説明

食肉スライサ

【課題】 肉塊の形状に影響されずに肉塊を均一な厚さでスライスすることができると共に、肉塊の更なる薄切り化にも対応できるようにする。
【解決手段】 肉塊12を収容する肉箱13の下方に、肉塊12をスライスする平刃物15を配置し、肉箱13を左右方向に往復移動させることで、肉箱13に収容した肉塊12の下端部を平刃物15でスライスする。その際、肉塊保持機構50は、肉塊12がスライスされる毎に、押え付け棒19による肉塊12の押え付けを一時的に解除して肉塊12をスライス厚さ分だけ下方に滑り落とし、その後、再び、押え付け棒19で肉塊12を側方から押え付けて保持するように押え付け棒19を付勢する動作を繰り返す。これにより、肉塊12の押え付け方向の幅寸法が部位毎で異なっていても、肉塊12をスライスする際に押え付け棒19で肉塊12を確実に押え付けて保持できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉塊収容部から送り出される肉塊をスライス用刃物でスライスする食肉スライサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の食肉スライサとして、例えば、特許文献1(特開2005−118947号公報)に記載されているように、肉塊を収容する肉箱の下方にスライス用刃物を配置し、このスライス用刃物に対して肉箱を往復移動させることで、肉箱に収容した肉塊の下端部をスライス用刃物でスライスし、そのスライス厚み分だけ肉箱内の肉塊を下方に滑り落とすようにしたものがある。このものは、肉箱に肉塊をセットしたときに、肉押え棒をスライド移動させて肉押え棒で肉塊の側面を押え付け、その状態で肉押え棒のスライド位置を締め付けレバー等で固定する構成としている。
【特許文献1】特開2005−118947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、肉塊は、形状が様々で、幅寸法等が一定でないため、肉箱に肉塊をセットしたときに、肉塊の押え付け方向(横方向)の幅寸法が肉塊の部位毎で異なってくる。上記特許文献1の食肉スライサでは、肉箱に肉塊をセットしたときに、肉塊の最大幅となる部分を肉押え棒で押え付けた状態で、肉押え棒のスライド位置を固定するため、スライス作業開始当初は、肉押え棒で肉塊を押え付けることができるが、その後、肉塊の最大幅であった部分がスライスされて無くなると、肉押え棒と肉塊との間に隙間が生じて、肉塊を押え付けて保持することができなくなってしまう。このため、肉箱を往復移動させて肉塊をスライスする際に、肉塊が傾いたり、浮き上がったりして、肉塊を均一な厚さでスライスできないことがあり、スライス肉の外観が悪くなって商品価値が低下したり、歩留まりが悪くなるという欠点がある。
【0004】
また、肉塊を薄くスライスするには、肉塊をスライスする際に肉塊をしっかりと押さえ付ける必要がある。しかし、上記特許文献1の食肉スライサは、肉押え棒で肉塊を強く押え付けすぎると、肉箱から肉塊をスムーズに滑り落とせなくなるため、肉塊の押え付け力をあまり大きくすることができず、これが原因で、スライス肉の薄切り化が困難なものとなっていた。
【0005】
本発明は、これらの事情を考慮してなされたものであり、従って本発明の目的は、肉塊の形状に影響されずに肉塊を均一な厚さでスライスすることができ、スライス肉の商品価値や歩留まりを向上させることができると共に、スライス肉の薄切り化も実現することができる食肉スライサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、肉塊を収容する肉塊収容部を往復移動させて該肉塊収容部から下方へ少しずつ滑り落ちる肉塊の下端部をスライス用刃物でスライスする食肉スライサにおいて、肉塊収容部に収容された肉塊を側方から押え付けるための押え付け部材を有し、前記肉塊収容部の往復移動の際に前記押え付け部材で前記肉塊を押え付けて保持した状態で前記肉塊が前記スライス用刃物でスライスされるように前記押え付け部材を付勢し、前記肉塊をスライスする毎に前記押え付け部材による前記肉塊の押え付けを一時的に解除して前記肉塊を所定量ずつ滑り落とす肉塊保持機構を備えた構成としたものである。
【0007】
この構成では、肉塊をスライスする毎に、押え付け部材による肉塊の押え付けを一時的に解除して肉塊を下方に滑り落とし、その後、再び、押え付け部材で肉塊を押え付けるように押え付け部材を付勢する動作を繰り返すため、肉塊の押え付け方向の幅寸法が肉塊の部位毎で異なっていても、肉塊をスライスする際に押え付け部材で肉塊を確実に押え付けて保持することができる。これにより、肉塊の形状に影響されずに、肉塊を均一な厚さでスライスすることができ、スライス肉の商品価値や歩留まりを向上させることができる。また、押え付け部材による肉塊の押し付け力を強くしても、肉塊の押え付けを一時的に解除したときに、肉塊を確実に下方に落とすことができるため、従来の食肉スライサよりも肉塊の押し付け力を強くして、肉塊を従来よりも薄くスライスすることが可能となり、スライス肉の薄切り化も実現することができる。
【0008】
この場合、請求項2のように、押え付け部材は、肉塊を押え付ける部分に凹凸を設けるようにしても良い。このようにすれば、押え付け部材による肉塊の保持力を確実に強くすることができ、肉塊をスライスする際に、肉塊が傾いたり、浮き上がったりすることをより確実に防止することができる。
【0009】
ところで、肉塊保持機構は、肉塊収容部が肉塊をスライスする方向に移動して肉塊の下端部がスライスされた直後に、押え付け部材による肉塊の押え付けを一時的に解除して肉塊を下方に落とす構成としても良いが、この構成では、肉塊収容部がスライス方向と逆方向に移動して初期位置に戻るときに肉塊の下面が肉箱下方の部材(例えば、刃物支持板等)に強く接触して、肉塊収容部を初期位置に戻す際の抵抗が大きくなり、肉塊収容部の往復移動機構に掛かる負荷が増大する可能性がある。
【0010】
そこで、請求項3のように、肉塊保持機構は、肉塊収容部が肉塊をスライスする方向に移動した後にその逆方向に移動して初期位置又はその付近に戻ったときに押え付け部材による肉塊の押え付けを一時的に解除するように構成すると良い。この構成では、肉塊収容部が初期位置又はその付近に戻ったときに、肉塊の押え付けを一時的に解除して肉塊を下方に落とすため、肉塊収容部がスライス方向と逆方向に移動して初期位置に戻るときに肉塊の下面が肉箱下方の部材(例えば、刃物支持板等)に強く接触することを防止して、肉塊収容部を初期位置に戻す際の抵抗を小さくすることができ、肉塊収容部の往復移動機構に掛かる負荷を軽減することができる。
【0011】
更に、請求項4のように、肉塊保持機構は、肉塊収容部の往復移動機構の駆動力で動作するように構成しても良い。このようにすれば、肉塊保持機構を動作させるための専用の駆動源を設ける必要がなく、構成の簡単化、小型化、低コスト化を実現することができる。しかも、肉塊収容部の往復移動動作と肉塊保持機構の動作とを、複雑な制御を用いることなく機械的に連動させて簡単に同期させることができて、制御系の構成も簡単化できる。
【0012】
また、請求項5のように、スライス用刃物でスライスされた肉片をほぼ円筒状又は渦巻き状にロールする肉片ロール装置を設けるようにしても良い。このようにすれば、肉片ロール装置により自動的にスライス肉片をロールすることができるので、作業者が手作業でスライス肉片をロール形状に丸める必要がなく、熟練者でなくても、極めて能率良く且つ安全にスライス肉片をロール形状に丸めることができる。しかも、本発明の食肉スライサは、肉塊の形状に影響されずに、肉塊を均一な厚さでスライスすることができるので、ロール形状も均一化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
ここで、図1は食肉スライサの正面図、図2及び図3は肉箱及びその周辺部の平面図、図4は食肉スライサの縦断側面図、図5は食肉スライサの縦断背面図、図6は肉塊保持機構の正面図、図7は肉塊保持機構の平面図である。
【0014】
まず、図1に基づいて食肉スライサ全体の概略構成を説明する。食肉スライサの本体架台11の上部には、肉塊12を収容する肉箱13(肉塊収容部)が左右方向(矢印Aで示す方向)に往復移動可能に設けられ、この肉箱13の下方左側に設けられた刃物支持板14に、肉塊12をスライスするための平刃物15(スライス用刃物)が前後方向(肉箱13の移動方向と直角方向)に往復移動可能に設けられている。この平刃物15は、肉塊12をスライスする刃が直線状に形成されている。
【0015】
更に、平刃物15の下方側近傍には、平刃物15でスライスされた肉片(スライス肉片)をほぼ円筒状又は渦巻き状にロールする肉片ロール装置16が設けられている。この肉片ロール装置16は、肉箱13が肉塊12をスライスする方向(図1では左方向)へ移動するときに、各ローラ17がスライス肉片をロールする方向(図1では時計回り方向)に回転し、肉箱13がスライス方向と逆方向に(図1では右方向)へ移動するときに、各ローラ17がロールされたスライス肉片を左側斜め下方に排出する方向(図1では反時計回り方向)に回転するようになっている。
【0016】
この肉片ロール装置16の下方には、肉片ロール装置16でロールされたスライス肉片を受け取る肉片受皿18が配置されている。また、本体架台11の周縁部の所定箇所には、安全カバー(図示せず)が設けられている。
【0017】
図1乃至図3に示すように、肉箱13は、横断面略L字形状に形成され、肉塊12を自重でほぼ鉛直下方に送り出すように縦向きに配置されている。この肉箱13の左側には、肉箱13内の肉塊12を左方から押え付けるための押え付け棒19(押え付け部材)が肉箱13と一体的に往復移動可能に設けられている。更に、肉箱13の前面側に、肉塊12の前面を押える前面押え板(図示せず)を肉箱13と一体的に往復移動可能に設けるようにしても良い。
【0018】
また、肉箱13の右端部には、スライド軸20が上下方向に延びるように設けられ、このスライド軸20に、肉塊12の上面を押えるための上面押え板21が上下方向にスライド移動可能に支持されている。この上面押え板21には、押え付け棒19との衝突を避けるためのスリット22(図2及び図3参照)が形成され、上面押え板21の側部には、肉箱13の内壁面に接触して回転する案内ローラ23(図2及び図3参照)が取り付けられている。
【0019】
この上面押え板21と肉箱13との間には、ワンウェイクラッチ等により上面押え板21の肉送り方向(下方)へのスライド移動のみを許容して逆方向(上方)へのスライド移動を阻止する移動方向規制機構24と、この移動方向規制機構24による上面押え板21の上昇阻止状態を解除する規制解除機構25とが設けられている。
【0020】
更に、図2に示すように、肉箱13の上方部側方には、上面押え板21を退避位置に保持する保持部26が設けられ、上面押え板21を肉箱13の上方までスライド移動させた状態で、上面押え板21をスライド軸20を中心に退避方向(矢印Bで示す方向)に回動して、上面押え板21の一部を保持部26の上に載せておくことで、上面押え板21を肉箱13の側方に退避させることができるようになっている。
【0021】
一方、図1に示すように、肉箱13の下方で平刃物15の右方側には、肉箱13から送り出される肉塊12の下端位置を調整するスライス厚調整板28が上下動可能に設けられている。このスライス厚調整板28を支持するスライス厚調整ボックス29の調整ハンドル30で、スライス厚調整板28の高さ位置(肉塊12の下端位置)を調整することで、スライス肉片の厚さを調整できるようになっている。肉箱13は、このスライス厚調整板28の真上となる初期位置(図2参照)と、刃物支持板14の真上となるスライス終了位置(図3参照)との間を往復移動する。
【0022】
次に、図4及び図5を用いて、肉箱13を往復移動させるための往復駆動機構31の構成を説明する。往復駆動機構31の駆動源である減速機付モータ32は、本体架台11の底部に設けられたモータベース33に組み付けられ、そのモータ32の出力軸に、クランクアーム34が取り付けられている。このクランクアーム34の上方には、2本のスライド軸35が肉箱13の往復移動方向(左右方向)に延びるように設けられ、これらのスライド軸35にスライドメタル36がスライド移動可能に挿通支持されている。このスライドメタル36と前記クランクアーム34との間には、クランクロッド37が掛け渡され、このクランクロッド37の両端部が、それぞれ回転軸38,39を介してスライドメタル36とクランクアーム34に連結されている。また、スライドメタル36には、肉箱取付ジョイント40を介して肉箱13が連結されている。これにより、クランクアーム34の回転運動がクランクロッド37を介してスライドメタル36の往復運動に変換され、このスライドメタル36と一体的に肉箱13が食肉スライサの左右方向(図5に矢印Aで示す方向)に往復移動する。
【0023】
また、クランクアーム34のうちのクランクロッド37の取付側と反対側の端部には、振動を低減するためのバランスウエイト41が設けられている。このバランスウエイト41は、肉箱13と逆方向に移動するように偏心配置されている。これにより、図5に実線で示すように、肉箱13がスライス厚調整板28側に移動したときには、バランスウエイト41が、その軸心から見て刃物支持板14側に移動し、図5に二点鎖線で示すように、肉箱13が刃物支持板14側に移動したときには、バランスウエイト41が、その軸心から見てスライス厚調整板28側に移動するようになっている。
【0024】
一方、図4及び図5に示すように、平刃物15を駆動する減速機付モータ43の出力軸には、クランクアーム44が取り付けられ、このクランクアーム44の上方に、2本のスライド軸45が平刃物15の往復移動方向に延びるように設けられている。これらのスライド軸45に、スライドメタル46がスライド移動可能に挿通支持され、このスライドメタル46とクランクアーム44とがアームカラー47を介して連結されている。また、スライドメタル46には、刃物軸48がボルト等で締め付け固定され、この刃物軸48のジョイント部49に、平刃物15が連結されている。これにより、クランクアーム44の回転運動がアームカラー47を介してスライドメタル46の往復運動に変換され、このスライドメタル46と一体的に平刃物15が食肉スライサの前後方向(肉箱13の移動方向と直角方向)に往復移動する。
【0025】
次に、図6及び図7を用いて、押え付け棒19で肉塊12を押え付けて保持する肉塊保持機構50の構成を説明する。図6に示すように、押え付け棒19は、断面略U字形状(図7参照)に形成されて上下方向に延びるように配置され、肉塊12を押え付ける部分に、略三角形状に形成された多数の凹凸が設けられている。この押え付け棒19は、スライド軸51の先端部に溶接等により固定され、このスライド軸51が、支持アーム52によって左右方向(肉箱13に対して接近/離間する方向)にスライド移動可能に支持されている。
【0026】
この支持アーム52には、スライド軸51のスライド移動をロックするためのロック機構53が設けられている。このロック機構53は、上下移動可能に設けられたピストン部材54がスプリング55によって下方に付勢され、このピストン部材54の下端部にロック部材56が取り付けられている。このロック部材56の下面には、ロック歯56aが形成され、スライド軸51の上面には、ロック部材56のロック歯56aと噛み合うロック歯51aが軸方向に沿って形成されている。また、ピストン部材56の側方には、ロック解除レバー57が支持軸58によって回動可能に軸支され、このロック解除レバー57の先端部がピストン部材56の側面に形成された凹部55aに嵌合されている。
【0027】
通常時は、スプリング55の付勢力によってピストン部材54とロック部材56が下方に移動して、ロック部材56のロック歯56aがスライド軸51のロック歯51aに噛み合っている。これにより、スライド軸51のスライド移動がロックされて押え付け棒19のスライド位置が固定される。
【0028】
一方、図6に二点鎖線で示すように、ロック解除レバー57をロック解除方向(下方)に回動操作すると、スプリング55の付勢力に抗してピストン部材54とロック部材56が上方に移動して、ロック部材56のロック歯56aとスライド軸51のロック歯51aとの噛み合いが解除される。これにより、スライド軸51を左右方向にスライド移動させて押え付け棒19のスライド位置を調整できるようになる。
【0029】
また、図7に示すように、肉箱13の左端部には、ジョイント59を介して支持軸60が肉箱13と一体的に往復移動可能に取り付けられ、この支持軸60に、支持アーム52がスライド移動可能に挿通支持されている。支持アーム52は、支持軸60の左端部に装着されたスプリング61によって肉箱13に接近する方向(右方向)に付勢され、支持軸60の右端部には、ゴム等で形成されたストッパ62が装着されている。スプリング61の付勢力によって支持アーム52が肉箱13に接近する方向に付勢されることで、該支持アーム52に支持された押え付け棒19が肉箱13内の肉塊12を押え付けて保持するように付勢される。
【0030】
更に、肉箱13の後方には、本体架台11側に固定された固定アーム63が配置され、この固定アーム63に、肉箱13と一体的に往復移動する支持アーム52の動きを規制する規制部材64が取り付けられている。この規制部材64は、固定アーム63に締め込み固定されたボルト等によって構成され、その締め込み量を調整することで、規制部材64の位置を調整できるようになっている。一方、支持アーム52には、規制部材64と衝突する部分に、ゴム等の緩衝部材65が取り付けられている。
【0031】
規制部材64の位置は、肉箱13がスライス方向と逆方向(右方向)に移動して初期位置よりも所定量だけ手前の位置まで戻ったときに、支持アーム52が固定アーム63の規制部材64に衝突して、支持アーム53の右方への移動が規制部材58によって阻止されるように設定される。これにより、図2に示すように、肉箱13がスライス方向と逆方向(右方向)に移動して初期位置まで戻ったときには、支持アーム52と肉箱13との距離が所定量だけ広がって、押え付け棒19による肉塊12の押え付けが一時的に解除されるようなっている。
【0032】
その後、図3に示すように、肉箱13がスライス方向(左方向)に移動して、支持アーム52が固定アーム63の規制部材64から離れると、支持アーム52と肉箱13との距離が元に戻って、スプリング61によって押え付け棒19が肉塊12を側方から押え付けて保持するように付勢された状態に戻るようになっている。従って、肉塊12が平刃物15でスライスされるときには、押え付け棒19で肉塊12を押え付けて保持するようになっている。
【0033】
以上のように構成した食肉スライサでは、肉塊12をスライスする場合、まず、所定の冷凍温度で冷凍された肉塊12を肉箱13内にセットした後、押え付け棒19のスライド位置を調整して、スプリング61によって押え付け棒19が肉塊12を側方から押え付けて保持するように付勢された状態にすると共に、肉塊の12の上に上面押え板21を載せて、肉塊12の上面を上面押え板21で肉送り方向(下方)へ押えた状態にする。
【0034】
その後、肉箱13を左右方向(図1に矢印Aで示す方向)に往復移動させると共に、平刃物15を前後方向(肉箱13の移動方向と直角方向)に往復移動させる。この際、肉箱13がスライス方向に移動するときに、肉塊13の下端部が平刃物15で所定の厚さにスライスされて、そのスライス肉片が平刃物15の下方側に排出され、その後、肉箱13がスライス方向と逆方向に移動して初期位置付近まで戻ったときに、押え付け棒19による肉塊12の押え付けが一時的に解除されて、肉箱13内の肉塊12が、肉塊12及び上面押え板21等の重量でスライス厚さ分だけ鉛直下方に滑り落ちる。
【0035】
更に、スライス作業中に、肉片ロール装置16は、肉箱13がスライス方向へ移動するときに、ローラ17がスライス肉片をロールする方向に回転して、平刃物15の下方側に排出されるスライス肉片が、ローラ17でロール方向に送り出されながら曲げられて、均一な大きさのほぼ円筒状又は渦巻き状にロールされる。その後、肉箱13がスライス方向と逆方向へ移動するときに、ローラ17が逆方向に回転して、ロールされたスライス肉片がローラ17の下方に排出される。排出されたロール形状のスライス肉片は、肉片受皿18で受け取られる。
【0036】
以上説明した本実施例では、肉塊12が1枚スライスされる毎に、押え付け棒19による肉塊12の押え付けを一時的に解除して肉塊12を下方に滑り落とし、その後、再び、押え付け棒19で肉塊12を押え付けて保持するように押え付け棒19を付勢する動作を繰り返すため、肉塊12の押え付け方向の幅寸法が肉塊12の部位毎で異なっていても、肉塊12をスライスする際に押え付け棒19で肉塊12を確実に押え付けて保持することができる。これにより、肉塊12の形状に影響されずに、肉塊12を均一な厚さでスライスすることができ、スライス肉の商品価値や歩留まりを向上させることができる。また、押え付け棒19による肉塊12の押え付け力を強くしても、肉塊12の押え付けを一時的に解除したときに、肉塊12を確実に下方に滑り落とすことができるため、従来の食肉スライサよりも肉塊12の保持力を強くして、肉塊12を従来よりも薄くスライスすることが可能となり、肉塊12の更なる薄切り化にも対応することができる。
【0037】
しかも、本実施例では、押え付け棒19のうち肉塊12を押え付ける部分に略三角形状の凹凸を設けるようにしたので、押え付け棒19による肉塊12の保持力を確実に強くすることができ、肉塊12をスライスする際に、肉塊12が傾いたり、浮き上がったりすることを確実に防止することができる。
【0038】
また、本実施例では、肉箱13がスライス方向と逆方向に移動して初期位置付近に戻ったときに、肉塊保持機構50が押え付け棒19による肉塊12の押え付けを一時的に解除して肉塊12を下方に落とすようにしたので、肉箱13がスライス方向と逆方向に移動して初期位置に戻るときに肉塊12の下面が刃物支持板14等に強く接触することを防止して、肉箱13を初期位置に戻す際の抵抗を小さくすることができ、肉箱13の往復移動機構31に掛かる負荷を軽減することができる。
【0039】
尚、肉塊保持機構50が押え付け棒19による肉塊12の押え付けを一時的に解除する保持解除動作を行うタイミングは、適宜変更しても良く、例えば、肉箱13がスライス方向に移動して肉塊12がスライスされた直後に、肉塊保持機構50が保持解除動作を行うようにしても良い。
【0040】
更に、本実施例では、肉箱13の往復移動(つまり、肉箱13の往復移動機構31の駆動力)を利用して肉塊保持機構50が保持解除動作を行うようにしたので、肉箱13の往復移動動作と肉塊保持機構50の保持解除動作とを、複雑な制御を用いることなく機械的に連動させて簡単に同期させることができると共に、肉塊保持機構50を動作させるための専用の駆動源を設ける必要がなく、構成の簡単化、小型化、低コスト化を実現することができる。
【0041】
しかしながら、肉塊保持機構50は、肉箱13の往復移動機構31の駆動力で動作する構成に限定されず、肉箱13の往復移動機構31と別に設けられた専用の駆動源(モータ、油圧シリンダ、エアシリンダ等)で動作する構成としても良い。
【0042】
また、本実施例では、スライス肉片をほぼ円筒状又は渦巻き状にロールする肉片ロール装置16を設けるようにしたので、肉片ロール装置16により自動的にスライス肉片をロールすることができて、作業者が手作業でスライス肉片をロール形状に丸める必要がなく、熟練者でなくても、極めて能率良く且つ安全にスライス肉片をロール形状に丸めることができる。しかも、肉塊12の形状に影響されずに、肉塊12を均一な厚さでスライスすることができるので、ロール形状も均一化することができる。
【0043】
尚、肉片ロール装置16の構成は、適宜変更しても良い。また、本発明は、肉片ロール装置16を設けた構成に限定されず、肉片ロール装置16を省略してスライス肉片をロールしない構成にしても良い。
【0044】
また、上記実施例では、肉箱13を縦向きに配置して肉塊12をほぼ鉛直下方に滑り落とす方式の食肉スライサに本発明を適用したが、本発明は、肉箱13を斜めに配置して肉塊12を斜め下方に滑り落とす方式の食肉スライサに適用しても良い。
【0045】
また、上記実施例では、肉塊12をスライスするスライス用刃物として、刃先が直線状に形成された平刃物15を用いたが、これに限定されず、例えば、刃先が波形状や円弧形状の平刃物を用いたり、円盤状に形成された丸刃物を用いても良い等、刃物の形状を適宜変更しても良い。
【0046】
その他、本発明は、押え付け部材の形状や肉塊保持機構の構成を適宜変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施例における食肉スライサの正面図である。
【図2】肉箱が初期位置に移動した状態を示す肉箱及びその周辺部の平面図である。
【図3】肉箱がスライス終了位置に移動した状態を示す肉箱及びその周辺部の平面図である。
【図4】食肉スライサの縦断側面図である。
【図5】食肉スライサの縦断背面図である。
【図6】肉塊保持機構の正面図である。
【図7】肉塊保持機構の平面図である。
【符号の説明】
【0048】
11…本体架台、12…肉塊、13…肉箱(肉塊収容部)、15…平刃物(スライス用刃物)、16…肉片ロール装置、19…押え付け棒(押え付け部材)、31…往復駆動機構、50…肉塊保持機構、51…スライド軸、52…支持アーム、53…ロック機構、60…支持軸、61…スプリング、63…固定アーム、64…規制部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉塊を収容する肉塊収容部を往復移動させて該肉塊収容部から下方へ少しずつ滑り落ちる肉塊の下端部をスライス用刃物でスライスする食肉スライサにおいて、
前記肉塊収容部に収容された肉塊を側方から押え付けるための押え付け部材を有し、前記肉塊収容部の往復移動の際に前記押え付け部材で前記肉塊を押え付けて保持した状態で前記肉塊が前記スライス用刃物でスライスされるように前記押え付け部材を付勢し、前記肉塊をスライスする毎に前記押え付け部材による前記肉塊の押え付けを一時的に解除して前記肉塊を所定量ずつ滑り落とす肉塊保持機構を備えていることを特徴とする食肉スライサ。
【請求項2】
前記押え付け部材は、前記肉塊を押え付ける部分に凹凸が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の食肉スライサ。
【請求項3】
前記肉塊保持機構は、前記肉塊収容部が前記肉塊をスライスする方向に移動した後にその逆方向に移動して初期位置又はその付近に戻ったときに前記押え付け部材による前記肉塊の押え付けを一時的に解除するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の食肉スライサ。
【請求項4】
前記肉塊保持機構は、前記肉塊収容部の往復移動機構の駆動力で動作するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の食肉スライサ。
【請求項5】
前記スライス用刃物でスライスされた肉片をほぼ円筒状又は渦巻き状にロールする肉片ロール装置を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の食肉スライサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−21630(P2007−21630A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205607(P2005−205607)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(501048572)
【Fターム(参考)】