説明

食鳥屠体首皮切開装置

【課題】 首皮先端部まで確実に首皮を自動的に切開できる食鳥屠体の首皮切開装置を提供する。
【解決手段】 頭部が切除され内蔵が除去された食鳥屠体の肩部を保持する肩部保持手段と、食鳥屠体の下腹部に形成した開口から腹腔を通って首皮の腹側の部位と首骨との間に進入し、首骨に沿って首皮先端部を越えて延在して、首皮に周方向の張力を付与する張力付与手段と、首皮の腹側の部位の先端部に当接して該部を肩寄りの基部へ向けて付勢する首皮付勢手段と、首皮の背側の部位を肩寄りの基部から先端部へ向けて切開する首皮切開手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部が切除され内蔵が除去された食鳥屠体の首皮を肩寄りの基部から先端部まで自動的に切開する食鳥屠体首皮切開装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
頭部が切除され内蔵が除去された食鳥屠体の首皮を肩寄りの基部から先端部まで自動的に切開する食鳥屠体首皮切開装置が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57−170141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された従来の装置には、首骨を折断し、折断した首骨を首皮先端部から押し出しつつ首骨から分離した首皮を首皮先端部へ向けて切開するので、首骨が首皮先端部から離脱した後の自由状態となった首皮先端部と切開刃との係合状態が解除される場合があり、ひいては首皮先端部を切開できない場合があるという問題があった。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、首皮先端部まで確実に首皮を自動的に切開できる食鳥屠体の首皮切開装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては、頭部が切除され内蔵が除去された食鳥屠体の肩部を保持する肩部保持手段と、食鳥屠体の下腹部に形成した開口から腹腔を通って首皮の腹側の部位と首骨との間に進入し、首骨に沿って首皮先端部を越えて延在して、首皮に周方向の張力を付与する張力付与手段と、首皮の腹側の部位の先端部に当接して該部を肩寄りの基部へ向けて付勢する首皮付勢手段と、首皮の背側の部位を肩寄りの基部から先端部へ向けて切開する首皮切開手段とを備えることを特徴とする食鳥屠体首皮切開装置を提供する。
本発明に係る食鳥屠体首皮切開装置においては、張力付与手段が首皮の腹側の部位と首骨との間に進入し、首骨に沿って首皮先端部を越えて延在して、首皮に周方向の張力を付与し、首皮付勢手段が首皮の腹側の部位の先端部に当接して該部を肩寄りの基部へ向けて付勢する。首皮先端部には周方向の張力が作用しているので、首皮付勢手段から付勢力を受けた首皮先端部は、腹側の部位のみならず背側の部位も肩寄りの基部へ向けて移動し、首皮先端部の背側の部位は首骨に当接する。首皮先端部の背側の部位は、周方向の張力を付与され且つ首骨に当接して、自由状態にならないので、首皮先端部の背側の部位と首皮切開手段との係合状態が解除される事態の発生が防止され、首皮が先端部まで確実に切開される。
【0006】
本発明の好ましい態様においては、張力付与手段には長手方向に延在して首骨を収容する溝が形成され、溝から外れた首骨に係合して首骨を溝へ案内する首骨案内手段を備え、首皮切開手段は刃と刃案内部材とを有し、首皮切開手段は、刃案内部材が張力付与手段に当接し、刃が首皮の背側の部位を貫通し首骨周囲の肉に僅かに食い込んだ状態で、首骨に沿って移動する。
張力付与手段に形成された長手方向の溝に首骨が収容され、刃案内部材が張力付与手段に当接することにより、刃が首骨に対して位置決めされる。首骨は首骨案内手段によって確実に前記溝へ導かれる。首皮切開手段の刃を首皮の背側の部位を貫通させ首骨周囲の肉に僅かに食い込ませることにより、前記刃と首皮との係合状態を維持することができる。
【0007】
本発明の好ましい態様においては、首皮切開手段の刃は、首骨に接近離隔する方向へ移動可能であり、首皮切開手段は刃を首骨に接近する方向へ付勢するバネを有している。
首骨に接近離隔する方向へ移動可能な刃を、首骨に接近する方向へバネが付勢するので、バネの付勢力を適正値に設定することにより、刃と首骨周囲の肉との係合状態を維持し、ひいては刃と首皮との係合状態を維持し、且つ刃が首骨周囲の肉に深く食い込むのを防止することができる。
【0008】
本発明の好ましい態様においては、張力付与手段の先端部が食鳥屠体の背側へ湾曲している。
張力付与手段を首皮の腹側の部位と首骨との間へ導くために、食鳥屠体の下腹部に形成した開口の腹側の端部から張力付与手段を腹腔内へ進入させるのが望ましい。張力付与手段の先端が前記開口から外れるのを防止するために、張力付与手段の先端を食鳥屠体の背側へ湾曲させておくのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例に係る食鳥屠体首皮切開装置の全体構造を示す側面図である。
【図2】本発明の実施例に係る食鳥屠体首皮切開装置が備える首皮切開組立体の側面図である。
【図3】本発明の実施例に係る食鳥屠体首皮切開装置が備える張力付与部材の構造図である。(a)は上面図であり、(b)は(a)のb−b矢視図であり、(c)は(a)のc−c矢視図であり、(d)は(b)のd−d矢視図である。
【図4】本発明の実施例に係る食鳥屠体首皮切開装置が備える肩保持腕と首骨案内部材の構造図である。(a)は首骨案内部材が退避位置に在る時の上面図であり、(b)は首骨案内部材が退避位置に在る時の側面図であり、(c)は首骨案内部材が稼働位置に在る時の上面図であり、(d)は首骨案内部材が稼働位置に在る時の側面図である。
【図5】本発明の実施例に係る食鳥屠体首皮切開装置が備える首皮付勢部材の構造図である。(a)は側面図であり、(b)は上面図である。
【図6】本発明の実施例に係る食鳥屠体首皮切開装置が備える首皮切開組立体の部分側面図及び部分上面図である。(a)は刃が一方向へ移動した時の部分側面図であり、(b)は刃が一方向へ移動した時の部分上面図であり、(c)は刃が他方向へ移動した時の部分側面図であり、(c)は刃が他方向へ移動した時の部分上面図である。
【図7】本発明の実施例に係る食鳥屠体首切開装置が備える首皮切開組立体の側面図である。
【図8】本発明の実施例に係る食鳥屠体首切開装置が備える首皮切開組立体の側面図である。
【図9】本発明の実施例に係る食鳥屠体首切開装置が備える首皮切開組立体と首皮付勢部材の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施例に係る食鳥屠体首皮切開装置を説明する。
【0011】
図1に示すように、食鳥屠体首皮切開装置Aは、直立した中心軸1を取り巻いて配設され中心軸1に固定された第1案内レール組立体2と、第1案内レール組立体2を取り巻いて配設され中心軸1に回転可能に支持された首皮切開組立体3と、首皮切開組立体3を取り巻いて配設され、中心軸1に固定された第2案内レール組立体4とを備えている。
食鳥屠体首皮切開装置Aは、内臓除去装置、上下分割装置等を含む食鳥屠体処理装置の一部を形成している。
食鳥屠体100をシャックルBに懸架して食鳥屠体処理装置を形成する各種処理装置間を搬送するチェーンコンベアCの一部が、上方から見て首皮切開組立体3の一部に寄り添って円弧状に延在している。
【0012】
図1に示すように、第1案内レール組立体2は、上下に分散して且つ周方向に分散して複数配設され基部が中心軸1に固定された腕部材21と、腕部材21の先端部に固定されたレール保持部材22と、レール保持部材22に保持されて中心軸1を取り巻く棒状部材から成る複数の上下一対の、上方から見て円環状のガイドレール23とを有している。
【0013】
図1、2に示すように、首皮切開組立体3は、第1案内レール組立体2の最上段の腕部材21よりも上方に配設され中心部が回転可能に中心軸1に支持された上円板31aと、最下段の腕部材21よりも下方に配設され中心部が回転可能に中心軸1に支持された下円板31bと、周方向に互いに間隔を隔てて配設され上端が上円板31aの外縁部に下端が下円板31bの外縁部に固定された複数対のガイド棒32と、上下摺動可能に上方から下方へ向けて順次各対のガイド棒32に取り付けられた摺動体33a、33b、33c、33dとを有している。
摺動体33a、33b、33c、33dは、それぞれ上下一対のガイドレール23によって挟持されており、ガイドレール23によって上下に案内される。
【0014】
図1〜3に示すように、略鉛直下向きに延びる棒状の張力付与部材34の上端が、連結部材を介して摺動体33aに固定されている。張力付与部材34の下端部34aは、上方から見て複数のガイド棒32の包絡線が形成する円弧に対して径方向外方へ湾曲している。張力付与部材34の下方部分には、上方から見て複数のガイド棒32の包絡線が形成する円弧に対して径方向外方の部位に、長手方向へ延びる溝34bが形成され、上方から見て複数のガイド棒32の包絡線が形成する円弧に対して径方向内方の部位に、長手方向へ延びる溝34cが形成されている。
【0015】
図1、2に示すように、上方から見て複数のガイド棒32の包絡線が形成する円弧に対して径方向外方へ「八」字状に広がった一対の胴部保持腕35が、摺動体33aと摺動体33bの間の上下位置に配設されてガイド棒32に固定されている。
【0016】
図1、2、4に示すように、上方から見て複数のガイド棒32の包絡線が形成する円弧に対して径方向外方へ「八」字状に広がった一対の肩保持腕36が、摺動体33bに固定されている。
図4に示すように、上方から見て複数のガイド棒32の包絡線が形成する円弧に対して径方向外方へ開放端が差し向けられた平面形状がコ字状の首骨案内部材37が、一対の肩保持腕36の間に位置決めされている。首骨案内部材37の両側部の下面は、一対の肩保持腕36の上面に当接している。連結部材37aが、一対の肩保持腕36の直下で、首骨案内部材37の下部から、上方から見て複数のガイド棒32の包絡線が形成する円弧に対して径方内方へ延びている。連結部材37aは、バネ37bによって、上方から見て複数のガイド棒32の包絡線が形成する円弧に対して径方内方へ付勢されている。図1、2、4に示すように、連結部材37aの端部が、上方から見て複数のガイド棒32の包絡線が形成する円弧に対して径方向外方から、ガイドレール23’に当接している。ガイドレール23’は、摺動体33bを挟持するガイドレール23を保持する保持部材22によって保持されている。
【0017】
図1、2に示すように、首皮付勢部材38が、摺動体33cに固定されている。図5に示すように、首皮付勢部材38の、上方から見て複数のガイド棒32の包絡線が形成する円弧に対して径方向外方の端部38aの水平断面形状は、張力付与部材34の溝34c及びその近傍部の水平断面形状に対する相補形状となっている。
【0018】
図1、2、6に示すように、L形に屈曲した棒状部材39aの先端部に刃39bが取り付けられ、刃39bに隣接して棒状部材39aの先端部に刃案内ローラ39cが取り付けられ、棒状部材39aの先端近傍部に従動ローラ39dが取り付けられ、棒状部材39aの基部近傍部に従動ローラ39eが取り付けられた首皮切開部材39の基部が、連結部材を介して、上方から見て複数のガイド棒32の包絡線が形成する円弧に対して接線方向に延在する軸線回りに回動可能に、摺動体33dに取り付けられている。棒状部材39aは自重により下向きに回動するように付勢されている。刃39bは、棒状部材39aの先端部の延在方向に対して直交方向に、且つ上方から見て複数のガイド棒32の包絡線が形成する円弧に対して径方向に、移動可能に、棒状部材39aの先端部に取り付けられている。前記円弧に対して径方向内方へ刃39bを付勢するバネ39fが棒状部材39aの先端部に取り付けられている。
【0019】
張力付与部材34、胴部保持腕35、肩保持腕36、首皮付勢部材38、首皮切開部材39は、何れも、上方から見て複数のガイド棒32の包絡線が形成する円弧に対して、放射状に径方向外方へ突出している。張力付与部材34の溝34bは、上方から見て複数のガイド棒32の包絡線が形成する円弧に対して、径方向外方へ差し向けられている。張力付与部材34の溝34cは、上方から見て複数のガイド棒32の包絡線が形成する円弧に対して、径方向内方へ差し向けられている。
【0020】
図1に示すように、第2案内レール組立体4は、周方向に分散して複数配設され基部が中心軸1に固定された腕部材41と、腕部材41の先端部に固定されたレール保持部材42と、レール保持部材42に保持されて中心軸1を取り巻く棒状部材から成る上方から見て環状のガイドレール43と、腕部材41の先端近傍部に固定されたレール保持部材44と、レール保持部材44に保持されたガイドレール45とを有している。
第2案内レール組立体4のガイドレール43が、首皮切開部材39の従動ローラ39dに係合して、従動ローラ39dを、上方から見て複数のガイド棒32の包絡線が形成する円弧に対して径方向内方へ且つ上方へ案内すると同時に、ガイドレール45が、首皮切開部材39の従動ローラ39eに係合して棒状部材39aの上方への回動を規制することにより、棒状部材39aは自重に抗して、安定した動きで上方へ回動する。ガイドレール43が、首皮切開部材39の従動ローラ39dに係合して、従動ローラ39dを、上方から見て複数のガイド棒32の包絡線が形成する円弧に対して径方向外方へ且つ下方へ案内することにより、棒状部材39aは自重により下方へ回動する。
【0021】
食鳥屠体首皮切開装置Aの作動を説明する。
図2に示すように、頭部が切除され内蔵が除去された食鳥屠体100が、脚部を上方へ差し向け首骨を下方へ差し向けてチェーンコンベアCのシャックルBに懸架されている。
図2に示すように、前記シャックルBが首皮切開組立体3に寄り添う移動領域の始端部の直前まで到達した時に、前記始端部の直前まで回転してきたガイド棒32に係合する張力付与部材34、肩保持腕36、首皮付勢部材38、首皮切開部材39は、張力付与部材34が最上位置に在り、肩保持腕36、首皮付勢部材38、首皮切開部材39が最下位置に在り、且つ首皮切開部材39は最下回動位置に在る。首骨案内部材37は、図2、図4(a)、(b)に示すように、ガイド棒32に近接した退避位置に在る。
【0022】
シャックルBが首皮切開組立体3に寄り添う移動領域の始端部まで到達すると、図2に示すように、当該位置に到達したガイド棒32に固定された一対の胴部保持腕35の間に食鳥屠体100の胴部が進入し、前記胴部は前記一対の胴部保持腕35によって保持される。食鳥屠体100は、上方から見て複数のガイド棒32の包絡線が形成する円弧に対して、腹側を径方向内方へ差し向け、背側を径方向外方へ差し向ける。シャックルBが首皮切開組立体3に寄り添って円弧状に移動するのに伴って、食鳥屠体100を介してチェーンコンベアCから駆動力を受けた首皮切開組立体3は、直立軸1の回りに従動回転する。
首皮切開組立体3が回転するのに伴って、ガイドレール23に案内された摺動体33a〜33dが上下に移動し、張力付与部材34、肩保持腕36、首皮付勢部材38、首皮切開部材39が上下に移動する。また首皮切開組立体3が回転するのに伴って、ガイドレール23’に案内された首骨案内部材37が、上方から見て複数のガイド棒32の包絡線が形成する円弧に対して径方向内外方へ移動し、ガイドレール43、45に案内された首皮切開部材39が上下に回動する。
【0023】
シャックルBが首皮切開組立体3に寄り添う移動領域の始端部を通過し、前記移動領域を移動すると、図7に示すように、張力付与部材34が最上位置から下降し、内蔵除去作業時に食鳥屠体100の下腹部に形成した開口を通って、食鳥屠体100の腹腔内へ進入し、食鳥屠体100の腹腔を通って首皮100bの腹側の部位と首骨100cとの間に進入し、最下位置まで到達し、首骨100cに沿って首皮100b先端部を越えて延在して、首皮100bの腹側の部位を首骨から分離させると共に首皮100bに周方向の張力を付与する。
張力付与部材34を首皮100bの腹側の部位と首骨100cとの間へ導くために、食鳥屠体100の下腹部に形成した開口の腹側の端部から張力付与部材34を腹腔内へ進入させる。張力付与部材34の先端34aが食鳥屠体の背側へ湾曲しているので、張力付与部材34は前記開口から外れることなく、腹腔へ進入することができる。
張力付与部材34が下降するのに同期して、肩保持腕36が上昇して下方から食鳥屠体100の手羽、即ち食鳥屠体100の肩部100aに接近し、最上位置まで到達して、下方から食鳥屠体100の肩部100aに当接し肩部100aを下方から支持する。
肩保持腕36に係合する首骨案内部材37も肩保持腕36に従動して上昇すると共に、図4(c)、(d)に示すように、ガイドレール23’に案内されて、上方から見て複数のガイド棒32の包絡線が形成する円弧に対して径方向外方へ移動する。従って、張力付与部材34の下降動作の途中まで、首骨100cが図4(a)示すように張力付与部材34の溝34bに収容されていなかったとしても、張力付与部材34の下降動作の終了時までには、図4(c)に示すように、張力付与部材34と食鳥屠体の首とが、稼働位置に到達した首骨案内部材37の一対の脚部に挟まれた空間に進入して、首骨100cは張力付与部材34の溝34bに収容される。首骨100cが張力付与部材34の溝34bに収容されることにより、首骨100cは張力付与部材34に対して位置決めされる。
肩保持腕36が上昇するのに同期して、首皮付勢部材38が上昇して張力付与部材34の下端部に下方から接近し、首皮切開部材39が上方へ回動しつつ上昇して、刃39bが食鳥屠体100の首の肩寄りの基部に接近する。
【0024】
シャックルBが首皮切開組立体3に寄り添う移動領域を更に移動すると、首皮付勢部材38が更に上昇し、図8、9に示すように、端部38aが首皮100bの腹側の部位の先端部(下端部)に下方から当接する。図9から分かるように、首皮100bの腹側の部位の先端部は、周方向の張力を付与されて周方向に張った状態で張力付与部材34の溝34cを跨いでおり、端部38aは前述の如く溝34cと相補形状を有しているので、端部38aは確実に首皮100bの腹側の部位の先端部に下方から当接する。
首皮付勢部材38の上昇に同期して、首皮切開部材39が上方へ回動しつつ更に上昇して最上位置且つ最上回転位置に到達し、図8、9に示すように、刃案内ローラ39cが張力付与部材34に当接すると共に刃39bが首皮100bの肩100a寄りの基部の背側の部位を貫通し、首骨100c周囲の肉に僅かに食い込む。
【0025】
シャックルBが首皮切開組立体3に寄り添う移動領域を更に移動すると、首皮切開部材39が最上回転位置を維持しつつ下降し、刃39bが首皮100bの背側の部位を肩寄りの基部から先端部まで長手方向に切開する。
首皮切開部材39の下降に同期して、首皮付勢部材38が更に上昇し、端部38aは首皮100bの腹側の部位の先端部を肩寄りの基部へ向けて押し上げる。首皮100bの先端部には周方向の張力が作用しているので、端部38aから付勢力を受けた首皮先端部は、腹側の部位のみならず背側の部位も肩寄りの基部へ向けて押し上げられる。首皮付勢部材38は最上位置に到達する。
首皮100b先端部には張力付与部材34によって周方向の張力が付与されており、更に、首皮付勢部材38の作動によって、首皮100b先端部は、腹側の部位のみならず背側の部位も肩寄りの基部へ向けて押し上げられるので、首皮100b先端部は全周に亙って首骨100cに、より詳細には首骨100c周囲の肉に当接し、自由状態にはならない。この結果、首皮100b先端部と首皮切開部材39の刃39bとの係合状態が解除される事態の発生が防止され、首皮100bが先端部まで確実に切開される。
図9から分かるように、溝34bに首骨100cを収容した張力付与部材34に首皮切開部材39の刃案内ローラ39cを当接させることにより、首皮切開装置39の刃39bが、張力付与部材34に対して位置決めされる。この結果、首皮切開装置39の刃39bは、張力付与部材34に対して位置決めされた首骨100cに対して位置決めされる。首骨100cに対して刃39が位置決めされることにより、首皮100bの背側の部位を首皮100bの先端部まで、切り口を乱すことなく直線状に切開することが可能となる。
首骨100cに接近離隔する方向に移動可能な刃39bを、バネ39fが首骨100cに接近する方向へ付勢するので、刃39bと首骨100c周囲の肉との係合状態を維持し、ひいては刃39bと首皮100bとの係合状態を維持することができる。バネ39fの付勢力を適正値に設定することにより、刃39bが首骨100c周囲の肉に食い込むのを防止することができる。
【0026】
食鳥屠体100を懸架したシャックルBが、首皮切開組立体3に寄り添う移動領域の終端部に到達するまでの間に、図2に示すように、張力付与部材34が最上位置まで上昇し、肩保持腕36、首皮付勢部材38が最下位置まで下降し、首骨案内部材37が肩保持腕36に従動して最下位置まで下降すると共に退避位置へ移動し、首皮切開部材39が最下位置まで下降すると共に最下回動位置まで回動する。
シャックルBは、首皮100bの背側の部位が肩100a寄りの基部から先端部まで長手方向に切開された食鳥屠体100を懸架したまま首皮切開組立体3、ひいては食鳥屠体首皮切開装置Aから離れ、次工程の処理装置へ向けて移動する。
食鳥屠体100から離脱した張力付与部材34、胴保持腕35、肩保持腕36、首骨案内部材37、首皮付勢部材38、首皮切開部材39は、シャワー洗浄された後、シャックルBが首皮切開組立体組3に寄り添って移動する領域の始端部まで移動し、新たな食鳥屠体100に係合する。
【0027】
上記説明から分かるように、食鳥屠体首皮切開装置Aを使用すれば、首皮100bの先端部まで確実に首皮100bの背側の部位を自動的に切開できる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、食鳥屠体の首皮の切開に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 直立軸
2 第1案内レール組立体
3 首皮切開組立体
4 第2案内レール組立体
23、23’ ガイドレール
32 ガイド棒
33a、33b、33c、33d 摺動体
34 張力付与部材
34a 先端部
34b、34c 溝
35 胴部保持腕
36 肩保持腕
37 首骨案内部材
37b バネ
38 首皮付勢部材
39 首皮切開部材
39b 刃
39c 刃案内ローラ
39f バネ
43、45 ガイドレール
100 食鳥屠体
100a 肩部
100b 首皮
100c 首骨

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部が切除され内蔵が除去された食鳥屠体の肩部を保持する肩部保持手段と、食鳥屠体の下腹部に形成した開口から腹腔を通って首皮の腹側の部位と首骨との間に進入し、首骨に沿って首皮先端部を越えて延在して、首皮に周方向の張力を付与する張力付与手段と、首皮の腹側の部位の先端部に当接して該部を肩寄りの基部へ向けて付勢する首皮付勢手段と、首皮の背側の部位を肩寄りの基部から先端部へ向けて切開する首皮切開手段とを備えることを特徴とする食鳥屠体首皮切開装置。
【請求項2】
張力付与手段には長手方向に延在して首骨を収容する溝が形成され、溝から外れた首骨に係合して首骨を溝へ案内する首骨案内手段を備え、首皮切開手段は刃と刃案内部材とを有し、首皮切開手段は、刃案内部材が張力付与手段に当接し、刃が首皮の背側の部位を貫通し首骨周囲の肉に僅かに食い込んだ状態で、首骨に沿って移動することを特徴とする請求項1に記載の食鳥屠体首皮切開装置。
【請求項3】
首皮切開手段の刃は、首骨に接近離隔する方向に移動可能であり、首皮切開手段は刃を首骨に接近する方向へ付勢するバネを有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の食鳥屠体首皮切開装置。
【請求項4】
張力付与手段の先端部が食鳥屠体の背側へ湾曲していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の食鳥屠体首皮切開装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−110004(P2011−110004A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271345(P2009−271345)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(504225356)プライフーズ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】