.2P1/2)(2)≒32.8P1/2ニュートンによって近似される。
【0027】
外洋上の代表的な風速は約8m/秒(16ノット)である。長さLの翼は、約L/2の有効横断面の空気流を偏向させる。従って海面レベルの1.29kg/mの空気の密度ρで、翼によって発生する力のレベルはF=1/2ρV(L/2)≒20Lの数倍になるであろう。上式でLの単位はメートルでありFの単位はニュートンである。従って、P個の植物を0.2ノットの平均速度で引っ張る場合、32.8P1/2ニュートンかかり、それは高さL≒0.91P1/4の2つの帆を必要とする。結果的に、必要な帆高さは概略で養殖場内の植物数の4乗根で大きくなる。(全ての寸法が均一に拡大し、コストが質量に比例すると仮定すると)マスト及び帆のコストは最大限で高さの3乗で大きくなるので、これは大きな養殖場に有利になる。5mのマスト及び帆を装備する牽引ボートは、(商業的な帆船供給者のデータに基づけば)数千ドルのコストになる可能性があり、1%の効率で太陽光を変換する約930個の植物を有する養殖場を支持して、エネルギー値で年間7,800ドルの(又は食料若しくは家畜の餌として売られる場合は更に多くの)益金を発生させるであろう。10mのマスト及び帆は、10,000ドルを少し超えるコストが掛かり、エネルギー値で年間123,000ドルの益金を発生させる14,600個を超える植物を有する養殖場に対応する可能性がある。
【0028】
この養殖場は潜水及び浮上動作中その前面面積より大きな面積を投影するので、養殖場を0.1m/秒で垂直に移動させるのに必要な単位ニュートンでの浮力は、同じ速度でそれを水平に牽引するのに必要な力より大きいであろう。植物の抗力が圧倒的であり、各植物が垂直の動きの方向に1mの面積を投影すると仮定すると、養殖場全体の面積はPになり、従って抗力は、F=1/2ρVAC=(0.5)(1026)(0.1)(P)(2)≒10.3Pニュートンになる。このことは、(船上に5メートルのマストがある)930個の植物を有する養殖場に対して、浮力に必要な変化を与えるためにボートの4つの角それぞれに±0.24mの容積のバラストタンクを必要とする。バラストタンクのこの容積は植物の数の増加と共に直線的に大きくなるが、ボートのサイズは植物の数と共にかなりゆっくりと大きくなるので、バラストタンクがボートの容積の都合の良い割合を占める最適点が存在する。この最適な数より多くの植物を有する養殖場は、必要な大きさのバラストタンクを収容するために(それらの帆のサイズと比較して)並外れて大きな船体を有するボートを必要とするであろう。
【0029】
図6は、養殖場システムの牽引及び反応ボートのための代替の構成を示す。このボート602は、蓄電池貯蔵システム606によって電気的に駆動される従来型のプロペラ又はジェット駆動推進604を使用して動作する。推進及びシステム全体のために必要なエネルギー貯蔵のために十分な発電能力を提供する太陽電池アレイ608がボートの上部デッキ上に存在する。(段落[0026]で導かれたように)それぞれ1mの有効横断面を有する4つのプロペラを使用して格子角上に32.8P1/2ニュートンの力を発生させるために、各プロペラがV=(32.8/(4×1026))1/21/4≒0.09P1/4の速度のジェットを生じさせることが必要になる。930個の植物を有する養殖場に対して、これは約0.5m/秒のジェット速度を意味する。(100%効率で換算して)各ジェットのこの出力は約62Wである。丁度タグボートの大きなプロペラが適度な出力で巨大な船をゆっくりと移動させるのに十分であるように、より大きなプロペラは所与のレベルの推力を発生させるためにより少ない出力を必要とするであろう。(大体)時間のうちの1/3しか使用できない太陽パワーを使用して、図6に示された構成がこの推力を連続的に発生させなければならないと仮定すると、この太陽電池アレイは、少なくとも200Wのピーク電力出力を有する必要があり、蓄電池は(930個の植物を有する養殖場全体に対して)約2000Whの容量を有する必要があるであろう。現在使用可能な様々なコストの市販の技術の性能範囲に基づくと、200W出力を有する太陽電池アレイは約1〜3mの面積を有し、蓄電池は約20〜100kgの質量を有するであろう。
【0030】
他の代替の実施形態では、帆船又は太陽で動力供給されるプロペラとは対照的に、水面下のプロペラに動力を供給するための風力タービン又は波力発電機を使用する風力又は波力によって動力供給されるボートが、牽引及び反応ボートを提供する。
【0031】
牽引及び反応ボートが植物支持格子と一緒に沈水可能な牽引システムの使用によって、気象及び交通機関の回避が可能になる。しかし、本願発明の代替の実施形態は、ボートからの関連する拡張可能な支持を伴う植物支持格子上の制御された沈水システムを提供する。この実施形態の一例を図7に示す。この牽引ボート702及び反応ボート704のそれぞれは、植物支持格子710に取り付けられた巻き揚げ機706及びケーブル708を使用する。ブイ712は、栄養素に富んだ層まで沈水するために支持格子の所望の浮力を維持するためのバラストタンク714を組み込んでいる。沈水するためにバラストタンクを水浸しにするためのコンピュータ制御されたバルブ716と、浮上するためにバラストタンクから水を追い出すための1つ又は複数のボート上の昇圧源からの圧縮空気ライン718が設けられる。格子上のセンサ720は、バラスト制御のために層組成についてコンピュータ722への通信を可能にする。
【0032】
本願発明を特許法によって要求されるように詳細に説明してきたが、当業者は本明細書で開示された特定の実施形態に対する改変及び置き換えを理解するであろう。そのような改変は、以下の特許請求の範囲で定義される本願発明の範囲及び趣旨内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物支持手段(10)と、
沈水可能な牽引システム(20、22、24、26)であって、
外洋における前記植物支持手段の航行のための手段(302)と、
前記植物支持手段に取り付けられた植物の太陽光露出のための第1の浮上位置、及び前記植物による栄養素収集のための第2の沈水位置に前記植物支持手段を位置決めするための手段(318)と
を有する前記沈水可能な牽引システム(20、22、24、26)と
を備えた、ロボット利用海洋養殖場。
【請求項2】
前記沈水可能な牽引システムが、
前記支持格子(12、14、16)の前部周囲に連結された少なくとも1つの牽引ボート(20、22)であって、前記牽引ボートのそれぞれが、前記格子の航行のため及び前記格子の前記前部周囲における横方向張力を維持するための推進システム(302)を組み込んだ、前記少なくとも1つの牽引ボート(20、22)と、
前記支持格子の後部周囲に連結された少なくとも1つの反応ボート(24、26)であって、前記反応ボートのそれぞれが、前記格子の前記後部周囲における横方向張力を維持するため、及び前記牽引ボートと協力して前記格子における長手方向張力を維持するように反応するための推進システム(302)を組み込んだ、前記少なくとも1つの反応ボート(24、26)と
を備えた、請求項1に記載のロボット利用海洋養殖場。
【請求項3】
前記少なくとも1つの牽引ボート(20、22)が、指向性推力のための空気力学的及び水力学的ずれ力解消用の調整可能な帆(302)及び竜骨(306)を組み込んだ、請求項2に記載のロボット利用海洋養殖場。
【請求項4】
前記少なくとも1つの反応ボート(24、26)が、指向性推力のための空気力学的及び水力学的ずれ力解消用の調整可能な帆(302)及び竜骨(306)を組み込んだ、請求項2に記載のロボット利用海洋養殖場。
【請求項5】
前記少なくとも1つの牽引ボート及び前記少なくとも1つの反応ボートのそれぞれが、他のボートと通信するための手段(344)を組み込んだ、請求項2に記載のロボット利用海洋養殖場。
【請求項6】
前記沈水可能な牽引手段が、前記格子の沈水のためのバラストタンク(318)を含んだ、請求項1に記載のロボット利用海洋養殖場。
【請求項7】
少なくとも1つの植物支持格子(12、14、16)と、
沈水可能な牽引システムであって、
所定の経路で外洋における前記少なくとも1つの支持格子の航行のための手段(20、22、24、26)と、
前記植物の太陽光露出のための第1の浮上位置及び前記植物による栄養素収集のための第2の沈水位置に前記少なくとも1つの支持格子を位置決めする手段(318)と
を有する前記沈水可能な牽引システムと、
前記海草格子と相互作用するための所定の地点に位置決め可能な収穫ステーション(30)と
を備えた、ロボット利用海洋養殖システム。
【請求項8】
前記沈水可能な牽引システムが、
前記格子の前部周囲の対向する外延部に連結された少なくとも2つの牽引ボート(20、22)であって、前記牽引ボートのそれぞれが、前記格子の航行のため及び前記格子の前記前部周囲における横方向張力を維持するための推進システム(302)を組み込んだ、前記少なくとも2つの牽引ボート牽引ボート(20、22)と、
前記格子の後部周囲の対向する外延部に連結された少なくとも2つの反応ボート(24、26)であって、前記反応ボートのそれぞれが、前記格子の前記後部周囲における横方向張力を維持するため、及び前記牽引ボートと協力して前記格子における長手方向張力を維持するように反応するための推進システム(302)を組み込んだ、前記少なくとも2つの反応ボート(24、26)と
を備えた、請求項7に記載のロボット利用海洋養殖システム。
【請求項9】
前記牽引ボートのそれぞれが、指向性推力のための空気力学的及び水力学的ずれ力解消用の調整可能な帆(302)及び竜骨(306)を組み込んだ、請求項8に記載のロボット利用海洋養殖システム。
【請求項10】
前記反応ボートのそれぞれが、指向性推力のための空気力学的及び水力学的ずれ力解消用の調整可能な帆(302)及び竜骨(306)を組み込んだ、請求項8に記載のロボット利用海洋養殖システム。
【請求項11】
植物支持格子と、沈水可能な牽引システムであって、外洋における前記支持格子の航行のための手段と、前記植物の太陽光露出のための第1の浮上位置、及び前記海草による栄養素収集のための第2の沈水位置に前記支持格子を位置決めするための手段とを有する前記沈水可能な牽引システムとを提供するステップと、
前記植物支持格子を所定の動作帆走パターンに位置決めするステップと、
各ボートのバラストタンクに水が入ることを可能にすることによって、栄養素に富んだ層に対する境界を突き抜けるまで前記植物支持格子を夜間に沈水させ、前記養殖場支持構造体に係合した前記植物が前記栄養素を注入するのを可能にするステップと、
ほぼ夜明けに、前記植物支持格子を浮上させるステップと、
水面で前記植物支持格子を航行させて、前記支持格子の前記植物による光合成を可能とするステップと
を含む、海洋養殖するための方法。
【請求項12】
自然に起きる潮流から助力を得て前記植物支持格子及び沈水可能な牽引システムの航海を容易にするように、前記帆走パターンが大規模外洋循環パターンに従う、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
沈水する前記ステップの後に、前記栄養素に富んだ層の境界の下に留まるように浮力を調整するステップを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記沈水可能な牽引システムが、指向性推力のための空気力学的及び水力学的ずれ力解消用の調整可能な帆及び竜骨を有する少なくとも2つの牽引ボートを含み、沈水する前記ステップに、前記牽引ボートの船体の正確な配置、主として、前記竜骨がある層にあり前記帆が隣接する層に立ち上がることを可能にする深さ制御によって沈水する間に航行する前記ステップが続く、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
浮上する前記ステップが更に、
前記養殖場が水面に近づくとき、近づいてくる船等の前記支持格子及び牽引システムを損傷させる可能性のある相容れない海洋システムの可能性を感知するステップと、
前記相容れない海洋システムが通過するまで安全な深さのところに沈水して留まるステップと
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記沈水可能な牽引システムが、それぞれが音響感知を有する複数のロボット利用ボートを組み込み、更に、感知する前記ステップの一部として、前記相容れない海洋システムの正確な方向の情報のために、前記支持格子の角のところの前記ロボット利用ボート間の音響データの到着位相を比較するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
浮上する前記ステップの一部が、
水面を帆の先端で突き通し、風の速さ及び方向のセンサを露出させるステップと、
測定された前記風の速さが安全でないレベルの場合に、前記帆全部を前記風に露出させずに再度沈水するステップと、
前記風の速さが安全である場合、前記帆全体を前記風に全部露出させるステップと、
制御コンピュータを介して前記風の方向センサを利用して前記帆が水から出て来るときに前記帆を正しい方向に向けるように歯車駆動を作動させて、必要以上の力が前記帆、前記竜骨、又は張力ラインに掛からないことを確実にするステップと
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記沈水可能な牽引システムが、前記格子の後部周囲の対向する外延部に連結された少なくとも2つの反応ボートを更に備え、更に、
前記反応ボートを使用して前記格子の前記後部周囲における横方向張力を維持するステップと、
前記牽引ボートと協力して前記格子における長手方向張力を維持するように反応するステップと
を含む、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−511633(P2011−511633A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544976(P2010−544976)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/086873
【国際公開番号】WO2009/097057
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(510208620)
【Fターム(参考)】