説明

食用に適した脂質を含有する組成物

本発明は、食用に適した少なくとも1つの脂質、少なくとも1つの水溶性甘味料、および少なくとも1つの可溶化剤を含み、水溶性甘味料が、少なくとも2gの甘味料が1リットルの水に20℃の温度で溶解する甘味料を意味する組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用に適した少なくとも1つの脂質、少なくとも1つの水溶性甘味料、および少なくとも1つの可溶化剤を含み、水溶性甘味料が、少なくとも2gの甘味料が1リットルの水に20℃の温度で溶解する甘味料を意味する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ω−3に富む油またはCLA(共役リノール酸)などの特別な栄養価を有する食用に適した脂質は、エマルションとして若しくは経口摂取用の純正油として、ソフトゼラチンカプセルにて調製されることが多い。その味を改善するために、しばしば、油溶性のフレーバーがこれらの栄養補助食品に加えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の根本的な課題は、不要な油性感(脂っこさ)若しくは段ボール様の味覚のしない、または、組成物中に含まれる食用に適した純正脂質の油性感若しくは段ボール様の味覚と比較して少なくとも低減された油性感若しくは段ボール様の味覚を有する食用に適した少なくとも1つの脂質を含んでなるさらなる組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、特許請求の範囲の組成物により解決する。したがって、これらの組成物は、本発明の主題または好ましい実施態様である。いずれかの請求項に記載の少なくとも1つの水溶性甘味料と、いずれかの請求項に記載の少なくとも1つの可溶化剤と、場合により、いずれかの請求項に記載の少なくとも1つのフレーバーとの組み合わせの使用であって、いずれかの請求項に記載の食用に適した少なくとも1つの脂質の油性感をマスキングするための使用は、本発明のさらなる主題である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明によると、トリグリセリドは、1分子のグリセロールと3分子の脂肪酸とのエステルである。この3分子の脂肪酸は、同じであってもよく、異なっていてもよい。トリグリセリドは、純粋な組成物であることよりもいくつかの分子の混合物であることが多い。
【0006】
本発明の脂肪酸は、いかなる脂肪酸であってもよい。本発明の一実施態様において、脂肪酸は10〜30個の炭素原子を有する脂肪酸を意味する。
【0007】
ω−n脂肪酸は少なくとも1つの二重結合を有する脂肪酸である。脂肪酸のメチル基の炭素原子が炭素原子番号1である場合、二重結合は、炭素原子番号nとn+1の間にある。好ましいω−n脂肪酸は、5または6個の二重結合を有する。本発明の一実施態様において、ω−n脂肪酸は、(all−Z)−5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)である。ω−n脂肪酸は、魚油から単離することができる。
【0008】
CLAは共役リノール酸である。CLAは特定の異性体を含み得る。CLAの2つの最も豊富な異性体は、cis−9,trans11−オクタデカンジエン酸とtrans−10,cis12−オクタデカンジエン酸である。CLAは、米国特許第6015833号に記載されるようにして製造することができる。
【0009】
本発明の可溶化剤は、親油性物質における水溶性物質の溶解性を高める任意の可溶化剤である。本発明の一実施態様において、本発明の可溶化剤は、プロピレングリコール、ポリソルベート(E432またはE436)、レシチンおよび食品乳化剤(例えば糖エステル、ポリグリセロールエステル、モノジグリセリドおよびモノジグリセリドのエステル)からなる群から選択される。本発明の一実施態様において、本発明の可溶化剤はプロピレングリコールである。
【0010】
食用に適した脂質への水溶性甘味料の添加は、そのような脂質の直接経口摂取に対する受容を改善する。甘味料は、脂っこさを覆い隠し、油性感を防止する。甘味料は、別に添加するフレーバーと相乗的に働く。特に、油を摂取した後は口の中に油性被膜が存在し、これは多くの消費者にとって不快な味覚である。
【0011】
甘味料とフレーバーの組み合わせにより、食用に適した脂質を最も濃縮した形態(純正脂質)で摂取することができる。費用がかかり、一人前の分量が増すだけであるソフトゼラチンカプセル、エマルションまたはシロップなどの特別な製剤は必要としない。
【0012】
最新技術の製剤は、油溶性フレーバーを含む純正脂質である。フルーツ様のフレーバーとの組み合わせにより人は甘味を期待するため、これらの製剤はバランスのとれた組成を有していない。特に子供は、バランスのよい甘味組成を持たない風味付けされた油を受け入れない。
【0013】
プロピレングリコールの使用は、すでに、油への酸化防止剤の可溶化のための、または、水溶性マトリックスへの油溶性フレーバーの可溶化のための最新技術である。驚くべきことに、プロピレングリコールが、水溶性甘味料を食用に適した脂質に溶解させることができ、かつ、このような脂質系に強い甘味(味蕾に対する脂質の乏しい接触のみ)をもたらすことがわかった。驚くべきことに、この甘味が、経口摂取における純正脂質の脂っこい知覚を覆い隠すことができることがわかった。脂質中の水溶性化合物の結晶化または分離を回避することもできる。
【0014】
本発明の組成物は、例えば、スプーンを使って直接的に摂取する、またはヨーグルト/シリアルなどの食品に混合される(瓶入りの)液体香味脂質などの栄養補助食品において使用することができる。他の用途は、咀嚼可能なカプセルおよび、例えばシロップやエマルションなどの調製栄養剤である。
【0015】
本発明の組成物は、味覚をマスキングする必要のある全ての種類の調製食品および飲料製品に応用することもできる。
【0016】
本発明の一実施態様において、食用に適した脂質は、魚油、藻類油または植物油などのω−3脂肪酸を含有する脂質、ω−3/6/9脂肪酸含有脂質、共役リノール酸に富む脂質、ステロールおよびステロールエステル、カロテノイドおよび他の脂溶性ビタミン、例えばビタミンA、D、E、Kおよびリン脂質から選択される。
【0017】
本発明の一実施態様において、フレーバーは、フルーツフレーバー、バニラ、チョコレート、コーヒーなどの甘味を伴うフレーバー、または菓子/飲料フレーバーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0018】
本発明の一実施態様において、甘味料は、スクラロース(E955)、アスパルテーム(E951)、アセスルファム K(E950)、ステビア、タウマチン(E957)、ネオヘスペリジン DC(E959)、サッカリン(E954)およびチクロ(E952)などの任意の水溶性甘味料である。長時間甘味をもたらすスクラロース、ステビアおよびタウマチンが好ましい甘味料である。
【0019】
本発明の一実施態様において、可溶化剤は、油溶性であり、かつ水溶性成分を溶解することができる任意の可溶化剤であり、好ましい可溶化剤はプロピレングリコールである。他の可溶化剤はポリソルベート(E432〜E436)、レシチンおよび他の食品乳化剤である。
【0020】
本発明の組成物は、さらに、食品用酸化防止剤または食品用着色料を含むことができる。これらの添加剤を、貯蔵期間を改善し(酸化防止剤)、消費者受けを改善する(オレンジジュースと同じ色に見せるためのオレンジ風味油中のカロテノイド)ために使用することができる。
【0021】
本発明の一実施態様において、本発明の組成物は下記の組成を有する(単位:重量%):0.01%のスクラロース、0.09%のプロピレングリコール、0.25%の油溶性オレンジフレーバー、99.65%のCLA−トリグリセリド。
【0022】
本発明の一実施態様において、本発明の組成物は下記の組成を有する(単位:重量%):0.001〜0.5%の甘味料(例えばスクラロース)、0.01〜2%の可溶化剤(例えばプロピレングリコール)、0.01〜2%のフレーバーおよび95.5〜99.97%の脂質。
【0023】
本発明の組成物は、以下の方法に従って製造することができる。甘味料をプロピレングリコールに、好ましくは40〜80℃で溶解させる。この溶解物を大気温度まで冷却する。フレーバーと甘味料を混合し、この混合物を大気温度で油に溶解させる。あるいは、温めたプロピレングリコールの甘味料溶液を、直接油と混合することもできる。
【実施例】
【0024】
試験処方(量は重量%)および得られた結果:
【表1】

【0025】
コントロールは、純正Tonalin(登録商標)TG 80であった。
使用したフレーバー:Saftorange Typ 08368AV(ドイツのCurt Georgi社から入手可能)
スクラロースは、Tate & Lyle社(イギリス)から入手した。
Tonalin(登録商標)TG 80は、Cognis GmbH(ドイツ、モンハイム)から入手した。
Tonalin(登録商標)TG 80は、(存在する全ての脂肪酸部分の)約80%(ガスクロマトグラフィーにより測定した面積百分率)が共役リノール酸部分からなり;この共役リノール酸は、cis−9,trans11−オクタデカンジエン酸およびtrans−10,cis12−オクタデカンジエン酸の1:1の混合物である。
【0026】
7日間貯蔵した後に官能評価を行った。
スコア:
0=無味
1=有意な味覚認知
2=強く味覚認知
3=非常に強い味
【0027】
甘味料溶液を含む全てのサンプルで、油性感、段ボール様の味覚および酸敗臭の著しい減少がみられた。0.005重量%の投与量のスクラロースは、有意な甘味をもたらした。0.01〜0.025重量%の投与量は、強い甘味プロファイルを生じた。一般的なソフトドリンク処方は、約0.02重量%のスクラロースを含有する。すなわち、試験した用量は飲料製品と同程度である。
【0028】
一定のスクラロース濃度におけるフレーバー濃度の増加は、甘味の増加と油性感の低下をもたらした。このことは、スクラロースとフレーバーの組み合わせの相乗効果を示している。油性感を抑えるために、スクラロース(BK121〜BK124)の濃度を上げること、またはフレーバー(BK121〜BK122)を加えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・食用に適した少なくとも1つの脂質、
・少なくとも1つの水溶性甘味料、および
・少なくとも1つの可溶化剤
を含み、水溶性甘味料が、少なくとも2gの甘味料が1リットルの水に20℃の温度で溶解する甘味料を意味する組成物。
【請求項2】
食用に適した少なくとも1つの脂質が、脂肪酸のトリグリセリドである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
脂肪酸のトリグリセリドが、
・トリグリセリドの全ての脂肪酸部分の少なくとも50重量%がcis−9,trans11−オクタデカンジエン酸およびtrans−10,cis12−オクタデカンジエン酸、ならびにcis−9,trans11−オクタデカンジエン酸とtrans−10,cis12−オクタデカンジエン酸の混合物からなる群から選択される共役リノール酸部分からなるトリグリセリド、および
・ω−n脂肪酸〔nは3、6または9であり、好ましくはnは3である〕に由来する少なくとも1つのアシル部分を含むトリグリセリド
からなる群から選択される請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの水溶性甘味料が、スクラロース(E955)、アスパルテーム(E951)、アセスルファム K(E950)、ステビオシド、タウマチン(E957)、ネオヘスペリジン DC(E959)、サッカリン(E954)およびチクロ(E952)からなる群から選択され、好ましくはスクラロース、ステビオシドおよびタウマチンからなる群から選択される請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
食用に適した少なくとも1つの脂質を、1〜99.9945重量%、好ましくは10〜99.9945重量%、より好ましくは50〜99.9945重量%、とりわけ好ましくは94〜99.9945重量%の濃度で含む請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの水溶性甘味料を、少なくとも1つの脂質の0.0005〜1.0重量%(好ましくは、0.001〜0.5重量%)の濃度で含む請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの可溶化剤を、少なくとも1つの脂質の0.005〜5.0重量%(好ましくは、0.01〜2重量%)の濃度で含む請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
フィトステロール、フィトステロールエステル、カロテノイド(好ましくは、遊離型若しくはエステル形態のβ−カロチン、ルテイン、ゼアキサンチンまたはリコペン)、脂溶性ビタミン(好ましくはビタミンA、D、EおよびKからなる群から選択されるビタミン
)およびリン脂質からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
さらに、少なくとも1つのフレーバーを含む請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1つのフレーバーが、食品を香り付けるのに適したフレーバーであって、好ましくは、0.001〜5重量%の濃度、より好ましくは0.01〜2重量%の濃度である請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
さらに、酸化防止剤および着色料からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含み、前記酸化防止剤が、好ましくは、トコフェロール、ローズマリー抽出物およびアスコルビン酸エステルからなる群から選択され、好ましくは0.01〜0.5重量%の濃度であって、前記着色料が食品を着色するのに適した着色料であって、好ましくは0.2〜200mg/gの濃度である、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記請求項のいずれかに記載の少なくとも1つの水溶性甘味料と、前記請求項のいずれかに記載の少なくとも1つの可溶化剤と、場合により、前記請求項のいずれかに記載の少なくとも1つのフレーバーとの組み合わせの使用であって、前記請求項のいずれかに記載の食用に適した少なくとも1つの脂質の油性感をマスキングするための使用。
【請求項13】
50〜99.9945重量%(好ましくは94〜99.9945重量%)の濃度の食用に適した少なくとも1つの脂質、および
少なくとも1つの脂質の0.0005〜1.0重量%(好ましくは0.001〜0.5重量%)の濃度の少なくとも1つの水溶性甘味料、および
少なくとも1つの脂質の0.005〜5.0重量%(好ましくは0.01〜2重量%)の濃度の少なくとも1つの可溶化剤
を含む請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。

【公表番号】特表2013−509888(P2013−509888A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538223(P2012−538223)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006668
【国際公開番号】WO2011/057731
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】