説明

食酢及びその製造方法

【課題】アミノ酸の総含有量に富むと共に、γアミノ酪酸の含有量にも富み、抗酸化力が大きく、健康増進に寄与でき且つ旨味にも優れた食酢及びその製造方法を提供する。
【解決手段】玄米を水に浸漬して得られた発芽玄米を蒸煮して蒸し米を調製し、大豆を蒸煮して蒸し大豆を調製し、蒸し米と蒸し大豆と麹と水を容器内に仕込み、糖化、アルコール発酵及び酢酸発酵を行なって食酢を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸の総含有量に富むと共に、γアミノ酪酸をも多量に含有した食酢及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に食酢は調味料として広く用いられているが、近年においては、食酢の持つ健康食品としての機能が注目されており、黒酢、りんご酢、もろみ酢などの健康酢が種々提供されている。食酢は、通常、米、麦などの澱粉を主成分とする炭水化物を原料とし、これに麹、酵母を加え、糖化反応、アルコール発酵を経て、酢酸発酵を起こさせ、次いで濾過、殺菌を行うことによって製造されている。
【0003】
食酢は、基本的に調味料として味のよさ(旨味、飲みやすさ)が重要であり、他方、健康食品としての特色を出す場合には、人体に有用な成分の含有量が大事な要素となる。原料として玄米や発芽玄米を用いて製造した食酢も提供されており、特に発芽玄米を用いて製造した食酢にはγアミノ酪酸が含まれており、このγアミノ酪酸は血圧降下作用等があることから、γアミノ酪酸含有食酢は健康酢として注目されている。
【0004】
健康酢としての商品価値を高めるためには、γアミノ酪酸の含有量を増大させるための技術開発が必要であるが、例えば、下記特許文献1は、玄米を発芽させた発芽玄米を用いて食酢を製造するに当り、浸漬水を廃棄することなく、浸漬水を発芽玄米と一緒に煮熟して液状化させるようにして、機能性成分(γアミノ酪酸)が溶出している浸漬水を有効に利用することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−39016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示される製造方法によって製造される食酢において、γアミノ酪酸の含有量は、4.5mg/100mlであり(実施例1)、未だ十分な含有量とはいえない。そのため、更なるγアミノ酪酸含有量増大のための改良が望まれるところである。
【0007】
また一方において、γアミノ酪酸含有食酢の製造において、γアミノ酪酸の含有量を重視するあまり、旨味の発現が不十分となり、味の品質に欠けるという問題点があった。尚、旨味のある食酢を製造するためにアミノ酸総含有量を増やすための工夫改良は以前から行われているが、このアミノ酸総含有量による旨味の改善も決して十分なものではなく、しかもこの種の食酢は、望ましいγアミノ酪酸含有量を有していない。
【0008】
本発明者は、上記の点に鑑み鋭意研究した結果、原料として発芽した玄米と大豆を用いることにより、γアミノ酪酸の含有量を増大できるだけでなく、アミノ酸総含有量にも富み、旨味のある品質良好な食酢を製造することができるという知見を得た。
【0009】
また、大豆を発芽した玄米と一緒に仕込むに当り、仕込む前の大豆の処理方法について検討したところ、大豆を納豆菌処理した場合には、仕込み後に雑菌汚染を受けやすいという事実が判明した。そこで、本発明者は、大豆を蒸煮処理したものを仕込んだところ、雑菌の発生を極力防止できるという知見が得られた。
【0010】
本発明は、上記した知見に基づき完成したものであり、アミノ酸の総含有量に富むと共に、γアミノ酪酸の含有量にも富んだ食酢を提供することを目的とする。また本発明は、機能性成分を多量含有する健康酢でありながら、旨味にも優れている食酢を提供することを目的とする。更に本発明は、アミノ酸総含有量を増大できるとともに、γアミノ酪酸の含有量をも増大でき、旨味に優れ且つ機能性成分に富むと共に、抗酸化力が大きい食酢の製造方法を提供することを目的とする。また本発明は、原料を露天のかめ壷に仕込み(露天壷仕込み)、かめ壷内で長期間、醸造、熟成を行う伝統的な製法に適用可能であり、このような伝統的製法に適用して、高品質な健康酢を製造できる食酢の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、
(1)玄米を水に浸漬して得られた発芽玄米を蒸煮して蒸し米を調製し、大豆を蒸煮して蒸し大豆を調製し、蒸し米と蒸し大豆と麹と水を容器内に仕込み、糖化、アルコール発酵及び酢酸発酵させて得られる食酢、
(2)蒸し米10重量%〜30重量%、蒸し大豆1重量%〜20重量%の配合割合で、蒸し米と蒸し大豆を仕込んで得られる前記(1)記載の食酢、
(3)蒸し米の配合量と蒸し大豆の配合量との比率が、1:0.1〜1:0.5となるように仕込んで得られる前記(1)又は(2)記載の食酢、
(4)仕込みは第1段仕込みと第2段仕込みの2段階に分けて行ない、第1段仕込みにおいて、麹と水を仕込み、第1段仕込みの後に行う第2段仕込みにおいて、蒸し米と蒸し大豆と残量の水を仕込んで得られる前記(1)〜前記(3)のいずれかに記載の食酢、
(5)第1段仕込みにおける水の配合量が、重量換算で麹の配合量の1倍〜3倍の量となるように仕込んで得られる前記(4)記載の食酢、
(6)第1段仕込み後、諸味のアルコール濃度が8%〜16%となった段階で第2段仕込みを行うことにより得られる前記(4)又は(5)記載の食酢、
(7)蒸し大豆として、すり潰してミンチ状とした蒸し大豆を用いて得られる前記(1)〜(6)のいずれかに記載の食酢、
(8)玄米を水に浸漬して得られた発芽玄米を蒸煮して蒸し米を調製し、大豆を蒸煮して蒸し大豆を調製し、蒸し米と蒸し大豆と麹と水を容器内に仕込み、糖化、アルコール発酵及び酢酸発酵を行なうことを特徴とする食酢の製造方法、
(9)蒸し米10重量%〜30重量%、蒸し大豆1重量%〜20重量%の配合割合で、蒸し米と蒸し大豆を仕込むものである前記(8)記載の食酢の製造方法、
(10)蒸し米の配合量と蒸し大豆の配合量との比率は、1:0.1〜1:0.5である前記(8)又は(9)記載の食酢の製造方法、
(11)仕込みは第1段仕込みと第2段仕込みの2段階に分けて行ない、第1段仕込みにおいて、麹と水を仕込み、第1段仕込みの後に行う第2段仕込みにおいて、蒸し米と蒸し大豆と残量の水を仕込むものである前記(8)〜(10)のいずれかに記載の食酢の製造方法、
(12)第1段仕込みにおける水の配合量は、重量換算で麹の配合量の1倍〜3倍の量である前記(11)記載の食酢の製造方法、
(13)第1段仕込み後、諸味のアルコール濃度が8%〜16%となった段階で第2段仕込みを行う前記(11)又は(12)記載の食酢の製造方法、
(14)蒸し大豆として、すり潰してミンチ状とした蒸し大豆を用いる前記(8)〜(13)のいずれかに記載の食酢の製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、玄米を水に浸漬して得られた発芽玄米を蒸煮して蒸し米を調製し、大豆を蒸煮して蒸し大豆を調製し、蒸し米と蒸し大豆と麹と水を容器内に仕込み、糖化、アルコール発酵及び酢酸発酵させて得られる食酢であり、このような本発明の食酢によれば、アミノ酸の総含有量が大きい上、γアミノ酪酸の含有量も大きいという特有の効果がある。アミノ酸総含有量が豊富であることにより、旨味に優れ且つ健康増進に寄与できるものである。
【0013】
また、γアミノ酪酸は、GABA(ギャバ)と略称されているアミノ酸の一種であり、主に抑制性の神経伝達物質として機能している物質であり、血圧降下作用や動脈硬化抑制作用があるとされている。本発明はγアミノ酪酸を豊富に含むことから、機能性食品としての品質を一段と向上できるものである。
【0014】
このように、本発明の食酢は、機能性成分を多量に含有し、しかも旨味にも優れているから、調味料としても、また健康酢或いは健康飲料としても優れたものである。
【0015】
また本発明の食酢は、抗酸化力に優れているという効果がある。体内の活性酸素は、癌や生活習慣病或いは老化などの種々の病気の原因を作るといわれており、これらの病気を予防するため抗酸化力のある食品を摂取することが大事であるとされている。本発明の食酢は、抗酸化力が大きいものであり、健康増進のための健康食品としても有益なものである。
【0016】
本発明の食酢の製造方法は、玄米を水に浸漬して得られた発芽玄米を蒸煮して蒸し米を調製し、大豆を蒸煮して蒸し大豆を調製し、蒸し米と蒸し大豆と麹と水を容器内に仕込み、糖化、アルコール発酵及び酢酸発酵を行って食酢を製造するものであるから、従来の食酢に比べて、アミノ酸総含有量を増大できるだけでなく、γアミノ酪酸の含有量をも増大できる効果がある。従って、本発明の食酢の製造方法によれば、旨味に優れ、しかも機能性成分を豊富に含み且つ高い抗酸化力を有する食酢を製造でき、従来にない品質良好な健康酢を供給できるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の食酢を製造するに当っては、まず次のような方法で、蒸し米と蒸し大豆と麹を用意する。
(蒸し米の調製)
本発明は、澱粉質原料として玄米を用いるが、この玄米を水に浸漬して発芽させる。水の量は任意であるが、例えば、重量換算で、玄米の量の1.5倍〜2倍の量の水を用いる。水は常温の水でも温水でもよく、例えば、20℃〜35℃の水に玄米を浸漬する。浸漬時間は、10時間〜48時間が好ましい。この場合、細菌の増殖を抑制するため、必要に応じて酢酸等の有機酸を添加してもよい。
【0018】
上記の水浸漬処理を行うことによって、玄米は発芽し、発芽玄米が得られる。発芽玄米は、外皮から外方に成長した芽を有し、γアミノ酪酸を豊富に含んでいる。
【0019】
上記水浸漬処理終了後、発芽玄米を浸漬水と分離し、水切りを行った後、蒸気により蒸煮処理を行う。この蒸煮処理は、水蒸気導入部と水蒸気排出部とを備えた蒸煮装置を用いて、装置内に導入した水蒸気により加熱することにより行う。蒸煮時間は、2時間〜3時間が好ましい。このようにして蒸し米が得られる。
【0020】
(蒸し大豆の調製)
大豆を水に浸漬して、常温下に保持し、水浸漬処理を行う。水の量は任意であるが、例えば、重量換算で、大豆の量の3倍〜5倍の量の水を用いる。浸漬時間は、10時間〜20時間が好ましい。
【0021】
水浸漬処理終了後、大豆を浸漬水と分離し、水切りを行った後、蒸気により蒸煮処理を行う。この蒸煮処理は、上記した発芽玄米を蒸煮処理するときに用いる蒸煮装置と同様な装置を用いて水蒸気により加熱することにより行う。蒸煮時間は、2時間〜3時間が好ましい。このようにして蒸し大豆が得られる。
【0022】
本発明において、原料大豆として通常栽培の大豆を用いることも或いは有機栽培による大豆を用いることもできるが、品質の面から、有機栽培の大豆を用いることが好ましい。
【0023】
(麹の調製)
麹としては、米麹が用いられる。米麹の原料米としては通常、七分づき玄米が用いられる。
【0024】
米麹を製造するに当たっては、まず、七分づき玄米を水に浸漬し水浸漬処理を行う。常温下に10時間〜20時間浸漬保持し、次いで、七分づき玄米を浸漬水と分離して水切りを行う。
【0025】
水切り後、七分づき玄米を蒸気により加熱し、蒸煮処理を行う。この蒸煮処理に当っては、水蒸気加熱により蒸煮できる機構を備えた製麹装置が用いられる。蒸煮時間は、1時間〜3時間が好ましい。蒸煮後の七分づき玄米に種麹を蒔き、製麹を開始する。製麹温度は、30℃〜40℃が好ましく、また製麹時間は30時間〜50時間が好ましい。
【0026】
本発明は上記の如く調製した蒸し米と蒸し大豆と米麹を用いて、それらの原料を水と共に容器内に仕込み、発酵させて食酢を製造するが、この製造手段として工業的製法でも或いは伝統的製法でも、いずれの製法も適用可能である。以下、本発明を伝統的製法に適用して実施した場合の実施形態につき説明する。
【0027】
伝統的製法においては、仕込み用容器として陶磁器製のかめ壷が用いられる。本発明の第1の実施形態においては、蒸し米、蒸し大豆、米麹及び水を一度にかめ壷に仕込む。この仕込み工程における蒸し米、蒸し大豆、米麹及び水の配合割合(全仕込み量に対する割合(重量%))は、蒸し米10重量%〜30重量%、蒸し大豆1重量%〜20重量%、米麹5重量%〜10重量%、水60重量%〜80重量%(重量換算)が好ましい。
【0028】
蒸し米の配合割合が10重量%未満であると、得られる食酢のアミノ酸総含有量及びγアミノ酪酸の含有量がいずれも十分でなく、また、30重量%を超えると、均一な発酵が行われにくくなる。蒸し大豆の配合割合が1重量%未満であると、得られる食酢のアミノ酸総含有量及びγアミノ酪酸の含有量がいずれも十分でなく、また、20重量%を超えると、発酵速度が遅くなる。
【0029】
本発明者の研究によれば、アミノ酸及びγアミノ酪酸の生成量を多くすることと、風味、旨味を向上することとの2つの要件を共に満足するためには、蒸し米の配合量と蒸し大豆の配合量との比率が重要であるという知見を得た。即ち、蒸し米の配合量に比べて蒸し大豆の配合量が多すぎると、かえって風味、旨味が低下することが判り、適切な配合比率を見出すべく、更に検討を行った。
【0030】
本発明者がアミノ酸総含有量及びγアミノ酪酸含有量の分析結果及び官能試験に基づき検討したところ、アミノ酸及びγアミノ酪酸の生成量を多くし、しかも風味、旨味を向上するためには、蒸し米の配合量と蒸し大豆の配合量との比率(蒸し米の配合量:蒸し大豆の配合量)は、1:0.1〜1:0.5が好ましいことが判明した。蒸し米の配合量1に対し蒸し大豆の配合量が0.1未満の比率では、アミノ酸及びγアミノ酪酸の生成量が十分でなく、健康酢としての機能が小さく、また蒸し米の配合量1に対し蒸し大豆の配合量が0.5を超える比率では、風味、旨味が低下する傾向にある。
【0031】
蒸し大豆を仕込むに当たり、蒸煮後の蒸し大豆をそのまま仕込んでもよいが、蒸し大豆をすり潰してミンチ状とし、このミンチ状とした蒸し大豆を仕込むことが好ましい。
蒸し大豆をミンチ状とすることにより、発酵工程において、米麹の酵素による分解が促進され、アミノ酸の生成量が増えると共に、γアミノ酪酸の生成量も増える。
【0032】
上記の仕込み工程において、酵母を添加してもよい。通常、米麹の中に含まれる野生酵母や大気中に存在する野生酵母によってアルコール発酵を行うことができるが、アルコール発酵を促進するために、培養した酵母を添加してもよい。また、仕込み終了後に振り麹を、仕込み層上方の水面に蒔くことが好ましい。この振り麹は、水に浮くように乾燥させた麹で、仕込み層上方をこの振り麹で覆うことにより、雑菌の仕込み層内部への侵入を防止できる。
【0033】
仕込み工程終了後、糖化が開始され、その後、アルコール発酵が行われる。この場合、諸味の温度は15℃以上が好ましい。諸味温度が15℃未満になると、酵母活性が低下し、雑菌侵入の虞がある。
【0034】
アルコール発酵開始後、次いで、酢酸発酵が行われる。この酢酸発酵は、かめ壷内の空気中に存在する酢酸菌の働きで行われるが、種酢を添加して酢酸菌を補給するようにしてもよい。この場合、種酢は、かめ壷内の仕込み層表面に散布される。
【0035】
上記した発酵工程(糖化、アルコール発酵及び酢酸発酵)において、諸味の温度は15℃〜50℃に保持することが好ましい。諸味の温度が15℃未では、酵素活性、酵母活性が低下し、また50℃を超えると、同様に酵素活性、酵母活性が低下し、いずれの場合も発酵速度が小さくなる上、雑菌が発生する虞がある。
【0036】
酢酸発酵により酢酸が生成する。一連の発酵工程の期間は通常、前記原料をかめ壷に仕込んだ後1ヶ月〜6ヶ月間であり、この発酵工程において諸味中の酸度は5%〜8%となる。また、発酵工程において、米麹による酵素(プロテアーゼ酵素)の働きで、諸味中の蛋白質が分解され、アミノ酸が生成する。
【0037】
上記の如くして酢酸(酢)が生成するが、本発明はこれを製品(食酢)としてもよい。しかし、本発明において食酢の旨味を一段と向上させるためには、熟成を行うことが好ましい。以下、発酵工程の後に熟成工程を行う場合について説明する。
【0038】
上記した糖化、アルコール発酵及び酢酸発酵は、同じかめ壷内で行なわれるが、熟成も同様に、同じかめ壷内で行なわれる。即ち、原料を仕込んだ1つのかめ壷内で、発酵及び熟成が継続して行なわれる。熟成温度は、10℃〜50℃が好ましい。熟成期間は長いほど旨味が向上し、まろやかな味となる。従って、製品(食酢)のグレードに応じて熟成期間は適宜決められるが、通常、発酵工程終了後6ヶ月〜5年間熟成が行なわれる。熟成工程において、かめ壷内の上澄み液(酢)が黄土色に着色し、時間の経過と共に次第に色が濃くなり、いわゆる黒酢様の色を呈するようになる。
【0039】
熟成工程終了後、かめ壷より内容物を取り出し、圧搾、ろ過を行なって、液体と固形分を分離し、これにより原酢が得られる。原酢の酸度は、5%〜8%であり、これを水で希釈して酸度を、4%〜5%とする。このようにして、製品としての食酢が得られる。本発明は原料を仕込んだ1つのかめ壷内で発酵及び熟成を行うことに限定されず、発酵終了後、かめ壷内の諸味を別の容器又はタンクに移し入れ、この容器又はタンク内で熟成を行うようにしてもよい。
【0040】
本発明の第2の実施形態として、仕込みを2段階に分けて行なってもよい。
【0041】
即ち、前記した第1の実施形態では、蒸し米、蒸し大豆、米麹及び水を一度にかめ壷内に仕込んだが、本発明の第2の実施形態として、仕込みを2段階に分け、第1段仕込みとして、米麹と水をかめ壷内に仕込み、第1段仕込みから所定期間経過した後に、第2段仕込みとして、同じかめ壷内に蒸し米と蒸し大豆と残量の水を仕込むようにしてもよい。
【0042】
第1段仕込みと、その後に行なわれる第2段仕込みとが完了した後の、かめ壷内仕込原料の配合割合は、前記の第1実施形態と同様、蒸し米10重量%〜30重量%、蒸し大豆1重量%〜20重量%、米麹5重量%〜10重量%、水60重量%〜80重量%(重量換算)が好ましい。
【0043】
また前記第1実施形態と同様、蒸し米の配合量と蒸し大豆の配合量との比率(蒸し米の配合量:蒸し大豆の配合量)は、1:0.1〜1:0.5が好ましい。上記配合のうち、水を除く他の原料は一度に全量が仕込まれる。即ち、第1段仕込みとして、上記配合割合の米麹の全量が仕込まれ、また第2段仕込みとして、上記配合割合の蒸し米及び蒸し大豆のそれぞれの全量が仕込まれる。
【0044】
水は、第1段仕込みと第2段仕込みの2回に分けて仕込まれる。本実施形態においても、蒸し大豆として、すり潰してミンチ状としたものを用いることが好ましい。
【0045】
第1段仕込みにおいて仕込まれる水の配合量は、上記配合割合(60重量%〜80重量%(重量換算))の水の全量のうち、重量換算で米麹の配合量の1倍〜3倍の量が好ましい。水の配合量が重量換算で米麹配合量の1倍未満の量であるときは、米麹の糖化が十分に行われなく、またそれが米麹配合量の3倍を超える量であるときは、米麹濃度が低く、糖化及びアルコール発酵の速度が低下する。
【0046】
第2段仕込みにおいて仕込まれる水の配合量は、上記配合割合(60重量%〜80重量%(重量換算))の水の全量から、第1段仕込みにおける水の配合量を差し引いた量である。また、第1段仕込みにおいて、培養酵母を添加してもよい。
【0047】
第1段仕込みにおいて水の全量を配合しない理由は、第1段仕込み時における米麹濃度を高めるためである。即ち、第1段仕込み時における米麹濃度が高いと、糖化及びアルコール発酵が活発に行なわれ、速やかに諸味のアルコール濃度が上昇する。アルコール濃度が上昇することにより、第2段仕込み時に雑菌の発生を抑制できるほか、第2段仕込み終了後の発酵工程において雑菌の発生を抑制でき、その結果、発酵工程における酵素活性、酵母活性を良好に保持でき、アミノ酸生成を促進できる効果がある。
【0048】
第2段仕込みは、第1段仕込みから所定期間が経過した後に行なわれるが、この所定期間、即ち、第1段仕込み後、第2段仕込みが行なわれるまでの期間は、1日〜10日が好ましい。第2段仕込みまでの期間を1日〜10日とすることにより、諸味のアルコール濃度を上昇できる。第2段仕込みまでの期間が1日未満では、第2段仕込みを行う際の諸味のアルコール濃度が十分でなく、また前記期間が10日を超えると、第2段仕込みを行うまでに酵素活性を良好に維持できなくなる虞がある。
【0049】
第2段仕込みを行うときに、諸味のアルコール濃度が8%〜16%となっていることが好ましい。換言すれば、第1段仕込み後、諸味のアルコール濃度が、8%〜16%となった段階で第2段仕込みを行なうことが好ましいといえる。第2段仕込みを行うときに諸味のアルコール濃度が8%未満であると、第2段仕込み後に雑菌が発生し、発酵速度が低下する虞があり、また前記アルコール濃度が16%を超えると、酵素活性の低下をもたらす虞がある。
【0050】
第2段仕込み後、蒸し米および蒸し大豆を原料とする糖化反応およびアルコール発酵が行われる。第2段仕込みの際、残量の水が配合されるため、一旦、アルコール濃度は薄まるが、雑菌の発生が抑制されているため酵素活性が高く、そのため第2段仕込み時にアルコール発酵が急速に起こり、速やかにアルコール濃度が再び上昇する。そのため、第2段仕込み後の雑菌汚染を抑制できる。
【0051】
第1段仕込み及び第2段仕込みを通しての一連の発酵工程(糖化、アルコール発酵及び酢酸発酵)において、諸味の温度は15℃〜50℃に保持することが好ましい。諸味の温度が15℃未満では、酵素活性、酵母活性が低下し、また50℃を超えると、同様に酵素活性、酵母活性が低下し、いずれの場合も発酵速度が小さくなる上、雑菌が侵入する虞が生じる。
【0052】
第2段仕込み後のアルコール発酵工程において、前記した本発明の第1実施形態の場合と同様、アルコール発酵後に種酢を散布してもよい。アルコール発酵後に酢酸発酵が行われ、酢酸が生成する。発酵工程の期間は通常、第2段仕込み終了後1ヶ月〜6ヶ月間であり、この発酵工程において諸味中の酸度は5%〜8%となる。
【0053】
発酵が終了した後、第1実施形態の場合と同様、熟成を行うことが好ましく、この場合、発酵が行われたかめ壷内で引き続き熟成が行われる。熟成温度は10℃〜50℃が好ましく、また熟成期間は、第2段仕込み後の発酵工程終了後6ヶ月〜5年間が好ましい。熟成工程終了後、かめ壷より内容物を取り出し、圧搾、ろ過を行なって、液体と固形分を分離し、これにより原酢が得られる。原酢の酸度は、5%〜8%であり、これを水で希釈して酸度を、4%〜5%とする。このようにして、製品としての食酢が得られる。尚、本実施形態においても、発酵が行われたかめ壷とは別の容器又はタンクに諸味を移し入れて熟成を行ってもよい。
【0054】
本発明の第2実施形態のように2段階仕込みとすることにより、発酵の初期にアルコール濃度を高めることができ、それにより雑菌の発生を抑制でき、第2段仕込み後に行われるアルコール発酵、酢酸発酵を活発に行うことができる。
【0055】
即ち、一般に、原料仕込み後の発酵工程において、発酵中期は主としてアルコール発酵が進行し、諸味中の酸度も低いため、雑菌汚染を受けやすい環境にあるが、本発明の第2実施形態によれば、初期アルコール濃度が高いことによって発酵の阻害要因となる雑菌の侵入を抑制できるので、酵母活性、酵素活性を良好に維持でき、活発な発酵を実現できる。その結果、食酢の製造効率を向上でき、製造期間を短縮できる効果がある。
【0056】
本発明は発芽玄米に大豆を加えたものを発酵原料としているので、アミノ酸及びγアミノ酪酸に富む食酢を製造できる。即ち、発芽玄米に米麹の酵素(プロテアーゼ酵素)が作用することで、蛋白質の分解が起こり、諸味中のアミノ態窒素量が増える。また、発酵原料として大豆を加えているので、上記酵素の働きで大豆の蛋白質分解が起こることにより、諸味中のアミノ態窒素量は更に増大する。
【0057】
一方、発芽玄米にはγアミノ酪酸が豊富に含まれており、従って、諸味中のγアミノ酪酸の含有量も大きくなる。また、発酵原料として大豆を加えているので、諸味中のγアミノ酪酸の含有量を更に増大できる。大豆の配合によりγアミノ酪酸の含有量が増大するのは、以下の理由によるものと思われる。
【0058】
即ち、大豆蛋白質の分解により、諸味中のグルタミン酸の生成量が増え、米麹の麹菌の働きで、グルタミン酸がγアミノ酪酸に変換され、これによりγアミノ酪酸の含有量が増大するものと考えられる。
【0059】
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0060】
実施例1
まず、次の如くして蒸し米を調製した。
【0061】
金属製容器に、玄米6kgと水12リットルを入れ、玄米を常温で20時間、水に浸漬して発芽させた。水浸漬処理終了後、発芽した玄米を浸漬水と分離して取り出し、水切りを行った後、発芽玄米を蒸煮装置に入れ、水蒸気圧1013HPAの水蒸気を蒸煮装置内に導き、発芽玄米を水蒸気により加熱し蒸煮した。
【0062】
蒸煮は1時間行った。その後、自然放冷により冷却して蒸し米を得た。
【0063】
また、次の如くして蒸し大豆を調製した。
【0064】
金属製容器に、有機大豆700gと水3リットルを入れ、大豆を常温で15時間、水に浸漬した。水浸漬処理終了後、大豆を浸漬水と分離して取り出し、水切りを行った後、大豆を蒸煮装置に入れ、水蒸気圧1013HPAの水蒸気を蒸煮装置内に導き、大豆を水蒸気により加熱し蒸煮した。蒸煮は1時間行った。その後、自然放冷により冷却して蒸し大豆を得た。この蒸し大豆をミンチ機を用いてすり潰し、ミンチ状にした。
【0065】
更に、次の如くして米麹を調製した。
【0066】
金属製容器に、七分づき玄米4kgと水8リットルを入れ、七分づき玄米を常温で17時間、水に浸漬した。水浸漬処理終了後、七分づき玄米を浸漬水と分離して取り出し、水切りを行った後、七分づき玄米を製麹装置に入れ、水蒸気圧1013HPAの水蒸気を装置内に導き、七分づき玄米を水蒸気により加熱し蒸煮した。蒸煮は1時間行った。得られた蒸煮処理米を自然放冷により冷却した後、この蒸煮処理米に種麹(黄麹)を蒔き、製麹を開始した。製麹は、温度36℃で、42時間行った。このようにして米麹を得た。
【0067】
上記の如く調製した蒸し米、蒸し大豆(ミンチ状)、米麹を用い、蒸し米8.1kg(元原料6kg)、蒸し大豆(ミンチ状)1.44kg(元原料700g)、米麹4.2kg(元原料4kg)、水36リットルの配合割合で、これらを一度に陶磁器製のかめ壷に仕込んだ。
【0068】
仕込み終了後、振り麹300gを仕込み層上部に蒔き、かめ壷に蓋をして静置した。このようにして糖化、アルコール発酵、酢酸発酵を行った。一連の発酵工程は仕込み後、6ヶ月間行った。発酵工程終了後、圧搾、ろ過を行って、原酢を得た。原酢の酸度は、6.4%であった。これを水で希釈して、酸度4.4%の食酢を得た。
【0069】
得られた食酢について液体クロマトグラフ法(ポストカラム誘導体化高速液体クロマトグラフ法)により、アミノ酸の総含有量を分析したところ、アミノ酸総含有量は、501mg/100mlであった。また、同液体クロマトグラフ法により、γアミノ酪酸の含有量を分析したところ、γアミノ酪酸含有量は、63mg/100mlであった。アミノ酸組成(遊離アミノ酸)を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
実施例2
実施例1と同様の方法、条件にて、発芽玄米を用いた蒸し米を調製した。また、実施例1と同様の方法、条件にて、蒸し大豆及び米麹を調製した。米麹4.2kgと水10リットルを陶磁器製のかめ壷に仕込み、蓋を閉めて静置した(第1段仕込み)。
【0072】
第1段仕込み後、8日経過後にかめ壷の蓋を開け、蒸し米8.1kg、蒸し大豆(ミンチ状)1.44kg、水26リットルを仕込み、振り麹300gを仕込み層上部に蒔き、再び蓋を閉めて静置した(第2段仕込み)。
【0073】
この第2段仕込みを開始するときの諸味のアルコール濃度を測定したところ10%であった。
【0074】
第2段仕込み後、糖化、アルコール発酵、酢酸発酵を行った。第2段仕込み後の一連の発酵工程は、第2段仕込み後6ヶ月間行った。発酵工程終了後、圧搾、ろ過を行って、原酢を得た。原酢の酸度は、6.9%であった。これを水で希釈して、酸度4.4%の食酢を得た。
【0075】
得られた食酢について実施例1と同様の測定法によりアミノ酸の総含有量及びγアミノ酪酸の含有量を分析したところ、アミノ酸総含有量は、508mg/100mlであり、またγアミノ酪酸含有量は、64mg/100mlであった。
【0076】
実施例3
実施例1で用いた、蒸し米、蒸し大豆(ミンチ状)、米麹、水を実施例1と同様の配合割合で、一度に陶磁器製のかめ壷に仕込んだ。実施例1と同様の方法、条件にて発酵を行った。発酵工程は仕込み後、6ヶ月間行った。
【0077】
発酵工程終了後、同じかめ壷内で熟成を行った。熟成は発酵工程終了後1年6ヶ月間行った。即ち、発酵工程及び熟成工程の全工程期間は、仕込み後2年間であった。
【0078】
熟成終了後、圧搾、ろ過を行って、原酢を得た。原酢の酸度は、6.4%であった。これを水で希釈して、酸度4.4%の食酢を得た。
【0079】
得られた食酢について、実施例1と同様の測定法によりアミノ酸の総含有量及びγアミノ酪酸の含有量を分析したところ、アミノ酸総含有量は、714mg/100mlであり、またγアミノ酪酸含有量は、65mg/100mlであった。
【0080】
実施例4
実施例1で用いた、米麹と水を実施例2と同様の配合割合で、陶磁器製のかめ壷に仕込み(第1段仕込み)、その後、実施例1で用いた、蒸し米、蒸し大豆(ミンチ状)、水を実施例2と同様の配合割合で仕込み(第2段仕込み)、実施例2と同様の方法、条件にて発酵を行った。発酵工程は、第2段仕込み後6ヶ月間行った。
【0081】
発酵工程終了後、同じかめ壷内で熟成を行った。熟成は第2段仕込み後の発酵工程終了後1年間行った。即ち、第2段仕込み後の発酵工程及び熟成工程の全工程期間は、第2段仕込み後1年6ヶ月間であった。
【0082】
熟成終了後、圧搾、ろ過を行って、原酢を得た。原酢の酸度は、6.9%であった。これを水で希釈して、酸度4.4%の食酢を得た。
【0083】
得られた食酢について、実施例1と同様の測定法によりアミノ酸の総含有量及びγアミノ酪酸の含有量を分析したところ、アミノ酸総含有量は、715mg/100mlであり、またγアミノ酪酸含有量は、66mg/100mlであった。この実施例に示す2段仕込み方法によれば、熟成期間を短縮した場合でも、実施例3と同様の高いアミノ酸総含有量及び高いγアミノ酪酸含有量を有する食酢が得られることが判明した。
【0084】
比較例1
実施例1における蒸し大豆の代わりに市販の納豆を用いた以外は実施例1と同様の配合割合で原料を一度に陶磁器製のかめ壷に仕込み、同様の方法及び条件により発酵を行った。仕込み後、約15時間後に仕込み表面に雑菌が発生したので取り除いた。種酢を散布した後、2日後に雑菌が発生したので取り除いたが、その後も雑菌が発生し、その都度、雑菌の取り除きを行った。発酵終了まで雑菌は毎日発生した。発酵工程は仕込み後、6ヶ月間行った。
【0085】
発酵工程終了後、同じかめ壷内で熟成を行った。熟成は発酵工程終了後1年間行った。熟成後のろ過処理において、上澄み液は時間をかけてろ過することができたが、諸味は粘性が高くてほとんどろ過することができなかった。
【0086】
得られた食酢は納豆臭があった。得られた食酢について実施例1と同様の測定法によりアミノ酸の総含有量及びγアミノ酪酸の含有量を分析したところ、アミノ酸総含有量は、424mg/100mlであり、またγアミノ酪酸含有量は、4mg/100mlであった。
【0087】
比較例2
実施例1における蒸し米の代わりに、発芽していない通常の玄米を用いて調製した蒸し米を用いた点及び蒸し大豆を加えなかった点を除き、実施例1と同様の配合割合(蒸し米8.1kg、米麹4.2kg、水36リットル)で原料を一度に陶磁器製のかめ壷に仕込み、同様の方法及び条件により発酵を行った。発酵工程は仕込み後、6ヶ月間行った。
【0088】
発酵工程終了後、同じかめ壷内で熟成を行った。熟成は発酵工程終了後2年間行った。熟成終了後、圧搾、ろ過を行って原酢を得た。原酢の酸度は7.1%であった。これを水で希釈して酸度4.4%の食酢を得た。
【0089】
得られた食酢について、実施例1と同様の測定法によりアミノ酸の総含有量及びγアミノ酪酸の含有量を分析したところ、アミノ酸総含有量は、428mg/100mlであり、またγアミノ酪酸含有量は、37mg/100mlであった。
【0090】
(抗酸化性試験)
本発明食酢について下記のごとく抗酸化性試験を行った。この試験は、フリーラディカル評価装置FREE(ウィスマー社製:医療機器届出番号13B2X10066W00003)を用いて行った。本発明の実施例3により製造した食酢を水で希釈して、それぞれ1%、5%、10%濃度の溶液を準備し、それぞれ試料1(1%溶液)、試料2(5%溶液)、試料3(10%溶液)とした。次亜塩素酸混入試薬1mlに試料1の10μlを加えて混合し、37℃で10分間保温した後、呈色液クロモゲンを滴下した。試料液は呈色液クロモゲンと反応して、赤色に呈色するので、この色の濃度を光度計により測定した。光度計における光の波長546nm、計測時間3秒の条件で測定を行った。
【0091】
このようにして測定された濃度は、試料1における食酢により消去されずに残った次亜塩素酸の量と比例関係にある。即ち、試料1における食酢の抗酸化作用により次亜塩素酸が消去されるが、消去されずに残った次亜塩素酸はクロモゲン液と呈色反応を起こす。従って、呈色の濃度が大きければ、消去されずに残った次亜塩素酸の量が多く、反対に呈色の濃度が小さければ、消去されずに残った次亜塩素酸の量が少ないという関係にある。
【0092】
測定濃度とブランク濃度(食酢を加えない次亜塩素酸のみの溶液とクロモゲン液との呈色反応による色の濃度)とを比較し、濃度と次亜塩素酸量との関係から、消去された次亜塩素酸量を求めることができ、その数値が測定値として表示される。消去された次亜塩素酸量はモル濃度(μmol/l)の単位で表示される。結果を表2に示す。消去された次亜塩素酸量が多ければ多いほど、それだけ試料の抗酸化力が高いということを意味する。
【0093】
試料2、試料3についても、それぞれ前記した試験方法に準拠して抗酸化性試験を行い、消去された次亜塩素酸の量を測定した。また、比較のため、下記試料4〜12についても同様に、それぞれ前記した試験方法に準拠して抗酸化性試験を行い、消去された次亜塩素酸の量を測定した。
試料4:比較例2により製造した食酢の1%溶液
試料5:比較例2により製造した食酢の5%溶液
試料6:比較例2により製造した食酢の10%溶液
試料7:ビタミンC 0.1mg/dl溶液
試料8:ビタミンC 1mg/dl溶液
試料9:ビタミンC 10mg/dl溶液
試料10:タウリン 10μmol/l
試料11:タウリン 100μmol/l
試料12:タウリン 1000μmol/l
結果を表2に示す。
【0094】
【表2】

【0095】
上記結果によれば、1%溶液である試料1(実施例3における食酢)と試料4(従来製法による食酢)を対比すると、試料1のほうが試料4よりも消去された次亜塩素酸量が多い。また、5%溶液である試料2(実施例3における食酢)と試料5(従来製法による食酢)を対比すると、試料2のほうが試料5よりも消去された次亜塩素酸量が多い。更に、10%溶液である試料3(実施例3における食酢)と試料6(従来製法による食酢)を対比すると、試料3のほうが試料6よりも消去された次亜塩素酸量が多い。
【0096】
従って、本発明食酢(試料1〜3)は、従来製法により製造した食酢(試料4〜6)に比べて抗酸化力が大きいことが判明した。また、本発明食酢(試料1〜3)は、ビタミンC(試料7〜9)やタウリン(試料10〜12)に比較して消去された次亜塩素酸量が極めて高い数値を示している。従って、本発明食酢(試料1〜3)とビタミンC(試料7〜9)との対比及び本発明食酢(試料1〜3)とタウリン(試料10〜12)との対比において、本発明食酢(試料1〜3)は抗酸化力において顕著に優れていることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
玄米を水に浸漬して得られた発芽玄米を蒸煮して蒸し米を調製し、大豆を蒸煮して蒸し大豆を調製し、蒸し米と蒸し大豆と麹と水を容器内に仕込み、糖化、アルコール発酵及び酢酸発酵させて得られる食酢。
【請求項2】
蒸し米10重量%〜30重量%、蒸し大豆1重量%〜20重量%の配合割合で、蒸し米と蒸し大豆を仕込んで得られる請求項1記載の食酢。
【請求項3】
蒸し米の配合量と蒸し大豆の配合量との比率が、1:0.1〜1:0.5となるように仕込んで得られる請求項1又は2記載の食酢。
【請求項4】
仕込みは第1段仕込みと第2段仕込みの2段階に分けて行ない、第1段仕込みにおいて、麹と水を仕込み、第1段仕込みの後に行う第2段仕込みにおいて、蒸し米と蒸し大豆と残量の水を仕込んで得られる請求項1〜3のいずれかに記載の食酢。
【請求項5】
第1段仕込みにおける水の配合量が、重量換算で麹の配合量の1倍〜3倍の量となるように仕込んで得られる請求項4記載の食酢。
【請求項6】
第1段仕込み後、諸味のアルコール濃度が8%〜16%となった段階で第2段仕込みを行うことにより得られる請求項4又は5記載の食酢。
【請求項7】
蒸し大豆として、すり潰してミンチ状とした蒸し大豆を用いて得られる請求項1〜6のいずれかに記載の食酢。
【請求項8】
玄米を水に浸漬して得られた発芽玄米を蒸煮して蒸し米を調製し、大豆を蒸煮して蒸し大豆を調製し、蒸し米と蒸し大豆と麹と水を容器内に仕込み、糖化、アルコール発酵及び酢酸発酵を行なうことを特徴とする食酢の製造方法。
【請求項9】
蒸し米10重量%〜30重量%、蒸し大豆1重量%〜20重量%の配合割合で、蒸し米と蒸し大豆を仕込むものである請求項8記載の食酢の製造方法。
【請求項10】
蒸し米の配合量と蒸し大豆の配合量との比率は、1:0.1〜1:0.5である請求項8又は9記載の食酢の製造方法。
【請求項11】
仕込みは第1段仕込みと第2段仕込みの2段階に分けて行ない、第1段仕込みにおいて、麹と水を仕込み、第1段仕込みの後に行う第2段仕込みにおいて、蒸し米と蒸し大豆と残量の水を仕込むものである請求項8〜10のいずれかに記載の食酢の製造方法。
【請求項12】
第1段仕込みにおける水の配合量は、重量換算で麹の配合量の1倍〜3倍の量である請求項11記載の食酢の製造方法。
【請求項13】
第1段仕込み後、諸味のアルコール濃度が8%〜16%となった段階で第2段仕込みを行う請求項11又は12記載の食酢の製造方法。
【請求項14】
蒸し大豆として、すり潰してミンチ状とした蒸し大豆を用いる請求項8〜13のいずれかに記載の食酢の製造方法。