説明

食鳥屠体筋入れ装置

【課題】 食鳥屠体の肩甲骨縁部に沿って筋入れする装置を提供する。
【解決手段】 先端部が、前後左右上下方向に移動可能であり且つ上下軸回りに回転可能な、ロボットアームと、ロボットアームの前記先端部に取り付けられ、刃先が鎬方向に揺動付勢された片刃の刃物と、頭部が切除され内蔵が除去された食鳥屠体の上半部を下方から支持しつつロボットアームの作動領域を横切って走行するコンベアとを備え、肩骨の上腕骨に対峙する縁部に位置決めされた筋入れ開始位置から、肩骨と肩甲骨上端部とを通って、肩甲骨下端部の縁部に位置決めされた筋入れ終了位置まで、刃物の鎬を骨の縁部に当接させつつ、刃物の刃先を骨の縁部に沿って移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肩甲骨縁部に沿って食鳥屠体に筋入れする装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
頭部が切除され内蔵が除去された食鳥屠体の上半部から手羽部を分離する作業に先立って、肩甲骨縁部に沿って食鳥屠体に筋入れする作業が行われる。当該作業は従来人手によって行われていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は食鳥屠体の解体作業の効率化を図るべく、肩甲骨縁部に沿って食鳥屠体に筋入れする作業を自動的に行う装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明においては、先端部が、前後左右上下方向に移動可能であり且つ上下軸回りに回転可能な、ロボットアームと、ロボットアームの前記先端部に取り付けられ、刃先が鎬方向に揺動付勢された片刃の刃物と、頭部が切除され内蔵が除去された食鳥屠体の上半部を下方から支持しつつロボットアームの作動領域を横切って走行するコンベアとを備え、肩骨の上腕骨に対峙する縁部に位置決めされた筋入れ開始位置から、肩骨と肩甲骨上端部とを通って、肩甲骨下端部の縁部に位置決めされた筋入れ終了位置まで、刃物の鎬を骨の縁部に当接させつつ、刃物の刃先を骨の縁部に沿って移動させることを特徴とする食鳥屠体筋入れ装置を提供する。
本発明に係る筋入れ装置においては、ロボットアームが刃物を駆動して自動的に筋入れ作業を行うので、筋入れ作業が効率化される。
刃先を鎬方向へ揺動付勢した刃物の鎬を骨の縁部に当接させるので、刃物と骨との接触が線接触となって両者の接触面積が減少し、また刃先を骨の縁部に接近させ且つ刃先が骨に食い込むのを防止することができる。この結果、刃先の移動がスムーズになる。
【0005】
本発明の好ましい態様においては、刃物の刃先は、鎬方向と反対方向とに揺動可能である。
刃物の刃先を、鎬方向と反対方向とに揺動可能とすることにより、筋入れ開始位置から終了位置まで、骨の縁部が形成する蛇行する曲線に沿って筋入れすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の実施例に係る食鳥屠体筋入れ装置の全体構成図である。(a)は上面図であり、(b)は(a)のb−b矢視図であり、(c)は(a)のc−c矢視図である。
【図2】本発明の実施例に係る食鳥屠体筋入れ装置の刃物近傍の拡大図である。(a)は刃物の側面図であり、(b)は(a)のb−b矢視図である。
【図3】本発明の実施例に係る食鳥屠体筋入れ装置による筋入れ作業のフローを示す図である。(a)は筋入れ開始から筋入れ終了までの刃先の軌跡を示す図であり、(b)は刃物と骨との係合状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施例に係る食鳥屠体筋入れ装置を説明する。
【0008】
下記の説明において、図1の矢印I、II、III方向を、それぞれ前後方向、左右方向、上下方向と呼ぶ。
図1、2に示すように、食鳥屠体筋入れ装置Aは、先端部1aが、前後左右上下方向に移動可能であり且つ上下軸回りに回転可能な、一対のロボットアーム1を備えている。
ロボットアーム1の先端部1aに、支持部材2a、2bを介して片刃の刃物3が取り付けられている。支持部材2aはロボットアーム1の先端部1aに着脱可能に取り付けられ、支持部材2bは第1水平軸X1回りに揺動可能に支持部材2aに取り付けられ、刃物3は第1水平軸X1に直交する第2水平軸X2回りの揺動位置可変に且つ選択された揺動位置に固定可能に支持部材2bに取り付けられている。
支持部材2bを、ひいては刃物3の刃先3aを第1水平軸X1回りに鎬3b方向へ揺動付勢するスプリングプランジャ4が、支持部材2aに取り付けられている。鎬3b方向への刃先3aの最大揺動角を規定するストッパ5が、支持部材2bを間に挟んでスプリングプランジャ4に対峙して、支持部材2aに取り付けられている。従って、刃先3aは、スプリングプランジャ4のストッパ5によって規制された最大突出位置によって定まる鎬3b方向への最大揺動角度位置と、鎬3bに加わる反力を受けたスプリングプランジャ4の最大収縮位置によって定まる鎬3bとは反対方向への最大揺動角度位置との間で揺動可能である。
図2(a)から分かるように、刃物3の尖端3cは僅かに下方へ差し向けられている。
【0009】
食鳥屠体筋入れ装置Aは、前記一対のロボットアーム1の間を通って、ロボットアーム1の作動領域を走行するコンベア6を備えている。コンベア6には、食鳥屠体の上半部100の腹腔に下方から進入して前記上半部100を下方から支持する複数の支持コーン7が、所定長手方向間隔で取り付けられている。
図1(a)に示すように、一対のロボットアーム1の一方は、図1(a)で白抜矢印で示すコンベア6の走行方向に関して、他方よりも上流側に配設されている。
コンベア6の走行方向に関してロボットアーム1よりも上流側に、コンベア6を間に挟んで一対の光センサ8が配設されている。
【0010】
食鳥屠体筋入れ装置Aの作動を説明する。
図示しない作業者が、食鳥屠体上半部100を支持コーン7に上方から外嵌合させ、支持コーン7を下方から腹腔内に進入させて、支持コーン7によって食鳥屠体上半部100を下方から支持させる。
長手方向に整列した複数の支持コーン7がそれぞれ食鳥屠体上半部100を下方から支持したコンベア6が、図1(a)の白抜矢印の方向へ走行する。
コンベア6を挟んで対峙する一対の光センサ8が、両者の間を通過する食鳥屠体上半部100の肩幅を計測する。計測結果は前記一対のロボットアーム1の図示しない制御装置に送信される。
前記制御装置は、光センサ8からの入力信号により、食鳥屠体上半部100のロボットアーム1への接近と、食鳥屠体上半部100の肩幅とを認識する。
前記制御装置は、食鳥屠体上半部100の肩幅と、支持コーン7によって支持された食鳥屠体上半部100の肩骨の上腕骨に対峙する縁部に位置決めされた筋入れ開始位置の座標との間の予め記憶した相関データとに基づいて、筋入れ開始位置の座標を、上流側と下流側のロボットアーム1のそれぞれについて算出する。
【0011】
制御装置は、食鳥屠体上半部100が上流側のロボットアーム1による筋入れ作業開始位置に到達するのに合わせて、上流側のロボットアーム1を駆動して、図3(a)に示すように、刃物3の尖端3cを、上流側のロボットアーム1寄りの肩骨100aの上腕骨100bに対峙する縁部に位置決めされた筋入れ開始位置P1へ移動させ、尖端3cを筋入り開始位置P1の食鳥屠体表面に略正対させ、刃物3の鎬3bを肩骨100a側へ差し向けて、刃物3の尖端3cを食鳥屠体100に突入させ、鎬3bを肩骨100aの上腕骨100bに対峙する縁部に当接させる。
【0012】
制御装置は、次いで、上流側のロボットアーム1を駆動して、筋入れ開始位置から、肩甲骨100c上端部を通って肩甲骨100c下端部の縁部に位置決めされた筋入れ終了位置P2まで、図3(b)に示すように、刃物3の鎬3bを骨の縁部に当接させつつ、骨の縁部に沿って刃先3aを移動させる。
鎬3bが骨の縁部に当接するので、刃物3と骨の縁部との接触は線接触になり、両者の接触面積が減少する。刃先3aは鎬3b方向へ揺動付勢されているので、図3(b)から分かるように、鎬3bを骨の縁部に当接させれば、刃先3aは骨の縁部に接近するが、鎬3bが骨の縁部に当接しているので、骨には食い込まない。この結果、刃先3aの移動がスムーズになる。
刃先3aは、鎬3b方向と反対方向とへ所定範囲で揺動可能なので、鎬3bを骨の縁部に押し当てつつ、刃先3aを下方へ移動させることにより、刃先3aは筋入れ開始位置P1から筋入れ終了位置P2に至る骨縁部の蛇行する輪郭に追随して移動する。この結果、肩骨100aと肩甲骨100cの縁部に沿って、蛇行線ℓを描いて、食鳥屠体上半部100の上流側のロボットアーム1寄りの部位が筋入れされる。
【0013】
制御装置は、食鳥屠体上半部100が下流側のロボットアーム1による筋入れ作業開始位置に到達するのに合わせて、下流側のロボットアーム1を上流側のロボットアームと同様に駆動し、食鳥屠体上半部100の下流側のロボットアーム1寄りの部位を肩骨と肩甲骨とに沿って筋入れする。
【0014】
上記説明から分かるように、ロボットアーム1が刃物3を駆動して自動的に筋入れ作業を行うので、筋入れ作業が効率化される。
刃先3aを鎬3b方向へ揺動付勢した刃物3の鎬3bを骨の縁部に当接させるので、刃物3と骨との接触が線接触となって両者の接触面積が減少し、また刃先3aを骨の縁部に接近させ且つ刃先3aが骨に食い込むのを防止することができる。この結果、刃先3aの移動がスムーズになり、筋入れ作業が効率化される。
刃先3aは、鎬3b方向と反対方向とへ所定範囲で揺動可能なので、鎬3bを骨の縁部に押し当てつつ、刃先3aを下方へ移動させることにより、刃先3aは筋入れ開始位置から終了位置に至る骨縁部の蛇行する輪郭に追随して移動することができる。
食鳥屠体上半部100の肩幅を検知して、食鳥屠体寸法の固体差を認識し、筋入れ開始位置を調整するので、寸法にバラツキのある食鳥屠体群を精度良く筋入れすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、肩甲骨縁部に沿って食鳥屠体に筋入れする作業に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0016】
1 ロボットアーム
2a、2b 支持部材
3 刃物
3a 刃先
3b 鎬
3c 尖端
4 スプリングプランジャ
5 ストッパ
6 コンベア
7 支持コーン
8 光センサ
P1 筋入れ開始位置
P2 筋入れ終了位置
100 食鳥屠体上半部
100a 肩骨
100b 上腕骨
100c 肩甲骨

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部が、前後左右上下方向に移動可能であり且つ上下軸回りに回転可能な、ロボットアームと、ロボットアームの前記先端部に取り付けられ、刃先が鎬方向に揺動付勢された片刃の刃物と、頭部が切除され内蔵が除去された食鳥屠体の上半部を下方から支持しつつロボットアームの作動領域を横切って走行するコンベアとを備え、肩骨の上腕骨に対峙する縁部に位置決めされた筋入れ開始位置から、肩骨と肩甲骨上端部とを通って、肩甲骨下端部の縁部に位置決めされた筋入れ終了位置まで、刃物の鎬を骨の縁部に当接させつつ、刃物の刃先を骨の縁部に沿って移動させることを特徴とする食鳥屠体筋入れ装置。
【請求項2】
刃物の刃先は、鎬方向と反対方向とに揺動可能であることを特徴とする請求項1に記載の食鳥屠体筋入れ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−125317(P2011−125317A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289660(P2009−289660)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(504225356)プライフーズ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】